2020年7月25日土曜日

プレビュー:2020年7月26日(日)明治安田生命J1リーグ第7節 北海道コンサドーレ札幌vs横浜F・マリノス ~ロジックに裏打ちされた奇策~

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー

  • マリノスはGKのパク イルギュとDFの實藤が離脱中。復帰してきたチアゴ マルチンスは鹿島戦で45分でピッチを去り、前節はメンバー外でした。ポステコグルー監督は3戦連続でのスタメン起用を避けているように見え、この観点だと前節途中交代した仲川と、ティーラトンは休ませると予想します。
  • この仮定だけでかなりメンバーが見えて決ますが、後はコアな選手には頑張ってもらうとして、喜田は3連戦となりますがスタメン起用、5連戦となるマルコス ジュニオールを休ませるのではないでしょうか。天野がスタメンなら、中盤が逆三角形の1-4-1-2-3に近い陣形を予想します。もっとも、これ以上星を落とせないということで、仲川、マルコス ジュニオールは強行出場も予想されますが。
  • ミシャはオブラートに言うと、ポステコグルーよりも更にクラシカルというか選手起用におけるリミットの設定がよりハードです。進藤、菅、チャナティップは全試合スタメン出場しています。この3人は今回のゲームにおいても重要な役割を担うと考えられるので、コンディションが心配ですが強行出場を予想します。あるとしたら、チャナティップ→駒井でしょうか。センターラインは荒野が復帰し、前節安定したプレーを見せた田中を起用、前回も3連戦を回避した宮澤は休ませると予想します。右サイドは、昨年4月の対戦で無双したルーカスに期待がかかりますが、前節温存した白井の方が有力です。ただ、菅を休ませるなら白井は左の候補としても挙がります。
  • 札幌側の論点は2つで、①4バックか3バックか。②ハイプレスで入るか引いて構えるか。2018-19シーズンにかけてのマリノスとの対戦は毎回何らか4バックだったり変則システムで対抗しています。

2018.4(ホームでのリーグ戦)
2018.10(アウェイでのリーグ戦)
2019.3(アウェイでのカップ戦)
2019.4(ホームでのリーグ戦)
2019.5(ホームでのカップ戦)
2019.11(アウェイでのリーグ戦)

  • 私の考えは、これまで勝利を収めた2試合と同様、またマリノスが第5節で対戦した鹿島も同様だったと思いますが、4バックにして最終ラインのスペースを消したうえでプレス開始ラインは自陣に設定するのがいいと思います。
  • となると今回も3⇔4バックの変形システム。左はカップ戦で1度白井もやったことがありますが、基本的には菅しかこの役割が務まりません。もう一つポイントになるのが、3バックの右シャドーを兼務する4バックの右FWに入る選手で、武蔵、アンデルソン ロペスを欠くことになる札幌にはここが特大のネックです。役割を考えると、中盤またはアウトサイドで活きる駒井ではなく、ゴールに向かってプレーできる金子しかいない(と、久々に、当てたらかっこいいことを言ってみます)。
  • 3バックでハイプレスをするのはリスキーです。札幌のWBがマリノスのSBと離れたポジションからスタートするので、まずここでプレスがかかりにくくなります。そしてマリノスのWBはフリーダムに誘導するので、札幌のWBがどこまで追えばいいかわからなくなりプレスは失敗すると予想されます(4バックなら、SHに「君たちは最終ラインのことは心配しなくていいよ」とすることで解決できます)。
3バックの時に生じる問題点
  • そして3バックでハイプレスだと、札幌の最終ラインは常に3枚であることが多くなり、その左側では福森vs仲川(または水沼?)というピカチュウvsダグトリオのようなマッチアップになるので、「リスクがあるね」という言葉では足りないくらいの状況になります。

  • これを嫌い、5バックでラインを低く設定するやり方も一応ありますが、これは(昨年11月の対戦時に言ってましたが)ミシャが好まないやり方で、マリノスのようなウイングが幅を取る3トップのチーム相手だと、札幌のDFが常に2枚余る状態になります。ここは2人分数的有利になりますが、ピッチの他のところで数的不利になります。これだとトップ(ジェイ)が孤立するので、奪った後でジェイに当ててジェイが勝てないとずっと押し込まれている状態になりやすい問題があります。
3バックで引くとDF2人が”遊んで”しまいがち
  • そしてマリノスは引いたチーム相手に何度もトライを繰り返せる状況だと、隙を見つけてゴールを奪えるクオリティがあります。このようなチーム相手には、どれだけ押されても常に喉元にはナイフを突きつけておく必要があります。


