2020年8月27日木曜日

2020年8月26日(水)明治安田生命J1リーグ第29節 横浜F・マリノスvs北海道コンサドーレ札幌 ~甘い響きが意味すること~

0.スターティングメンバー

スターティングメンバー&試合結果
  • 久々に札幌のスタメンを当てました。それはどうでもいいとして、ジェイは保坂記者によると「精神的に安定せず」メンバー外。
  • マリノスは畠中が復帰。ターンオーバーはティーラトン→高野、喜田→和田、右に松原、そして仲川→相模原への育成型期限付き移籍から復帰した松田。近くにJ2やJ3のクラブがあるっていいですね。

1.基本構造

1.1 マリノスの札幌対策(1):定番化するサイド封鎖

  • 前節から中2日ということもありますが、清水戦に引き続き、またもタイキャンペーンにもかかわらずチャナティップのみが先発出場、ティーラトンはベンチスタートでした。ティーラトンのコンディション以外にも考えられるのは、札幌の攻撃のキーマンである対面のルーカス フェルナンデス対策です。
  • 札幌のルーカスの活かし方は、自陣でボールを奪ってからルーカスが右サイドを駆けあがり前線にオーバーラップ。この時、ルーカスはその場に止まってというより、前方に走りながらボールを受けます。止まっていたらその間に相手が戻ってしまうためです。「ショートカウンターをしたい」と言いますが、ロングでもショートでもともかく相手の守備が整う前にフィニッシュに持ち込むことが重要です。
  • なので、ルーカスが走り込みながらパスを受けられるスペースが必要です。相手選手がルーカスの進路に立っていたら、この札幌の狙いとする形は成立しなくなります。
  • マリノスは高野をここ(ルーカスの前方)に常に立たせます。高野はルーカスを追い越さず、かつ大外のレーンから逸脱せずにプレーします。ティーラトンはタイ代表ではプレーメーカーっぽい役割を担ってもいましたが、中央に入って中盤の選手のようにパスを散らしたり、前線のアタッカーが勝負できる「シュートの2つ前のパス」を供給するのが持ち味で、ティーラトンだとどうしてもルーカスの前のスペースを空けてしまう、ということを考慮したのだと思います。これは前回対戦の状況からも明らかですし、また川崎の札幌対策も参考にしたかもしれません。
右サイドを封鎖されると札幌のショートカウンターはスピードダウン
  • ルーカスはこの試合、キックオフから20分以上殆どボールタッチがないまま時間が経過します。前半ルーカスが仕掛けられたのは、飲水タイム後の24分過ぎのプレーと、終了間際の2回だけだったと記憶しています。

1.2 マリノスの札幌対策(2):優位な土俵へ

  • 札幌は「全員で基本的にマンマーク」ですが「オールコートマンマーク」ではありません。ピッチを縦に区切った時に、マリノスゴールからの1/3(札幌にとっての「ゾーン3」と言います)は捨てて、ピッチを中央の1/3(ゾーン2と言います)で待ち、マリノスがそこにボールを運んでから人を捕まえて1on1での守備を展開します(プレスというか、「守備」と言った方が正確)。
  • 但し、相手ゴールキックからリスタートする際などはZone3からスイッチを入れることもあります。
Zone2で待つ札幌
  • 何故常にZone3から仕掛けないかというと、一つは単に疲れるから。走る距離を限定して体力を温存したい。真夏の横浜では間寛平さんのような特殊な人を除くと、人は90分走り続けられない。
  • 二つ目には味方を密集させてスペースを消したいから。1on1が基本と言っても1人で全部対応して止めるのは不可能ですし、その1on1で守備をするにあたっても攻撃側が使えるスペースが少ない状況の方が守備側が有利なのは、サッカーの原則として不変です。
  • そしてもう一つは、そもそもこれを何のためにやっているかと言うと、奪った後で速い攻撃を仕掛けて相手の守備が整う前に攻撃したい。そのための必要条件は、速い攻撃ができる選手がピッチ上にいること(武蔵ならベストだが荒野やルーカスもまずまず速い)と、相手のDFが相手ゴールから離れていたり、すぐに守備に切り替えられる状況になっていないこと。
  • 仮に札幌が「マリノスゴール側のペナルティエリアのすぐ近くで、荒野と駒井が攻撃参加できる状態で」ボールを奪ったとします。この時、畠中とチアゴ マルチンスが相手ゴール前にいて、札幌のボールホルダーにすぐアタックできる状態だと、場合によってはもっと遠くでボールを奪うシチュエーションよりも得点の期待値は高くならない。それは、札幌はマリノスゴールに近いけど、マリノスもそれなりに守るための準備が整っていると言える状態だから。
  • ミシャはコンサラボの取材メモでは以下のように語っていたとのことですが、これは言葉足らずなところがあって、「とにかく前で奪えればゴールへの期待値が高まる」というものでもない。どのようなシチュエーションを作ってボールを奪うかはより緻密なもので、好例は昨年4月の対戦での札幌の1点目(マリノスのCBが動いたところでアタックして速攻発動)等です。

