2025年12月1日月曜日

北海道コンサドーレ札幌の2025シーズン(1) 〜問われる「Full Commit」の中身〜


1.試合を見返そう

  • 何回かに分けてこのシーズンを振り返ります。まず初めにシーズンの試合結果から振り返り、その後で背景や経過となるトピックを見ていきます。サムネが欲しいのでカメラロールから適当な画像を貼っておきます。

1.1 序盤戦は個人戦術博覧会(2-3月):

2/16 1節 vs大分トリニータ(A)△0-2

  • 皆で期待を煽り気味にシーズンインしましたが、開幕戦から「このチームにできないこと」が1試合ごとに顕になるような厳しい滑り出しとなりました。
  • 試合後、岩政監督の「J2らしいサッカーにやられた」とする発言が飛び出します。確かに大分はJ2らしいチームではありましたが、まずはコンサが同数関係を創られるとDFから前にボールを運ぶ部分に難があることがバラされます。前線では積極的にポジションチェンジを行い「オリジナルなサッカー」の片鱗を見せつけましたが、そこまでボールを届けるに至りませんでした。


2/23 2節 vsロアッソ熊本(A)⚫︎0-3

  • 熊本も大分同様に同数で対応してきました。前線に中島、長谷川、田中克幸を起用したコンサも高めの位置からマンツーマン気味のpressingを仕掛けたものの見事に空転し、pressingも未完成なことが新たに暴露されてしまいました。

3/2 3節 vsレノファ山口(A)⚫︎0-2

  • 山口は1-4-4-2の陣形からミドルゾーンでのプレッシングが得意なチーム。相手が2トップということでコンサは3バックが組み立てに貢献したいところでしたが、コンサのDFはイージーにWBにボールを渡すだけで殆ど仕事をせず、近藤の縦突破やポケットを取る攻撃は不発に終わります。

3/9 4節 vsジェフユナイテッド千葉(H)⚫︎1-3

  • ホーム開幕戦でコンサは前線にスパチョークと出間を起用。(かつての四方田監督のような)圧縮がされていない1-5-2-3の布陣で守りますが、ジェフはコンサの陣形にできるスペースをうまく突いて2ゴールで先行します。
  • 一方で人についてくる傾向があり、かつバカヨコの高さに対抗できていないジェフ相手だと1〜3節よりも相手ゴール前でプレーすることができ、監督のいうところの「ポケットを取る攻撃」のイメージがようやく見え始めた試合だったと思います。

3/15 5節 vsブラウブリッツ秋田(A)⚪︎3-1

  • 山口に近い、1-4-4-2でミドルゾーンから圧縮して守る秋田に対しコンサも4バックの1-4-4-2を選択。左SH青木のカットインから見事なミドルシュートとアシストで2点を先行し逃げ切ります。
  • ただしシステム変更によって相手を崩したというよりは、圧縮してくる秋田相手に早めのサイドチェンジを決め打ちしたことがポイントでした。システム変更の影響は、前後左右があまり間伸びしない陣形を作っている時に、セカンドボール争奪戦で後手に回らなかったのはあったかと思いますが。

3/23 6節 vs愛媛FC(A)⚪︎2-1

  • 愛媛は1-5-2-3の5バックでサイドを封鎖する発想でした。序盤にクリアミスから失点するも、バカヨコの初ゴールは近藤、馬場、髙尾が関与して右サイドで「ポケットを取る攻撃」が炸裂して5バックのチームを崩したという点では好材料。
  • その後は低調な試合運びでしたがゴニの見事なボレーで貴重な勝ち点3を拾います。

3/26 ルヴァンカップ vs福島ユナイテッド(A)⚫︎3-6

  • 風間八宏監督の川崎を彷彿とさせる福島のフットボール(ただしターンオーバーしていた)に対し、佐藤陽成、中島、出間の若き3トップを前線に置いたコンサのハイプレスが決まって2点を先行します。
  • しかしトランジションの隙を突かれた福島のカウンターと、前線のプレッシャーが機能しなくなってからは福島の見事な中央突破が炸裂して失点を重ね、3-6という地獄のスコアで「タイトルを意識〜」と無邪気に語っていたカップ戦から退場します。

3/29 7節 vsヴァンフォーレ甲府(H)⚫︎0-1

  • 悪夢の福島から中2日でのリーグ戦。3節のvs山口とは逆に、コンサが1-4-4-2で相手が1-3-4-2-1というシステム。序盤にセットプレーから先制され、以後は特に見せ場もなくホームであっけなく敗れます。
  • 山口相手に全くそのミスマッチを活かせなかったコンサとは対照的に、甲府はコンサのミスマッチを教科書通りに使うようなプレーをしていただけに思えますがコンサのpressingはまたも空転し続けます。
  • 後半はボールを運べないDF(特に家泉)に変わって、本来左SHまたはWBのはずの青木がポイントガードみたいな感じで最終ライン中央付近に陣取っていたのが印象的でした。

