2025年12月9日火曜日

北海道コンサドーレ札幌の2025シーズン(4) 〜脆すぎた「圧倒」への足掛かり〜

  • 前回はボールを持っている時のプレーの内容で終わってしまったので、続いてボールを持っていない時のプレーについて整理します。
  • サムネは7月にジュビロにボコボコにされた2時間後くらいに機内で出てきた1回目の夜ご飯です(成田→仁川、仁川→アディスアベバの各区間でそれぞれ夜ご飯として機内食が出てくる。え?)。


3.4 敵陣でのボール非保持(≒プレッシング)

本来は駆け引きの一要素だが:

  • 敵陣でこちらがボールを持っていない、相手がボールを持っている時には、積極的にボールを奪いにいくか、もしくは否かという考え方になります。
  • 否の場合はより相手が前進してきた時にボールを奪うように準備をしたり、相手が前進してその後方(こちらから見て前方)にスペースがある状態を誘発させて罠を張っておくといった考え方になりますが、前進させることでこちらのゴールの近くでプレーさせることを許容することにもなります。

  • サッカーの歴史においてプレッシングというものが登場して以来、その活用の積極さだったり開始位置の上下だっだりは一定周期でサイクルが回っています。
  • 近年だとガスペリーニのアタランタのように、フィールドプレイヤー10人でマッチアップを合わせてボール周辺で明確なマンツーマン状態を作って(ただしアタランタは、ボールと遠いところではその限りではないと思います)、DFなどボール保持者や受け手の選手にパニックを誘発する狙いはどのチームも持っていますが、一方でボールを扱う側のスキルや先述面も向上し、マンツーマン要素が強い対応にしないとトップレベルではプレッシングが成立しなくなっている。
  • そしてマンツーマンで守ると、そのマンツーマンを何らか突破されたら自陣ではDFと相手FWが1v1になっており、マンチェスター・シティであればそのFWというのがハーランドだったりするので、ハーランドにスペースを与えた状態で1v1にするリスクを冒してまでやる価値はあるか?という判断を迫られます。

  • ヨーロッパのトップレベルではそうした戦略的な判断、トップ選手同士のデュエルや駆け引きに満ちていますが、現状Jリーグだとそこまでエクストリームな攻防にはなっておらず、マンツーマンで一通りボール周辺のDFを捕まえるだけで簡単に前に蹴ってしまう様子がよく見られます。
  • この際、コンサの2020-21シーズン頃のキム ミンテ、2023-24シーズン頃の岡村大八などがそうですが、マンツーマンでのプレッシングを仕掛けた結果、相手が簡単に蹴ってくるボールを跳ね返したりしてマイボールできる選手の有無がJリーグだと結構重要になってくると思います。

  • また、例えば↑のような状況で岡村のような選手に簡単に跳ね返されるなら、ボールを持っている側は別のやり方を講じる必要があるし、逆に守る側もマンツーマンのDFのところで、ミンテや岡村が跳ね返せないならそもそもマンツーマンでの対応を諦めて一旦撤退する、みたいな駆け引きのようなものが本来はあるはずですが、Jリーグだとそうした駆け引きや使い分けがない試合も見られます。
  • このシーズンだと、後半戦に対戦した甲府や大分は90分間を通じてほぼ引いて構えてコンサにボールを渡してくれましたが、それでうまく行かないならプランBというか、プレッシングを仕掛けて試合展開を変えられることが望ましい。それができないのは非常に苦しいチームだな、と思って見ていました。

Retreat isn't an option.:

  • ↑で戦術的な使い分けができないと厳しい、みたいなことを書きましたが、このシーズン岩政前監督のコンサの敵陣でのプレッシングもあまり使い分けがなく、ほとんどの試合で相手に対してプレッシングを仕掛けるというスタンスは不変でした。
  • そしてこのプレッシングが監督の退任までのほとんどの期間でなかなか機能しないところがあり、このシーズンコンサが迷走した非常に大きな要因だったと感じます。

  • おそらくこの頑固さが本来の意味での「フィロソフィー」に近いものなんだろうなと思います。プレッシングというのがアグレッシブなものだと捉えるなら十分に攻撃的なフットボールのフィロソフィーは見せてくれたということになるでしょうか。
  • それが不満なら、結局コンサが求めているのは攻撃的なフットボールとかフィロソフィーというのは二の次で別のところにあるのかもしれません。

3バックvs1-3-4-2-1:

  • コンサがシーズン序盤に3バックの1-3-4-2-1ベースのシステムを採用した4試合のうち、相手が3バックの1-3-3-1-3のようなシステムを採用していた2節のvs熊本と、相手が1-4-4-2のシステムを採用していた4節のvsジェフの試合をサンプルとして振り返ります。
  • プレッシングにもビルドアップにもいろいろなやり方がありますが、それぞれ最前線にいるFWやシャドーの選手と後方にいるDFやGKの選手はほぼ必ずプレーに関与するので、特に重要になります。
  • コンサの前線はこの試合、トップに中島、シャドーに田中克幸と長谷川。熊本は3バックが阿部、袴田、岩下、GKが懐かしの佐藤優也で、足でボールを扱うプレーにある程度慣れている選手が揃っていました。


  • 熊本のボール保持に対し、コンサの対応の考え方は、前線でシャドーの克幸と長谷川が左右のDFを担当し、中央は中島が最初から中央のDF(袴田)を担当するのではなく、その背後のアンカーの上村の前に立っていて、熊本のGK佐藤とDF袴田には最初はボールを持たせて良い、という形でした。
  • ですので(結局この試合あまりうまくいかなかったので憶測になりますが)、おそらくコンサが想定していた前線での対応としては、
  • ↑のような感じで、トップの中島がアンカーを見ながら最初は我慢し、シャドーが熊本の中央のDF袴田のパスの受け手を制限して、中央に誘導してから中島がアンカーへのコースを切りながら袴田に寄せていき他の選手(図では高嶺)と2人で対応するような形に持っていくようなイメージだったのかもしれません。

制限・誘導役は適役だったか:

  • しかしこの試合でコンサのプレッシングがうまくいかないパターンを見ると、
  • まず最初にアンカーの前に立っているFWの中島が、GKを追いかけるように前に出ると、熊本のアンカーの上村がフリーのまま誰にも受け渡されない状態でそこに通されてしまったり、

  • 上村には遅れ気味に中盤の馬場や高嶺が対応するけれど、そもそもマンツーマン気味に対応している熊本の選手に対し全てが遅れ気味で全然制限がかかっていなかったり、

  • いずれの現象にせよ以下のことが言える状況でした。
  1. まずFWの仕事がGKやCB袴田まで追いかけるのか、そうではなくて袴田が出てくるまで待つのか が明確になっておらず、中途半端なため、熊本の中央の選手に対して制限がかかっていない
  2. 1人目が制限をかけて、誘導までできたとして、それ以降(相手の2人目、3人目)の対応はおそらくマンツーマンがベースなのだが、熊本の選手に対しどの間合いでボールを奪ったり潰したりできるかが多くの選手で把握できていない

リトリートは余計に悪手:

  • vs熊本では前からプレッシングが機能しないことで前半途中からリトリート気味の対応に切り替えたことで、相手がボールを持ってフリーな状態でコンサゴールに近いところから局面が始まることを受容することとなります。
  • この時、コンサはリトリートから相手のボールを持っている選手にどこで制限をかけていくかが不明瞭なままだったことと、前線のスペースにパスを出された時に簡単にセンターバック(主に大﨑)が出て中央が空き、中に入れられると危険な状態にもかかわらず大﨑やDFが相手のプレーを切ることができないという個人の対応に課題があり、熊本と山口(3節)で似た形から先制点を許します。
  • 熊本、山口相手の5失点のうち大﨑は4失点に大きく関与しており(ついでに言うと開幕戦vs大分の1点目も、難しい状況だったが関与している)、CB(リベロか?)を3年ほどやっていない彼のDF起用や、他の選手も含めたDFの選手全般の個人の出来、そもそも編成上、3バックの選択肢に乏しい(髙尾やパク ミンギュはミシャ体制でDFだったが本来はSBなので跳ね返したりは得意ではないはず)ことも大いに問題だったでしょう。

  • 一方で、vs熊本、vs山口の失点を見ていると、ハイプレスをしたいのはわかりますが、ハイプレスを仕掛けず守備の開始位置を低くして撤退した時にどう守るのかも整理されておらず、このシチュエーションではDFの選手の個々の頑張りに委ねられる部分が大きいように見えました。

ミスマッチで尚更問題となった前線の走力:

  • 4節のvsジェフではコンサが1-3-4-2-1、ジェフが1-4-4-2で、コンサはそのままのシステムでは1v1で捕まえられない選手がいくつか生じます。
  • スタメンは大﨑に変えてCB中央に家泉、前線は依然として試行錯誤が続き、スパチョーク、バカヨコ、出間の3人を起用します。

  • その上でジェフに対しては、WBの近藤と田中宏武を低い位置に配置し、最初はサイドに蓋をして5バックの状態からスタート。
  • ただ結局はこの時もリトリートするというよりはハイプレスを仕掛けたいという姿勢であり、ボールを持っているジェフのDFの選手を捕まえようとしました。

  • しかしジェフに対してそれがうまくいかなかったのは、↑のvs熊本と同じくコンサのFW(1列目)が相手のボールを持っている選手を完全に捕まえるのか、それとも捕まえたり奪ったりというよりはコースを切って誘導して制限をかける役割なのかが中途半端で、前線の選手が中途半端に前に出てコンサの1列目と2列目(FWとMF)の間が空いてしまいそこのスペースを使われてしまったという、それまでの試合からあまり改善が見られない部分がありました。
  • そしてもう一つ、4バックのジェフはそれまでの3試合と比べて、ボールを持った時にDFがピッチの横幅に開いて横にボールを動かしてくる傾向があり、となるとコンサがそこにプレッシングを仕掛けるなら何らかワイドに開いた相手の選手を捕まえるために頑張って走る必要があったのですが、この役割をFWとシャドーの計3人でやるとなると、コンサの前線の選手はピッチを広く使ってくるチームに対して真っ向勝負でプレッシングできるだけの走力やフィジカルが足りてなさすぎるということが露呈された試合でした。
  • vs熊本でも気になったのですが、熊本が中央の袴田と右DFの阿部のところでボールを持つ展開が多かったとして、コンサはそれらとマッチアップする中島や長谷川には比較的マンツーマンに近い(対面の選手である袴田や阿部を管理する)という役割が明確でしたが、右シャドーの田中克幸はこの際、自分の対面の選手(熊本の左DF岩下)を見る仕事しかしていないことが多く、克幸の周辺にボールがない時に、彼がもっとボールサイドに圧縮してくるような対応ができれば熊本の選手がフリーになる余地は少しは消せたのではないかと思います。

  • これは単にチームの方針として、そうした運用にしていた(留めていた)ということなのでしょうけど、前でボールを奪いたいなら対面の選手だけに責任を持つのではなく、↓のように(最初に相手を誘導した上で、ですが)ボール周辺に選手を集め、相手が活動できるスペースを狭めることがも必要になるはずなので、コンサのやり方はあまりにも前線の選手の仕事量が足りなさすぎる印象でした。

  • おそらくこのシーズン、岩政前監督体制でハイプレスが最もうまくいったのが、3月にJ3の福島と対戦したルヴァンカップ。
  • 後半に2失点、延長で3失点を喫し3-6というスコアで派手に散りカップ戦から早々に姿を消すことにはなりましたが、この試合、前線に中島、出間と共に特別指定の佐藤を起用し、福島のCBを出間と佐藤のシャドー2人で見る形としました。

  • ↓の得点も、シャドーの選手がCBをマンツーマンで見るだけではなく、自分の担当する選手と反対側にボールがあるときは中央に絞って相手の複数の選手を見る、またはそのためにスペースを守る役割になっている。
  • 相手がJ3ということでよりアグレッシブな姿勢だったのかもしれませんが、ハイプレスではめていくなら前線にこれくらいの運動量や走力は必要でしょう。

岩政体制 最大の謎 〜1人目の人選〜:

  • 5節(vs秋田)から4バックのシステム1-4-4-2気味に切り替え、勝ったり負けたりを繰り返していたコンサ。ここから前半戦、勝てなかったチームは7節の甲府を除くと、結果的にこのシーズン上位でフィニッシュすることとなるチームでした(大宮、長崎、磐田、鳥栖、仙台、今治、いわき…)。
  • 5-6節はあまり相手がボールを保持しなかったのでプレッシングらしき場面が少なかったとして、7節では↓のように2トップが相手の中盤センターを消して、サイドの選手が早めに前に出てくる形で、そこまでプレッシングというほどの圧力がない対応します。しかしサイドの選手が出た背後のスペースを簡単に使われて前進を許していました。

  • 10節(vs藤枝)頃から前線でのプレッシングのやり方が変わってきます。変則システム(ですが、ビルドアップは4バック+アンカーに近い)の藤枝に対し、2トップのうち1人がアンカーを背中で消して、もう1人は相手の右側、コンサから見て左側のセンターバックに回り込むように寄せていき、相手の左側のCBにボールを持たせるように誘導。そして右MFの近藤がそのCBに出ていくという形でした。以後これが定番になります。

  • 13節(vs山形)では、当時下位に沈んでいた相手にこの形から決勝点を挙げ目に見える形で成果が出ます。
  • しかし11節(vs大宮)、14節(vs磐田)といった、このシーズン昇格プレーオフ圏内に入るチームとの対戦ではコンサの前線守備は簡単に攻略されます。
  • 特に、磐田相手にホームで4失点を喫した14節は前半戦の低空飛行から浮上するチャンスを完全に逸したターニングポイントの一つであり、前半途中の37分でバカヨコ、キムゴンヒの2トップを交代させることとなるなど、開幕直後に比べると持ち直し気味だったチームに再び暗雲が漂います(開始早々の髙尾の致命的なミスなど、前線以外の問題も大きかったですが)。

  • 11節では大宮が3バックの1-3-4-2-1だと予想してコンサは準備していたように見えました。
  • 一応、相手が3バックでも4バックでもFWの1人(バカヨコ)がCBに左側に誘導しながら、そのままボールホルダーに寄せて近藤と2人で制限をかける、というやり方は大きくは変わらなかったと思いますが、

