2025年12月23日火曜日

北海道コンサドーレ札幌の2025シーズン(6) 〜「強化」というより「人事」?〜

  • 中盤センターから後ろのポジションについて書いています。なお今更ですが基本的には敬称略です。執筆中に前監督:柴田監督、現監督:川井監督、元監督:岩政監督となるなど変化がありましたがめんどいので記載は直しません。


5.3 中盤センター

<総評>

  • 開幕時のラインナップとしては、前のシーズンから契約が残っていたとされる荒野、馬場、大﨑、契約延長をした宮澤に、新加入の高嶺、他のポジションと兼務の田中克幸と木戸。
  • 岩政前監督がたびたび言及していた「ポケットを取る攻撃」だったり、全体としてのコンセプトとして「攻守共に圧倒する」だったりには、ポケットに何度も走ったり、前線からプレッシングを仕掛けたり、プレッシングが剥がされたときに全力でプレスバック、ボールを持っているときにはポジションを変えながら相手のプレッシングを剥がしていく…といった具合に運動量というか走力が全般に必要でしたが、まずコンサの選手を並べると、中盤にそうした走力がありそうな選手が高嶺以外は見当たらないことは開幕前からの不安材料でした。
  • かつては動けるイメージのあった荒野も大怪我からトップフォームに戻らないまま30歳を過ぎており、他は宮澤、大﨑の大ベテランと復活を目指す深井、そしてフィジカル的にはまだ途上と思われる本来2列目の田中克幸と木戸。馬場は思った以上に頑張っていましたが負傷で離脱し、夏のマーケットで移籍してしまいます。

  • 24シーズンオフに「青木、駒井、菅のうち1人は残せる程度の財務状況」だったとするなら青木を選んだ考えは理解できます。
  • 財務状況に加え、新監督の下でチームを刷新する時にリーダーシップが強いというか強すぎる選手を外すという観点でも駒井の放出は理解できますし賛成でしたが、今となっては岩政前監督の掲げるプレーを実践するには、駒井本人ではなくとも、彼のようなフィジカル面で秀でる選手があと1人か2人いれば…と感じました。

  • あとは書いてみて思ったのですが、評価のフレームワークとして、「各局面でどのような仕事がどの程度できるか?」という考え方が、中盤の選手には特に有効かと考えています。
  1. 自陣でのボール保持(≒ビルドアップ)
  2. 敵陣でのボール保持(≒崩し)
  3. トランジション
  4. 敵陣でのボール非保持(≒ハイプレス)
  5. 自陣でのボール非保持(≒ブロック守備)
  6. セットプレー

6 高嶺 朋樹

35試合、3,115分出場(うち先発0)、10ゴール、3アシスト
  • フットボールの各局面…
  1. 自陣でのボール保持(≒ビルドアップ)
  2. 敵陣でのボール保持(≒崩し)
  3. トランジション
  4. 敵陣でのボール非保持(≒ハイプレス)
  5. 自陣でのボール非保持(≒ブロック守備)
  6. セットプレー
  • があるとして、その全てで中盤センターの選手として何らか仕事ができるというだけでなく、その質がリーグの中でも明らかに質が異なる。
  • 特にダイナミックスキル(動きながらボールを扱うスキル)に優れているため、自陣でボールを持っている時のプレーで高嶺にボールを押し付けられても、はめてくる相手を回避して逆にチャンスになったり、相手ゴール前で(本来シャドーやサイドアタッカーがやるべきですが)仕掛けから決定機を作ったりと、中盤センターで固定されてからは岩政、柴田両監督とも高嶺の個人能力にかなり依存していたところがありました。

  • 「全てすごかった」で済むのであまり特筆事項がないのですが、一応書くとするならSB起用が結構ハマっていました。
  • 寄せるのが上手く、1v1でボールを奪う技術はピッチの中央でもサイドでも、MFでもSBでもこのカテゴリでは別格でしたが、常に少ない人数で守備対応している岩政前監督のコンサにおいては、中盤センターだとカバーするスペースが広すぎて1人ではどれだけ能力があっても難しいシチュエーションもしばしばあったことから、むしろサイドの方が明確な1v1の構図になりやすいことから、SBでの起用の方が向いているところもありました。
  • 「左SBのところに相手が入り込んで来て仕掛けてくる状況なら、絶対的にボールを奪える」シチュエーションがあることが確実にチームのストロングポイントになりえます。
  • また髙尾離脱時に起用された右SBも、相手にもよりますが後方の不安がない状況ならば、高嶺にボールを渡したいポジションとしては実は右SBに近い位置・役割が最も近接していることもあり、右利きの右SHしかいないコンサにとっては右サイドに配置できる貴重な左利きの崩し役にもなりました。

  • 総じてこのシーズンの貢献度は高く、左利きDFが総じて故障や不調など問題があった中で、中盤センターだけでなくSBとCBも務めた高嶺がいなかったら、このチームはどうなっていたでしょうか。と思わされました。クラブの財政状況を考えるとかなり思い切ったディールでしたが、移籍金5億円くらいでも全然元が取れるレベルの選手だと思います。

10 宮澤 裕樹

15試合、501分出場(うち先発4)、1ゴール、1アシスト
  • 6月に36歳を迎え、故障により深井のラストゲームでピッチから見送る機会も逸してしまうほどコンディションを整えることが難しくなっている。
  • ピッチに立てたとしても、私がこのチームを10年間記録してきて、「相手の速く力強いプレーをする選手に対しては宮澤の能力だと厳しい」等と明記したのがおそらく2019年のルヴァンカップ(vs広島)ではないかと思いますが、その「厳しい」と思った時からもう6年も経っていますので、J2のカテゴリでも「厳しい」状況も散見されました。

  • しかしそんな宮澤は、流石に動きの量と速さはかつてほどないとしても、このチームのMFの選手の中ではピッチに立てば高嶺に次ぐオールラウンダーでした。選手本人に対する評価としてはポジティブである反面、このシーズンの深刻な編成の問題を表している事象でもあるので簡単に喜ぶことはできません。

  • 「6局面」を意識して考えると、特にボール保持時に適切なタイミングでボックスに入っていき得点を狙うプレーを、他のタスクと並行してできることがMFの選手の中でも優れている。
  • 別の項目でも書きましたが、このシーズンのコンサはシャドーにゴール前でパワーを発揮できる(例えばクロスボールに飛び込んでシュートに持ち込んだり、相手DFと競り合って潰れたりできる)ほぼ見当たらず、ゴール前でFWの負荷が大きいため、3列目に宮澤のようなそうした仕事ができる選手が1人いるとこの問題が幾分か誤魔化せますし、また宮澤は常にゴール前に入るだけではなくてポケットに走ったり、バランスをとった方が良い時は後方待機したりと使い分けることができる。

  • また自陣でボールを持つプレーに関しては、後述しますが特に4バック時のCB家泉起用という前半戦の最大のボトルネックに対処した選手が宮澤、大﨑、荒野…だとして、なるべく家泉に仕事をさせようと我慢する宮澤のスタイルが私は一番好きでした(正解とか効果的とまでは言い切れませんが)。

25 大﨑 玲央

157試合、583分出場(うち先発6)、0ゴール、0アシスト
  • 宮澤がオールラウンダーだとすると、大﨑はDFのすぐ前のアンカーが主戦場で自陣寄りの位置での貢献が大半になります。ロティーナ、リカルドロドリゲスといった監督の下でプレーした経験があり、おそらくこのチームでは数少ない「ミシャ(&四方田)以外のサッカーのフォーマットを知っている」、特にどうすればボールを前進させることができるか説明できる選手だと思います。
  • 前のシーズンはそのリーダーシップ、経験、メンタリティ、パーソナリティ、そしてプレースタイルなどほぼ全てが噛み合い、7月の加入直後に即座にチームを掌握し中盤戦以降の英雄となりましたが、2人の監督いずれもがよりアグレッシブかつスピードを要求するスタイルを指向するこのシーズンは、改めて1人の選手として見ると全てにおいてスピードや強度がなさすぎる、というのが率直な印象でした。
  • スピードや強度がないというのは、足が遅い、静止に近い状態から相手と対峙したときに1歩目が遅れてしまう、といったことに加え、連続したプレーが展開される中で1度何らかアクションをすると、大﨑は直後に休んでいるというかスローダウンしたり(この点はかつてのジェイや中島を見ても同じことを感じるのですが)、ボールを持った時のプレス耐性の無さゆえに中央から降りてきてボールを扱ってしまう、とかそういったことを指します。

  • 開幕直後にCB(3バックの中央)としては3試合目の45分で見切りをつけられましたが、これはそもそも大﨑が3バックの中央でスタメン級だったのは2020年頃まで遡る話ですので、本人のパフォーマンス以前にそもそもCBとしてカウントすることに無理があったのかと思います(ただ24シーズンのパフォーマンスは、岡村に助けられていたにせよ対人でも相当奮闘していたのでコンサのフロントが期待をする気持ちはわからなくもなりません)。

  • その後は4バック1-4-4-2の中盤センター(アンカー)のクローザーやバックアップという、かなり妥当な役割に配置転換されます。そして中盤に大﨑、CBに家泉が並ぶと、中央の重要なポジションで縦に並ぶこの2人が「知っており、実行できるフットボールのフォーマット」にかなりのギャップがあることが露呈されます。
  • 大﨑はコンサに来る以前に数年間スペインやドイツ出身の監督、その影響力が一定あるチームでプレーしていて、正しいポジションを取ってボールを動かしてゆっくり全員で敵陣に入っていきゲームをコントロールしましょうというスタイル。一方で家泉は簡単に言えば「いわきFCのフォーマット」。前に蹴ってセカンドボールを拾ってセットプレーなどでゴール前に大きい選手がなだれ込むというもの(このシーズンいわきの試合を見れば「あ〜確かにこれは家泉にぴったりだな」と思わされました)。
  • このギャップ自体は別にどちらが正解というわけではありません。家の家財道具をネイビーでシックにまとめるかピンクでかわいくするかのようなギャップかと思います。
  • 一方でこのチームにおいては、岩政前監督がどの方向でプレーモデルとして統一しようとしていたかを考えると、おそらく大﨑のスタイルの方が監督の指針には近かったでしょう。

  • そうしたこともあるし、またそもそもの2人のパーソナリティなどもあって、ボールを持っているときにアンカーの位置で待つ大﨑が家泉に逐次指示を出す光景が見られるようになります。
  • 大﨑が味方のポジショニングやボールを動かす方向について指示を出すのは前のシーズンにもありましたが、↑で大﨑の方がおそらく監督の考えには近い、としたものの、厳密には元々岩政前監督にはポジションを固定しすぎないという考え方もあったので、大﨑のイメージだとポジショニングがそれよりも固定されることにもなって、そこでのギャップも感じました。
  • そして家泉が大﨑のイメージ通りにボールを動かせないことが確認されると、大﨑がDFの位置まで下がってボールを引き取って本来DFがやる仕事を”代行”するようになります。これは前の記事でも書きましたが、本来アンカーが担う仕事が欠損することになりますし、大﨑が毎回下がってくるところから始まる、彼を経由するとなると冒頭に指摘した理由での遅さや強度、ダイナミックさのなさが問題になりました。

  • 宮澤も味方に指示出しはするのですが、宮澤の方がより家泉などCBの選手に本来の仕事をさせようとして、自分で仕事を引き取ることを極力避けているように見え、(それで本当に”わかっていない”選手ができるようになるとか成長するかは謎ですが)私もアプローチとしては宮澤の方が好みでした。

27 荒野 拓馬

24試合、1,343分出場(うち先発16)、2ゴール、0アシスト
  • 走力(スプリント能力)、運動量(スプリントを繰り返す能力)や足首の柔軟性(球際で相手と近接した際に切り返してマイボールにできる)といった運動能力に優れるMFだったのはもう5-6年前くらいの記憶でしょうか。
  • 現在の荒野のプレースタイルは中盤センターの選手としては大﨑のような、あまり中央から動かないアンカーに近いスタイルになっている。まずこの点がポジションチェンジやポケットへのラン、前線からのプレッシングを掲げていた岩政前監督とアンマッチ感がありますし、厳しい言い方をすればMFとして監督の要求水準に足りていなかったことが推察されます。
  • 実際、大﨑と組んだカップ戦のvs大分、柴田監督初陣のvs秋田では中盤に同じ特徴の選手が2人並ぶこととなり前方向にプレー(トライ)するのに、ものすごく手数がかかる印象でした。
  • 結果、岩政前監督が退任する25節までで先発出場は8試合にとどまります。前監督は試合に出られない選手へのケアの難しさを指摘していましたが、荒野(おそらく自己評価と自分ができるプレーと監督の評価にギャップがある)の扱いも難しかったことは想像に難くありません。

  • そして岩政前監督との契約解除直後にラジオ番組に出演し、荒野本人の認識を語っていましたが、その内容を意訳すると
  1. 出場機会も少なく監督から重要な戦力だと見做されていないと思っていた。
  2. 自分はbuild-upの際に「リズムを作ったり起点になる」プレーができると思っていたが監督には評価されなかった。「サッカー観の違い」を感じた。
  3. その他、ラジオの生放送では言えないことがある。
  • といった旨の話をしていました。
  • 感想としては、まずモダンフットボールにおいて、ボールを持った時に「リズム」が重要だする考え方はあまり主流ではないのではないでしょうか。
  • 相手ゴールから逆算するとしてどのようなシュートのシチュエーションを用意するか。そのためにどうやって敵陣に入り、相手ゴールに迫りつつ相手のカウンターやトランジションに備えるか。これらはリズムやイマジネーションというよりも、まず相手の出方や自分たちの特徴を考えてデザインされるものであり、それらが備わっていない、選手が理解していない時にいきなり「リズム」や「創造性」と言われるとチームとしてプレーすることは難しくなります。

  • 確かに、選手でいうと往年の中村俊輔や遠藤ヤットのような選手が「リズム」を生んでいると論じる解説者やライターもいるかもしれませんが、私の理解では彼らはリズム」という極めて抽象的かつ感覚的な話(サッカー以外の音楽などにおける「リズム」は感覚だけの話ではないのでしょうけど、日本サッカーにおける「リズム」はそれとは別でしょう)でプレーして違いを生み出していたというより、自身がボールを奪われない能力、前にボールを運べる(パスできる)能力を持っていて、かつその選択が、前にオープンで仕掛けられる選手がいたらパスするし、そうではないなら自分がキープするとか他のオープンな味方に渡すとか別の選択をとる。またその際に相手の読みや予測、戦術的な対応を頭に入れて、ゲーム理論みたいなものかもしれませんがあえてプレー選択の基準を変えたりする。
  • その上で彼らは荒野やコンサの選手と比べるとミスが少ない。技術的なミスも戦術的なミスも、プレーの基準が上がれば命取りになるとわかっているから、例えば無謀なタックルもなるべくしない。

  • こういう話を「リズム」としか論じられない人物がいるから、荒野もその影響を受けて「リズム」と言っているのかもしれませんし、そうではないのかもしれない。
  • ただ岩政前監督のチームにおける中央のMFへのタスクは明確でしたし、それができない選手が普通に競争に負けた、というのが私の認識です。そして柴田監督も、モダンフットボール的なコンセプトの持ち主であると思うので、正直なところ岩政前監督とそこまで中盤の選手に求める基準は変わらない
  • そこで選手が「サッカー観」と言って自分の考えを曲げず、アンラーニングできないと、そうした選手がスカッドの都合上試合のメンバー入りする状況だと、監督の仕事としてはかなり厳しくなるのは当然でしょう。

  • 長々と書きましたがもうちょい端的に書くと、今の(大怪我をした後の)荒野だと自陣と敵陣の両方で高強度のアクションを続けることは難しいでしょうし、また自陣でボールを持ってチームとして前進していきたい時に、その中心となる役割を担えそうには見えない(CBの近くでボールを触りたがるし、それが彼の考える「リズム」なのかもしれないが、前にボールを運んでいない)。
  • これを踏まえてサッカー観というより、荒野にできるプレーだったりその基準にチームが合わせることになると、果たしてそれはJ2でトップを狙うチームに相応しいか。「荒野とサッカー観が合う監督」でトップを目指せるか、そもそもそうした人物が実在するのかは謎です(コーチなども含む監督側がもっとコミュニケーションが上手く、かつそうしたミクロな作業に熱心で、サッカー観が合うと錯覚させることは可能かもしませんが)。


  • …といった文章で締めようと思いましたがシーズン終盤にまた状況が変わります。
  • 柴田監督体制でマンツーマンベースでのプレッシング路線に回帰し、前線の選手(主に外国籍選手)の戦術へのフィット不足という、近年のコンサであるあるな状況に直面すると、前線でのハードワーカーとして荒野がFWまたはシャドーで起用されます。
  • 大敗した35節(vsジェフ)ではFWとして先発出場しましたが、前線で荒野1人で2人を見るプレッシングをして、回避されたら自陣に戻ってきて、カウンターのチャンスで前線に飛び出して、ロングボールのターゲットとしてファウルに気をつけながら味方のために身体を張って…といった働きを見ると、結局この選手は本来こうした前の仕事の方が好きだし、やりたいと思っているのかな?と思わされました。

88 馬場 晴也 ※6月に柏レイソルに完全移籍

9試合、633分出場(うち先発8)0ゴール、0アシスト
  • ポジションチェンジを多用し、「ポケットを取る攻撃」をしたいとする岩政前監督の就任によって、中盤の後ろめの選手の中では最も若い(というか、他が高嶺、荒野、宮澤、大﨑、深井と、”後ろめ”かは微妙な木戸や田中克幸が候補者だとすると機動性ありそうな選手が少なすぎる)馬場への期待は大きく、特にシーズン序盤戦はBox to Box、もしくはBox to ポケットとして、昨年までよりもより果敢な攻撃参加を見せていて飛躍を感じさせるところがありましたし、このチームで変わろうとしている姿勢を最も早期に見せてくれた選手の1人でした。
  • しかし元々そこまでクイックでスピードのある選手ではない(と見える)ので、 高嶺にも言えますが開幕当初のコンサの適当な1stディフェンスが無力化されて、広大なスペースを中盤センターとCBで管理することを強いられたり、敵陣高い位置からプレッシングを仕掛けるとしつつその形も整理されていない中で、広く守るのが苦手そうな馬場では限界を感じるところもありましたし、そういう時に一か八かのスライディングを選択してしまうところも健在でした。

  • ですので柏への移籍については、冒頭に書いた変化の兆しや、高嶺の負担が増すとの観点では痛かったり惜しかったりはするのですが、本質的に岩政監督の目指すスタイルに向いているかというと微妙なところもありました。柏から更に選手の目指すところに飛躍を心から祈るところです。

5.4 サイドバック

<総評>

  • 4バックのシステムを念頭に置いたときに、左はパクミンギュと岡田、(他のポジションでのカウントに含まれてSBからは外れて欲しいところですが)中村桐耶と、とりあえず頭数は確保したものの、右はどうカウントしても髙尾1人のみ。ですので4バックの採用は開幕時のスカッドからは現実的ではない状況でしたが、諸々の状況により前半戦は4バックがメインとなったことはご存知の通りです。
  • トレーニングでは、私が見た時は田中宏武や原がSBとしてカウントされたり、紅白戦ではカンを頭数に入れたりしていましたが、いずれも実戦級ではなく髙尾が起用できない時は高嶺を回すなど、ここも”競争”とは程遠い編成でした。