【2〜3月のまとめ】

  • このように2〜3月の試合は戦術的、対極的にはそれぞれ相手チームの特徴や対策が異なりコンサはそれぞれ別の問題点をバラされることとなります。
  • その中で一定の傾向や再現性みたいなものがあったとするなら、
  1. クロスボールからのパターンでリーグ戦開幕から6試合連続で失点している(厳密には違いますが開幕戦のロングスローも含む):序盤は大﨑、負傷離脱後は家泉や中村桐耶が中央を任されますが、全般にターゲットを捕まえきれておらずボールウォッチャーになってフリーで合わせられている。またDF以外にも、中盤センターの選手がDFの前のスペースを埋めたりそこに走ってくる選手を捕まえきれていないことも挙げられます。
  2. ハイプレスはことごとく空転:「圧倒して勝つ」と掲げ、相手にボールを握らせないとする指向性はわかりますが、コンサの前線守備はかなりマンツーマンというか1v1の関係性を作る傾向が強く、例えば相手がGKを使って+1の人数関係になったり、システムの噛み合わせが悪い場合や相手がポジションチェンジを行って1v1の関係性を作りづらくなると、それだけで浮いた状態になる相手選手が登場して、そこから簡単に剥がされてしまう現象が多発しました。
  3. 「ポケットを取る」は形になっていたがリスキーな攻撃参加と裏表:監督が掲げる「ポケットを取る攻撃」は、青木起用の場合にポジショニングが不定形で、かつ左利きの選手がワイドに張らない左サイドよりも、なんだかんだ近藤がワイドに張った方が良いとの共通理解が徐々に生まれてきたように見える右サイド(ただし近藤のポジショニングはずっとワイドというわけではなかった)で、馬場と髙尾が飛び出してくる形は試合を追うごとにコンサの数少ない武器となっていたと思います。しかしサイドのDFと中盤センターの選手が前を狙いすぎると、その背後でボールを失った際にトランジションに備える選手を確保できず簡単にCBが相手の速攻で晒されることになる。特に福島とのカップ戦で顕著な現象でした。
  4. ビルドアップ:3バックにして3-2で行う、3バックを左右にずらして2-1(アンカー)で行う、4バックのまま行う、などいろいろな形を試していましたが、どれもほぼ同じ結果だったということで個人のパフォーマンスの問題もかなり大きいように思えます。といっても、編成上CBは西野の台頭がなければ、家泉を重用せざるをえず、家泉がうまくボールを運べるようになるまで常に同じ問題に悩まされることになります。

1.2 相次ぐDFの離脱もあり…(4〜5月):

4/5 8節 vs徳島ヴォルティス(H)⚪︎1-0

  • 互いに警戒心が強くボールを捨てる展開。後半、岩政監督が参加する乱闘騒ぎもあった中で、終盤に相手に退場者が出たこともあり、家泉の劇的な決勝点で勝点3を得ます。

4/12 9節 vs水戸ホーリーホック(A)⚫︎1-3

  • 強風のケーズスタでの対戦ということでコンサは前半、風上を取りますが、序盤に水戸のドリブラー・山本の突破からあっけなく先制されます。
  • セットプレーから相手GKのミスで追いついたものの、馬場がラフプレーで退場。数的不利の中で風上の前半のうちに一か八かで勝ち越しを狙って前に出ますが、DFのミスもあって逆に失点し敗戦。

4/20 10節 vs藤枝MYFC(H)⚪︎2-1

  • パクミンギュと馬場が離脱し、CBに高嶺、中盤センターに青木と西野を配する布陣を採用。中央を上手く守る藤枝に対し遠藤ヤットロールとなった青木が流れの中で仕事をしたとは言い難いですが、セットプレーからの2得点で逆転し勝ち点3を獲得します。

4/25 11節 vsRB大宮アルディージャ(A)⚫︎0-1

  • 青木、パクミンギュ、馬場、岡田を欠く厳しい状況。3バックの1-3-4-2-1と見せかけ実際は1-4-4-2気味の大宮に対し、用意していたpressingの形がはまらず、逆に家泉のところで爆弾ゲームを強いられ苦戦するも何とか前半をスコアレスで折り返します。
  • 後半マンツーマン気味の対応に変えて15分ほどは攻勢に出ますが、DFの連携ミスから失点し結果的にはマンツーマンが裏目になった形となりました。

4/29 12節 vsV・ファーレン長崎(H)△2-2

  • 互いにこのカテゴリでは「クオリティがある」と評されているチーム同士の対戦。しかし実態は前線の選手にボールが入ってスペースがある状態だと怖いけど、そこまで到達するのに双方難ありという状況のためボールを押し付けられて苦戦しています。
  • よってこの対戦も互いに慎重に前線の選手を警戒し合う様相でしたが、前半に増山のゴールで長崎が先制し、後半から定番となったコンサの選手交代(中盤センターを変える)で強度が下がって最警戒のマテウスのヘッドが炸裂。しかし長崎を崩すには至らずも原のATのゴールでなんとか勝点1を拾う粘りと意地は見せました。

5/3 13節 vsモンテディオ山形(A)⚪︎1-0

  • 10節以降、後半に選手を入れ替えてゲームのテンポを変えるのは「死んだふり作戦」なのだと理解しました。
  • この試合では連休の連戦ということもあってか山形がスローペースで試合に入り作戦の遂行は容易。山形のパフォーマンスの問題はありましたが、前線守備には改善が見られ、後半、近藤が外を切ってDFに寄せたところからショートカウンターでバカヨコのゴールで先制。山形がその後もコンサの対応に解を示せなかったこともあり逃げ切りました。


