2025年12月3日水曜日

北海道コンサドーレ札幌の2025シーズン(2) 〜時効なき残債処理〜

2.あんなこと、こんなこと、あったでしょう〜

  • 今回はこのシーズンの背景やピッチ外での重要なトピックについて振り返ります。
  • 記号の意味は各トピックを、シーズンへの影響として ⚪︎:よかった ×悪かった ?:どちらともいえない と分別したものです。
  • 余談ですが今まで黙ってましたがいわきでレンタカーぶつけました。まぁ保険入ってましたが…


×:前年夏のパニックバイムーブのおかげでオフに身動きが取れず

  • 24年にコンサの降格が決まるか、現実味を帯びるか、もしくはまだまだ可能性がある段階からこうした質問が何度か飛んできて回答したのですが、JリーグではJ2降格→主力選手の大量放出 という図式は簡単には成立しなくなっています。
  • 実際のところ24年オフのコンサも、スタメン級の選手では岡村と浅野のみが移籍金が支払われる移籍、鈴木武蔵がレンタルバック、駒井と菅がクラブ側から契約非更新による移籍であり、引き抜かれたのは実質的に岡村と浅野のみで、スタメン級の選手ではGKの菅野や高木、DFのパクミンギュ、髙尾、MFの大﨑、馬場、荒野、宮澤、青木、近藤、前線のスパチョークといった選手はJ2でのシーズンを戦うメンバーとして確保されました。
  • 20年前であればJリーグでは、30歳未満の選手は契約切れであってもフリートランスファーにはならず移籍金が発生するローカルルールがありましたが、現在は契約切れであれば移籍金0で獲得できるので、町田ゼルビアのようなチームを除けば大半のチームは契約切れの選手を移籍市場で漁るような動きをしていると推察されます。
  • 今回のコンサも、例に挙げた22年に降格した際の清水も、主力選手で他のチームが欲しがる選手に契約が切れる選手があまりいなかったため、ファンが予想するほどの選手の大規模な放出はなかったと思われます。

  • 一方でスカッドの入れ替えという点で考えると、一定は選手を放出して年俸分を浮かせたり、場合によっては移籍金収入を得たり、またポジションを空けて競争を促すことも時に必要になります。
  • この点において、今回のコンサは24年夏時点で予算を使い切り(25年に黒字必達となり)、かつ保有していた選手の多くが複数年契約中で24年オフに契約が切れる選手が少なく、新しい選手を連れてくるために選手を売ったりすることが能動的にできず、いわば補強に動きたくても”身動きが取れない”状況でした。
  • 24年に7シーズン守ってきたJ1の椅子をどうしても手放したくない!という気持ちはわからなくもないですし、大半のサポーターはそうしたクラブの姿勢を支持していたと思いますが、結果的には先のことなんか全然考えていない、サステナビリティを感じさせない判断やアクションのつけを、この25シーズンに1年遅れで支払うことになりました。結局は前年のパニックバイと、その責任者である三上前GMがこのシーズンの全ての元凶なのです…。

  • …というふうに、「全て〜〜が悪い」とか、「Aさんは100%善人または優秀で、その後任のBさんは悪人であり無能」みたいな、情報を削ぎ落として白か黒かをとりあえず断定して、考えることを放棄させることが昨今のトレンドというか、バズるにはこういう感じの煽りとかトップラインが必要なのでしょうけど、基本的に全ての物事には前後の文脈があってつながっています。
  • 確かに直前を見れば24年夏のパニックバイが不発だったのは大きい。しかしなぜそこに至ったかといえば成績不振があり、なぜコンサが弱いのかといえば色々ありますが、一つはこのクラブには30年間の歴史を見てもプレーモデルといえそうなものがほぼ存在しない。なんとなく誰かが「このサッカーは好き」(あとは決めるだけ)、「この監督じゃダメ」といった雰囲気で判断することを続けてきた末にこうした状況に陥っているのであって、単に、前の年にたくさんお金を使いすぎたとか、そこで加入した選手があまり戦力になっていないとか、それだけの問題にとどまらないことを理解しないと先に進めません。

  • なお24年のパニックバイは三上前GM曰く「石屋製菓さんはじめスポンサーサイドから『財政的に無理をしてでも大型補強してJ1残留を目指しましょう』とする働きかけがあった」そうですが(三上前GMは当初「黒字確保は絶対」と言っていました)、憶測ですがもしかすると既にこの時点でコミュニケーションミスがあったのかもしれません。
  • (のちに社長に就任する石水氏が「自分が就任した時点で赤字予算だった!」と不満を述べていましたが、石水氏が同意したのは24年後半戦に大量の招待を行ってホームゲームのスタンドを埋めつつクラブに資金提供を行うことであり、その資金を24年夏の移籍に注ぎ込むまでは同意していなかったのか?と推察する次第です)

  • 余談ですが、先述の「20代の選手は契約切れでも移籍金が発生する時期」にJ2に降格したチームで、例えば05年に降格した柏は、明神、玉田、永田、矢野、波戸、土屋、大野といった主力級の選手を、いずれも移籍金が発生する形で放出したとされます。
  • しかしこれによって柏は、スタメンのポジションが空いて選手を競争させることができましたし、移籍市場で動くだけの資金も得られたはずです。結果、新たな監督(石崎信弘氏)の下、1年でJ1復帰を果たした柏は、J1を戦う07シーズンは大谷、菅沼、李、小林亮といった若手がスタメンに名を連ねるようになり、新監督にマッチする編成への転換もしくは若手主体のチームへの転換に成功します。
  • もっとも柏の場合、親会社に稟議を通せば補強資金としてまとまった予算が得られますし、それでこの時期もDF古賀の獲得や、外国籍選手ではディエゴソウザ、フランサといった前線の軸になる選手を確保していたので、コンサとは単純比較はできないのですが。

