2025年8月3日日曜日

2025年8月2日(土) 明治安田J2リーグ第24節 北海道コンサドーレ札幌vsサガン鳥栖 〜拭えぬ不足感〜

1.スターティングメンバー



  • ここ4試合を大宮、いわき、千葉、大分相手に3勝1分けで乗り切り試合前の段階で4位につける鳥栖。ほぼこのメンバーとシステムで直近は固定されています。本田は2年間のリハビリを経て復帰戦となるメンバー入り。
  • コンサは岩政監督曰く「放浪の旅に出た末に」3バックへの変更というか回帰を決めたとのこと。らしさ満開のポエミーなテイストですが、キャンプでも元々取り組んでいたものでもあります。鳥栖、長崎と3バックシステムの難敵相手に連戦だから、ということかとも思いましたが相手に合わせる意図はあまりないのかもしれません。
  • 選手では大﨑が今節と次節の2試合出場停止。HT明けに選手が出てくる際、パクミンギュと長谷川(16番)と思われるユニフォームが飾られていましたが特に負傷のアナウンスはありません。

2.試合展開

アップデートの成果をちょい見せ:

  • 開幕4試合にアシンメトリー構造の1-3-4-2-1システムで挑み4連敗と玉砕したコンサ。以降は比較的オーソドックスな1-4-4-2に落ち着いています(試合運びと成績は落ち着いていませんが)。
  • このシステムでコンサが盛大にこけた理由はシーズン終了後にじっくり検証するつもりですが、せっかくなので中間報告としましょう。
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  • ↓は2節のvs熊本のレビューから。ボール保持の際に3バックの中央(大﨑)が右移動し、右DF(西野)は前方に押し出されてフリーマンのようになる。中央は最小限の人数だけを用意してスペースを作り、そこに中盤センターの2人(高嶺と馬場)や、場合によってはシャドー(克幸や長谷川)が移動してきて、相手の目線を変えながらフリーの選手を作ってボールを運んでいこう、とするイメージだったと思います。
  • しかしボール保持を最初に始める選手…コンサのGKとDF(菅野、大﨑、パクミンギュ)が相手のpressingにびびって前に放り込むなどしてボールを手放してしまえば、中央にスペースがざっくりと空いた状態でボールを拾われてカウンターを受けたりするリスクがある。
  • かといってボールを繋いでいくとしても、例えば↑の熊本のようにマンツーマンベースで守ってくる相手に対し、大﨑がきつめの状況になって馬場や高嶺に預けるも、その2人も前から下がってきて後ろ向きの状態で、相手のマンツーマンでついてくる選手を背負った状態でのプレーを強いられる
  • ここで個人の力に頼るとするなら、ここから強引にボールを持ったまま反転して置き去りにする、みたいな難易度の高いプレーを要求されることになります。

  • コンサの選手の能力とJ2で相手が仕掛けてくる対応を見た感じだと、例えば一度、この下がってくる選手に縦パスを当ててから、DF(大﨑やパクミンギュ)がワンツーでリターンを受けてマークを外してからconducciónするとか、何らかの決まったパターンみたいなのが欲しいところでしたが、「パターンを決めすぎると選手が躍動しない」と主張する岩政監督はこの辺の読みが甘かった感があります。
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  • 岩政監督曰く「夏に獲得した選手たちは配球能力があるので、3バックができるようになった」要は大﨑、パクミンギュ、髙尾、西野、そして家泉よりも、浦上や宮は簡単にボールを手放さないので、その分の時間を使ってポジションチェンジするプレーができるということでしょう。
  • ただこの日のコンサは開幕時とはややモデルチェンジしていた印象もありました。というのは、↑の熊本戦での図ではFW(中島)以外のほぼ全選手がオリジナルポジションから動いていますが、この日は西野の移動が主で、彼がフリーマンっぽく振る舞う以外はオリジナルポジションからそこまで逸脱する選手は他に見当たりませんでした。

髙尾へのワンタッチの意義:

  • そしてポジションチェンジするのが目的ではないので、ここからどうやって前線にボールを運んで、最後にシュートを打てる局面をどのように生み出すか?(かつ、できればその際に相手のカウンターに備えている状態が望ましい)を考えなくてはなりません。

