2016年2月29日月曜日

2016年2月28日(日)13:00 明治安田生命J2リーグ第1節 東京ヴェルディvs北海道コンサドーレ札幌 ~簡単には変わらない変えられない~

スターティングメンバー

 北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-1-2、GKク ソンユン、DF進藤亮佑、河合竜二、増川隆洋、MFマセード、宮澤裕樹、稲本潤一、石井謙伍、小野伸二、FW都倉賢、ジュリーニョ。サブメンバーはGK金山隼樹、DF櫛引一紀、上原慎也、MF堀米悠斗、上里一将、前寛之、FW内村圭宏。昨シーズンから継続の3-4-1-2で、キャンプからの起用法通りジュリーニョがFWに入る。昨シーズンからの泣き所だった右ストッパーには進藤が抜擢された一方、福森のベンチ外がサプライズで、理由はよくわからない。左サイドで考えられていたジュリーニョが早々とFWにコンバート…というと聞こえが良いが、"サイド失格"の烙印を押されてFWに回ったこと、期待のヘイスや荒野の出遅れは誤算だが、概ね四方田監督が考えるベストな人選がされているように思える。
 東京ヴェルディ1969のスターティングメンバーは4-2-3-1、GK柴崎貴広、DF安西幸輝、井林章、ウェズレイ、安在和樹、MF船山祐二、高木純平、澤井直人、杉本竜士、高木善朗、FWドウグラスヴィエイラ。サブメンバーはGK太田岳志、DF平智広、MF中野雅臣、井上潮音、田村直也、アラン ピニェイロ、平本一樹。

※この記事は第6節町田戦の後に作成しました。


◆2015シーズンのおさらい


 2015年7月にバルバリッチ前監督の後を継いで就任した四方田監督は、「(健康な状態である限りは)小野伸二を中心に据える」というクラブの基本方針が反映された人事である。
 長年指導してきたU-18では4-4-2を採用していたにも関わらず、トップチームの監督となってからはトップ下を置く3-4-1-2を基本布陣としてきたのもそのためで、四方田監督の続投が決まった2016シーズン開幕前の編成にも、3-4-1-2を前提とした編成がされている。具体的には、アウトサイドに独力で仕事ができる選手(マセード、ジュリーニョ)、都倉と組むFWの候補としてヘイス、の3名を補強している。また3-4-1-2では適正ポジションがない古田寛幸や小山内貴哉を放出している。
 昨年、バルバリッチを解任した際の野々村芳和社長のコメントとして、「クオリティのある選手を活かせなかった」というコメントがあった。これは具体的には、小野伸二、砂川誠、ナザリト、前田俊介らを指していたようだが、後者2名はシーズンオフにクラブから契約非更新を通知され退団してしまった。また野々村社長の言う「クオリティ」とはいまいち定義がよくわからないが、同氏は「相手を圧倒して勝つサッカー」という表現をたびたび用いている。

1.前半の展開

1.1 僕達の現在地の再確認

1)普通のビルドアップができるヴェルディ


 10分頃から徐々に見えてきたヴェルディのビルドアップの形は、ボランチの1枚、主に高木純平を最終ラインに落として3バック化した形。これに対する札幌の守備とのマッチアップを見ると、札幌は5-2-3、前3枚なのでヴェルディの最終ラインと同数、これだけでは特段ヴェルディが優位ということにはならないが、DF3枚の両端…井林とウェズレイがサイドに開いた位置をとり、サイドバックと近い距離を確保することができるので、特に利き足サイドでプレーすることになる右の井林→安在幸輝のラインから安定的にボールを前進させていく。
 また後述するが、札幌の前3枚(都倉-小野-ジュリーニョ)の守備は壊滅的で、ヴェルディの最終ライン(井林-高木-ウェズレイ)は実質ノープレッシャー。札幌の緩すぎる対応に気が付いた井林は、安在幸輝へのパスによる組み立てだけでなく、徐々にドリブルも使ったビルドアップを展開するようになる。
CB→サイドバックのコースでのきわめて普遍的なビルドアップ

 という具合で、ヴェルディのビルドアップはやっていることもクオリティも「いたって普通」。抜群にクオリティがあって札幌の守備陣がパニックに陥るというものではない。ただ何度も書くが、この試合の札幌の前線守備というものは実質殆ど存在しないようなものなので、普通のビルドアップ能力があるという点だけである程度はゲームをコントロールすることに成功している。

