2024年4月7日日曜日

2024年4月6日(土)明治安田J1リーグ第7節 北海道コンサドーレ札幌vsガンバ大阪 〜ひらがなこんさvsひらがながんば〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • ポヤトス監督が試合前に公言していた通り、ガンバはスタメン7人を入れ替えるターンオーバー。FWのジェバリ、右ウイングの食野、左ウイングの倉田、左SBの中野伸哉はリーグ戦初スタメン。CBと中盤センターはここまで出場機会を得ている選手が並んでいますが、ネタラヴィはベンチスタートとしました。またアラーノと山田は前節の負傷により使えない状態でした。
  • コンサは対照的に中2日の前節から大きく変わらないメンバー。ガンバから期限付き移籍中の武蔵を起用できないトップに大森。左DFは前節途中交代の中村桐耶がベンチスタートで菅を最終ラインに。その際途中交代で左WBに入った近藤をスタートから使って、浅野はこの日も右WBでスタートします。


2.試合展開

ひらがなこんさvsひらがながんば:

  • 試合の入りは、コンサはいつも通り相手の布陣に合わせたマンツーマン基調の守備をセット。ガンバはほぼジェバリに放り込む選択を続けます。ジェバリと岡村のマッチアップは、岡村はそこまでジェバリには苦戦せずコンサは割とボール回収に成功していました。
  • 逆のシチュエーションでは、コンサもFW大森に放り込むことが多かったものの、ガンバの前線守備はそこまで強烈ではなかったためコンサはある程度はボールを保持することを模索していました…まぁそんな図を書いて説明するほど大層な試合ではないのですけどせっかくなので言及します。


  • ガンバはダワンと鈴木がコンサのシャドー、駒井と小林をそれぞれマンマーク。彼らが持ち場を離れても基本的についていく対応で、特に下がってボールを受けるのが好きな選手なので宮澤や岡村が縦パスを入れた時はガンバにとって狙いどころになっていました。
  • 一方でガンバの前線は、坂本とジェバリでコンサのアンカー荒野を最初は消しながら、宮澤と岡村を見るのですけど、この2トップ…特にジェバリはそんなに長い距離を繰り返して走れないので、コンサが菅野・宮澤・岡村あたりで適当にボールを動かしているだけでジェバリのところで脱落、という感じでした。
  • この際にガンバの両ワイドはジェバリをフォローするかステイするかで、後者を優先していたので、コンサはbuild-upの局面においてはCBの岡村と宮澤の持ち出し(conducción)が解としては大安定でした。これはこの2人と、荒野は途中からはそこそこ気づいていたようで、誰かがあからさまにフリーになってチャンスがあれば運ぶようにしていたと思います。


互いに前線は孤立:

  • とはいえコンサのボール保持機会のうち多くは大森への放り込みだったのは事実で、そこはそう簡単にチームが変容するわけはありません。
  • 大森は試合後に自ら「孤立気味だった」と振り返っていますが、これは大森がどうというかは周囲に理由があったと考えます。
  • 典型的なのは25分頃からのプレーで、コンサは馬場が右サイドでボックス付近の、DFを背負う大森に縦パス。大森は1秒とはいかなくても0.5秒くらいはガンバのCBをブロックして時間を作ることに成功しますが、その間にコンサは大森からボールを引き取る選手がおらず彼の頑張りを不意にしてしまいます。
  • 直後にまた似たような感じで縦パスが入りますがそこも結果は同じ。パスの角度や位置的には右シャドーの小林が「引き取り役」として最適なように思えるのですが、小林はとにかくボックス内やその周辺に入ってプレーするのを避けていて、コンサがボールを握ると多くの局面で下がってボールを触りに動いていました。

