2025年12月9日火曜日

北海道コンサドーレ札幌の2025シーズン(4) 〜脆すぎた「圧倒」への足掛かり〜

  • 前回はボールを持っている時のプレーの内容で終わってしまったので、続いてボールを持っていない時のプレーについて整理します。
  • サムネは7月にジュビロにボコボコにされた2時間後くらいに機内で出てきた1回目の夜ご飯です(成田→仁川、仁川→アディスアベバの各区間でそれぞれ夜ご飯として機内食が出てくる。え?)。


3.4 敵陣でのボール非保持(≒プレッシング)

本来は駆け引きの一要素だが:

  • 敵陣でこちらがボールを持っていない、相手がボールを持っている時には、積極的にボールを奪いにいくか、もしくは否かという考え方になります。
  • 否の場合はより相手が前進してきた時にボールを奪うように準備をしたり、相手が前進してその後方(こちらから見て前方)にスペースがある状態を誘発させて罠を張っておくといった考え方になりますが、前進させることでこちらのゴールの近くでプレーさせることを許容することにもなります。

  • サッカーの歴史においてプレッシングというものが登場して以来、その活用の積極さだったり開始位置の上下だっだりは一定周期でサイクルが回っています。
  • 近年だとガスペリーニのアタランタのように、フィールドプレイヤー10人でマッチアップを合わせてボール周辺で明確なマンツーマン状態を作って(ただしアタランタは、ボールと遠いところではその限りではないと思います)、DFなどボール保持者や受け手の選手にパニックを誘発する狙いはどのチームも持っていますが、一方でボールを扱う側のスキルや先述面も向上し、マンツーマン要素が強い対応にしないとトップレベルではプレッシングが成立しなくなっている。
  • そしてマンツーマンで守ると、そのマンツーマンを何らか突破されたら自陣ではDFと相手FWが1v1になっており、マンチェスター・シティであればそのFWというのがハーランドだったりするので、ハーランドにスペースを与えた状態で1v1にするリスクを冒してまでやる価値はあるか?という判断を迫られます。

  • ヨーロッパのトップレベルではそうした戦略的な判断、トップ選手同士のデュエルや駆け引きに満ちていますが、現状Jリーグだとそこまでエクストリームな攻防にはなっておらず、マンツーマンで一通りボール周辺のDFを捕まえるだけで簡単に前に蹴ってしまう様子がよく見られます。
  • この際、コンサの2020-21シーズン頃のキム ミンテ、2023-24シーズン頃の岡村大八などがそうですが、マンツーマンでのプレッシングを仕掛けた結果、相手が簡単に蹴ってくるボールを跳ね返したりしてマイボールできる選手の有無がJリーグだと結構重要になってくると思います。

  • また、例えば↑のような状況で岡村のような選手に簡単に跳ね返されるなら、ボールを持っている側は別のやり方を講じる必要があるし、逆に守る側もマンツーマンのDFのところで、ミンテや岡村が跳ね返せないならそもそもマンツーマンでの対応を諦めて一旦撤退する、みたいな駆け引きのようなものが本来はあるはずですが、Jリーグだとそうした駆け引きや使い分けがない試合も見られます。
  • このシーズンだと、後半戦に対戦した甲府や大分は90分間を通じてほぼ引いて構えてコンサにボールを渡してくれましたが、それでうまく行かないならプランBというか、プレッシングを仕掛けて試合展開を変えられることが望ましい。それができないのは非常に苦しいチームだな、と思って見ていました。

Retreat isn't an option.:

  • ↑で戦術的な使い分けができないと厳しい、みたいなことを書きましたが、このシーズン岩政前監督のコンサの敵陣でのプレッシングもあまり使い分けがなく、ほとんどの試合で相手に対してプレッシングを仕掛けるというスタンスは不変でした。
  • そしてこのプレッシングが監督の退任までのほとんどの期間でなかなか機能しないところがあり、このシーズンコンサが迷走した非常に大きな要因だったと感じます。