5/6 14節 vsジュビロ磐田(H)⚫︎2-4

  • ここのところ続けていた死んだふり作戦をせず、予想外にも立ち上がりから前に出てボールを奪おうとするコンサを、磐田はロングフィードに角と倍井の高速アタッカーを走らせることで回避。
  • 髙尾の致命的なミスで開始35秒で失点し、なおも磐田の果敢な前線守備でボールを持てないバックラインが浮き足立つと、25分までに家泉のオウンゴールとミスでたちまち0-3。3バックに変更しての特攻と長時間のパワープレーという懐かしの展開を、5月上旬にして見せつけられます。


5/11 15節 vsいわきFC(A)△1-1

  • いわきもコンサもかなりボールを捨てる展開でしたが、互いの前線では、放り込まれたボールへの解決策を用意していないようで、お互いに蹴って跳ね返して拾って、そのうちバランスが崩れたところで速攻、みたいないかにも下部リーグらしい展開でした。
  • コンサは前半に(敵陣ゴール前では)好調の家泉がセットプレーから先制点を挙げますが、後半バランスが崩れたところでPKを献上しドロー。ジョルディの独走からのシュートミスも響きました。


5/17 16節 vsカターレ富山(H)⚪︎2-1

  • 55分までは富山が①敵陣での1-4-◇-2気味の布陣で広く守るやり方、②自陣でコンパクトに1-4-4-2でスペースを消すやり方、を使い分けながら守り、高嶺のミスから得点して先行します。
  • 後半、スペースが空いてきたところでコンサは中央を使えるようになり中央からワイドへの展開が目立つようになる。富山は5バックでDFのスライドを楽にしつつ、前後分断気味に運用するスタイルに早めに変更しますが、田中克幸の縦パスで中央を割ってバカヨコの目の覚めるようなシュートで追いつくと、ATに青木の素晴らしいフリーキックで勝ち点3を拾います。

5/25 17節 vsサガン鳥栖(A)△1-2

  • 前線守備がうまくいかない理由を岩政監督はバカヨコに求めましたが、その是非はともかく、鳥栖が簡単に右DFに展開するだけでコンサは簡単に外されて自陣侵入を許し、前半で2点を失い、ジョルディのやんちゃすぎる振る舞いで数的不利にも陥ります。
  • しかし後半は鳥栖が数的優位を活かせず、鳥栖のDOGSOを誘って数的同数に持ち込み、1点が遠かったもののやれるだけのことはやった、という形ではありました。

5/31 18節 vsベガルタ仙台(A)⚫︎1-1

  • 豪雨と落雷の宮城スタジアム(Qスタ)での中断前最後の試合。敵陣からの守備はマンツーマン気味に変更し、あまりリスクを冒してこない仙台に戦術というより気持ちで食いつきますが、左SHで先発した原とSB真瀬のデュエルから先制点を献上します。
  • 前線は中島と木戸の2トップとしましたが、後者は守備で奮闘したものの、前者は孤立状態でボールを押し付けられて精彩を欠く出来に終始します。中盤センターに青木と大﨑の併用で後ろが重く、また前線に潰れ役も繋ぎ役も不在または機能停止で、軽量級の前線の選手のクオリティを全く発揮できない前半でした。
  • 後半、(トレーニングで岩政監督の「心を変えさせた」らしい)バカヨコの登場から、彼が別格の起点創出能力を発揮し、ようやく敵陣ラスト30mくらいまでは侵入できると、セットプレーから追いついてなんとか勝ち点1を持ち帰ります。

【4〜5月のまとめ】

◇前線守備は整理したが…
  • 4月以降はシステムが1-4-4-2ベース、メンバーも徐々に固まってきました。開幕当初に毎試合組み合わせを試していた前線はバカヨコが軸で、シャドーのスパチョークか、より下がってプレーする田中克幸、大型FWのゴニ。
  • 戦術的には高い位置からのマンツーマン気味のプレッシングから、1列目はアンカーを消しながらサイドの選手と一緒に相手DFに制限をかけるやり方が定着します。しかし山形には大成功でしたが磐田にはロングボールで崩されて完敗、その後も鳥栖には簡単に回避されるなどこのやり方が山形戦以降、成果があったかというと微妙なところ。

◇編成の問題と負傷者続出と監督の好み
  • 岩政監督は10節の藤枝戦の後に「コンサは主力に4バックの方が合っている選手が多い」と語り、これが誰を指すかはわからないですが、一般にはサイドの選手で、3バック(5バック)だと1人でサイドを担当しますが4バックだと前にウイングまたはSH、後ろにSBと配置して分業できるので、一つは近藤のような選手を前での仕事に専念できるという意味合いが含まれていると推察します。もう一つは中村桐耶についても言及があり、「3バックのCB、4バックのCBは難しいが4バックのSBならアリ」とのこと。これは事実上CBとしては失格だと新監督就任から4ヶ月で言われてしまった格好であり、非常に厳しい事実ではありますが。

◇ボールを運べない家泉の固定と西野の台頭
  • 左利きのDFである岡田とパクミンギュが負傷離脱し、高嶺をDFに回さなくてはならない状況で、中村桐耶の低調なパフォーマンスも相まってDFはかなり選択肢がない状況。本来は家泉も他のDF(西野ら)と競争させたいのでしょうけど、頭数とその質の不足のためほぼスタメン固定となります。
  • 11節の試合後の記事で、西野曰く、岩政監督はbuild-upについて個人指導をしてくれるという話が紹介されました。西野はコンサの選手の中では試合に出るたびに向上しているように思えましたし、家泉とのユニットでは経験が浅いにも関わらず左で起用されていることも、その技術や起用さの証明になるかと思います。

