- 総括はシーズン終了後に出しますが、今の時点で感じたことを書いておきます。最近物忘れが気になるので忘れないように書いておこうという趣旨もあります。なお画像には特に意味はありません。美味しかったです。
前提:
- 前提として監督人事というのは何かの”手段”です。何かの、とボカシましたが基本的には
- チームが〜〜なプレーをするための手段(戦術浸透や選手の育成、それらのコンセプト提示など含む)
- 試合に勝つための手段
- この2つかなと思います。ただし「試合に勝つための手段」だとして、目的が試合に勝つ、と言って良いのかは微妙なところかもしれません。いいプレー、相手を上回るプレーをした結果が「試合に勝つ」(勝てるかもしれない)という関係性だからです。人生の目的が「結婚」だとするのがちょっと変に思えるのと近いでしょうか。幸せになることが目的で、結婚は幸せになるための手段である、みたいな。
- あとは日本サッカーにおいて見られる傾向としては、監督がサッカーの専門家、技術者だけではなくクラブの顔役やスポークスマン役、アイコン役も兼ねている場合がある。ベガルタ仙台が手倉森誠監督を招聘(2度目)した際に経営者の方が理由の一つとして「地元財界とのコミュニケーション力がある」みたいな話もしていましたが、典型的なパターンでしょうか(もっとも手倉森監督周りではコミュニケーションという言葉は頻出ワードのようですが)。
- 岩政監督の前にある種の”名物監督”と7年にわたる長旅を繰り広げたコンサ(で、監督人事を担当していた人)も、おそらく似た考えを持っていたのかもしれません。弁が立ち、メディアに出ることが苦手ではなく情報発信でき、スポンサー企業やサポーター(97%はサッカーについて無知)に対し、なんとなくポジティブな雰囲気を醸し出せるということはプラスに働くのでしょう。あくまでなんとなくですが、なんとなくが重要なわけです。だって誰も真面目に検証しないですから。
- なお「サッカーはデータが10割 最強アナリストが明かすプレミアリーグで優勝する方法」 (イアン・グラハム著)によると、マルセロ・ビエルサは監督の仕事について
- 戦術的アプローチの策定
- 選手選考
- チームの感情コントロール
- の3つだとしているそうです。
- コンサでの岩政監督について、いくつかキーポイントだったと思われるトピックを勝手ながら以下に書き記します。
「ポジティブな雰囲気の醸成」と「選手への甘さ」は表裏一体:
- キャンプイン早々ポジティブな語り口が飛び出しメディアとサポーターを惹きつけます。このポジティブさはキャンプを通じて変わらず開幕まで続きます。
- シーズンが開幕し、4連敗スタートというのはご存知の通りですが、これは「なぜか勝てない」というよりも改善点は明らかな状況でした。
- 具体的には、前線からpressingを仕掛けて相手にボールを持たせないとする指向があったにも関わらず、選手のアクションの量(1stDF、プレスバック、スライド…)が不足し、そのメカニズムは不十分。
- ボール保持からのbuild-upも安定しない(そもそも相手からマンツーマン気味に対応されると怖がって”トライ”をしない)
- 全てが不安定のまま速い攻撃で脆弱なDFが晒され先行される
- しかし監督のスタイルなのでしょうけど、改善点はこうで…、と厳しく細かく選手に提示するようになったのは、十数試合ほどを消化して完全に出遅れた後の5月以降くらいからだったように見えます。
- 実際のところコンサの選手が監督が言うように「うまい」のかはわかりません。ただ前のシーズンも、数ヶ月間J2で勝てない時期を経験し19位で降格の憂き目に遭っていることを考えると、客観的には「君たちはうまいから普通にやってくれれば勝てるよ」、よりも「足りないものがあったから去年も結果を出せなかったわけだし、課題と向き合って改善していこう」とするスタンスで選手に接すること必要だったように思えます。シンプルに岩政監督のスタンスだと甘い、もしくはぬるさを感じるところはありました。
- 6月後半からは選手起用の傾向がやや変わり、3連勝で磐田とのアウェイ決戦に乗り込みますが5失点での敗戦を喫します(23節、7/12)。
- 試合内容としても、開幕当初からの課題が再び噴出したこの試合が決定的だったのではないかと推察しますが、監督がこの時期には色々手を打っていたにも関わらず課題を解決できなかった理由は、別の問題があったともいえます。
”唯一の約束”を遵守してもらえなかった致命的なスカッドの問題:
- 三上前GM(現サポーター)によると、就任時に監督からのリクエストとして「競争が生じるように各ポジションのバランスを考慮してほしい」との話があったとされます。
- 具体名と共に⚫︎⚫︎選手がほしいとか、どのポジションにどんな選手が欲しいとかは(クラブの事情も考慮して)要望しなかったので、編成に関してはこれが唯一の監督からの要望でした。
- しかし、当初の構想では3バックの1-3-4-1-2のシステムを考えていたとのことで、それに当てはめると↓のようになる。
