2023年3月5日日曜日

2023年3月4日(土)明治安田生命J1リーグ第3節 アルビレックス新潟vs北海道コンサドーレ札幌 〜妥当な線に収束〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント



  • 新潟は堀米が欠場で左SBに渡邊泰基。CBは前節広島戦ではトーマスデンと千葉のユニットでしたが、デンがベンチスタートで開幕戦に起用されたマイケルに戻しています。
  • 札幌は菅野が引き続き負傷、前線は小柏がスタメン復帰で、浅野がベンチスタート。

2.試合展開

新潟への既視感:

  • 新潟はJ1で戦うにあたりJ1クラスの選手の補強はなし。右ウイングの太田が町田からの個人昇格で、他はほぼ昨シーズンからのメンバー。近年上位カテゴリと下位カテゴリの差は如実になっており、個人昇格で即活躍する選手も減っている印象なのですが、千葉とマイケルのCBではまともに正面からやりあうのは厳しいでしょう。GKの小島もシュートストップにおいてはJ1で中〜上位かというとそうではないと見えます。
  • そして前線もJ1のチーム相手に殴り勝てたり、少ない人数でフィニッシュまで完結して脈略のないところから得点できるようなタレントも有していない。

  • ですので、まず新潟が一番気にしなくてはならないのは、失点を防ぐために最終ラインの設定やチーム全体の守り方、ゲームプランをどうするか。これは結論から言うと、最終ラインでマイケルや千葉が担当するエリア、領域をなるべく狭くする必要があって、そのためにラインを低く設定して両サイドもCBとの距離をなるべく保つようにし、CBが簡単に動かないで、マークずれも生じないようにする。
  • 狭いエリアで準備した状態なら、マイケルや千葉でも跳ね返せるという考え方で、またラインを低くしておけばスピードがないDFでも簡単に背後を取られもしなくなります。
  • 反面、新潟はそうすると守備の開始位置が低くなって、相手がDFでボールを所持している時に圧力が掛からなくなる。札幌が福森中心に後方でそれなりにボールを持てていたのはこのためです。
  • そして福森はオープンだと何をしてくるかというと、だいたい6割くらいは反対サイドへのサイドチェンジを狙う。
  • 右に突破力のある選手がWB起用されていて、そこからの仕掛けが札幌の黄金パターンですが、このバレバレのパターンにも新潟があまり対策をしているように見えない(WB金子が仕掛けをスタートするところまで成立してしまう)のは、例えば最初からSB渡邊をWB金子にべったりつかせると、左CB千葉との距離が空いてしまって千葉1人ではこれも対応できないから。
  • ですので新潟は金子に渡るまでもOK、そこから金子がカットインしてインスイングのクロスボールやシュート、縦に行って右足クロスと仕掛けてきますが、これもやられることは想定内で、最後のところで体を張って守ろうとの対応でした。

  • ですので札幌のボール保持と新潟のディフェンスの局面は、しばしば札幌の攻撃がフィニッシュ間際まで到達することが多い。実際シュート本数も22本と結構多めで、Foolball Labの「チャンス構築数(率)」みたいな実に無意味な指標はこういう試合展開だといいレートになります。

  • という感じで、新潟はボールを回収する能力は全然ですが、札幌の攻撃が失敗してゴールキックなどでマイボールになってからは、自分達でボールを運ぶことにかけては優れている。
  • やり方はまぁ、1-4-1-2-3のような配置になって、アンカーかその脇に降りてくるMFに、GKも積極的に関与して縦パスから前を向かせる感じなので、もうこういうのを図で書くとめんどくさいのでやりません。
  • Jリーグだと、相手にマンマークでつかれると剥がせる能力のあるCBやSBがかなりレアで、札幌のマンマーク戦法は割と有効なのですが、新潟もバックラインの選手は剥がせないけど、縦パスが成功していたのはGK小島が二度追いに捕まる前に適切にリリースしていたからです。

  • そんな感じで、中盤の誰かが前を向いたら、そのままトップ下の伊藤が運ぶか、ウイングがオープンならそちらに渡すところから新潟はフィニッシュに行きたい。
  • この時に、新潟のウイングはJ1レベルで見るとそんなに1対1で圧倒的に違いを作れるかと言うとそうでもない(後半、三戸が1回だけ田中駿汰との対面でカットインからクロスがあった程度)ので、新潟としては1対1を作って仕掛けるというよりは、もっと札幌のDFがぐちゃぐちゃになってマークが混乱している状態、新潟のウイングが1対1というかフリーに近い状態になったらゴールに向かう、みたいな感じで、正直いうと札幌がもっとリスクヘッジできてればそんなに怖くない気がしたのですが、札幌は序盤から、新潟が持たせてくれる展開で福森がいつものように自由に攻撃参加したりで、その辺のリスクヘッジはかなり適当にやっていて、だから新潟のラスト30mでは結構オープンにやれていた(札幌はやられていた)ように思えました。