  • マリノスの視点としては、札幌が待ち構えているゾーン2に安易に突っ込むのは推奨されない。ここにCBのどちらかが運んで、札幌がボール回収、CB1枚でネガティブトランジションに対処しなくてはならないのが一番危険な状態です。
  • なので、この試合見られた対策というかやり方が以下で、

バックパスで札幌の1列目を動かしてから起動
  • マリノスは札幌が守備をセットしている状態では簡単にゾーン2に侵入せず、一度バックパスをするなどして、駒井やチャナティップがマリノスのCBに向かってくる状況を作るようにしていました。
  • 以前に書きましたが、バックパスのシチュエーションでは相手は押し上げるのが基本です。駒井とチャナティップは、元々そのマーク対象が畠中とチアゴ マルチンスなので、押し上げることでこのマーク関係は特に問題にならないこともあって、セオリー通り押し上げてきますが、
数的不利の札幌の1on1の前提は覆えされる
  • そうすると↑の図のように必ずマリノスが数的優位な状況になります。サッカーにおいて数的優位は万能薬ではなく、この言葉や現象で説明できない要素は多分にある(少なくとも、どこかが数的優位ならどこかは数的不利になることは最低限頭に入れておこう)のですが、この場合の数的優位は大きな意味があります。
  • それは札幌がマンマーク基調の守備を展開するから。1on1で対処するので相手と同数の人数がいないと基本的には成立しません。もし、かつてのエトーやアンリのように、脅威的なスピードで2人を追いまわせるような選手がいれば別ですが、ここも人間の体力を考えると、一時的な解決策にしかなりません。
  • 同数の選手を用意できなくて1on1での守備が成立しないとどうなるか。駒井とチャナティップは守備組織から無力化され、フリーの選手がマリノスに生じ、前線にボールを運ばれ、広大なスペースがある状態でマリノスの前線4人が勝負する状況が生じてしまいます。
  • この試合、よくあるパターンは、必ず余ることになるパク イルギュがボールを保持すると、札幌は駒井かチャナティップがパクを追い込もうとする。駒井はセオリー通り、畠中へのパスコースを消しながらパクに向かいますが、パクは他の選手(図では扇原)を使って回避すれば、マークが外れてフリーになった畠中が前進できるという構図でした。
フリーの選手が易々と前進に成功
  • これも特段複雑なパターンでもないのですが、札幌は駒井の頑張りが単発で終わってしまうことが多く、荒野や周囲の選手がマークを投げ出して畠中の前進を阻止するような対応もなし。ポジションを入れ替えながら役割をシャッフルするマリノスへの対応が難しかったのは事実ですが、このゾーンの攻防では完全に後手に回ってしまいました。