  • おそらくこの頑固さが本来の意味での「フィロソフィー」に近いものなんだろうなと思います。プレッシングというのがアグレッシブなものだと捉えるなら十分に攻撃的なフットボールのフィロソフィーは見せてくれたということになるでしょうか。
  • それが不満なら、結局コンサが求めているのは攻撃的なフットボールとかフィロソフィーというのは二の次で別のところにあるのかもしれません。

3バックvs1-3-4-2-1:

  • コンサがシーズン序盤に3バックの1-3-4-2-1ベースのシステムを採用した4試合のうち、相手が3バックの1-3-3-1-3のようなシステムを採用していた2節のvs熊本と、相手が1-4-4-2のシステムを採用していた4節のvsジェフの試合をサンプルとして振り返ります。
  • プレッシングにもビルドアップにもいろいろなやり方がありますが、それぞれ最前線にいるFWやシャドーの選手と後方にいるDFやGKの選手はほぼ必ずプレーに関与するので、特に重要になります。
  • コンサの前線はこの試合、トップに中島、シャドーに田中克幸と長谷川。熊本は3バックが阿部、袴田、岩下、GKが懐かしの佐藤優也で、足でボールを扱うプレーにある程度慣れている選手が揃っていました。


  • 熊本のボール保持に対し、コンサの対応の考え方は、前線でシャドーの克幸と長谷川が左右のDFを担当し、中央は中島が最初から中央のDF(袴田)を担当するのではなく、その背後のアンカーの上村の前に立っていて、熊本のGK佐藤とDF袴田には最初はボールを持たせて良い、という形でした。
  • ですので(結局この試合あまりうまくいかなかったので憶測になりますが)、おそらくコンサが想定していた前線での対応としては、
  • ↑のような感じで、トップの中島がアンカーを見ながら最初は我慢し、シャドーが熊本の中央のDF袴田のパスの受け手を制限して、中央に誘導してから中島がアンカーへのコースを切りながら袴田に寄せていき他の選手(図では高嶺)と2人で対応するような形に持っていくようなイメージだったのかもしれません。

制限・誘導役は適役だったか:

  • しかしこの試合でコンサのプレッシングがうまくいかないパターンを見ると、
  • まず最初にアンカーの前に立っているFWの中島が、GKを追いかけるように前に出ると、熊本のアンカーの上村がフリーのまま誰にも受け渡されない状態でそこに通されてしまったり、

  • 上村には遅れ気味に中盤の馬場や高嶺が対応するけれど、そもそもマンツーマン気味に対応している熊本の選手に対し全てが遅れ気味で全然制限がかかっていなかったり、

  • いずれの現象にせよ以下のことが言える状況でした。
  1. まずFWの仕事がGKやCB袴田まで追いかけるのか、そうではなくて袴田が出てくるまで待つのか が明確になっておらず、中途半端なため、熊本の中央の選手に対して制限がかかっていない
  2. 1人目が制限をかけて、誘導までできたとして、それ以降(相手の2人目、3人目)の対応はおそらくマンツーマンがベースなのだが、熊本の選手に対しどの間合いでボールを奪ったり潰したりできるかが多くの選手で把握できていない

リトリートは余計に悪手:

  • vs熊本では前からプレッシングが機能しないことで前半途中からリトリート気味の対応に切り替えると、相手がボールを持ってフリーな状態でコンサゴールに近いところから局面が始まることを受容することとなりますが、この時コンサはリトリートから相手のボールを持っている選手にどこで制限をかけていくかが不明瞭なままだったことと、前線のスペースにパスを出された時に簡単にセンターバック(主に大﨑)が出て中央が空き、中に入れられると危険な状態にもかかわらず大﨑やDFが相手のプレーを切ることができないという個人の対応に課題があり、熊本と山口(3節)で似た形から先制点を許します。
  • 熊本、山口相手の5失点のうち大﨑は4失点に大きく関与しており(ついでに言うと開幕戦vs大分の1点目も、難しい状況だったが関与している)、CB(リベロか?)を3年ほどやっていない彼のDF起用や、他の選手も含めたDFの選手全般の個人の出来、そもそも編成上、3バックの選択肢に乏しい(髙尾やパク ミンギュはミシャ体制でDFだったが本来はSBなので跳ね返したりは得意ではないはず)ことも大いに要因はあったと思います。