  • 大宮が実際には4バックの1-4-4-2気味の陣形から開始していたため、バカヨコ1人でCBのガブリエウと市原、GKの笠原の計3人を見ることになり、誘導も制限をかけることもできなくなってしまいました。

  • 磐田は前線に角と渡邉が張るシステム1-4-4-2気味からスタート。コンサは磐田の右ウイング・クルークスを警戒し、中村を左MF起用、かつ彼がクルークスのいるサイドで大外を守るべくプレスバックできるよう、中村・クルークスのマッチアップとは反対サイドである、コンサから見て右・磐田の左サイドに誘導を狙います。
  • ↓のようなイメージで、バカヨコ・ゴニの2トップで磐田のGKとCBへの誘導と制限を分担し、左CBのグラッサに渡ったところで近藤とバカヨコで制限をかけるイメージだったと思いますが、

  • なかなかグラッサに制限がかからず、またハッチンソン監督(当時)の磐田はSBが中央に絞る形を持っており、複数パターンのボールの動かし方が用意されていたため、決め打ち気味のコンサのハイプレスは空転します。

  • これらの試合では、まず「パターンを作るのではなく仕組みを作る」と言っていた岩政前監督のコンサですが、前線守備に関しては各々の選手に明確に役割や動き方、振る舞いを振り分けて、ほぼ決め打ちに近くなっていたと感じます。
  • 序盤戦の4連敗で、思った以上にチームの水準が相対的にこのリーグの中で低いところにあると認識しての対応だったのでしょうけど、大宮や磐田は岩政前監督が問題意識を持っていたような「監督の言うとおりにしているだけでは対応できないことをしてくる」相手であり、チームとして完全に相手に上回られた格好でした。

  • そして、コンサはバカヨコが、GKやDFの最初のパスの方向を誘導→そのままボールが渡った選手を追いかけて次のプレーに制限をかける、という2つの連続した役割を担っていましたが、見た感じ、動きの量や連続した動きに特徴があるというよりも、それらが苦手そうなバカヨコにこの役割を要求することに岩政前監督は固執しており、その期待に応えられないバカヨコは5月だけで2度の先発→前半途中での交代という扱いを受け、殆ど干され気味だったジョルディがFWで試されることとなります。

  • 見たところスプリンタータイプというか、本気で走ったら速いのでしょうけどそれを1試合の中で何回も繰り返し連続しては難しそうな特徴のバカヨコは、岩政前監督のかなり辛抱強い指導と起用により少しずつアクションの質が変わっていくこととなりますが、それでも、そもそもあまりその仕事が向いていなさそうな特定の選手に仕事を振り分けて運用していたことは岩政前監督体制での最大の謎ともいえるプロセスでした。

ハードワーカー3銃士の台頭:

  • 5月末の鳥栖相手にまたも似たような展開となりハイプレスが機能せず、以降の試合では組織的に複数選手でプレッシングを行うというよりは、1v1の関係性を意識し対面の選手を監視する、マンツーマン基調のミドルブロックで守るやり方に変わっていきます。
  • この過程で、18節(5/31vs仙台)から木戸、20節(6/21vs藤枝)から長谷川がFWまたはトップ下としてスタメンで起用されるようになります。
  • 特に相手が3バックの際に2トップのコンサがマンツーマンで対応するには、FWが縦関係になる必要がありますが、この関係性に気を配れる2選手が入ったことでようやくコンサに一定のdisciplineが生まれます。


  • 長谷川は先発時、45分でほぼ出し切って木戸と交代することを予め予定していたかのような振る舞いを見せてくれましたが、同じ役割をできる選手が2人いるというのもこのシーズン、特定のスタメンの選手に依存する傾向が強かったコンサではかなり稀な事象だったと思います。

  • 20節から22節までコンサは藤枝、熊本、山口に対しこのシーズン初、そして唯一の3連勝を飾りますが、近藤を負傷で欠いたこの3試合に右MFで先発していたのが白井
  • コンサはこのシーズン一貫してワイドでの対応に課題があり、それはワイドで1v1で守るSBやWBの選手の個人の対応によるところもありますが、一方でワイドで仕掛けてくる相手選手に対し、2v1の関係性を作って縦横それぞれを切るような、今日のフットボールで一般的にもなっている対応がほぼ見られませんでした。

  • 特に右サイドでは、近藤が先に述べたようにハイプレスで重要な役割を担っていることもありますが、前で奪いにいく、いかないに関わらず近藤のプレスバックには物足りなさを感じていたところでした。
  • そこに右MFとして登場した白井は近藤よりも明らかにプレスバックの意識が強く、近藤が主に”前”のみで仕事をする(基本的にハイプレスに参加し、そのまま前に残っているのでサイドアタッカーというかシャドーやFWに近い)とするなら、白井は前でも後ろでも仕事をしてくれる存在で、3連勝の明らかな立役者でした。

  • しかし近藤が復帰した23節(vs磐田)では、再び前半で3失点を喫するそれまでのザルなコンサに逆戻りしてしまいます。
  • この試合は磐田にDFファンデンベルフという新加入の選手がおり、ビルドアップは以前の対戦でも見られた1-3-2-5気味でしたがそのファンデンベルフ活かす形にやや変わっていたこと、コンサがそのことをあまり意識しないようなマンツーマンによるハイプレスを仕掛けて不発だったこともありますが、

  • それでも白井や長谷川、木戸に引っ張られていた数試合を見た後に改めて近藤が右MFに入っての試合を見た感想は、軽すぎる、仕事量が少なすぎる(前でしか仕事をせず1列目を越えられるとプレスバックをあまりしない)という印象は否めませんでした。

  • 失点シーンもさまざまな要因がありますし、7月の磐田というコンディション的にもイージーではない環境でしたが、例えば↓の場面を見てもプレスバックしてスペースを埋めていればなんとかなったかもしれません。彼に限らず磐田戦は自陣ゴール前で粘れない、このシーズンの象徴のような試合でした。

  • 柴田監督の就任後、近藤は27-29節はベンチスタートとなりましたが、監督からは「使いたいと思うプレーを見せてくれ」のように発破ををかけられたという話がありました(確か試合中継中のインタビューより)。これもある種の答え合わせのようなものだったと思います。

3.5 自陣でのボール保持(撤退しての守備)

繋ぎ目が粗すぎる:

  • 一般には、
  1. 敵陣でプレッシングを仕掛けて相手が自陣に入ってくることを阻害する、簡単に自陣ゴール前でプレーさせないようにする
  2. 自陣に入られたら撤退したりブロックを再構築して、自陣ゴール前の危険なエリアを守る
  • という二段階で設計されるかと思いますが、このシーズンのコンサはまず先ほどの3.4で書いたようにハイプレスの意識が高く、かつそれが簡単に突破され、二段階で守ることもできずにゴール前に到達される…という場面もかなりあったこと、またハイプレスを仕掛けるところから始まっている部分が大きいため、3.4で書いた話が主になり、この項目では書くことは少なくなります。
  • 以下では3.4で触れなかった話を中心に整理します。あとは、トランジションとセットプレーについて今回の記事で触れることが難しい(整理して書く労力がない)ので、書ければこの項目に入れておきたいと思います。

個人戦術:

  • 改めて、開幕4連敗を喫した3バックの1-3-4-2-1を採用していた時期は、3バックの中央に大﨑、左に中村またはパク、右は髙尾または西野、という選択がされていましたが、このシーズン台頭した西野以外は本来ゴール前を守る役割ではない選手が起用されていたことは大きかったですし、編成上それでもなんとかなるという楽観ムードでシーズンインしたことは早々に見込み違いだったと証明されることとなります。なお楽観していたのはクラブという大きい主体もそうですし、監督、フロント、サポーター全てにいえることとなるでしょう。
  • 余談ですがこの記事↓見たいのでどなたか切り抜き等あれば見せてください。
  • 大﨑に関しては、自陣ゴールに近いところでの振る舞いというかプレー選択がCBらしくないところはあったかと思います。
  • ↓はクリアミスから始まっていますが、まずクリアというか味方に繋ぐような意識でプレーしていたのかもしれません。わかりやすく、CBとしてスピードやパワーが足りないこともありますが、まずゴール前で危機を察知する能力だったりリスクを排除するような振る舞いに欠け、CBとして近年ほとんどプレーしていないことの影響は否めない印象でした。

  • もう一つ、岩政前監督は4節終了後にインタビューで以下のように語っていましたが、
  • 例えばこの場面では↓、右サイドでジェフの選手(石川?)がボールを持って右SH田中和樹の前方にロングパス、コンサの左WB田中宏武が並走しながらヘディングでクリアしようとしますが失敗し…という場面でしたが、見切れていますが、おそらく宏武は最初から対面の選手に寄りすぎていて、それによってボールの出どころとマークする選手を視界に入れることが難しくなり、そこからの浮き玉のパスに対して最適なポジショニングで対処できなかったのかなと思われます。


  • 別な場面で、このシチュエーション(ゴール前でのクロスボールへの対応)では、DFはまず相手選手を視界に入れ、手と体を使って相手選手をブロックし、ゴール前に走り込みんだりポジショニングを自由にさせないことが必要ですが、そもそもコンサのDFの選手(髙尾、中村…)は全くFWを見ていない。

  • こうした場面を見ると確かに、組織以前に個人戦術に問題がある、という岩政前監督の指摘は(全面的にではないにせよ)正しいところもあったでしょう。

家泉登場、高嶺のDF起用:

  • 4バックの1-4-4-2への移行とともにCBは家泉と西野もしくは高嶺が起用され、その高嶺はSBも兼任しつつ…という状況になり、DFでは右SBの髙尾のみが不動の位置付けでした。
  • 家泉はサイズとパワーはJ2ではおそらく最強格なのですが、CBとしてゴール前を守るというよりは前に出て対面のFWを潰そうとする意識が強く感じられ、そこで対処できればいいとしても、CBの仕事としては、基本的にはいかにゴール前を守るか?という部分より重要になってくる。
  • サイズがあってジャンプもできる選手をCBに起用すれば失点が減るか?というと、家泉が入ってクロスボールや放り込みでやられることが減るという、そう簡単な図式でもなかったと思います。
  • またJ2に一定数、ビルドアップでパスを繋ぐというよりは前に蹴って前進してくるチームがある環境で、CBに高嶺だと家泉を避けてそこを狙ってくるのは当然ですし、また家泉も含めてゴール前を守る能力に課題がある中で、西野を中盤、高嶺をCBといった起用法は無謀だった印象があります。この時期は青木の中盤センター起用もあり、中盤にパワーのある選手が欲しいということと、左利きのCBが欲しいといった思惑があったと思われますが。

4番手から不動のリーダーへ:

  • ↑のコメントでもありますが、浦上は家泉のようなサイズやパワーがない分、粘り強さが持ち味で、簡単に背後を取られたりはしない反面、相手FWへの対応は距離をとってのディレイが多い。
  • 慎重である反面、ボールホルダーと距離をとった判断が裏目になることもありましたが、
  • 一番気になったのは、毎回ディレイして時間を稼いでMFがプレスバックで戻ってきて数的優位を作って…という対応だと、それまでのコンサのハイプレス重視とはアンマッチ気味でもある。
  • 撤退して守る時の約束事というか共通理解が浦上加入とこうしたコミュニケーションでかなり改善されたのは事実であり、またチームとしてハイプレスだけでなく撤退での対応も準備しておくことは重要ですけども、CB中央の選手のプレースタイルや特徴はチームの方向性を大きく左右します。選手特性的にあまり前で守れない選手がCB中央、となると、ハイプレスを仕掛けるスタイルから段々と乖離していくところはありました。

結局は枚数と意識の話なのか…:

  • あとは、4バック採用期は基本的な話として、DF周辺での枚数不足に陥ることが極めて多く、
  • 一つは↓のように(同じ動画を2回目で恐縮ですが)、4バックのコンサに対し、ウイングが幅を取りコンサのSBをサイドに引っ張ってくるという極めてオーソドックスなやり方をとってきた時に、コンサはSBとCBの間、つまりポケットをどう管理するかが決まっておらず選手の頑張り次第な印象でした。
  • この時は左CBの宮が先に動いたことで最後にゴール前でDFの枚数不足になってしまいましたが、近年のフットボールの感覚だと中盤センター(荒野と西野)がポケットを管理できないと中央を守り切ることは難しくなります。
  • 西野はこの時は先に動いてインターセプトに失敗してしまいましたが、全体としては中盤起用の際の西野はよく走ってポケットにも気を配っていた印象があります(あくまで印象論ですが)。
  • (エビデンスなくあくまで印象論ですが)西野の他、高嶺や馬場もポケットに対する問題意識はあったとして、荒野、大﨑あたりはこのサイドの深いところまではケアできていなかったかもしれません。

  • 彼らがケアできていたかどうかは検証が難しいとして、確実に言えるのは自陣のポケットをケアするには走力のあるMFの選手が絶対に必要です。
  • 高嶺、木戸、馬場…はいいとして、宮澤、大﨑、荒野、深井だと年齢的にもこうしたトレンドからは乖離していますし、青木も同様でしょう。若手ですが田中克幸も中盤センターならこの点はもう少し頑張りが必要に思えます。
  • このシーズン、編成の問題としてセンターバックがいないことは容易に認識できる問題ですが、中盤や前線に走力と献身性を両立する選手が、白井のような一部の選手を除いて見当たらないことも挙げられます。


  • そしてサイドでの対応において、サイドハーフの選手のプレスバックの問題を指摘しましたが、必然とコンサのSBは相手のサイドアタッカーとの1v1に晒される機会が多くなります。
  • コンサのSBの対応に関してこれも印象論になりますが、右をほぼ1人でになった髙尾は中央を切ってサイドに誘導しての対応は毎回徹底している印象で、髙尾の対応からからカットインで侵入されて…という場面はそう多くはなかったと思います(34節vs水戸の、斎藤のゴールは髙尾の対応ではないとして)。

  • 左はパクミンギュの1v1がもうすこし粘り強い対応だったら…と感じます。
  • 特に右ワイドでプレーする左利きの選手に対し、簡単に中央方向に運ばれ距離を詰められないままクロスボールを供給される場面が少なくなく、正直なところ1v1に強いとはJ2でもあまり感じられませんでした(足は速いはずですが)

3.6 セットプレー(主に相手コーナーキックの対応):