2.問われ続ける覚悟

2.1 マルチタスクへの要求限界

  • 8分にマリノスが先制します。
  • 左の高野がルーカスとの対峙から、マルコス ジュニオールへの横パスでルーカスのマークから逃れ、抜け出しを図る。マルコスのパスで狙い通り抜け出し、扇原からのリターンパスで高野が抜け出します。
  • この時、札幌のゴール前はDFの枚数は揃っている。が、高野が抜け出すと、田中はマーク関係を崩して高野を捕まえなくてはならなくなる。抜け出した時点でマーク関係はリセットされます。結果、田中-ジュニオール サントスのマークを田中から福森にスイッチしますが、福森が切り返しで外されてジュニオール サントスの振りの速いシュートが菅野の右手を掠めて枠内へ。という展開でした。
  • まず高野が抜け出してルーカスのマークを外したプレーについては仕方ないというか、結局広大なピッチ上で1on1というと無数に選択肢のある攻撃側の方が有利で、守備側には限界があります(言うまでもなく)。ましてやルーカスは前で違いを生む選手なので、これは仕方ないと思います。
  • なので、高野が抜け出した瞬間にこれをうまく読んで前進守備で田中か、進藤があらかじめ絞って高野を潰せるとよかったのですが、それが叶わなかったので”単にマークをスイッチしただけ”になってしまった。
  • ただ、一つ言えるのは、マンマークの意識が強すぎるとこうした受け渡しやカバーリングに注意を払いながらプレーすることは難しくなる。田中が所謂スイーパー的に、マーク対象がいないならスペースや飛び出してくる人への警戒、対応は速くなりますが、田中はジュニオール サントス、進藤は前田を見るという非常に重要な仕事を、高野が抜け出す直前まで担っているので、ここも「仕方ない」(これが仕方ないのかそうではないのかは監督の要求水準によるでしょう)。
  • となると、結局このやり方は、ゴール前で相手の危険なFWにボールが渡るまでは許容、という、守備組織としては非常にザルな対応だと感じてしまいます。

2.2 問われ続ける覚悟

  • 私の解釈では、ゾーン2からのマンマーク基調のディフェンスで起用しにくいジェイと半ば”決別”した格好の、ミシャによるトータルフットボール。非常に語弊がありますが、38歳でチーム唯一の英語話者であるジェイの序列が下がるのは監督としてはそこまで難しい決断ではないのかもしれません。6シーズン在籍する副キャプテンにしてリーグ屈指のキッカーを外すことに比べては。
  • 前回7月の対戦で、私は高嶺の起用によるメリット・変化として、GK菅野の隣に高嶺を置いた状態からボール保持を開始できることを挙げました。
  • これが福森の起用で(これまで通りではあるのですが)、札幌は深井を落として4バック化する、前回とは異なる形でボールを保持してから攻撃しようとします。
  • このあたりのミシャの試行錯誤を2年半見ていると、簡単に言えば極めて優秀なキッカーである福森をどこに配したら最適解になるかというもので、それはフリーになりやすくてゴールになるべく近いところ、と考えたところ、そんなに動ける選手ではない福森がプレスを食らって自陣にくぎ付けになるよりは、最初から前において、そこまでボールを運ぶのは他の選手(深井ですね)に任せる。場が整ってから福森の1発のキックで敵陣にボールを送る、というのが札幌の得意のパターンでした。メインのボールの供給先は、強力な右ウイングの選手であるのは言うまでもありません。
  • この役割を与えていると、自陣でのビルドアップの開始時~敵陣侵入まではあまり仕事がない福森は、どんどん前に出ていく意識が強くなります。後は、選手特性というか、元々中盤でプレーしたいという意向があったということ、監督もDFの攻撃参加をほぼ全面的に容認していること等も”意識を強める”要素に挙げられます。
ボール保持時のポジションチェンジが多すぎるとスムーズに守備移行できなくなる
  • ここで、サッカーは攻守が一体的であり表裏の関係にあることを改めて考える必要があります。マリノスの高野の振る舞いと比較するとわかりやすいかもしれません。高野は対面のルーカスを殆ど追い越さない(先制点の場面が前半唯一だったかもしれません)し、持ち場である左アウトサイドからも簡単に動かない。何故なら高野がルーカスを追い越して攻撃参加すると、「裏」の関係では、危険なルーカスの前にスペースがある状態になるから。
  • 一方、福森は行けるときにどんどん前に行く。その背後を守っているのは菅。時に田中。何が言いたいかというと、チームのベースとしてこの関係や、特定の選手に”自由”があると、チームとして決めていた約束事が遵守されずオプション、イレギュラー対応が多くなる。
  • 単刀直入に言えば、福森が本来担う守備面での役割(対面の松田を守る)が非常に曖昧になって、菅や田中が福森のカバーをすることになると、1点目と同じようにマークが頻繁にずれて「全員で1on1」というトータルフットボールの前提は覆されやすくなる(この話は長くなるので、残りは「雑感」に回します)。
  • 象徴的な場面が15:30頃にありました。ワイドに開く松田に、中央から福森がゆっくり寄せながら「俺が対応する」と菅に指示。しかし菅は福森を信用してないわけではないはずですが、松田を福森には任せず2人で対応する形で寄ってきます。この2人の関係性は当人にしかわからないですが、菅は守備で頑張れる選手なので、ここで行くのは俺だ、と思ったのかもしれません。普段そうしているため。
  • こうなると、例の「どこかで数的優位はどこかで数的不利」ということもありますが、いざ同数で対応するぞ!という時にどちらが対応するか、もっとシビアな判断を迫られた時に受け渡しの不全から簡単にやられてしまいます。