?:菅、駒井をフリーで放出(他、青木を慰留など)

  • 24シーズンオフにフリーで放出された4選手(菅、駒井、阿波加、小林祐希)のうち、毎年何らかのポジションで試合に出ていて、かつ26歳と若い菅の処遇に関してはサポーターの中でも賛否が別れる、というか否、もしくは不可解だとされる反応が多かったと思います。
  • これについては放出から半年後、4月の決算報告時にほぼ答え合わせになりそうなリリースがありました。
  • 例の「居住・非居住問題」…想定していなかった分の大型支出が生じたため、普通に考えれば1年契約くらいは提示できたであろう菅や駒井を諦めざるをえなかった、ということかと思います。同じく契約が切れるタイミングだったとの報道があった青木は、そうした状況でも全力で慰留したかったということになります。
  • 3選手のうち、菅は3バックの左WBのほぼ専門ということで駒井、青木を含めた3人の中では最も起用法が制限されますし、得点やアシスト等で直接スコアに関係する働きが少ない。残る2人はいずれも複数ポジションで起用可能ですが、青木の方が若く得点に絡む能力があることなども考慮されたのかと思います。

  • 菅を放出したコンサはこのシーズン、序盤に3バックから4バックベースのシステムに切り替えますが、左利きのDFであるパクミンギュ、岡田、中村桐耶が3〜5月にかけて相次いで離脱する緊急事態となりました。
  • ただ菅はあくまでDFというよりは大外をアップダウンする選手なので、岩政監督が掲げるスタイルにおいては、もう少しボールを動かして味方を使える選手の方が求められる状況で、菅を無理してでも残すべき状況だったとは個人的には思いません。

  • 駒井に関しては、夏のマーケットでの馬場の移籍や故障、高嶺のDF起用(後述)もあり、シーズン中に中盤センターのスタメン級の選手が欲しい状況になったと言えるかもしれません。
  • ただし私の見方としては、駒井は中盤センターというよりはもう少し前のインサイドハーフやシャドーが得意であり、また変革を促そうとしていた岩政前監督体制で駒井のようなベテランで影響力が強い選手を残すことには様々な影響が考えられ、新監督体制で本当にチームが変わろうとするなら契約満了の判断はおかしくはないと感じます。
  • 一方で柴田監督のような、約束事を比較的少なめにして選手の判断に委ねる部分を多めにするやり方だと、若手よりもベテラン選手の方が力を発揮しやすい事例はしばしば見受けられますので、最初からそうした路線で行くとするなら、また別の話になってきます。

⚪︎:特別予算で高嶺を取り戻す

  • そうした激ヤバな状況のオフでしたが、「フルコミット」を掲げた石水新社長の判断によって、コルトレイクに移籍金を払って高嶺を買い戻します。
  • 個人的には高嶺の獲得については、「中盤センターは枚数は揃っているが、宮澤を筆頭にベテランが多く、フル稼働できて運動量がある高嶺を確保することは悪くない」。程度に思っていましたが…
  • 蓋を開けてみれば、まず左利きのDFが誰1人CBとして稼働できない問題が露呈され(そもそも編成的にCBっぽい選手は中村桐耶しかいませんでしたが)、高嶺がCBに回ります。
  • その後、4月から4バックの左CBとして西野の目処が立つと、今度はSBのパクミンギュ、岡田、中村桐耶が軒並み負傷や不調に陥り、高嶺をSBに回せざるをえない状況で、高嶺1人で2人分か3人分の働きをしてもらうことになります。
  • かつ単に試合に出ているだけではなく、CBだと流石に1試合の中で何度も体を張って、屈強なFW相手に跳ね返すようなプレーには限りがありますが、相手の1列目のプレッシングを回避してボールを前に届けるプレー、SBで相手のワイドの選手を封鎖するボール奪取能力だったりと別格の働きを見せつけます。
  • そして後半戦ではDF起用から解放され、前半戦以上に攻撃面で圧倒的なパフォーマンスでチームを牽引します。この補強については、高嶺がいなければもっと早々に終戦だったと思われますので大正解でした。

?:岩政監督の招聘

  • これは長くなるので次の記事で別立てとして整理します。
  • 簡単にサマリー的に見解を述べますと、結果(成績):×、試合内容やプレーの評価:△、アプローチ:⚪︎、といったところです。

×:選手のコンディション対策(京谷パフォーマンスコーディネーターの招聘等)

  • 前のシーズンに沖縄・金武町でのキャンプから故障者が多く、シーズン序盤にベストメンバーが組めないという話がありました。キャンプ地の芝については可能な限り対処してもらうとして、別途故障者問題へのソリューションとして新たなスタッフが招聘されます。
  • 記事の見出しの問題かもしれませんが、ずいぶんビッグマウスだな〜と思った印象があります。競技の性質上、不可抗力のようなリスクある局面は避けられませんし、言葉通り「僕のせいで大丈夫」と本気で思っているならこのシーズンを終えてのコメントを伺いたいところです。