  • 一方で、vs熊本、vs山口の失点を見ていると、ハイプレスをしたいのはわかりますが、ハイプレスを仕掛けず守備の開始位置を低くして撤退した時にどう守るのかも整理されておらず、DFの選手の個々の頑張りに委ねられていたようにしか見えませんでした。

ミスマッチで尚更問題となった前線の走力:

  • 4節のvsジェフではコンサが1-3-4-2-1、ジェフが1-4-4-2で、コンサはそのままのシステムでは1v1で捕まえられない選手がいくつか生じます。
  • コンサはこの試合、大﨑に変えてCB中央に家泉、前線は依然として試行錯誤が続き、スパチョーク、バカヨコ、出間の3人を起用します。

  • その上でジェフに対しては、WBの近藤と田中宏武を低い位置に配置し、最初はサイドに蓋をして5バックの状態からスタート。
  • ただ結局はこの時もリトリートするというよりはハイプレスを仕掛けたいという姿勢であり、ボールを持っているジェフのDFの選手を捕まえようとしました。

  • しかしジェフに対してそれがうまくいかなかったのは、↑のvs熊本と同じくコンサのFW(1列目)が相手のボールを持っている選手を完全に捕まえるのか、それとも捕まえたり奪ったりというよりはコースを切って誘導して制限をかける役割なのかが中途半端で、前線の選手が中途半端に前に出てコンサの1列目と2列目(FWとMF)の間が空いてしまいそこのスペースを使われてしまったという、それまでの試合からあまり改善が見られない部分がありました。
  • そしてもう一つ、4バックのジェフはそれまでの3試合と比べて、ボールを持った時にDFがピッチの横幅に開いて横にボールを動かしてくる傾向があり、となるとコンサがそこにプレッシングを仕掛けるなら何らかワイドに開いた相手の選手を捕まえるために頑張って走る必要があったのですが、この役割をFWとシャドーの計3人でやるとなると、コンサの前線の選手はピッチを広く使ってくるチームに対して真っ向勝負でプレッシングできるだけの走力やフィジカルが足りてなさすぎるということが露呈されたと思います。
  • vs熊本でも気になったのですが、熊本が中央の袴田と右DFの阿部のところでボールを持つ展開が多かったとして、コンサはそれらとマッチアップする中島や長谷川には比較的マンツーマンに近い(対面の選手である袴田や阿部を管理する)という役割が明確でしたが、右シャドーの田中克幸はこの際、自分の対面の選手(熊本の左DF岩下)を見る仕事しかしていないことが多く、克幸がもっとボールサイドに圧縮してくるような対応ができれば熊本の選手がフリーになる余地は少しは消せたのではないかと思います。
  • これは単にチームの方針として、そうした運用にしていた(留めていた)ということなのでしょうけど、前でボールを奪いたいなら対面の選手だけに責任を持つのではなく、↓のように(最初に相手を誘導した上で、ですが)ボール周辺に選手を集めて相手が活動できるスペースを狭めることが本来は必要になるはずなので、コンサのやり方はあまりにも前線の選手の仕事量が足りなさすぎる印象でした。

  • おそらくこのシーズン、岩政前監督体制でハイプレスが最もうまくいったのが、3月にJ3の福島と対戦したルヴァンカップ。
  • 後半に2失点、延長で3失点を喫し3-6というスコアで派手に散りカップ戦から早々に姿を消すことにはなりましたが、この試合、前線に中島、出間と共に特別指定の佐藤を起用し、福島のCBを出間と佐藤のシャドー2人で見る形としましたが、↓の得点も、シャドーの選手がCBをマンツーマンで見るだけではなく、自分の担当する選手と反対側にボールがあるときは中央に絞って相手の複数の選手を見る、またはそのためにスペースを守る役割になっている。
  • 相手がJ3ということでよりアグレッシブな姿勢だったのかもしれませんが、ハイプレスではめていくなら前線にこれくらいの運動量や走力は必要でしょう。

