1.スターティングメンバー
- 夏のマーケットで秋田は、22節までに10ゴール4アシストと、それまでの総得点25の半分に直接関与していた小松がヴィッセル神戸へ、CBとして最多の17試合に先発していた井上竜太が東京ヴェルディへ移籍。
- それでも小松が移籍した23節以降は熊本に3-2、磐田に4-1、藤枝に0-0と粘りを見せており順位も降格圏の18位から15位に上げてきました。
- この試合時点で18-20位はいずれもシーズン途中で監督を交代した富山、山口、愛媛が並んでいる。良い時の秋田は特定の選手に依存しない上での強さみたいなところがあるので個人的には就任6年目の吉田謙監督を信じた方が良さそうに見えますがどうなるでしょうか。
- メンバーは前節からFWに梅木→累積警告4枚の鈴木翔大が戻ってきました。
- 一方でこの1週間で監督を交代し、「戦えない奴は船降りろ」と石水船長がゲキを飛ばしたコンサ。割と、最近(ミシャ期以降)サポーターになったりコンサに関わり始めた方も結構いらっしゃるようですので私から一言。コンサは30年間ずっとこんな感じなのであまり深く考えたり思い詰めないでください。考えるだけ無駄です。「考えるブログ」からのお願いです。
- さて、しまふく寮出身者では初のトップチームスタッフとなった柴田監督。現役時代は「三浦俊也監督にしょっちゅう怒鳴られていた、技術はないけど大柄で優しそうなCB」というイメージしかなかったですが、割とこのクラブのアカデミーでは「戦術に明るい気鋭の指導者」と評価されていたようです。
- 初陣のシステムは岩政前監督を踏襲する形となった1-3-4-2-1。就任から4日で抜本的に変えるのは難しいので理解できますが、バルバリッチ元監督を踏襲しての3バック採用から結局10年間、手持ちの武器をあまり変えずに戦っている四方田元監督を見ていると、こうした部分も含めてこれから柴田監督のお手並み拝見といったところでしょう。
- メンバーは、前節最後まで奮闘した宮が右ハムストリング肉離れで離脱。高嶺はトレーニングには部分参加で大事には至らないようですが、中盤センターには3ヶ月ぶりのスタメンとなる大﨑が起用され、キャプテンマークを巻きます。
2.試合展開
見知った乗組員と共に 新生コンサ号 緊急発進!:
- ボール支配率が4割を割ることもそう珍しくはない秋田に対し、ホームのコンサがボールを握る、誰もが予想できる展開となります。
- 秋田は、2トップと両サイドハーフは、コンサの対面の選手に対しマンツーマン気味に高い位置からプレッシャーをかけてくる。ただコンサが列落ちで枚数を増やしたり、GK高木を使ったりした時は、この4人から更に枚数を増やすことせずあくまで4人で前は対処して、そしてコンサが秋田の1列目を超えるとプレスバックして1-4-4-2のミドルブロックを作ることを徹底する。あくまでハイプレスに命をかけるというよりは、ミドルブロックでしっかり対処するとのコンセプトが明確でした。
— AB (@british_yakan) August 16, 2025
- システム1-3-4-2-1のコンサと1-4-4-2の秋田のマッチアップでは、コンサがボールを持っている時にほぼ全てのポジションで枚数や配置のミスマッチが生じる。このブログの読者の方には説明不要だと思うのでそこの説明の図は省略させてください。
- 理屈の上ではそのミスマッチをうまく使えば、ピッチの右、左、中央どこでもフリーの選手を作ることはできそうに思えますが、前半のコンサは中央と右から展開がほぼなく、序盤に2度ほど左の青木とスパチョークのところで前進した以外は沈黙し、シュート3本、うちボックス内からは1本(CKからバカヨコのヘッド?)と秋田相手に前進に苦労します。
- ボールを持った時にコンサは、中央で浦上がなるべく我慢して、秋田のFW鈴木を引きつけてから隣の選手にパス。このプレーから全てが始まります。
- この際、コンサは序盤から荒野か大﨑のいずれかが浦上の隣に下がってくるお馴染みのムーブを見せることが大半で、一応中央にはどちらかが残っているのですが、なかなかそこにDFがパスを出さないし、受け手側もパスを受けようとしていないというか、中央でボールを欲しがるよりも下がって前を向いた状態でボールに触ろうとしていました。
コンサ号の乗組員はピッチ中央の荒波に耐えられるか?:
- 要は、浦上としては何らか前に展開するオプションを持ちたいのでしょうけど、受け手が下がってきて前からいなくなるのでコンサはピッチ中央を使うことができない。