  • 最後にセットプレーについて。
  • コンサはこのシーズン、セットプレーは綿引コーチの担当で、コーナーキックはゾーン、というかゴール前に特定のマーク対象を持たない選手を4-6人くらいを並べ、残りの選手が相手のターゲットとなる選手をマンツーマンで守るやり方に変えてきました。ちなみにゾーンという意味はセットプレーと流れの中のプレーで異なりますのでご留意ください。

  • 私が感じるのは、↓のゴールなどを見ても、そもそも日本的なスカッド(大きい選手と小さい選手が混在しており、またシャドーのように小さい選手が適すと考えられるポジションが用意されている)だと、ゴール前にマーク対象を持たない選手を4人以上並べるようなCKの守り方は向かないように思えます

  • モダンフットボールでは確かにメッシのような選手はいるにしても、全体としては選手の大型化が進んでいます。
  • CKをゾーン主体で守る(誤認や誤用を広めたくないのでゾーンと言いたくないですが説明が面倒なのでゾーンと書きます)ことのメリットは、「大きいけど相手選手をマークするのがあまり上手くない選手(大型FWのような)に、来たボールを跳ね返すという役割を与え守備の仕組みに組み込みやすいこと」にありますが、これはイングランドやドイツのように平均身長が高い地域の選手が多いチームだったり、そういうフィジカルやサイズに恵まれた選手を集められるチームに向く考え方かと感じます。

  • ↑の失点シーン(vs鳥栖)では、コンサのフィールドプレイヤーはDFが髙尾、家泉、高嶺、田中宏武、MFが近藤、西野、青木、スパチョーク、FWにバカヨコ、田中克幸。
  • この10人のうち、大きい選手からゾーンというか跳ね返す役割を与えますが、この中だと家泉、バカヨコ、西野、髙尾、高嶺がそれに該当し、以降の近藤、宏武、青木、克幸、スパチョーク…が鳥栖のターゲットとなる選手を守っている。

  • ですので青木(174cm 72kg)vs鳥栖の長澤(186cm 83kg)というようなマッチアップになってしまい、いくらゴール前に人を並べていても先に触られて守ることが難しくなります。
  • これがマンツーマンベースなら、長澤のようなパワーのある選手に家泉か西野(か、バカヨコ)を当てることができるので、コンサのスカッドだとその方が向いていると感じます。
  • あとはGKが前に出て触れる選手である場合も、あまり最初からゴール前に人を置かない方が良いのではないでしょうか。

3.7 最後に

  • どこに書くかスペースがないので最後に書きますが、岩政前監督については、コンサ史上最も若手選手を登用した監督の1人だったと言えます。
  • 2021年にプロ契約して4シーズンコンサではほぼ出場機会がなかった西野の能力を見抜きチャンスを与えたほか、大卒2年目の田中克幸、1年目の木戸、高卒2年目の原といった選手にも複数チャンスを与えてきましたし、FWの中島や出間にもフラットな競争環境を与えてきました。
  • それらの選手の中で西野のみがスタメンに定着したというのは、若手選手を使って育てることの難しさでもありますし、使わなければ使え、と言われ、使って結果が出ないと叩かれるという構図が常にある中で、こうしたプロセスや姿勢はクラブが期待するもの(期待だけ投げかけていたとも言えるが)と一貫していたといえます。
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次回は選手に対する個別の感想を書きます。
柴田監督戦術編は大変なので書かないつもりでしたが、監督交代があるなら何らか書き残しておいたほうが良さそうなので検討中とさせてください。

2025年12月4日木曜日

北海道コンサドーレ札幌の2025シーズン(3) 〜フィロソフィーは一夜にしてならず〜

3.「チーム分析のフレームワーク」を念頭に置いた岩政前監督期のチームの振り返り

  • 久々に「チーム分析のフレームワーク」を用いて、岩政前監督期のチームについて改めて検証します。ただフレームワークは私なりにアレンジしています。


3.0 はじめに(改めて、なぜこの選択だったのか):

  • 2025年3月にコンサを去った三上前GMが選定した岩政前監督。
  • 約30年このクラブを支え、クラブに捧げてきた三上前GMですが、まず個人的には三上氏からはフットボールに関して特に強い思想やこだわり、問題意識を感じず、近年は野々村元社長から引き継いだということで野々村氏の路線をなるべく維持することを心がけていたように見えました。
  • そして、その野々村氏はフットボールの競技性というよりも、どちらかというと経営の観点で考えることのほうが多かった(社長なので当たり前ですが)はずで、また野々村氏は戦略的思考というか特定の人物のキャスティングで解決しようとする傾向を感じました。
  • そもそも「攻撃的なサッカー」という曖昧な概念を脱して考えることができていなかったようにも思えますが、とりあえずこの「攻撃的なサッカー」が戦略や方向性だとして、野々村氏にとってはそれはミシャ監督の招聘という一つの人事施策やキャスティングがほぼ全てを占めている。

  • 普通に考えて監督人事だけで何かを成すことはできないはずですが、野々村氏によるミシャ招聘から始まった7年間のサイクルは、名将の神通力や神秘性が薄れ、(コロナウィルスや人件費高騰などもあり)トップチームの編成が難しくなることで尻すぼみとなります。
  • ↓「具体的に何かをやるという予定はないけれど」で始まる2018年のコメントですが、本当に「攻撃的なサッカー」に関する具体策は特になかったという印象です(何かありますか?あれば教えてください)。

 

  • 2024シーズンのJ2降格というショッキングな結果で改めて経営者、GM、リーダーとしての三上氏が大いに責任を問われ、バッシングを浴びることとなり、その三上氏が岩政前監督を招聘したということで、2025シーズンも三上氏が槍玉に挙げられることが多かったように思えますが、そもそもコンサというクラブは過去30年間を通じて、フットボールに対してトップやフロントが真摯に考えた痕跡がかなり薄いクラブです。
  • かつて20年前に柳下元監督の元で若手選手が多い編成でリスタートを図った際には「アクションサッカー」みたいな謎のワードと概念が提唱されました。これは同監督が3年間チームを率いてさまざまなアプローチとアウトプットを見せていただいたことにより、「ラインを押し上げてプレッシングを仕掛けてボールを保持し、敵陣でポジションチェンジなどリスクを冒していく」みたいなことなんだな、ということは当時のフットボールの水準で何となくわかりました。
  • こうした謎のワードと概念 が監督人事と共に唐突に出てきてよくわかんないまま一人歩きすることをコンサは30年間繰り返しており、かつ、どうやらそれが指すものにあまり共通性や一貫性が見られないということで、改めてですがコンサというクラブはフットボールに対してあまり真摯に考えていない組織だと私は見ています。

  • そんな中で、書籍を複数執筆するなどフットボールに対して確固たる理論を持っていた岩政前監督と、対照的にそうした確固たるものがない三上氏(というか、コンサというクラブ)ですが、本来相容れないというか親和性は悪いはずですが、当初ある種の意気投合のような空気は感じられました。
  • この理由はおそらく、ポスト・ミシャを探していたコンサは監督人事の要件として人物の知名度だったりある種のスター性や、スポークスマンとしての能力も要求しており(三上氏の言うところの「コミュニケーション能力がある人」)、岩政前監督もその重要性を理解しつつ、自身にとって意義のあるプロジェクトだと捉えて引き受けたということでしょう。

3.1 全体

岩政前監督のコンセプトや基本思想:

  • どのようなチーム、フットボールを目指したいのか。各種コメント等から拾っていくと主に以下が挙げられます。
  1. 相手を圧倒して勝つ
  2. 選手を躍動させる
  3. パターンを作るのではなく仕組みを作る
  • もう少し抽象度を下げると、「相手を圧倒して」については、
  1. 自分たちがボールを支配する、相手にボールを持たせない(プレッシング&ポゼッション)
  2. 相手ゴールへ前進する質・量を用意しつつ相手を上回る(ビルドアップ)
  3. 相手ゴール前での崩しを用意しつつ相手を上回る
  • 要は全部やるし、どの局面でも上回るよ、みたいなことだったかと私は解釈します。
  • ただ別にこれらはそこまで岩政前監督のオリジナルというか、モダンフットボールにおけるスタンダードな考え方のようなものでもあり、実際にあらゆる局面で上回ることは相当難しいですが、かといって「どこかの局面をや何らかのシチュエーションは捨てます」みたいなことを公言するような考え方はかなり減っている。
  • よく「どの監督もペップバルサを意識している」みたいな指摘をヨーロッパのベテラン監督などが指摘しますが、それはある人にとっては耳の痛い話ではあると同時に、かといって真逆というか極端に何かの要素を捨てて他に特化するようなチーム作りはほとんど見られなくなっています。
  • コンサにおいても岩政前監督の後を継いだ柴田監督も若手指導者らしく、目指すチームとして似たようなことを言っています。

「パターン」と「仕組み」:

  • そして岩政前監督の特徴的な点は、最後の「パターンを作るのではなく仕組みを作る」。
  • ↓の記事でもありますが、

  • 要は、監督が事前に決めた通りにやるだけで相手を上回れるのか。ゲームであるので相手がいて対策を講じてきたりメタ要素みたいなものがある。
  • 本来は「ゲーム」であれば、相手が対策を講じてきたらこちらも出し手を変える。そうではなく事前に決めたやり方しかプランがないとそれだけで打ち手がなくなってしまいます。
  • 個人的にはJリーグを見ていると、ヨーロッパのフットボールに比べ、試合中に戦術変更だったりチームとしてやり方を変えるような展開が非常に少ないと感じます。ハーフタイムがほぼほぼ唯一の戦術変更やプラン変更の機会になっていて、まず前半の試合の入りのゲームプランに失敗すると、劣勢のまま45分間虚無のまま過ごしているチームもしばしば見受けられます。

  • 一方で、
  • そうした応用的な要素だったり相手を見てプレーしたり対応を変えたりといった振る舞いができるようになるには、「応用の前に基礎」ですし、「アウトプットを出すにはインプットが必要」ですし、「守・破・離」とも言いますが何らかセオリー的なものを知っておく必要がある。
  • これも日本代表のようなトップの選手ならともかく、コンサやその他J1J2の平均的な選手で見ると、まず基礎的なインプットが欠けていると感じる場面も少なくありません。

  • コンサだけでなく日本サッカー全体を見ていて、例えばミシャ前監督のチームなんかがまさにそうですが、元々は対戦相手に一定数いた4バックのシステムのチームに対し、前線5人と後方4人で分断して数的優位ベースに泣きどころを突いていく、みたいな考え方だったと思います。
  • それを相手が対策してきた時に基本コンセプトは維持しつつアップデートできないと、相手が5バックで完全にワイドを封鎖されて優位性(数的、質的、その他)を全く担保されていない状態でもワンパターンのプレー(たとえば、マークされていて前を向くのが難しいワイドの選手に毎回イージーに展開し、ワイドの選手が勝ち目の薄い1v1を仕掛け続ける…)に終始する。こんな光景に見覚えはないでしょうか。

重要性と難易度の問題:

  • これを踏まえても岩政前監督は非常に重要な指摘をしていたと感じますが、一方で以前、氏自身が「MTGで選手が聞いている話は監督がしゃべった内容の2割か3割」みたいな感じの話をしていたと思いますが、コンサでも監督のこうした考え方を1から10まで理解しようとする選手は一部でしょう。
  • メッセージは簡素にしても良かったかもしれません。それこそ、最終的には契約解除と共に、このクラブはミシャの亡霊を追い続けたいのだと判明しましたが、メッセージとして「ミシャのチームをアップデートするために特定のパターンに固執せず相手を見て臨機応変にプレーできるチームを目指す」みたいな部分にフォーカスすれば、2割3割の選手、そして0割のサポーターや0割の関係者も引き込むことができたかもしれません。

  • 岩政前監督がコンサに持ち込もうとした考え方は、個人的にはフットボールという競技における重要な示唆に満ちていると感じますが、一方でフットボール≒ミシャ元監督 との考えが強そうなコンサには時期尚早なのか、あまり腹落ち感がない状態で走り出したのかなと推察します。

3.2 自陣でのボール保持(≒ビルドアップ)

「北海道と共に世界へ」から12年:
  • ここからようやくピッチ上の具体的な現象の話に入っていきます。
  • まず岩政前監督のチームの設計の全般について言えることとして、「ボールを持っている側に対し、ボールを持っていない側がほぼマンツーマン気味にプレッシングを仕掛ける」という構図が当たり前のものであるという認識を感じます。
  • ヨーロッパのトップリーグの試合や代表チームの公式戦などを見ていると、フットボールの世界では一定周期でトレンドがぐるぐると周りつつあります。
  • たとえば、一時期はGKもビルドアップに組み入れてボールを保持することで相手に対し常に+1人の数的優位を作ることでアドバンテージが得られる(≒ボールを持っている側が有利な状況になりやすい)、みたいな認識でプレーしていると感じることが多かったのが、その後ボールを持っていない側のプレッシングの仕掛け方やその強度が発達し、GKも含めてボールを持つことのリスクがより増大するようなパワーバランスに変化して、またそこからパワーバランスが揺れ戻されて…という具合です。

  • そうしてパワーバランスが常に変化したりトレンドが回ったりはしますが、雑に言うと「ボールを持っているチームは相手からマンツーマンでプレッシングを喰らう状況を常に想定しているべし」みたいなことは今日の世界のフットボールの共通理解と言って良いのではないでしょうか。
  • その意味では、コンサが2013年に「北海道と共に世界へ」というスローガンを掲げてから12年が経過し、ようやく「世界」のスタンダードを意識した監督が来たな、という印象でした。

2つのシステムとコンセプトの狭間で苦悩する:

  • このシーズン、岩政前監督期のコンサは2つのシステムを採用します。1つは開幕から4節までと、岩政体制でラスト2試合となった24-25節の計5試合で採用された3バックの1-3-4-2-1ベースのもの。もう一つは開幕4連敗ののち、5-23節で採用された4バックの1-4-4-2ベースのものです。
  • この2つは考え方やスタイルが異なります。一言で3バックの1-3-4-2-1といってもチームや監督、選手が異なれば様々なスタイルになりますが、岩政前監督のそれは選手間の距離が比較的近めで、かつそれらの選手が頻繁にポジションとその役割を入れ替えることで相手のマークを外して敵陣に入り、結果としてパスやボールタッチの回数が多くなるようなものだったと考えます。
  • 一方で4バックの1-4-4-2は、選手の距離が比較的広めでポジションチェンジや役割の交換が限定的、つまり、ある程度決まったポジションを取り、あらかじめ決まった役割の遂行に徹する性質が強いものだったと考えます。個人的にはこの後者のスタイルの方が、コンサが慣れ親しんだミシャ元監督のスタイルに近いと感じます。