◇その他
  • build-upの際は開幕当初ほどポジションを崩すことはなくなり、監督の理想とする「流動性」から、現実的な落とし所を見つける試行錯誤が行われていました。
  • 10節(vs藤枝、H)の青木の中盤センターでの起用は日本サッカーでよくある、中盤の下り目にボールを引き取って味方に展開する役割の選手を配置するやり方かと感じました。ただ青木も不慣れな役割で、藤枝がうまく対処していたこともあり、これがコンサの大きな問題を解決するに至ったとの認識は抱けません。
  • build-upというのは本来特定の1人や2人に頼るというよりは全員でボールを動かし、ボールと共にチーム全体が前進していくものです。西野の向上や青木の配置転換といったポジティブな材料があっても、ボトルネックの解消にはまだまだ時間がかかるといったところでした。
  • その間、むしろ相手チームの方が練度が向上し、かつコンサに対し明確に対策を講じてくると、開幕から2ヶ月以上経っても相対的にあまり良くなっているように見えないところはあったかと思います。

  • あとはセットプレーや、単純な放り込みからの失点が毎試合のように繰り返されるのは変わらず。GK小次郎は試合のたびに慣れている印象でしたが、セットプレーは10節からCKをゾーン基調の対応に変えるなどするも効果は大きくはありませんでした。

◇サポーターミーティングでの補強宣言
  • 4月末の長崎とのホームゲームの試合後にはサポーターミーティングが行われ、竹林強化部長から「FWとCBを移籍ウインドウが開く前にでも補強したい」とする宣言がありました。
  • 個人的にはFWは頭数は揃っているのと、前線にボールがそもそも届かないことの方が問題だと思っているので、2人分の予算があるなら両方ともDFにするか、もしくはそのDFの選手のグレードをもっと上げてもいいのでは?と思ったところでしたが…(→DFは名古屋から竹林コネクション?で宮を獲得)。

1.3 「足りない部分の7割くらいは埋まった」 からの…(6-7月):

6/15 19節 vsFC今治(H)△2-2

  • CWC絡みの特殊な移籍ウインドウによって待望の左利きCB(宮)を手に入れましたが、相方にこちらも新戦力の浦上を起用という監督の覚悟が見えたスタメンでした。しかしチームとしての振る舞いや可能なプレーの範囲は、この2人によって大きく変容したというほどではなかったと思います。
  • また今治のシステム1-3-1-4-2に対しコンサは1-4-2-4のような前に人が多めの陣形で終始戦っていましたが、案の定というか中盤センターの脇またはDFのチャネルの防備は手薄であり、トレードオフとしての前残りのアタッカーがそこまで仕事をしたとも言い難く。高嶺の魂の2ゴールで逆転したものの、田中克幸のボールロストから痛恨の同点弾を被弾し勝ち点2を失ってしまいました。

6/18 天皇杯 vs大分トリニータ(H)△2-2

  • ボールを捨て気味の大分(リーグ戦で見ないメンバー)に対し、30分までに木戸と児玉のスーパープレーが飛び出し2点を先行するも、全体としてはミドルブロックの大分に対しボールを持たされてもどうしたら良いかわからない…のはメンバーが変わっても、後半メンバーをアップグレードしても不変で、大﨑が細かくポジショニングを指示しますがそもそもその時点で(最初から同じ絵が描かれておらず)限界を感じました。
※天皇杯はホーム/アウェイがないが開催地により実質ホームとした


6/21 20節 vs藤枝MYFC(A)⚪︎3-1

  • 高嶺、近藤、菅野を欠く中でGKに高木、FWに長谷川、右MFに白井を起用。
  • 素直にボールを保持してサッカーをしてくれる藤枝に対し、トップは長谷川と木戸が45分ずつリレーしつつ相手DFの監視とプレスバック。白井と青木も1列目を守るだけでなく剥がされると自陣までプレスバック…と前線の守備タスクを大幅に増やし、相手のミスを誘って青木のスーパーゴールで先制。
  • 後半もバカヨコのポストプレーからショートカウンターで白井が追加点を挙げ、ボールは捨て気味でしたがハードワークしつつ選手特性がこのシーズン一番と言って良いほど噛み合った攻撃を見せました。


6/28 21節 vsロアッソ熊本(H)⚪︎3-2

  • 髙尾が欠場で右SBに高嶺。
  • 開始早々に熊本の高校生FW神代のスーパーゴールで先行を許し終始追いかける展開になります。熊本が仕掛ける高い位置からのマンツーマンベースのプレッシングには20分くらいで順応していたと思いますが、その後のゴール前でのクオリティ不足が課題として浮き彫りになります。
  • それでもこのシーズンあまり決まらないセットプレーから高嶺の2ゴールと、マリオセルジオのスーパーなボレーシュートで3ゴールを奪い、2万人超えの大観衆の前で下位に沈む相手をなんとか叩いて連勝を飾りました。


7/5 22節 vsレノファ山口(H)⚪︎1-0

  • 非保持1-3-4-1-2気味の布陣でマンツーマンではめていくことを狙っていたっぽい中山元気監督の山口に対し、コンサは原が左WGで幅を取り、右SB高嶺や田中克幸が山口のブロック内でプレーしプレッシングの突破に成功。ゴール前は枚数不足でしたが、高嶺の強引なシュートで1点をもぎ取ります。
  • 山口もなかなか整理されており、ひたすらコンサのポケットを取り続けますが、西野や木戸の頑張りもあり逃げ切り。