  • この頭数の問題とは別に、このポジションの選手に共通してみられた傾向は、①低い位置でボールを持ったときに選択肢をあまり持てないタイプというか、相手のプレッシングを剥がすフェーズにおいて自分がボールを持ってパスなどで解決するというよりは、味方にボールを預けてフリーランするタイプの選手が多い(雑に言えばビルドアップであまり貢献できない)、②放り込まれたボールを跳ね返すプレーや絞ってのマーキングがあまり得意ではなく3バックでの左右のDFとして心許ない、といった点が挙げられるでしょうか。
  • 上記の①に関しては、特に自陣でCB→SBとボールが預けられたときにコンサはSBから中央方向、SBの視点では斜め前方向に選択肢を持っていないことが多く、SBは縦にしか出せずそこを狙われて簡単に詰まってしまう場面が多くみられました。

  • これはCBの選手のボールの持ち方や配球能力の問題も大いにあるのですが、CBにせよSBにせよ、ボールを保持するスタイルのフットボールをやりたいと言っている割にはそれが得意そうな選手が不足していて、コンサのそうした選手を集める役割の部門の仕事は”強化”というよりも企業の人事部の新卒採用のように、「とりあえず頭数だけは30人程度選手を確保しました!」というような仕事をやっているのかな?と感じるところはあります。
  • コンサの場合、こうしてプレーモデルが明確ではない、もしくは構築・検討できておらず、これから着手するにしてもしばらく時間を要するのは仕方ないとして、最低限システムが3バックベースなのか4バックベースなのかは明確に監督と握るところから始めた方が良いのかもしれません。このシーズンのJ2だと仙台やジェフのようなチームは自分たちのシステムが決まっているので、そこまで明確にプレーモデルとまで意識していないにしても、集められた選手がどのポジションなのか?というのが全く見えないという状況はコンサと比べると明らかに少なそうだな、と感じました。



  • 髙尾とパクミンギュはそれぞれ、かつての所属先でサイドバックをやっていたのでこの枠でカウントでき、岡田もまぁカウントできるとして、以上!という状況でキャンプインします。右は控えがいないし紅白戦で誰かを回さないといけない。だから岩政監督は4バックの採用を考慮しなかったのだと思います。
  • しかし開幕後は、大﨑中心の3バックシステムの崩壊もあり4バックの1-4-2-3-1になったことで、急遽サイドバックという概念がコンサに数年ぶりに生じ、人員確保の必要性が生じます。
  • こうしたトホホな状況でもとりあえずシーズンを乗り切れたのは髙尾の頑張りと、高嶺や田中宏武といった選手のコンバートでした(ただし高嶺のコンバートは当然他のポジションの層を薄くします)。

  • 4バックになった後は左右で役割が異なる構図でした。これは2列目の右が近藤(サイドアタッカー)で、左が青木やスパチョーク(より中央に入っていく攻撃的MF/シャドー)だったことが大きいです。
  • 要するに右は近藤と髙尾で2人体制ですが、左はパクミンギュや高嶺、中村桐耶が1人で組み立てから前線での攻撃関与など全て担う必要があるわけです。パクミンギュに関しては難しい状況に置かれていましたし、ここはチームとしてもう少し整理できたのではないでしょうか。


2 髙尾 瑠

35試合、3,108分出場(うち先発35)、0ゴール、3アシスト
  • 前のシーズンはキャンプで出遅れ、本調子になるまでシーズンの半分くらいの時間を要しましたが、このシーズンは少なくとも継続的にプレーできるコンディションを維持することができました。
  • プレーに関していうと、まず4バックの1-4-4-2ベースだと縦関係になるのが近藤。別の記事でも割としつこく言及しましたが、あらゆる局面において近藤は高い位置を取ることが多かったので、サイドの深いところの防備は髙尾が一身に引き受ける部分が大きかったです。近藤がもっと自陣に戻ってくる振る舞いをしていれば、サイドで相手の仕掛けに対し近藤が中切り、髙尾が縦切り、のように2人で対応もできたと思いますが、髙尾が1人で中も縦もケアしなくてはなりませんでした。
  • そうした状況でも、例えば相手がカットインする選手なら右足を切って外に誘導して…という対応から完全に仕事をさせない、まではいかなくても、最低限自由を奪って決定的なプレーには持ち込ませないような振る舞いはできていた印象で、そこはさすが髙尾といったところかと思います。

  • しかしこれも印象論で恐縮ですが、堅実な髙尾にしてはこのシーズン波があったようにも思うところがあり、アウェイのvs大宮(11節)などで流石と思わせるパフォーマンスもあれば、前半戦の山場だったvs磐田(14節)では開始10秒で酷いクリアミスから試合を壊してしまうこともありました。

  • また上記の「総括」で挙げた、SB→ボランチに斜めのパスを出すスキルをあまり感じないところもあり、前半戦は右で髙尾と家泉が並ぶとビルドアップの手詰まり感は強かったと思います。
  • ですので基本的には大外でプレーするタイプの選手かと思います。4バックならSBでいいとして、3バックならDFではなく、岩政前監督のラスト2試合のようにWBの方がプレースタイルに合っているいるかもしれません。
  • オーソドックスな役割でも3バックのDFとしては微妙なところがあるとして、柴田監督体制では(岩政体制を踏襲して)3バックの右の選手が列移動して中央に入ったりする難しい役割が設定され、宮の故障もあり髙尾がこの役割を(西野に変わって)担いましたが、正直なところ髙尾が中に入っても西野のようにボールを受けたり運んだりできるわけでもないため、そこまで有効ではなかったと思います。

3 パクミンギュ

20試合、1,466分出場(うち先発17)、1ゴール、1アシスト
  • 故障もあったとはいえ、前のシーズンの鮮烈な活躍があっただけにパクのパフォーマンスはこのチームの最大級の誤算だったといえます。
  • ボール非保持(≒守備)に関しては、足の速さを活かした平面でのタイトな対応が24シーズンは印象的でしたが、おそらく(韓国サッカーのオールドスタイルそのままに?)マーク対象が明確に決まっていて相手についていけばOKという枠組み、つまりミシャ体制のように最初からマークを決めてシステムを相手に合わせるやり方の方がこの選手には合っていて、岩政体制のように(というかミシャ以外のフットボールは大体そうですが)特定の選手をマークするだけでなくスペースを管理したり受け渡したりする仕事が加わると、パクの1v1でのスピードが活きなかった印象があります。
  • また「平面での」、と書きましが、特に3バックの一角として出場したときの空中戦での対応は平均的なCBの水準にはないので、そもそも3バックだとCBでもWBでも起用が難しいという問題はありました(加入時に抱いたイメージ通りでした↓)。

  • 最終的に3バックの左WBとしては、それまでの役割(3バックのCBまたは4バックのSB)よりもマーク対象や仕事が明確になりやすいこともあり比較的やりやすいようには見えました。
  • 一方で大外で相手のサイドアタッカーと対峙する際に、特にカットインしてくるタイプの選手に対し、相手の利き足を切ることができずフィニッシュに持ち込まれる場面が散見されました。相手の特徴が頭に入っていなかったのかわかりませんが、少なくとも大外を1人で任せられるような強さは感じませんでした(高嶺は1人で奪い切る能力があったので高嶺のSBの方が対応能力はあると感じました)。


  • ボール保持の際のプレーに関しては、まず開幕時には1-3-4-2-1の左DFとして、ボール保持の際は「CB2人のうち左CB」の役割からスタートします。
  • しかしこの時も、チーム全体の不安定さによるところも大きいとしても、CBとして根本的にプレス耐性がなく簡単にボールを手放す(前に放り込む)選択をとってしまうことも少なくなかったですし、相手を剥がしたりスペースを見つけて前方にパスを出す能力がそこまでなく、計算が立つと思われたこのポジションを開幕早々不安定なものにしてしまいました。
  • ボール保持に関しては、おそらく味方にボールを預けて前に出ていくプレーが得意だと思われます。
  • ですので3バックのWB、4バックのSBを問わずボールを預けられる選手、左にスペースがあるときに展開できる選手(左利きの方が出し手として向いている)がいればより強力なユニットになれたかもしれませんが、前のシーズンに割とユニットとして機能している印象だった青木の起用法が安定せず、SBとしての役割(前なのか後ろなのか、大外なのか内側なのか)、が定まらなかったこともあって、違いを生み出すには至りませんでした。
  • 最終的には柴田監督体制で3バックの左WBに定着しますが、WBとしては1v1での突破がなく、クロスボールでのラストパスもそこまで優れてもなく、引いた位置で前にパスを出す役割でもなく…となると、このタイプの選手が左WB固定で、かつそのスピードを活かせるパスの出し手もいないとなれば、サイドから相手の脅威になる攻撃をすることは必然と難しくなると思います。

  • パクにせよ髙尾にせよ1人でなんでもできる選手ではなくユニットとしてプレーすることが不可欠ですので、「強化部」が「人事部」と化しているクラブのとばっちりを受けていたとも言えると思います。

5.5 センターバック

<総評>

  • モダンフットボールにおいてはボール保持(≒攻撃)はGKとCBから始まり、逆にボール非保持(≒守備)はFWから始まります。
  • 必然とこの2つのポジション(というセンターライン)が重要になるのですが、近年コンサの関係者は頻繁に「タイトルを取る」等と言っていますが、タイトルを狙うチームである割にはCBの軽視というか強いチーム、自分たちが目指すようなチームにどのようなCBが必要か未だに定義できていないように見えます(FWも数は多いけど同じ)。

  • CBの開幕時のラインナップ、家泉、中村桐耶、西野、にCBとしてほぼ4年ほど稼働していない大﨑、4バックだとSBになる髙尾、パクミンギュ…以上!という状況を見ても「とりあえず頭数は揃えました」水準でしかなく、どんなフットボールをするかは完全に監督に投げられていた状況で、果たして「強化」機能がこのクラブには存在するのか?と改めて思わされます。
  • この開幕時のラインナップでシーズン38節のうち18節を消化した頃、夏のマーケットで浦上と宮が加入します。昨年J3だった大宮でこのシーズン4番手以下のCBだった浦上が、このクラブでは「声を出して味方を動かして組織で守れ、かつボールを運べる選手」として合流から1週間足らずで不動のCB1番手に君臨したという事実が全てを物語るでしょう。

  • その浦上も、昇格が潰えた後の最終盤ではベンチスタートとなり家泉が再登場することになり、ある種この2選手が二項対立のような位置付けにもなりましたが、このシーズン散々迷走した末に、このタイプが全く異なる2選手のうちどちらがコンサが目指すフットボールにフィットすると言えるのか、シーズンを終えた時点でも全くわからない、という状況こそがチームとしての積み重ねや確固たるプロセスの欠如を物語っています。「攻撃的なサッカー」という言葉だけが独り歩きしていますがそれはどういった選手、どういったプレー、どういった原則のもとに構築されると考えているのでしょうか。

4 中村 桐耶

19試合、1,092分出場(うち先発12)、0ゴール、1アシスト
  • トップチームと契約してからの6年間、CBとしてどうプレーするのか、相手のFWにどう対峙するのか等の具体的なインプットがほとんどされなかったように見える期間を送り(その間、自分自身で「福森との差別化」を考えた末に、ボールを持ったときに自陣から高速ドリブルで敵陣に入っていくプレーを開発はしましたが)、24歳で迎えたこのシーズンは元日本代表CBの理論派監督(と、監督が懇意のCB出身のコーチ)との出会いがあり、キャリアの中でもCBとしては最大のチャンスだったかもしれません。
  • しかし結果は負傷離脱もあったにせよ、岩政・戸川コンビでもコンサ期待の左利きの大型DFをCBとして本格化させることは叶いませんでした。

  • シーズン序盤にパクミンギュの離脱と4バックへの移行が重なり、3バックの左または4バックの左CBの位置を与えられます。4バック移行後の5-7節はCBとして先発し、このシーズン下位に沈むこととなる秋田、愛媛に連勝しますが、8節では西野がチャンスを与えられ、続く9節(vs水戸)では家泉の体調不良により一度桐耶が復帰する(西野と組む)ものの、馬場の退場もあり3失点を喫したこの試合での対応でCBとしては完全に見切られてしまいます。
  • 以後は主に4バックのSBとしてカウントされることになりましたが、個人的にはサイドで1v1で対峙したときに、寄せきれずにパスコースが残っていて中央にパスを通されることが少なくなく、守備固めとしてもここは気になるところでした。

  • 西野の証言などをみても、ここ数年では最も「教えてくれる」監督との出会いだったと思いますし、左利きの選手が少ないというチャンスでもあった中で残念ながら十分に活かしきれなかったという印象が残ります。

15 家泉 怜衣

26試合、1,743分出場(うち先発18)、5ゴール、0アシスト
  • 前方向からくるボールに対する空中戦での競り合いはJ2ではほぼ無敵で、スタンディングからでも助走ありでも家泉に勝てる選手は滅多に見当たらず、特に下位のチームはボールを持ったときにとりあえずまっすぐ前に蹴って拾って…というプレーも少なくなかったので、そうしたチーム相手に中央に家泉がいる時は非常に頼りになります。

  • 一方でボールを持った時のプレーに関しては、まっすぐボールを蹴る能力はあるものの、ボールを持っている時に相手と駆け引きやボールタッチの繊細さ、引き付けてボールを運んだり味方を助けたりするプレーには乏しいので、CBのポジションから前方にボールを運ぶプレーについては、専らそのパススピードで解決する傾向にあり、その高速パスを繰り出せない時は前にとりあえず放り込む選択、隣のSBに預ける選択が目立ちます。
  • インサイドキックでの高速グラウンダーのパスを持っていますが、前方向よりも横(右)方向に使われることが多く、特にシーズン序盤は4バックの右CB家泉→右SB髙尾へのパスがハメパスとなることも少なくありませんでした。

  • しかしこの選手を見ていると、そもそものメンタリティの問題を感じます。
  • センターバックやボランチの仕事は、地道に繋いで構築して、スペースを埋め、ミスや事故を回避し、我慢しながら相手の隙を窺う…といったものになりますが、全体的に家泉は1発のプレーで局面打開しようと考えているような雰囲気を感じます(↓の、なぜか長谷川に後ろの管理を任せてゴール前に突っ込んでいったプレーなどが典型ですが)。

  • ですのでそもそものメンタリティとしては、地道な役回りで味方を助けるというよりは、自分が美味しいところを決めてヒーローになることを好むタイプなのかな?と感じました。
  • であれば技術以前に、メンタリティとしてはモダンフットボールにおけるCBやボランチ、後ろの役割よりもセンターFWの方が向いています。そうした選手をシーズン前半、ほぼ唯一のCBとして継続起用しなくてはならない状況は、前監督にはまさに”根深い問題”でしたし、6月に浦上と宮の加入によりリプレースされたのは必然でした。

  • その後、学級崩壊を経て就任した柴田監督体制では、徐々にボールを捨てるスタイルに傾倒した結果、ボールが行ったり来たりしがちな試合展開となり、前から来るボールを跳ね返すことが得意な家泉にシーズン終盤で再び白羽の矢が立ちます。
  • そうして家泉にチームが合わせているわけではないですが、彼の選手特性と親和性が高めのスタイルで最終盤の試合を消化し、シーズンを終えることとなりました。

  • この終盤戦3試合にスタメン出場した際は、開幕当初よりもボールを持ったときに意図を感じる振る舞いが見られたのでそこは今後期待したい点でもありますが、相手が前線から殆どプレッシングを仕掛けてこないチームだったことは(大いに)割引く必要があるでしょう。
  • シーズントータルで見ると、家泉が得意なフットボール≒いわきFCスタイルであり、チームの核となるポジションにこのタイプの選手が1st choiceで本当にいいのか?は「強化」を考える上でかなり重要な要素になると思いますので、熟考いただきたいところです。「家泉がCB中央なら完全に彼が得意なスタイルのフットボールになりますが、チームとして目指す方向はそれでokということになったんですかね?」という問いです。

  • あとは細かい点ですが、ドリブルで仕掛けてくる選手に対峙した時に簡単に背中を向けない対応と、空中戦に関しては前から来るボール(ボールと相手を同一視野に入れやすい)はいいとして、横からくるボールへの対処はまだ向上の余地があるように思えます。

47 西野 奨太

30試合、2,527分出場(うち先発29)、0ゴール、1アシスト
  • 西野の台頭がこのシーズン最大の収穫であり、岩政体制での最大の功績でした。開幕時は3バックの右として髙尾や家泉の控えで2〜3番手扱いだったはずですが、出るたびに味方の信頼を得て、序盤戦から高嶺と西野のチームと呼んでも過言ではない存在になっていました。
  • 足の速さはおそらく平均くらいなのでしょうけど、射程に入ったときには無理に足を出さずとも相手のアクションを抑制できる身体の強さが伴い、2,500分出場しながらも警告0というのは(コンサで非常によく見られた)無謀なタックルに頼らずとも仕事ができることの証明でしょう。
  • そして最大の魅力はボールを持った時の落ち着きで、右利きでありながらDFとして左足にボールを置いた状態で、相手FWのプレスをギリギリまで待ちながらボールをリリースできますし、その際に前に放り込むだけではなく中央の、相手FWが出た背後で待つ味方のボランチの選手を狙うことができる。
  • DF陣の中では西野1人だけ別の概念のフットボールにいるようなもので、中盤戦以降はDFの位置から1列上がる役割も与えられましたが、この役割変更でも元々の良さを失わず堅実さと創造性を両立するかのような振る舞いでした。

50 浦上 仁騎

16試合、1,384分出場(うち先発16)、0ゴール、0アシスト
  • 加入前の印象は、「サイズがなくそこまで足も速くないけど、相手にしつこく食らいついてゴール前のスペースも簡単に空けないDFらしいDF」。岩政前監督の言葉を借りれば「声が出る選手」。
  • 「ボールを持ってプレーする攻撃的なサッカーであることは揺らぎない」みたいなことを言っていたコンサですが、浦上の登場までは、最終ラインでボールを前に運ぶ仕事を引き受けてくれるDFが皆無という絶望的な状況でしたので、浦上はたちまちこのチームにおけるボールポゼッションやbuild-upの中心人物となり、宮と共にデビューとなった19節からコンサは3勝1分で乗り切ることに成功します。
  • 選手個人としてはボールを持った時にそこまでスキルフルだとは思いませんが、少なくともこのシーズン真ん中を任された選手(開幕時の大﨑、パクミンギュ、家泉、中村桐耶…)と比べると、ボールを持った時のプレー選択や戦術理解と守備能力のバランスでいうと明らかに浦上が一番整っていました。
  • またキャプテンの高嶺と、メンタル面、技術戦術面双方での密度の濃いコミュニケーションをとっていたこと(チームのぬるさの指摘、自陣での守り方のすり合わせ…)も報じられていました。特に守り方については方針が明確になり、柴田体制で(主に下位チームから)勝ち点を拾う上で有効に作用したと思います。