仕組み≒ ≠パターン:

  • 開幕から4試合で見られた3バックの1-3-4-2-1システムにおける自陣でのボール保持の検証は、2節のvsロアッソ熊本がサンプルとして最も適すと考えます。
  • これは熊本はマンツーマンの意識がかなり強いチームですので、岩政前監督が念頭に置いていたであろう、互いにマンツーマンでプレッシングを仕掛ける展開に最も近い構図となったためです(熊本は18位で降格の憂き目に遭いますが戦術的には非常に興味深いチームでした)。

  • コンサのボール保持は3バックが↓のようなポジショニング(青い円で表記)から開始され、西野(右DF)と大﨑(中央DF)が右にズレたような配置になります。そして中央のスペース(黄色の円で表記)にはあまり人を配置せず、選手が入れ替わりこのスペースに顔を出す設計だといえます。

  • この形からコンサが試みていたのは、
  • ↑のようにボールを保持しながら、ボールを保持している選手にパスコースを維持しつつボールを動かしながら、選手が一定方向にぐるぐると旋回するようにポジションを変え、1v1のマンツーマン気味に対応してくる相手のマークがどこかで外れるように仕掛けて(もしくはその状況を待って)、最終的にはそうしてフリーの選手を作るといったことだったかと思います。
  • これは考え方としては別に岩政前監督のオリジナルでもなく、フットサルではこうしたローテーションの動きは極めてベーシックな戦術の一つですし、最近の11人のサッカーだと、個人的にはインザーギ監督のインテルのようなチームを想起しました。

  • 改めてですが、特にモダンフットボールでは自陣でのボール保持に対し、相手がマンツーマンベースで対応してくる状況が多発する中で、相手が人についてくる(食いついてくる)ことを逆手に取る発想というか、そこに問題意識が強かったのかと思います。

混迷に至ったいくつかのボトルネック:

  • ただ、この熊本戦を0-3で落とし、続くvs山口、vsジェフと開幕4連敗を喫することになるのですが、このシステムにおけるビルドアップがうまくいかなかった理由として、主に以下の3点を感じました。
  1. CBのプレス耐性がなくボールを簡単に手放してしまう
  2. 中央から下がってくる中盤センターの選手の仕事の負荷
  3. ”飛び道具”の不在
  • 主にこの3つを感じました。
  • 1つ目は、この試合であれば大﨑とパクミンギュが該当するのですが、初期配置上、GKに一番近いところにいるこの2選手が通常まずGKからボールを引き取ります。この2選手がボールを持った時に相手(熊本)のFWの選手が前に出て1v1の構図を作り、簡単に前に運んだりパスをしたりを阻害してくるのですが、ここで大﨑やパクが熊本の選手が近い距離に立っていることで必要以上にナーバス、慎重になってしまい、「我慢しつつパスを繋いで相手のマークがずれるところを待つ」というよりも、いきなりボールを手放してしまって相手ボールになるとか、自分がボールを持っている状態をなるべく早く脱したいのか、準備ができていない味方選手にすぐにパスを出してしまい、受け手の選手のミスを誘発する…といった場面が見受けられました。
  • あらゆるビルドアップの形においても基本的にはセンターバック、中央でプレーする選手が最初にボールに触りますし、また最も多くの回数プレーします。開幕時のスカッドだと家泉か大﨑しかおらず、経験豊富な大﨑に託すのは必然ではありましたが、そのCBとしてのパフォーマンスが物足りないところがありました。

  • 2つ目については、高嶺と馬場はその(ややナーバスだった)大﨑やパクから最初にボールを引き取ることが多く、ここでボールを失うと相手のビッグチャンスとなるため、ミスが許されず難しいシチュエーションにあります。ただし「相手が狙っている」、相手がリスクを冒してボールを奪いに来る状況は、そこを逆手に取ればその背後を取ることもでき、そうすれば逆にこちらがビッグチャンスにもなりえます。
  • この際に高嶺と馬場にとって難しいのは、どうしても相手ゴールと逆方向を向きながら下がってくる形でボールに近づき、かつその際にマンツーマンでマークしている相手選手を背中(視界外)に背負った状態で、そこから何らか前方向にボールを届ける、もしくはそれに繋がるようなプレーが求められるということです。
  • ↑のイニエスタはボールを受ける直前にほぼ止まった状態(かつ完全に背後から相手が来るのではなく、おそらく間接視野で相手選手が見えている)ですが、高嶺や馬場は相手のマークを剥がすために動きながらボールを受けることが多く、そうした中で適切な判断とアクションを発揮していくことはより難易度が上がります。

  • 3つ目は、こうしてマンツーマンでしつこく対応してくるチームに対し、たとえば前線のFW(中島)やビルドアップにあまり関与しないワイドの選手(田中宏武)にロングパスを出して、それを受け手がキープすることで味方がボールに直接関与せず頭を休めることができる時間を確保したり、可能ならば中島のような選手の足の速さを活かしてそのまま相手ゴールに突進する…みたいな展開を1度でも見せられれば、守る側としては考慮しなくてはならないプレーが増え迷いが生じたりします。
  • これはこうした”飛び道具”(ロングパスからの展開など)の、受け手・出し手の両方に課題があるのでしょうけど、ロングパス等をうまく使えているとは言い難い状況でした。

5ヶ月を経ての3バックリバイバルは一定の手応え(も、社長は評価せず監督交代へ):

  • 4連敗で3バックのシステムを封印したのち、結果的に岩政前監督体制でのラスト2試合となった24節(vs鳥栖)、25節(vs長崎)で再度3バックの1-3-4-2-1ベースのシステムが採用されます。
  • この24-25節でコンサのスタメンは同じ11人(但し配置は異なる)。GK高木、DF西野、浦上、宮、MF髙尾、高嶺、田中克幸、原、スパチョーク、白井、FWバカヨコ。開幕直後に加入前だったり故障中だった高木、浦上、宮、出場機会が少なかった白井、原といった選手が名を連ねていますが、このシステムでのビルドアップでキーマンと言えるのは西野でした。

  • 先に述べたように、開幕直後はDFと中盤の選手が一定方向にぐるぐる旋回してオリジナルポジションを離れ、マークを外してフリーの選手を作る…という狙いがありましたが、今回の3バックリバイバルでは、オリジナルポジションを離れるのはほぼ西野だけになっていました。
  • ですので、前監督が念頭におくような、「守備側がマンツーマン、1v1の関係を作ってボールを持っている選手を捕まえてくるような試合展開」において、マークを外してフリーの状態を作ってボールを保持したり敵陣に侵入したり…という役割はほぼ西野1人の状況判断やポジショニングに委ねられていました。

  • 開幕当初に目指していたチーム作りからすると、やっていることはややスケールダウン感、現実的なところに落ち着いた感はありますが、25節のvs長崎では、西野をいつもの右ではなく左DFとして起用し、長崎のFWマテウスジェズスとマッチアップする形を”わざと”作り、西野がそこから移動してマテウスのマークを外すことで、コンサはビルドアップにおいて極めて優位な状況を作り出すことに成功します。
  • この西野のポジショニングによってフリーの選手を作ろうとする試みは、柴田監督体制でも踏襲されます。
  • しかしその後、宮の離脱で3バックが西野、浦上、髙尾となったこともあってか、西野が担っていた役割は右DFの髙尾が務めることが多くなります。
  • 基本的にサイドの専門家である髙尾は西野ほど効果的なポジショニングにならないことも少なくなく、またチームとしても岩政前監督体制の末期に見せていたような狙いは徐々に希薄になり、「単に髙尾が通常よりもイレギュラーなポジショニングをしているだけ」になっていたと感じます。

4バック期は自転車操業状態:

  • 5節以降の、4バックのシステムを採用した際の配置は主に以下になります(メンバーは18節、vs仙台)。なお相手のシステムや特徴次第でこちらの配置や狙いは異なりますが、この4バック採用期間はたまたまですが、相手も4バックベースのシステムの採用が多く、コンサがとる配置も必然と似たものとなっていきました。
  • コンサのシステムは1-4-4-2、2トップで表記されることが多いですが、ボール保持の際の配置と役割は1トップ、インサイドハーフ2人、アンカー1人の1-4-1-2-3のシステムがより実態に近くなります。
  • 冒頭に書いたように、3バックの頃と比べ、4バックの採用期は選手間の距離が広めで、ポジションチェンジが少なめという差異がありました。
  • おそらくこれは監督がそうした形に意図的に調整していた部分と、あまり意図的ではなく必然とそうなった部分とがあるように思えますが、ポイントとしては
  1. マークを外したりフリーになる手段としてポジションチェンジを採用しないので、「最初から相手選手に捕まりにくいポジション」を取る必要がある → 相手選手から遠ざかるようにワイドにポジショニングする等
  2. 開幕当初に比べボールを簡単に手放す(≒ロングボールを使う)局面も増える(特に家泉の起用)ので、ロングボールが飛んでくる前提で受け手が離れた(広がった)ポジションングを意識する
  • といったことがあるかと思います。

  • ポジションチェンジが少なくほぼ決まった配置でプレーするということで、一般論としてまずセオリーというか、望ましいボールの動かし方や相手の狙いどころがある程度定まってきます。これは簡単にいうと、①ピッチのサイドではなく中央を使ってなるべく展開したいということと、②相手選手の間に立つ形の選手をうまく使いたいといったことになります。
  • また一般論ではなくそのチームの特徴を踏まえたやり方も定まってきます。要はピッチ上の11人の中に特に優れたクオリティがあり、違いを作れ、味方から信頼される選手がいればその選手にボールが集まりがちですし、逆にそうではない選手がいれば他の選手にボールが集まるとか、そういった状況もよく見られます。

  • この時期のコンサの場合、頻発していた現象としては、まずピッチの中央を使いたいのになかなかそこに縦パスが入らないということでした。
  • ピッチの中央というのはこの仙台のように、相手が1-4-4-2のシステムで守っているとすれば2トップの背後、相手の中盤センター2人の間になります。この付近でコンサの選手がボールを受けて前を向ければ、中央から右にも左にも展開しやすい状況となり、守る側が考慮しなくてはならない領域を増やすことができるためです。

  • 縦パスが入らないのは色々ありますが、まず①単純に相手もそこが狙い(セオリー)だとわかっているから警戒し対策しており、そこを上回る仕掛けや仕組みがないということが言えます。
  • 次に②出し手のCBやGKがあまり中央を狙う意識が強くないとか、技術的に不足しているということも挙げられます。特にGKは高木と菅野でこの中央にパスを出す能力や意識には明確に差があり、菅野は中央よりもサイドのフリーの選手を狙うことが多いと感じます。

  • そして③受け手が中央で我慢せずに移動してしまうとか、本来受け手になる選手が別の役割になってしまうこともあります。
  • これは大﨑や荒野が中央でアンカーの役割の際に多かったのですが、CBの家泉からの縦パスをその前で待つのではなく、大﨑自身が家泉の近く…つまりCBの位置に移動して、縦にパスを出すなど本来CBがやる仕事を大﨑が代行するような構図が、この時期に4バックを採用している試合で頻繁に見られました。
  • 発想としては家泉のようなCBの選手が前にボールを運ぶことが得意ではないとしたら、MFなどより得意な選手がやればよりうまくいく、という発想で、日本サッカーでは以前からよく見られるやり方ですが(それこそミシャ元監督の、MFが下がってボールを持つ形も発想は同じ)、これをやると本来MFとかアンカーとしてより前でボールを受けたりプレーに関与する仕事を遂行する選手が欠落してしまいます。

バカヨコのポストプレーの是非:

  • こうした、4バックの採用時にコンサのDF〜後方のMFのところで生じていた現象(MFがCBの仕事を代行してMFが本来担う仕事が不十分になる)と密接に関係していたのが、バカヨコがFWの位置から下がってボールを受けようとする振る舞いでした。
  • 要はFWとしては、本来は最前線で、相手ゴールに最も近いところで味方のパスを待って文字通りフィニッシュの部分で仕事をすることが役割ですが、待っていてもボールが来ない、後ろから前に運ぶことに苦労しているし、何なら本来MFの選手(DFとFWの間をリンクさせる選手)が持ち場からいなくなっているので、バカヨコが本来の最前線での役割だけでなくそうしたMFの選手がやる役割も担わないと回らない、という判断に基づくものだったでしょう。

  • 但しこの役割にあまり執心してしまうと、今度は本来のゴール前にいてシュートを放ったりシュートチャンスに関与する仕事が疎かになってしまうということで、岩政前監督がバカヨコに対しこの点は熱心に指導というか要求していたようですが、なかなかフィットせずバカヨコは3度(3期間)スタメンを外れてもいます。

  • コンサ以外でバカヨコがプレーしている場面を見たことがないので、彼が本来どういった選手なのかはよくわからないですが、もしかするとセンターFWというよりは所謂9.5番タイプ(カントナ、シェリンガム、ベルカンプ…)なのかなと思っています。
  • それでもシーズン半ばには↓のような、ポストプレーで終わるのではなくそこから次のアクションに移行してフィニッシュに絡むプレーも見せ始め、前監督の要求にフィットしている様子が見えたのは明るい材料ではありました。

3.3 敵陣でのボール保持(相手ゴール前での崩し)

いきなりの洗礼と問題提起の妥当性:

  • このシーズン下位に沈むこととなる大分との開幕戦を0-2で落とすというスタートを切ったコンサ。岩政前監督の「J2らしいサッカー」というコメントも飛び出しましたが、大分はボールを捨て気味にしつつ自陣でコンサの攻撃をどう封じるかを準備してきました。
  • 特にシステム1-5-4-1でゴール前に選手を多く配置した上で、ワイドの近藤に対し常に2人…システム1-5-4-1の5と4にあたる列の左端(左WBと左シャドー)、場合によっては左CBのデルランもカバーリングに回る3人での対応を用意していました。
  • まさにこうした状況が、岩政前監督が問題提起している「あらかじめ決められたことや監督に指示されたことだけをやるのでは頭打ちになる」という話の一例でもあります。
  • そもそもワイドに1v1に強い近藤のような選手を配置するのがモダンフットボールにおける定番の一つだとすれば、そこに2人で対応できるよう準備するのも全く珍しい話ではない。トップを目指すならば全て想定の上でチーム作りをする必要があります。