- おそらく予想なのですが、中央で360°の視点を意識しながら相手と駆け引きしつつ、縦パスを受けられる局面を作って(マークを外す動きdesmarqueをするなどして)、前を向いたら縦方向に運んだり展開したり相手のプレッシャーに耐えながら何らかプレーしたり…というのが、(年齢だけの問題ではないですが)34歳の大﨑と32歳の荒野のユニットではかなり難しく、中央で相手のプレッシャー下でプレーするよりも、下がってきてよりスピードを要求されない状況でのプレーが、誰が監督か、誰が船長…社長かを問わず染み付いているのでしょう。
- 繰り返しますが年齢だけの問題ではなく、おそらく今のスカッドでは中央でのプレーに耐えられる強度と技術(濱吉正則氏のいうところの「ダイナミックテクニック」…動きながらスピードをもって正確にプレーするスキル)が備わっているのは高嶺だけではないかと思えます。
- 中央ではなく右サイドについては、髙尾からワイドの原に渡すプレーから始まります。
- 原も中央での浦上同様、ボールを持ちながら受け手になる選手を探していましたが、秋田のDFのマークを外したりスペースを突いた動きをする選手…普通に考えたらそれは右シャドーの白井が候補になるのでしょうけど、原が持った時に白井は秋田のブロックの中にいてそれ以上展開できない場合が多かったと思います。
- 右サイドに右利きの原ということもあって、ここは秋田の選手がスライドしてくると詰まりやすく、白井がそんなに器用な選手ではないことも考えると、原に渡ったら白井は秋田の左SB才藤の背後に毎回チャネルラン、くらいの決め打ちでもいい気がしますが、そこはこれから新監督が手をつけるかどうか注目でしょうか。
- 中央と右でそうした問題がある中で、前半のコンサはボールを持てる左の青木に一度預けて、スパチョークとのユニットで左サイドで何らか前進することが2度あったくらいで、あまりシステムのミスマッチを活かせている感じはありませんでした。
- その左サイドも、基本的にサイドに張る選手じゃない青木、本来シャドーであまり中盤での展開に関与しないスパチョークということで、どちらかがスペースに走るプレーも少ないこともあって、秋田のプレスバックが間に合ってくると、初期状態の配置の関係でフリーの選手を作って前進…だけでは問題が解決できなくなります。
- 左サイドは足元でボールを扱うことが得意な選手(青木、スパチョーク)、右サイドはどちらかというとフリーランで特徴を出せそうな選手(白井、原)、と考えると、左サイドでまずボールを預けてスペースを作ってから右に展開、といった狙いがもう少し明確でも良かった気もしますが、見た感じ青木に預けるだけでも全体的にコンサの選手は手一杯で、その次の展開が用意されている感じもしませんでした。
ボールを持ったまま座礁するコンサ号に襲いかかる秋田:
- そうしてコンサ号がボールを持っていながら座礁し始めると、秋田はほぼ毎回コンサDFの脇にFWまたはサイドハーフが走る形から陣地を押し返し、早めにターゲットとなるFWと反対サイドのサイドハーフがボックス内に入ってクロスボールを入れ、セカンドボールに対しても押し上げることで繰り返しコンサのペナルティエリア付近に圧力をかけていきます。
- 特にセットプレーの際に、秋田はそこまで大きい選手がいないこともあってか、低くて速いクロスボールを主に使っていましたが、コンサの選手がクロスボールをカットできる位置に立っている時は毎回ポイントをずらして、キッカーの利き足も変えることでとにかく速いボールを送り込んでクリアミスや不十分なクリアを誘うことを徹底していたと思います。
- そして36分には素早い切り替えから、セカンドボールを拾った原へのカウンタープレスを炸裂させ、諸岡がミドルシュート。鈴木に当たってコースが変わるラッキーなゴールでしたが、それまでに再三コンサゴールに迫っていたことを考えると、ほぼxG通りだったと言えるかもしれません。
鈴木翔大がコースを変えてネットを揺らす!👏
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) August 16, 2025
🎦 ゴール動画
🏆 明治安田J2リーグ 第26節
🆚 札幌vs秋田
🔢 0-1
⌚️ 36分
⚽️ 鈴木 翔大(秋田)#Jリーグ pic.twitter.com/uqUwubKIYj
過負荷のツケを払わされる浦上:
- 後半頭からコンサは原→田中宏武。白井を右に回し、スパチョークも右シャドーのような位置にいましたが、私の予想ではアンカー1枚の1-3-1-4-2のようなイメージだったのではないかと予想します。実際は後半はコンサが陣形を崩しつつもかなり押し込む形になったので明言はできませんが。
- 特にコンサが構造として整理されたとは思いませんが、秋田は60分前後くらいから元気がなくなってきます。