岩政体制 最大の謎 〜1人目の人選〜:

  • 5節(vs秋田)から4バックのシステム1-4-4-2気味に切り替え、勝ったり負けたりを繰り返していたコンサ。前半戦、勝てなかったチームは7節の甲府を除くと結果的にこのシーズン上位でフィニッシュすることとなるチームでした。
  • 5-6節はあまり相手がボールを保持しなかったのでプレッシングらしき場面が少なかったとして、7節では↓のように2トップが相手の中盤センターを消して、サイドの選手が早めに前に出てくる形で、そこまでプレッシングというほどの圧力がない対応します。しかしサイドの選手が出た背後のスペースを簡単に使われて前進を許していました。

  • 10節(vs藤枝)頃から前線でのプレッシングのやり方が変わってきます。変則システム(ですが、まかビルドアップは4バック+アンカーに近い)の藤枝に対し、2トップのうち1人がアンカーを背中で消して、もう1人は相手の右側、コンサから見て左側のセンターバックに回り込むように寄せていき、相手の左側のCBにボールを持たせるように誘導。そして右MFの近藤がそのCBに出ていくという形でした。以後これが定番になります。

  • 13節(vs山形)では、当時下位に沈んでいた相手にこの形から決勝点を挙げ目に見える形で成果が出ます。
  • しかし11節(vs大宮)、14節(vs磐田)といった、このシーズン昇格プレーオフ圏内に入るチームとの対戦ではコンサの前線守備は簡単に攻略されます。
  • 特に、磐田相手にホームで4失点を喫した14節は前半戦の低空飛行から浮上するチャンスを完全に逸したターニングポイントの一つであり、前半途中の37分でバカヨコ、キムゴンヒの2トップを交代させることとなるなど、開幕直後に比べると持ち直し気味だったチームに再び暗雲が漂います(開始早々の髙尾の致命的なミスなど、前線以外の問題も大きかったですが)。

  • 11節では大宮が3バックの1-3-4-2-1だと予想してコンサは準備していたように見えました。
  • 一応、相手が3バックでも4バックでもFWの1人(バカヨコ)がCBに左側に誘導しながら、そのままボールホルダーに寄せて近藤と2人で制限をかける、というやり方は大きくは変わらなかったと思いますが、

  • 大宮が実際には4バックの1-4-4-2気味の陣形から開始していたため、バカヨコ1人でCBのガブリエウと市原、GKの笠原の計3人を見ることになり、誘導も制限をかけることもできなくなってしまいました。

  • 磐田は前線に角と渡邉が張るシステム1-4-4-2気味からスタートし、コンサは磐田の右ウイング・クルークスを警戒し中村を左MF起用かつ彼がクルークスのいるサイドで大外を守るべくプレスバックできるよう、中村・クルークスのマッチアップとは反対サイド、コンサから見て右・磐田の左サイドに誘導を狙います。
  • ↓のようなイメージで、バカヨコ・ゴニの2トップで磐田のGKとCBへの誘導と制限を分担し、左CBのグラッサに渡ったところで近藤とバカヨコで制限をかけるイメージだったと思いますが、

  • なかなかグラッサに制限がかからず、またハッチンソン監督(当時)の磐田はSBが中央に絞る形を持っており、複数パターンのボールの動かし方が用意されていたため、決め打ち気味のコンサのハイプレスは空転します。

  • これらの試合では、まず「パターンを作るのではなく仕組みを作る」と言っていた岩政前監督のコンサですが、前線守備に関しては各々の選手に明確に役割や動き方、振る舞いを振り分けて、ほぼ決め打ちに近くなっていたと感じます。
  • 序盤戦の4連敗で、思った以上にチームの水準が相対的にこのリーグの中で低いところにあると認識しての対応だったのでしょうけど、大宮や磐田は岩政前監督が問題意識を持っていたような「監督の言うとおりにしているだけでは対応できないことをしてくる」相手であり、チームとして完全に相手に上回れた格好でした。