そういや確定ですな pic.twitter.com/EcRaLJZe1F
— AB (@british_yakan) January 8, 2025
- 一応は各ポジションに2人選手がいるように見えますが、例えば右MFは近藤を脅かせる選手の名前がありません。中盤センターは高嶺と馬場以外は高齢で故障が多い選手。FWもJリーグで実績がない選手と故障がちな選手。CBは大﨑は近年CBとしてプレーしていない。左利きのCBは中村桐耶のみ。どう見ても約束は破られている。
- 4バックで考えると、スタメンはともかくトータルではさらに悲惨なことになる(右SBが髙尾しかいないので紅白戦すら難しい など)ので、監督は3バックのシステムをやりたかったというよりも、3バックしか考えづらかったのではないかと推察します。
- そしてシーズンが始まって思い描いたようなプレーができないと表面化する中で、監督が本格的に選手に要求するようになりますが、その要求を伝えプレーを改善する手段として、全体練習だったり個人練習だったり選手との面談やコミュニケーションだったりと共に、選手起用:要求に足りていない選手を起用せず別の選手を起用する という手段があります(一般にサッカー業界ではこれを「競争」と言っていると思います)。
- しかしコンサはそのスカッドによって、特定のポジション:右MFやDF中央、FWにおいて競争を生じさせにくい状況でした。近藤、家泉、バカヨコといった選手はパフォーマンスにかかわらず重用され、この中で唯一インターナショナルな選手であるバカヨコは、(他のFWの起用もあって)パフォーマンスを改善していきますが、それ以外の選手に関しては競争により危機感を煽ったりすることが困難な状況でした。
- 直近では夏のマーケットで、センターFWのマリオセルジオを獲得しましたが、マリオもそんなに運動量や機動性に優れたタイプではないということで、バカヨコとの併用が難しく、ここまでリーグ戦は全てベンチスタートでプレータイムも限定されている。
- この事例を見ても現状のコンサのフロントの編成能力はかなり疑わしいものですし、監督をサポートできたとは言い難いでしょう。対照的に夏の補強でここまで大ヒットの浦上は、岩政監督が具体例を挙げた選手だとのことです。
「見られ方」は相当意識していたのか:
- サッカーと直接関係ないですが、就任直後の「圧倒するサッカー」もそうですし、岩政監督はキャッチーかつインパクトのある言葉を多用していた印象があります。
- 言葉もそうですし試合中の振る舞いを見ても、「見られ方」やセルフプロデュースについてはかなり意識していた印象です。普段はどんな人なのかわかりませんが、自然にそう振る舞っていたというよりも自らそうしたキャラクターを作り上げていたように見えます。
- これについてはそれこそ、ミシャのような日本サッカーにおける名物監督的な存在(サッカーの内容とかプレー以前にキャラクターとか言動が必要以上にフォーカスされ注目を集め、〜〜式みたいな中身の薄い言葉が周囲を取り巻くようになる)化することにもある種肯定的というか、雑に言うと彼みたいな存在になりたいのかな?と思うところもありました。要するに岩政監督は「狙って言っている」のだと思います。ミシャというよりも本田圭佑が近いでしょうか。
- ただ問題は、コンサに限らず大半のサポーター、サッカーファンはサッカーの内容がわかりませんしゴールでしか判断ができません。監督がコンサでどれだけの問題に直面して、見えないところで地道にアプローチをしていたか、そこまで察してもらうことは難しい。
- ですので結果が出る前にポジティブなワードを並べすぎたことで、サポーターの期待を煽りすぎ、結果が出なかったことでそれがかえって自らの首を絞めることになったというか、そうしたコミュニケーションがうまくいかなかった印象を受けます。
アプローチの優先順位と根っからの教師気質
- サッカーの話に戻りますが、結果を出すための最低限の手段:ゴール前をどう守ってエラーを取り除くか、セットプレーでどう得点するか…といった、結果に直結し、かつ部分的に切り出してのトレーニングがやりやすい部分の軽視というか着手の遅れも大きかったと思います。
- 私が見た限りでは後方からのbuild-upにやはりというか注力していました。それはモダンフットボールにおいて重要であり試合のうち一定割合を占める部分ですが、後方からパスを繋いでbuild-upというのは一度ミスをするとそれまでの積み重ねがやり直しになる難しいプレーですし、何よりもボトルネックとなる選手(戦術理解や技術が不足)が1人でもいると、それこそ長崎戦の後半のように一気に機能性が低下します。
- なのでこの部分は、できない選手を入れ替えるまでは諦めて、他の部分に着手しても良かったと思いますが、自ら「教師家庭で教員免許を持つ」と自らのバックグラウンドを語る岩政監督には、「できない選手」を放置するという考えはないのでしょう。確かにそれでバカヨコのプレーは劇的に改善され中盤戦以降の絶対的キーマンとなっていますし、この点は監督の手腕が示されたと言えるでしょう。