- これは自陣で守った後のカウンターでの出足が鈍った印象もありましたが、それ以上にSB-CBの間のポケットをカバーすることが難しくなります。
- 秋田はサイドにボールがある時も、CB2人の間にコンサの1トップを置いてCBがスライドしないことが多く、ポケットは主に中盤センターの選手、↓の図だと諸岡の担当だったかと思いますが、見た感じではこの役割の選手は前に出てコンサの選手を捕まえることもあるし、サイドに渡った時に2人で追い込む役割もあるし、で、ポケットだけを見ていれば良いわけでもなくかなり大変そうに見えました。
- 58分に秋田は吉岡→石田。62分にコンサは大﨑・荒野→宮澤・田中克幸。秋田はこの試合、メンバーをフルにベンチ入りさせておらず交代枠も残しており、結果的に前の選手だけを交代させることになります。チーム事情はわからないですが何らか戦術的な制約となる事情があったのでしょう、
- コンサは交代選手は妥当に思えますが、代わって入った宮澤や田中克幸も秋田のポケットに入るタイプの選手ではない。それでも、秋田がバテバテでポケットを取り放題だったこともあって、後半に入った田中宏武、田中克幸がそれぞれ1回は左からポケットに入る動きを見せてボックス内からシュートチャンスを作ります。
- しかし64分に梶谷が浦上のミスを誘って0-2。ファーストタッチが流れた(流した)ことから痛恨のプレーでしたが、ちょっとこの試合は、ボール保持の際に常に浦上から始まる状況で、かつ浦上は相手を見ながら荒野や大﨑がパスコースを作ってくれるのを辛抱強く待っていたので、ちょっと彼への負荷が大きすぎた印象はあります。現状彼のリーダーシップ(態度というよりもプレーを指す)がないとチームとして成り立たないでしょう。
抜け目ない守備から追加点!🔥
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) August 16, 2025
🎦 ゴール動画
🏆 明治安田J2リーグ 第26節
🆚 札幌vs秋田
🔢 0-2
⌚️ 64分
⚽️ 梶谷 政仁(秋田)#Jリーグ pic.twitter.com/mXJdw1kc4Y
- コンサは後半にxGが伸びていますが↓、先に述べた克幸のボックス内侵入からのシュートと、終了間際のマリオセルジオのヘッドがクロスバーを叩いたものによります。
- ラスト10分ほどになって秋田はようやく、途中交代の左SH大石が下がって5バック気味で籠城しますが、それでも秋田の右、コンサの左サイドはあまり構造が変わらないのもあってコンサは攻め続けます。しかしゴールを割れず新監督の初陣を飾れませんでした。
【更新情報】
— SPORTERIA (@SPORTERIA_JP) August 16, 2025
J2 第26節 #札幌 0 - 2 #秋田
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雑感
- チームの現状を測る、まさにコンディションサーベイのようなものとして秋田は非常に良い相手でした。システム上ミスマッチのできる1-4-4-2で守る相手に対し効果的に前進できるか。相手のカウンターをストップできるか。相手が疲れてきた時にスペースを突けるか。サーベイの結果は見ての通りです。
- 石水船長が監督交代について選手に説明した際「共に戦えない人は船を降りてもらって構わない」みたいな発言をしたとのことです。これは気持ちが昂っての発言なのでしょうけど、一つ突っ込むとしたら、現状移籍金・違約金といったシステムがあるゆえ多くの選手は複数年契約をしており、勝手に船を降りることができないんですよね。
- 一方でこの試合を見ても、コンサはセンターラインにベテランが多い。新監督が「スペースを突く」と言っていますが、スペースを突くには一般に、一定のプレースピード(フィジカル、アクション、シンキング…)が必要になる。スペースを作り出しても秋田のようにプレスバックが迅速なチームはまたスペースを埋めてしまいます。
- ですので、コンサはセンターラインにベテランが多くスピード不足、強度不足で、この日のように中央でプレーできるDFに下がってくる。これはどんな監督でどんなサッカーを志向していても、おそらく選手を入れ替えない限りは改善が難しそうに思えます。
- その意味では何人かは船を降りてもらう必要がありそうですが、そこはこれから船長と新監督が直面していく課題になるのでしょうか。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。
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