  • このシーズン、負傷による離脱をした選手が少なくなったかというと、そこまで劇的な効果はなかったように思えます。
  • 特にシーズン序盤、4バックのシステムを採用していた際に左SBの候補であるパクミンギュ、岡田、中村桐耶が同時に離脱し、これによって高嶺を左SBで起用せざるを得ない状況になりましたが、シーズン序盤に最適な選手の組み合わせを探している状況で非常に厳しいシチュエーションになりました。なおパクと中村は試合中の負傷であるため、「僕のせい」ではないように思えますが、誰のせいかは置いておくとして。
  • 高嶺はこのシーズン、DFとして13試合に先発出場することになり、当該試合では5勝3分5敗という結果でしたが、シーズン中盤以降にMF起用で固まってからの圧倒的なパフォーマンスを見る限りでは序盤から中盤で固定したいところでした(もっとも本人の話ではDF起用による好影響もなくはなかったとのこと)。
CBや左右のDFをやる中で、自分の感覚が戻ってきた部分はあった。ボランチと違い常に前向きにボールを持つDFというポジションを経験して、積極性が戻ってきたかなというのを、6月15日(第19節)の今治戦で久しぶりにボランチで出場して感じた。
  • 後半戦は夏のマーケットで加入した宮が負傷に苦しみ、26節以降は先発1試合にとどまります。一方で前のシーズンの前半にコンディションが整わなかった髙尾は、チームで唯一の右SBで負担が大きいと思われましたが、夏場に短期間離脱したのみで乗り切ることに成功しました。

×:未整理で歪すぎるスカッドにより「競争意識を煽る」は完全に失敗

  • 前提としてまず監督が変わればチームづくりの考え方も、基準も、優先事項も、アプローチも、好む選手も全て変わります。その点では今回監督交代するにあたり、高嶺と新卒の木戸と林田(他、特別指定の佐藤)以外は全く補強がなく、そもそも監督のリクエストも聞けない、という状態は新監督を充分にサポートしているとは全く言えません。

  • 一方、岩政前監督はコンサのそうした事情を把握した上でチャレンジの一環だとして契約したことも事実なのでしょうけど、この際、最低限のリクエストとして「競争のため1ポジションに複数の選手を確保してほしい」とは伝えていたようです。
  • といってもコンサがオフにスカッド整理に動ける状況ではなかったので、監督のリクエストに”応えた風”の態度を取るしかできなかったのではないでしょうか。

  • 当初、岩政前監督は3バックの1-3-4-1-2の配置を考えているとの報道があり、それだと仮で↓のような配分ができますが、この時点でも左のDFやアウトサイドで競争が生じるかというと怪しくなっていますし、
  • その後シーズン途中に4バックに切り替えると、CBと右SBで著しい人員不足の反面、前線は明らかに飽和状態であることが露見されます。
  • 特にCBに関しては、監督の要求に明らかに応えられない選手の起用を継続せざるを得ず、競争を生じさせパフォーマンスを向上させることには完全に失敗していました。

  • このシーズン主にスタメンで起用されていた選手を並べると(原など一部選手は並べるか迷いましたが)、
  • こうした状況で、途中加入の浦上、宮を含めてもDFは明らかに「2人以上」になっておらず、白井をワイドの選手と扱うことでようやく右サイドの近藤に競争相手を確保でき、前線のシャドータイプだけは豊富…といびつなバランスなのは明らかでした。

  • また4バックの際の左MFなど、適任者が見つからず無理やり他のポジションの選手も当てはめている状態の箇所も散見されました。
  • チーム戦術との適合性に関しては、岩政前監督はハイプレスや前線のスペースへのランによる攻撃を掲げていたのに対し、センターライン全般(前線のFWやシャドー、中盤センター、センターバック)にあまり走力やスピードのある選手が多くないことも編成上かなり問題があったと感じます(これらについて詳しくは別の記事で)。

?:コーチングスタッフの入れ替え

  • 大きなところでは、岩政前監督と旧知の関係である戸川コーチの加入、通訳が「フットボールカルチャーを理解している人」であることが重要だとして元プロ選手が起用されます(ただ最終的にはウリセス氏もマリオ加入後はベンチに入っていましたね)。
  • outでは沖田優氏が退団(ザスパ群馬の監督に就任)。
  • そして赤池コーチがGK(GP)コーチからヘッドコーチに配置転換され、後任には佐々木コーチ、アカデミーと兼任の曳地コーチの体制となります。
  • 役割としては砂川コーチが攻撃を担当、戸川コーチが守備を担当、そして「ミシャ体制を熟知する」赤池コーチをヘッドコーチに置くとの説明がされました。
  • ここからの話は、前提として、練習を毎日間近で見ていたり、話を聞いて詳細を把握しているわけではないので、評価は「?」としておきます。以下は岩政前監督期に8回程度見た程度での感想です。

  • まず全体練習はほぼ岩政前監督が主導していたと感じます。
  • 部分的には砂川コーチが主導して相手ゴール前の局面を意識した練習をしているところも見ましたが、岩政前監督が指揮する練習は実践を意識したものであり、試合の中で頻発するシチュエーションを念頭に置き、かつ攻撃側と守備側を用意するようなやり方が多かったですが、砂川コーチの指揮の下で行っていた内容は試合の中で狙いとしているようなプレーとリンクしているとはあまり感じられず、DFも置かれないものでした。

  • また西野の証言ですが、
  • グループとしてのプレーだけでなく岩政前監督が個別指導も行っていたという話です。私が見た時は「全体練習後に細かく指導している」状況には遭遇しなかったのですが、全体練習中に、たとえばDFの体の向きのような割とディティールと言えそうな部分のトレーニングを行っていた際も岩政前監督が主導していました。

