2025年12月4日木曜日

北海道コンサドーレ札幌の2025シーズン(3) 〜フィロソフィーは一夜にしてならず〜

3.「チーム分析のフレームワーク」を念頭に置いた岩政前監督期のチームの振り返り

  • 久々に「チーム分析のフレームワーク」を用いて、岩政前監督期のチームについて改めて検証します。ただフレームワークは私なりにアレンジしています。


3.0 はじめに(改めて、なぜこの選択だったのか):

  • 2025年3月にコンサを去った三上前GMが選定した岩政前監督。
  • 約30年このクラブを支え、クラブに捧げてきた三上前GMですが、まず個人的には三上氏からはフットボールに関して特に強い思想やこだわり、問題意識を感じず、近年は野々村元社長から引き継いだということで野々村氏の路線をなるべく維持することを心がけていたように見えました。
  • そして、その野々村氏はフットボールの競技性というよりも、どちらかというと経営の観点で考えることのほうが多かった(社長なので当たり前ですが)はずで、また野々村氏は戦略的思考というか特定の人物のキャスティングで解決しようとする傾向を感じました。
  • そもそも「攻撃的なサッカー」という曖昧な概念を脱して考えることができていなかったようにも思えますが、とりあえずこの「攻撃的なサッカー」が戦略や方向性だとして、野々村氏にとってはそれはミシャ監督の招聘という一つの人事施策やキャスティングがほぼ全てを占めている。

  • 普通に考えて監督人事だけで何かを成すことはできないはずですが、野々村氏によるミシャ招聘から始まった7年間のサイクルは、名将の神通力や神秘性が薄れ、(コロナウィルスや人件費高騰などもあり)トップチームの編成が難しくなることで尻すぼみとなります。
  • ↓「具体的に何かをやるという予定はないけれど」で始まる2018年のコメントですが、本当に「攻撃的なサッカー」に関する具体策は特になかったという印象です(何かありますか?あれば教えてください)。

 

  • 2024シーズンのJ2降格というショッキングな結果で改めて経営者、GM、リーダーとしての三上氏が大いに責任を問われ、バッシングを浴びることとなり、その三上氏が岩政前監督を招聘したということで、2025シーズンも三上氏が槍玉に挙げられることが多かったように思えますが、そもそもコンサというクラブは過去30年間を通じて、フットボールに対してトップやフロントが真摯に考えた痕跡がかなり薄いクラブです。
  • かつて20年前に柳下元監督の元で若手選手が多い編成でリスタートを図った際には「アクションサッカー」みたいな謎のワードと概念が提唱されました。これは同監督が3年間チームを率いてさまざまなアプローチとアウトプットを見せていただいたことにより、「ラインを押し上げてプレッシングを仕掛けてボールを保持し、敵陣でポジションチェンジなどリスクを冒していく」みたいなことなんだな、ということは当時のフットボールの水準で何となくわかりました。
  • こうした謎のワードと概念 が監督人事と共に唐突に出てきてよくわかんないまま一人歩きすることをコンサは30年間繰り返しており、かつ、どうやらそれが指すものにあまり共通性や一貫性が見られないということで、改めてですがコンサというクラブはフットボールに対してあまり真摯に考えていない組織だと私は見ています。

  • そんな中で、書籍を複数執筆するなどフットボールに対して確固たる理論を持っていた岩政前監督と、対照的にそうした確固たるものがない三上氏(というか、コンサというクラブ)ですが、本来相容れないというか親和性は悪いはずですが、当初ある種の意気投合のような空気は感じられました。
  • この理由はおそらく、ポスト・ミシャを探していたコンサは監督人事の要件として人物の知名度だったりある種のスター性や、スポークスマンとしての能力も要求しており(三上氏の言うところの「コミュニケーション能力がある人」)、岩政前監督もその重要性を理解しつつ、自身にとって意義のあるプロジェクトだと捉えて引き受けたということでしょう。

3.1 全体

岩政前監督のコンセプトや基本思想:

  • どのようなチーム、フットボールを目指したいのか。各種コメント等から拾っていくと主に以下が挙げられます。
  1. 相手を圧倒して勝つ
  2. 選手を躍動させる
  3. パターンを作るのではなく仕組みを作る
  • もう少し抽象度を下げると、「相手を圧倒して」については、
  1. 自分たちがボールを支配する、相手にボールを持たせない(プレッシング&ポゼッション)
  2. 相手ゴールへ前進する質・量を用意しつつ相手を上回る(ビルドアップ)
  3. 相手ゴール前での崩しを用意しつつ相手を上回る
  • 要は全部やるし、どの局面でも上回るよ、みたいなことだったかと私は解釈します。
  • ただ別にこれらはそこまで岩政前監督のオリジナルというか、モダンフットボールにおけるスタンダードな考え方のようなものでもあり、実際にあらゆる局面で上回ることは相当難しいですが、かといって「どこかの局面をや何らかのシチュエーションは捨てます」みたいなことを公言するような考え方はかなり減っている。
  • よく「どの監督もペップバルサを意識している」みたいな指摘をヨーロッパのベテラン監督などが指摘しますが、それはある人にとっては耳の痛い話ではあると同時に、かといって真逆というか極端に何かの要素を捨てて他に特化するようなチーム作りはほとんど見られなくなっています。
  • コンサにおいても岩政前監督の後を継いだ柴田監督も若手指導者らしく、目指すチームとして似たようなことを言っています。

