2021年3月21日日曜日

2021年3月20日(土)明治安田生命J1リーグ第6節 北海道コンサドーレ札幌vsヴィッセル神戸 ~ 今、考えるべきこと~

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:

スターティングメンバー&試合結果
  • 札幌は2試合休んでいたチャナティップが直前の練習で復帰、小柏以外は開幕戦のスタメンが揃いました。GKは2試合連続で小次郎。
  • 神戸は山口や酒井高徳を除くと、主力選手を2~3試合ごとに休ませています。この試合は井上、ドウグラス、そして代表招集を受けたフェルマーレンがメンバー外。

「環境」の違いについて考えるべき時:

  • 今シーズン、開幕から各チームとも札幌対策は一貫しており、マンマークでのプレッシングにはつきあわずにロングフィードをFW目がけて蹴る選択をしています。
  • 札幌のプレスの目的は、相手からボールを取り上げるというより、ボールを奪った後で相手の守備組織が整っていないうちにゴールになだれ込む、所謂ショートカウンターを仕掛けることだと思いますので、確かに、さっさと敵陣に蹴っておけば、神戸としては速攻を食らうリスクは回避できます。
  • もっとも、これをイニエスタプロジェクトが絶賛サイクル稼働中のはずの神戸にやられると、プロジェクトは死んだふり作戦をしているのか?という気もしますし、サンペールの頭上を前川の弾丸フィードがかっ飛んでく光景はなんだか切なくなります。
  • ただ、ゲームプランとして井上詩音を連れてこなかったこと、代役にマッチョマン・増山をスタートから起用してきたことはプランとキャスティングが整合します。中盤のサンペールのほか、トップが藤本というのが心もとないですが、それは三木谷オーナーにとって優先順位がセンターラインの選手層確保よりも基地局の設置だと考えると仕方ないのでしょう。
  • 神戸の事情以上に札幌にとって重要なのは、札幌は平易(かつ抽象的)に言うと、三上GMの旗振りもあって「アタランタみたいなプレッシング&速攻のサッカー」をやろうとしてると言いますが、これから先も含め、どのチームも蹴っ飛ばしてくると、あんまりマンマークで高い位置からプレッシングするメリットが弱くなります。
  • あまり厳密に検証したわけではないですが、仮説として、アタランタのプレッシングや速攻がハマっているのは、ポジショナルプレー全盛(ブームは過ぎつつある?)のイタリアやヨーロッパ諸国ではプレスに引っかかるリスクを承知のうえでもポジショナルなビルドアップを敢行するメリットがあると考えられているから。相手のプレスを剥がして1stディフェンスを突破した時に、ボールホルダーがオープンな状態をとにかく作ることがゴールへの近道になるとの考えが成熟しているからだと思います。
  • 一方でJリーグは、色々な事情があるにして、札幌のマンマークプレスにどのチームも付き合ってくれなくなっている。私が言うまでもないと思いますが、札幌のスタッフはこの問題に対する対応を具体的に考えていくべきフェーズにあるように思えます。

札幌前線のバランスの悪さ:

  • 先に、開始から45分間の展開を3項目で述べると、
  1. 神戸は開始から前川が蹴っ飛ばして「イニエスタプロジェクトは死んだふり作戦」を敢行。
  2. 対する札幌は、前節と同じく相手ゴール前までの到達に難があり、神戸の枚数が揃っている時はゴールから離れたところでボールを受けて単独突破→ミドルシュートの繰り返し。シュートは前半だけで10本ほど撃っていましたが、浦和戦と同じく大半がミドルシュートでした。
  3. しかし終了間際に、菊池と入れ替わったアンロペのパスから、札幌が誇るスーパークラック・ルーカスフェルナンデスがこの試合初めてオープンな状態からドリブル開始。酒井のファウルを誘ってアンロペのPKで先制。直後にもルーカスのFKからPK誘発で2点目。
  • 札幌としては速攻を仕掛けたいので、45分終了時点でリードして神戸が前に出てこないといけない展開になったことは万々歳です。しかし前線が機能していたかというと、上記「2.」の通りで、そうではなかったと思います。
  • 前節の記事でも「金子がゴールから遠いところでボールを受けてドリブルを開始するので、フィニッシュ(シュート)がミドルシュート主体になる」と書いたのですが、もう少し補足します。
  • 札幌の前線はシャドーに金子とチャナティップ、右にルーカス、左に菅。トップのアンロペは最近「ジェイの役割」を頑張っているのでドリブラーじゃないとカウントしても、足元でボールを受けたがる選手が3人並ぶのはバランスが悪いです。
  • 所謂、日本的な「サッカーが巧い」…ボールを持った時にクオリティを発揮できることは大変結構なのですが、問題は足元でボールを受けたがる選手はボールに寄る傾向が強いので、前にスペースがある時にあまり裏に抜けたりしない。この前線の構成だと、神戸は札幌の5トップが誰も裏抜けしてこないので、ラインを上げて守れる(≒中盤を圧縮してスペースを狭めて守れる)状態になります。
  • ライン間で受けるだけでなく、裏抜けも狙う小柏(攻撃的MFのタスクもFWのタスクもできる)が不在だとこのような状態に陥りがちです。ですので、開幕の横浜FC戦以降、金子もアンデルソンロペスも思うようにスペースを享受できなくなっています。
ドリブラーが多すぎて攻撃の奥行きがない
  • この図を見ると、菅は何かやることがある?と思うかもしれません。確かにワイドの選手が”奥行き”を確保するやり方はあり、ペップバルサでいうとペドロが非常に効いていたと思います。実際ミシャも2018シーズンに宮吉をワイドで使っていたのは、そうした思惑もあったでしょう(ワイドストライカーとしての振る舞いに加え)。
  • ただ、菅については、最前線から最終ラインまでアップダウンしなくてはならない役割を抱えている以上、裏抜けして「相手のDFを追い越した状態」を何回も試合中に作ることでディフェンスに問題を生じさせないか、そして体力的に可能なのか?という点をクリアにしないとこれは机上の空論になります。

2.試合展開

死んだふり作戦(詳細):

  • 神戸の戦略について、「ボールは捨てる(ロングフィード多用)」については冒頭の通りです。
  • ボール非保持についても、2021シーズンこれまで、もしくは2020シーズンの後半の、札幌の対戦相手と方針は似ており、札幌のGKが関与するところでは人を捕まえてミスを誘う、ただしそれに全力というより、ジェイ不在の札幌はゴール前のスペースを消せば打開できないということで、”第一波”が突破されたら素早くリトリートして枚数確保して守る。この点を徹底していたと思います。
  • 札幌は長短のパスを蹴れるGK小次郎の起用によって、宮澤やミンテが詰まったらバックパスをしてやり直す、ないし数秒間の猶予を作って神戸の1列目の守備をやり過ごすことはできます。開始3分ほどで、小次郎のパスが引っ掛かってピンチを招きましたが、GKを「数に入れられるか否か」は現代フットボールで極めて重要なので、多少のミスでトライすることをやめさせるのは愚か者の発想です。
  • ▼の駒井のように、札幌が神戸の2トップ背後でボールを受ければ比較的、簡単にこの形は作れますし、駒井ではなくてチャナティップ(局面を切り取ると、「下がること」がプラスに作用する)を使っても再現性のある形になります。
神戸の両サイドは前よりも後ろを意識したタスクでスタート
  • ですので札幌のウイングバックには簡単にボールが入る状態。ここからが神戸の「イニエスタプロジェクトは死んだふり作戦」の開始で、札幌が神戸陣内にボールを入れると、増山と古橋が全力でプレスバックして、素早くSBと連携し、札幌WBと2対1の関係、縦横を切って突破を防ぐ対応をします。
  • さすがのルーカスも2人で進路を切られると一旦ボールを戻します。これで5~6秒は稼げるので、ゴール前にDFと中盤センターの選手を配置するには十分です。後は、札幌はだいたい最後はクロスか、たまに強引な縦パスからの中央突破を図りますが、いずれもスペースを消しておけば決定機にはなりません。