  • これらの状況を鑑みると、このシーズン、スタッフにブレーンとなれそうな人材はほぼいなかったのでは?という疑念が浮かびます。そもそも戸川コーチ以外は監督と関係性が薄く、フットボール的・戦術的な考え方をシェアしているとは考えられませんし、指導歴を見てもこの考えを覆す要素は乏しいです。
  • またミシャ体制を知る赤池コーチをヘッドコーチに、という人事は、そもそも「知っているフットボールの範疇が極めて狭そうな」コンサのフロントが前々監督の何らかの要素や影響を与えようとしたのかもしれませんが、岩政前監督からすると余計なお節介だったでしょう。
  • そして、そうした古株系のコーチのよくある役割としては、選手と監督の橋渡し役、チームの感情コントロールで貢献するというものはありますが、ご存知の通り夏場にコンサは石水社長の現場介入もあり学級崩壊に至ります。監督と選手の関係性の問題でもありますが、コーチはこの数ヶ月間どのような役割を果たしたのかは気になるところです。

  • そもそも攻撃担当、守備担当、と明確に任命しているなら、このシーズンJ2でブービーの66失点していることや、柴田監督体制で相手ゴール前でほぼ攻撃の形を作れていないことなどに一定の責任があるように思えますが…。

×:三上GMの退任、GMは空席へ

  • 詳しくは後述ですが、11月に河合竜二氏のGM就任が発表され、石水社長は「経営に専念」するとの方針が発表されます。

  • 社長が認めている通り「やっぱりGMは必要」。個人的には、何でそう思ったのか、そもそもなぜGMが不要と判断したのかメディアの方に突っ込んで欲しかったのですが、「そもそも」に関しては、3月の三上前GM退任時に石水社長が話していた通り、経営面で三上氏の影響力が強すぎる(≒石水社長に権限や情報等を集中させる上で障壁になる)ということは理解します。
  • それに加えて憶測ですが、前提としてGMという役職が指す職務内容がクラブによって異なるとして、オフシーズンに就任した石水社長には、シーズン中にGMが何をしているか…具体的には選手のケアや現場のサポートのようなことをやっていることがイマイチわからず、「強化部長がいれば編成や移籍交渉はできるので足りる」と判断したのかと推察します。

  • その後ご存知の通り、コンサは岩政前監督と(一部の)選手との間に溝が生じ、石水社長は小野伸二O.N.O.に助言を受けたりもして監督交代を決断しましたが、本来まさにこうした状況に対処し責任を負うのがGMの仕事でしょう。
  • 業務に関する基礎知識がない人がAIやデータを使って正しい判断ができるか微妙なのと同じく、小野伸二O.N.O.に助言を受けるだけでサッカー素人の社長が正しい判断ができるか?というと難しいところでしょう。

?:フットボールフィロソフィーが爆誕

  • この方の記事↓に私の考えに近いことが書かれている気がしますが、手抜きせずに自分でもいくつか考えを述べます。
  • Jリーグが言う「フットボールフィロソフィー」とは、
https://aboutj.jleague.jp/corporate/assets/pdf/club_guide/jclub_guide-2025.pdf

  • クラブをどのように運営管理するかの「説明書」になる
  1. クラブのアイデンティティ「DNA」
  2. クラブのプレーイング/コーチングフィロソフィー
  3. クラブの選手やスタッフの育成/獲得方針
  • 詳しくは元資料をご確認いただきたいのですが、要は「目指すフットボールの方向性」に関する内容が盛り込まれていると理解して良いのかなと思います。
  • となるとコンサのフットボールフィロソフィーは、

https://www.consadole-sapporo.jp/club/philosophy/
  • 果たしてこれはフットボールの方向性と言えるのか?個人的には「走る」と「闘う」がほぼ同義(闘う の中に 走る が包含される)のイメージなのですが、言うまでもなく走らないフットボールとか闘わないフットボールというのはまずありえない、極めて当たり前に近いことを言っている。
  • まずこの時点で、これはフットボールの方向性とか指針に値する内容ではなさそうに思えます。石水社長が「選手にも好評で、試合前にピッチに向かう通路に貼っていてほしい」とする話があったと紹介していましたが、要はそういう感情を昂らせたりコントロールするためのスローガンの一種に近いのかなと思いましたし、そもそもこの「フィロソフィー」は、選手へのアンケートや幹部合宿を経て決めたとのことですが、元はと言えば前々監督であるミシャのミーティングでの決まり文句をそのまま使っているということを石水社長が明かしています。
  • 試合前に監督が選手を送り出す言葉は選手を鼓舞するための演説の一環であり、そこにテクニカルな意味合いは薄い。
  • 選手からも(ボトムアップ的に)アイディアを募ったけど、出てきたのは監督の演説で印象に残ったフレーズでありテクニカルなものはなかった。そこからコンサの幹部合宿ではフットボールに関するテクニカルな部分を詰められなくてそのままフィロソフィーになった、ということでしょう。
  • そもそもこれを作った時にGMが空席で、まさにテクニカルな部分でフットボールの責任者たる人物が不在(検討メンバーの中で、指導者ライセンス保持者も石川直樹氏くらい?)というのも、本当にこれでいいんですかね…と思わされるところです。

  • 一応この内容が実行力を伴うとしたら、走る・闘うを体現できる選手や監督をまずリクルートするというのが普通に考えればそうなりますが、そこについてはオフシーズンの動きを注視するとして、