  • そして、コンサはバカヨコが、GKやDFの最初のパスの方向を誘導→そのままボールが渡った選手を追いかけて次のプレーに制限をかける、という2つの連続した役割を担っていましたが、見た感じ、動きの量や連続した動きに特徴があるというよりも、それらが苦手そうなバカヨコにこの役割を要求することに岩政前監督は固執しており、その期待に応えられないバカヨコは5月だけで2度の先発→前半途中での交代という扱いを受け、殆ど干され気味だったジョルディがFWで試されることとなります。

  • 見たところスプリンタータイプというか、本気で走ったら速いのでしょうけどそれを1試合の中で何回も繰り返し連続しては難しそうな特徴のバカヨコは、岩政前監督のかなり辛抱強い指導と起用により少しずつアクションの質が変わっていくこととなりますが、それでも、そもそもあまりその仕事が向いていなさそうな特定の選手に仕事を振り分けて運用していたことは岩政前監督体制での最大の謎ともいえるプロセスでした。

ハードワーカー3銃士の台頭:

  • 5月末の鳥栖相手にまたも似たような展開となりハイプレスが機能せず、以降の試合では組織的に複数選手でプレッシングを行うというよりは、1v1の関係性を意識し対面の選手を監視する、マンツーマン基調のミドルブロックで守るやり方に変わっていきます。
  • この過程で、18節(5/31vs仙台)から木戸、20節(6/21vs藤枝)から長谷川がFWまたはトップ下としてスタメンで起用されるようになります。
  • 特に相手が3バックの際に2トップのコンサがマンツーマンで対応するには、FWが縦関係になる必要がありますが、この関係性に気を配れる2選手が入ったことでようやくコンサに一定のdisciplineが生まれます。


  • 長谷川は先発時、45分でほぼ出し切って木戸と交代することを予め予定していたかのような振る舞いを見せてくれましたが、同じ役割をできる選手が2人いるというのもこのシーズン、特定のスタメンの選手に依存する傾向が強かったコンサではかなり稀な事象だったと思います。

  • 20節から22節までコンサは藤枝、熊本、山口に対しこのシーズン初、そして唯一の3連勝を飾りますが、近藤を負傷で欠いたこの3試合に右MFで先発していたのが白井
  • コンサはこのシーズン一貫してワイドでの対応に課題があり、それはワイドで1v1で守るSBやWBの選手の個人の対応によるところもありますが、一方でワイドで仕掛けてくる相手選手に対し、2v1の関係性を作って縦横それぞれを切るような、今日のフットボールで一般的にもなっている対応がほぼ見られませんでした。

  • 特に右サイドでは、近藤が先に述べたようにハイプレスで重要な役割を担っていることもありますが、前で奪いにいく、いかないに関わらず近藤のプレスバックには物足りなさを感じていたところでした。
  • そこに右MFとして登場した白井は近藤よりも明らかにプレスバックの意識が強く、近藤が主に”前”のみで仕事をする(基本的にハイプレスに参加し、そのまま前に残っているのでサイドアタッカーというかシャドーやFWに近い)とするなら、白井は前でも後ろでも仕事をしてくれる存在で、3連勝の明らかな立役者でした。

  • しかし近藤が復帰した23節(vs磐田)では、再び前半で3失点を喫するそれまでのザルなコンサに逆戻りしてしまいます。
  • この試合は磐田にDFファンデンベルフという新加入の選手がおり、ビルドアップは以前の対戦でも見られた1-3-2-5気味でしたがそのファンデンベルフ活かす形にやや変わっていたこと、コンサがそのことをあまり意識しないようなマンツーマンによるハイプレスを仕掛けて不発だったこともありますが、