  • こうして浦上と宮が加入した後のコンサは岩政監督の契約解除までの7試合を4勝1分2敗(負けは長崎と磐田)で乗り切りましたが、柴田監督体制でも浦上は引き続き起用されたものの徐々に状況が変わってきます。

  • 「岩政監督は難解なサッカーを提示したところ選手の理解を得られず、柴田監督はよりわかりやすい(日本サッカーでよくいわれる”シンプルな”)戦術に切り替えて立て直しを図った」みたいな論調の記事が道新などに載っていましたが、要は、柴田監督はある程度は選手に好きなようにやらせるというか、戦術としてボールを持つ時間を増やすことを諦めて、選手に好きな時に好きなように走ったり蹴ったりしていいよ、という方向にチームを寄せていった、ということになります。
  • そうすると、コンサが前に蹴る頻度が増えるということは、毎回、前で絶対にボールを収めてくれるとか、毎回シュートおよび相手のゴールキックにプレーを帰結させることができるとかではない限りは、コンサがボールを失ってカウンターを食らう機会が増えることにもなる。
  • こうなってしまうと大宮の4番手CBだった浦上が中心では、少なくともJ2トップレベルを目指すチームでは圧倒的にクオリティ不足を痛感させられます。特にクロスボールへの対応ではパワー以前に相手を捕まえられていないところも目立ち、彼が高嶺と擦り合わせたように、もっとゴール前に味方の枚数を確保して密度を高め、浦上が簡単に晒されないようにするやり方が必要だったでしょう。

  • そうしたディシプリン(これこそまさにフットボール的な規律ですね)を発揮していくには、「好きな時に好きなように走ったり蹴ったりしていいよ」では明らかに限界がある。こうして夏の救世主はシーズンの終わりにはチームとアンマッチというか、路線変更の割を食ってしまうこととなりました。
  • ただフラットに見ると、チームリーダー、戦術理解といった正の部分と、対人の弱さはJ2でも目立つという二面性があり、J2でトップを目指すチームのコアになる選手というよりは、グループの中で15-20番手くらいでバックアップの層を厚くするとかトレーニングの質を高めてくれるとありがたい、といった位置付けになるかと思います。

55 宮 大樹

9試合、736分出場(うち先発8)、0ゴール、0アシスト
  • このシーズンにプレーした選手の中では最も「CBらしいCB」。おそらく左利きのCBが欲しい、とするリクエストがあって獲得に動いたのでしょうけど、左足でボールを持てる選手である以上に、CBとして中央から必要以上に動かず、最後に大事なところで身体を張り相手の選択肢を消す対応は明らかにこのチームに足りないものでした。
  • また試合の終盤に「なんでもいいから守り切って勝ち点を拾う」という選択がベターなシチュエーションがシーズン中に何度かあるとして、中央を守れる宮がいるときにはこうした共通理解が明確になり、DFとして個人の跳ね返すスキル以上に味方に好影響を与える存在でもありました。
  • ボールを持ったときには少なくとも家泉よりは確実に落ち着きがあり、ボールの動かし方も知っている。ただ左利きということで左に置くよりも、機動性や中央を守る能力を考えると3バックならば中央に配置したい存在でした。

5.6 GK

<総評>

  • 「GP」という呼称がイマイチ自分には定着しないためこの表記とします。トレーニングを見た限りでは、この4選手だとやはり高木と菅野の争いになるのは納得でした。
  • 児玉は個別に項目を立てないのでここに書きますが、どうしても菅野との比較になるとして、シュートストップは明らかに菅野に分があると感じました。
  • 小次郎は菅野、高木の離脱時に起用され、11試合で17失点でしたが、ジェフ、水戸、磐田で計10失点を喫した部分が大きく出場試合中はGKのパフォーマンス以前の問題もありましたし、コンサに加入してからでは最も期待感を抱くシーズンでした。ただ彼もトレーニングを見ると菅野、高木との差は感じましたので、スカッドの年齢バランスは気になるにせよ実力的には2人の争いであったことは間違い無いでしょう。

1 菅野 孝憲

16試合、1,384分出場(うち先発16)、失点22 ※出場時間中
セーブ率61%、PA内セーブ率45.9%、PA外セーブ率94.1%
クロスキャッチ率10.9%、クロスパンチング率5.7%
  • 高木にも言えますが諸々のスタッツは参考程度と考えてください(シチュエーションが明らかではないものの総和的な統計値を過信してはいけません)。ただリーグ全体での比較で見ても各数値ともそこまで優れているとは言えません。

  • 宮の沢でのトレーニングを見ている限りでは、中距離のシュートを横っ飛びしつつ空中で腕の位置を調整してボールをはたき落とすようなエグい技術は未だに健在で、同じ練習をしている児玉よりは少なくとも上のパフォーマンスだとは確認できるのですが、基本的には前に出てコースを狭めたり、クロスボールに積極的に飛び出したりしてサイズを補うプレースタイルだといえる中で、このシーズンは相手のシュートの際に見極められ、届かないコースを狙われての失点が多かったように思えます。
  • ただこれはチームの守り方にもよるもので、特に距離があるところのシュートではDFがコースを切れない、そもそも枚数も揃っていなくてDFも準備ができていない…という場面も少なくなかったため特に菅野のようなスタイルだと厳しい仕事だったかもしれません。ですので5ヶ月後には42歳になりますが、明らかにパフォーマンスが落ちたという印象はそこまではありません。

21 高木 駿

15試合、1,332分出場(うち先発15)、失点24 ※出場時間中
セーブ率65%、PA内セーブ率57.8%、PA外セーブ率79.2%
クロスキャッチ率19.0%、クロスパンチング率6.8%
  • 足でボールを扱い、特に相手の1列目のプレッシングを受けた状態で列を越えるパスを中央に出すプレーに関しては今なおJリーグで5本の指に入ると思われるGKを、岩政前監督が放っておくわけがなく、長期離脱から復帰直後の20節(vs藤枝)から即起用されます。
  • 同時期に加わったCBの浦上、宮と共にようやく役者は揃ったというか、うだつの上がらないチームのボトルネックであった悲惨なユニットが一旦解決し、ようやく監督の手腕や適性についての議論にフォーカスできる状況となりました。

  • ただ、23節(vs磐田)ではその高木のミスもあって5失点での大敗を喫しましたが、出し手(高木)の問題ももちろんあるにせよ、CBを飛ばして3列目の中盤センターの選手に配球できる高木の存在が、むしろそのポジションの選手の資質(受け手となったりボールを動かす能力)が水準に達してるかを際立たせたと思います。
  • GKとしては受け手が消されていたり信用できない中で難しいプレーを選択したことが裏目に出ましたが、コンサの場合、前線、というか中盤から前で違いを生み出すことが難しいなら、よりスペースのあるGKやDFのところで相手を外したりなんらか仕掛けていくプレーが必要で、単にGKがミスをしたというよりは、GKよりも前の選手がボールを運ぶことが難しいがために、GKそこまでリスクを冒さなくてはならないことが根本の問題としてアプローチしなくてはならなかった話かなと思います。

  • シュートストップに関しては特に至近距離でのシュートに対する鋭い反応を見せた一方で、比較的離れたところからのシュートやセットプレー絡みでの失点が目立ったシーズンでした。
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以上で一連の企画を終わりにします。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

2025年12月17日水曜日

北海道コンサドーレ札幌の2025シーズン(5) 〜進退をかけた一手も不発〜

5.選手個別note

  • 選手についての感想ですが、今回はポジション別のメモや雑感も付記します。サムネは聖地巡礼したけどなんかイメージと違ったやつです。撮影とか映像制作の人の技術ってすごいなと思いました。


5.1 センターFW

<総評>

  • そもそもモダンフットボールにおいて、センターFWの椅子はどのチームにも1つしかありません。かつてのインテルのロナウド&ヴィエリ(他、サモラーノ、カロン…)のような9番タイプを2人並べるのは現代では非常識、は言い過ぎかもしれませんが、攻守両面でゴール前からあまり動かない(動けない)選手をスタメンで2人使うことで生じるチーム戦術への制約を考慮すると基本的には「ない」話です。
  • このことを考慮すると、そもそもシステム1-3-4-2-1を念頭に置いた時に、開幕時点で明らかにセンターFWだなという選手がコンサには少なくとも4人(バカヨコ、ゴニ、中島、ジョルディ)いたことがまずおかしい。試合に出られない選手はどうしてもフラストレーションが溜まったりグループとしてのマネジメントは難しくなります。
  • 監督がやりくりしないといけないのはCBのような手薄なポジションだけではなく、こうした人数がダブついているポジションにも言えることです。

  • 岩政前監督が当初「システム1-3-4-1-2の2トップ」としたのは、戦術的に監督がそれをやりたいからではなく、コンサにFWが多すぎるから、DFが少なすぎるから、4バックだとポジションのアンバランスが大きすぎるから、という、しょうもない理由だからでしょう。
  • しかしその前監督の構想では、2トップはゴール前に9番として2人が待つ形というよりも、「ゴールから離れた位置でスタートして守備タスクもそれなりに担いつつ、スプリントしてゴールに入っていく」みたいな形を描いていたようなので、コンサの4人〜のFWはそうしたスタイルにもアンマッチ。ということで、開幕後は1トップの1-3-4-2-1を採用したのだと思います。
  • その後、今度は監督は「4バックに適した選手が多い」(積極的な意味でも消極的な意味でも両方だと思われる)とのことで4バックの1-4-4-2または1-4-2-3-1気味のシステムを採用しますが、このシステムにおけるFWとトップ下の組み合わせ、および適切な運用方法を見出すのに時間を要します。

  • その後、中断期間には逆襲の切り札として、三顧の礼でマリオ セルジオが加入します。
  • が、前線は9.5番タイプのバカヨコを軸とすることが徐々に見えていた中で、あまりモビリティがなさそうで、バカヨコと並べると前線が重たくなることが見え見え、利き足も左でバカヨコと被る9番タイプのマリオは、「鈴木智樹強化部員が、移籍交渉の成否に進退をかけるくらいで臨んでいた」(by竹林強化部長)とするフロントの熱意とは裏腹に、ピッチ上では岩政、柴田両監督とも使い所を見出すことに腐心します。

9 ジョルディ サンチェス

9試合、371分出場(うち先発4)、1ゴール、1アシスト
  • 攻撃面では、プレースタイルとしては組み立てに関与したり潰れ役になって味方を助けたり、オープンな展開でボールを運んだり…といった貢献は少なく、相手ゴールに近い位置で相手のミスやそこから生じるシュートチャンスを待つことにほぼ全振りしているように見えます。
  • これはJ2というカテゴリとは相性はそこまで悪くなく、ピッチに立った時に決めきれなくてもそこそこチャンスには絡んでいるのはこのプレースタイルによるところが大きい印象を受けます。
  • このシーズン1ゴールに終わりましたが、FWに有効なラストパスが届けられなかったコンサというチームにおいて、開幕戦、15節、19節と先発した試合ではいずれもゴールにあと一歩のところでシュートミスや取り消しがあって、そこは”持ってない”印象もありましたし、たらればではないですが、特に大分での開幕戦で絶好期を決めていれば、ジョルディ本人だけでなくチーム全体の命運も少しは別のものになっていたかもしれません。

  • 前線の9番タイプの選手の中でも最も動きの量があり、このシーズン、定期的にハイプレスをやりたがる(両監督とも)コンサとはこの点でも親和性はありそうでしたが、トータルで見ると、オンザボール、オフザボール、運動能力、戦術理解…あらゆる面でシンプルに実力不足かと感じました(J2というカテゴリで見ても、コンサのFWの選手の中で見ても)。

  • あとは、2024シーズンの夏に加入早々に練習を見ていた時からの感想ですが、やはり母国語で会話できる仲間が1人いてもよかったかもしれません。
  • 当時から(いや加入早々だったけど…)構想外気味というか、サブ組のシャドーをやらされていて、トレーニングにおいて本人も相当フラストレーションが溜まっていそうに見えました。
  • 岩政前監督が就任してもチーム内での位置付けは大きくは変わらず、トレーニングでの態度を疑問視されていたとの報道もありましたが、奥さん以外にスペイン語の話し相手がいればメンタリティも幾分か変わったのかなと思います。この点では、マリオを孤立させないように注意を払って欲しいところです。

20 アマドゥ バカヨコ

32試合、1,745分出場(うち先発22)、7ゴール、0アシスト
  • キャンプでは新監督にまずまずのアピールをしたようで前線の軸として期待されましたが、故障で開幕に出遅れます。
  • 4節以降はFW陣で最も多くの出場機会を得ますが、システムは1-4-4-2に変わり、左SHにシャドー系の選手(スパチョーク、青木)が起用され、センターFWであるバカヨコが前線の高い位置からかなりの運動量で相手のDFのボール保持に対して1stDFで頑張らなくてはならないチーム構造に次第に変容します。

  • 昨年夏の加入時に河合C.R.Cが「オルンガタイプだ!」と期待を語り、おそらく他の関係者(前監督、スタッフ、GM、強化部長…)の認識もその程度だったのでしょうけど、見たところ90年台のイングランド上位クラブで活躍したシェリンガム、カントナ、ベルカンプ、今だとコロムアニ?のような9.5番の役割で、味方の9番に前を向かせつつ自らは遅れてゴール前に入っていくのがこの選手の得意なスタイルに見えます。

  • そしてボールを持っていない時には、岩政前監督によってバカヨコが相手2人、場合によっては3人を管理しながら相手のボール保持を右の近藤のところに誘導し、追い込んでプレスをかける…というやり方を13節から採用しますが、この手の守備アクションが上手い下手以前に、190cmの長身でスプリンタータイプの選手には動きの量の部分で負担が大きすぎるように見えました。
  • 加えてコンサの場合、ビルドアップに難がありまくるので、FWがゴール前で待っているだけでは不十分、降りてきて縦パスを受けてポストプレーをしたり、周囲の軽量級の選手を活かすために潰れ役になったりしなくてはならない
  • 試合中に、味方に指示を出したりコミュニケーションを取っている様子を見ても、バカヨコはゴールしか見ていないエゴイストには見えずピッチの俯瞰で見ており戦術眼を備えている印象で、出場時間でフル出力を発揮するというよりはペース配分を意識したかのようなプレーに終始していたのも、「コンサだとFWがやることが多すぎる」からだと理解していたのだと推察します。

  • この姿勢が、もっとゴール前に入って欲しいとする岩政前監督の怒りというか”愛”のすれ違いみたいなもの?を招いて、5月の2試合(14節、17節)では前半途中に交代という仕打ちを与えますが、寧ろそれでようやく監督もバカヨコの選手特性をわかってきて、前線に長谷川、白井、木戸といったオフザボールで貢献できる選手を起用するようになり、またバカヨコもプレーの出力を調整して、数だけが多くて機能していなかった前線の軸となり、チームにようやく光明が見えた、という流れでした。
  • 時間及び仕事の範囲を限定されたあとは、「(武蔵を差し置いても)チームで一番足が速い」とビッグマウスをかましたスピード、ゴール前での鋭さと献身性やつぶれ役としての仕事を両立させた前線の切り札になり、7ゴールは全て23節までに挙げられたもの。
  • このシーズンJ2で12ゴール以上を挙げた選手が4人しかいないことも踏まえれば、PKなしですし十分に仕事をしていたと言えるでしょう。90分平均得点は0.576で、PKを蹴っているマテウスジェズスやマルクスヴィニシウスを上回ってもいます。

  • しかし柴田監督になってからは1トップにマリオがチョイスされることが増えます。
  • おそらく新監督はビルドアップをそこまで重視しておらず、とにかくFWにゴール前にいてシュートチャンスをモノにして欲しい、という思惑だったのかと推察しますが、潰れ役がいないとまともにプレーできないチームから潰れ役を取り除けばどうなるかは目に見えていたことでした。

90 マリオ セルジオ ※6月にシャペコエンセから完全移籍加入

15試合、588分出場(うち先発4)、4ゴール(うちPK1)、0アシスト
  • プレースタイルとしてはジョルディと似て、あまり組み立てやカウンターでは貢献せず、ボックス内での仕事がメインになるタイプ。
  • デビュー2試合目の熊本戦で、途中出場からビハインドのチームを救う名刺がわりのスーパーボレー。「9番」としてはここ数年でコンサに来た選手の中では最も期待できる選手でした。
  • しかしこの熊本戦では、後半途中から疲れの見える相手、しかも熊本というJ2でも特にオープンなスタイルのチーム相手に計3本のシュートを放ちましたが、その後の試合でも根本的にbuild-upに難があり、FWにボールを届ける機能が足りていないコンサにおいて、そもそも有効な形でシュートを打つためのお膳立てをほとんどしてもらえないまま時間が経過します(シーズンを通じてシュート数29)。

  • コンサというチームが、ビルドアップも崩しも難があるなら、相手の運動量が落ちた時間帯に切り札として使う手もあったかと思いますが、J2でもそんなに露骨にオープンな試合から終盤に落ちるチームがそこまでなかったこともあり、マリオ1人では何もできないままの試合も少なくありませんでした。

  • あとは殆ど先日の記事で書いた通りですが、マリオのような選手をどう起用して(既存のチームに組み込んで)チームがどう変わり、成績が向上すると考えていたのかがコンサのフロントからは全く感じられず…。タフな移籍交渉を頑張る、という熱意や努力はすばらしいのですが、頑張るだけではなく頭を使わないとなかなか成果に結びつかないよ、という典型例でしょうか。

13 キム ゴンヒ ※6月に契約満了で退団

11試合、304分出場(うち先発2)、1ゴール、0アシスト
  • ゴニもバカヨコや大嘉と同じ課題がありました。というか編成的に185センチオーバーの大型FWで運動量がそこまで期待できない選手が3人おり、かつ2列目もそこまで運動量がないというスカッドで、前線からたくさん走ってボールを奪いにいく戦い方は明らかに無謀でした。
  • そうしたタイプ被りの問題もあり、(それこそかつての小柏とのユニットのような)最適な組み合わせを見つけることができず、故障の多さもあって契約満了となりました。

45 中島 大嘉 ※6月に期限付き移籍で退団

6試合、230分出場(うち先発3)、1ゴール、0アシスト
  • 水戸での半年で何かを掴んだように見えたことで、クラブとしての期待は低くなかったと思います。
  • 加えて新監督とのフィーリングは悪くなさそう、というか、割と多弁で考えていることを口に出す(と思われる)大嘉に対してしっかりとフィードバックをくれる上司だったのでは?と思いますし、大嘉だけではなくFW陣全体に対して「横一線でありFWは得点することがアピールになる」とのメッセージが発され、実際キャンプではそこそこアピールしていたようでした。
  • それが最終的には、J3群馬への期限付き移籍も経てこうしたスタッツで終わってしまったのは、大嘉にはジョルディとバカヨコの項目で挙げた課題がそれぞれ存在しており、すなわち①ボールタッチ等の技術力やクオリティ不足、②運動量不足による守備貢献、が大きかったのではないでしょうか。
  • ①については「圧倒」と言いつつDFやbuild-upを担う選手に圧倒できる能力がないコンサにおいては、どうしてもFWにボールを当ててなんとかしてもらう場面が増えますし、②はまんまバカヨコのところで説明したのと同じ現象が大嘉に関しても生じていたように見えました(前半で交代させられるとかがないだけで監督の要求等は同じ)。