  • もう一つ「規律を守る」。まず外国人であるミシャ元監督の言葉を通訳の方が日本語訳したのでしょうけど、「規律」は英語ではdisciplineが該当します。
  • この規律とかdisciplineは、フットボール的にはプレーモデルや戦術、ゲームプランを遂行すること、そのためのトレーニングとかコンディショニングとかフットボールに関わる諸々にコミットすること、…みたいな定義になるかと思います。
  • おそらく監督が説明しない限りは明確な定義はなくて、通訳の方が「discipline」と言って受け取る内容は選手によって捉え方が異なってくる。
  • この際重要なのは、コンサの選手に戦術やゲームプランを遂行するとか、まず監督が提示しているそれらにコミットしている(していた)か、というのもあるのですが、それ以前にプレーモデルや戦術、ゲームプランといったものがクラブとして存在しないと、単にルールを守りましょうだけの空虚な決意表明にしかならないのかなと思います。

  • 松本山雅に関するニュースで、「選手がルールを守らない」みたいな内部事情が噴出しているようですが、

  • これも確かに選手のプロ意識みたいな話にもなってくるのもわかりますが、まず何のためにルールがあるのか?そのルールを守ると何か良い影響があるのか?というのが明確ではなくルールだけ定められた状態になると、それは実効性を失うのかなと思います。
  • disciplineに関しても同じで、規律を守ると言い続けていれば、スタジアムの通路に掲示していればそれだけで戦術的なチームになれるかというとそうではない。

  • そもそもフットボール的にどういう方向を目指すのか?という部分が決定的に欠けていて、コンサというクラブはコアメンバーが移り変わっても、どうしてもこの部分の解像度を上げられないままだな、との印象を抱きました。

△〜×:中断期間で積極的な補強に動くも…

  • 浦和レッズがCWCに出場する関係で、例年とは異なる移籍期間(6月1日より)が設定されます。コンサはこの期間を利用してDFの宮、浦上、FWのマリオ セルジオを獲得します。浦上と宮が登録され出場可能となった状態で、18節消化の残り20節という状況でした。
  • 結果は、浦上は16試合に出場(全て先発)、宮は故障の影響もあり9試合(うち先発8)、そしてマリオは15試合(うち先発4)、4ゴールという結果でした。

  • まず宮について。コンサが左利きのCBができる選手を必要としていることは明らかで、竹林強化部長がかつて名古屋のスタッフだったこと、名古屋の選手起用の状況などから宮のような選手に声をかけることは予想通りでしたが、移籍マーケットに出ていると思われる国内の左利きDFの選手ではほぼベストの選手だったでしょう。名古屋が下位に沈んでおり、J1のクラブには出したくなかったと思われることもラッキーでした。
  • パフォーマンスに関しても宮は明らかにJ2では上位のCBでしたし(詳しくは別の記事で)、既存のコンサのDFと比較しても明確なアップグレードとなりました。ただし故障がにより柴田監督体制ではほぼ起用できない結果となりました。
  • そして期限付き移籍であり、名古屋のようなJ1クラブを渡り歩いているため、完全移籍には一定のハードルがあることを承知での緊急補強でしたが、結果としてはコンサは目標を達成することができませんでした。

  • 浦上は監督交代を経ても中心選手であり続けました。その意味ではこの3人のうち最も成功した補強でしたが、獲得経緯としては馬場の放出が決まった際に岩政前監督から具体的に浦上の名前を挙げてリクエストしたとのこと。要は強化担当が主体的に動いた案件ではなさそうです。
  • 大宮で4〜5番目のDFだった浦上ですが、コンサのCBの中では特にボールを持っている時に舵取りができる、高嶺とコミュニケーションをとって守り方を決められるといった点が特に大きかったと感じます(これも詳しくは別の記事で)。一方でシーズンの最終盤になると、柴田監督体制で戦術的な変化が生じ、DFにより対人能力が要求されるようになり家泉がラスト3試合は起用されることとなりました。

  • そしてマリオですが、まず獲得の理由として「今の状況を踏まえて勝つためには得点力向上が必要だから」とする旨の説明があったと思います(ソース失念)。5月末(18節消化)時点でコンサは20得点、29失点で、勝ち点21の12位。確かに得点が多いとは言えない状況だったと言えそうです。


  • そうした状況で鈴木智樹強化部員がキャリアを懸けて移籍交渉に挑み、シャペコエンセからまさに”獲得”したマリオですが、結果としてはハーフシーズンで4ゴールという数字以上に、先発4試合にとどまったことを強化担当者にはシリアスに捉えていただきたいところです。

  • まずこの時期のコンサはシステム1-4-4-2で、FWで最も出場機会が多かったのはバカヨコ。5月末時点で先発11試合、途中出場5試合で5得点という成績でした。
  • その相方探しが課題の一つであり、岩政前監督が期待をかける田中克幸や、スパチョーク、キムゴンヒ、白井といった選手が試されていましたがどれも決定打に欠ける状況でした。
  • 一方でこのバカヨコのパフォーマンスに関し、岩政前監督は満足していないところがあり、ホームで大敗した14節のvs磐田では37分で交代させてもいます。
  • ただし私の見た印象では、ビルドアップがうまくいかないコンサにおいてはバカヨコのポストプレーや前線で潰れ役となるプレーは必要なもので、岩政前監督もそこは否定していなかった(ポストプレーをしつつもっとゴール前に飛び出して欲しいとの要求)と感じます。
  • なお「先発11試合、途中出場5試合で5得点」というのは、このシーズンJ2で15ゴール以上した選手が長崎のマテウスジェズスと、今治のマルクスヴィニシウスの2人しかおらず、それぞれPKが3、1点あることを考慮してもそう悪くはないスコアかと思います。