「パターン」と「仕組み」:

  • そして岩政前監督の特徴的な点は、最後の「パターンを作るのではなく仕組みを作る」。
  • ↓の記事でもありますが、

  • 要は、監督が事前に決めた通りにやるだけで相手を上回れるのか。ゲームであるので相手がいて対策を講じてきたりメタ要素みたいなものがある。
  • 本来は「ゲーム」であれば、相手が対策を講じてきたらこちらも出し手を変える。そうではなく事前に決めたやり方しかプランがないとそれだけで打ち手がなくなってしまいます。
  • 個人的にはJリーグを見ていると、ヨーロッパのフットボールに比べ、試合中に戦術変更だったりチームとしてやり方を変えるような展開が非常に少ないと感じます。ハーフタイムがほぼほぼ唯一の戦術変更やプラン変更の機会になっていて、まず前半の試合の入りのゲームプランに失敗すると、劣勢のまま45分間虚無のまま過ごしているチームもしばしば見受けられます。

  • 一方で、
  • そうした応用的な要素だったり相手を見てプレーしたり対応を変えたりといった振る舞いができるようになるには、「応用の前に基礎」ですし、「アウトプットを出すにはインプットが必要」ですし、「守・破・離」とも言いますが何らかセオリー的なものを知っておく必要がある。
  • これも日本代表のようなトップの選手ならともかく、コンサやその他J1J2の平均的な選手で見ると、まず基礎的なインプットが欠けていると感じる場面も少なくありません。

  • コンサだけでなく日本サッカー全体を見ていて、例えばミシャ前監督のチームなんかがまさにそうですが、元々は対戦相手に一定数いた4バックのシステムのチームに対し、前線5人と後方4人で分断して数的優位ベースに泣きどころを突いていく、みたいな考え方だったと思います。
  • それを相手が対策してきた時に基本コンセプトは維持しつつアップデートできないと、相手が5バックで完全にワイドを封鎖されて優位性(数的、質的、その他)を全く担保されていない状態でもワンパターンのプレー(たとえば、マークされていて前を向くのが難しいワイドの選手に毎回イージーに展開し、ワイドの選手が勝ち目の薄い1v1を仕掛け続ける…)に終始する。こんな光景に見覚えはないでしょうか。

重要性と難易度の問題:

  • これを踏まえても岩政前監督は非常に重要な指摘をしていたと感じますが、一方で以前、氏自身が「MTGで選手が聞いている話は監督がしゃべった内容の2割か3割」みたいな感じの話をしていたと思いますが、コンサでも監督のこうした考え方を1から10まで理解しようとする選手は一部でしょう。
  • メッセージは簡素にしても良かったかもしれません。それこそ、最終的には契約解除と共に、このクラブはミシャの亡霊を追い続けたいのだと判明しましたが、メッセージとして「ミシャのチームをアップデートするために特定のパターンに固執せず相手を見て臨機応変にプレーできるチームを目指す」みたいな部分にフォーカスすれば、2割3割の選手、そして0割のサポーターや0割の関係者も引き込むことができたかもしれません。

  • 岩政前監督がコンサに持ち込もうとした考え方は、個人的にはフットボールという競技における重要な示唆に満ちていると感じますが、一方でフットボール≒ミシャ元監督 との考えが強そうなコンサには時期尚早なのか、あまり腹落ち感がない状態で走り出したのかなと推察します。

3.2 自陣でのボール保持(≒ビルドアップ)

「北海道と共に世界へ」から12年:
  • ここからようやくピッチ上の具体的な現象の話に入っていきます。
  • まず岩政前監督のチームの設計の全般について言えることとして、「ボールを持っている側に対し、ボールを持っていない側がほぼマンツーマン気味にプレッシングを仕掛ける」という構図が当たり前のものであるという認識を感じます。
  • ヨーロッパのトップリーグの試合や代表チームの公式戦などを見ていると、フットボールの世界では一定周期でトレンドがぐるぐると周りつつあります。
  • たとえば、一時期はGKもビルドアップに組み入れてボールを保持することで相手に対し常に+1人の数的優位を作ることでアドバンテージが得られる(≒ボールを持っている側が有利な状況になりやすい)、みたいな認識でプレーしていると感じることが多かったのが、その後ボールを持っていない側のプレッシングの仕掛け方やその強度が発達し、GKも含めてボールを持つことのリスクがより増大するようなパワーバランスに変化して、またそこからパワーバランスが揺れ戻されて…という具合です。