予測困難性とそもそもの適性:

  • 相手ゴール前での取り組みとして、まずビルドアップから繋がる話ですが、前線の選手も決まったポジションを取らず(決めすぎず)に相手を見ながらプレーしていくという考え方はシーズン当初にはあったと思います。
  • ビルドアップについての内容で言及しましたが、3バックの1-3-4-2-1の採用時はDFが右サイドに移動する形から始まるとして、その前方にいるウイングバックの近藤はワイドに張ってDFと縦に重なるのではなく、中央方向に移動してFWに近い、殆どシャドーのようなポジショニングからスタートし、最終的に前線でボールを受ける際も中央寄りの位置になる状況がよく見られました。(↓は4バックの1-4-4-2を採用した11節のvs大宮ですが、この時も中央寄りのポジショニングが目立った)
  • 但し、近藤がこうして中央寄りでプレーしていた際に、何らか彼にボールが渡って前を向いたとしても、そこから繰り出すプレーは本来得意とするプレー…相手との間合いを測りながら加速して縦に突破するというものがほぼ大半でした。
  • 要はシャドーのようなポジションでプレーしていながら、繰り出すアクションはあまり幅がなく、例えば味方とワンツーで抜け出したり、スルーパスを出したり、前が空いていればミドルシュートを狙ったり、ファーサイドにアーリークロスを狙ったり…といった選択はあまり見られませんでした。
  • これは大半のプレーが右足で行われることもおそらく影響しており、ボールを持った時に中央よりもサイド方向、ピッチの狭い(かつ、彼が本来得意とする)方向に自然と向かいがちで、正直なところあまり特徴がポジティブに発揮されている印象はありませんでした。

ファンタジスタが活きる条件:

  • 岩政前監督は就任当初から「ファンタジスタ」について何度か言及をしており、それは単に好きだから、に加え、冒頭にも書きましたが相手が対策を打ってくる中での打開策の一つになり得ると考えていたこともあると思います。

  • 具体的な選手として青木や田中克幸の名前が出ていましたが、ファンタジスタというかシャドーや攻撃的MF、トップ下タイプの選手くらいに考えておいても問題はないでしょう。
  • 克幸はこのシーズン、岩政前監督体制で11試合に先発の機会を得ており(うち7試合が前線起用)、一定のチャンスは与えられていました。
  • 但し彼のような選手が相手ゴール付近で何らかの仕事(↑で近藤について書いたようなスルーパス、ミドルシュート、クロスボール…)をするにはそもそもボールが届けられることが必要になりますが、まずコンサはビルドアップに課題があったので、前線のシャドーにボールがクリーンに届けられることは稀でした。
  • クリーンではない状況…例えば前線に放り込んだボールを誰かが競り合って、誰かが拾ってマイボールにして、味方も相手もポジショニングや準備が整っていない状況で前線の誰かにパスをして足元に収まる…というような状況だと、ファンタジスタというよりはそれこそ近藤のようなフィジカルに優れた選手の方がより特徴を発揮できる状況になります。

  • ファンタジスタが活きやすい条件としては、上記のそもそも足元にボールが届けられるということに加え、当該選手が相手DFを剥がしたり(ドリブルなどで)、外したりといったアクションがそこまで得意ではないとしたら、何らか相手DFのマークが外れている状況を作る必要があります。
  • これは相手とのシステムの噛み合わせなどでマークが外れやすい状況を作ることもできますが、一番はビルドアップの際に簡単に蹴るのではなく相手を引きつけるアクションが全般に必要になります。これを全て話すと流石に長すぎるので詳しくは↓も見てください。

「ポケットを取る攻撃」のメインキャスト:

  • 岩政前監督が就任当初から言及していた「ポケットを取る」。これも氏の独自性というよりはモダンフットボールにおけるトレンドの一つですが、おそらくこのシーズンにボール保持に関して取り組んだ中では最も成果があったアクションになるでしょう。

  • 10年以上前から「ハーフスペース」という言葉が流行って、それは守る側が4バック系のシステムだと典型的な配置としてDF4人がペナルティエリアの幅くらいにポジショニングし、この(初期)配置を念頭に置いた上でSBとCBの間が開きやすくかつ戦略的に重要だということで、攻撃側はここに選手が入っていく…という現象が頻発しましたが、近年は5バックにするとか、前の選手が下がってくるとか、その2つを併用するとかで簡単にこのエリアを開けるチームはほぼ見られなくなっています。

  • ポケットを取る攻撃が最初に狙いとして見られたのが、ジェフに完敗した4節でした。シーズン終盤にはジェフとコンサのパワーバランスは完全に逆転しており、久々の昇格に向けて走るジェフがフクアリでコンサをワンパンしましたが、4節ではコンサに対しジェフが5バックで撤退する時間帯が多くなります。
  • この試合では↓のような形が何度か見られましたが、
  • こうした形が発現していくには、
  1. サイドの高い位置に3人がいる(人とボールが押し上げられている)
  2. 1人がワイドに張っていて出し手になれる(スペースがあまりない中でも狙うなら、特に浮き玉のパスが重要)
  3. 後方の被カウンターの危険性が排除されている
  4. コンディション(走力)
  • みたいな要素が必要条件になってくるかと思います。
  • まず左サイドだと、この試合はシステム1-3-4-2-1の左シャドーに入っていたスパチョークの関与が目立っていました。最初にスパチョークが降りてきて、試合途中からマンツーマン気味に対応するジェフの右SB高橋がついてくる。
  • 彼の他に、この試合常にワイドに張っていてた田中宏武と攻撃参加を好むDFの中村が左サイドにおり、それぞれワイドの出し手とポケットに走る仕事を担えますが、スパチョークは両方の役割ができ、田中と中村を走らせつつ自らもポケットに走る。前監督が重要だとしたパターンではなく仕組みというか、予測困難性がこの時は存在していたと思います。

  • 右サイドのキャストは髙尾、近藤、馬場。この試合、近藤はワイドに張るようになり、髙尾がそこまで、中村ほど攻撃参加を見せず自重する中で、72分まで出場した馬場の度々のランはとても印象的で、今年はこういうシーンがチームとしても、また馬場個人にもたくさん見られるかなと予感したことを記憶しています。
  • この試合は右シャドーで出間が先発出場し57分までプレーしました(結果的に彼の唯一の先発機会でした)が、出間はあまりこの右サイドでの局面に関与しなかったと記憶しています。

  • そして改めてですが、この4節を最後にコンサは4バックの1-4-4-2のシステムに移行します。
  • 右サイドのキャストはこの髙尾、近藤、馬場で、馬場が退場&負傷離脱する9節(vs水戸)まで変わらず。対する左サイドはスパチョークがFWに移って青木が左MFとなったり、SB候補が軒並み離脱して高嶺がSBになったりとします。
  • 右サイドは割と走力のある選手が揃っており、かつ互いに特徴やプレーの間合いをある程度知っているとして、左は高嶺、青木だと味方に渡してスペースに走るというよりは自らボールを持った状態からアクションを起こすタイプであることもあってか、「ポケットを取る攻撃」が希薄化していたたのは左サイドの方が先だったかと思います。

  • 10節(vs藤枝)では、左SBパクミンギュが復帰したものの、中盤センターに青木と西野、FWに田中克幸とメンバーもかなり変わったこともあって、この辺りからサイドで3選手が関与するような局面はかなり少なくなりました。

  • おそらく直接得点になったと言えそうなのは、近藤のアシストからのバカヨコの得点となったこちらでしょうか。これもポケットというか裏狙い?かもしれませんが、髙尾、馬場、近藤が同じサイドに集まって抜け出す選手を変えながら浮き玉を使って…という点では一定の狙いは感じます。

逆足選手を有効活用できず:

  • ポケットを取る攻撃だけでなく敵陣でのプレー全体において言えるのは、一つはボールを保持しながら前進したいとの意向がありながら、ビルドアップでクリーンに前進する形を殆ど作れないため、最終的にはロングボールからの展開などで不器用に前進し、その状態(整っていない状態)のままプレーしていたことが挙げられます。
  • 序盤こそコンサ相手にボールを渡して撤退してくるチームがいくつかあったものの、シーズン途中からバレてくると撤退してボールを渡してくれるチームはかなり少なくなりました(その後、柴田監督体制で甲府、徳島、大分、といったチームと対戦すると、それらはまたボールを渡してくましたが)。

  • 加えて、右サイドで髙尾、馬場、近藤だと3人とも右利きで、かつサイドで縦方向へのプレーが多くなっていましたが、3人で同じような位置を狙うとするなら、人やタイミングが変わることで変化をつけることは可能にせよ、守る側としてはやることは見えやすかったと思います。
  • 何らかここに左利きの選手が1人いる等によって、イメージとしては下の図の青い線のような方向にも展開できる余地があればより守る側が難しい状況になっていたかもしれません。

ウインガーがいない状態での4バック+ワイドなポジショニング:

  • 先に書いたように、岩政前監督のチームでは3バックの方が選手間が近くポジションチェンジや役割の交換が活発で、4バックの際は選手間の距離が遠くポジションチェンジが控えめでした。そしてボールを持っている時のシステムは1-4-4-2というより1-4-1-2-3に近いのが実情でした。
  • まずこの1-4-1-2-3について、松田浩さん(直近はガンバ大阪フットボール本部長)が以前著書で一般論として述べていたのは、
  1. 選手間が広く選手が密集してワンツーのようなコンビプレーを発揮するとか数的優位を作るような振る舞いにはあまり向かない
  2. どちらかというと1v1で仕事ができる選手(簡単にいうと個人能力、クオリティがあること)が必要
  3. またピッチを広く使える能力(遠くの味方へのロングパスの強さと正確性、スペースに走る足の速さ…)が必要
  • なので、日本の選手が一般に小さくて馬力がなく小回りがきく…といった特徴があるならあまり向くやり方ではないので、積極的に採用しなかった、と説明していました。

  • 岩政前監督は4バックのシステムの採用について「3バックよりも4バックの方が向く(または、3バックでは適性ポジションがなく4バックならありうる)選手が何人かいそうだと思った」と語っていましたが、該当者として具体的に名前が挙げられた数少ない選手が中村桐耶でした。但しこれは「3バックでも4バックでもCBでは物足りないので、SBのポジションがある4バックの方が起用をイメージしやすい」という消極的な理由でもありました。
  • 彼以外にあまり名前を挙げて詳しく説明される選手は見当たりませんでしたが、上記の3バックと4バックの違いを考慮すると家泉なども該当するのではないかと予想します。
  • となると前線の選手の都合というよりも、当時故障者も多かったDFの選手をなんとか組み合わせて最適解を見つけるにあたり4バックのシステムに行き着いたということになります。

  • 前線の選手に関していうと、改めて松田氏が言うには「ワイドで1v1で仕事ができる選手が必要」。
  • コンサが4バックの際にワイド(サイドハーフまたはウイング)を務めたのは、右は不動の近藤、近藤が離脱時には白井。左は青木が最も多く、スパチョークが先発4試合、他、原、長谷川と中村もわずかに左MFで起用されました。

  • 4バックに変えた1試合目の5節(vs秋田)では、カットインから青木の美しいシュートで得点が生まれますが、ウイングの選手に期待したいのは、このようにワイドに張って前を向いてボールを受けて、1v1の状況なら対面のDFと勝負してフィニッシュに持ち込むというもの。

 

  • この試合では1ゴール1アシストで圧巻のパフォーマンスだった青木ですが、これは対戦相手の秋田としては、コンサが4バックに変えて初見で出方がわからず対応が難しかったこともあったかと思います。
  • 徐々に対戦相手がこれにも慣れてくる中で、本来ワイドで1v1で勝つタイプではない青木が以後、ウイングらしいプレーを見せてくれることは稀で、また岩政前監督もこの特性を理解して中盤で起用したりとなります。また宮の沢でのトレーニングでは、青木は左MFの配置ながら下がったり中央に入って行ったりと、左ワイドでの仕事にこだわらなくてもよい様子でしたが、おそらく前監督としてはなんとか選手の特徴を活かそうとしていたのかと推察します。
  • そしてスパチョーク以下他の選手も解決策になることができませんでした。ですのでコンサはこの4バックのシステムにおいて、まず左ウイングに候補者が何人かいたもののフィットする選手がいなかった、ということが指摘できます。

  • 右はほぼ近藤の定位置で、近藤は青木とは特徴が異なり、足の速さやクイックネスが特徴で1v1でより勝負できる選手かと思います。
  • 一方で近藤は大半のプレーを右足で行い、右サイドのみでプレーするため、ボールを持った時にほぼ毎回同じ方向にプレーする。ドリブル突破が成功したとして、右サイドのタッチライン付近で体がゴール方向というよりゴール裏方向?やコーナーフラッグ方向を向いていることが少なくないため、そこから自身が直接ゴールに向かうプレーに移るというよりは、中央方向にクロスボールを折り返す形でのフィニッシュになります。

  • そして白井も近藤と比較的、似た特徴を持っている。ですのでチームの攻撃として見た時に、右サイドからの攻撃はクロスボールの精度が重要になるのですが、クロスボールを蹴る選手としてはそこまで優秀ではないと感じます。
  • このシーズン、近藤は5アシストを記録していますが、ワイドに張ってからのクロスボールからFWの選手に合わせた形としては17節(vs鳥栖)のATに生まれた中島の得点のみで(↑のvs愛媛でのポケット侵入からバカヨコへのアシストもクロスボールといえばクロスボールだが、ここではよりワイドに近い位置でのプレーを念頭に置かせてください)、前のシーズンから感じていたところですが、ワイドに張って仕事をするというよりは中央に入ってよりゴール前での局面に関与するプレーの方が目立ちます。

  • ですのでコンサは左サイドだけでなく右サイドも純粋なウインガーと言えそうな選手が見当たらず、この点が4バックのシステムに移行した後の問題点の1つだったと言えると思います。
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思ったよりも長くなって書いていて疲れたので一旦ここで切ります。
次回はボール非保持の際について言及します。

2025年12月3日水曜日

北海道コンサドーレ札幌の2025シーズン(2) 〜時効なき残債処理〜

2.あんなこと、こんなこと、あったでしょう〜

  • 今回はこのシーズンの背景やピッチ外での重要なトピックについて振り返ります。
  • 記号の意味は各トピックを、シーズンへの影響として ⚪︎:よかった ×悪かった ?:どちらともいえない と分別したものです。
  • 余談ですが今まで黙ってましたがいわきでレンタカーぶつけました。まぁ保険入ってましたが…