何をもって「攻撃的」とするか:

  • サッカーの分析ないし検証において、定量データから何かがわかるかと言うと、競技特性的に私はNoだと思っています。ただ、たまたま興味深いものがTwitterで流れてきたので貼り付けると、
  • 注目して欲しいのは札幌のパスネットワーク図で、ボールはそこそこ保持していたにもかかわらず、駒井と宮澤から縦方向のパスが極めて少ないことが示唆されています。これを踏まえて、試合で顕著だった現象に触れます。
  • 先で示した図のように、神戸は前からプレスをしてくると言っても枚数は2枚だけ。マンマーク気味の対応なら、札幌はGK小次郎を含めて4対2で必ず誰かフリーになるし、ポジションを適切にとれば問題ありません。
  • しかし試合経過と共によく見られた現象が以下で、
札幌のボール保持あるある
  • まず、基本的に「最初の4対2」で”ビルドアップの出口”になるはずの駒井が下がってきます。駒井も前線の選手とは少し選手特性やマインドが違うと思いますが、下がって受けるはよくあるパターン。
  • ただ、駒井が下がると、札幌の3人(宮澤、ミンテ、駒井)は皆、神戸の2トップよりも攻撃方向に立ってないので、札幌はこの3人でパスしてるだけでは神戸の1列目を突破できなくなります
  • じゃあパスしないならフリーの選手がドリブル…所謂conducción(コンドゥクシオン)すればいいじゃない、と思いますが、宮澤も駒井もそれをしない。ミンテがたまに頑張ろうとするぐらいでした。
  • 宮澤に関しては、だいたい左でスタートすることが多いのですが、右利きの宮澤は右・左の足でボールの持ち替えが多く(相手が来ないなら右で持ちたいけど、来るなら左に後で持ち替える、など)、ボールタッチが多い印象があり時間を使ってしまう。加えてそんなに足が速くないので、持ち上がるためにはスペースがふんだんに必要なのだと思います。
  • 駒井に関してはよくわからないのですが、とにかく前が空いていてもストップしてしまうので、札幌はどれだけパスを繋いでもスピードアップできず、最終的にプレスバックして枚数確保する神戸としては極めてイージーな状況だったと思います。
  • 「宮澤は足が遅い」というと一気に抽象的・情緒的な印象を与えてしまいますので、問題を指摘すると「宮澤や駒井(による、札幌のビルドアップ)は時間を使いすぎているので、神戸の選手が自陣に来陣する時間を与えてしまい、ボールを回している意味がなくなっている」です。

↑見方は人それぞれですが、ボールを前進させられないチームから、「4点目5点目を取りに行く姿勢」は私は感じませんでした。(単にゴール前を守る能力がない、との話をオブラートに書いているのかもしれませんが)

  • なおconducciónについてはこの記事を読むといいかもしれません(フトチャンだけど話者は信用できる)。
  • この「駒井が必要以上に下がって枚数確保しようとする」、「ミンテ以外バックラインにスピードがない」とも、試合後半になると伏線っぽい事象が浮かび上がってきて面白いところでした。もっとも試合は前半で打ち切られたのですが。

死んだふり作戦 その2:

  • 神戸がボールを持っていた時に何をしていたか、もう少し補足します。
  • 配置的には、古橋が中に絞ることが多く、藤本の背後、ないし佐々木の隣ぐらいまで移動して、競った後のボールを回収してそのままダイレクトに札幌DFの背後を突けるなら突こう、みたいな思惑は感じました。
  • ただ、藤本とミンテなら勝負は見えてるので、神戸は札幌の1stディフェンスを突破しないと、古橋や藤本が裏に抜ける機会は殆ど創出できていませんでした。
  • 34分くらいに一度だけ、前川を深追いしたアンデルソンロペスの、菊池へのマークが完全に外れて菊地がオープンになり、30mほどハーフウェーライン付近までconducciónして古橋へのパス。これが神戸の前半一番いい形でしたが、ボックス外からの古橋のフィニッシュは脅威になりませんでした。