  • そうしてパワーバランスが常に変化したりトレンドが回ったりはしますが、雑に言うと「ボールを持っているチームは相手からマンツーマンでプレッシングを喰らう状況を常に想定しているべし」みたいなことは今日の世界のフットボールの共通理解と言って良いのではないでしょうか。
  • その意味では、コンサが2013年に「北海道と共に世界へ」というスローガンを掲げてから12年が経過し、ようやく「世界」のスタンダードを意識した監督が来たな、という印象でした。

2つのシステムとコンセプトの狭間で苦悩する:

  • このシーズン、岩政前監督期のコンサは2つのシステムを採用します。1つは開幕から4節までと、岩政体制でラスト2試合となった24-25節の計5試合で採用された3バックの1-3-4-2-1ベースのもの。もう一つは開幕4連敗ののち、5-23節で採用された4バックの1-4-4-2ベースのものです。
  • この2つは考え方やスタイルが異なります。一言で3バックの1-3-4-2-1といってもチームや監督、選手が異なれば様々なスタイルになりますが、岩政前監督のそれは選手間の距離が比較的近めで、かつそれらの選手が頻繁にポジションとその役割を入れ替えることで相手のマークを外して敵陣に入り、結果としてパスやボールタッチの回数が多くなるようなものだったと考えます。
  • 一方で4バックの1-4-4-2は、選手の距離が比較的広めでポジションチェンジや役割の交換が限定的、つまり、ある程度決まったポジションを取り、あらかじめ決まった役割の遂行に徹する性質が強いものだったと考えます。個人的にはこの後者のスタイルの方が、コンサが慣れ親しんだミシャ元監督のスタイルに近いと感じます。

仕組み≒ ≠パターン:

  • 開幕から4試合で見られた3バックの1-3-4-2-1システムにおける自陣でのボール保持の検証は、2節のvsロアッソ熊本がサンプルとして最も適すと考えます。
  • これは熊本はマンツーマンの意識がかなり強いチームですので、岩政前監督が念頭に置いていたであろう、互いにマンツーマンでプレッシングを仕掛ける展開に最も近い構図となったためです(熊本は18位で降格の憂き目に遭いますが戦術的には非常に興味深いチームでした)。

  • コンサのボール保持は3バックが↓のようなポジショニング(青い円で表記)から開始され、西野(右DF)と大﨑(中央DF)が右にズレたような配置になります。そして中央のスペース(黄色の円で表記)にはあまり人を配置せず、選手が入れ替わりこのスペースに顔を出す設計だといえます。

  • この形からコンサが試みていたのは、
  • ↑のようにボールを保持しながら、ボールを保持している選手にパスコースを維持しつつボールを動かしながら、選手が一定方向にぐるぐると旋回するようにポジションを変え、1v1のマンツーマン気味に対応してくる相手のマークがどこかで外れるように仕掛けて(もしくはその状況を待って)、最終的にはそうしてフリーの選手を作るといったことだったかと思います。
  • これは考え方としては別に岩政前監督のオリジナルでもなく、フットサルではこうしたローテーションの動きは極めてベーシックな戦術の一つですし、最近の11人のサッカーだと、個人的にはインザーギ監督のインテルのようなチームを想起しました。

  • 改めてですが、特にモダンフットボールでは自陣でのボール保持に対し、相手がマンツーマンベースで対応してくる状況が多発する中で、相手が人についてくる(食いついてくる)ことを逆手に取る発想というか、そこに問題意識が強かったのかと思います。

混迷に至ったいくつかのボトルネック:

  • ただ、この熊本戦を0-3で落とし、続くvs山口、vsジェフと開幕4連敗を喫することになるのですが、このシステムにおけるビルドアップがうまくいかなかった理由として、主に以下の3点を感じました。
  1. CBのプレス耐性がなくボールを簡単に手放してしまう
  2. 中央から下がってくる中盤センターの選手の仕事の負荷
  3. ”飛び道具”の不在
  • 主にこの3つを感じました。
  • 1つ目は、この試合であれば大﨑とパクミンギュが該当するのですが、初期配置上、GKに一番近いところにいるこの2選手が通常まずGKからボールを引き取ります。この2選手がボールを持った時に相手(熊本)のFWの選手が前に出て1v1の構図を作り、簡単に前に運んだりパスをしたりを阻害してくるのですが、ここで大﨑やパクが熊本の選手が近い距離に立っていることで必要以上にナーバス、慎重になってしまい、「我慢しつつパスを繋いで相手のマークがずれるところを待つ」というよりも、いきなりボールを手放してしまって相手ボールになるとか、自分がボールを持っている状態をなるべく早く脱したいのか、準備ができていない味方選手にすぐにパスを出してしまい、受け手の選手のミスを誘発する…といった場面が見受けられました。
  • あらゆるビルドアップの形においても基本的にはセンターバック、中央でプレーする選手が最初にボールに触りますし、また最も多くの回数プレーします。開幕時のスカッドだと家泉か大﨑しかおらず、経験豊富な大﨑に託すのは必然ではありましたが、そのCBとしてのパフォーマンスが物足りないところがありました。