7/12 23節 vsジュビロ磐田(A)⚫︎1-5

  • 直近3試合でプレッシングの開始位置を下げ、前線に長谷川/木戸、白井といったハードワーカーを起用して3連勝を飾ったコンサでしたが、近藤が回復しスタメンに戻したことで開幕当初からのスカスカなディフェンスに逆戻り。
  • 序盤から噛み合わせも味方との連動もあまり意識しないまま磐田のDFにアタックし剥がされDFが剥き出しになったところに、磐田のサイドアタックで早々に2点を失い、決定的なミスや大﨑へのレッドカードもあり失点を重ね、思い描いた大型連勝は遠州の風に乗って消えてゆきました。

【6〜7月のまとめ】

◇CBとFWを補強、馬場、ゴニ、中島を放出
  • 6月からCBの宮と浦上、FWのマリオセルジオが合流します。
  • コンサの強化担当の場合はもう自分で考えるよりも、どんな選手が欲しいか監督に聞いた方がいいのでは?と思っていたところ、浦上は監督が名前を出したと言いますが、大宮で前年J3ベストイレブンだったとはいえ予想以上に加入早々から重用されます。
  • 少なくとも家泉がスタメン固定で、トレーニングの際はスタメン/サブと2セット組んでゲーム形式を行うことすら困難だったDF陣に、もしくはDFだけでなくチーム全体に新しい風を吹かせてくれたことは事実でしょう。
  • OUTに関しては中島は戦術的にフィットしていない感じがすることもあり余剰戦力、ゴニはピッチに立てば仕事をしますがそもそもピッチに健康な状態で立てることが少なく、維持コスト面も考慮して、ということでしょう。
  • 馬場は開幕当初は不動のスタメンでしたが、負傷もあり10節以降は不出場。リカルドロドリゲス新監督の下で首位争いを繰り広げる柏でスタメンで出れるかは懐疑的でしたが、2年半在籍した元U22日本代表選手と考えると売り時でもあったかなと思います。
  • 一方で中盤センターが元々、高嶺と馬場以外はベテランの宮澤、大﨑、深井、荒野と、本来は1列前の木戸や田中克幸しかおらず、人数の割に脆弱なラインナップで、そこから馬場が抜けて補充がないのであれば、後半戦で「大型連勝」には荒野や木戸など既存の選手の奮起が不可欠だなと思っていましたが…

◇ハードワーカー3人衆の起用でようやく前線守備のずれが解消も、振り出しに戻る
  • 厳密には5月末のvs仙台からですが、相手陣内ペナルティエリア付近からプレッシングを開始することは徐々に取り下げ、敵陣センターサークルの頂上付近、つまりミドルブロックから1stディフェンスを行うスタイルにシフトさせます。
  • 同時に近藤の負傷もあって右SHに白井。2トップの一角には長谷川もしくは木戸を起用し、これらの選手が慎重にボールホルダーに対して寄せた上で、1列目を突破された後はプレスバックして2列目以降の選手と2人または3人で相手のパスの受け手に対応するとしたことで、それまで簡単にDFが晒されてボコボコにされていた問題はかなり解消されることとなりました。
  • しかし中断前最後の23節(vs磐田)、負傷から近藤が復帰したこのゲームでは、ハードワーカー3人衆起用前の緩い、というか基準がはっきりしない戦線守備に戻ってしまい、上昇機運を完全に打ち砕かれる大敗を喫します。

1.4 8年ぶりの内政型監督(8-9月):

8/2 24節 vsサガン鳥栖(H)⚪︎1-0

    • 中断期間に函館〜洞爺湖〜白老を廻ったという岩政監督は開幕当初の3バックシステムに戻しましたが、髙尾を右WBとする新システムは岩政監督のチームにしてはかなり慎重なもので、西野がフリーマン化するものの、主に5バックでWBが鳥栖のWBに蓋をすることを念頭に置いたような振る舞いをします。
    • 決定打がないコンサに対し、次第に鳥栖が慣れていき、スリヴカを起点にチャンスを作る。後半は鳥栖が先にシステム変更し、右サイドからポケットを取る攻撃を立て続けに繰り出しますが、コンサが高木のセーブもあって耐え、わずかなチャンスから鳥栖GK泉森のミスを誘って勝ち点3を得ます。

    8/9 25節 vsV・ファーレン長崎(A)⚫︎1-2

      • 特別な日に開催されたアウェイゲーム。現在のJ2の中で最もキャスティング主義な長崎に対し、マテウスジェズスに攻守両面で西野をぶつける采配を見せます。ポストプレーは許すもののゴール前は死守し、高嶺の見事なミドルシュートで先制。
      • しかし後半、長崎の笠柳投入と、コンサの高嶺負傷交代からは、コンサが完全にボールを捨てて防戦一方となる展開。酷暑の中で長崎の前線のモンスター達を守りきれず、岩政監督体制が終焉します。