めでたしめでたし:

  • そんな感じで、また似たような展開だなと思って前半終わり際を迎えましたが、45分に冒頭のルーカスの突破からPK獲得。
  • ルーカスはJリーグでも、名古屋のクロちゃんと一二を争う左サイドバックである酒井にびったり付かれて、仕掛けるスペースがない中でチャンスを窺っていましたが、酒井が中央のカバーにスライドしたシチュエーションを見逃さずゴールに向かってドリブルを開始。狙ってこの状態をもっと作れるといいのですが、やや偶発的な形から札幌が先制します。
  • そしてこれも冒頭に書いたFKからのPK2本目。この試合、札幌はキッカーをルーカスにスイッチしていて、これは、ジェイや武蔵のような高さのある選手が多かった時期と比べて減ったので、ターゲットに福森を使いたかったのかな?という印象です。これについては、ルーカスも味方が合わせやすいキックを持っているので大賛成です。その受け手になった福森が佐々木のファウルを誘いました。
  • 後半開始直後、ビハインドでキックオフ直後ということで前に出てきた神戸の隙をついて高い位置でボール回収。ようやくこの試合初めて「ショートカウンター」っぽいものが発動します。
  • 神戸のDFが整わない状況で、ルーカスが戻るDF(小林と菊池)の身体の重心の逆向きとなるマイナス気味のソフトなパス。かつてジェイがボーイ(白井康介)に「クロスは人じゃなくてスペースに出せ」と熱血指導していたのと要領は同じで、インテリジェンスを感じるアシストでした。


  • 内容はともかくスコアは3-0。道新スポーツ一面「アンロペハットだ!札幌 開幕以来の2勝目」「さあ4月上昇気流へ!」。そんな感じで、めでたしめでたし。




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  エッチな ほんが よみたい
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  • Are you ready? では私と一緒に隠しダンジョンに足を踏み入れましょう。

3.そして伝説へ

決戦は金曜日:

  • まず、神戸は後半勝負だったのか?普通に考えるとそうでしょう。
  • メンバー的にも厳しい中で、エース古橋を後半からトップに入れるのは開幕戦でも使っている形。そして札幌の対戦相手による、札幌対策を完コピしているとしたら、後半運動量が落ちる、プレス強度も落ちる(しかもコマ不足のため交代カードをあまり切らない)ことも当然考慮に入れてきたでしょう。スコアは想定外として。

深刻すぎるバグ発見:

  • 神戸が後半執拗に狙っていたパターンの概略図が▼です。
  • まずとにかくサイドのスペースに人を走らせるなどして、コーナーフラッグ付近まで侵入します。札幌は神戸のウイングに対しては左右のCBが対応するのですが、ここで1対1(ミシャ曰くZweikämpfe)が発生。ミシャはこういうシチュエーションで負けるな!と日々指導していると思いますが、負けないように守るとチャレンジすることが難しくなります
神戸の狙っていたパターン
  • という説明になってない、嘘くさい話では多分不十分なのですが、ともかく札幌はこのエリアでのプレッシャーが緩く感じます。
  • サイド深くで相手がボールを持った時にどう対応するのか?クロスを上げさせて跳ね返すのか?クロスは上げさせないで、ボールを敵陣方向に戻させるような守備(誘導)をすべきか?浦和戦なども見ていて思ったのですが、ここでの対応は不明瞭です。
  • 札幌がボールを獲れない。神戸からするとボールを失わない。だからDFを動かすリスクを負える。前半全く攻撃参加しなかった、山川と酒井高徳氏がインナーラップを仕掛けます。
  • この時に、札幌DFの顕著な傾向として、①ボールホルダーに1人か2人いく、②残りはみんなとりあえずゴール前に集合、これが見受けられます。↑の図に赤い四角形を2つプロットしましたが、ここには人を確保する。恐らく、基本的に同数対応、常にマンマーク対応なので、このシチュエーションにおける宮澤がカバーリングに動くと枚数が足りなくなる。だからゴール前にまず人を確保して、ターゲットを捕まえられるようにするわけです。
  • そうすると手薄になるのが、図の最後に登場した黄色のエリア。①ペナルティエリア角付近と、②ペナルティアーク付近です。神戸の山口の2得点はいずれも似た形で、コーナーフラッグ占有からマイナス方向への折り返しでした。▼の動画で、札幌の選手がどう動くか、神戸の選手がどうスペースに入っていくかを観察すると面白いと思います。