  • こうした状況を踏まえて最初に問いたいのは、マリオはバカヨコを代替する選手なのか、それとも(2トップなどで)バカヨコと併用する選手なのか、彼がどういうタイプの選手でチームにどう組み入れて成績が向上すると考えて獲得したのか?という点です。
  • バカヨコについて、①前線守備の際にもう少しアクションの量やスピードが欲しい、②シュートチャンスの際にゴール前に走り込んで欲しい、といった要求があるとして、バカヨコほど下がってこない(その分ポストプレーもしない)マリオは②については問題ないとして、①は結局のところバカヨコとそう大きくは変わらないということで、岩政前監督、柴田監督とも完全にバカヨコを代替する存在には位置付けられず、マリオはベンチスタートがしばらく続くこととなります。
  • そしてその前線守備の問題に加え、両者とも左利きでプレーエリアが重複しやすいということ、2トップとしてそこまでシナジーがない(たとえば1人が引いてもう1人が飛び出す、クロスボールに対して1人がニアで潰れもう1人がファーで待つ)ということで、両監督ともこの2人を併用する発想には至らず、マリオの出場機会は限られたものとなります。

  • 結局のところ「古典的な9番タイプの選手にお金を使えば得点も勝ち点も増える」というかなり安易な発想でのリクルートだったな、との印象が否めませんでした。
  • 得点力を増やしたいなら、たとえばこのシーズンのコンサには①左のウイングやサイドハーフが本職の選手がおらず、左からカットインしてシュートやクロスボールができる選手だったり、もしくは②前線に得点力と力強さや運動量を両立する右利きの選手シャドー/セカンドトップタイプの選手(例えるなら長谷川にもっと得点力があるような?スパチョークにもっと力強さがあるような?)であれば、既存のチームに組み入れがしやすくウィークポイントを補う形になったかもしれません。

⚪︎:馬場、キムゴンヒ(中島)を放出

  • 6月に馬場が柏へ完全移籍、キムゴンヒが契約非更新により退団、中島が群馬へ期限付き移籍となります。これらについては「⚪︎」としましたが、移籍がチームにプラスというわけではないですが大きなマイナスではなく、判断としては悪くはないという意味合いです。

  • まず馬場についてはコンサがこれまで、契約が残る選手への移籍オファーに対してオープンであるとするスタンスをとってきた以上、そもそもこのオファーに対しコンサには選択の余地がない、は言い過ぎにしても、馬場が移籍を希望した時点で、柏という一定のクラブステイタスのある移籍先だったこともあり積極的に引き止めることが難しい状況だったと理解します。
  • その上でこのシーズンの馬場については、開幕から中盤センターのスタメンクラスとして5月までに9試合に出場(うち先発8)していましたが、退場処分を受けた第9節)4/12 vs水戸)を最後に故障により出場機会がない状況でした。
  • 岩政前監督下でボール保持から「ポケットを取る攻撃」を掲げていた中で、馬場による中盤からポケットへのランはシーズン序盤で目立っていて、監督の要求に積極的に応えようとしていた点は好印象です。一方で選手特性としてあまり走力がなく、マンツーマンで広く守るようなスタイルだと中盤センターの選手としては走力やスピードの物足りなさがあり、個人的にはガッツは買いますが戦術的にはすごくフィットするタイプだった、とまでは感じていませんでした。
  • また中盤センターには高嶺の他、木戸、田中克幸といった若手、荒野、宮澤、大﨑といったベテランがおり頭数は足りていた状況でした。岩政前監督が馬場の移籍を契機にフロントに要望した選手が、同じ中盤センターの選手ではなくDFの浦上だったことを踏まえても、馬場を放出したことがこのシーズンの命運を決定的に左右したとは言えないでしょう。

  • 開幕時点でコンサには4人のセンターFW(バカヨコ、ゴニ、ジョルディ、中島)と、センターFWとセカンドトップ/シャドー兼任の白井がいて、センターFWに関しては飽和気味の中で5月には鈴木智樹強化担当がブラジルに渡り、新たなFW探しを始めた状況でした。
  • ゴニについては稼働状況(このシーズン11試合出場、うち先発2試合、1ゴール)と前線が飽和状態であること、韓国代表歴ありでおそらく給与水準も低くはないことなどを考慮して非更新という判断は理解できます。
  • 特筆すべきは、ゴニはFW陣の中で所謂9番のセンターFWの役割と、バカヨコと2トップを組むような下がり目のFWの役割もでき、これについてはジョルディや中島にはない特徴ではありましたが、あくまで前線のオプションの一つにすぎないものでしたので、契約非更新の判断は妥当だったと思います。

×:岩政監督の解任と柴田監督の登用(8/12)

  • まず結果を出せない監督への風当たりが厳しくなるのは仕方がないことであり、監督交代に関しては致し方なしかなと思います。
  • その上で、後任がトップチーム監督としては経験が浅い(その分、様々なコストカットにつながる、フロントとのコミュニケーションというか操縦がしやすい)、人材に白羽の矢が立つのも、Jリーグのスモールクラブの意思決定という視点では理解できます。

  • しかし、これに関する石水社長の説明は、
  1. 我々が目指す方向は「攻撃的」である
  2. 「攻撃的」とはミシャを指す
  3. 選手も納得がいっていなかった
  4. 選手も「ミシャのサッカー」のイメージがある
  5. 小野伸二O.N.Oにも相談した
  • といった内容であり、

