2020年7月28日火曜日

プレビュー:2020年8月2日(日)明治安田生命J1リーグ第8節 北海道コンサドーレ札幌vsヴィッセル神戸 ~紳士協定の破棄~

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー
  • 札幌は前節はマリノス相手ということで、7たびほど目のイレギュラーな布陣で対抗しましたが、今節は「いつもの形・メンバー」に戻してくると予想します。中野が負傷してしまいましたが、前線は休養十分のジェイをトップに置く布陣が予想されます。
  • そして武蔵が週半ばから部分合流、アンデルソン ロペスも完全合流していますが、コンディション的な意味合い、戦術的な意味合いの両方でベンチスタートを予想します。アンロペは身体は切れていると思いますが、2ヶ月以上ピッチを遠ざかっていたことで守備面で未知数なところがあります(そこが問題なければ、ジェイに代えてトップでの起用もあり)。最終ラインは福森、田中のコンディションは不透明ですが、左CBは前節高パフォーマンスの高嶺を継続すると予想します。メンバーは割と読めますが、戦術的には2つのオプションを持っています(後述)。
  • 神戸は4バックでウイングに小川を起用するか、3バックでCBを1人増やすかのオプションがあります。札幌と同じ[1-3-4-2-1]の大分相手にはアウェイで4バック、広島相手にはホームで3バック、[1-4-4-2]のセレッソ相手にはアウェイで3バックという状況ですが、セレッソ相手の3バックは相手の2トップ、4枚の中盤に対してミスマッチを作りたかったのだと思います。
  • 今期は4バックが基本形であることや、札幌が前3枚の[1-3-4-2-1]であるため、今節は[1-4-1-2-3]で予想します。メンバーは、イニエスタはアウェイゲームでは無理をさせない可能性もあると報じられていましたが、1週間空くこともあり札幌に来てくれるのではないでしょうか。

2.ヴィッセル神戸に対する印象

  • ここまでリーグ戦では7試合で2勝ですが、ポジティブな面を挙げると、チームの”哲学”のようなもの、どういうサッカーをするか?という共通認識は着実に浸透しつつあると感じます。一言で言うと、ボールを保持し続けてゲームをコントロールしたい(極端な話、ずっと自分たちがボールを保持していて「何も起こらない状態」が90分続き、最後に何らか点が入ればいい)という考え方で、大半のゲームでボールは最低限、握れています。
  • 一方で7試合で6得点は決して十分とは言えず、うち4点を挙げている古橋(1アシスト。残り2点はドウグラス)への依存度は、ラスト30mにおいてはイニエスタよりも高いと言っても過言ではないと思います。中央~やや左を定位置とするイニエスタと、左ハーフスペースから仕掛ける古橋の存在から、困った時は左から打開する傾向が目立ちます。期待のドウグラスは神戸では前線で1トップを任されることが多いですが、本来はドウグラスも前にスペースがある状態での仕掛けが怖い選手なので、まだ十分にフィットしているとは言えない状況にあります。個人的には、スペースがなくとも空中戦で無双できるウェリントンがいないのはありがたいところです。
  • そして当然ながらイニエスタがいる/いないで、全てのクオリティが相当変わります。古橋やドウグラスもそうですが、それ以上に右サイドを爆走する小川が活きるか死ぬかは、常人には見えない(もしくは使えない)スペースを使い、創出できるイニエスタの右足に懸かっています。
  • ドウグラスとイニエスタを起用していることによる制約が大きく、プレスの強度はさほどでなく、基本は自陣にリトリートしてサイドに誘導してから最終ラインで守るスタイルをとります。この点については、まずボールを保持している時間を限りなく長くすることが最大の防御になっており、相手ボールになってからは自陣に引き込んだ状態で、山口や両SBが個の力で解決する印象があります。