  • 「選手を躍動させたい」と常々口にしていた岩政監督ですが、広く守るのは体力的に難しいのか?プレーを区切って、疲れて頻繁に休んで止まる印象がある大嘉に関しては、指向するスタイル的に「圧倒」ではなく身の丈を意識して、捨てるところは捨てる、それこそミドルブロックで守ってFWはハーフウェーライン付近からアクションを開始する24シーズンの水戸のようなチームの方が「躍動」していたと思います。

5.2 1.5列目/2列目(シャドー・攻撃的MF・サイドアタッカー)

<総評>

  • 以前リカルドロドリゲス監督やロティーナ監督が、「日本にはシャドーという独特の役割があるがインサイドハーフやウイングが少ない」みたいな話をしていたことがあり、
  • この見解はコンサにも近いことが言えると思います。ウイングは1v1に強く、いるだけで相手のサイドバックに圧力をかけられる選手。インサイドハーフは中盤から前線までの広範なエリアでプレーしハイプレスのフェーズでもブロックを作って守るフェーズでも、ポゼッションでもフィニッシュでもカウンターでもボール周辺で関与したり多くのタスクを担う。こんな感じだとして、シャドーはより活動範囲が狭く、かつ1v1で輝くというよりは味方が何らか潰れてくれるなどして自身がフリーになったときに活きるような選手。
  • 要はモダンフットボールにおける王様的なのがシャドーで、ヨーロッパではなかなかそういう役割は減っているという指摘だと思いますが、日本ではまだまだ本職がシャドーという感じの選手が残っているし、コンサの編成にも必ずシャドー的な選手が複数入っている。
  • 別な言い方をすると、うまくて小さくてクイックだけどフットボール的には使いにくい選手が前線に多いのがコンサの編成で、モダンフットボール的なところを目指していた(少なくとも掲げていた)と思われる岩政、柴田両監督によってこの編成の問題も顕在化しと言えます。

  • ただ岩政前監督は元来のポジティブさもあり、(彼の言葉をそのまま受け取れば)シャドー多めのスカッドについて好意的に捉えていた節もあります。
  • そのまま受け取る、というのは、彼は「守備の文化がない」と後で言い出しますが、それはシャドーが多すぎる編成なのも十分この”文化”の問題にも関わっているので、どこまで真意だったかはわかりませんが、田中克幸の重用などは岩政前監督の特徴的な選手起用でしたし、彼のフットボール観が表れていたと思います。

  • スタメンクラスでワイドの専門家と言えそうなのは右の近藤くらいで、左は4バックのシステムだと青木やスパチョークが主に起用されます。
  • この本来シャドーの2人を左ワイドで起用していたのは上記の「シャドーが多すぎる編成」の特徴的な現象であり、一概にこうした起用はダメとも言えないというかうまくデザインされれば選手の特徴を活かしたチームにもできるのですが、あまりこの2人がワイドで輝いたとも言い難かったかと思います。
  • そして近藤は、右ワイドで起用されながらもより前に攻め残って、それこそシャドーのような運用のされ方をすることも多く、この運用法は岩政前監督体制での最大の謎でもありました。


7 スパチョーク

31試合、1,833分出場(うち先発20)、2ゴール、3アシスト
  • 得点に絡む能力がこの選手の長所ですが、J1でのシーズンと比較しても出場時間あたりの得点数、シュート本数あたりの得点数とも大きく低下している。パフォーマンスが落ちたとかではなく、これも本質的にはシャドーで周りの選手に守って、活かしてもらう(相手ゴール付近で前を向かせてもらう)役回りしかできないということが問題だったと思います。

  • スパチョークがシーズン序盤にスタメン出場が増えた時期は、チームが3バックの1-3-4-2-1から1-4-4-2にシステム変更していた時期で、当初の2トップの一角(もしくは下り目のFW)としての起用はともかく、サイドハーフとしては「まぁできるといえばできる」程度のパフォーマンス。
  • ワイドから1v1で仕掛けたり、決定的なラストパス(ワイドだとスルーパスというより、カットインからのクロスボールなどになる)が出せるわけでもなく、もしくはサイドバックの攻撃参加を促したりができるというわけでもないし、かといって得意とする中央に寄っていくと今度はワイドのディフェンスやバランスが問題になる。一応サイドハーフという扱いにはなるけど殆どサイドハーフらしい仕事は見られませんでした。ただしポケットを取るプレーは積極的に試みており、この点では戦術理解力を感じさせました。

  • それでも何試合か左MFとして試されたのは、他にこのポジションの候補者が青木、原で、青木のコンディションの問題や中盤起用などもあり有力な候補者がいなかったからというチーム事情にすぎません。
  • 得点に関与するプレーが最大の持ち味でありながら2ゴール、3アシストという極めて凡庸な数値にとどまったのは、まず適正ポジションでプレーする機会が前半戦はほぼなかった(≒そもそもゴール前でボールを持つことを殆どできなかった)、ということが挙げられます。

  • その後3バックへの回帰と程なく監督交代があり、最も適性があると思われるシャドーのスタメン選手に返り咲きましたが、今度は新監督下でボールを捨てる、もしくは前線の選手にボールを押し付けて個々の頑張りでなんとかする…というスタイルになったため、独力で打開したり体を張ったり…が得意ではないスパチョークの存在はどんどん希薄になっていきます。
  • 典型的なシャドーの選手なので、中央に潰れ役は絶対に必要だと思うのですが、この編成においてはバカヨコほぼ唯一の潰れ役でした。そしてバカヨコと中央でユニットを組んだ試合は限定的だったこと、またバカヨコのコンディションが上がっていった時期と、スパチョークにとって都合のよい役割が用意された時期が一致せず、2人の監督ともバカヨコに十分な信頼を与えなかったことなどもあり、数字で貢献することが難しいシーズンとなりました。

  • ただし最終盤に柴田監督下で、前線の選手にはよりプレッシングや前線守備での貢献が求められることとなってからは、スパチョークがではなく他の選手が使われると予想しましたがポジションを守り続けました。
  • あくまでJ2で12位のコンサの中では、ということになりますが、一定のハードワーカーとして認められたのは事実であり、それまでに見せていた姿とは一味違ったものだったかもしれません。

11 青木 亮太

32試合、2,110分出場(うち先発22)、4ゴール、5アシスト
  • シーズンイン当初は1-3-4-1-2のトップ下、または1-3-4-2-1のシャドーとしての期待がありましたが、序盤に1-4-4-2に移行するとこのシステムの左サイドハーフの仕事を割り振られます。ミシャ体制では左WBで起用されており、青木ならこの役割でも違いを生み出してくれるという期待感はありました。
  • その期待通りに1-4-4-2採用後の初戦、5節(vs秋田)ではカットインからの見事なミドルシュートでの得点と、左サイドをえぐってからクロスボールでのアシストを記録するなどさすがは青木というハイパフォーマンス。
  • しかし両サイドハーフが幅をとってからスタートする岩政前監督体制では、青木がサイドハーフとして輝いたのはほぼこの1試合のみ(20節では意表をついたロングシュートでの得点はあったが)。
  • 青木本人がワイドで孤立した状態を得意とする選手でもなくよりボールと味方に近い位置でのプレーを好むことと、後方からボールが運ばれてこないチーム事情もあり、仕事場はより後ろ、より中央寄りとなるよう監督の試行錯誤もありましたが最適解を見出せず、前線のエースとして期待された選手の躍動とは程遠い状況となってしまいます。

  • 中盤センターとしての青木は、ボールを運べないDF(というか家泉)を助けるというよりも家泉が本来行う仕事を引き取って代行していたので、本来青木が担うべき仕事はどこかに欠落してしまいました。これではチームとしては10人か9人でプレーしているようなもので、解決策として適切だったかは疑わしいものでした。

  • 何度かの負傷と監督交代があり、システムが1-3-4-2-1に戻り、柴田監督体制では得意のシャドーのポジションが用意されたものの終盤はベンチスタートが主でした。長谷川やスパチョーク、荒野といった選手の前線起用を見るとオフザボールでの仕事量と質が特に問われていたのかと予想しますが、全体としては先発22試合にとどまり、中心選手として期待された中ではやや元気がなかった印象でしたし、翌シーズン以降も契約が残っていると思われるのでなんとか復活して欲しい(新監督のプレーモデルに合致して欲しい)ところです。

14 田中 克幸

22試合、1,052分出場(うち先発11)、1ゴール、0アシスト
  • オフには背番号14を与えられ、新体制での始動後は「ファンタジスタが好き」と語っていた岩政前監督の寵愛を受け2トップの一角で試され、シーズンが始まってからもポジションを与えて…と、クラブとしてもなんとか彼を本格化させようとする動きを感じ、このシーズンの一推しとも言える位置付けでした。
  • しかしまず前線の選手として扱った時にいうほどのファンタジーアを感じませんでした。相手ゴール付近のラスト25mにおいて
  1. 自身が直接ゴールを脅かす
  2. 味方にシュートチャンスを供給する
  3. 相手のDFを崩す
  • といった仕事のうち何ができたかというとこれというものが思い当たらない。
  • シャドーというある程度、前残りが許容され前線での活動に力を割ける役割だと、フルシーズン出るならゴール+アシストで15くらいは欲しいなという印象ですが、1ゴール(直接FK)0アシストの選手をファンタジスタと呼ぶのは流石に無理がありすぎます(あくまで数字遊びに過ぎないですが)。
  • そして前線の選手としてはゴール前に入っていき得点を狙うようなアクションに乏しいため、特にシーズン序盤にユニットとして扱われることが多かったバカヨコ(こちらももっとゴール前に入れと言われていた)への要求が高くなったり、負荷が大きくなった要因の一つでもありました。

  • ならばポジションを下げてはどうか。シーズン半ばからは中盤センターが主戦場になりましたが、ここでもたとえば
  1. アンカーとしてCBやSBと連動しながら相手の1列目を外す
  2. DFと前線をリンクさせる、味方に仕掛けたりする機会を供給する
  3. インサイドハーフとして前線のスペースに走り込む(≒ポケットを取る)
  4. インサイドハーフとしてハーフスペース付近で何らか決定的なプレーをする
  • のような仕事があるとして、彼が何で貢献していたかというと答えるのが難しくなります。特にこれらの仕事をほぼ全て何らかやってしまう高嶺の隣に立っていると、見ていてこのままでいいものか…と思わされてしまいました。
  • このような状況でしたので、よりリアリスト気味な柴田監督体制の発足後は、故障もあったようですがポジションを失い、荒野、大﨑といったベテランの後塵を拝します。

  • であれば選手として大成する、までいかなくとも左足の才能を活かすためには、もっとプレーの量や動きの力強さを出していくしかないでしょう。もっともコンサの環境でそのレベルのアンラーニングというか一皮二皮むけることが可能かは何とも言い難いですが…。
  • このシーズンでいうと、前線で出場していた時、たとえば克幸が1-3-4-2-1の右シャドーを務めていたシーズンの序盤にコンサはハイプレスが決まらず黒星を重ねていましたが、克幸が絞って中央の選手を捕まえて圧力をかけたりサイドも含めて広いスペースを担当できないこともこの機能不全の要因の一つとみることもできました。
  • 中盤センターとしても、浦上加入、柴田監督就任後はボール回収位置が低くなり、(おそらく監督というより浦上の意向で)中盤センターの選手によりプレスバックのアクションが求められたことで一気に出場機会が減少しましたが、そもそもこうした最低限と言っても良いアクションを一つずつ計算できるようにしていかないと、このままだと仮にカテゴリを下げたりポジションを弄っても厳しそうに思えました。

16 長谷川 竜也

28試合、1,202分出場(うち先発16)、0ゴール、2アシスト
  • 別の選手の項目で「どの場面で具体的に貢献できるのかわからない」みたいなことを書きましたが、長谷川は監督が変わり、監督人事にプレーモデルが極端に依存するコンサにおいても、明確なストロングポイントや役割を見出してチームに貢献するプロフェッショナルというかマイスター的な一面を見せています。
  • すなわち、①ワイドでボールを受けて仕掛けからラストパスに持ち込んでFWにシュートを撃たせる能力(ドリブルして気持ちよくなってへぼいフィニッシュで終わり、みたいなチープなプレーではなく、しっかり中の味方を見てラストパスを出せる)、②先発として前線で体を張り試合を作る能力、を持ち合わせており、シャドーにカウントされながらもマルチに貢献できるため、数字は平凡ながらも前線の選手の中ではこのシーズン特に存在感のあった選手だと言えるでしょう。

  • 特に、夏場に2トップの一角としてスタメンで起用されるようになると、前線で体を張り、一つのプレーに関与して終わるのではなくすぐに次のアクションに連続的に移り、味方を助ける姿は他の選手にも波及したようで、木戸、白井と共にハードワーカー三銃士の登場により岩政前監督体制で毎回見せられていた軽すぎる試合運びにようやく解決策が見つかります。
  • 新監督就任後も引き続きハードワーカーとして、シャドーのスタメンとして重用されましたが、最低限の仕事は必ずやってくれる頼もしい選手ではあると思います。
  • 一方で、トップを目指すチームのシャドーとしては直接得点に関与する能力が物足りなく、確かにこのチームでももっとゴールしてくれ、アシストしてくれ、というのが厳しい要求ではあるのを承知の上ですが、シャドーとしては物足りなさがあるのも事実です。
  • もしくは町田ゼルビアで、先日天皇杯でシャドーに相馬(仕掛け役)とデューク(ハードワーカー)を並べる起用がありましたが、長谷川で1枠を占めるならもう1人にもっと強烈な選手を用意するというのはあるかもしれない(もっとも相馬もコンサの基準だとかなりのハードワーカーにもなりますが)。
  • 次のシーズンも重要な役割を担うとするなら、本来中央の選手ではないことは考慮されるべきではありますが、シュートの精度は改善を望みたいところです。シャドーのスタメンならもう少し得点が欲しいですが、そもそもそういったタイプのシャドーを確保していないこともコンサの編成自体の問題というか疑問でもありますが。

30 田中 宏武

14試合、538分出場(うち先発4)、0ゴール、0アシスト
  • 接触プレーで頻繁に相手とやり合ったり、劣勢やビハインドの試合で自分でなんとかしようともがく姿勢を見せる、ガッツ溢れるサイドアタッカー。
  • 「本職は左WB」と監督に宣言してのシーズンインで、開幕当初に実験室と化していた時期、2-4節では左WBとしてチャンスを得て、ボールを持った時は別にそこまで悪いパフォーマンスではないように思えます。
  • それでもこのシーズンも先発4試合、プロでの4シーズン通算でも先発11試合にとどまっているのは、WBやDF(チーム事情で左SB、練習でもやっていた)で出場したときに、ボールを持っていないときにワイドで最後尾に置かれる選手としてはディシプリンに欠けるところがあるからでしょうか。
  • 後ろに誰もいないシチュエーションでのプレーでは、自分で仕掛けたり打開しようとするだけでなく、もう少し冷静さが欲しいというか、自らはリスク回避しつつ味方の特徴を活かすプレーができることも望ましい。宏武の場合は、ワイドで1v1で仕掛けてくる選手に対応したりといった明白な守備の局面でのプレーもそうですが、例えばトランジションから攻守が入れ替わるような場面で自分がリスクをとって前に出ていくような振る舞いを好むように見えるので、この点でもやはりDFやWBではもう少し堅実性が欲しいと感じるところがあります。

  • なので現状はサイドアタッカーとして勝負することになるのでしょうし、また現状のスカッドでは貴重な逆足サイドのサイドアタッカーでもありますが、より重要な選手となっていくには、中央を見てクロスボールを合わせるプレーの精度を高めることなどに期待したいところです。

31 木戸 柊摩

22試合、934分出場(うち先発12)、0ゴール、0アシスト
  • 前線のトップ下やシャドーでスペシャルな選手として生きていくことは現状難しいとしても、技術のある労働者というプレースタイルならある程度はやっていけそう、という方向性が見えたのは、プロ1年目としては収穫だといえるシーズンだったのではないでしょうか。
  • 開幕2試合でそれぞれ1-3-4-2-1の中盤センターとシャドーの両方でスタメン起用され、新卒の選手としては悪くないスタートを切ったかのように見えますが、ピッチ上の各局面(自陣でのボール保持、敵陣でのボール保持、トランジション、敵陣でのボール非保持、自陣でのボール非保持、セットプレー…)で特徴を出せたとは言い難く、馬場の負傷と移籍や高嶺のDF起用で中盤センターに動ける選手が不足してもシーズン前半戦は出場機会が伸びない状況でした。
  • その後、6月のカップ戦(天皇杯vs大分)での長距離シュートによる得点や、長谷川との併用による前線起用など、不安定な立ち位置を補強する要素にも比較的恵まれ徐々に存在感が高まっていきます。ただ監督交代後は4試合ほどメンバー外となっており、負傷もないようでしたのでこの期間は謎でした(柴田監督がチーム内の雰囲気や空気感などに敏感な印象なので何かあったのかと勘ぐりたくなります)。その謎の空白期間を経て、終盤は中盤センターのスタメン格として浮上します。

  • 改めて中盤センターとして見ると、
  1. 自陣でのボール保持(≒ビルドアップ)
  2. 敵陣でのボール保持(≒崩し)
  3. トランジション
  4. 敵陣でのボール非保持(≒ハイプレス)
  5. 自陣でのボール非保持(≒ブロック守備)
  6. セットプレー
  • ハイプレスの際に、ボールを持っている相手選手に前を向かせない対応ができるようになって出場機会が増えていったところはあるかと思います。
  • あとはこれらの各局面でできることをもっと増やして欲しいのですが、例えば高嶺と組むなら、ボール保持の際に高嶺を前に出させるために木戸がボールを運んだり相手のプレスを回避する役割をより担うとか、敵陣に入った後に高嶺を前に出して後方で予防的なポジショニングをとって相手のカウンターを防ぐとか、新監督体制でどういうチームになるかにもよりますが、できる仕事の量が増えてくると良いでしょう(現状は敵陣でとりあえずミドルシュート、みたいな場面も目につきますので)。


33 近藤 友喜

32試合、2,507分出場(うち先発28)、5ゴール、5アシスト
  • J2ベストイレブンにもノミネートされ、5アシストは青木と並んでチームトップ。ですがプレースタイルはチャンスメーカーというよりチャンスイーターのようなもので、中央の味方にパスを出すよりも、自分が中央に入ってシュートを撃つ場面が目立ちました。
  • 試合を通じ、シーズンを通じ、MFというよりはほぼFWとして前線に残っていることが多く、
  1. 前線でプレッシングに参加するけど一度剥がされた後の貢献があまりない
  2. 自陣でブロックを作って対応する際にあまり関与しない
  3. 組み立てにあまり関与しない
  4. ウイングとしてワイドで相手のSBを攻略し、崩しを担うよりも、中央でFWもしくはシャドーのようにゴール前にいる時間が多い
  • といった振る舞いが目立ちました。出場時間の違いがあるにせよ、シュート55本はバカヨコ(40本、1,755分)よりも多くチームトップでした。