2)札幌の既視感のある光景:普通のことがやれない・できない札幌


 一方、札幌がボールを持った時の展開について。端的に言うと、この試合の大半の時間帯は「河合が持つ、縦ポン、以上」。これ以上の言及が難しい。
 この試合、札幌はボールを保持すると、とにかく前線の選手、主に都倉へのロングパスを蹴り続けることを前半の15分を過ぎても続ける。都倉の他、184センチのジュリーニョが前線で競るが、ヴェルディの井林とウェズレイの体を張った守りもあり、跳ね返され続ける。
 さらにこのとき、河合や増川が蹴っている状態は、ヴェルディの前線の杉本やドゥグラスヴィエイラにプレッシャーを受けて苦し紛れに蹴りだしたような状態が多いので、札幌の中盤の選手はポジションを上げ切れていない。そのため都倉やジュリーニョが競り勝っても、セカンドボールを拾う選手が小野しかおらず、ボール周辺のデュエルではヴェルディに対してきわめて不利な状況が散見されている。スカパー!中継で解説を務めた川勝良一氏は、前半15分頃に「札幌は見たところビルドアップが得意ではなさそう」とオブラートな表現で言及したが、恐らくこの発言はこうしたチグハグさを踏まえての感想だと思われる。
ポジションを整える前に蹴らされてしまう

<主導権の放棄?>


 一応、整理しておくと、ロングパスを多用するチームというのは理由はいくつか考えられる。
 ①前線に強い選手(都倉)がいるのでストロングポイントを活かしたい、②ヴェルディの最終ラインを下げて中盤にスペースを作りたい、③繋いで中盤で奪われてヴェルディのカウンターを受けるリスクを回避したい、④単に後ろから繋いで運ぶ技術やメカニズムがない、等であるが、この試合を最後まで見た上での結論としては、恐らく②③はあまり考えていなさそうな試合展開だった。
 なお、札幌がJ2・3位でJ1昇格を果たした2011年シーズンも非常にロングボールが多かったが、石崎信弘監督は上記のうち、特に③を意識していたと思う。是非はともかく前半は試合を殺して、後半に内村と近藤祐介のカウンターで仕留めるという必勝パターンが確立されていた。

 ともかく重要なのは、通常サッカーはボールを保持しているチームが有利で、言い換えればゲームの主導権を握ることができるのだが、札幌はせっかくボールを保持しても河合らが前線の都倉をめがけて精度の低いロングフィード…都倉が競り勝って収める確率は、見たところ半分以下…というギャンブルに終始する。狙いを持ってトライした結果勝率が低い、ならまだわかるが、そもそも主導権を自ら放棄していて、攻撃の際に何がしたいのかわからないと評するのが妥当な展開である。

 そして跳ね返されたボールを拾うことが多いのは主にヴェルディで、間延びした札幌のFW-MFのエリア間で安定してボールを繋ぐ。特にWBまでボールを運ぶと札幌のボランチがサイドにスライドし、逆サイドが空くのでサイドチェンジが効果的。また前線のドウグラスヴィエイラがスペースに顔を出してボールを収め、2列目以降の若い選手たちの攻撃参加を促していく。

1.2 攻撃の始まりは最後方から


 作戦としてはロングフィードを中心に攻撃を組み立てるというやり方自体はある、ただ、札幌の場合、河合がフィードを蹴る時、札幌の中盤の3枚のうち、宮澤と稲本はビルドアップを補助するために最終ラインに近い位置にいる。
 しかも札幌の場合、ロングパスの発射台である河合が低い位置でボールを保持して、前に運ばないうちに前線に蹴る傾向が強いので、補助する宮澤と稲本の位置も下がり、スタート位置がセカンドボールが転がってくるエリアからどんどん遠ざかってしまう。特に36歳の稲本には、広大な中盤のスペースでセカンドボールを巡るアップダウンが頻発する展開は厳しい。

 河合のプレーに対する不満は、相手がどのような状況だろうと簡単に蹴りだしてしまう点。例えば李国秀氏は「相手が来なければドリブル、相手が来たらパスでかわす」がサッカーの基本だとしているが、河合のプレーは基本的にロングボール一辺倒で、相手が積極的に守備を行っておらず、運べる状態…河合単独でなくとも、札幌が3バックから作れるミスマッチを使ってチームとして運べる状態であってもとにかく蹴ってしまうことが多い。