  • これ自体は別にダメってことではないのですけど、1トップ+シャドーという組み合わせなので、シャドーがゴール前に顔を出さないと、どうしても前線は枚数不足に陥りますし、絶対誰かが前線に走り込むことは必要です。小林の場合は選手特性というかそのタスクをあまり重視していなさそうなマインドでもあるし、単純に頻度も物足りないと感じます。なお駒井は小林よりはボックス内に入っていく意識は強いと思います。
  • この試合、コンサがペナルティエリア付近でプレーした際に、大森以外の選手が登場してチャンスになったのは、小林ではなくて宮澤や荒野が顔を出した時でした。小林は後半に一度、浅野のクロスをファーで受けようと飛び込みましたが、クロスが合わなかった後に自らがクロスを上げる側に回って、それが近藤の決定機になったのも象徴的です(本質的にはクロスに飛び込むんじゃなくてパスを出す側なのでしょう)。

  • 浅野は右WBでいいのか?という議論がありますが、やはり駒井・小林の組み合わせよりはもう少しゴール方向に向かってプレーできる選手がいた方が、大森のような選手とは合うと思います。誰とは言いませんけど。


  • そしてガンバの方も言及すると、ガンバはまず組み立てがうまくいかないので、ガンバのチャンスはコンサにボールを持たせたところでそのミスを突いてショートカウンター、が大半でした。
  • この際、ショートカウンターという不確実性の高いシチュエーションにおいて、ガンバは前線のアタッカーが得意なプレーを発動しようと比較的自由に動きますが、食野、坂本、倉田と並ぶといかんせん全員がシャドータイプというか、得意なプレーエリアが被ってしまって中央に人が密集する形でガンバのカウンターは発動することが多かったと思います。やはりこれらの選手を並べると本質的に幅を取らないし、中央に入ってくるタイミングも早いんですよね。

  • まぁそれでも食野とかの能力があるとシュートまで持っていけるのはあるのですけど、ガンバの場合はジェバリの近くに人がいなくて孤立というよりは、物理的に人はまぁまぁ近くにいるのですけどプレーエリアややりたいプレーがかぶっていて相互作用が生じにくいが故の孤立感、のような現象でした。


逆足WBがゴール方向を向く瞬間:

  • 後半に先に交代カードを切ったのはガンバ。61分に食野→ウェルトン。64分にコンサは3枚カードを切って前線に長谷川、右DFに高尾、シャドーに青木とします。さらにガンバも67分に宇佐美、石毛、黒川とカードを切って少なくともガンバはひらがなっぽいメンバーではなくなります。


  • もっともガンバはこれらのカードを切ってもbuild-up(デリバリー)は特に代わりまえんし、宇佐美に放り込むことは難しいのでウェルトンに放り込んでそのまま突っ込むか、あいかわらずコンサのミスを誘ってショートカウンターに懸けるか、でした。
  • 対するコンサは、長谷川が意外と前線でFWっぽいボールキープや潰れ役としての働きを頑張っていたのと、ガンバの疲労からスライドやサイドチェンジの阻害が甘くなり、両ワイドの高い位置でボールを持てるようになります。

  • 決勝ゴールはこの試合、多くの時間を自陣でプレーしていたWBの浅野が守備から解放されて高い位置で、ゴール方向を向いたところから始まり、長谷川のクロスに飛び込んだのはシャドーの選手だけではなく宮澤。やはりというか、いかにWBに攻撃のタスクに専念させられうる形を作れるか(現状はbuild-upが機能不全なので非常に相手依存的)と、FW以外にターゲットとなる選手を確保できるかで攻撃の質は変わります。


雑感

  • ジェバリがスイッチを入れる役のガンバは全般にスピードもなく、前線は被り気味で後方も組み立てに難ありとひらがな対応でコンサとしては助かりました。
  • あとは、細かい点ですがガンバはコーナーキックの守備時にゾーン(4人で列を形成)とマンマークの併用なのですけど、鈴木徳真が岡村をマークするなど強度が怪しくて、そこでもコンサは小林のキックから放り込むだけでチャンスになっていたと思います。
  • コンサはなんとか勝ち点3を得ましたが、今後より速く力強いプレーが要求される状況になるとベテランが踏ん張れるか、それとも若手の突き上げがみられるかはポイントになりそうです。それではみなさん、また逢う日までごきげんよう。

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