  • 2つ目については、高嶺と馬場はその(ややナーバスだった)大﨑やパクから最初にボールを引き取ることが多く、ここでボールを失うと相手のビッグチャンスとなるため、ミスが許されず難しいシチュエーションにあります。ただし「相手が狙っている」、相手がリスクを冒してボールを奪いに来る状況は、そこを逆手に取ればその背後を取ることもでき、そうすれば逆にこちらがビッグチャンスにもなりえます。
  • この際に高嶺と馬場にとって難しいのは、どうしても相手ゴールと逆方向を向きながら下がってくる形でボールに近づき、かつその際にマンツーマンでマークしている相手選手を背中(視界外)に背負った状態で、そこから何らか前方向にボールを届ける、もしくはそれに繋がるようなプレーが求められるということです。
  • ↑のイニエスタはボールを受ける直前にほぼ止まった状態(かつ完全に背後から相手が来るのではなく、おそらく間接視野で相手選手が見えている)ですが、高嶺や馬場は相手のマークを剥がすために動きながらボールを受けることが多く、そうした中で適切な判断とアクションを発揮していくことはより難易度が上がります。

  • 3つ目は、こうしてマンツーマンでしつこく対応してくるチームに対し、たとえば前線のFW(中島)やビルドアップにあまり関与しないワイドの選手(田中宏武)にロングパスを出して、それを受け手がキープすることで味方がボールに直接関与せず頭を休めることができる時間を確保したり、可能ならば中島のような選手の足の速さを活かしてそのまま相手ゴールに突進する…みたいな展開を1度でも見せられれば、守る側としては考慮しなくてはならないプレーが増え迷いが生じたりします。
  • これはこうした”飛び道具”(ロングパスからの展開など)の、受け手・出し手の両方に課題があるのでしょうけど、ロングパス等をうまく使えているとは言い難い状況でした。

5ヶ月を経ての3バックリバイバルは一定の手応え(も、社長は評価せず監督交代へ):

  • 4連敗で3バックのシステムを封印したのち、結果的に岩政前監督体制でのラスト2試合となった24節(vs鳥栖)、25節(vs長崎)で再度3バックの1-3-4-2-1ベースのシステムが採用されます。
  • この24-25節でコンサのスタメンは同じ11人(但し配置は異なる)。GK高木、DF西野、浦上、宮、MF髙尾、高嶺、田中克幸、原、スパチョーク、白井、FWバカヨコ。開幕直後に加入前だったり故障中だった高木、浦上、宮、出場機会が少なかった白井、原といった選手が名を連ねていますが、このシステムでのビルドアップでキーマンと言えるのは西野でした。

  • 先に述べたように、開幕直後はDFと中盤の選手が一定方向にぐるぐる旋回してオリジナルポジションを離れ、マークを外してフリーの選手を作る…という狙いがありましたが、今回の3バックリバイバルでは、オリジナルポジションを離れるのはほぼ西野だけになっていました。
  • ですので、前監督が念頭におくような、「守備側がマンツーマン、1v1の関係を作ってボールを持っている選手を捕まえてくるような試合展開」において、マークを外してフリーの状態を作ってボールを保持したり敵陣に侵入したり…という役割はほぼ西野1人の状況判断やポジショニングに委ねられていました。

  • 開幕当初に目指していたチーム作りからすると、やっていることはややスケールダウン感、現実的なところに落ち着いた感はありますが、25節のvs長崎では、西野をいつもの右ではなく左DFとして起用し、長崎のFWマテウスジェズスとマッチアップする形を”わざと”作り、西野がそこから移動してマテウスのマークを外すことで、コンサはビルドアップにおいて極めて優位な状況を作り出すことに成功します。
  • この西野のポジショニングによってフリーの選手を作ろうとする試みは、柴田監督体制でも踏襲されます。
  • しかしその後、宮の離脱で3バックが西野、浦上、髙尾となったこともあってか、西野が担っていた役割は右DFの髙尾が務めることが多くなります。
  • 基本的にサイドの専門家である髙尾は西野ほど効果的なポジショニングにならないことも少なくなく、またチームとしても岩政前監督体制の末期に見せていたような狙いは徐々に希薄になり、「単に髙尾が通常よりもイレギュラーなポジショニングをしているだけ」になっていたと感じます。

4バック期は自転車操業状態:

  • 5節以降の、4バックのシステムを採用した際の配置は主に以下になります(メンバーは18節、vs仙台)。なお相手のシステムや特徴次第でこちらの配置や狙いは異なりますが、この4バック採用期間はたまたまですが、相手も4バックベースのシステムの採用が多く、コンサがとる配置も必然と似たものとなっていきました。
  • コンサのシステムは1-4-4-2、2トップで表記されることが多いですが、ボール保持の際の配置と役割は1トップ、インサイドハーフ2人、アンカー1人の1-4-1-2-3のシステムがより実態に近くなります。
  • 冒頭に書いたように、3バックの頃と比べ、4バックの採用期は選手間の距離が広めで、ポジションチェンジが少なめという差異がありました。
  • おそらくこれは監督がそうした形に意図的に調整していた部分と、あまり意図的ではなく必然とそうなった部分とがあるように思えますが、ポイントとしては
  1. マークを外したりフリーになる手段としてポジションチェンジを採用しないので、「最初から相手選手に捕まりにくいポジション」を取る必要がある → 相手選手から遠ざかるようにワイドにポジショニングする等
  2. 開幕当初に比べボールを簡単に手放す(≒ロングボールを使う)局面も増える(特に家泉の起用)ので、ロングボールが飛んでくる前提で受け手が離れた(広がった)ポジションングを意識する
  • といったことがあるかと思います。