  • 岩政前監督体制では役割を固定しないという方針もあり、ワイドに張るだけではなく、より直線的にゴールに向かう役割も与えた方がチームへのリターンが大きい、と考えたのかもしれません。
  • それは結構なことですし、実際ゴールやアシストもしているのですが、それ以上にボールを持っていない時に常にコンサが少ない人数で対応しているような状況になっていたのは、この近藤の運用法が大きいと言えるでしょう。DFが質、量ともに不足し、負傷者も多く、何よりも序盤から低空飛行が続き、J2の中でも必死にならないと勝てない状況に陥った中で、近藤にここまでの特権的な扱いを与える必要があったのかは(何度も言いますが)謎でした。
  • そしてシーズン半ばに白井が長谷川や木戸との併用で、サイドアタッカーとして別の解決策を見せてくれ、柴田監督体制では白井がスタメンで起用されるようになったこと、その際に柴田監督が近藤に伝えたメッセージはある種の答え合わせでした。

35 原 康介

15試合、460分出場(うち先発5)、2ゴール、0アシスト
  • サイドアタッカーとして、自分の周辺にボールがないときに何をすべきか理解しているというか戦術センスを感じるところがあり、前のシーズンもそうでしたが、リーグ戦での通算4得点全てはオフザボールでの動き出しから生まれている。サイドに張るプレーと中央に入って得点を狙うプレーの使い分けができる選手であると感じます。
  • 一方で今後サイドアタッカーでキャリアを築いていくとして、肝心の、サイドに張った形からボールを受けて仕掛けるプレーはプロ2年目のJ2のシーズンでもまだ実戦級にあるとは言い難く、出場機会が増えるにはまずこの点を向上させる必要があります。25節(vs長崎)などでは左WBで先発した彼のところで、仕掛ける能力がもっとあれば、相手に与える脅威は全く別物になっていたと感じます。
  • 左サイドでのポジションを今後も狙っていくとして、クイックネスは一定はあると思いますので、簡単に相手に引っかからないようなボールの持ち方や、ボールをリリースする(中を見てクロスボールを選択する)タイミングな見えてこればプレーの幅が増えブレイクスルーに繋がるかもしれません。
  • ただ、キャンプでクラブから近藤と相部屋にされ、本人も近藤のプレーを参考の一つとしているような話もありましたが、この先輩はアスリートとしての速さや力強さが売りだとすると原が目指すところは別で、このチームの中では青木のような選手をモデルに「俊敏な青木」みたいなスタイルを目指して欲しいと感じるところもあります。

71 白井 陽斗

28試合、1,346分出場(うち先発17)、3ゴール、2アシスト
  • 開幕時の前線の顔ぶれを見ると9番タイプがバカヨコ、ゴニ、中島、ジョルディ、シャドータイプが青木、スパチョーク、田中克幸、長谷川、木戸、出間。この中で白井は、前のシーズンまでで一定の実績がある選手の中ではおそらく唯一、走力のある(スプリントのスピードとアクションの量を両立)選手。
  • キャンプでもバカヨコとの2トップで試されることが多かったそうですが、前半戦19試合で400分弱の出場時間、0ゴール0アシスト、定位置を確保できず…といった状況は前線の選手の中ではかなり大きな誤算だったと総括できるでしょう。
  • 前半戦の起用法はFWとワイド兼任でしたが、比較的前を向きやすそうなワイドであっても1v1で仕掛けて違いを生み出せず、シュートチャンスでも落ち着きに欠け、FWとしては潰れたり味方を助けることができない、と、適正ポジションが見当たらずこのカテゴリでは厳しいのか?と感じるところでした。

  • しかし後半戦最初の20節(vs藤枝)で近藤の不在により右サイドでスタメン起用されそれまでずっと問題だった1列目が剥がされた後の自陣での対応において、走力を活かしたプレスバックでチームを助けると、右MFとして意外と器用なプレーを見せつつ、バカヨコのポストプレーから長い距離を駆け上がり得点も記録するなどついにこのチームが機能する組み合わせと、前線の選手に求められるハードワークの基準を示す活躍を見せます。
  • その後は柴田監督によって右WBとして「近藤に対し基準を示す役割」として起用され、近藤がそれを理解すると本来の前線に戻り、バカヨコ、マリオ不在の30節(vs徳島)ではリーグ最小失点のチームを撃破する得点を挙げるなど、サイドアタッカーとして先発で出たことで色々な部分が好転し始めた印象でした。

  • ただFWとしては改めて振り返ると、枠内にコントロールしてシュートを流し込む技術には改善の余地があります。3得点はいずれもGKやスペースを見てコースを狙ったシュート、というよりも、スピードや運動能力を活かして直前のプレーの勢いを落とさずにシュートに持ちこみGKやDFののタイミングを外すことに成功したもの。まだ勢いでプレーしている感は否めず、ハードワーカーとしては計算できるけど、ゴール前でのシュートやラストパスに関してはまだ水物といった印象で、J2のカテゴリにも慣れた翌シーズンには改善を期待したいところです。

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残りのポジション(後ろ目の選手)は次回。

2025年12月9日火曜日

北海道コンサドーレ札幌の2025シーズン(4) 〜脆すぎた「圧倒」への足掛かり〜

  • 前回はボールを持っている時のプレーの内容で終わってしまったので、続いてボールを持っていない時のプレーについて整理します。
  • サムネは7月にジュビロにボコボコにされた2時間後くらいに機内で出てきた1回目の夜ご飯です(成田→仁川、仁川→アディスアベバの各区間でそれぞれ夜ご飯として機内食が出てくる。え?)。


3.4 敵陣でのボール非保持(≒プレッシング)

本来は駆け引きの一要素だが:

  • 敵陣でこちらがボールを持っていない、相手がボールを持っている時には、積極的にボールを奪いにいくか、もしくは否かという考え方になります。
  • 否の場合はより相手が前進してきた時にボールを奪うように準備をしたり、相手が前進してその後方(こちらから見て前方)にスペースがある状態を誘発させて罠を張っておくといった考え方になりますが、前進させることでこちらのゴールの近くでプレーさせることを許容することにもなります。

  • サッカーの歴史においてプレッシングというものが登場して以来、その活用の積極さだったり開始位置の上下だっだりは一定周期でサイクルが回っています。
  • 近年だとガスペリーニのアタランタのように、フィールドプレイヤー10人でマッチアップを合わせてボール周辺で明確なマンツーマン状態を作って(ただしアタランタは、ボールと遠いところではその限りではないと思います)、DFなどボール保持者や受け手の選手にパニックを誘発する狙いはどのチームも持っていますが、一方でボールを扱う側のスキルや先述面も向上し、マンツーマン要素が強い対応にしないとトップレベルではプレッシングが成立しなくなっている。
  • そしてマンツーマンで守ると、そのマンツーマンを何らか突破されたら自陣ではDFと相手FWが1v1になっており、マンチェスター・シティであればそのFWというのがハーランドだったりするので、ハーランドにスペースを与えた状態で1v1にするリスクを冒してまでやる価値はあるか?という判断を迫られます。

  • ヨーロッパのトップレベルではそうした戦略的な判断、トップ選手同士のデュエルや駆け引きに満ちていますが、現状Jリーグだとそこまでエクストリームな攻防にはなっておらず、マンツーマンで一通りボール周辺のDFを捕まえるだけで簡単に前に蹴ってしまう様子がよく見られます。
  • この際、コンサの2020-21シーズン頃のキム ミンテ、2023-24シーズン頃の岡村大八などがそうですが、マンツーマンでのプレッシングを仕掛けた結果、相手が簡単に蹴ってくるボールを跳ね返したりしてマイボールできる選手の有無がJリーグだと結構重要になってくると思います。

  • また、例えば↑のような状況で岡村のような選手に簡単に跳ね返されるなら、ボールを持っている側は別のやり方を講じる必要があるし、逆に守る側もマンツーマンのDFのところで、ミンテや岡村が跳ね返せないならそもそもマンツーマンでの対応を諦めて一旦撤退する、みたいな駆け引きのようなものが本来はあるはずですが、Jリーグだとそうした駆け引きや使い分けがない試合も見られます。
  • このシーズンだと、後半戦に対戦した甲府や大分は90分間を通じてほぼ引いて構えてコンサにボールを渡してくれましたが、それでうまく行かないならプランBというか、プレッシングを仕掛けて試合展開を変えられることが望ましい。それができないのは非常に苦しいチームだな、と思って見ていました。

Retreat isn't an option.:

  • ↑で戦術的な使い分けができないと厳しい、みたいなことを書きましたが、このシーズン岩政前監督のコンサの敵陣でのプレッシングもあまり使い分けがなく、ほとんどの試合で相手に対してプレッシングを仕掛けるというスタンスは不変でした。
  • そしてこのプレッシングが監督の退任までのほとんどの期間でなかなか機能しないところがあり、このシーズンコンサが迷走した非常に大きな要因だったと感じます。

  • おそらくこの頑固さが本来の意味での「フィロソフィー」に近いものなんだろうなと思います。プレッシングというのがアグレッシブなものだと捉えるなら十分に攻撃的なフットボールのフィロソフィーは見せてくれたということになるでしょうか。
  • それが不満なら、結局コンサが求めているのは攻撃的なフットボールとかフィロソフィーというのは二の次で別のところにあるのかもしれません。

3バックvs1-3-4-2-1:

  • コンサがシーズン序盤に3バックの1-3-4-2-1ベースのシステムを採用した4試合のうち、相手が3バックの1-3-3-1-3のようなシステムを採用していた2節のvs熊本と、相手が1-4-4-2のシステムを採用していた4節のvsジェフの試合をサンプルとして振り返ります。
  • プレッシングにもビルドアップにもいろいろなやり方がありますが、それぞれ最前線にいるFWやシャドーの選手と後方にいるDFやGKの選手はほぼ必ずプレーに関与するので、特に重要になります。
  • コンサの前線はこの試合、トップに中島、シャドーに田中克幸と長谷川。熊本は3バックが阿部、袴田、岩下、GKが懐かしの佐藤優也で、足でボールを扱うプレーにある程度慣れている選手が揃っていました。


  • 熊本のボール保持に対し、コンサの対応の考え方は、前線でシャドーの克幸と長谷川が左右のDFを担当し、中央は中島が最初から中央のDF(袴田)を担当するのではなく、その背後のアンカーの上村の前に立っていて、熊本のGK佐藤とDF袴田には最初はボールを持たせて良い、という形でした。
  • ですので(結局この試合あまりうまくいかなかったので憶測になりますが)、おそらくコンサが想定していた前線での対応としては、
  • ↑のような感じで、トップの中島がアンカーを見ながら最初は我慢し、シャドーが熊本の中央のDF袴田のパスの受け手を制限して、中央に誘導してから中島がアンカーへのコースを切りながら袴田に寄せていき他の選手(図では高嶺)と2人で対応するような形に持っていくようなイメージだったのかもしれません。

制限・誘導役は適役だったか:

  • しかしこの試合でコンサのプレッシングがうまくいかないパターンを見ると、
  • まず最初にアンカーの前に立っているFWの中島が、GKを追いかけるように前に出ると、熊本のアンカーの上村がフリーのまま誰にも受け渡されない状態でそこに通されてしまったり、

  • 上村には遅れ気味に中盤の馬場や高嶺が対応するけれど、そもそもマンツーマン気味に対応している熊本の選手に対し全てが遅れ気味で全然制限がかかっていなかったり、

  • いずれの現象にせよ以下のことが言える状況でした。
  1. まずFWの仕事がGKやCB袴田まで追いかけるのか、そうではなくて袴田が出てくるまで待つのか が明確になっておらず、中途半端なため、熊本の中央の選手に対して制限がかかっていない
  2. 1人目が制限をかけて、誘導までできたとして、それ以降(相手の2人目、3人目)の対応はおそらくマンツーマンがベースなのだが、熊本の選手に対しどの間合いでボールを奪ったり潰したりできるかが多くの選手で把握できていない

リトリートは余計に悪手:

  • vs熊本では前からプレッシングが機能しないことで前半途中からリトリート気味の対応に切り替えたことで、相手がボールを持ってフリーな状態でコンサゴールに近いところから局面が始まることを受容することとなります。
  • この時、コンサはリトリートから相手のボールを持っている選手にどこで制限をかけていくかが不明瞭なままだったことと、前線のスペースにパスを出された時に簡単にセンターバック(主に大﨑)が出て中央が空き、中に入れられると危険な状態にもかかわらず大﨑やDFが相手のプレーを切ることができないという個人の対応に課題があり、熊本と山口(3節)で似た形から先制点を許します。
  • 熊本、山口相手の5失点のうち大﨑は4失点に大きく関与しており(ついでに言うと開幕戦vs大分の1点目も、難しい状況だったが関与している)、CB(リベロか?)を3年ほどやっていない彼のDF起用や、他の選手も含めたDFの選手全般の個人の出来、そもそも編成上、3バックの選択肢に乏しい(髙尾やパク ミンギュはミシャ体制でDFだったが本来はSBなので跳ね返したりは得意ではないはず)ことも大いに問題だったでしょう。

  • 一方で、vs熊本、vs山口の失点を見ていると、ハイプレスをしたいのはわかりますが、ハイプレスを仕掛けず守備の開始位置を低くして撤退した時にどう守るのかも整理されておらず、このシチュエーションではDFの選手の個々の頑張りに委ねられる部分が大きいように見えました。

ミスマッチで尚更問題となった前線の走力:

  • 4節のvsジェフではコンサが1-3-4-2-1、ジェフが1-4-4-2で、コンサはそのままのシステムでは1v1で捕まえられない選手がいくつか生じます。
  • スタメンは大﨑に変えてCB中央に家泉、前線は依然として試行錯誤が続き、スパチョーク、バカヨコ、出間の3人を起用します。

  • その上でジェフに対しては、WBの近藤と田中宏武を低い位置に配置し、最初はサイドに蓋をして5バックの状態からスタート。
  • ただ結局はこの時もリトリートするというよりはハイプレスを仕掛けたいという姿勢であり、ボールを持っているジェフのDFの選手を捕まえようとしました。

  • しかしジェフに対してそれがうまくいかなかったのは、↑のvs熊本と同じくコンサのFW(1列目)が相手のボールを持っている選手を完全に捕まえるのか、それとも捕まえたり奪ったりというよりはコースを切って誘導して制限をかける役割なのかが中途半端で、前線の選手が中途半端に前に出てコンサの1列目と2列目(FWとMF)の間が空いてしまいそこのスペースを使われてしまったという、それまでの試合からあまり改善が見られない部分がありました。
  • そしてもう一つ、4バックのジェフはそれまでの3試合と比べて、ボールを持った時にDFがピッチの横幅に開いて横にボールを動かしてくる傾向があり、となるとコンサがそこにプレッシングを仕掛けるなら何らかワイドに開いた相手の選手を捕まえるために頑張って走る必要があったのですが、この役割をFWとシャドーの計3人でやるとなると、コンサの前線の選手はピッチを広く使ってくるチームに対して真っ向勝負でプレッシングできるだけの走力やフィジカルが足りてなさすぎるということが露呈された試合でした。
  • vs熊本でも気になったのですが、熊本が中央の袴田と右DFの阿部のところでボールを持つ展開が多かったとして、コンサはそれらとマッチアップする中島や長谷川には比較的マンツーマンに近い(対面の選手である袴田や阿部を管理する)という役割が明確でしたが、右シャドーの田中克幸はこの際、自分の対面の選手(熊本の左DF岩下)を見る仕事しかしていないことが多く、克幸の周辺にボールがない時に、彼がもっとボールサイドに圧縮してくるような対応ができれば熊本の選手がフリーになる余地は少しは消せたのではないかと思います。

  • これは単にチームの方針として、そうした運用にしていた(留めていた)ということなのでしょうけど、前でボールを奪いたいなら対面の選手だけに責任を持つのではなく、↓のように(最初に相手を誘導した上で、ですが)ボール周辺に選手を集め、相手が活動できるスペースを狭めることがも必要になるはずなので、コンサのやり方はあまりにも前線の選手の仕事量が足りなさすぎる印象でした。

  • おそらくこのシーズン、岩政前監督体制でハイプレスが最もうまくいったのが、3月にJ3の福島と対戦したルヴァンカップ。
  • 後半に2失点、延長で3失点を喫し3-6というスコアで派手に散りカップ戦から早々に姿を消すことにはなりましたが、この試合、前線に中島、出間と共に特別指定の佐藤を起用し、福島のCBを出間と佐藤のシャドー2人で見る形としました。

  • ↓の得点も、シャドーの選手がCBをマンツーマンで見るだけではなく、自分の担当する選手と反対側にボールがあるときは中央に絞って相手の複数の選手を見る、またはそのためにスペースを守る役割になっている。
  • 相手がJ3ということでよりアグレッシブな姿勢だったのかもしれませんが、ハイプレスではめていくなら前線にこれくらいの運動量や走力は必要でしょう。

岩政体制 最大の謎 〜1人目の人選〜:

  • 5節(vs秋田)から4バックのシステム1-4-4-2気味に切り替え、勝ったり負けたりを繰り返していたコンサ。ここから前半戦、勝てなかったチームは7節の甲府を除くと、結果的にこのシーズン上位でフィニッシュすることとなるチームでした(大宮、長崎、磐田、鳥栖、仙台、今治、いわき…)。
  • 5-6節はあまり相手がボールを保持しなかったのでプレッシングらしき場面が少なかったとして、7節では↓のように2トップが相手の中盤センターを消して、サイドの選手が早めに前に出てくる形で、そこまでプレッシングというほどの圧力がない対応します。しかしサイドの選手が出た背後のスペースを簡単に使われて前進を許していました。

  • 10節(vs藤枝)頃から前線でのプレッシングのやり方が変わってきます。変則システム(ですが、ビルドアップは4バック+アンカーに近い)の藤枝に対し、2トップのうち1人がアンカーを背中で消して、もう1人は相手の右側、コンサから見て左側のセンターバックに回り込むように寄せていき、相手の左側のCBにボールを持たせるように誘導。そして右MFの近藤がそのCBに出ていくという形でした。以後これが定番になります。

  • 13節(vs山形)では、当時下位に沈んでいた相手にこの形から決勝点を挙げ目に見える形で成果が出ます。
  • しかし11節(vs大宮)、14節(vs磐田)といった、このシーズン昇格プレーオフ圏内に入るチームとの対戦ではコンサの前線守備は簡単に攻略されます。
  • 特に、磐田相手にホームで4失点を喫した14節は前半戦の低空飛行から浮上するチャンスを完全に逸したターニングポイントの一つであり、前半途中の37分でバカヨコ、キムゴンヒの2トップを交代させることとなるなど、開幕直後に比べると持ち直し気味だったチームに再び暗雲が漂います(開始早々の髙尾の致命的なミスなど、前線以外の問題も大きかったですが)。