×:前年夏のパニックバイムーブのおかげでオフに身動きが取れず

  • 24年にコンサの降格が決まるか、現実味を帯びるか、もしくはまだまだ可能性がある段階からこうした質問が何度か飛んできて回答したのですが、JリーグではJ2降格→主力選手の大量放出 という図式は簡単には成立しなくなっています。
  • 実際のところ24年オフのコンサも、スタメン級の選手では岡村と浅野のみが移籍金が支払われる移籍、鈴木武蔵がレンタルバック、駒井と菅がクラブ側から契約非更新による移籍であり、引き抜かれたのは実質的に岡村と浅野のみで、スタメン級の選手ではGKの菅野や高木、DFのパクミンギュ、髙尾、MFの大﨑、馬場、荒野、宮澤、青木、近藤、前線のスパチョークといった選手はJ2でのシーズンを戦うメンバーとして確保されました。
  • 20年前であればJリーグでは、30歳未満の選手は契約切れであってもフリートランスファーにはならず移籍金が発生するローカルルールがありましたが、現在は契約切れであれば移籍金0で獲得できるので、町田ゼルビアのようなチームを除けば大半のチームは契約切れの選手を移籍市場で漁るような動きをしていると推察されます。
  • 今回のコンサも、例に挙げた22年に降格した際の清水も、主力選手で他のチームが欲しがる選手に契約が切れる選手があまりいなかったため、ファンが予想するほどの選手の大規模な放出はなかったと思われます。

  • 一方でスカッドの入れ替えという点で考えると、一定は選手を放出して年俸分を浮かせたり、場合によっては移籍金収入を得たり、またポジションを空けて競争を促すことも時に必要になります。
  • この点において、今回のコンサは24年夏時点で予算を使い切り(25年に黒字必達となり)、かつ保有していた選手の多くが複数年契約中で24年オフに契約が切れる選手が少なく、新しい選手を連れてくるために選手を売ったりすることが能動的にできず、いわば補強に動きたくても”身動きが取れない”状況でした。
  • 24年に7シーズン守ってきたJ1の椅子をどうしても手放したくない!という気持ちはわからなくもないですし、大半のサポーターはそうしたクラブの姿勢を支持していたと思いますが、結果的には先のことなんか全然考えていない、サステナビリティを感じさせない判断やアクションのつけを、この25シーズンに1年遅れで支払うことになりました。結局は前年のパニックバイと、その責任者である三上前GMがこのシーズンの全ての元凶なのです…。

  • …というふうに、「全て〜〜が悪い」とか、「Aさんは100%善人または優秀で、その後任のBさんは悪人であり無能」みたいな、情報を削ぎ落として白か黒かをとりあえず断定して、考えることを放棄させることが昨今のトレンドというか、バズるにはこういう感じの煽りとかトップラインが必要なのでしょうけど、基本的に全ての物事には前後の文脈があってつながっています。
  • 確かに直前を見れば24年夏のパニックバイが不発だったのは大きい。しかしなぜそこに至ったかといえば成績不振があり、なぜコンサが弱いのかといえば色々ありますが、一つはこのクラブには30年間の歴史を見てもプレーモデルといえそうなものがほぼ存在しない。なんとなく誰かが「このサッカーは好き」(あとは決めるだけ)、「この監督じゃダメ」といった雰囲気で判断することを続けてきた末にこうした状況に陥っているのであって、単に、前の年にたくさんお金を使いすぎたとか、そこで加入した選手があまり戦力になっていないとか、それだけの問題にとどまらないことを理解しないと先に進めません。

  • なお24年のパニックバイは三上前GM曰く「石屋製菓さんはじめスポンサーサイドから『財政的に無理をしてでも大型補強してJ1残留を目指しましょう』とする働きかけがあった」そうですが(三上前GMは当初「黒字確保は絶対」と言っていました)、憶測ですがもしかすると既にこの時点でコミュニケーションミスがあったのかもしれません。
  • (のちに社長に就任する石水氏が「自分が就任した時点で赤字予算だった!」と不満を述べていましたが、石水氏が同意したのは24年後半戦に大量の招待を行ってホームゲームのスタンドを埋めつつクラブに資金提供を行うことであり、その資金を24年夏の移籍に注ぎ込むまでは同意していなかったのか?と推察する次第です)

  • 余談ですが、先述の「20代の選手は契約切れでも移籍金が発生する時期」にJ2に降格したチームで、例えば05年に降格した柏は、明神、玉田、永田、矢野、波戸、土屋、大野といった主力級の選手を、いずれも移籍金が発生する形で放出したとされます。
  • しかしこれによって柏は、スタメンのポジションが空いて選手を競争させることができましたし、移籍市場で動くだけの資金も得られたはずです。結果、新たな監督(石崎信弘氏)の下、1年でJ1復帰を果たした柏は、J1を戦う07シーズンは大谷、菅沼、李、小林亮といった若手がスタメンに名を連ねるようになり、新監督にマッチする編成への転換もしくは若手主体のチームへの転換に成功します。
  • もっとも柏の場合、親会社に稟議を通せば補強資金としてまとまった予算が得られますし、それでこの時期もDF古賀の獲得や、外国籍選手ではディエゴソウザ、フランサといった前線の軸になる選手を確保していたので、コンサとは単純比較はできないのですが。

?:菅、駒井をフリーで放出(他、青木を慰留など)

  • 24シーズンオフにフリーで放出された4選手(菅、駒井、阿波加、小林祐希)のうち、毎年何らかのポジションで試合に出ていて、かつ26歳と若い菅の処遇に関してはサポーターの中でも賛否が別れる、というか否、もしくは不可解だとされる反応が多かったと思います。
  • これについては放出から半年後、4月の決算報告時にほぼ答え合わせになりそうなリリースがありました。
  • 例の「居住・非居住問題」…想定していなかった分の大型支出が生じたため、普通に考えれば1年契約くらいは提示できたであろう菅や駒井を諦めざるをえなかった、ということかと思います。同じく契約が切れるタイミングだったとの報道があった青木は、そうした状況でも全力で慰留したかったということになります。
  • 3選手のうち、菅は3バックの左WBのほぼ専門ということで駒井、青木を含めた3人の中では最も起用法が制限されますし、得点やアシスト等で直接スコアに関係する働きが少ない。残る2人はいずれも複数ポジションで起用可能ですが、青木の方が若く得点に絡む能力があることなども考慮されたのかと思います。

  • 菅を放出したコンサはこのシーズン、序盤に3バックから4バックベースのシステムに切り替えますが、左利きのDFであるパクミンギュ、岡田、中村桐耶が3〜5月にかけて相次いで離脱する緊急事態となりました。
  • ただ菅はあくまでDFというよりは大外をアップダウンする選手なので、岩政監督が掲げるスタイルにおいては、もう少しボールを動かして味方を使える選手の方が求められる状況で、菅を無理してでも残すべき状況だったとは個人的には思いません。

  • 駒井に関しては、夏のマーケットでの馬場の移籍や故障、高嶺のDF起用(後述)もあり、シーズン中に中盤センターのスタメン級の選手が欲しい状況になったと言えるかもしれません。
  • ただし私の見方としては、駒井は中盤センターというよりはもう少し前のインサイドハーフやシャドーが得意であり、また変革を促そうとしていた岩政前監督体制で駒井のようなベテランで影響力が強い選手を残すことには様々な影響が考えられ、新監督体制で本当にチームが変わろうとするなら契約満了の判断はおかしくはないと感じます。
  • 一方で柴田監督のような、約束事を比較的少なめにして選手の判断に委ねる部分を多めにするやり方だと、若手よりもベテラン選手の方が力を発揮しやすい事例はしばしば見受けられますので、最初からそうした路線で行くとするなら、また別の話になってきます。

⚪︎:特別予算で高嶺を取り戻す

  • そうした激ヤバな状況のオフでしたが、「フルコミット」を掲げた石水新社長の判断によって、コルトレイクに移籍金を払って高嶺を買い戻します。
  • 個人的には高嶺の獲得については、「中盤センターは枚数は揃っているが、宮澤を筆頭にベテランが多く、フル稼働できて運動量がある高嶺を確保することは悪くない」。程度に思っていましたが…
  • 蓋を開けてみれば、まず左利きのDFが誰1人CBとして稼働できない問題が露呈され(そもそも編成的にCBっぽい選手は中村桐耶しかいませんでしたが)、高嶺がCBに回ります。
  • その後、4月から4バックの左CBとして西野の目処が立つと、今度はSBのパクミンギュ、岡田、中村桐耶が軒並み負傷や不調に陥り、高嶺をSBに回せざるをえない状況で、高嶺1人で2人分か3人分の働きをしてもらうことになります。
  • かつ単に試合に出ているだけではなく、CBだと流石に1試合の中で何度も体を張って、屈強なFW相手に跳ね返すようなプレーには限りがありますが、相手の1列目のプレッシングを回避してボールを前に届けるプレー、SBで相手のワイドの選手を封鎖するボール奪取能力だったりと別格の働きを見せつけます。
  • そして後半戦ではDF起用から解放され、前半戦以上に攻撃面で圧倒的なパフォーマンスでチームを牽引します。この補強については、高嶺がいなければもっと早々に終戦だったと思われますので大正解でした。

?:岩政監督の招聘

  • これは長くなるので次の記事で別立てとして整理します。
  • 簡単にサマリー的に見解を述べますと、結果(成績):×、試合内容やプレーの評価:△、アプローチ:⚪︎、といったところです。

×:選手のコンディション対策(京谷パフォーマンスコーディネーターの招聘等)

  • 前のシーズンに沖縄・金武町でのキャンプから故障者が多く、シーズン序盤にベストメンバーが組めないという話がありました。キャンプ地の芝については可能な限り対処してもらうとして、別途故障者問題へのソリューションとして新たなスタッフが招聘されます。
  • 記事の見出しの問題かもしれませんが、ずいぶんビッグマウスだな〜と思った印象があります。競技の性質上、不可抗力のようなリスクある局面は避けられませんし、言葉通り「僕のせいで大丈夫」と本気で思っているならこのシーズンを終えてのコメントを伺いたいところです。

  • このシーズン、負傷による離脱をした選手が少なくなったかというと、そこまで劇的な効果はなかったように思えます。
  • 特にシーズン序盤、4バックのシステムを採用していた際に左SBの候補であるパクミンギュ、岡田、中村桐耶が同時に離脱し、これによって高嶺を左SBで起用せざるを得ない状況になりましたが、シーズン序盤に最適な選手の組み合わせを探している状況で非常に厳しいシチュエーションになりました。なおパクと中村は試合中の負傷であるため、「僕のせい」ではないように思えますが、誰のせいかは置いておくとして。
  • 高嶺はこのシーズン、DFとして13試合に先発出場することになり、当該試合では5勝3分5敗という結果でしたが、シーズン中盤以降にMF起用で固まってからの圧倒的なパフォーマンスを見る限りでは序盤から中盤で固定したいところでした(もっとも本人の話ではDF起用による好影響もなくはなかったとのこと)。
CBや左右のDFをやる中で、自分の感覚が戻ってきた部分はあった。ボランチと違い常に前向きにボールを持つDFというポジションを経験して、積極性が戻ってきたかなというのを、6月15日(第19節)の今治戦で久しぶりにボランチで出場して感じた。
  • 後半戦は夏のマーケットで加入した宮が負傷に苦しみ、26節以降は先発1試合にとどまります。一方で前のシーズンの前半にコンディションが整わなかった髙尾は、チームで唯一の右SBで負担が大きいと思われましたが、夏場に短期間離脱したのみで乗り切ることに成功しました。

×:未整理で歪すぎるスカッドにより「競争意識を煽る」は完全に失敗

  • 前提としてまず監督が変わればチームづくりの考え方も、基準も、優先事項も、アプローチも、好む選手も全て変わります。その点では今回監督交代するにあたり、高嶺と新卒の木戸と林田(他、特別指定の佐藤)以外は全く補強がなく、そもそも監督のリクエストも聞けない、という状態は新監督を充分にサポートしているとは全く言えません。

  • 一方、岩政前監督はコンサのそうした事情を把握した上でチャレンジの一環だとして契約したことも事実なのでしょうけど、この際、最低限のリクエストとして「競争のため1ポジションに複数の選手を確保してほしい」とは伝えていたようです。
  • といってもコンサがオフにスカッド整理に動ける状況ではなかったので、監督のリクエストに”応えた風”の態度を取るしかできなかったのではないでしょうか。

  • 当初、岩政前監督は3バックの1-3-4-1-2の配置を考えているとの報道があり、それだと仮で↓のような配分ができますが、この時点でも左のDFやアウトサイドで競争が生じるかというと怪しくなっていますし、
  • その後シーズン途中に4バックに切り替えると、CBと右SBで著しい人員不足の反面、前線は明らかに飽和状態であることが露見されます。
  • 特にCBに関しては、監督の要求に明らかに応えられない選手の起用を継続せざるを得ず、競争を生じさせパフォーマンスを向上させることには完全に失敗していました。

  • このシーズン主にスタメンで起用されていた選手を並べると(原など一部選手は並べるか迷いましたが)、
  • こうした状況で、途中加入の浦上、宮を含めてもDFは明らかに「2人以上」になっておらず、白井をワイドの選手と扱うことでようやく右サイドの近藤に競争相手を確保でき、前線のシャドータイプだけは豊富…といびつなバランスなのは明らかでした。

  • また4バックの際の左MFなど、適任者が見つからず無理やり他のポジションの選手も当てはめている状態の箇所も散見されました。
  • チーム戦術との適合性に関しては、岩政前監督はハイプレスや前線のスペースへのランによる攻撃を掲げていたのに対し、センターライン全般(前線のFWやシャドー、中盤センター、センターバック)にあまり走力やスピードのある選手が多くないことも編成上かなり問題があったと感じます(これらについて詳しくは別の記事で)。