      8/16 26節 vsブラウブリッツ秋田(H)⚫︎0-2

      • 8/11月に柴田慎吾監督の就任が発表されてから準備期間4日。「サッカーはスペースの奪い合いである」など極めて真っ当かつ普通のコメントをしていた新監督は、ほぼ前任と変わらないメンバーとシステムで初陣に臨みます。
      • 新たな船出は…前途多難を感じさせるものでした。スペースの奪い合いというか、より走りより戦い続けていた秋田が後半に疲れが見えたところでコンサが秋田陣内になだれ込み猛攻を仕掛けますが、前半秋田が元気なうちは殆ど敵陣ペナルティエリア付近に前進できないままでした。

      8/23 27節 vsヴァンフォーレ甲府(A)⚪︎2-0

      • マリオ セルジオが初スタメン、シャドーに長谷川、WBに白井とパク ミンギュを起用とスタメンを4人入れ替えて(多分めちゃくちゃ暑い)真夏の小瀬での18:30着っっ区オフのゲームに臨みます。
      • 甲府は極端に自陣に引いてコンサにボールを渡しますがWB背後の管理が甘く、コンサはロングフィードで簡単に甲府陣内に侵入。相手DFのミスと緩めの守備もあって早々に2点を先行します。その後は1点を失ったものの、最後までギアが上がりきらない甲府相手に選手交代も使ってクローズし逃げ切り。

      8/30 28節 vsRB大宮アルディージャ(H)⚪︎1-0

        • レッドブルスタイルにプレーモデルを変えていくよう上から通達があったか?大宮は春先とは異なり試合開始から走力を全面に押し出したスタイルでコンサゴールに迫ります。
        • 20分ほど大宮の猛攻を耐えると一気に相手はペースダウンしコンサがボールを持てるようになり、ラッキーなFK獲得を起点に高嶺のスーパーゴールで得点。後半はペースが戻らない大宮を難なく抑えて逃げ切りました。

        9/13 29節 vsいわきFC(H)⚫︎1-5

        • プレーを頻繁に切りながらセットプレーを利用して敵陣に入ってくるいわきに対し、20分を耐えてから徐々にカウンターを浴びせつつ白井の見事なゴールで先制。
        • しかし30分過ぎに愚かなタックルで荒野が退場、CKから同点に追いつかれると、後半にはマリオも退場処分を受け為す術なく失点を重ねます。

         

        9/20 30節 vs徳島ヴォルティス(A)⚪︎2-1

        • 荒野、マリオ、宮澤、バカヨコを欠く中でトップに白井、右WBに久々の近藤、中盤に木戸を起用。
        • ミドルブロックで構える徳島の1列目を西野の列移動などで攻略し、CB山田と青木を欠く徳島のビルドアップにはマンツーマン気味に対処します。後半に白井の見事なゴールと自陣からの崩しで2点を奪い、ゴール前の迫力があまりない徳島を抑えて逃げ切り。



        9/27 31節 vsベガルタ仙台(H)⚫︎0-3
        • これまでのコンサの戦いぶりを見てハイプレスを選択したと仙台・森山監督。
        • 西野の不在(代役に家泉)もありコンサはGK高木のフィードを軸に組み立てようとしますが、仙台のプレッシングにはまりほぼ敵陣に入れず。
        • 前線守備はミスマッチを覚悟でマンツーマン気味に対応しますが、コンサでこの形(相手1-4-2-2-2、コンサ1-3-4-2-1)でうまくプレッシングがハマったことは直近10年でほぼ記憶にありません。この試合もはまらず空転したまま時間が経過し、セットプレーで仙台が2点を先行。
        • 後半に選手交代で反撃を狙いますが特に変化を起こせず枠内シュートゼロで敗戦。前線に白井起用を継続しポストプレイヤーを排した選択が裏目に出ました。


        【8〜9月のまとめ】

        ◇学級崩壊状態を経て内政型監督に交代
        • 8月の上位対決2試合を消化したのちに岩政監督→柴田監督へと交代。柴田監督での6試合は3勝3敗という結果になりました。監督交代の際の石水社長のコメントは一部で物議を醸しましたが、どうやら岩政監督は末期はチーム内での求心力を失いつつあったと見てよいでしょう。
        • クラブ内部では「サッカーオタク」「戦術家」だとする評判の新監督。一方でこの2ヶ月弱を見たところでは、戦術やプレーのスタイル、アイディアとしてなんらか新しいものをまず打ち出していくというよりは、学級崩壊気味だったチームにまずフットボール以前のソーシャル的な規律を取り戻すことをまず目指したように見えます。
        • 前監督体制である種、特権的な使われ方をしていて右サイドの背後に大きな穴が空いていた問題の一因である近藤の処遇は典型的で、時にストレートに「そのプレーの水準では不満足」だと伝え、白井との併用で競争させ奮起を促したやり方は、良い意味で新人監督らしからぬ胆力のようなものを感じさせました。

        ◇学級崩壊状態を経て内政型監督に交代
        • 一方で戦術面では、プレッシング、ビルドアップ、自陣でのブロック守備、敵陣ゴール前での崩し、トランジション、セットプレー…において明確に何が改善されたかというとなんとも言い難いところ。
        • プレッシングはシンプルなマンツーマン。ボール保持に関してはクリアやロングフィードでイーブンなボールにすることをあまり否定しないのが新監督のスタイルのようで、甲府、大宮、徳島相手に3勝を挙げましたが戦術的にすごく狙いがハマったとかうまくプレーできたというよりは、相手の対応のまずさもあってコンサに優位に運んだということと、ゴールはほぼ全てが相手のミスか、コンサ側のスーパープレー(主に高嶺が関与)によるものでした。