  • 11節では大宮が3バックの1-3-4-2-1だと予想してコンサは準備していたように見えました。
  • 一応、相手が3バックでも4バックでもFWの1人(バカヨコ)がCBに左側に誘導しながら、そのままボールホルダーに寄せて近藤と2人で制限をかける、というやり方は大きくは変わらなかったと思いますが、

  • 大宮が実際には4バックの1-4-4-2気味の陣形から開始していたため、バカヨコ1人でCBのガブリエウと市原、GKの笠原の計3人を見ることになり、誘導も制限をかけることもできなくなってしまいました。

  • 磐田は前線に角と渡邉が張るシステム1-4-4-2気味からスタート。コンサは磐田の右ウイング・クルークスを警戒し、中村を左MF起用、かつ彼がクルークスのいるサイドで大外を守るべくプレスバックできるよう、中村・クルークスのマッチアップとは反対サイドである、コンサから見て右・磐田の左サイドに誘導を狙います。
  • ↓のようなイメージで、バカヨコ・ゴニの2トップで磐田のGKとCBへの誘導と制限を分担し、左CBのグラッサに渡ったところで近藤とバカヨコで制限をかけるイメージだったと思いますが、

  • なかなかグラッサに制限がかからず、またハッチンソン監督(当時)の磐田はSBが中央に絞る形を持っており、複数パターンのボールの動かし方が用意されていたため、決め打ち気味のコンサのハイプレスは空転します。

  • これらの試合では、まず「パターンを作るのではなく仕組みを作る」と言っていた岩政前監督のコンサですが、前線守備に関しては各々の選手に明確に役割や動き方、振る舞いを振り分けて、ほぼ決め打ちに近くなっていたと感じます。
  • 序盤戦の4連敗で、思った以上にチームの水準が相対的にこのリーグの中で低いところにあると認識しての対応だったのでしょうけど、大宮や磐田は岩政前監督が問題意識を持っていたような「監督の言うとおりにしているだけでは対応できないことをしてくる」相手であり、チームとして完全に相手に上回られた格好でした。

  • そして、コンサはバカヨコが、GKやDFの最初のパスの方向を誘導→そのままボールが渡った選手を追いかけて次のプレーに制限をかける、という2つの連続した役割を担っていましたが、見た感じ、動きの量や連続した動きに特徴があるというよりも、それらが苦手そうなバカヨコにこの役割を要求することに岩政前監督は固執しており、その期待に応えられないバカヨコは5月だけで2度の先発→前半途中での交代という扱いを受け、殆ど干され気味だったジョルディがFWで試されることとなります。

  • 見たところスプリンタータイプというか、本気で走ったら速いのでしょうけどそれを1試合の中で何回も繰り返し連続しては難しそうな特徴のバカヨコは、岩政前監督のかなり辛抱強い指導と起用により少しずつアクションの質が変わっていくこととなりますが、それでも、そもそもあまりその仕事が向いていなさそうな特定の選手に仕事を振り分けて運用していたことは岩政前監督体制での最大の謎ともいえるプロセスでした。

ハードワーカー3銃士の台頭:

  • 5月末の鳥栖相手にまたも似たような展開となりハイプレスが機能せず、以降の試合では組織的に複数選手でプレッシングを行うというよりは、1v1の関係性を意識し対面の選手を監視する、マンツーマン基調のミドルブロックで守るやり方に変わっていきます。
  • この過程で、18節(5/31vs仙台)から木戸、20節(6/21vs藤枝)から長谷川がFWまたはトップ下としてスタメンで起用されるようになります。
  • 特に相手が3バックの際に2トップのコンサがマンツーマンで対応するには、FWが縦関係になる必要がありますが、この関係性に気を配れる2選手が入ったことでようやくコンサに一定のdisciplineが生まれます。


  • 長谷川は先発時、45分でほぼ出し切って木戸と交代することを予め予定していたかのような振る舞いを見せてくれましたが、同じ役割をできる選手が2人いるというのもこのシーズン、特定のスタメンの選手に依存する傾向が強かったコンサではかなり稀な事象だったと思います。

  • 20節から22節までコンサは藤枝、熊本、山口に対しこのシーズン初、そして唯一の3連勝を飾りますが、近藤を負傷で欠いたこの3試合に右MFで先発していたのが白井
  • コンサはこのシーズン一貫してワイドでの対応に課題があり、それはワイドで1v1で守るSBやWBの選手の個人の対応によるところもありますが、一方でワイドで仕掛けてくる相手選手に対し、2v1の関係性を作って縦横それぞれを切るような、今日のフットボールで一般的にもなっている対応がほぼ見られませんでした。

  • 特に右サイドでは、近藤が先に述べたようにハイプレスで重要な役割を担っていることもありますが、前で奪いにいく、いかないに関わらず近藤のプレスバックには物足りなさを感じていたところでした。
  • そこに右MFとして登場した白井は近藤よりも明らかにプレスバックの意識が強く、近藤が主に”前”のみで仕事をする(基本的にハイプレスに参加し、そのまま前に残っているのでサイドアタッカーというかシャドーやFWに近い)とするなら、白井は前でも後ろでも仕事をしてくれる存在で、3連勝の明らかな立役者でした。

  • しかし近藤が復帰した23節(vs磐田)では、再び前半で3失点を喫するそれまでのザルなコンサに逆戻りしてしまいます。
  • この試合は磐田にDFファンデンベルフという新加入の選手がおり、ビルドアップは以前の対戦でも見られた1-3-2-5気味でしたがそのファンデンベルフ活かす形にやや変わっていたこと、コンサがそのことをあまり意識しないようなマンツーマンによるハイプレスを仕掛けて不発だったこともありますが、

  • それでも白井や長谷川、木戸に引っ張られていた数試合を見た後に改めて近藤が右MFに入っての試合を見た感想は、軽すぎる、仕事量が少なすぎる(前でしか仕事をせず1列目を越えられるとプレスバックをあまりしない)という印象は否めませんでした。

  • 失点シーンもさまざまな要因がありますし、7月の磐田というコンディション的にもイージーではない環境でしたが、例えば↓の場面を見てもプレスバックしてスペースを埋めていればなんとかなったかもしれません。彼に限らず磐田戦は自陣ゴール前で粘れない、このシーズンの象徴のような試合でした。

  • 柴田監督の就任後、近藤は27-29節はベンチスタートとなりましたが、監督からは「使いたいと思うプレーを見せてくれ」のように発破ををかけられたという話がありました(確か試合中継中のインタビューより)。これもある種の答え合わせのようなものだったと思います。

3.5 自陣でのボール保持(撤退しての守備)

繋ぎ目が粗すぎる:

  • 一般には、
  1. 敵陣でプレッシングを仕掛けて相手が自陣に入ってくることを阻害する、簡単に自陣ゴール前でプレーさせないようにする
  2. 自陣に入られたら撤退したりブロックを再構築して、自陣ゴール前の危険なエリアを守る
  • という二段階で設計されるかと思いますが、このシーズンのコンサはまず先ほどの3.4で書いたようにハイプレスの意識が高く、かつそれが簡単に突破され、二段階で守ることもできずにゴール前に到達される…という場面もかなりあったこと、またハイプレスを仕掛けるところから始まっている部分が大きいため、3.4で書いた話が主になり、この項目では書くことは少なくなります。
  • 以下では3.4で触れなかった話を中心に整理します。あとは、トランジションとセットプレーについて今回の記事で触れることが難しい(整理して書く労力がない)ので、書ければこの項目に入れておきたいと思います。

個人戦術:

  • 改めて、開幕4連敗を喫した3バックの1-3-4-2-1を採用していた時期は、3バックの中央に大﨑、左に中村またはパク、右は髙尾または西野、という選択がされていましたが、このシーズン台頭した西野以外は本来ゴール前を守る役割ではない選手が起用されていたことは大きかったですし、編成上それでもなんとかなるという楽観ムードでシーズンインしたことは早々に見込み違いだったと証明されることとなります。なお楽観していたのはクラブという大きい主体もそうですし、監督、フロント、サポーター全てにいえることとなるでしょう。
  • 余談ですがこの記事↓見たいのでどなたか切り抜き等あれば見せてください。
  • 大﨑に関しては、自陣ゴールに近いところでの振る舞いというかプレー選択がCBらしくないところはあったかと思います。
  • ↓はクリアミスから始まっていますが、まずクリアというか味方に繋ぐような意識でプレーしていたのかもしれません。わかりやすく、CBとしてスピードやパワーが足りないこともありますが、まずゴール前で危機を察知する能力だったりリスクを排除するような振る舞いに欠け、CBとして近年ほとんどプレーしていないことの影響は否めない印象でした。

  • もう一つ、岩政前監督は4節終了後にインタビューで以下のように語っていましたが、
  • 例えばこの場面では↓、右サイドでジェフの選手(石川?)がボールを持って右SH田中和樹の前方にロングパス、コンサの左WB田中宏武が並走しながらヘディングでクリアしようとしますが失敗し…という場面でしたが、見切れていますが、おそらく宏武は最初から対面の選手に寄りすぎていて、それによってボールの出どころとマークする選手を視界に入れることが難しくなり、そこからの浮き玉のパスに対して最適なポジショニングで対処できなかったのかなと思われます。


  • 別な場面で、このシチュエーション(ゴール前でのクロスボールへの対応)では、DFはまず相手選手を視界に入れ、手と体を使って相手選手をブロックし、ゴール前に走り込みんだりポジショニングを自由にさせないことが必要ですが、そもそもコンサのDFの選手(髙尾、中村…)は全くFWを見ていない。

  • こうした場面を見ると確かに、組織以前に個人戦術に問題がある、という岩政前監督の指摘は(全面的にではないにせよ)正しいところもあったでしょう。

家泉登場、高嶺のDF起用:

  • 4バックの1-4-4-2への移行とともにCBは家泉と西野もしくは高嶺が起用され、その高嶺はSBも兼任しつつ…という状況になり、DFでは右SBの髙尾のみが不動の位置付けでした。
  • 家泉はサイズとパワーはJ2ではおそらく最強格なのですが、CBとしてゴール前を守るというよりは前に出て対面のFWを潰そうとする意識が強く感じられ、そこで対処できればいいとしても、CBの仕事としては、基本的にはいかにゴール前を守るか?という部分より重要になってくる。
  • サイズがあってジャンプもできる選手をCBに起用すれば失点が減るか?というと、家泉が入ってクロスボールや放り込みでやられることが減るという、そう簡単な図式でもなかったと思います。
  • またJ2に一定数、ビルドアップでパスを繋ぐというよりは前に蹴って前進してくるチームがある環境で、CBに高嶺だと家泉を避けてそこを狙ってくるのは当然ですし、また家泉も含めてゴール前を守る能力に課題がある中で、西野を中盤、高嶺をCBといった起用法は無謀だった印象があります。この時期は青木の中盤センター起用もあり、中盤にパワーのある選手が欲しいということと、左利きのCBが欲しいといった思惑があったと思われますが。

4番手から不動のリーダーへ:

  • ↑のコメントでもありますが、浦上は家泉のようなサイズやパワーがない分、粘り強さが持ち味で、簡単に背後を取られたりはしない反面、相手FWへの対応は距離をとってのディレイが多い。
  • 慎重である反面、ボールホルダーと距離をとった判断が裏目になることもありましたが、
  • 一番気になったのは、毎回ディレイして時間を稼いでMFがプレスバックで戻ってきて数的優位を作って…という対応だと、それまでのコンサのハイプレス重視とはアンマッチ気味でもある。
  • 撤退して守る時の約束事というか共通理解が浦上加入とこうしたコミュニケーションでかなり改善されたのは事実であり、またチームとしてハイプレスだけでなく撤退での対応も準備しておくことは重要ですけども、CB中央の選手のプレースタイルや特徴はチームの方向性を大きく左右します。選手特性的にあまり前で守れない選手がCB中央、となると、ハイプレスを仕掛けるスタイルから段々と乖離していくところはありました。

結局は枚数と意識の話なのか…:

  • あとは、4バック採用期は基本的な話として、DF周辺での枚数不足に陥ることが極めて多く、
  • 一つは↓のように(同じ動画を2回目で恐縮ですが)、4バックのコンサに対し、ウイングが幅を取りコンサのSBをサイドに引っ張ってくるという極めてオーソドックスなやり方をとってきた時に、コンサはSBとCBの間、つまりポケットをどう管理するかが決まっておらず選手の頑張り次第な印象でした。
  • この時は左CBの宮が先に動いたことで最後にゴール前でDFの枚数不足になってしまいましたが、近年のフットボールの感覚だと中盤センター(荒野と西野)がポケットを管理できないと中央を守り切ることは難しくなります。
  • 西野はこの時は先に動いてインターセプトに失敗してしまいましたが、全体としては中盤起用の際の西野はよく走ってポケットにも気を配っていた印象があります(あくまで印象論ですが)。
  • (エビデンスなくあくまで印象論ですが)西野の他、高嶺や馬場もポケットに対する問題意識はあったとして、荒野、大﨑あたりはこのサイドの深いところまではケアできていなかったかもしれません。

  • 彼らがケアできていたかどうかは検証が難しいとして、確実に言えるのは自陣のポケットをケアするには走力のあるMFの選手が絶対に必要です。
  • 高嶺、木戸、馬場…はいいとして、宮澤、大﨑、荒野、深井だと年齢的にもこうしたトレンドからは乖離していますし、青木も同様でしょう。若手ですが田中克幸も中盤センターならこの点はもう少し頑張りが必要に思えます。
  • このシーズン、編成の問題としてセンターバックがいないことは容易に認識できる問題ですが、中盤や前線に走力と献身性を両立する選手が、白井のような一部の選手を除いて見当たらないことも挙げられます。


  • そしてサイドでの対応において、サイドハーフの選手のプレスバックの問題を指摘しましたが、必然とコンサのSBは相手のサイドアタッカーとの1v1に晒される機会が多くなります。
  • コンサのSBの対応に関してこれも印象論になりますが、右をほぼ1人でになった髙尾は中央を切ってサイドに誘導しての対応は毎回徹底している印象で、髙尾の対応からからカットインで侵入されて…という場面はそう多くはなかったと思います(34節vs水戸の、斎藤のゴールは髙尾の対応ではないとして)。

  • 左はパクミンギュの1v1がもうすこし粘り強い対応だったら…と感じます。
  • 特に右ワイドでプレーする左利きの選手に対し、簡単に中央方向に運ばれ距離を詰められないままクロスボールを供給される場面が少なくなく、正直なところ1v1に強いとはJ2でもあまり感じられませんでした(足は速いはずですが)

3.6 セットプレー(主に相手コーナーキックの対応):

  • 最後にセットプレーについて。
  • コンサはこのシーズン、セットプレーは綿引コーチの担当で、コーナーキックはゾーン、というかゴール前に特定のマーク対象を持たない選手を4-6人くらいを並べ、残りの選手が相手のターゲットとなる選手をマンツーマンで守るやり方に変えてきました。ちなみにゾーンという意味はセットプレーと流れの中のプレーで異なりますのでご留意ください。

  • 私が感じるのは、↓のゴールなどを見ても、そもそも日本的なスカッド(大きい選手と小さい選手が混在しており、またシャドーのように小さい選手が適すと考えられるポジションが用意されている)だと、ゴール前にマーク対象を持たない選手を4人以上並べるようなCKの守り方は向かないように思えます

  • モダンフットボールでは確かにメッシのような選手はいるにしても、全体としては選手の大型化が進んでいます。
  • CKをゾーン主体で守る(誤認や誤用を広めたくないのでゾーンと言いたくないですが説明が面倒なのでゾーンと書きます)ことのメリットは、「大きいけど相手選手をマークするのがあまり上手くない選手(大型FWのような)に、来たボールを跳ね返すという役割を与え守備の仕組みに組み込みやすいこと」にありますが、これはイングランドやドイツのように平均身長が高い地域の選手が多いチームだったり、そういうフィジカルやサイズに恵まれた選手を集められるチームに向く考え方かと感じます。

  • ↑の失点シーン(vs鳥栖)では、コンサのフィールドプレイヤーはDFが髙尾、家泉、高嶺、田中宏武、MFが近藤、西野、青木、スパチョーク、FWにバカヨコ、田中克幸。
  • この10人のうち、大きい選手からゾーンというか跳ね返す役割を与えますが、この中だと家泉、バカヨコ、西野、髙尾、高嶺がそれに該当し、以降の近藤、宏武、青木、克幸、スパチョーク…が鳥栖のターゲットとなる選手を守っている。

  • ですので青木(174cm 72kg)vs鳥栖の長澤(186cm 83kg)というようなマッチアップになってしまい、いくらゴール前に人を並べていても先に触られて守ることが難しくなります。
  • これがマンツーマンベースなら、長澤のようなパワーのある選手に家泉か西野(か、バカヨコ)を当てることができるので、コンサのスカッドだとその方が向いていると感じます。
  • あとはGKが前に出て触れる選手である場合も、あまり最初からゴール前に人を置かない方が良いのではないでしょうか。

3.7 最後に

  • どこに書くかスペースがないので最後に書きますが、岩政前監督については、コンサ史上最も若手選手を登用した監督の1人だったと言えます。
  • 2021年にプロ契約して4シーズンコンサではほぼ出場機会がなかった西野の能力を見抜きチャンスを与えたほか、大卒2年目の田中克幸、1年目の木戸、高卒2年目の原といった選手にも複数チャンスを与えてきましたし、FWの中島や出間にもフラットな競争環境を与えてきました。
  • それらの選手の中で西野のみがスタメンに定着したというのは、若手選手を使って育てることの難しさでもありますし、使わなければ使え、と言われ、使って結果が出ないと叩かれるという構図が常にある中で、こうしたプロセスや姿勢はクラブが期待するもの(期待だけ投げかけていたとも言えるが)と一貫していたといえます。
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次回は選手に対する個別の感想を書きます。
柴田監督戦術編は大変なので書かないつもりでしたが、監督交代があるなら何らか書き残しておいたほうが良さそうなので検討中とさせてください。

2025年12月4日木曜日

北海道コンサドーレ札幌の2025シーズン(3) 〜フィロソフィーは一夜にしてならず〜

3.「チーム分析のフレームワーク」を念頭に置いた岩政前監督期のチームの振り返り

  • 久々に「チーム分析のフレームワーク」を用いて、岩政前監督期のチームについて改めて検証します。ただフレームワークは私なりにアレンジしています。


3.0 はじめに(改めて、なぜこの選択だったのか):

  • 2025年3月にコンサを去った三上前GMが選定した岩政前監督。
  • 約30年このクラブを支え、クラブに捧げてきた三上前GMですが、まず個人的には三上氏からはフットボールに関して特に強い思想やこだわり、問題意識を感じず、近年は野々村元社長から引き継いだということで野々村氏の路線をなるべく維持することを心がけていたように見えました。
  • そして、その野々村氏はフットボールの競技性というよりも、どちらかというと経営の観点で考えることのほうが多かった(社長なので当たり前ですが)はずで、また野々村氏は戦略的思考というか特定の人物のキャスティングで解決しようとする傾向を感じました。
  • そもそも「攻撃的なサッカー」という曖昧な概念を脱して考えることができていなかったようにも思えますが、とりあえずこの「攻撃的なサッカー」が戦略や方向性だとして、野々村氏にとってはそれはミシャ監督の招聘という一つの人事施策やキャスティングがほぼ全てを占めている。