  • ポジションチェンジが少なくほぼ決まった配置でプレーするということで、一般論としてまずセオリーというか、望ましいボールの動かし方や相手の狙いどころがある程度定まってきます。これは簡単にいうと、①ピッチのサイドではなく中央を使ってなるべく展開したいということと、②相手選手の間に立つ形の選手をうまく使いたいといったことになります。
  • また一般論ではなくそのチームの特徴を踏まえたやり方も定まってきます。要はピッチ上の11人の中に特に優れたクオリティがあり、違いを作れ、味方から信頼される選手がいればその選手にボールが集まりがちですし、逆にそうではない選手がいれば他の選手にボールが集まるとか、そういった状況もよく見られます。

  • この時期のコンサの場合、頻発していた現象としては、まずピッチの中央を使いたいのになかなかそこに縦パスが入らないということでした。
  • ピッチの中央というのはこの仙台のように、相手が1-4-4-2のシステムで守っているとすれば2トップの背後、相手の中盤センター2人の間になります。この付近でコンサの選手がボールを受けて前を向ければ、中央から右にも左にも展開しやすい状況となり、守る側が考慮しなくてはならない領域を増やすことができるためです。

  • 縦パスが入らないのは色々ありますが、まず①単純に相手もそこが狙い(セオリー)だとわかっているから警戒し対策しており、そこを上回る仕掛けや仕組みがないということが言えます。
  • 次に②出し手のCBやGKがあまり中央を狙う意識が強くないとか、技術的に不足しているということも挙げられます。特にGKは高木と菅野でこの中央にパスを出す能力や意識には明確に差があり、菅野は中央よりもサイドのフリーの選手を狙うことが多いと感じます。

  • そして③受け手が中央で我慢せずに移動してしまうとか、本来受け手になる選手が別の役割になってしまうこともあります。
  • これは大﨑や荒野が中央でアンカーの役割の際に多かったのですが、CBの家泉からの縦パスをその前で待つのではなく、大﨑自身が家泉の近く…つまりCBの位置に移動して、縦にパスを出すなど本来CBがやる仕事を大﨑が代行するような構図が、この時期に4バックを採用している試合で頻繁に見られました。
  • 発想としては家泉のようなCBの選手が前にボールを運ぶことが得意ではないとしたら、MFなどより得意な選手がやればよりうまくいく、という発想で、日本サッカーでは以前からよく見られるやり方ですが(それこそミシャ元監督の、MFが下がってボールを持つ形も発想は同じ)、これをやると本来MFとかアンカーとしてより前でボールを受けたりプレーに関与する仕事を遂行する選手が欠落してしまいます。

バカヨコのポストプレーの是非:

  • こうした、4バックの採用時にコンサのDF〜後方のMFのところで生じていた現象(MFがCBの仕事を代行してMFが本来担う仕事が不十分になる)と密接に関係していたのが、バカヨコがFWの位置から下がってボールを受けようとする振る舞いでした。
  • 要はFWとしては、本来は最前線で、相手ゴールに最も近いところで味方のパスを待って文字通りフィニッシュの部分で仕事をすることが役割ですが、待っていてもボールが来ない、後ろから前に運ぶことに苦労しているし、何なら本来MFの選手(DFとFWの間をリンクさせる選手)が持ち場からいなくなっているので、バカヨコが本来の最前線での役割だけでなくそうしたMFの選手がやる役割も担わないと回らない、という判断に基づくものだったでしょう。

  • 但しこの役割にあまり執心してしまうと、今度は本来のゴール前にいてシュートを放ったりシュートチャンスに関与する仕事が疎かになってしまうということで、岩政前監督がバカヨコに対しこの点は熱心に指導というか要求していたようですが、なかなかフィットせずバカヨコは3度(3期間)スタメンを外れてもいます。

  • コンサ以外でバカヨコがプレーしている場面を見たことがないので、彼が本来どういった選手なのかはよくわからないですが、もしかするとセンターFWというよりは所謂9.5番タイプ(カントナ、シェリンガム、ベルカンプ…)なのかなと思っています。
  • それでもシーズン半ばには↓のような、ポストプレーで終わるのではなくそこから次のアクションに移行してフィニッシュに絡むプレーも見せ始め、前監督の要求にフィットしている様子が見えたのは明るい材料ではありました。

3.3 敵陣でのボール保持(相手ゴール前での崩し)

いきなりの洗礼と問題提起の妥当性:

  • このシーズン下位に沈むこととなる大分との開幕戦を0-2で落とすというスタートを切ったコンサ。岩政前監督の「J2らしいサッカー」というコメントも飛び出しましたが、大分はボールを捨て気味にしつつ自陣でコンサの攻撃をどう封じるかを準備してきました。
  • 特にシステム1-5-4-1でゴール前に選手を多く配置した上で、ワイドの近藤に対し常に2人…システム1-5-4-1の5と4にあたる列の左端(左WBと左シャドー)、場合によっては左CBのデルランもカバーリングに回る3人での対応を用意していました。
  • まさにこうした状況が、岩政前監督が問題提起している「あらかじめ決められたことや監督に指示されたことだけをやるのでは頭打ちになる」という話の一例でもあります。
  • そもそもワイドに1v1に強い近藤のような選手を配置するのがモダンフットボールにおける定番の一つだとすれば、そこに2人で対応できるよう準備するのも全く珍しい話ではない。トップを目指すならば全て想定の上でチーム作りをする必要があります。

予測困難性とそもそもの適性:

  • 相手ゴール前での取り組みとして、まずビルドアップから繋がる話ですが、前線の選手も決まったポジションを取らず(決めすぎず)に相手を見ながらプレーしていくという考え方はシーズン当初にはあったと思います。
  • ビルドアップについての内容で言及しましたが、3バックの1-3-4-2-1の採用時はDFが右サイドに移動する形から始まるとして、その前方にいるウイングバックの近藤はワイドに張ってDFと縦に重なるのではなく、中央方向に移動してFWに近い、殆どシャドーのようなポジショニングからスタートし、最終的に前線でボールを受ける際も中央寄りの位置になる状況がよく見られました。(↓は4バックの1-4-4-2を採用した11節のvs大宮ですが、この時も中央寄りのポジショニングが目立った)
  • 但し、近藤がこうして中央寄りでプレーしていた際に、何らか彼にボールが渡って前を向いたとしても、そこから繰り出すプレーは本来得意とするプレー…相手との間合いを測りながら加速して縦に突破するというものがほぼ大半でした。
  • 要はシャドーのようなポジションでプレーしていながら、繰り出すアクションはあまり幅がなく、例えば味方とワンツーで抜け出したり、スルーパスを出したり、前が空いていればミドルシュートを狙ったり、ファーサイドにアーリークロスを狙ったり…といった選択はあまり見られませんでした。
  • これは大半のプレーが右足で行われることもおそらく影響しており、ボールを持った時に中央よりもサイド方向、ピッチの狭い(かつ、彼が本来得意とする)方向に自然と向かいがちで、正直なところあまり特徴がポジティブに発揮されている印象はありませんでした。

ファンタジスタが活きる条件:

  • 岩政前監督は就任当初から「ファンタジスタ」について何度か言及をしており、それは単に好きだから、に加え、冒頭にも書きましたが相手が対策を打ってくる中での打開策の一つになり得ると考えていたこともあると思います。

  • 具体的な選手として青木や田中克幸の名前が出ていましたが、ファンタジスタというかシャドーや攻撃的MF、トップ下タイプの選手くらいに考えておいても問題はないでしょう。
  • 克幸はこのシーズン、岩政前監督体制で11試合に先発の機会を得ており(うち7試合が前線起用)、一定のチャンスは与えられていました。
  • 但し彼のような選手が相手ゴール付近で何らかの仕事(↑で近藤について書いたようなスルーパス、ミドルシュート、クロスボール…)をするにはそもそもボールが届けられることが必要になりますが、まずコンサはビルドアップに課題があったので、前線のシャドーにボールがクリーンに届けられることは稀でした。
  • クリーンではない状況…例えば前線に放り込んだボールを誰かが競り合って、誰かが拾ってマイボールにして、味方も相手もポジショニングや準備が整っていない状況で前線の誰かにパスをして足元に収まる…というような状況だと、ファンタジスタというよりはそれこそ近藤のようなフィジカルに優れた選手の方がより特徴を発揮できる状況になります。

  • ファンタジスタが活きやすい条件としては、上記のそもそも足元にボールが届けられるということに加え、当該選手が相手DFを剥がしたり(ドリブルなどで)、外したりといったアクションがそこまで得意ではないとしたら、何らか相手DFのマークが外れている状況を作る必要があります。
  • これは相手とのシステムの噛み合わせなどでマークが外れやすい状況を作ることもできますが、一番はビルドアップの際に簡単に蹴るのではなく相手を引きつけるアクションが全般に必要になります。これを全て話すと流石に長すぎるので詳しくは↓も見てください。

「ポケットを取る攻撃」のメインキャスト:

  • 岩政前監督が就任当初から言及していた「ポケットを取る」。これも氏の独自性というよりはモダンフットボールにおけるトレンドの一つですが、おそらくこのシーズンにボール保持に関して取り組んだ中では最も成果があったアクションになるでしょう。

  • 10年以上前から「ハーフスペース」という言葉が流行って、それは守る側が4バック系のシステムだと典型的な配置としてDF4人がペナルティエリアの幅くらいにポジショニングし、この(初期)配置を念頭に置いた上でSBとCBの間が開きやすくかつ戦略的に重要だということで、攻撃側はここに選手が入っていく…という現象が頻発しましたが、近年は5バックにするとか、前の選手が下がってくるとか、その2つを併用するとかで簡単にこのエリアを開けるチームはほぼ見られなくなっています。