 この河合が下がってしまう、簡単に蹴ってしまう問題は河合が加入した2011年シーズンから顕在化しており、戦術というより、河合を最終ラインの軸にせざるを得ない編成の問題である。個人的にはオフに河合と競えるDFの獲得、又はプレシーズンの選手コンバート等を期待していたが、実現しておらず根本的な問題は解決されていない。
上:稲本が最終ラインに入りバックステップでボールを貰える位置に行く
下:しかし河合は縦に蹴る以外の選択肢がない、近くの選手を使って食いつかせたりもしない

1.3 守備の始まりは最前方から

1)四方田札幌の守備のイメージ


 札幌の守備の形は5-2-3でセットし、最前線は都倉、ジュリーニョに加えてトップ下の小野の3人で守備ラインを構成する。この5-2-3の形は、昨シーズン途中に解任されたばる場立地監督の後を継いで就任した四方田監督が、2015シーズンの残りの試合と2016年のプレシーズンの期間で研究してたどり着いた形。
 両監督の守備戦術の違いについて補足すると、両監督とも守備開始時は基本的に5-2-3でセットするが、コンセプトや運用が異なる。

<バルバリッチの5-2-3:J2スタンダードな5-4-1>


 バルバリッチは、「3」の両サイドにある程度、アップダウンができる選手(内村、ニウド、古田、荒野、中原etc)を配置した5-2-3で、「3」の選手によるハイプレスも使うが、守備の肝は「3」の両サイドを下げて中盤を4枚、ゴール前に5-4のブロックを築く5-4-1への変形にある。この5-4-1という形はJリーグではサンフレッチェ広島がパイオニアで、多くの人数を守備に割き、ゴール前を固めて攻撃を跳ね返すやり方は、Jリーグではそれなりに有効であるとして、主に「勝ち点1で良し」とするJ2中位~下位のチームに広く浸透している。昨シーズンから今シーズンにかけても愛媛や岡山、長崎といったチームが採用していて、いずれもよく言えば手堅い、反面破壊力はさほどないサッカーという印象がある。
 ただこの5-4-1にも問題点がいくつかある。端的には、①最前線の守備が1トップの1枚だけなので1トップ脇を使われてボールを運ばれやすい(→フリーの状態で前を向いたまま前進され、ずるずる下がってしまう)、②ボールを回収する位置が低くなり、かつ前に1トップしかいないので、攻撃に転じることが難しい、という2点に集約される。 
 個人的には、恐らく「3」のサイドに"cavallo"ダヴィのようなフィジカルの強さ、推進力もあり献身的な選手、また1トップに優秀なポストプレイヤーが必須の戦術で、バルバリッチ政権の最大の問題点は、これらの能力があるタレントを確保できなかったことだと考える。また、同様にそうしたタレントの確保が難しいJ2のいくつかのチームは、5-4-1で勝てない時期を経て5-3-2等の別のシステムに移行している例もみられる。
バルバリッチの5-2-3→5-4-1

<四方田式5-2-3:前線の選手のキャラクターから算出した守備の妥協点>


 昨シーズンからなんとなくの形は見えていたが、四方田監督の5-2-3は、守勢に回った際に「3」の両端を後方に下げない、言わば純粋な5-2-3。攻め込まれた際は、5バックとボランチ2枚の5-2で守ることになるが、現代サッカーにおいてこの計7枚で作る守備ブロックというのは、明らかに守備の枚数が足りないと言ってよい。特に「ピッチの横幅を守るには4枚では不十分」と考えられている中で、中盤を2枚で守るチームというのはほぼ絶滅しかけている、ある意味で非常にクラシカルな、四方田監督の「3-4-1-2・小野王様システム」は2015年に誕生した。
後方は5-2、明らかに人数が足りない

ではなぜ四方田監督は一貫して5-2-3なのかというと、それはチーム編成上、小野、都倉、ヘイスといった選手を抱えていて、これらの選手を起用することから逆算すると、「トップ下の王様・小野」+「9番タイプのFW」*2枚という組み合わせしかないため。
 こうしたキャラクター(王様トップ下、9番タイプのFW)の選手は、基本的に守備時に中盤まで下がるということはしない。稀に非常に献身的で守備能力が高い選手…デルベッキオのような選手もいるが、下がったところで、攻撃時に必要な場所にいることができない、という本末転倒な状況にもなりかねないので、基本的には後方のブロックに参加する役割は与えられない。
 ただ、そうした"前での仕事に専念"という選手の数は、モダン化するサッカーにおいて、ピッチの11人の中からどんどん減っていった…0トップという布陣も誕生しているのが近年の流れである。
 戦術の研究が進み、攻守両面で前に張る選手というのはせいぜい2人、となれば、前に張る選手を3人用意した、2トップ+トップ下という構成のチームは近年は殆ど見られなくなっている。