3.試合展開の予想

3.1 試合の入り


  • まず試合の入りについてです。神戸はボールを持ちたい。これは確定として、札幌はそれを受容するか、それとも許さないとする意志を見せるか。
  • ミシャは川崎とマリノスに対しては、「自陣ゴール前で守ることを考えていると難しいチーム」だと評価しており、そもそも自陣ゴール前に近づけないようにハイプレス気味のやり方で(ほぼ)毎回、対抗しています。
  • 札幌対神戸の、直近3戦の状況は以下のようになっていて、
  1. 2018シーズン9月の対戦では前からプレス。(ポルディの退場、イニエスタは負傷交代)
  2. 2019シーズン5月の対戦ではリトリート。(イニエスタ、ジェイ、アンデルソン ロペスらが欠場)
  3. 2019シーズン8月の対戦ではリトリート。(トップのジェイがアンカーのサンペールを監視。イニエスタは欠場)
  • 直近3戦の戦い方は、神戸の状況と札幌の状況から総合的に判断されたもので、上記の「2.」…2019シーズン5月の状況は、札幌は開幕から絶好調のアンデルソン ロペスを直前の負傷で欠いたことで、それまでよりもゲームのテンポを落として試合を進めたとも言えます(アンロペがいれば勝手に1人でカウンターで攻撃してくれるので、それを前提に攻撃機会を確保できるが、アンロペがいないならカウンターばかり狙っても成果が期待できない)。
  • 「3.」は真夏の神戸でのアウェイゲームで、札幌はジェイをトップで起用したこと、相手にイニエスタがいないことで、この時も引いて守って、奪ったらジェイに当てて陣形を回復させる意図があったと思います。
  • これを踏まえると、ミシャは神戸について、ゴール前でわずかなスペースを決定機に錬金してしまうイニエスタがいるといないでは別物と評価しているように思えます。ですので、今回は前線でイニエスタにボールが渡らないように、もしくは神戸の志向するロンドで場を整えて前線のアタッカーにボールを届ける状況を生まないように、前からプレスを仕掛けると予想します。
  • 神戸はイニエスタ、フェルマーレンとセンターラインにベテランがいますが、神戸はこれらの選手にあまりフィジカル的な負担をかけないスタイルにもなっています。札幌もジェイの起用を考えると「紳士協定」を結ぶことも一案ですが、札幌の場合はジェイ1人に合わせたやり方とするより、ジェイを特別扱いしないマネジメントをミシャは見せています。なので「紳士協定」は破棄され、互いの異なる哲学が明白になる展開を予想します。
  • 戦術的な観点からも考えます。神戸の最も警戒すべき形は、古橋が左のハーフスペース付近からスタートして大外を突破するものです。
  • これは相手DFのマッチアップにより、「誰が誰を引き付けて、最終的に古橋が誰と勝負するか」という設計が変わってきますが、対札幌で考えると、基本的には大外のWBをどかしてから右CBの進藤と勝負することが予想されます(たまに進藤も定位置から動いていて、宮澤が古橋と勝負するような形になってしまう時が札幌はありますが、これはかなりセオリーから乖離しているので無視し、まずは普通に警戒すべき形を想定します)。

大外を1枚動かしてから古橋を使って打開

  • 札幌としては、一つは進藤の隣を守るWBを極力動かさない(相手がWBを引き出そうとボールを動かしても釣られない)という運用が考えられます。ただ、今年のチームはそうした後ろに重心を置く対応をしたくなさそうなので、札幌のWBはSB(ルーカスは酒井)に当ててくると予想します。
  • これを踏まえても、やはり札幌は今節も前からマンマーク気味に捕まえてくる対応が予想されます
  • 静的な図で切り取って示すと、↓の構図からゲームが始まると予想します。神戸はGK-2CB-アンカーのスクエアでGKから展開。札幌は誰にも出させないよ、としますが、まずジェイ(意外と、アンカーを消す守備は巧い)がサンペールを消せるか
受け手を全員捕まえる
  • そうすると、神戸はイニエスタか山口が落ちるか、飯倉が西or酒井に展開。通常札幌はここで受け手に圧力をかけていきますが、この4人のうち誰からボールを奪えるか。一番難しいのが荒野-イニエスタで、比較的与しやすいのが深井-山口のマッチアップでしょうか。そして神戸は当然詰まりそうになるとイニエスタを使ってきます。通常は荒野が右、深井が左ですが、この2人をスイッチすると面白いかもしれません。高嶺の起用により、深井を落としてボール保持する必要がないので、荒野と深井を入れ替えるのは障壁が少ないはずです。
  • 神戸は相手の1列目守備を突破したら、通常はボールを落ち着かせ、ゆっくりと全員で敵陣に侵入してからボールを左右に動かし、ギャップを突いていきます。ただ、札幌相手で、札幌が神戸の前線3枚と同数で守っているなら、恐らくは前線3人のスピードを活かして速いタイミングでスペースを突いてくる攻撃が予想されます。特に、小川とマッチアップする高嶺(または福森。福森でもここが焦点になります)がどれだけスピード勝負で勝てるか。前節は出色のパフォーマンスでしたが、DFとしての真価が問われそうです。

