2020年9月8日火曜日

プレビュー:2020年9月9日(水)明治安田生命J1リーグ第15節 セレッソ大阪vs北海道コンサドーレ札幌 ~本来のコンセプト~

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー
  • 札幌は菅が累積警告4枚で出場停止。左のウイングバックというポジションは欠損できないので、何らか代役を確保する必要がありますが、最前線から最終ライン、更には福森の背後までもプロテクトする菅の代役の確保は容易ではありません。普通に考えると、白井も離脱中ですので中野かなと思いますが、中野と福森の攻守における役割整理(福森がフリーマン的に上がりまくると中野の負担増大)は注目ポイントです。
  • セレッソはレアンドロデサバト、ブルーノメンデスが負傷で欠場、高木も負傷中とみられます。デサバトが欠場した3試合のうち2試合は奥埜、直近の浦和戦では木本が起用されていますが、浦和対策で高さのある木本だったか。札幌はクロスボール主体なので、今節も木本の起用を予想します。
  • 後は、奧埜は本来2トップの一角でスタメンなので、FW2人が離脱している今は前線に回したいとの考え方もあると予想します。もう1人のFWは前節初ゴールを挙げた都倉でしょうか。
  • 松田、ヨニッチ、坂元は全試合スタメン出場を続けています。藤田も2節以降は全試合スタメン出場。一方で丸橋は2試合連続でベンチスタート。特に信頼を失っているわけではなさそうですが、ルーカスフェルナンデスとマッチアップするこのポジションは、馬力と高さがあり、ここ2試合続けてスタメン起用されている片山も有力候補です(ハイボールの処理が上手い選手がいるとサイドチェンジが通りにくくなります)。ただ、マンマークで頑張る札幌相手だとピッチを広く使いたいと思うので、片山の疲労も考慮して丸橋のスタメン復帰を予想します。

2.セレッソ大阪に対する印象

2.1 コンセプト

  • 札幌とは非常に対照的なチームで、スペース管理と、「ボール保持の際には非保持への、非保持の際にはボール保持へと切り替わった後の展開」を意識したシームレスなポジショニングと試合運びが特徴です。
  • 札幌の場合、ここ数試合のトータルフットボール革命下では、人を捕まえてボールを回収したら、すぐに前線に展開して最速でシュートまで持ち込むことが推奨されています。
  • この過程でエラーが発生すると局面は保持(≒攻撃)から非保持(守備)へと変わりますが、札幌はボールを失う瞬間までは常にリスクもリターンも最大化してチャンスをゴールに結びつけるために前進します。なので、前線のアタッカーは基本的に好きなタイミングで仕掛けていいし、その予防的措置は個々の選手(ルーカスフェルナンデスの背後を守る田中、など)に任されています。
  • 一方のセレッソは、ボールを保持した時にもボール喪失後を考えたポジションを取り、リスクを回避したボールの動かし方をします。
  • 例えば後方のDFが枚数が揃っていない、適切なポジションをとれていないときは攻め急がずボールを回してポジションを整える。縦方向へのパスを入れるのは、選手が配置についてからで、それが相手も守備ブロックを整える時間を与えることになっても許容しています。その縦パスやビルドアップも、不利な局面でのボールロストは極力避ける。具体的には相手の中盤センターの選手が前を向いてボールをカットし、速攻が発動しやすいシチュエーションは極力避けるようにボールを動かします。
  • 本来トータルフットボールって全員で守備をするとかマンマークするとかDFが攻撃参加するではなく、それらは単なる”手段”にすぎず、考え方としてこのような「攻守をトータルで考えて試合運びをする(そのために例えばDFが攻撃参加したらFWがカバーするという手段がある)」というものだったと思いますし(私もよくわかってないし、そもそも誤訳ですからね)、それは今日のサッカーでは非常に普遍的なものになりつつありますが、この際どうでもいいとしましょう(丁寧に説明しておくとミシャのチームはそれ自体は非常に個性を活かした魅力のあるチームだと思いますが、キャッチフレーズ化がしっくりこないだだけです)。

2.2 データで見るセレッソ

  • 先日xGという指標を紹介されている方がいました。

  • 私もよく理解していなかったのですが、簡単に言うと「シュートまでにどれだけいい形を作っているか」を定量化した指標です。 
  • いくつかのモデルがあるようですが、14節までの集計結果の一例が以下で、xGを基にシミュレートするとセレッソは得点15.8、失点19.6で本来の順位よりもかなり下にランキングされています。実際の得失点はそれぞれ21、13です(これはOptaがデータソースらしいので、相手守備のポジショニングは考慮されていないですね)。

  • この解釈は色々できるのですが、単純にGKキム ジンヒョンや守備陣の頑張りが大きいとも言える。他には、やはりボール保持時にリスクを冒すことを好んでおらず、得点の期待値は低い。じゃあ何で点を取っているかというと、ロティーナが言うところの「相手の戦術的なエラー」を突いて得点している。チャンスを能動的に創り出すというより、リスクを排除しながら90分を進めてチャンスが転がり込むのを待っている、とも見ることができるでしょう。
  • 個人的にはセレッソには、それこそオルンガやアダイウトン、川崎の大卒ウイングコンビのように「ロングカウンターを丸投げできる高速アタッカー」がいないのが他の上位クラブと比べるとネックかと感じます。