 また、四方田監督としてはおそらく、5-2の7人ブロックという明らかに足りていない人数を確保するため、前線の3枚以外に守備が計算できる、運動量のある選手を使うという考え方があると思われる。代表的な選手は石井で、技術的にはサイドアタッカーとして抜群に光るものはないと思うが、その運動量やアップダウンを90分間続ける体力は他のサイドの候補…堀米らよりも上だという判断で先発起用されていると思われる。

2)札幌の棒立ちなんちゃって守備


 前置きが長くなったが、札幌の5-2-3守備によってピッチ上で何が生じているかをみていく。
 ヴェルディの攻撃が始まったとき、札幌の守備は基本的に最前線の中央に配されている小野から始まる。小野を中心とする3トップの仕事は、ゴールへの最短距離…すなわち中央のパスコースを切りつつヴェルディの攻撃をサイドに迂回させること。
 が、下の写真を見てもわかるように、中央からの縦パスこそ切れているが、それがサイドに迂回された後に全くプレッシャーがかかっていないため、パスを受けた井林は悠々とドリブルでハーフウェーラインを越えることに成功している。
ヴェルディのボール周辺へのプレッシャーが弱い

 個々の選手の対応を見ると、小野は高木純平に対してやや距離があるものの、最低限の仕事はこなしている。一方都倉からの井林へのプレッシャーはほぼゼロ。 プロレベルでこれだけ自由にさせれば、一定の質のパスが供給されるのは必然で、またこれだけボールホルダーに前を向かせてフリーな状況を作ってしまうと、1本のパスで裏を取られて失点、ということを防ぐため、最終ラインは裏をケアしなくてはならず、必然とDFラインが下がる。
 この時は井林からゴール前に張るドウグラスヴィエイラへフィード。
小野がスイッチを入れないため都倉は当たれず仕方なく下がる
井林はまだドリブルで運べる。稲本と宮澤はこの位置にいる

 ドウグラスヴィエイラへの対応に稲本、宮澤が戻るが、札幌はラインが下がっていることもあり潰しきれず、ヴェルディの二次攻撃にジュリーニョ、都倉も戻って対応する羽目になる。
ノープレッシャーの井林からドウグラスヴィエイラに完璧なパス
稲本と宮澤がプレシバックして挟みに戻る

1.4 札幌の戦術ミス?なぜ都倉はSB化したのか

1)ありふれた戦法に対する準備不足?


 では、なぜ都倉は攻撃参加する井林を放置していたのかを考える。
 結論としては、恐らく札幌は都倉とジュリーニョに、守備時にサイドバックをケアする仕事を与えられていたと思われる。これはある意味でマンマーク的…ゾーンを守るのではなく、サイドバックを基準として安在兄弟をケアし、攻撃参加した際にはまるでサイドハーフのように着いていくという役割があったと予想する。図で表すとマッチアップは以下のように、ヴェルディの4バックに対して3人で対応するという考え方で、これ自体はおかしくない。
札幌が恐らく当初想定していたマッチアップ
サイドバックにはFWの両端の選手がついていく

 しかし先に述べたように、前半途中からヴェルディはボランチを落とし、3バックに変形した形でのビルドアップを行う。すると両CBの井林とウェズレイが横に開き、安在兄弟はポジションを上げ、下の図のような陣形になるのだが、安在兄弟は都倉とジュリーニョの視界の外に移動し、代わって井林とウェズレイがそれぞれ現れる。
井林とウェズレイが安西兄弟を押し上げる
CBとSBどちらを見るべきか?