  • ちなみに国際Aマッチウィーク中に是非セリエAを見てほしいのですが、アタランタはこうしたシチュエーションではまずボールホルダーをとにかく自由にしない(国は違いますが、このあたりの対応は、酒井高徳氏らの言う「ドイツでは抜かれたら誰かがカバーするだろぐらいの勢いで対人で勝ちに行けと言われる」みたいな話は頷けるものがあります)。
  • そしてボールを下げさせた後に一気にラインを押し上げて、必要以上に最終ラインに人が残っていない状態(つまり撤退守備モードから通常のセット守備/プレッシングモードに素早く移行)を作ります。
  • 2トップの相手に対しては、3バックのうち2人で2トップをマーク。中盤は基本2人のシステム(1-3-4-2-1か1-3-4-1-2で)、で中盤の選手(de Roon、Freuler)が最終ラインまで下がって対応することは稀です。
  • 札幌の場合、難しいのは、2021シーズンここまで全ての対戦相手が4バック+中盤センター2人(≒2トップor1トップ+トップ下1人)のシステムですが、札幌はこの布陣の相手に対して現状リベロの宮澤の代役がおらず、その宮澤が最終ラインに下がってキムミンテとCB2人のような並びで対応することが多いですが、これだと中盤センターを守る選手が常に最終ラインに吸収されているのと同じなので、どうしても重心が下がってしまうのではないかと感じます。

伏線の回収その1:

  • 神戸の2点目は田中駿汰のパスミスからでした。
  • smartな駿汰を最近軽肥満と診断される私が擁護しても一円の銭にもなりませんが、タッチライン付近で寄せられた時の対応は難しいです。最初から180度しかプレーアングルがない中で、対面の中坂は明確に縦を切る対応をしています。但し中坂1人なので、平行方向は切れていない。横に逃げられるとよかったのですが、味方を見つけられなくて弱いバックパス。これが古橋に拾われてしまいました。
  • 何が伏線なのかというと、札幌は所謂ミシャ式1-5-0-5、中盤の選手が2人落ちて、平行方向にDFが4人も5人も並んだ状態でプレーすることが少なくない
  • この時は、駒井が完全に落ちずに中盤に残っていて、私が「2.」で述べた、神戸の1stディフェンスを突破しようとするならベーシックな対応でいいと思うのですが、札幌は後ろの枚数過多になっていることが多くていつもはバックパスで逃げるのが容易です。直前に駒井が”いいポジショニング”をしていたことで、いつもと違うシチュエーションになってしまったと言えると思います。だから結局駒井が下がる口実みたいなものができてしまうのは、中長期的に見て非常にまずいと思うのですが。

  • 3点目は古橋の裏抜けから小次郎が倒してPK。中継カメラの限界でよく見えなかったのですが、本来大外を守るタスクがあるが疲れているであろう右ウイングバック・ルーカスが前残り気味だったのかもしれません。

伏線の回収その2:

  • もう一つの伏線は、札幌の左CBに適任がいない問題(宮澤だと左足とスピードに難あり)の行方です。
  • 62分、スコアが3-2の状況でチャナティップ→高嶺のカードが切られます。病み上がりのチャナティップは恐らくこれくらいの時間が限度で、あと30分は守備強度が必要(しかも他の選手はどんどん落ちる)なことをことを考えると、切るべきカードは青木、中野嘉大ではなく高嶺でしょう。
62分~
  • 高嶺は2020シーズンのマリノス戦で、負傷の福森に代わって左CBとして鮮烈な印象を残しましたが、宮澤の課題である「左足」、「スピード不足」を解決できるポテンシャルは既に示しています。このことを考えると、立て続けに神戸が得点して緊迫した状況で、ボールを運ぶ仕事も期待して投入したのかと私は感じました。
  • ただ、現状のシステムだと左MFがシャドー兼インサイドハーフ、右MFはインサイドハーフ兼中盤センターで、高嶺はシャドーじゃないことを考えると左に置きにくい。なので、投入直後は駒井が左に動いていたのですが、これでは「左CB問題」は解決しない。結局カードを切ったはいいものの、ピッチ上は混迷を更に深め、勢いづく神戸に対して気持ちと気持ちのぶつかり合いに持ち込まれてしまった印象でした。

4.雑感

  • まず、直接失点につながるミスを犯した、新人でルーキーな小次郎や、2年目の田中駿汰をスケープゴートにするのは楽でしょうが、サッカーはそんなに単純ではないのは確かです。
  • じゃあ何なの?という点を見ていくと、基本コンセプト(皆でプレスして勢いよく攻撃)は形になっているのは確かなのですが、ディティールには大小いまだ多くの課題があり、一つ一つ地道に解消することができるか、というフェーズだと感じます。と言いつつ、降格4枠のシーズンで悠長なことは言っていられないのですが。
  • また、「まだ6節」ですが、今後も各チーム似たようなやり方が予想されます。ブログを書く身としては色々端折れるので楽ですが、GKが誰だろうと共通のウィークポイントは見えているので(菅野だと、サイドを制圧された後のクロスボール攻撃でもっと深刻な状況も予想されます)、中断期間で何等か対策をしてほしいところです。それでは皆さん、めげずにまた会う日までごきげんよう!

4 件のコメント:

  1. いつも拝見しております。
    サポーターとしては、非常にショックな敗戦でした。過密日程、選手層が薄い(ミシャの信頼がない)、ということを考えれば、戦術を再考する時期にきているのではないでしょうか?縦に早い小柏、コートの広い範囲を無尽蔵のスタミナでカバーする荒野といった、ピースがいなければ、この戦術を貫徹するのは無理な気がします。原則は、今の戦術でいいのかもしれませんが、時には勝ち点を確実に拾っていく現実的な戦い方も必要かと思います。頑固に今のやり方に固執するようであれば、降格が現実性を帯びてくる気がして、不安でなりません。

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    1. 大局的、中長期的に見ると、ジェイ及びクロスボール主体のフィニッシュからの脱却だったり、前線守備の強化だったり意義があることに取り組んでいるのは確かだと思いますが、やり方が個人能力に依る部分が大きいので、そうなると強化費相応~それ以下の順位に落ち着いていくなという印象ですね。

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  2. いつも拝読しています。


    対人守備能力が高い岡村、柳を最終ラインに入れて宮澤や田中を中盤で起用するのは逃げ切りプランとしてアリでしょうか。

    もしくは、ジェイ(ガブリエル)のようなターゲットを前線において5-4-1で守備ブロックを敷くやり方も状況によってはできるようにしておくとかが解決策なのかなと。

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    1. 現状だと放り込んでくる相手に岡村はありかもしれませんね。1-5-4-1にするのは、やろうと思えばいつでもできるけど、それだと未来がないからやらないし、結局それも枚数だけ置いておけば守れるとは限らないので難しいですね。
      それこそ、かつての松本山雅なんかそうですが、相手が攻めてくる状況では良いとして、1点取られるとかなり厳しい戦いしかできないチームだったと思います。1-5-4-1的なサッカーに慣れてしまうと色々なものを失う印象があります。
      そう考えると、最終ラインに強い選手を置いて逃げ切り、も、本当に跳ね返すだけならそれでいいけど、ラスト20分ずっと防戦一方ってそもそもきついですよ?ってのも頭に入れないといけないですね。

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