3.2 札幌のメンバーとボール保持時の狙い

  • 武蔵、アンロペの状況と、駒井のここ2試合の好調ぶりを見ると右シャドーは駒井の起用を予想しています。50mの距離を1発でゲインできるチャナティップ-武蔵のコンビも強力ですが、駒井が右シャドーにフィットし、ルーカスと好連携を見せ始めており、この試合でも駒井のスタメンが有力視されます。
  • 右サイドは、アップダウンする能力を取るなら白井、ゴール前のクオリティを重視するならルーカスといったところかと思いますが、神戸はスローテンポなゲームを志向しているのでルーカスで問題ないでしょう。酒井とのマッチアップになりますが、ルーカスの仕掛けで負担をかけていきたいところです。
  • 4バックのFC東京、マリノスに対して駒井の下図のプレーが効果的に刺さっています。ルーカスが大外で受けると、必ず相手のSBは寄せなくてはならないですが、駒井はSBとCBの間のスペースを常に狙います。特にジェイのような中央で脅威になるFWがいると、CBも中央を離れられないので(特に、GKが飯倉であることも考えると)、中盤の選手がカバーする等の対応を迫られます。これもアンカーにサンペールを起用している神戸に対して効くはずなので、右のルーカス&駒井のユニットは今節も頼りになりそうです。駒井のサイドで仕掛けていけば、古橋の負担を増大させる効果も期待できます。
  • となると神戸はあまりルーカスにボールを回したくないですが、2ラインで守る傾向が強い神戸の場合はこの対応に限りがあると予想します。ルーカスをピッチに立たせておけば、大外で仕掛けるタイミングが何度かあるはずなので、守備面が他の選手の方が上だとしても差し引きプラスでしょう。

駒井のハーフスペース侵入で圧力をかけていきたい

  • 武蔵とアンロペについて。理想は、リードを奪い、神戸が更にリスクを冒し、バランスを崩してきたところでスピードのある選手を投入し、カウンターから2点目…という展開です。両選手ともスペースを必要とするので、ビハインドを負う展開だとかえって首を絞めてしまう可能性もあります。その意味では、2人をベンチに置いておくよりは、どちらかは先発で使った方がいいとの考えも(今節がどう、というより中期的に見て)予想できます。

3 件のコメント:

  1. 再開以後、宮澤選手が多用されていますがキム・ミンテ選手がなかなかスタメンからCBで起用されないのはベコムさんはなぜだと考えてますか?

    返信削除
    返信
    1. 2018年からミシャのミンテに対する要求は感じていました。今はどちらかというと、ミンテがどうというか、宮澤がフィットしつつあると感じます。
      宮澤は読みや予測に優れるので、相手の先手を取って対応できます。ミンテは割と身体能力で解決するタイプで、引いてゴール前で守るならミンテですが、宮澤が今はゴールから離れた位置でうまく守れていると思います。
      ミンテは対人守備は凄く頑張っていますが、ボールを保持している際のポジショニングに改善の余地があるんだろうと前から思っていました。結構ミシャが試合中、ガチめにミンテに要求していたのも見ました。

      後は福森の背後問題の解決も重要ですが、高嶺が出るなら、この負担も小さいので、あまり足が速くない宮澤にはやりやすいと思います。
      ただ、相手にオルンガのようなFWがいるなら、本来は必ずこちらもパワーのあるDFは必要だと思うので、降格がないことも考慮して宮澤でどこまでやれるか試している部分もあるかもしれません。

      削除
    2. 遅くなりましたが、返答ありがとうございました。

      削除