?:コーチングスタッフの入れ替え

  • 大きなところでは、岩政前監督と旧知の関係である戸川コーチの加入、通訳が「フットボールカルチャーを理解している人」であることが重要だとして元プロ選手が起用されます(ただ最終的にはウリセス氏もマリオ加入後はベンチに入っていましたね)。
  • outでは沖田優氏が退団(ザスパ群馬の監督に就任)。
  • そして赤池コーチがGK(GP)コーチからヘッドコーチに配置転換され、後任には佐々木コーチ、アカデミーと兼任の曳地コーチの体制となります。
  • 役割としては砂川コーチが攻撃を担当、戸川コーチが守備を担当、そして「ミシャ体制を熟知する」赤池コーチをヘッドコーチに置くとの説明がされました。
  • ここからの話は、前提として、練習を毎日間近で見ていたり、話を聞いて詳細を把握しているわけではないので、評価は「?」としておきます。以下は岩政前監督期に8回程度見た程度での感想です。

  • まず全体練習はほぼ岩政前監督が主導していたと感じます。
  • 部分的には砂川コーチが主導して相手ゴール前の局面を意識した練習をしているところも見ましたが、岩政前監督が指揮する練習は実践を意識したものであり、試合の中で頻発するシチュエーションを念頭に置き、かつ攻撃側と守備側を用意するようなやり方が多かったですが、砂川コーチの指揮の下で行っていた内容は試合の中で狙いとしているようなプレーとリンクしているとはあまり感じられず、DFも置かれないものでした。

  • また西野の証言ですが、
  • グループとしてのプレーだけでなく岩政前監督が個別指導も行っていたという話です。私が見た時は「全体練習後に細かく指導している」状況には遭遇しなかったのですが、全体練習中に、たとえばDFの体の向きのような割とディティールと言えそうな部分のトレーニングを行っていた際も岩政前監督が主導していました。

  • これらの状況を鑑みると、このシーズン、スタッフにブレーンとなれそうな人材はほぼいなかったのでは?という疑念が浮かびます。そもそも戸川コーチ以外は監督と関係性が薄く、フットボール的・戦術的な考え方をシェアしているとは考えられませんし、指導歴を見てもこの考えを覆す要素は乏しいです。
  • またミシャ体制を知る赤池コーチをヘッドコーチに、という人事は、そもそも「知っているフットボールの範疇が極めて狭そうな」コンサのフロントが前々監督の何らかの要素や影響を与えようとしたのかもしれませんが、岩政前監督からすると余計なお節介だったでしょう。
  • そして、そうした古株系のコーチのよくある役割としては、選手と監督の橋渡し役、チームの感情コントロールで貢献するというものはありますが、ご存知の通り夏場にコンサは石水社長の現場介入もあり学級崩壊に至ります。監督と選手の関係性の問題でもありますが、コーチはこの数ヶ月間どのような役割を果たしたのかは気になるところです。

  • そもそも攻撃担当、守備担当、と明確に任命しているなら、このシーズンJ2でブービーの66失点していることや、柴田監督体制で相手ゴール前でほぼ攻撃の形を作れていないことなどに一定の責任があるように思えますが…。

×:三上GMの退任、GMは空席へ

  • 詳しくは後述ですが、11月に河合竜二氏のGM就任が発表され、石水社長は「経営に専念」するとの方針が発表されます。

  • 社長が認めている通り「やっぱりGMは必要」。個人的には、何でそう思ったのか、そもそもなぜGMが不要と判断したのかメディアの方に突っ込んで欲しかったのですが、「そもそも」に関しては、3月の三上前GM退任時に石水社長が話していた通り、経営面で三上氏の影響力が強すぎる(≒石水社長に権限や情報等を集中させる上で障壁になる)ということは理解します。
  • それに加えて憶測ですが、前提としてGMという役職が指す職務内容がクラブによって異なるとして、オフシーズンに就任した石水社長には、シーズン中にGMが何をしているか…具体的には選手のケアや現場のサポートのようなことをやっていることがイマイチわからず、「強化部長がいれば編成や移籍交渉はできるので足りる」と判断したのかと推察します。

  • その後ご存知の通り、コンサは岩政前監督と(一部の)選手との間に溝が生じ、石水社長は小野伸二O.N.O.に助言を受けたりもして監督交代を決断しましたが、本来まさにこうした状況に対処し責任を負うのがGMの仕事でしょう。
  • 業務に関する基礎知識がない人がAIやデータを使って正しい判断ができるか微妙なのと同じく、小野伸二O.N.O.に助言を受けるだけでサッカー素人の社長が正しい判断ができるか?というと難しいところでしょう。

?:フットボールフィロソフィーが爆誕

  • この方の記事↓に私の考えに近いことが書かれている気がしますが、手抜きせずに自分でもいくつか考えを述べます。
  • Jリーグが言う「フットボールフィロソフィー」とは、
https://aboutj.jleague.jp/corporate/assets/pdf/club_guide/jclub_guide-2025.pdf

  • クラブをどのように運営管理するかの「説明書」になる
  1. クラブのアイデンティティ「DNA」
  2. クラブのプレーイング/コーチングフィロソフィー
  3. クラブの選手やスタッフの育成/獲得方針
  • 詳しくは元資料をご確認いただきたいのですが、要は「目指すフットボールの方向性」に関する内容が盛り込まれていると理解して良いのかなと思います。
  • となるとコンサのフットボールフィロソフィーは、

https://www.consadole-sapporo.jp/club/philosophy/
  • 果たしてこれはフットボールの方向性と言えるのか?個人的には「走る」と「闘う」がほぼ同義(闘う の中に 走る が包含される)のイメージなのですが、言うまでもなく走らないフットボールとか闘わないフットボールというのはまずありえない、極めて当たり前に近いことを言っている。
  • まずこの時点で、これはフットボールの方向性とか指針に値する内容ではなさそうに思えます。石水社長が「選手にも好評で、試合前にピッチに向かう通路に貼っていてほしい」とする話があったと紹介していましたが、要はそういう感情を昂らせたりコントロールするためのスローガンの一種に近いのかなと思いましたし、そもそもこの「フィロソフィー」は、選手へのアンケートや幹部合宿を経て決めたとのことですが、元はと言えば前々監督であるミシャのミーティングでの決まり文句をそのまま使っているということを石水社長が明かしています。
  • 試合前に監督が選手を送り出す言葉は選手を鼓舞するための演説の一環であり、そこにテクニカルな意味合いは薄い。
  • 選手からも(ボトムアップ的に)アイディアを募ったけど、出てきたのは監督の演説で印象に残ったフレーズでありテクニカルなものはなかった。そこからコンサの幹部合宿ではフットボールに関するテクニカルな部分を詰められなくてそのままフィロソフィーになった、ということでしょう。
  • そもそもこれを作った時にGMが空席で、まさにテクニカルな部分でフットボールの責任者たる人物が不在(検討メンバーの中で、指導者ライセンス保持者も石川直樹氏くらい?)というのも、本当にこれでいいんですかね…と思わされるところです。

  • 一応この内容が実行力を伴うとしたら、走る・闘うを体現できる選手や監督をまずリクルートするというのが普通に考えればそうなりますが、そこについてはオフシーズンの動きを注視するとして、

  • もう一つ「規律を守る」。まず外国人であるミシャ元監督の言葉を通訳の方が日本語訳したのでしょうけど、「規律」は英語ではdisciplineが該当します。
  • この規律とかdisciplineは、フットボール的にはプレーモデルや戦術、ゲームプランを遂行すること、そのためのトレーニングとかコンディショニングとかフットボールに関わる諸々にコミットすること、…みたいな定義になるかと思います。
  • おそらく監督が説明しない限りは明確な定義はなくて、通訳の方が「discipline」と言って受け取る内容は選手によって捉え方が異なってくる。
  • この際重要なのは、コンサの選手に戦術やゲームプランを遂行するとか、まず監督が提示しているそれらにコミットしている(していた)か、というのもあるのですが、それ以前にプレーモデルや戦術、ゲームプランといったものがクラブとして存在しないと、単にルールを守りましょうだけの空虚な決意表明にしかならないのかなと思います。

  • 松本山雅に関するニュースで、「選手がルールを守らない」みたいな内部事情が噴出しているようですが、

  • これも確かに選手のプロ意識みたいな話にもなってくるのもわかりますが、まず何のためにルールがあるのか?そのルールを守ると何か良い影響があるのか?というのが明確ではなくルールだけ定められた状態になると、それは実効性を失うのかなと思います。
  • disciplineに関しても同じで、規律を守ると言い続けていれば、スタジアムの通路に掲示していればそれだけで戦術的なチームになれるかというとそうではない。

  • そもそもフットボール的にどういう方向を目指すのか?という部分が決定的に欠けていて、コンサというクラブはコアメンバーが移り変わっても、どうしてもこの部分の解像度を上げられないままだな、との印象を抱きました。

△〜×:中断期間で積極的な補強に動くも…

  • 浦和レッズがCWCに出場する関係で、例年とは異なる移籍期間(6月1日より)が設定されます。コンサはこの期間を利用してDFの宮、浦上、FWのマリオ セルジオを獲得します。浦上と宮が登録され出場可能となった状態で、18節消化の残り20節という状況でした。
  • 結果は、浦上は16試合に出場(全て先発)、宮は故障の影響もあり9試合(うち先発8)、そしてマリオは15試合(うち先発4)、4ゴールという結果でした。

  • まず宮について。コンサが左利きのCBができる選手を必要としていることは明らかで、竹林強化部長がかつて名古屋のスタッフだったこと、名古屋の選手起用の状況などから宮のような選手に声をかけることは予想通りでしたが、移籍マーケットに出ていると思われる国内の左利きDFの選手ではほぼベストの選手だったでしょう。名古屋が下位に沈んでおり、J1のクラブには出したくなかったと思われることもラッキーでした。
  • パフォーマンスに関しても宮は明らかにJ2では上位のCBでしたし(詳しくは別の記事で)、既存のコンサのDFと比較しても明確なアップグレードとなりました。ただし故障がにより柴田監督体制ではほぼ起用できない結果となりました。
  • そして期限付き移籍であり、名古屋のようなJ1クラブを渡り歩いているため、完全移籍には一定のハードルがあることを承知での緊急補強でしたが、結果としてはコンサは目標を達成することができませんでした。

  • 浦上は監督交代を経ても中心選手であり続けました。その意味ではこの3人のうち最も成功した補強でしたが、獲得経緯としては馬場の放出が決まった際に岩政前監督から具体的に浦上の名前を挙げてリクエストしたとのこと。要は強化担当が主体的に動いた案件ではなさそうです。
  • 大宮で4〜5番目のDFだった浦上ですが、コンサのCBの中では特にボールを持っている時に舵取りができる、高嶺とコミュニケーションをとって守り方を決められるといった点が特に大きかったと感じます(これも詳しくは別の記事で)。一方でシーズンの最終盤になると、柴田監督体制で戦術的な変化が生じ、DFにより対人能力が要求されるようになり家泉がラスト3試合は起用されることとなりました。

  • そしてマリオですが、まず獲得の理由として「今の状況を踏まえて勝つためには得点力向上が必要だから」とする旨の説明があったと思います(ソース失念)。5月末(18節消化)時点でコンサは20得点、29失点で、勝ち点21の12位。確かに得点が多いとは言えない状況だったと言えそうです。


  • そうした状況で鈴木智樹強化部員がキャリアを懸けて移籍交渉に挑み、シャペコエンセからまさに”獲得”したマリオですが、結果としてはハーフシーズンで4ゴールという数字以上に、先発4試合にとどまったことを強化担当者にはシリアスに捉えていただきたいところです。

  • まずこの時期のコンサはシステム1-4-4-2で、FWで最も出場機会が多かったのはバカヨコ。5月末時点で先発11試合、途中出場5試合で5得点という成績でした。
  • その相方探しが課題の一つであり、岩政前監督が期待をかける田中克幸や、スパチョーク、キムゴンヒ、白井といった選手が試されていましたがどれも決定打に欠ける状況でした。
  • 一方でこのバカヨコのパフォーマンスに関し、岩政前監督は満足していないところがあり、ホームで大敗した14節のvs磐田では37分で交代させてもいます。
  • ただし私の見た印象では、ビルドアップがうまくいかないコンサにおいてはバカヨコのポストプレーや前線で潰れ役となるプレーは必要なもので、岩政前監督もそこは否定していなかった(ポストプレーをしつつもっとゴール前に飛び出して欲しいとの要求)と感じます。
  • なお「先発11試合、途中出場5試合で5得点」というのは、このシーズンJ2で15ゴール以上した選手が長崎のマテウスジェズスと、今治のマルクスヴィニシウスの2人しかおらず、それぞれPKが3、1点あることを考慮してもそう悪くはないスコアかと思います。

  • こうした状況を踏まえて最初に問いたいのは、マリオはバカヨコを代替する選手なのか、それとも(2トップなどで)バカヨコと併用する選手なのか、彼がどういうタイプの選手でチームにどう組み入れて成績が向上すると考えて獲得したのか?という点です。
  • バカヨコについて、①前線守備の際にもう少しアクションの量やスピードが欲しい、②シュートチャンスの際にゴール前に走り込んで欲しい、といった要求があるとして、バカヨコほど下がってこない(その分ポストプレーもしない)マリオは②については問題ないとして、①は結局のところバカヨコとそう大きくは変わらないということで、岩政前監督、柴田監督とも完全にバカヨコを代替する存在には位置付けられず、マリオはベンチスタートがしばらく続くこととなります。
  • そしてその前線守備の問題に加え、両者とも左利きでプレーエリアが重複しやすいということ、2トップとしてそこまでシナジーがない(たとえば1人が引いてもう1人が飛び出す、クロスボールに対して1人がニアで潰れもう1人がファーで待つ)ということで、両監督ともこの2人を併用する発想には至らず、マリオの出場機会は限られたものとなります。

  • 結局のところ「古典的な9番タイプの選手にお金を使えば得点も勝ち点も増える」というかなり安易な発想でのリクルートだったな、との印象が否めませんでした。
  • 得点力を増やしたいなら、たとえばこのシーズンのコンサには①左のウイングやサイドハーフが本職の選手がおらず、左からカットインしてシュートやクロスボールができる選手だったり、もしくは②前線に得点力と力強さや運動量を両立する右利きの選手シャドー/セカンドトップタイプの選手(例えるなら長谷川にもっと得点力があるような?スパチョークにもっと力強さがあるような?)であれば、既存のチームに組み入れがしやすくウィークポイントを補う形になったかもしれません。

⚪︎:馬場、キムゴンヒ(中島)を放出

  • 6月に馬場が柏へ完全移籍、キムゴンヒが契約非更新により退団、中島が群馬へ期限付き移籍となります。これらについては「⚪︎」としましたが、移籍がチームにプラスというわけではないですが大きなマイナスではなく、判断としては悪くはないという意味合いです。