        • 戦術家といってもいろいろな人がいます。まさに四方田元監督も戦術家とか戦術に明るい、理論派、指導力に定評…などと言われていましたが(単にこの界隈の語彙力が乏しすぎるだけかもしれませんが)、
        • 少なくともこの9月末までの印象では、新たに何かを生み出すというよりは、既存のリソースを整理することが得意そうな監督に見えました。


        1.5 ひっそりとフェードアウト(10-11月):

        10/3 32節 vsモンテディオ山形(H)⚫︎1-2

        • 山形は前線のトップ下と3トップが前残り気味でDFがあまり押し上げてこないので序盤からオープン気味な構図に。
        • コンサは前節の反省を活かしミラー気味の1-4-4-2の布陣でマンツーマンベースのpressingにトライしますが、中央で山形のポジションチェンジに対しどこまでマンツーマンで捕まえればよいかがはっきりしない。マンツーマンで相手選手への対応を明確にさせたはずが、自陣に撤退するとマーキングかスペース管理か迷ってしまい、フリーの選手から山形のエース・ディサロへのラストパスを阻害できませんでした。

        10/19 33節 vsカターレ富山(A)⚪︎2-0

        • 互いにシステム1-3-4-2-1でボール保持はアシンメトリー配置同士でしたが、富山の方が相手の1列目を超えて前線にボールを届ける部分は優れていました。
        • しかしコンサには高嶺がいる。ロングボールで押し下げたDFのMFの間のスペースに突進し高難度なミドルシュートを叩き込むと、後半もショートカウンターから左足一閃。高さのない富山の前線に対し浦上中心にスペースを消して守るいつもの対応で逃げ切ります。


        10/26 34節 vs水戸ホーリーホック(H)⚫︎0-1
        • システム1-4-4-2で3つの高さのブロックを使い分ける水戸。コンサはDF中央に浦上ではなく宮。
        • 前線のキープレイヤーを欠くこともあり撤退後はなかなか陣地回復できない様子の水戸でしたが、コンサにとって最も警戒すべき選手である斎藤が強烈なミドルシュートを叩き込んで先制。
        • ボールを捨ててくる水戸に対し、コンサは水戸のブロックがどのような状態の時にどのような構図でアタックするのかが見えず逃げ切りを許します。

        11/2 35節 vsジェフユナイテッド千葉(A)⚫︎2-5
        • コンサはトップに荒野を配置し、システム1-4-4-2で真っ向勝負というか前線の速さが持ち味のジェフに対しこちらもショートカウンターを意識だったでしょうか。
        • しかしシステム(人数)を合わせ、荒野を起用しながらもジェフのSBや中盤真ん中の選手ををはめることがうまくいかず。前半は必死に走って1-1で折り返しますが後半早々に足が止まり、クロスボールに対する課題も噴出し失点を重ね大敗で終戦します。

        11/9 36節 vs大分トリニータ(H)⚪︎3-1
        • 序盤から前に出てこない大分が自陣ゴール前で緩い対応を見せたところに荒野が飛び出して難なく先制。久々先発の家泉がFWグレイソンをシャットアウトし、高嶺の個の力が炸裂して2ゴールを加え消化試合をイージーに制します。

        11/23 37節 vsFC今治(A)△1-1
        • コンサは高嶺が出場停止。システム1-3-1-4-2の今治のビルドアップにマンツーマンベースで対抗しますが、今治はコンサが食いついて生じたスペースを使う術を何通りか用意しており次第にコンサのプレッシングは空転。一方で両チームともあまりブロックを作って守る様子がないことから徐々にオープン気味な展開になります。
        • 後半に今治のドリブラー・横山の突破からスコアが動き、今治には追加点のチャンスがありましたが菅野のビッグセーブもありコンサが耐えると、ボックス内でラッキーなPK獲得からマリオが決めてドローに持ち込みました。

         

        11/30 38節 vs愛媛FC(H)⚪︎3-1
        • 人を捕まえようとしてくるけどそこまで圧はなく、スペースが空きやすい愛媛の前線守備を難なく剥がし、空中戦の弱さを突いて2ゴール。最下位が確定していた相手ながらも快勝で深井を送り出すことに成功します。


        【10〜11月のまとめ】

        ◇徐々にボールを捨てるモードに収束し評価軸が変わる
        • 柴田監督の就任から3ヶ月ほどが経ち、徐々に監督の考え方や、現状下での手腕が見えてくることとなりました。
        • まず、9月ラストの試合で仙台に完敗して以降は、それまで以上に1列目から、高い位置からのプレッシングの意識を強くします。この際、相手が4バックならこちらも2トップ気味にする、相手が2トップならこちらも4バックにするなど枚数を合わせる方針とします。
        • また前線よりもむしろ中盤センターの方が手薄な状況でありながら、荒野はFWやシャドーで起用されるようになりましたが、これも前線守備の問題意識によるものでしょう。岩政前監督、柴田監督、ひいてはミシャ前々監督もそうですがFWのスタメンクラスに前線守備において中央のパスコースを切るだけでなく、ボールを持っている相手DFに対して何度もアプローチできるような活動量がある選手の需要が一貫しています。このニーズに対し全く編成面で応えられていないことが改めて如実になりました。