  • まず鳥栖の1列目を超える際に、コンサは浦上←→髙尾のラインを作り出す髙尾のポジショニングがポイントになっていました。
  • 西野がフリーマン化して右サイドからいなくなりますが、コンサのWBは右の髙尾と左の原で高さが異なっていて、髙尾はあまり高い位置をとらず浦上の受け手になれるポジションを維持します。簡単に言えば西野が空けたところに髙尾が出てくると考えてください。
  • これで浦上が持った時に、中央方向と右方向でパスコースを確保でき、スリヴカの守備基準を曖昧にして簡単に捕まらないようにし、また髙尾に一度タッチすることで鳥栖のWB(新井)を動かして5バックをスライドさせ、鳥栖の全体の守備基準(見ている人の関係)をリセットすることもできる。
  • そうして簡単にボールの出し手が鳥栖の前線の選手に捕まらないように準備をしてから、浦上、高木、宮が高嶺や田中克幸への縦パスを狙います。

「躍動」と言いつつ依然として個に依存:

  • 一方で1列目を超えられたとしても鳥栖陣内に入ってからがコンサの問題で、これも基本的に「パターンを作らないで選手が躍動する状態を引き出したい」とする岩政監督ですが、シーズン序盤によく言っていてかつ試合でも何度か見せていた「ポケットを取る」は一定の共通認識ではあるとの前提で以下を論じます。

  • コンサは鳥栖のブロックの外側ではボールを持てるとして、最終的にポケットを取るとするなら①誰がそこに飛び出すか、と、②飛び出す選手にタイミングを合わせて正確にパスを出せるか、が必要になってくる。
  • 飛び出す選手はフリーマンの西野や、白井、場合によっては髙尾だとして、そこにパスを出すには図で赤い円を書きましたが鳥栖のDF-MF間くらいまで侵入するとか、サイドでももう少し高い位置でボールを持って前を向きたい。↓図では髙尾が低い位置でボールを持っていますが、ここからポケットに走る選手まで長い距離のパスを出すとDFのスライドが間にあってしまいます。
  • コンサは前線というか相手のDFのプレッシャーを受ける難しいシチュエーションでパスを受ける役割は、相変わらずバカヨコのポストプレーに依存している。バカヨコは受け手としても重要ですがフィニッシャーでもあるのでなるべく本来はゴール前にいたい。ポケットを取る前段階で彼を経由すると、ゴール前に入っていく選手をバカヨコの代わりに確保しないと行けなさそうですが(監督はもしかするとバカヨコが2役できると思っているのかもしれませんが)、そうしたダイナミズムが、木戸や長谷川を欠くコンサの前線には足りなかったと思います。

  • 開始早々の髙尾のチャンスもそうですが、コンサはこのラスト1/3において「鳥栖のブロックを超えてブロックの反対側に着弾させる浮き玉のパス」で終わろうとすることが多く、ブロックの内部に侵入してよりゴールに近い位置からシュートを打つための術を持ち合わせていないことを示しています。

スリヴカ自在:

  • 開始10分ほどでコンサのキャプテン高嶺が接触プレーで足を痛めた素振りを見せます。荒野が慌ててアップをしますが高嶺はプレーを継続。ただごとではないように見えましたが最終的には90分間プレーし続けます。ここでプレーが切れて鳥栖のセットプレーが続いてから、徐々にコンサは鳥栖に押し込まれ、また押し戻せなくなっていきます。

  • コンサは最終ライン5枚で基本的にはマンツーマン。特にコンサのWBが鳥栖のWBの長澤と新井をかなり意識しており、ここでマークズレが起きないように、髙尾と原は常に新井と長澤よりも低い位置にいるようにしていました。
  • これについては、5バックで守る最大のメリットがサイドを変えられた時にスライドが楽になることだと思うのですが、5月の駅前不動産スタジアムで対戦ではファーサイドで長澤のマークが外れたことで失点している。流石にそこは2回目ということで意識してきたのだと思います。
  • この副作用として、髙尾と原が前方向に守れないので、鳥栖は白井とスパチョークを迂回するように持ち出して彼らを超えられれば易々とコンサ陣内に入れますし、コンサはそこからボールを回収するとか鳥栖の選手をゴールと反対方向に押し出すのに苦労していました。
  • 高嶺と田中克幸の2人でサイドのスペースまでを見るのは大変ですし、シャドーの2人がプレスバックするにしても本来そうした仕事が得意な選手でもない。

  • そうして鳥栖がコンサ陣内への入り方を徐々に掌握して以降、25分頃からは前線のスリヴカにボールが集まって鳥栖はコンサゴールにより近いところでプレーできるようになります。
  • スリヴカに対してもコンサは西野がマンツーマン。コンサがバカヨコに依存するのと同じく、鳥栖も見た感じこの仕事ができるのはスリヴカしかいない。
  • 違いは、バカヨコが下がるとコンサは”9番”タイプがゴール前に不在になりますが、鳥栖は山田がいるので、スリヴカが下がって受けてスペースを空けることで山田が浦上のマークを外すためのスペースができてむしろ好都合になりますし、山田以外にも西川や長澤といった選手もスリヴカからの直接的なラストパスだけでなく、彼を経由した次の展開を予測してゴール前に入ってくる。前半も何本かあった鳥栖の枠内シュートを高木のセーブもあってコンサは凌いで後半に入ります。