  • まず馬場についてはコンサがこれまで、契約が残る選手への移籍オファーに対してオープンであるとするスタンスをとってきた以上、そもそもこのオファーに対しコンサには選択の余地がない、は言い過ぎにしても、馬場が移籍を希望した時点で、柏という一定のクラブステイタスのある移籍先だったこともあり積極的に引き止めることが難しい状況だったと理解します。
  • その上でこのシーズンの馬場については、開幕から中盤センターのスタメンクラスとして5月までに9試合に出場(うち先発8)していましたが、退場処分を受けた第9節)4/12 vs水戸)を最後に故障により出場機会がない状況でした。
  • 岩政前監督下でボール保持から「ポケットを取る攻撃」を掲げていた中で、馬場による中盤からポケットへのランはシーズン序盤で目立っていて、監督の要求に積極的に応えようとしていた点は好印象です。一方で選手特性としてあまり走力がなく、マンツーマンで広く守るようなスタイルだと中盤センターの選手としては走力やスピードの物足りなさがあり、個人的にはガッツは買いますが戦術的にはすごくフィットするタイプだった、とまでは感じていませんでした。
  • また中盤センターには高嶺の他、木戸、田中克幸といった若手、荒野、宮澤、大﨑といったベテランがおり頭数は足りていた状況でした。岩政前監督が馬場の移籍を契機にフロントに要望した選手が、同じ中盤センターの選手ではなくDFの浦上だったことを踏まえても、馬場を放出したことがこのシーズンの命運を決定的に左右したとは言えないでしょう。

  • 開幕時点でコンサには4人のセンターFW(バカヨコ、ゴニ、ジョルディ、中島)と、センターFWとセカンドトップ/シャドー兼任の白井がいて、センターFWに関しては飽和気味の中で5月には鈴木智樹強化担当がブラジルに渡り、新たなFW探しを始めた状況でした。
  • ゴニについては稼働状況(このシーズン11試合出場、うち先発2試合、1ゴール)と前線が飽和状態であること、韓国代表歴ありでおそらく給与水準も低くはないことなどを考慮して非更新という判断は理解できます。
  • 特筆すべきは、ゴニはFW陣の中で所謂9番のセンターFWの役割と、バカヨコと2トップを組むような下がり目のFWの役割もでき、これについてはジョルディや中島にはない特徴ではありましたが、あくまで前線のオプションの一つにすぎないものでしたので、契約非更新の判断は妥当だったと思います。

×:岩政監督の解任と柴田監督の登用(8/12)

  • まず結果を出せない監督への風当たりが厳しくなるのは仕方がないことであり、監督交代に関しては致し方なしかなと思います。
  • その上で、後任がトップチーム監督としては経験が浅い(その分、様々なコストカットにつながる、フロントとのコミュニケーションというか操縦がしやすい)、人材に白羽の矢が立つのも、Jリーグのスモールクラブの意思決定という視点では理解できます。

  • しかし、これに関する石水社長の説明は、
  1. 我々が目指す方向は「攻撃的」である
  2. 「攻撃的」とはミシャを指す
  3. 選手も納得がいっていなかった
  4. 選手も「ミシャのサッカー」のイメージがある
  5. 小野伸二O.N.Oにも相談した
  • といった内容であり、

  • これに対する感想としては、
  1. 社長の介入度合いが高い:大枠を本来の専門家であり担当者、強化担当に任せて最終決裁するのではなく、(素人である)社長自身の意思や考え方が強く反映されている
  2. ミシャという偶像崇拝:緊急インタビューという場ではあるが、「今後何を目指すのか?」という問いに(日本サッカーのテンプレコメントですが)「攻撃的」と答え、それは「ミシャのサッカー」だとしている
  3. 意思決定にノイズが混在:一部の選手や外部アドバイザーの主観が反映されている
  4. その他、人としての好みや相性の問題、コミュニケーション:ネットミーム化されがちな岩政前監督の語録はあくまで外向けのパフォーマンスだと私は思っていましたが、社長も監督のそうした言動は割とストレートに受け取っており、そこでの発言と実態のアンマッチ感は社長にとって不信感を募らせるものだったのか?
  • というもので、監督を変えること自体は理解するが、フットボール的には石水社長がこうした重要事項を判断するという体制はほぼ限界に近づいていることを感じさせました。
  • あとフットボールフィロソフィーはどこに行ったんでしょうか?「走る・戦う・規律を守る」がコアであり、攻撃的とか別に言ってないんじゃないかと思いますが…

  • そして石水社長の言うところの「攻撃的」というのは、この後、9月に出てきたこちらのインタビューを参照すると、おそらくは(ルヴァンカップ決勝のような)「オープンな展開で撃ち合いになりスコアがたくさん動く試合」というイメージなのだと思います。
  • 「外から加入した選手と話すと『札幌とやるときは楽しかった』って言われる。」とのことですが、一般にサッカーというのはミシャコンサのように失点を減らすための仕組みや考え方が極端に少ないというのは競技の特性上、本来はありえない話であり、ルヴァンカップ決勝と絡めてこの選手からの”評判”を拠りどころのように持ち出されても、所詮はある種のグッドルーザー的なところに執着していて、1年でのJ1復帰にこれだけこだわる社長の姿とはかなりズレている印象を受けます。

  • もう一つは、ルヴァンカップ決勝はスコア上は撃ち合いというかシーソーゲームっぽく見えますが、実際は10分にコンサが先制してから後半ATの川崎・小林悠のゴールで川崎が勝ち越すまで、コンサは川崎によって自陣に80分以上押し込まれ、シャドーの武蔵やチャナティップが自陣低い位置まで戻って川崎のSBの攻撃参加についていって、わずかなチャンスでカウンター1発を狙う…という試合展開だったはずです(後半早めにジェイ→アンデルソンロペスの交代)。
  • そこは主観が入る話ではありますが、これを「撃ち合い」と表現して心の拠りどころにする程度のサッカーに対する理解度や認識の方が、トップチームの監督の人事に対して極めてクリティカルな位置付けにあることは、改めてかなりマズイ話だと感じました。

  • また結局は今コンサにいる選手との会話でこうした考えが確信に近づいているということで、(一応は…専門家であるGMを空席にした人事なども含め)サッカー素人である社長周辺の一種のエコーチェンバー現象みたいなものはかなり気になったところでした。

×:柴田監督で「シンプルにプレー」に回帰

  • 地元紙の記事で岩政前監督との対比、というか前任者批判の観点で、「岩政監督よりもシンプルにプレーすることになったが、この方が良い」とする選手のコメントが報じられていました。
  • 「シンプル」はあくまで一選手の主観にすぎないところもありますが、柴田監督に代わってからはボール保持の際にいきなり前線に放り込むような選択も見られたり、キックオフの際に敵陣に蹴り出して相手のスローインから開始するようにしたりと、岩政前監督ほどボール保持からの展開にこだわっていないのだろうとの印象は筆者も一致します。
  • 「シンプルにプレー」…日本サッカーではよく用いられる表現ですが、要はほぼ最低限に近い水準での約束事のみ用意してあとは選手の判断に任せる、というアプローチを指します。このシーズンのJ2でいうと、下平監督→高木監督への監督交代を行ったV・ファーレン長崎がこうしたアプローチをとっているようで、高木監督は「本来戦術的に非常に細かい」ながら今回は約束事を少なくしたという話がありました。
  • 前線にマテウスジェズスを擁する長崎はこのアプローチで結果を出しましたが、コンサは後半戦にかけ高嶺の爆発があったものの柴田監督就任後の結果は、就任後の10試合を4勝6敗で昇格争いからは早々に脱落します(昇格の可能性が潰えたのち、最後の3試合を大分、今治、愛媛相手に2勝1分で乗り切り、全体では13試合で6勝1分6敗)。
  • 高嶺以外のスカッドの問題なのか、コーチングスタッフの手腕なのか、色々な見方があるのでしょうけど、「シンプルにやるべき」論は迷走するチームで頻出だけに、この結果はしばらくは頭の片隅に留めておいてもらいたいところです。

?:河合C.R.CがGMに内定

  • 石水社長曰く「やっぱりGMというのが必要だなと」。率直な印象としては1年(実質半年)で認識を正して手を打ったことは悪くないと感じます。
  • 当初、三上前GMを「日本一のGM」と2万人のサポーターの前で持ち上げた石水社長。そこから3ヶ月で石水・三上体制は周知の通り瓦解するのですが、組織によってGMや強化部長といった役職が意味するところは異なります。
  • おそらく石水社長はオフシーズンの動きだけを見て、GM職について経営面は自分で、強化面は強化部長で代替可能と判断したのだと思われます。

  • そこから河合氏という、クラブの内部事情には精通しているが強化については経験がない人物の登用に繋がるのですが、一つは石水社長のコメントの通り、強化を担う人物として強化部長以外にも人が必要だということ。ただ当面は強化部長がGMに対しOJTをするような、ある種いびつな関係性になるでしょう。
  • もう一つは筆者の予想ですが、トップチームの監督とは別に、現場監督というか現場を締めれるアニキ役が必要だとの考えがあるのかもしれません。
  • アニキというと別に身体と声が大きくて鉄拳制裁を振るうようなキャラクターである必要はありません。筆者の理解だと外国籍選手を含めよく選手とコミュニケーションをとっていたとされる三上前GMはそうしたアニキ役であり、他のクラブだと賛否両論ありますが曹貴裁監督も日本サッカーで一定数いるアニキ系の要素を持つ監督に見えます。コンサの歴代監督だと石崎監督でしょうか。あとは監督とフロント両方の経験がある大熊清氏なんかもアニキ的な要素がある人材だと考えます。

  • 要は、選手と距離が近くコミュニケーションをとりやすく、時に選手の不満の捌け口や理解者になって感情をコントロールすることをサポートし、一方で締めるときは締める、というのが筆者の考えるアニキの役割なのですが、こうした役割を担える人が現状のコンサには監督、コーチ、選手、その他スタッフなどを見ても見当たらず、一部の未成熟な選手に対して甘さが出てしまっていた、とクラブ関係者が感じるような事態が少なからずあったのかなと推察します。その意味では河合氏の登用というか配置転換によって何らかのプラスの効果があるかもしれません。

  • 一方で一般にGMというとフットボール面でのブレーンでもある必要があります。
  • 河合氏は早速「練習でパスが浮く」だったり、あとはフットボールフィロソフィーを意識しつつ、「球際で勝つ」とか「FWも下がって守備をする」とか、「タッチラインを破りそうなボールをマイボールにする」みたいなフットボール的な部分にも積極的に発信を開始していますが、これらは全て戦術的な話が関わってきます。
  • 例えばFWが下がって守備に参加できるようにするには、前からプレスに行かないとか陣形をコンパクトに作るとか約束事を整備した上で、かつそうした資質がある(走力や運動量がある、献身的なメンタリティ、低い位置からカウンターが得意…)選手を揃える必要がある。

  • 要は河合氏がコンサに対して望むことを発信したり打ち出すのは良いのですが、そこを実現しつつ勝てるチームにしていくのがGMの仕事であり、単にアニキとして適任であるだけではなく頭を使うというか一定のロジックが必要になると思われます。
  • 現状のコンサの体制だとそうしたブレーン役の不在だったりロジックの欠如が感じられるところですが、誰がブレーンなのかはまだ見えないと感じます。

  • また、GMとして望むことを発信したり打ち出すとして、一方で社長もこれまで「コンサとはこうあるべき」論みたいなのを積極的に発言してきましたが、それらを整理せず「やりたいこと、ありたい姿」を散発的に乱射して並べた状態になると、組織の戦略としては結局何が重要なのか散漫なものになります
  • コンサ内部に未だに漂う「ミシャ時代」への情景と、河合GMの想いを両立しようとするとすでにそうした散漫さがある状態なのかもしれません。「いいとこどり」をしながらうまく着地させるには頭を使う必要がありますし、頭を使っている人を周囲が邪魔しないことも重要になります。


?:深井の引退と謎の「若手選手責任論」リバイバル

  • あれは秋頃だったでしょうか。早々にこのシーズンが終戦となり昇格争いをするチームを尻目に、引退表明をした深井の見送りに注力することとなったコンサ。
  • この時期になって、その深井絡みでもそうですしそれ以外の局面でも非常に目につくようになったのが「若手選手がもっと努力しないといけない、物足りない」といった論説。↓の柴田監督のコメント以外にもキャプテン高嶺、宮澤、荒野といった重鎮たちが一斉に似た論調を繰り広げます。

  • まず若手、というのが誰を指すのかわかりませんが、所属選手で25歳以下で括ると高卒3年目の西野、大卒1年目の木戸と田中克幸、高卒2年目の林田と原。期限付き移籍の選手は一旦除外するとして、まずこれくらいが若手と言われるのでしょうか。
  • 私だったら原はこのシーズンもう少し伸びて欲しいとかそうした個人的な想いは確かにありますが、一方で西野はこのシーズン高嶺に次ぐ重要な選手となりましたし、木戸もまずまず出場機会を得てはいる。
  • 数ヶ月前まで大学生だった林田(おそらくポテンシャル採用でしょう)にチームを変えるような期待をするのは過大なので、となると名前が挙がらない選手のことを念頭に置いているのか?と勘ぐりたくなりますが、構図的には古株の既得権者がマイノリティに諸々の責を押し付けているように感じました。
  • もしかすると26歳以上の選手なども意識しての言動なのかもしれませんけど、そうなると若手というよりも、チーム全体にとにかく元気がなさすぎるという問題の捉え方になるでしょうか。

  • 思い返すのは、コンサで「若手がだらしがない」みたいな論調は景気が悪い時にたびたび繰り広げられる話で、かつては2005年頃の柳下監督体制でもありましたし、2015年オフにブルーノコーチを招聘した際も、当時の社長曰く「若手を怒鳴りつけられる鬼軍曹タイプが必要」と理由を話していました。もっともブルーノはその後若手の指導役というより外国籍選手のマネジメント役になるのですが…。
  • という具合で、このシーズンの総括や反省として安直な「若手選手責任論」に逃げるようだとこの先の見通しは明るくないなと感じました。真摯に現実と向き合っていただきたいところですが…
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  • 次回はようやく、より戦術的な話、このシーズンにピッチ上で何を目指し、何が起こっていたのか?にフォーカスしていきます。