2.3 ディティール面

  • まず、コンセプトとして速攻らしい速攻が少なく、ボール保持プレーの大半は遅攻で終了します。多いのは幅をとっている右SBの松田からのアーリークロス。相手のMFとDFの間か、スペースがある場合はGKとDFの間を狙います。これらは合わせることが目的というより、斜めのクロスで相手の視界を操作した状態でボール保持を終了したいように感じます。
アーリークロスで意図的にボールを手放す
  • 右の坂元は戦術的な違いを生み出すことが期待されるキープレイヤーに挙げられます。基本的にはSBが幅を取り、2列目MFの清武と坂元は中央に入ってプレーする(それこそ松田のクロスの終着点付近で)が多い。ただ坂元は大外に開いてサイドチェンジを待ち、仕掛けからのクロス(これは明確にターゲットを意識されている)を供給することもある。右サイドから左足のボールは、札幌が前節広島にやられている「インスイングでファーサイドに落ちるボール」になりやすいです。ファー狙いは、味方に合わなかった時にカウンターになりにくい側面もあります。ビルドアップは両SBが開いて、崩しの局面で坂元が開く、松田は下がって予防的ポジションに移行することが多いでしょうか。
  • ボール保持はポジション整理の時間を確保するために、簡単にけり出すことは忌避されます。特筆すべきはGKキムジンヒョンから、隣接するCBを飛ばした、SBや中盤センターの選手に届けられるフィードです。味方を1人スキップすることで、ハイプレスを仕掛ける相手の重心の背後にできるスペースを突き、川崎戦ではこのパスからの”疑似カウンター”で先制点が生まれています。
キムジンヒョンのフィードは成功すれば相手の重心を外せる
  • そして最大の強みは自陣ゴール前付近での中央封鎖の安定性です。マテイヨニッチ、瀬古の強みを活かし、自陣ゾーン1(ラスト1/3)ではかなりラインを低く設定し、DFとMFの8枚ブロックでボールをサイドに押し出します。
CBがスクリーンアウトし中央封鎖で鉄壁の対応
  • この時、中央のCBは必ずゴールエリアをスクリーンアウト。大抵のボールは跳ね返すか、キムジンヒョンが処理しています。左右には強い反面、”前後”の揺さぶりについては、弱いとは思わないですが、攻略するとしたらこっちかなと思います。これも川崎戦、川崎の3点目は狭いスペースでの浮き球の縦パスをFW小林が落としたところから決まりました。

3.試合展開の予想

  • ロティーナ監督が就任した2019シーズンから特に、あるいはミシャとユンジョンファンの対戦だった2018年も含めてそうでしたが、今シーズンはより互いのコントラストが強まったゲームになりそうです。
  • セレッソは1-4-4-2で決まり。対する札幌は、名古屋戦と似た論点になりますが、ゴール前で非常に固いセレッソ相手にどのようにシュートから逆算するかが重要になります。
  • 私の意見では、メンバーにジェイが入らないなら、恐らくクロスボールは全て跳ね返されてしまう。なので、ジェイがいないならセレッソのCBにまずゴール前から動いてもらって、その状態で速攻を狙うべきだと思います。ハーフウェーライン付近で待ってボールを持たせることになりますが、ミシャにその選択肢はあるか。「xG値」の話もそうですが、持たせてもあまり問題がないチームなので、大阪の暑さも考慮すると無理をするべきではないでしょう。
ハイプレスよりもボールを持たせる展開を推奨したい
  • 選手個人で期待するのは、左に入ることが予想される中野。中央を固められた時の打開策として、ヨニッチと瀬古を避けることはおそらく最低条件(ジェイがいてもピンポイントクロス以外では難しいと思います)で、となるとCBを越えたファーサイドへのクロスと、そこへの走り込みが重要になります。
  • 菅もこの走り込み・飛び出しが得意ではあるのですが、中野は菅ほどの力強さはなくてもタイミングとポジショニングで勝負できる選手で、前に一度書いたことがありますがルヴァンカップのファイナル、ラスト5分で裏への飛び出しを続ける中野へのボールが一度でも成功していれば我々の運命は変わっていました。出し手(アンロペ?)が逆サイドを見てくれるという発動条件はありますが、菅の出場停止はこの点ではプラスに作用しないか、との期待もあります。

WBの飛び出しでCBの死角を突きたい
  • そして右利きの左サイド、中野は自らもファーサイドへのクロスの供給役となることができる。このボールにも誰かが反応する必要はありますが、この試合に関しては福森の左足で正直なボールを供給するよりも、中野の右足からのフィニッシュを何度か狙ってほしい。
  • ↓みたいな形です。


4 件のコメント:

  1. 是非おしえていただきたいのですが、何試合くらいC大阪の試合を見ているのですか?

    返信削除
    返信
    1. 今年は4か5試合、去年は10試合くらいだと思います。

      削除
  2. いつも楽しいブログありがとうございます。
    昨年のホームセレッソ戦で中野が中央で躍動しているのを見て好きな選手の1人になりました。なかなか出動機会が得られませんが、このチャンスをものにして欲しいです。

    返信削除
    返信
    1. 私も楽しみです。ただ、白井選手らしいですねw
      https://hochi.news/articles/20200908-OHT1T50204.html

      削除