  • 普通に考えて監督人事だけで何かを成すことはできないはずですが、野々村氏によるミシャ招聘から始まった7年間のサイクルは、名将の神通力や神秘性が薄れ、(コロナウィルスや人件費高騰などもあり)トップチームの編成が難しくなることで尻すぼみとなります。
  • ↓「具体的に何かをやるという予定はないけれど」で始まる2018年のコメントですが、本当に「攻撃的なサッカー」に関する具体策は特になかったという印象です(何かありますか?あれば教えてください)。

 

  • 2024シーズンのJ2降格というショッキングな結果で改めて経営者、GM、リーダーとしての三上氏が大いに責任を問われ、バッシングを浴びることとなり、その三上氏が岩政前監督を招聘したということで、2025シーズンも三上氏が槍玉に挙げられることが多かったように思えますが、そもそもコンサというクラブは過去30年間を通じて、フットボールに対してトップやフロントが真摯に考えた痕跡がかなり薄いクラブです。
  • かつて20年前に柳下元監督の元で若手選手が多い編成でリスタートを図った際には「アクションサッカー」みたいな謎のワードと概念が提唱されました。これは同監督が3年間チームを率いてさまざまなアプローチとアウトプットを見せていただいたことにより、「ラインを押し上げてプレッシングを仕掛けてボールを保持し、敵陣でポジションチェンジなどリスクを冒していく」みたいなことなんだな、ということは当時のフットボールの水準で何となくわかりました。
  • こうした謎のワードと概念 が監督人事と共に唐突に出てきてよくわかんないまま一人歩きすることをコンサは30年間繰り返しており、かつ、どうやらそれが指すものにあまり共通性や一貫性が見られないということで、改めてですがコンサというクラブはフットボールに対してあまり真摯に考えていない組織だと私は見ています。

  • そんな中で、書籍を複数執筆するなどフットボールに対して確固たる理論を持っていた岩政前監督と、対照的にそうした確固たるものがない三上氏(というか、コンサというクラブ)ですが、本来相容れないというか親和性は悪いはずですが、当初ある種の意気投合のような空気は感じられました。
  • この理由はおそらく、ポスト・ミシャを探していたコンサは監督人事の要件として人物の知名度だったりある種のスター性や、スポークスマンとしての能力も要求しており(三上氏の言うところの「コミュニケーション能力がある人」)、岩政前監督もその重要性を理解しつつ、自身にとって意義のあるプロジェクトだと捉えて引き受けたということでしょう。

3.1 全体

岩政前監督のコンセプトや基本思想:

  • どのようなチーム、フットボールを目指したいのか。各種コメント等から拾っていくと主に以下が挙げられます。
  1. 相手を圧倒して勝つ
  2. 選手を躍動させる
  3. パターンを作るのではなく仕組みを作る
  • もう少し抽象度を下げると、「相手を圧倒して」については、
  1. 自分たちがボールを支配する、相手にボールを持たせない(プレッシング&ポゼッション)
  2. 相手ゴールへ前進する質・量を用意しつつ相手を上回る(ビルドアップ)
  3. 相手ゴール前での崩しを用意しつつ相手を上回る
  • 要は全部やるし、どの局面でも上回るよ、みたいなことだったかと私は解釈します。
  • ただ別にこれらはそこまで岩政前監督のオリジナルというか、モダンフットボールにおけるスタンダードな考え方のようなものでもあり、実際にあらゆる局面で上回ることは相当難しいですが、かといって「どこかの局面をや何らかのシチュエーションは捨てます」みたいなことを公言するような考え方はかなり減っている。
  • よく「どの監督もペップバルサを意識している」みたいな指摘をヨーロッパのベテラン監督などが指摘しますが、それはある人にとっては耳の痛い話ではあると同時に、かといって真逆というか極端に何かの要素を捨てて他に特化するようなチーム作りはほとんど見られなくなっています。
  • コンサにおいても岩政前監督の後を継いだ柴田監督も若手指導者らしく、目指すチームとして似たようなことを言っています。

「パターン」と「仕組み」:

  • そして岩政前監督の特徴的な点は、最後の「パターンを作るのではなく仕組みを作る」。
  • ↓の記事でもありますが、

  • 要は、監督が事前に決めた通りにやるだけで相手を上回れるのか。ゲームであるので相手がいて対策を講じてきたりメタ要素みたいなものがある。
  • 本来は「ゲーム」であれば、相手が対策を講じてきたらこちらも出し手を変える。そうではなく事前に決めたやり方しかプランがないとそれだけで打ち手がなくなってしまいます。
  • 個人的にはJリーグを見ていると、ヨーロッパのフットボールに比べ、試合中に戦術変更だったりチームとしてやり方を変えるような展開が非常に少ないと感じます。ハーフタイムがほぼほぼ唯一の戦術変更やプラン変更の機会になっていて、まず前半の試合の入りのゲームプランに失敗すると、劣勢のまま45分間虚無のまま過ごしているチームもしばしば見受けられます。

  • 一方で、
  • そうした応用的な要素だったり相手を見てプレーしたり対応を変えたりといった振る舞いができるようになるには、「応用の前に基礎」ですし、「アウトプットを出すにはインプットが必要」ですし、「守・破・離」とも言いますが何らかセオリー的なものを知っておく必要がある。
  • これも日本代表のようなトップの選手ならともかく、コンサやその他J1J2の平均的な選手で見ると、まず基礎的なインプットが欠けていると感じる場面も少なくありません。

  • コンサだけでなく日本サッカー全体を見ていて、例えばミシャ前監督のチームなんかがまさにそうですが、元々は対戦相手に一定数いた4バックのシステムのチームに対し、前線5人と後方4人で分断して数的優位ベースに泣きどころを突いていく、みたいな考え方だったと思います。
  • それを相手が対策してきた時に基本コンセプトは維持しつつアップデートできないと、相手が5バックで完全にワイドを封鎖されて優位性(数的、質的、その他)を全く担保されていない状態でもワンパターンのプレー(たとえば、マークされていて前を向くのが難しいワイドの選手に毎回イージーに展開し、ワイドの選手が勝ち目の薄い1v1を仕掛け続ける…)に終始する。こんな光景に見覚えはないでしょうか。

重要性と難易度の問題:

  • これを踏まえても岩政前監督は非常に重要な指摘をしていたと感じますが、一方で以前、氏自身が「MTGで選手が聞いている話は監督がしゃべった内容の2割か3割」みたいな感じの話をしていたと思いますが、コンサでも監督のこうした考え方を1から10まで理解しようとする選手は一部でしょう。
  • メッセージは簡素にしても良かったかもしれません。それこそ、最終的には契約解除と共に、このクラブはミシャの亡霊を追い続けたいのだと判明しましたが、メッセージとして「ミシャのチームをアップデートするために特定のパターンに固執せず相手を見て臨機応変にプレーできるチームを目指す」みたいな部分にフォーカスすれば、2割3割の選手、そして0割のサポーターや0割の関係者も引き込むことができたかもしれません。

  • 岩政前監督がコンサに持ち込もうとした考え方は、個人的にはフットボールという競技における重要な示唆に満ちていると感じますが、一方でフットボール≒ミシャ元監督 との考えが強そうなコンサには時期尚早なのか、あまり腹落ち感がない状態で走り出したのかなと推察します。

3.2 自陣でのボール保持(≒ビルドアップ)

「北海道と共に世界へ」から12年:
  • ここからようやくピッチ上の具体的な現象の話に入っていきます。
  • まず岩政前監督のチームの設計の全般について言えることとして、「ボールを持っている側に対し、ボールを持っていない側がほぼマンツーマン気味にプレッシングを仕掛ける」という構図が当たり前のものであるという認識を感じます。
  • ヨーロッパのトップリーグの試合や代表チームの公式戦などを見ていると、フットボールの世界では一定周期でトレンドがぐるぐると周りつつあります。
  • たとえば、一時期はGKもビルドアップに組み入れてボールを保持することで相手に対し常に+1人の数的優位を作ることでアドバンテージが得られる(≒ボールを持っている側が有利な状況になりやすい)、みたいな認識でプレーしていると感じることが多かったのが、その後ボールを持っていない側のプレッシングの仕掛け方やその強度が発達し、GKも含めてボールを持つことのリスクがより増大するようなパワーバランスに変化して、またそこからパワーバランスが揺れ戻されて…という具合です。

  • そうしてパワーバランスが常に変化したりトレンドが回ったりはしますが、雑に言うと「ボールを持っているチームは相手からマンツーマンでプレッシングを喰らう状況を常に想定しているべし」みたいなことは今日の世界のフットボールの共通理解と言って良いのではないでしょうか。
  • その意味では、コンサが2013年に「北海道と共に世界へ」というスローガンを掲げてから12年が経過し、ようやく「世界」のスタンダードを意識した監督が来たな、という印象でした。

2つのシステムとコンセプトの狭間で苦悩する:

  • このシーズン、岩政前監督期のコンサは2つのシステムを採用します。1つは開幕から4節までと、岩政体制でラスト2試合となった24-25節の計5試合で採用された3バックの1-3-4-2-1ベースのもの。もう一つは開幕4連敗ののち、5-23節で採用された4バックの1-4-4-2ベースのものです。
  • この2つは考え方やスタイルが異なります。一言で3バックの1-3-4-2-1といってもチームや監督、選手が異なれば様々なスタイルになりますが、岩政前監督のそれは選手間の距離が比較的近めで、かつそれらの選手が頻繁にポジションとその役割を入れ替えることで相手のマークを外して敵陣に入り、結果としてパスやボールタッチの回数が多くなるようなものだったと考えます。
  • 一方で4バックの1-4-4-2は、選手の距離が比較的広めでポジションチェンジや役割の交換が限定的、つまり、ある程度決まったポジションを取り、あらかじめ決まった役割の遂行に徹する性質が強いものだったと考えます。個人的にはこの後者のスタイルの方が、コンサが慣れ親しんだミシャ元監督のスタイルに近いと感じます。

仕組み≒ ≠パターン:

  • 開幕から4試合で見られた3バックの1-3-4-2-1システムにおける自陣でのボール保持の検証は、2節のvsロアッソ熊本がサンプルとして最も適すと考えます。
  • これは熊本はマンツーマンの意識がかなり強いチームですので、岩政前監督が念頭に置いていたであろう、互いにマンツーマンでプレッシングを仕掛ける展開に最も近い構図となったためです(熊本は18位で降格の憂き目に遭いますが戦術的には非常に興味深いチームでした)。

  • コンサのボール保持は3バックが↓のようなポジショニング(青い円で表記)から開始され、西野(右DF)と大﨑(中央DF)が右にズレたような配置になります。そして中央のスペース(黄色の円で表記)にはあまり人を配置せず、選手が入れ替わりこのスペースに顔を出す設計だといえます。

  • この形からコンサが試みていたのは、
  • ↑のようにボールを保持しながら、ボールを保持している選手にパスコースを維持しつつボールを動かしながら、選手が一定方向にぐるぐると旋回するようにポジションを変え、1v1のマンツーマン気味に対応してくる相手のマークがどこかで外れるように仕掛けて(もしくはその状況を待って)、最終的にはそうしてフリーの選手を作るといったことだったかと思います。
  • これは考え方としては別に岩政前監督のオリジナルでもなく、フットサルではこうしたローテーションの動きは極めてベーシックな戦術の一つですし、最近の11人のサッカーだと、個人的にはインザーギ監督のインテルのようなチームを想起しました。

  • 改めてですが、特にモダンフットボールでは自陣でのボール保持に対し、相手がマンツーマンベースで対応してくる状況が多発する中で、相手が人についてくる(食いついてくる)ことを逆手に取る発想というか、そこに問題意識が強かったのかと思います。

混迷に至ったいくつかのボトルネック:

  • ただ、この熊本戦を0-3で落とし、続くvs山口、vsジェフと開幕4連敗を喫することになるのですが、このシステムにおけるビルドアップがうまくいかなかった理由として、主に以下の3点を感じました。
  1. CBのプレス耐性がなくボールを簡単に手放してしまう
  2. 中央から下がってくる中盤センターの選手の仕事の負荷
  3. ”飛び道具”の不在
  • 主にこの3つを感じました。
  • 1つ目は、この試合であれば大﨑とパクミンギュが該当するのですが、初期配置上、GKに一番近いところにいるこの2選手が通常まずGKからボールを引き取ります。この2選手がボールを持った時に相手(熊本)のFWの選手が前に出て1v1の構図を作り、簡単に前に運んだりパスをしたりを阻害してくるのですが、ここで大﨑やパクが熊本の選手が近い距離に立っていることで必要以上にナーバス、慎重になってしまい、「我慢しつつパスを繋いで相手のマークがずれるところを待つ」というよりも、いきなりボールを手放してしまって相手ボールになるとか、自分がボールを持っている状態をなるべく早く脱したいのか、準備ができていない味方選手にすぐにパスを出してしまい、受け手の選手のミスを誘発する…といった場面が見受けられました。
  • あらゆるビルドアップの形においても基本的にはセンターバック、中央でプレーする選手が最初にボールに触りますし、また最も多くの回数プレーします。開幕時のスカッドだと家泉か大﨑しかおらず、経験豊富な大﨑に託すのは必然ではありましたが、そのCBとしてのパフォーマンスが物足りないところがありました。

  • 2つ目については、高嶺と馬場はその(ややナーバスだった)大﨑やパクから最初にボールを引き取ることが多く、ここでボールを失うと相手のビッグチャンスとなるため、ミスが許されず難しいシチュエーションにあります。ただし「相手が狙っている」、相手がリスクを冒してボールを奪いに来る状況は、そこを逆手に取ればその背後を取ることもでき、そうすれば逆にこちらがビッグチャンスにもなりえます。
  • この際に高嶺と馬場にとって難しいのは、どうしても相手ゴールと逆方向を向きながら下がってくる形でボールに近づき、かつその際にマンツーマンでマークしている相手選手を背中(視界外)に背負った状態で、そこから何らか前方向にボールを届ける、もしくはそれに繋がるようなプレーが求められるということです。
  • ↑のイニエスタはボールを受ける直前にほぼ止まった状態(かつ完全に背後から相手が来るのではなく、おそらく間接視野で相手選手が見えている)ですが、高嶺や馬場は相手のマークを剥がすために動きながらボールを受けることが多く、そうした中で適切な判断とアクションを発揮していくことはより難易度が上がります。

  • 3つ目は、こうしてマンツーマンでしつこく対応してくるチームに対し、たとえば前線のFW(中島)やビルドアップにあまり関与しないワイドの選手(田中宏武)にロングパスを出して、それを受け手がキープすることで味方がボールに直接関与せず頭を休めることができる時間を確保したり、可能ならば中島のような選手の足の速さを活かしてそのまま相手ゴールに突進する…みたいな展開を1度でも見せられれば、守る側としては考慮しなくてはならないプレーが増え迷いが生じたりします。
  • これはこうした”飛び道具”(ロングパスからの展開など)の、受け手・出し手の両方に課題があるのでしょうけど、ロングパス等をうまく使えているとは言い難い状況でした。

5ヶ月を経ての3バックリバイバルは一定の手応え(も、社長は評価せず監督交代へ):

  • 4連敗で3バックのシステムを封印したのち、結果的に岩政前監督体制でのラスト2試合となった24節(vs鳥栖)、25節(vs長崎)で再度3バックの1-3-4-2-1ベースのシステムが採用されます。
  • この24-25節でコンサのスタメンは同じ11人(但し配置は異なる)。GK高木、DF西野、浦上、宮、MF髙尾、高嶺、田中克幸、原、スパチョーク、白井、FWバカヨコ。開幕直後に加入前だったり故障中だった高木、浦上、宮、出場機会が少なかった白井、原といった選手が名を連ねていますが、このシステムでのビルドアップでキーマンと言えるのは西野でした。

  • 先に述べたように、開幕直後はDFと中盤の選手が一定方向にぐるぐる旋回してオリジナルポジションを離れ、マークを外してフリーの選手を作る…という狙いがありましたが、今回の3バックリバイバルでは、オリジナルポジションを離れるのはほぼ西野だけになっていました。
  • ですので、前監督が念頭におくような、「守備側がマンツーマン、1v1の関係を作ってボールを持っている選手を捕まえてくるような試合展開」において、マークを外してフリーの状態を作ってボールを保持したり敵陣に侵入したり…という役割はほぼ西野1人の状況判断やポジショニングに委ねられていました。

  • 開幕当初に目指していたチーム作りからすると、やっていることはややスケールダウン感、現実的なところに落ち着いた感はありますが、25節のvs長崎では、西野をいつもの右ではなく左DFとして起用し、長崎のFWマテウスジェズスとマッチアップする形を”わざと”作り、西野がそこから移動してマテウスのマークを外すことで、コンサはビルドアップにおいて極めて優位な状況を作り出すことに成功します。
  • この西野のポジショニングによってフリーの選手を作ろうとする試みは、柴田監督体制でも踏襲されます。
  • しかしその後、宮の離脱で3バックが西野、浦上、髙尾となったこともあってか、西野が担っていた役割は右DFの髙尾が務めることが多くなります。
  • 基本的にサイドの専門家である髙尾は西野ほど効果的なポジショニングにならないことも少なくなく、またチームとしても岩政前監督体制の末期に見せていたような狙いは徐々に希薄になり、「単に髙尾が通常よりもイレギュラーなポジショニングをしているだけ」になっていたと感じます。

4バック期は自転車操業状態:

  • 5節以降の、4バックのシステムを採用した際の配置は主に以下になります(メンバーは18節、vs仙台)。なお相手のシステムや特徴次第でこちらの配置や狙いは異なりますが、この4バック採用期間はたまたまですが、相手も4バックベースのシステムの採用が多く、コンサがとる配置も必然と似たものとなっていきました。
  • コンサのシステムは1-4-4-2、2トップで表記されることが多いですが、ボール保持の際の配置と役割は1トップ、インサイドハーフ2人、アンカー1人の1-4-1-2-3のシステムがより実態に近くなります。
  • 冒頭に書いたように、3バックの頃と比べ、4バックの採用期は選手間の距離が広めで、ポジションチェンジが少なめという差異がありました。
  • おそらくこれは監督がそうした形に意図的に調整していた部分と、あまり意図的ではなく必然とそうなった部分とがあるように思えますが、ポイントとしては
  1. マークを外したりフリーになる手段としてポジションチェンジを採用しないので、「最初から相手選手に捕まりにくいポジション」を取る必要がある → 相手選手から遠ざかるようにワイドにポジショニングする等
  2. 開幕当初に比べボールを簡単に手放す(≒ロングボールを使う)局面も増える(特に家泉の起用)ので、ロングボールが飛んでくる前提で受け手が離れた(広がった)ポジションングを意識する
  • といったことがあるかと思います。