  • これに対する感想としては、
  1. 社長の介入度合いが高い:大枠を本来の専門家であり担当者、強化担当に任せて最終決裁するのではなく、(素人である)社長自身の意思や考え方が強く反映されている
  2. ミシャという偶像崇拝:緊急インタビューという場ではあるが、「今後何を目指すのか?」という問いに(日本サッカーのテンプレコメントですが)「攻撃的」と答え、それは「ミシャのサッカー」だとしている
  3. 意思決定にノイズが混在:一部の選手や外部アドバイザーの主観が反映されている
  4. その他、人としての好みや相性の問題、コミュニケーション:ネットミーム化されがちな岩政前監督の語録はあくまで外向けのパフォーマンスだと私は思っていましたが、社長も監督のそうした言動は割とストレートに受け取っており、そこでの発言と実態のアンマッチ感は社長にとって不信感を募らせるものだったのか?
  • というもので、監督を変えること自体は理解するが、フットボール的には石水社長がこうした重要事項を判断するという体制はほぼ限界に近づいていることを感じさせました。
  • あとフットボールフィロソフィーはどこに行ったんでしょうか?「走る・戦う・規律を守る」がコアであり、攻撃的とか別に言ってないんじゃないかと思いますが…

  • そして石水社長の言うところの「攻撃的」というのは、この後、9月に出てきたこちらのインタビューを参照すると、おそらくは(ルヴァンカップ決勝のような)「オープンな展開で撃ち合いになりスコアがたくさん動く試合」というイメージなのだと思います。
  • 「外から加入した選手と話すと『札幌とやるときは楽しかった』って言われる。」とのことですが、一般にサッカーというのはミシャコンサのように失点を減らすための仕組みや考え方が極端に少ないというのは競技の特性上、本来はありえない話であり、ルヴァンカップ決勝と絡めてこの選手からの”評判”を拠りどころのように持ち出されても、所詮はある種のグッドルーザー的なところに執着していて、1年でのJ1復帰にこれだけこだわる社長の姿とはかなりズレている印象を受けます。

  • もう一つは、ルヴァンカップ決勝はスコア上は撃ち合いというかシーソーゲームっぽく見えますが、実際は10分にコンサが先制してから後半ATの川崎・小林悠のゴールで川崎が勝ち越すまで、コンサは川崎によって自陣に80分以上押し込まれ、シャドーの武蔵やチャナティップが自陣低い位置まで戻って川崎のSBの攻撃参加についていって、わずかなチャンスでカウンター1発を狙う…という試合展開だったはずです(後半早めにジェイ→アンデルソンロペスの交代)。
  • そこは主観が入る話ではありますが、これを「撃ち合い」と表現して心の拠りどころにする程度のサッカーに対する理解度や認識の方が、トップチームの監督の人事に対して極めてクリティカルな位置付けにあることは、改めてかなりマズイ話だと感じました。

  • また結局は今コンサにいる選手との会話でこうした考えが確信に近づいているということで、(一応は…専門家であるGMを空席にした人事なども含め)サッカー素人である社長周辺の一種のエコーチェンバー現象みたいなものはかなり気になったところでした。

×:柴田監督で「シンプルにプレー」に回帰

  • 地元紙の記事で岩政前監督との対比、というか前任者批判の観点で、「岩政監督よりもシンプルにプレーすることになったが、この方が良い」とする選手のコメントが報じられていました。
  • 「シンプル」はあくまで一選手の主観にすぎないところもありますが、柴田監督に代わってからはボール保持の際にいきなり前線に放り込むような選択も見られたり、キックオフの際に敵陣に蹴り出して相手のスローインから開始するようにしたりと、岩政前監督ほどボール保持からの展開にこだわっていないのだろうとの印象は筆者も一致します。
  • 「シンプルにプレー」…日本サッカーではよく用いられる表現ですが、要はほぼ最低限に近い水準での約束事のみ用意してあとは選手の判断に任せる、というアプローチを指します。このシーズンのJ2でいうと、下平監督→高木監督への監督交代を行ったV・ファーレン長崎がこうしたアプローチをとっているようで、高木監督は「本来戦術的に非常に細かい」ながら今回は約束事を少なくしたという話がありました。
  • 前線にマテウスジェズスを擁する長崎はこのアプローチで結果を出しましたが、コンサは後半戦にかけ高嶺の爆発があったものの柴田監督就任後の結果は、就任後の10試合を4勝6敗で昇格争いからは早々に脱落します(昇格の可能性が潰えたのち、最後の3試合を大分、今治、愛媛相手に2勝1分で乗り切り、全体では13試合で6勝1分6敗)。
  • 高嶺以外のスカッドの問題なのか、コーチングスタッフの手腕なのか、色々な見方があるのでしょうけど、「シンプルにやるべき」論は迷走するチームで頻出だけに、この結果はしばらくは頭の片隅に留めておいてもらいたいところです。

?:河合C.R.CがGMに内定

  • 石水社長曰く「やっぱりGMというのが必要だなと」。率直な印象としては1年(実質半年)で認識を正して手を打ったことは悪くないと感じます。
  • 当初、三上前GMを「日本一のGM」と2万人のサポーターの前で持ち上げた石水社長。そこから3ヶ月で石水・三上体制は周知の通り瓦解するのですが、組織によってGMや強化部長といった役職が意味するところは異なります。
  • おそらく石水社長はオフシーズンの動きだけを見て、GM職について経営面は自分で、強化面は強化部長で代替可能と判断したのだと思われます。