 都倉としては①井林に付くと安在をフリーにしてしまう、②安在についていくと井林はどうする?という判断を強いられる。そして都倉の選択は後者で、当初のプラン通りに安在についていったことで生じた結果が、先の写真、井林がフリーでドウグラスヴィエイラにロングフィードを通したプレーだったのである。
CBは捨ててSBへのマークを選択

 ただ、この形は先に述べたように、現代サッカーで行われている極めてベーシックなビルドアップの形であり、「4バックから3バックにしたので混乱して相手CBをどフリーにしてしまった」というのはあまりにお粗末で、この程度の展開は予測し、対策を講じておくのはマストである。

2)織り込み済みだったのか?~SB化する都倉~


 もしくは、四方田監督はヴェルディの3バック化に対策を講じられなかったのではなく、わかっていて都倉をサイドバックに付かせ、井林を放置したという可能性もある。
 そうであれば、先にバルバリッチの5-4-1と四方田監督の5-2-3の違い(四方田式はFWを攻撃に専念させる)を説明したが、恐らく守備の問題を解決するために、この開幕戦では実は四方田監督は昨シーズンからのマイナーチェンジとして都倉やジュリーニョの守備参加を仕込んでいたということになる。事実、この試合で何度か都倉やジュリーニョがサイドの深い位置まで下がり、守備ブロックに吸収される状況がみられており、後半になっても特に修正されていない以上、チームプランとして織り込み済みだったのかもしれない。
ノープレッシャーのボランチ船山から左SB安在和樹へ展開

 ただ、仮に都倉やジュリーニョにこうした仕事を与えているということならば、それはバルバリッチがニウドや古田を使ってサイドをアップダウンさせていたのとほぼ同じ。体力自慢のニウドにやらせるのであればともかく、点を取るのが役割の都倉にこうした仕事をさせれば当然、守備で体力を使い切って疲弊してしまう。
ジュリーニョは着いていくだけ、ここもヴェルディは中央経由で手薄な逆サイドにサイドチェンジ

<もはや2トップの体を成していない>


 ともかく意図的であるにせよそうでないにせよ、札幌はヴェルディのセンターバックを放置しており、ここからヴェルディが安定的にボールを前進させることができる構図が常にあるので、時間が経過するにつれ、札幌は守勢に回らされてしまう。すると都倉とジュリーニョの位置もどんどん低い位置まで下がっていき、2トップの3-4-1-2システムというよりは、小野1トップで都倉とジュリーニョはサイドハーフのようなポジションをとる時間が多くなる。
 この有様ではたとえボールを回収したとして、効果的に攻撃を繰り出すことも困難になる。
都倉もここまで戻る羽目になる

2.後半の展開

2.1 替えがきかないのは福森


 ベンチ外の福森については試合後に様々な憶測が飛び交った。真相はわからないが、この試合で左CBに入った増川の出来は福森不在の穴を感じさせた。
 増川は経験も技術もある選手だが、右利きなので、アウトサイドの石井へのパスコースを切られやすい。加えて不慣れな左CBの位置で起用され、味方との距離が遠い状況では、単純にロングボールを蹴り込むくらいしか選択肢が残らない。
 一方、福森はナチュラルな左利きなので左足でボールを保持でき、相手の寄せが甘ければ高精度なパスを供給できる。また味方(主にボランチ)が近くにいる状況では壁パスなどで巧く見方を使って攻撃参加もできる。こうした能力があるので、河合も福森にボールを預けられ、また中盤~前線の選手も福森が持つと必ず次の展開を予期して動き出す。ボランチの1枚を最終ラインに落とし、福森を相手守備がケアしにくい位置に移動させての展開する形は、"福森ロール"とも言うべき、他の選手で代替できない仕事である。
 福森は守備面では一般的なCBよりも貢献度が低いかもしれないが、それを補って余りある攻撃での貢献、オプションを札幌にもたらしている。また5バックで撤退すればCBとしての守備能力はある程度補えるということは、2015年シーズンにもある程度実証されている。


2.2 収まるドゥグラスヴィエイラとサポートの質量


 この試合はヴェルディもロングボールをよく使っていたが、狙いがよく見えず成功率の低い札幌のそれと比べるとはるかに効果的な使い方をしており、特に札幌にとって問題を突きつけることになっていたのが、サイドに流れるドゥグラスヴィエイラの動きとセットでのロングフィード。
 札幌が攻撃に出て、後方に3バックを残した陣形になると、3バックの脇、守備時にウイングバックがカバーしているポジションが空く。ここに2トップ、主にドゥグラスヴィエイラがヴェルディから見て右サイド、増川のところに流れてキープするが、増川とドゥグラスヴィエイラという単体の勝負ではほぼ互角であっても、4-4-2でバランスの良い陣形をキープしているヴェルディは、3-4-1-2でサイドをカバーできる選手が限定的である札幌よりもサポートが速い。この増川×ドゥグラスヴィエイラのバトルが発生している陣地であれば、ヴェルディはサイドハーフの澤井、ボランチの高木純平、サイドバックの安西幸輝らが絡んでいくことが可能だが、札幌はサイドに1人、ウイングバックの石井しかいない。
札幌3バックの脇をうまく使ってボールを前進させる