  • ポジションチェンジが少なくほぼ決まった配置でプレーするということで、一般論としてまずセオリーというか、望ましいボールの動かし方や相手の狙いどころがある程度定まってきます。これは簡単にいうと、①ピッチのサイドではなく中央を使ってなるべく展開したいということと、②相手選手の間に立つ形の選手をうまく使いたいといったことになります。
  • また一般論ではなくそのチームの特徴を踏まえたやり方も定まってきます。要はピッチ上の11人の中に特に優れたクオリティがあり、違いを作れ、味方から信頼される選手がいればその選手にボールが集まりがちですし、逆にそうではない選手がいれば他の選手にボールが集まるとか、そういった状況もよく見られます。

  • この時期のコンサの場合、頻発していた現象としては、まずピッチの中央を使いたいのになかなかそこに縦パスが入らないということでした。
  • ピッチの中央というのはこの仙台のように、相手が1-4-4-2のシステムで守っているとすれば2トップの背後、相手の中盤センター2人の間になります。この付近でコンサの選手がボールを受けて前を向ければ、中央から右にも左にも展開しやすい状況となり、守る側が考慮しなくてはならない領域を増やすことができるためです。

  • 縦パスが入らないのは色々ありますが、まず①単純に相手もそこが狙い(セオリー)だとわかっているから警戒し対策しており、そこを上回る仕掛けや仕組みがないということが言えます。
  • 次に②出し手のCBやGKがあまり中央を狙う意識が強くないとか、技術的に不足しているということも挙げられます。特にGKは高木と菅野でこの中央にパスを出す能力や意識には明確に差があり、菅野は中央よりもサイドのフリーの選手を狙うことが多いと感じます。

  • そして③受け手が中央で我慢せずに移動してしまうとか、本来受け手になる選手が別の役割になってしまうこともあります。
  • これは大﨑や荒野が中央でアンカーの役割の際に多かったのですが、CBの家泉からの縦パスをその前で待つのではなく、大﨑自身が家泉の近く…つまりCBの位置に移動して、縦にパスを出すなど本来CBがやる仕事を大﨑が代行するような構図が、この時期に4バックを採用している試合で頻繁に見られました。
  • 発想としては家泉のようなCBの選手が前にボールを運ぶことが得意ではないとしたら、MFなどより得意な選手がやればよりうまくいく、という発想で、日本サッカーでは以前からよく見られるやり方ですが(それこそミシャ元監督の、MFが下がってボールを持つ形も発想は同じ)、これをやると本来MFとかアンカーとしてより前でボールを受けたりプレーに関与する仕事を遂行する選手が欠落してしまいます。

バカヨコのポストプレーの是非:

  • こうした、4バックの採用時にコンサのDF〜後方のMFのところで生じていた現象(MFがCBの仕事を代行してMFが本来担う仕事が不十分になる)と密接に関係していたのが、バカヨコがFWの位置から下がってボールを受けようとする振る舞いでした。
  • 要はFWとしては、本来は最前線で、相手ゴールに最も近いところで味方のパスを待って文字通りフィニッシュの部分で仕事をすることが役割ですが、待っていてもボールが来ない、後ろから前に運ぶことに苦労しているし、何なら本来MFの選手(DFとFWの間をリンクさせる選手)が持ち場からいなくなっているので、バカヨコが本来の最前線での役割だけでなくそうしたMFの選手がやる役割も担わないと回らない、という判断に基づくものだったでしょう。

  • 但しこの役割にあまり執心してしまうと、今度は本来のゴール前にいてシュートを放ったりシュートチャンスに関与する仕事が疎かになってしまうということで、岩政前監督がバカヨコに対しこの点は熱心に指導というか要求していたようですが、なかなかフィットせずバカヨコは3度(3期間)スタメンを外れてもいます。

  • コンサ以外でバカヨコがプレーしている場面を見たことがないので、彼が本来どういった選手なのかはよくわからないですが、もしかするとセンターFWというよりは所謂9.5番タイプ(カントナ、シェリンガム、ベルカンプ…)なのかなと思っています。
  • それでもシーズン半ばには↓のような、ポストプレーで終わるのではなくそこから次のアクションに移行してフィニッシュに絡むプレーも見せ始め、前監督の要求にフィットしている様子が見えたのは明るい材料ではありました。

3.3 敵陣でのボール保持(相手ゴール前での崩し)

いきなりの洗礼と問題提起の妥当性:

  • このシーズン下位に沈むこととなる大分との開幕戦を0-2で落とすというスタートを切ったコンサ。岩政前監督の「J2らしいサッカー」というコメントも飛び出しましたが、大分はボールを捨て気味にしつつ自陣でコンサの攻撃をどう封じるかを準備してきました。
  • 特にシステム1-5-4-1でゴール前に選手を多く配置した上で、ワイドの近藤に対し常に2人…システム1-5-4-1の5と4にあたる列の左端(左WBと左シャドー)、場合によっては左CBのデルランもカバーリングに回る3人での対応を用意していました。
  • まさにこうした状況が、岩政前監督が問題提起している「あらかじめ決められたことや監督に指示されたことだけをやるのでは頭打ちになる」という話の一例でもあります。
  • そもそもワイドに1v1に強い近藤のような選手を配置するのがモダンフットボールにおける定番の一つだとすれば、そこに2人で対応できるよう準備するのも全く珍しい話ではない。トップを目指すならば全て想定の上でチーム作りをする必要があります。

予測困難性とそもそもの適性:

  • 相手ゴール前での取り組みとして、まずビルドアップから繋がる話ですが、前線の選手も決まったポジションを取らず(決めすぎず)に相手を見ながらプレーしていくという考え方はシーズン当初にはあったと思います。
  • ビルドアップについての内容で言及しましたが、3バックの1-3-4-2-1の採用時はDFが右サイドに移動する形から始まるとして、その前方にいるウイングバックの近藤はワイドに張ってDFと縦に重なるのではなく、中央方向に移動してFWに近い、殆どシャドーのようなポジショニングからスタートし、最終的に前線でボールを受ける際も中央寄りの位置になる状況がよく見られました。(↓は4バックの1-4-4-2を採用した11節のvs大宮ですが、この時も中央寄りのポジショニングが目立った)
  • 但し、近藤がこうして中央寄りでプレーしていた際に、何らか彼にボールが渡って前を向いたとしても、そこから繰り出すプレーは本来得意とするプレー…相手との間合いを測りながら加速して縦に突破するというものがほぼ大半でした。
  • 要はシャドーのようなポジションでプレーしていながら、繰り出すアクションはあまり幅がなく、例えば味方とワンツーで抜け出したり、スルーパスを出したり、前が空いていればミドルシュートを狙ったり、ファーサイドにアーリークロスを狙ったり…といった選択はあまり見られませんでした。
  • これは大半のプレーが右足で行われることもおそらく影響しており、ボールを持った時に中央よりもサイド方向、ピッチの狭い(かつ、彼が本来得意とする)方向に自然と向かいがちで、正直なところあまり特徴がポジティブに発揮されている印象はありませんでした。

ファンタジスタが活きる条件:

  • 岩政前監督は就任当初から「ファンタジスタ」について何度か言及をしており、それは単に好きだから、に加え、冒頭にも書きましたが相手が対策を打ってくる中での打開策の一つになり得ると考えていたこともあると思います。

  • 具体的な選手として青木や田中克幸の名前が出ていましたが、ファンタジスタというかシャドーや攻撃的MF、トップ下タイプの選手くらいに考えておいても問題はないでしょう。
  • 克幸はこのシーズン、岩政前監督体制で11試合に先発の機会を得ており(うち7試合が前線起用)、一定のチャンスは与えられていました。
  • 但し彼のような選手が相手ゴール付近で何らかの仕事(↑で近藤について書いたようなスルーパス、ミドルシュート、クロスボール…)をするにはそもそもボールが届けられることが必要になりますが、まずコンサはビルドアップに課題があったので、前線のシャドーにボールがクリーンに届けられることは稀でした。
  • クリーンではない状況…例えば前線に放り込んだボールを誰かが競り合って、誰かが拾ってマイボールにして、味方も相手もポジショニングや準備が整っていない状況で前線の誰かにパスをして足元に収まる…というような状況だと、ファンタジスタというよりはそれこそ近藤のようなフィジカルに優れた選手の方がより特徴を発揮できる状況になります。

  • ファンタジスタが活きやすい条件としては、上記のそもそも足元にボールが届けられるということに加え、当該選手が相手DFを剥がしたり(ドリブルなどで)、外したりといったアクションがそこまで得意ではないとしたら、何らか相手DFのマークが外れている状況を作る必要があります。
  • これは相手とのシステムの噛み合わせなどでマークが外れやすい状況を作ることもできますが、一番はビルドアップの際に簡単に蹴るのではなく相手を引きつけるアクションが全般に必要になります。これを全て話すと流石に長すぎるので詳しくは↓も見てください。

「ポケットを取る攻撃」のメインキャスト:

  • 岩政前監督が就任当初から言及していた「ポケットを取る」。これも氏の独自性というよりはモダンフットボールにおけるトレンドの一つですが、おそらくこのシーズンにボール保持に関して取り組んだ中では最も成果があったアクションになるでしょう。

  • 10年以上前から「ハーフスペース」という言葉が流行って、それは守る側が4バック系のシステムだと典型的な配置としてDF4人がペナルティエリアの幅くらいにポジショニングし、この(初期)配置を念頭に置いた上でSBとCBの間が開きやすくかつ戦略的に重要だということで、攻撃側はここに選手が入っていく…という現象が頻発しましたが、近年は5バックにするとか、前の選手が下がってくるとか、その2つを併用するとかで簡単にこのエリアを開けるチームはほぼ見られなくなっています。

  • ポケットを取る攻撃が最初に狙いとして見られたのが、ジェフに完敗した4節でした。シーズン終盤にはジェフとコンサのパワーバランスは完全に逆転しており、久々の昇格に向けて走るジェフがフクアリでコンサをワンパンしましたが、4節ではコンサに対しジェフが5バックで撤退する時間帯が多くなります。
  • この試合では↓のような形が何度か見られましたが、
  • こうした形が発現していくには、
  1. サイドの高い位置に3人がいる(人とボールが押し上げられている)
  2. 1人がワイドに張っていて出し手になれる(スペースがあまりない中でも狙うなら、特に浮き玉のパスが重要)
  3. 後方の被カウンターの危険性が排除されている
  4. コンディション(走力)
  • みたいな要素が必要条件になってくるかと思います。
  • まず左サイドだと、この試合はシステム1-3-4-2-1の左シャドーに入っていたスパチョークの関与が目立っていました。最初にスパチョークが降りてきて、試合途中からマンツーマン気味に対応するジェフの右SB高橋がついてくる。
  • 彼の他に、この試合常にワイドに張っていてた田中宏武と攻撃参加を好むDFの中村が左サイドにおり、それぞれワイドの出し手とポケットに走る仕事を担えますが、スパチョークは両方の役割ができ、田中と中村を走らせつつ自らもポケットに走る。前監督が重要だとしたパターンではなく仕組みというか、予測困難性がこの時は存在していたと思います。

  • 右サイドのキャストは髙尾、近藤、馬場。この試合、近藤はワイドに張るようになり、髙尾がそこまで、中村ほど攻撃参加を見せず自重する中で、72分まで出場した馬場の度々のランはとても印象的で、今年はこういうシーンがチームとしても、また馬場個人にもたくさん見られるかなと予感したことを記憶しています。
  • この試合は右シャドーで出間が先発出場し57分までプレーしました(結果的に彼の唯一の先発機会でした)が、出間はあまりこの右サイドでの局面に関与しなかったと記憶しています。

  • そして改めてですが、この4節を最後にコンサは4バックの1-4-4-2のシステムに移行します。
  • 右サイドのキャストはこの髙尾、近藤、馬場で、馬場が退場&負傷離脱する9節(vs水戸)まで変わらず。対する左サイドはスパチョークがFWに移って青木が左MFとなったり、SB候補が軒並み離脱して高嶺がSBになったりとします。
  • 右サイドは割と走力のある選手が揃っており、かつ互いに特徴やプレーの間合いをある程度知っているとして、左は高嶺、青木だと味方に渡してスペースに走るというよりは自らボールを持った状態からアクションを起こすタイプであることもあってか、「ポケットを取る攻撃」が希薄化していたたのは左サイドの方が先だったかと思います。

  • 10節(vs藤枝)では、左SBパクミンギュが復帰したものの、中盤センターに青木と西野、FWに田中克幸とメンバーもかなり変わったこともあって、この辺りからサイドで3選手が関与するような局面はかなり少なくなりました。

  • おそらく直接得点になったと言えそうなのは、近藤のアシストからのバカヨコの得点となったこちらでしょうか。これもポケットというか裏狙い?かもしれませんが、髙尾、馬場、近藤が同じサイドに集まって抜け出す選手を変えながら浮き玉を使って…という点では一定の狙いは感じます。

逆足選手を有効活用できず:

  • ポケットを取る攻撃だけでなく敵陣でのプレー全体において言えるのは、一つはボールを保持しながら前進したいとの意向がありながら、ビルドアップでクリーンに前進する形を殆ど作れないため、最終的にはロングボールからの展開などで不器用に前進し、その状態(整っていない状態)のままプレーしていたことが挙げられます。
  • 序盤こそコンサ相手にボールを渡して撤退してくるチームがいくつかあったものの、シーズン途中からバレてくると撤退してボールを渡してくれるチームはかなり少なくなりました(その後、柴田監督体制で甲府、徳島、大分、といったチームと対戦すると、それらはまたボールを渡してくましたが)。

  • 加えて、右サイドで髙尾、馬場、近藤だと3人とも右利きで、かつサイドで縦方向へのプレーが多くなっていましたが、3人で同じような位置を狙うとするなら、人やタイミングが変わることで変化をつけることは可能にせよ、守る側としてはやることは見えやすかったと思います。
  • 何らかここに左利きの選手が1人いる等によって、イメージとしては下の図の青い線のような方向にも展開できる余地があればより守る側が難しい状況になっていたかもしれません。

ウインガーがいない状態での4バック+ワイドなポジショニング:

  • 先に書いたように、岩政前監督のチームでは3バックの方が選手間が近くポジションチェンジや役割の交換が活発で、4バックの際は選手間の距離が遠くポジションチェンジが控えめでした。そしてボールを持っている時のシステムは1-4-4-2というより1-4-1-2-3に近いのが実情でした。
  • まずこの1-4-1-2-3について、松田浩さん(直近はガンバ大阪フットボール本部長)が以前著書で一般論として述べていたのは、
  1. 選手間が広く選手が密集してワンツーのようなコンビプレーを発揮するとか数的優位を作るような振る舞いにはあまり向かない
  2. どちらかというと1v1で仕事ができる選手(簡単にいうと個人能力、クオリティがあること)が必要
  3. またピッチを広く使える能力(遠くの味方へのロングパスの強さと正確性、スペースに走る足の速さ…)が必要
  • なので、日本の選手が一般に小さくて馬力がなく小回りがきく…といった特徴があるならあまり向くやり方ではないので、積極的に採用しなかった、と説明していました。

  • 岩政前監督は4バックのシステムの採用について「3バックよりも4バックの方が向く(または、3バックでは適性ポジションがなく4バックならありうる)選手が何人かいそうだと思った」と語っていましたが、該当者として具体的に名前が挙げられた数少ない選手が中村桐耶でした。但しこれは「3バックでも4バックでもCBでは物足りないので、SBのポジションがある4バックの方が起用をイメージしやすい」という消極的な理由でもありました。
  • 彼以外にあまり名前を挙げて詳しく説明される選手は見当たりませんでしたが、上記の3バックと4バックの違いを考慮すると家泉なども該当するのではないかと予想します。
  • となると前線の選手の都合というよりも、当時故障者も多かったDFの選手をなんとか組み合わせて最適解を見つけるにあたり4バックのシステムに行き着いたということになります。

  • 前線の選手に関していうと、改めて松田氏が言うには「ワイドで1v1で仕事ができる選手が必要」。
  • コンサが4バックの際にワイド(サイドハーフまたはウイング)を務めたのは、右は不動の近藤、近藤が離脱時には白井。左は青木が最も多く、スパチョークが先発4試合、他、原、長谷川と中村もわずかに左MFで起用されました。

  • 4バックに変えた1試合目の5節(vs秋田)では、カットインから青木の美しいシュートで得点が生まれますが、ウイングの選手に期待したいのは、このようにワイドに張って前を向いてボールを受けて、1v1の状況なら対面のDFと勝負してフィニッシュに持ち込むというもの。

 

  • この試合では1ゴール1アシストで圧巻のパフォーマンスだった青木ですが、これは対戦相手の秋田としては、コンサが4バックに変えて初見で出方がわからず対応が難しかったこともあったかと思います。
  • 徐々に対戦相手がこれにも慣れてくる中で、本来ワイドで1v1で勝つタイプではない青木が以後、ウイングらしいプレーを見せてくれることは稀で、また岩政前監督もこの特性を理解して中盤で起用したりとなります。また宮の沢でのトレーニングでは、青木は左MFの配置ながら下がったり中央に入って行ったりと、左ワイドでの仕事にこだわらなくてもよい様子でしたが、おそらく前監督としてはなんとか選手の特徴を活かそうとしていたのかと推察します。
  • そしてスパチョーク以下他の選手も解決策になることができませんでした。ですのでコンサはこの4バックのシステムにおいて、まず左ウイングに候補者が何人かいたもののフィットする選手がいなかった、ということが指摘できます。

  • 右はほぼ近藤の定位置で、近藤は青木とは特徴が異なり、足の速さやクイックネスが特徴で1v1でより勝負できる選手かと思います。
  • 一方で近藤は大半のプレーを右足で行い、右サイドのみでプレーするため、ボールを持った時にほぼ毎回同じ方向にプレーする。ドリブル突破が成功したとして、右サイドのタッチライン付近で体がゴール方向というよりゴール裏方向?やコーナーフラッグ方向を向いていることが少なくないため、そこから自身が直接ゴールに向かうプレーに移るというよりは、中央方向にクロスボールを折り返す形でのフィニッシュになります。

  • そして白井も近藤と比較的、似た特徴を持っている。ですのでチームの攻撃として見た時に、右サイドからの攻撃はクロスボールの精度が重要になるのですが、クロスボールを蹴る選手としてはそこまで優秀ではないと感じます。
  • このシーズン、近藤は5アシストを記録していますが、ワイドに張ってからのクロスボールからFWの選手に合わせた形としては17節(vs鳥栖)のATに生まれた中島の得点のみで(↑のvs愛媛でのポケット侵入からバカヨコへのアシストもクロスボールといえばクロスボールだが、ここではよりワイドに近い位置でのプレーを念頭に置かせてください)、前のシーズンから感じていたところですが、ワイドに張って仕事をするというよりは中央に入ってよりゴール前での局面に関与するプレーの方が目立ちます。

  • ですのでコンサは左サイドだけでなく右サイドも純粋なウインガーと言えそうな選手が見当たらず、この点が4バックのシステムに移行した後の問題点の1つだったと言えると思います。
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思ったよりも長くなって書いていて疲れたので一旦ここで切ります。
次回はボール非保持の際について言及します。