  • ポケットを取る攻撃が最初に狙いとして見られたのが、ジェフに完敗した4節でした。シーズン終盤にはジェフとコンサのパワーバランスは完全に逆転しており、久々の昇格に向けて走るジェフがフクアリでコンサをワンパンしましたが、4節ではコンサに対しジェフが5バックで撤退する時間帯が多くなります。
  • この試合では↓のような形が何度か見られましたが、
  • こうした形が発現していくには、
  1. サイドの高い位置に3人がいる(人とボールが押し上げられている)
  2. 1人がワイドに張っていて出し手になれる(スペースがあまりない中でも狙うなら、特に浮き玉のパスが重要)
  3. 後方の被カウンターの危険性が排除されている
  4. コンディション(走力)
  • みたいな要素が必要条件になってくるかと思います。
  • まず左サイドだと、この試合はシステム1-3-4-2-1の左シャドーに入っていたスパチョークの関与が目立っていました。最初にスパチョークが降りてきて、試合途中からマンツーマン気味に対応するジェフの右SB高橋がついてくる。
  • 彼の他に、この試合常にワイドに張っていてた田中宏武と攻撃参加を好むDFの中村が左サイドにおり、それぞれワイドの出し手とポケットに走る仕事を担えますが、スパチョークは両方の役割ができ、田中と中村を走らせつつ自らもポケットに走る。前監督が重要だとしたパターンではなく仕組みというか、予測困難性がこの時は存在していたと思います。

  • 右サイドのキャストは髙尾、近藤、馬場。この試合、近藤はワイドに張るようになり、髙尾がそこまで、中村ほど攻撃参加を見せず自重する中で、72分まで出場した馬場の度々のランはとても印象的で、今年はこういうシーンがチームとしても、また馬場個人にもたくさん見られるかなと予感したことを記憶しています。
  • この試合は右シャドーで出間が先発出場し57分までプレーしました(結果的に彼の唯一の先発機会でした)が、出間はあまりこの右サイドでの局面に関与しなかったと記憶しています。

  • そして改めてですが、この4節を最後にコンサは4バックの1-4-4-2のシステムに移行します。
  • 右サイドのキャストはこの髙尾、近藤、馬場で、馬場が退場&負傷離脱する9節(vs水戸)まで変わらず。対する左サイドはスパチョークがFWに移って青木が左MFとなったり、SB候補が軒並み離脱して高嶺がSBになったりとします。
  • 右サイドは割と走力のある選手が揃っており、かつ互いに特徴やプレーの間合いをある程度知っているとして、左は高嶺、青木だと味方に渡してスペースに走るというよりは自らボールを持った状態からアクションを起こすタイプであることもあってか、「ポケットを取る攻撃」が希薄化していたたのは左サイドの方が先だったかと思います。

  • 10節(vs藤枝)では、左SBパクミンギュが復帰したものの、中盤センターに青木と西野、FWに田中克幸とメンバーもかなり変わったこともあって、この辺りからサイドで3選手が関与するような局面はかなり少なくなりました。

  • おそらく直接得点になったと言えそうなのは、近藤のアシストからのバカヨコの得点となったこちらでしょうか。これもポケットというか裏狙い?かもしれませんが、髙尾、馬場、近藤が同じサイドに集まって抜け出す選手を変えながら浮き玉を使って…という点では一定の狙いは感じます。

逆足選手を有効活用できず:

  • ポケットを取る攻撃だけでなく敵陣でのプレー全体において言えるのは、一つはボールを保持しながら前進したいとの意向がありながら、ビルドアップでクリーンに前進する形を殆ど作れないため、最終的にはロングボールからの展開などで不器用に前進し、その状態(整っていない状態)のままプレーしていたことが挙げられます。
  • 序盤こそコンサ相手にボールを渡して撤退してくるチームがいくつかあったものの、シーズン途中からバレてくると撤退してボールを渡してくれるチームはかなり少なくなりました(その後、柴田監督体制で甲府、徳島、大分、といったチームと対戦すると、それらはまたボールを渡してくましたが)。

  • 加えて、右サイドで髙尾、馬場、近藤だと3人とも右利きで、かつサイドで縦方向へのプレーが多くなっていましたが、3人で同じような位置を狙うとするなら、人やタイミングが変わることで変化をつけることは可能にせよ、守る側としてはやることは見えやすかったと思います。
  • 何らかここに左利きの選手が1人いる等によって、イメージとしては下の図の青い線のような方向にも展開できる余地があればより守る側が難しい状況になっていたかもしれません。

ウインガーがいない状態での4バック+ワイドなポジショニング:

  • 先に書いたように、岩政前監督のチームでは3バックの方が選手間が近くポジションチェンジや役割の交換が活発で、4バックの際は選手間の距離が遠くポジションチェンジが控えめでした。そしてボールを持っている時のシステムは1-4-4-2というより1-4-1-2-3に近いのが実情でした。
  • まずこの1-4-1-2-3について、松田浩さん(直近はガンバ大阪フットボール本部長)が以前著書で一般論として述べていたのは、
  1. 選手間が広く選手が密集してワンツーのようなコンビプレーを発揮するとか数的優位を作るような振る舞いにはあまり向かない
  2. どちらかというと1v1で仕事ができる選手(簡単にいうと個人能力、クオリティがあること)が必要
  3. またピッチを広く使える能力(遠くの味方へのロングパスの強さと正確性、スペースに走る足の速さ…)が必要
  • なので、日本の選手が一般に小さくて馬力がなく小回りがきく…といった特徴があるならあまり向くやり方ではないので、積極的に採用しなかった、と説明していました。

  • 岩政前監督は4バックのシステムの採用について「3バックよりも4バックの方が向く(または、3バックでは適性ポジションがなく4バックならありうる)選手が何人かいそうだと思った」と語っていましたが、該当者として具体的に名前が挙げられた数少ない選手が中村桐耶でした。但しこれは「3バックでも4バックでもCBでは物足りないので、SBのポジションがある4バックの方が起用をイメージしやすい」という消極的な理由でもありました。
  • 彼以外にあまり名前を挙げて詳しく説明される選手は見当たりませんでしたが、上記の3バックと4バックの違いを考慮すると家泉なども該当するのではないかと予想します。
  • となると前線の選手の都合というよりも、当時故障者も多かったDFの選手をなんとか組み合わせて最適解を見つけるにあたり4バックのシステムに行き着いたということになります。

  • 前線の選手に関していうと、改めて松田氏が言うには「ワイドで1v1で仕事ができる選手が必要」。
  • コンサが4バックの際にワイド(サイドハーフまたはウイング)を務めたのは、右は不動の近藤、近藤が離脱時には白井。左は青木が最も多く、スパチョークが先発4試合、他、原、長谷川と中村もわずかに左MFで起用されました。

  • 4バックに変えた1試合目の5節(vs秋田)では、カットインから青木の美しいシュートで得点が生まれますが、ウイングの選手に期待したいのは、このようにワイドに張って前を向いてボールを受けて、1v1の状況なら対面のDFと勝負してフィニッシュに持ち込むというもの。

 

  • この試合では1ゴール1アシストで圧巻のパフォーマンスだった青木ですが、これは対戦相手の秋田としては、コンサが4バックに変えて初見で出方がわからず対応が難しかったこともあったかと思います。
  • 徐々に対戦相手がこれにも慣れてくる中で、本来ワイドで1v1で勝つタイプではない青木が以後、ウイングらしいプレーを見せてくれることは稀で、また岩政前監督もこの特性を理解して中盤で起用したりとなります。また宮の沢でのトレーニングでは、青木は左MFの配置ながら下がったり中央に入って行ったりと、左ワイドでの仕事にこだわらなくてもよい様子でしたが、おそらく前監督としてはなんとか選手の特徴を活かそうとしていたのかと推察します。
  • そしてスパチョーク以下他の選手も解決策になることができませんでした。ですのでコンサはこの4バックのシステムにおいて、まず左ウイングに候補者が何人かいたもののフィットする選手がいなかった、ということが指摘できます。

  • 右はほぼ近藤の定位置で、近藤は青木とは特徴が異なり、足の速さやクイックネスが特徴で1v1でより勝負できる選手かと思います。
  • 一方で近藤は大半のプレーを右足で行い、右サイドのみでプレーするため、ボールを持った時にほぼ毎回同じ方向にプレーする。ドリブル突破が成功したとして、右サイドのタッチライン付近で体がゴール方向というよりゴール裏方向?やコーナーフラッグ方向を向いていることが少なくないため、そこから自身が直接ゴールに向かうプレーに移るというよりは、中央方向にクロスボールを折り返す形でのフィニッシュになります。

  • そして白井も近藤と比較的、似た特徴を持っている。ですのでチームの攻撃として見た時に、右サイドからの攻撃はクロスボールの精度が重要になるのですが、クロスボールを蹴る選手としてはそこまで優秀ではないと感じます。
  • このシーズン、近藤は5アシストを記録していますが、ワイドに張ってからのクロスボールからFWの選手に合わせた形としては17節(vs鳥栖)のATに生まれた中島の得点のみで(↑のvs愛媛でのポケット侵入からバカヨコへのアシストもクロスボールといえばクロスボールだが、ここではよりワイドに近い位置でのプレーを念頭に置かせてください)、前のシーズンから感じていたところですが、ワイドに張って仕事をするというよりは中央に入ってよりゴール前での局面に関与するプレーの方が目立ちます。

  • ですのでコンサは左サイドだけでなく右サイドも純粋なウインガーと言えそうな選手が見当たらず、この点が4バックのシステムに移行した後の問題点の1つだったと言えると思います。
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思ったよりも長くなって書いていて疲れたので一旦ここで切ります。
次回はボール非保持の際について言及します。

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