2.横浜F・マリノスの印象



  • 2019シーズンのJリーグチャンピオンは、ゾーン1~2に侵入する局面におけるリーグ最高のクオリティでのビルドアップと、創出したスペースを確実に決定機へ繋げるフィニッシュのパターン、決定機を決めることのできる複数のFW、リーグ最高かは知らないけどボールポゼッションを助けるのに十分なプレッシングとハイラインでのディフェンス、そして最終ラインの背後をケアする能力に長けた強力なDFとGKのユニットを擁しています。
  • これらの印象は2019シーズンから特に変化がありません。変わった点は、一つは相手チームが敷いてくる対策がより明確かつハードなものになったこと、(全チーム一緒ですが)過密日程下での戦いを強いられること、そして左サイドで強引に局面を打開できるマテウスがいなくなった(期限付き移籍期間満了で名古屋グランパスに復帰)ことと、最終ラインの番人・チアゴ マルチンス負傷で離脱していたことです。
  • マリノスの強みは、一言で言うと前線にスペースがある状態で強いアタッキングユニットを有しており、その前線にスペースを創出するためのビルドアップが洗練されていることです。なので相手の対策は、前線にスペースを与えないように守りながらカウンターアタックを仕掛けるか、ビルドアップができないようにハイプレスを仕掛けてリズムを乱すか、です。
  • マテウスとチアゴの不在は前者の戦いを仕掛けてくるチーム相手に痛いところで、前者は相手がブロックを作った状態でも左サイドを強行突破し、局面を打開することができていました。後者は半端なカウンターアタックを全て排除します。再開後に敗れた鹿島もFC東京も基本的にこのスタイルで、オナイウの獲得は(もしかしたら水沼も)引いた相手に対するオプションを増やしたいとの考えがあったのかもしれませんが、今のところはまだ発展途上(伸びしろを残している)状況だと感じます。マテウスのポジションには遠藤が収まっていますが、遠藤はマテウスほどの強引な局面打開というよりはややスタイルが異なるのと、その遠藤も移籍が決定したことでそれなりの軌道修正を迫られそうな予感がします。エリキも左で起用されていますが、エリキは遠藤以上に右足偏重な選手なので、スペースがないところに無謀に突っ込んでくる傾向があります。
  • 後者の、プレス強度を高めて対抗するスタイルは、直近の6節で対戦した横浜FCがそうでした。1-3-1-4-2の横浜FCはほぼオールコートマンツーマンで試合に入ります。しかし、この戦略は「人間はそのうち疲れる」という問題点があり、横浜FCは15分くらいでプランB…自陣深くでのブロック構築もやむなしという温度感に切り替えていました。最終的には前半のラスト10分頃になると、「人は疲れているが、ボールは疲れていない状態」になり、こうなるとマリノスの方が有利です。過密日程下でこちらの選択を取るのはかなりチャレンジングなように思えます。

3.試合展開の予想


  • 願望でもありますが。まずは札幌が引いて、ボールを持たせる展開からのスタートが無難です。中央に陣取る選手をマークしながら、全選手が適度なポジションを保ってスペースをなるべく消します。こうすると、マリノスのSBは中央にポジショニングすることは得策ではなく、サイドにいることが増えるはずです。マルコス ジュニオールがいれば、彼がサイドのスペースに流れたり下がったりして味方を助けます。
  • ただ、以前松原が語っていたそうですがポステコグルーは基本的に全選手に「前を向けるときは必ずボールをドライブさせろ」としているようで、両SBはアウトサイドからスタートしながら中央を時折窺うことに、これまで同様になるでしょう。

まずは引こう。

  • 仲川も水沼もそうですが、止まった状態でボールを持って仕掛けてくるプレー以上に斜めに走りながらスペースに侵入して味方のスルーパスを受けるプレーの方がよりダイレクトで脅威です(福森に任せると一番苦手なやつですね)。マークを付けておく以上に前を向かせないことが重要になります。これについては、アンカーの扇原の対応を明確にしておけば(多分金子が頑張ることになりますが)人は用意できると思います。

前を向かせないようにしよう
  • 札幌の奪った後の策として思いつくのはまずこのパターンです。
  • 右に2人、白井と金子が残っているのでこの2人のスピードで、マリノスが捨てているSB背後の陣地を取る。畠中と勝負してもいいですし、ポゼッションに切り替えても陣形を回復する時間、ジェイ(と、できればチャナティップも必要)がゴール前に顔を出す時間が作れます。
オフサイドトラップをやり過ごしてサイドから逆襲したい

  • 特に2列目、白井の飛び出しが重要で、マリノスはラインを押し上げてまず相手のFWを置き去りにしようとの傾向が強いため、アウトサイドには何度もアップダウンできる選手が欲しいです。この点でもルーカスよりも白井かな?と思っています。鹿島がアラーノとエヴェラルドを2列目で起用したのも、このあたりの理由があると予想します。
  • マリノスは仲川とマルコス ジュニオールが不在なら、それぞれ得意な形を持っている選手なのでフィニッシュのバリエーションに影響があります。加えてマルコス ジュニオールはビルドアップでの貢献も大きく、特にマン・オリエンタッドで人を受け渡す守備主体の札幌には、自由に動きまくるマルコス ジュニオールのような選手が非常に難しいです。マリノスは、彼の出場可否とコンディションが展開を分けると予想します。

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