        • 加えて36節からは浦上に変え家泉が先発復帰。ボールと味方を動かす(コントロールする)能力に長ける前者と、とにかく跳ね返すのが得意な後者。この選手起用はかなり象徴的なものでした。
        • コンサがボールを持った時に早めに前に放り込み、前に枚数をかけ後ろに最少人数しか残さないような戦い方をしつつ、加えて高い位置からプレッシングを仕掛けるようなやり方を取ると、まずボールが落ち着かず高速で前後に往来する展開になります。

        • 浦上加入後、コンサは自陣では浦上がディレイして時間を稼ぎ、高嶺がプレスバックして相手FWを挟む形でボールを奪おうとする方針に落ち着きました。
        • しかし35節のvsジェフが典型かもしれませんが、ボールが高速で往来する高速化展開だとディレイ+プレスバックという対応が難しくなり、DFは高嶺のサポートを待つのではなく1人で対処することを求められます。それならば家泉を真ん中に置いた方が跳ね返してくれるので安定する。ただしボールを保持し試合をコントロールするという方向でのトライはかなり割り切ったこととなります(大分のような露骨に引いてくる相手ならともかく、今治くらいのクオリティがあるチーム相手にはボールを捨てざるを得ない)。

        ◇別格のキャプテンと、前線の躍動感は最後まで潜めたまま
        • コンサが2ヶ月、8試合で挙げた12得点のうち4得点が高嶺。最終戦の愛媛相手に3ゴールで得点者が賑やかになりましたが、それまでは高嶺のクオリティに頼るところが終盤戦になってより顕著になりました。
        • また4得点いずれも高嶺の圧倒的な個人能力がベースになる得点で、後半戦におけるキャプテンの異次元の活躍がなければさらに惨めなシーズンになっていたでしょう。
        • 他の得点者はvs水戸での宮澤のミドルシュート、vs大分での荒野、vsジェフでのスパチョークと青木、vs今治でのマリオのPK、最終節の近藤、家泉、マリオの得点。マリオは27節のvs甲府以来沈黙が続き、スパチョークは4節のvsジェフ以来でこのシーズン2点目、つまりジェフ以外から得点していないこととなります。

        • 岩政前監督に選手がノーを突きつけての柴田監督就任でしたが、柴田監督下でも前線の選手が躍動する姿を見ることは極めて稀でした。
        • FWはバカヨコ、マリオ、共にタイプは幾分か違いますが、ボックス内でラストパスを受けられないとそもそもシュートチャンスになりません。
        • そのFW陣にラストパスを出すのがワイドなのか中央なのかになりますが、コンサが攻撃しているらしい振る舞いができるのは「なんらか近藤にボールが渡って近藤の仕掛けが成功する」くらいのシチュエーションしかなく、かつ近藤はラストパス(主にクロスボール)の精度に課題があるのでFWが沈黙するのは必然でしょう。
        • そしてFWの1列または0.5列下でプレーするシャドーもFW同様、後方からボールが届けられない状況が続き、長谷川もスパチョークも主な仕事はボールを持っていない時に頑張って相手を追いかけ回したりプレスバックでした。

        • 白井やハードワーカーに転身した長谷川はともかく、スパチョークも青木も足元でボールを受けた時に特徴を発揮する選手であり、↑に書いたようなボールが高速で往来し、家泉のドカーンと跳ね返す能力をアテにするスタイルではこれらの選手の特徴が活きるとは言いがたく、得点に絡めず沈黙するのは必然でした。
        • だからこその荒野の前線起用となったのでしょうけど、スカッドと戦術のミスマッチは深刻でした。結局は岩政監督がノーで柴田監督はとりあえずステイ、であることにフットボール的な理由はかなり乏しく、「チームの空気感」にだけは敏感なフロントであるとの印象を抱きました。
        • と書いていたところ、柴田監督の退任報道があったわけですが…(12/1時点)。

        ◇余談
        • 最後にJ2のシーズンを通じた簡単な感想ですが、J1に比べるとJ2の方が良くも悪くも「パターン」でプレーするチームが多いと感じます。
        • 肯定的に捉えれば、チームとしてのプランやアクションが明確になっているので、それを徹底すれば試合の入りをコントロールしたり組み立ては容易になる。そしてシーズンを通してみた時にチーム作りや仕上がりが早くなると思います。
        • 一方でパターンで勝負しているチームは、それが読めてくる後半になると対策を講じられて失速する。ですのでリーグの後半は長崎に代表されるように、もともと地力のあるチームというか、パターン以外でプレーできるチームが盛り返してくる印象でした。

        • その「パターン以外」というのが、岩政前監督の描いていたのは複数の選手が連動して仕組みを作るということですが、コンサではそれは絵に描いた餅に終わります。
        • 後半戦、どのチームも長崎を止められなかったのは、マテウスジェズスに代表される個人能力ベースのスタイルにしたことで、特定のパターンを読みづらい、対策しづらいチームになっていたのもあるかもしれません。もっともこの点ではマテウスに匹敵するかそれ以上のクオリティを有する選手がコンサにもいたのですが。
        • J1のチームはJ2のチームよりも、もっと長崎っぽいというか、最初から型にはめないでとにかく個人能力を活かそうと考えているチームがより多いと思います(今年の岡山のようなチームはまた別ですが)。
        ===
        • 次回はシーズンの背景となったトピック等を振り返ります。

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