  • 全体的に新潟はポジショナルプレーとはちょっと違って、というのはピッチ上に選手でいうところの優位性があまりないからとにかくギャップを作って、相手が動いて崩れるまでたくさんパスを回して我慢する感じでしょうか。そして先述の通りプレッシングがほとんどなくて、ボール回収位置が低く、前線にモンスターもいないのでなるべく自陣に引きつけてからプレーする。既視感としては片野坂監督の大分トリニータ(FWが藤本の頃)に似ていました。

グリズリー頼み:

  • 17分に札幌が、復帰のグリズリー小柏の得意の位置からのアシストで先制します。
  • 金子がSBを引きつけて新潟のCBーSBの間のスペースで小柏が自由になっていることはこの試合しばしばあり、また小柏がこのあたりの位置でゴールから遠ざかる方向に走ってアシストするのは札幌の(ほぼ唯一の)得意なパターンなのですが、▼
  • やはり新潟はある程度ここは捨てている印象でした。

  • 4分後に新潟が追いつきます。伊藤の見事なフィニッシュでした。カメラに映ってないのでわかりづらいのですが、札幌としては前線の選手がCBに蹴らせるのはOK(CBもMFもまぁまぁサイズがあるし、ここで跳ね返して回収するのがいつものやり方)。
  • マイケルのフィードを頭でフリックしたのが伊藤で、それを拾ったのが鈴木。まず宮澤が伊藤に対して準備できていなかったのがどういう状況だったか。岡村も、前節は大迫に何度か負けていて、それは相手を考えるとしょうがないのですが、この試合も鈴木相手に何度か対応できていない時があって、それは岡村の仕事を考えるともう少しやってくれないと厳しいと言っていいでしょう。
  • そして伊藤に渡った後、伊藤が横切るドリブルをして、この時最初は青木が見ていたのが、右足を切らないままシュートレンジまで運ばせてしまって、GKとしてはふざけんなよと言いたくなる対応でした。
  • 42分に新潟は千葉が痛んでデンを投入。その前のプレーで、キムゴンヒ(ゴニ)がマイケルと入れ替わってぶっちぎってシュートまでいく、という場面があって、ゴニに追いつけない新潟DFの足の遅さはやばいんじゃない?と思ってたところでしたので、デンの方がいいかな?とこの時は思いました。
  • そして前半終了間際にセットプレーから伊藤。2試合連続の見事なゴールでした。

妥当な結果に:

  • 後半頭から札幌は青木→浅野。青木が特にダメという感じはしませんでしたが、浅野がそのまま左に入ります。
  • 新潟は65分に鈴木→谷口、太田→小見。見たところ、鈴木は相手の背負って味方に前を向かせるプレーが得意で、谷口は自分で前を向いてゴールに向かうのが得意。ですので新潟は札幌の足が止まったところで谷口を入れて、オープンな展開で仕留められないかと考えていたように思えます。その谷口の裏抜けからヒヤッとしたのがATの中村のファウルでしたが(DOGSOに見えた)、このセットプレーはなんとか凌いだ札幌でした。
  • それ以外は新潟は特に、リードしても5バックにして札幌のWBを警戒するとか対応を変えることはしない。だから後半になっても、前半同様に札幌は個人でぶん殴れそうな雰囲気は漂っていて、結果的には後ろで繋いでいたボールを引っ掛けたところから浅野の見事なシュートで追いつきました。
  • 新潟は中央を塞がれてSBに出すことが多かったですが、SBからも安定的な前進経路を確保している感じはしない(例えば長いキック1発で反対サイドに逃がせるとかが、できれば欲しい)で、怪しいなと思っていたのもあって、ゴール前の強度はまぁまぁある札幌が追いつくのは妥当な感じはしました。

雑感

  • 改めて言いますが妥当な結果でしょうか。↓の指標で言うと(あと、これセットプレーも重要なんで⑤と考えてください)、

  • 札幌はゴール前の強度はまぁまぁある。新潟は②がいいんですが、①と③がやはりJ1では見劣りするので、色々プラマイで見ると互角くらいだなと思いました。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう、。

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