  • そこから河合氏という、クラブの内部事情には精通しているが強化については経験がない人物の登用に繋がるのですが、一つは石水社長のコメントの通り、強化を担う人物として強化部長以外にも人が必要だということ。ただ当面は強化部長がGMに対しOJTをするような、ある種いびつな関係性になるでしょう。
  • もう一つは筆者の予想ですが、トップチームの監督とは別に、現場監督というか現場を締めれるアニキ役が必要だとの考えがあるのかもしれません。
  • アニキというと別に身体と声が大きくて鉄拳制裁を振るうようなキャラクターである必要はありません。筆者の理解だと外国籍選手を含めよく選手とコミュニケーションをとっていたとされる三上前GMはそうしたアニキ役であり、他のクラブだと賛否両論ありますが曹貴裁監督も日本サッカーで一定数いるアニキ系の要素を持つ監督に見えます。コンサの歴代監督だと石崎監督でしょうか。あとは監督とフロント両方の経験がある大熊清氏なんかもアニキ的な要素がある人材だと考えます。

  • 要は、選手と距離が近くコミュニケーションをとりやすく、時に選手の不満の捌け口や理解者になって感情をコントロールすることをサポートし、一方で締めるときは締める、というのが筆者の考えるアニキの役割なのですが、こうした役割を担える人が現状のコンサには監督、コーチ、選手、その他スタッフなどを見ても見当たらず、一部の未成熟な選手に対して甘さが出てしまっていた、とクラブ関係者が感じるような事態が少なからずあったのかなと推察します。その意味では河合氏の登用というか配置転換によって何らかのプラスの効果があるかもしれません。

  • 一方で一般にGMというとフットボール面でのブレーンでもある必要があります。
  • 河合氏は早速「練習でパスが浮く」だったり、あとはフットボールフィロソフィーを意識しつつ、「球際で勝つ」とか「FWも下がって守備をする」とか、「タッチラインを破りそうなボールをマイボールにする」みたいなフットボール的な部分にも積極的に発信を開始していますが、これらは全て戦術的な話が関わってきます。
  • 例えばFWが下がって守備に参加できるようにするには、前からプレスに行かないとか陣形をコンパクトに作るとか約束事を整備した上で、かつそうした資質がある(走力や運動量がある、献身的なメンタリティ、低い位置からカウンターが得意…)選手を揃える必要がある。

  • 要は河合氏がコンサに対して望むことを発信したり打ち出すのは良いのですが、そこを実現しつつ勝てるチームにしていくのがGMの仕事であり、単にアニキとして適任であるだけではなく頭を使うというか一定のロジックが必要になると思われます。
  • 現状のコンサの体制だとそうしたブレーン役の不在だったりロジックの欠如が感じられるところですが、誰がブレーンなのかはまだ見えないと感じます。

  • また、GMとして望むことを発信したり打ち出すとして、一方で社長もこれまで「コンサとはこうあるべき」論みたいなのを積極的に発言してきましたが、それらを整理せず「やりたいこと、ありたい姿」を散発的に乱射して並べた状態になると、組織の戦略としては結局何が重要なのか散漫なものになります
  • コンサ内部に未だに漂う「ミシャ時代」への情景と、河合GMの想いを両立しようとするとすでにそうした散漫さがある状態なのかもしれません。「いいとこどり」をしながらうまく着地させるには頭を使う必要がありますし、頭を使っている人を周囲が邪魔しないことも重要になります。


?:深井の引退と謎の「若手選手責任論」リバイバル

  • あれは秋頃だったでしょうか。早々にこのシーズンが終戦となり昇格争いをするチームを尻目に、引退表明をした深井の見送りに注力することとなったコンサ。
  • この時期になって、その深井絡みでもそうですしそれ以外の局面でも非常に目につくようになったのが「若手選手がもっと努力しないといけない、物足りない」といった論説。↓の柴田監督のコメント以外にもキャプテン高嶺、宮澤、荒野といった重鎮たちが一斉に似た論調を繰り広げます。

  • まず若手、というのが誰を指すのかわかりませんが、所属選手で25歳以下で括ると高卒3年目の西野、大卒1年目の木戸と田中克幸、高卒2年目の林田と原。期限付き移籍の選手は一旦除外するとして、まずこれくらいが若手と言われるのでしょうか。
  • 私だったら原はこのシーズンもう少し伸びて欲しいとかそうした個人的な想いは確かにありますが、一方で西野はこのシーズン高嶺に次ぐ重要な選手となりましたし、木戸もまずまず出場機会を得てはいる。
  • 数ヶ月前まで大学生だった林田(おそらくポテンシャル採用でしょう)にチームを変えるような期待をするのは過大なので、となると名前が挙がらない選手のことを念頭に置いているのか?と勘ぐりたくなりますが、構図的には古株の既得権者がマイノリティに諸々の責を押し付けているように感じました。
  • もしかすると26歳以上の選手なども意識しての言動なのかもしれませんけど、そうなると若手というよりも、チーム全体にとにかく元気がなさすぎるという問題の捉え方になるでしょうか。

  • 思い返すのは、コンサで「若手がだらしがない」みたいな論調は景気が悪い時にたびたび繰り広げられる話で、かつては2005年頃の柳下監督体制でもありましたし、2015年オフにブルーノコーチを招聘した際も、当時の社長曰く「若手を怒鳴りつけられる鬼軍曹タイプが必要」と理由を話していました。もっともブルーノはその後若手の指導役というより外国籍選手のマネジメント役になるのですが…。
  • という具合で、このシーズンの総括や反省として安直な「若手選手責任論」に逃げるようだとこの先の見通しは明るくないなと感じました。真摯に現実と向き合っていただきたいところですが…
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  • 次回はようやく、より戦術的な話、このシーズンにピッチ上で何を目指し、何が怒っていたのか?にフォーカスしていきます。

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