  • それでも白井や長谷川、木戸に引っ張られていた数試合を見た後に改めて近藤が右MFに入っての試合を見た感想は、軽すぎる、仕事量が少なすぎる(前でしか仕事をしない)という印象は否めませんでした。

  • 失点シーンもさまざまな要因がありますし、7月の磐田というコンディション的にもイージーではない環境でしたが、例えば↓の場面を見てもプレスバックしてスペースを埋めていればなんとかなったかもしれません。彼に限らず磐田戦は自陣ゴール前で粘れない、このシーズンの象徴のような試合でした。

  • 柴田監督の就任後、近藤は27-29節はベンチスタートとなりましたが、監督からは「使いたいと思うプレーを見せてくれ」のように発破ををかけられたという話がありました(確か試合中継中のインタビューより)。これもある種の答え合わせのようなものだったと思います。

3.5 自陣でのボール保持(撤退しての守備)

繋ぎ目が粗すぎる:

  • 一般には、
  1. 敵陣でプレッシングを仕掛けて相手が自陣に入ってくることを阻害する、簡単に自陣ゴール前でプレーさせないようにする
  2. 自陣に入られたら撤退したりブロックを再構築して、自陣ゴール前の危険なエリアを守る
  • という二段階で設計されるかと思いますが、このシーズンのコンサはまず先ほどの3.4で書いたようにハイプレスの意識が高く、かつそれが簡単に突破され、二段階で守ることもできずにゴール前に到達される…という場面もかなりあったこと、またハイプレスを仕掛けるところから始まっている部分が大きいため、3.4で書いた話が主になり、この項目では書くことは少なくなります。
  • 以下では3.4で触れなかった話を中心に整理します。あとは、トランジションとセットプレーについて今回の記事で触れることが難しい(整理して書く労力がない)ので、書ければこの項目に入れておきたいと思います。

個人戦術:

  • 改めて、開幕4連敗を喫した3バックの1-3-4-2-1を採用していた時期は、3バックの中央に大﨑、左に中村またはパク、右は髙尾または西野、という選択がされていましたが、このシーズン台頭した西野以外は本来ゴール前を守る役割ではない選手が起用されていたことは大きかったですし、編成上それでもなんとかなるという楽観ムードでシーズンインしたことは早々に見込み違いだったと証明されることとなります。なお楽観していたのはクラブという大きい主体もそうですし、監督、フロント、サポーター全てにいえることとなるでしょう。
  • 余談ですがこの記事↓見たいのでどなたか切り抜き等あれば見せてください。
  • 大﨑に関しては、自陣ゴールに近いところでの振る舞いというかプレー選択がCBらしくないところはあったかと思います。
  • ↓はクリアミスから始まっていますが、まずクリアというか味方に繋ぐような意識でプレーしていたのかもしれません。

  • もう一つ、岩政前監督は4節終了後にインタビューで以下のように語っていましたが、
  • 例えばこの場面では↓、右サイドでジェフの選手(石川?)がボールを持って右SH田中和樹の前方にロングパス、コンサの左WB田中宏武が並走しながらヘディングでクリアしようとしますが失敗し…という場面でしたが、見切れていますが、おそらく宏武は最初から対面の選手に寄りすぎていて、それによってボールの出どころとマークする選手を視界に入れることが難しくなり、そこからの浮き玉のパスに対して最適なポジショニングで対処できなかったのかなと思われます。


  •  別な場面で、このシチュエーションではDFは相手選手を視界に入れ、手と体を使って相手選手をブロックし、ゴール前に走り込みんだりポジショニングを自由にさせないことが必要ですが、そもそもコンサのDFの選手(髙尾、中村…)は全くFWを見ていない。

  • こうした場面を見ると確かに、組織以前に個人戦術に問題がある、という岩政前監督の指摘は(全面的にではないにせよ)正しいところもあったでしょう。

家泉登場、高嶺のDF起用:

  • 4バックの1-4-4-2への移行とともにCBは家泉と西野もしくは高嶺が起用され、その高嶺はSBも兼任しつつ…という状況になり、DFでは右SBの髙尾のみが不動の位置付けでした。
  • 家泉はサイズとパワーはJ2ではおそらく最強格なのですが、CBとしてゴール前を守るというよりは前に出て対面のFWを潰そうとする意識が強く感じられ、そこで対処できればいいとしても、基本的にはいかにゴール前を守るか?という部分より重要になってくる。
  • サイズがあってジャンプもできる選手をCBに起用すれば失点が減るか?というと、家泉が入ってクロスボールや放り込みでやられることが減るという、そう簡単な図式でもなかったと思います。
  • またJ2に一定数、ビルドアップでパスを繋ぐというよりは前に蹴って前進してくるチームがある環境で、CBに高嶺だと家泉を避けてそこを狙ってくるのは当然ですし、また家泉も含めてゴール前を守る能力に課題がある中で、西野を中盤、高嶺をCBといった起用法は無謀だった印象があります。この時期は青木の中盤センター起用もあり、中盤にパワーのある選手が欲しいということと、左利きのCBが欲しいといった思惑があったと思われますが。

4番手から不動のリーダーへ:

  • ↑のコメントでもありますが、浦上は家泉のようなサイズやパワーがない分、粘り強さで対応するような選手で、簡単に背後を取られたりはしない反面、相手FWへの対応は距離をとってのディレイが多い。
  • 慎重である反面、ボールホルダーと距離をとった判断が裏目になることもありましたが、
  • 一番気になったのは、毎回ディレイして時間を稼いでMFがプレスバックで戻ってきて数的優位を作って…という対応だと、それまでのコンサのハイプレス重視とはアンマッチ気味でもある。
  • 撤退して守る時の約束事というか共通理解が浦上加入とこうしたコミュニケーションでかなり改善されたのは事実であり、またハイプレスだけでなく撤退での対応も重ん日しておくことは重要ですけども、選手特定的にあまり前で守れない選手がCB中央、というのはチームの方向性を大きく左右するものですので、本来は要検討かもしれません。

結局は枚数と意識の話なのか…:

  • あとは、4バック採用期は基本的な話として、DF周辺での枚数不足に陥ることが極めて多く、
  • 一つは↓のように(同じ動画を2回目で恐縮ですが)、4バックのコンサに対し、ウイングが幅を取りコンサのSBをサイドに引っ張ってくるという極めてオーソドックスなやり方をとってきた時に、コンサはSBとCBの間、つまりポケットをどう管理するかが決まっておらず選手の頑張り次第な印象でした。
  • この時は左CBの宮が先に動いたことで最後にゴール前でDFの枚数不足になってしまいましたが、近年のフットボールの感覚だと中盤センター(荒野と西野)がポケットを管理できないと中央を守り切ることは難しくなります。
  • 西野はこの時は先に動いてインターセプトに失敗してしまいましたが、全体としては中盤起用の際の西野はよく走ってポケットにも気を配っていた印象があります(あくまで印象論ですが)。
  • (エビデンスなくあくまで印象論ですが)西野の他、高嶺や馬場もポケットに対する問題意識はあったとして、荒野、大﨑あたりはこのサイドの深いところまではケアできていなかったかもしれません。

  • 彼らがケアできていたかどうかは検証が難しいとして、確実に言えるのは自陣のポケットをケアするには走力のあるMFの選手が絶対に必要ですが、高嶺、木戸、馬場…はいいとして、宮澤、大﨑、荒野、深井だと年齢的にもこうしたトレンドからは乖離していますし、青木も同様でしょう。若手ですが田中克幸も中盤センターならこの点はもう少し頑張りが必要に思えます。


  • そしてサイドでの対応において、サイドハーフの選手のプレスバックの問題を指摘しましたが、必然とコンサのSBは相手のサイドアタッカーとの1v1に晒される機会が多くなります。
  • コンサのSBの対応に関してこれも印象論になりますが、右をほぼ1人でになった髙尾は中央を切ってサイドに誘導しての対応は毎回徹底している印象で、髙尾の対応からからカットインで侵入されて…という場面はそう多くはなかったと思います(34節vs水戸の、斎藤のゴールは髙尾の対応ではないとして)。