- しかし残念ながら世の中にはできない・わからない人が一定数います。何人かの選手は改善されましたがそれ以外は目立った改善が見られず、大変シビアな言い方になってしまいますが、できない・わからない選手にアプローチし愛を注いだ時間は、絶対にJ1に昇格したいチーム(みたいですね。どうやら)にはロスが大きい時間だったかもしれません。
新任監督へのサポート体制
- このシーズンのトップチームの体制は岩政監督以下、ヘッドコーチはGKコーチからの転任となる赤池コーチ、新任の戸川コーチ、古参となる砂川コーチ、他、佐々木GKコーチ、セットプレー担当かつアナリストが前年アナリストだった綿引コーチ、アナリスト専任が中西氏、そしてフィットネスの問題を改善するための人材が京谷氏、山田氏がフィジカルコーチ、といったラインナップ。
- 新任であり、前任者(基本的にミニゲームしかしない)と別で、明確な戦術コンセプトを持っている監督が就任するということで、このスタッフ人に備わっていることが望ましい機能としては
- 監督と選手の橋渡し役(監督が選手の特徴やチームについて素早く理解する)
- 監督の補佐役(特に個人のパフォーマンスで足りない部分を補える)
- その他戦術的なブレーン
- といったものがあるかと思います。
- これも内情は知らないので勝手に印象を書くだけですが、
- まず監督が選手やコンサというチームについて理解するのが迅速だったと言えるか?開幕2節で熊本に敗れた後で「守備の文化」、4節でジェフに敗れたあとは「根深い問題」といったワードが飛び出します。この辺でコンサというチームの問題(まぁこれも”ぬるさ”ですね)については一定は認識しているとも捉えられますが、そこから劇的な改善ができないまま今回こうした結果になったことを考えると、やはりこれもスタートダッシュに失敗しており、もう少し監督へのサポートとしてはやりようがあったかもしれません(浦上も7月に加入してある種の”ぬるさ”は指摘していましたね)。
- また退任時に「驚いています」とするコメントを残していますが、これを見ても、クラブカルチャーについても、岩政監督は最後まで理解できていなかった節を感じます。
- 宮の沢に練習を見に来るようなサポーターは表向きは暖かいというか、小野伸二がランニングしていれば手を振り、連敗中でもミシャが足を引きずりながら登場すれば毎回拍手で迎える。岩政監督に対してもそうした空気だったのでしょうけど、だからといってこのクラブは勝敗や成績に鈍感なわけではない。むしろ守備の文化なのか、フットボールカルチャーがないとするなら試合内容なんてわかんないし勝ち負けでしか判断できない。
- 異例の長期政権だったミシャの影響もあって、なんとなく岩政監督も、コンサは長期的な目線を持っていて目先の結果に一喜一憂しないクラブと考えていたのかもしれません。
- あくまでミシャが特殊なのと、石崎監督が4年率いたりしたのは当時の財政的なりゆうでしかありません。サポーターもフロントも2019年以来なにかと「タイトル」を口にするようになりましたし、復帰した高嶺も同じ。そんな中で1年目は結果度外視、とまではいかないけど、首が脅かされるほどではないと考えていたならだいぶズレていますし、そこももしかするとサポートが必要だったかもしれません。
- 通常監督のサポートをすべきは招聘したGMとかになるのでしょうけど、その人物もGMではなくサポーターになってしまいました。
- 2については西野の証言では、個人戦術で足りない部分を監督が練習後に個別指導してくれるということでしたが、
大樹さんは攻撃のところでボールの運び方、受け方、相手をどうズラすか…といった細かい部分を練習後の自主トレで細かく教えてくれています。自分もそれを吸収して、ところどころよくなっている。もっと脅威になるパスだったり、後ろからの配球ができるようにならないといけなhttps://t.co/RUigWE9BaB
— AB (@british_yakan) April 26, 2025
- この辺りは指導のスタイルにもよりますが、基本的には監督が全部見るのは不可能です。30人近くの選手がトレーニングに参加している中で全員に目を配れませんし、そうしようと思えば一つ一つの事象に対する解像度が下がる。
- 個人指導も選手によって特徴や課題が違う中で、監督1人で何人もまとめて一気に改善できるかというと難しい。
- だからコーチや個人指導ができる人の存在が重要になってきますが、コンサのこのスタッフ陣にそうしたケイパビリティがあったでしょうか。たまたま名前が出ていないだけで、色々と貢献してくれているならいいのですが。
- 一旦この辺りで、あとはシーズン終了後に改めてじっくりと振り返ります。それではみなさん、また逢う日までごきげんよう。
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