カードを切っても後手に回り続けるが…:

  • 56分にコンサはバカヨコ→マリオセルジオ。鳥栖は松本・山田→西澤・鈴木。鳥栖は櫻井をアンカー、スリヴカと西澤がインサイドハーフとなる1-3-1-4-2に変更します。
  • 対するコンサは戦術的にテコ入れというかはフレッシュな選手を入れた格好に。3バックのこのシステムの問題点はマリオとバカヨコの併用が難しいことでしょう。

  • SPORTERIAの集計では、バカヨコは56分間でプレー回数12(パス11、シュート1、別途スポーツナビではドリブルがゼロ)、白井は69分間で11(パス10、シュート1)、スパチョークが35(割愛)、でバカヨコや白井にボールを届けられないコンサの実情が見え隠れしますが、マリオも34分間で5(パス5、シュート0、ドリブル0)と、前線の選手だけ変えてもそこにデリバリーがされなければあまり意味がない。
  • 特にマリオの場合はバカヨコのようなポストプレーで強引に起点になることができなさそうなので、コンサはこの交代でも鳥栖を押し戻すことができないままでした。
  • 対する鳥栖はこれ以降システム変更を有効に使って更にコンサゴールに迫ります。3人のDFとアンカーの関係性でコンサの1列目を無力化して、”再現性”をもってコンサ陣内に入ると、

  • コンサのWBが毎回鳥栖のWBに出てくる関係性も使ってWB背後、まさに”ポケット”に代わって入ったインサイドハーフの西澤が飛び出す攻撃をお手本のように繰り返し見せつけます。これは常に井上と長澤の右サイドから始まっていました。
  • 鳥栖が2トップに変わってもコンサのCB3人、特にこの攻撃でポケットを執拗に突かれる状況だった宮は中央にステイしていたのでひたすら鳥栖が殴る展開になります。やられなかったのは高木のセーブと鳥栖の何度かのシュートミスに助けられたからで他になりません。

  • 63分にコンサはスパチョーク・原→青木・田中宏武。鳥栖が狙っているサイドの2人を交代しましたが、普通は宏武がWBで青木がシャドー。しかし守備もうまい青木をWBに置いて、宏武を前に出す起用法としました。青木1人の対応では鳥栖の猛攻を止めることはできなかったですが、結果的にはこれが当たります。
  • 69分には傷んだ白井・田中克幸→出間・荒野に交代。鳥栖は72分に櫻井・西川→西矢・新川。

  • コンサはAT含めて25分ほどを残して交代枠を使い切りますが、77分にオープンなトランジションから田中宏武のクロスを鳥栖のGK泉森がまさかのファンブル。荒野が詰めて予想外の形でスコアが動きます。

  • スコアが動いてからはコンサは青木をインサイドハーフにする1-5-3-2の形で防戦体制。鳥栖は最後の交代カード、スリヴカ→本田を切ります。
  • コンサは2トップの左FWとなったマリオの対応がいまいちというか、鳥栖の運び役である右DF井上のコースを塞ぐまで仕事が回らない。そこに青木が出るとポケットに入ってくる西澤を捕まえることはできない。
  • 結果、青木が我慢してから遅れて西澤についていくみたいな対応を頑張りつつ15分間を耐えますが、青木が動くと今度は井上から中央に縦パスを刺されたりもして状況はなかなか好転しませんでした。

  • 最後はコンサは全部クリアして凌いで、なんとか5月の対戦のリベンジを果たしました。

雑感

  • SPORTERIAのxGでは鳥栖が56分にシステム変更して以降で9回のシュートチャンス、xGは計0.85くらい?算出されており、コンサは何とか我慢して耐えたという展開でした。
  • 岩政監督は「このDFとGKならボールを運べるので3バックいける」。確かに開始10分くらいはその片鱗を見せてはいましたが、個人的には岩政監督の1-3-4-2-1だとGKとDFのデリバリー能力だけでは不十分で、機能するにはもう少し+αを要求しているように見える(例えば中盤センターの選手の同様の能力だったり、誰かDFをフリーにする”パターン”を持つおことだったり)ので、果たして磐田戦から仕切り直して大型連勝が今度こそできるのか?どうかなぁと思っています。
  • あとはまたチームを(難度が高い方向に)アップデートしたところで、DFの中では宮の能力がより試される状況になっていくと予想します。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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