  • 左はパクミンギュの1v1がもうすこし粘り強い対応だったら…と感じます。
  • 特に右ワイドでプレーする左利きの選手に対し、簡単に中央方向に運ばれ距離を詰められないままクロスボールを供給される場面が少なくなく、正直なところ1v1に強いとはJ2でもあまり感じられませんでした(足は速いはずですが)

3.6 セットプレー(主に相手コーナーキックの対応):

  • 最後にセットプレーについて。
  • コンサはこのシーズン、セットプレーは綿引コーチの担当で、コーナーキックはゾーン、というかゴール前に特定のマーク対象を持たない選手を4-6人くらいを並べ、残りの選手が相手のターゲットとなる選手をマンツーマンで守るやり方に変えてきました。ちなみにゾーンという意味はセットプレーと流れの中のプレーで異なりますのでご留意ください。

  • 私が感じるのは、↓のゴールなどを見ても、そもそも日本的なスカッド(大きい選手と小さい選手が混在しており、またシャドーのように小さい選手が適すと考えられるポジションが用意されている)だと、ゴール前にマーク対象を持たない選手を4人以上並べるようなCKの守り方は向かないように思えます

  • モダンフットボールでは確かにメッシのような選手はいるにしても、全体としては選手の大型化が進んでいます。
  • CKをゾーン主体で守る(誤認や誤用を広めたくないのでゾーンと言いたくないですが説明が面倒なのでゾーンと書きます)ことのメリットは、「大きいけど相手選手をマークするのがあまり上手くない選手に来たボールを跳ね返すという役割を与えやすいこと」にありますが、これはイングランドやドイツのように平均身長が高い地域の選手が多いチームだったり、そういうフィジカルやサイズに恵まれた選手を集められるチームに向く話かなと感じます。

  • ↑の失点シーン(vs鳥栖)では、コンサのフィールドプレイヤーはDFが髙尾、家泉、高嶺、田中宏武、MFが近藤、西野、青木、スパチョーク、FWにバカヨコ、田中克幸、ですが、大きい選手からゾーンというか跳ね返す役割になるので、この中だと家泉、バカヨコ、西野、髙尾、高嶺がそれに該当し、以降の近藤、宏武、青木、克幸、スパチョーク…が鳥栖のターゲットとなる選手を守っている。

  • ですので青木(174cm 72kg)vs長澤(186cm 83kg)というようなマッチアップになってしまい、いくらゴール前に人を並べていても先に触られて守ることが難しくなります。これがマンツーマンベースなら、長澤のような選手に家泉か西野(か、バカヨコ)を当てることができるので、コンサのスカッドだとその方が向いていると感じます。
  • あとはGKが前に出て触れる選手である場合も、あまり最初からゴール前に人を置かない方が良いのではないでしょうか。

3.7 最後に

  • どこに書くかスペースがないので最後に書きますが、岩政前監督については、コンサ史上最も若手選手を登用した監督の1人だったと言えます。
  • 2021年にプロ契約して4シーズンコンサではほぼ出場機会がなかった西野の能力を見抜きチャンスを与えたほか、大卒2年目の田中克幸、1年目の木戸、高卒2年目の原といった選手にも複数チャンスを与えてきましたし、FWの中島や出間にもフラットな競争環境を与えてきました。
  • それらの選手の中で西野のみがスタメンに定着したというのは、若手選手を使って育てることの難しさでもありますし、使わなければ使え、と言われ、使って結果が出ないと叩かれるという構図が常にある中で、こうしたプロセスや姿勢はクラブが期待するもの(期待だけ投げかけていたとも言えるが)と一貫していたといえます。
======

次回は選手に対する個別の感想を書きます。
柴田監督戦術編は大変なので書かないつもりでしたが、監督交代があるなら何らか書き残しておいたほうが良さそうなので検討中とさせてください。

0 件のコメント:

コメントを投稿