2.3 組織的守備の機能不全と、破綻寸前で食いとどめる個人の頑張り


 ヴェルディは後半も継続的に、サイドバックを利用し、札幌の5-2-3ブロックのFWの脇からボールを運んでいく。前半は都倉やジュリーニョがこのボールの動きに何とか食らいつくことで耐えていた札幌だが、後半途中からジュリーニョや小野はサイドバックについていくことが困難になる。
 すると、下の図のようにサイドバックに対峙するのは、ウイングバックの位置から一列上がって対応する石井。ただ石井はもともとサイドハーフの澤井を見る仕事があり、安西幸輝をチェックすると澤井が空いてしまう(増川がスライドして対応する)。しかし石井は驚異的な運動量でサイドをアップダウンし、増川が澤井を食い止めている間にプレスバックして澤井を挟み込むことで、ヴェルディのサイド突破を封じる。
 また札幌がサイドを突かれると、ボランチがスライドするので中盤の逆サイドには誰もいなくなってしまうが、ここは最前線から都倉が戻ってきてスペースを埋めている。このように札幌の守備戦術はほぼ機能不全に陥っていたが、石井や都倉といった特定の選手の頑張りで何とか持ちこたえている状況にある。
石井や都倉の頑張りで破綻を回避

2.4 失点シーンについて


 73分、札幌は内村(65分に小野と交代)がルーズボールをキープするとジュリーニョがハーフウェーラインからドリブル、ヴェルディは両CBが飛び出しており守備組織が整っていない。札幌はチャンスと見て2トップ+トップ下のジュリーニョ、宮澤、ワイドのマセードと石井に加え進藤も攻撃参加する。
7人での攻撃参加、画面外から石井も攻め上がる

 右のマセードに展開するとマセードはクロス、宮澤が落としたところに進藤がシュートするがDFのブロックに遭い、こぼれ球を中盤に残っていた高木善朗に繋がれ、稲本が高木善朗に寄せるが、潰しきれず右のアランピニェイロへ。この時点でヴェルディはドウグラスヴィエイラとアランピニェイロ、札幌は増川と河合の2対2になる。増川はアランピニェイロにズルズルと着いていくだけでゴール前への侵入を許す。ここでようやく河合がボールにアタックに出るがアランピニェイロはものともせずゴール。
2対2、必死に戻るマセード

 この時、写真を見てもわかる通り、河合と増川が全くカバーリングポジションをとれておらず、増川vsアランピニェイロ、河合vsドウグラスヴィエイラというマンマークの構図が2つ出来上がっている。ただそれ以上に問題なのは直前のシーンで、無秩序に7人が攻め上がり進藤のシュートがブロックされたことで、カウンターを止められる組織を全く後ろに残せていない点である。

 この場面以外にも、この試合の札幌は終始、後ろで蹴ってから前線まで長い距離を走って拾って、という繰り返しでほとんど皆無と言っていいほどで(主に進藤の攻撃参加で後ろが足りなくなっている)、相手に広大なカウンターのスペースを与えている。
51:19、左サイドに展開、増川がサポートに上がっていく

宮澤からのクロスは跳ね返される。進藤も上がっていたので
後ろには河合と稲本のみ。
稲本はこの競り合いでドウグラスヴィエイラを倒してイエローカード

内村がロングボールに反応しドリブルで運ぶ

中盤から前は全員でバランス無視の攻撃参加
横パスがカットされる
ヴェルディの前には広大なスペースと3バック

東京ヴェルディ 1-0 北海道コンサドーレ札幌
・75分:アラン ピニェイロ


3.雑感


 2015シーズンのダイジェストのような試合で、開幕戦特有の堅さや膠着を考慮しても、前年のシーズンの懸念や問題点がほぼそのまま残っていたのは、失望よりもむしろ意外にすら感じた。選手起用の制約から3トップにせざるを得ない⇒3トップなのに前から守備できない、最終ラインが攻守両面で低すぎて間延びする、の2つの問題について、手っ取り早いのは選手を入れ替えることだが、四方田監督がいつ踏み切れるか。

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