3.コストに見合った報酬か?

3.1 払いつづける過大なコスト

  • 試合前日に俺たちのコンサラボが明らかにしてくれたミシャの意図。

  • 感想としては「まぁそうだよね」というか、特に意外な話ではなく、サッカーはゴールから逆算して考えられるべきなので発想としては普通です。武蔵のようなクオリティのある選手がいればそこから逆算されますし、FWがジェイでも都倉でもフッキでも同様で、ジェイを活かすにはどういう攻撃や守備、チーム設計が考えられるか?逆にどういう制約があるか?という視点はミシャだけが持ち合わせているものではありません。
  • また言い換えると、「相手ゴールまで50mの距離があっても、(チャナティップのスルーパス等で)50mの距離をチャンスに変換できる武蔵がいないから、もっと相手ゴールに近づいた状態からプレーしたい」ということになります。
  • 以下に書く内容は、私が直接聞いた話ではないことや、インタビューでの説明による言葉足らずな要素をあまり考慮せずに書くものです。
  • 「もっと相手ゴールに近づいた状態からプレーしたい」…ここで違和感を感じる方は札幌サポーターのうちどれくらいでしょうか。
  • というのは、札幌は自陣でのボール保持の際はGK菅野が必ず田中や深井にパスするところからプレーを始めている。この時、菅野には他の選択肢…成功する/しないは一旦度外視して洗いなおすと、例えば前線のFWに放り込むとか、かつてよくソンユンが行っていた、進藤や福森へのフィードもあります。
  • 菅野はそうではなく意図をもってペナルティエリア内でパスを繋ぐプレーを選択している。繰り返しになりますが、前線にフィード、は簡単に成功するものではないですが、ここだけを切り取ると、札幌はあえて相手ゴールに遠ざかるシチュエーションからプレーを再開していることになります。
「武蔵がいないから相手ゴールに近づいてプレーしたい」ら別の選択肢もあるのでは?
(リスクを払い続ける対価はある?)
  • 「これがミシャのスタイルだから」で思考停止するのは別に構いませんし、ミシャの指摘する武蔵が得意とするようなロングカウンターと、自陣でのビルドアップから始まるプレーに求められる要素は別ではありますが、ロジカルに考えるとこのあたりのチグハグ感を非常に感じます。
  • 要するに、札幌は自陣からパスを繋いでもそれがチャンスに変換できるようなリソースに乏しいにもかかわらず、これを続けてGK菅野やバックラインに負荷(ミスが即失点になる恐怖)をかけ続けている。パスを20本繋いでから敵陣に侵入するのは、好きだからやっているのではなく、本来はリスクやコストに見合う対価が得られるためです。武蔵、ジェイ、ロペスが前線から消えた札幌は、そのあたりの対価を得られる状況になっているか。ここ数試合を見た限りは違うと感じます。

3.2 リソースの偏り

  • 札幌が、相手ゴールから遠ざかった状態から開始する攻撃では必ず特定の選手…チャナティップを経由します。チャナティップの足元で収める、反転して前を向く、スペースがあってもなくても前にボールを運び味方に供給する能力は札幌の選手の中で希少であり、これを代替できる選手はこの日のスタメンにはいません。シャドーや前線に例えば、三好康児選手のようなタイプがいればタスクを分散することも可能ですが。
  • 札幌は「トータルフットボール」と言いますが、このあたりのタスクは非常に個人の能力に拠るところが大きく、またその個人能力というリソースは偏って分布している。チャナティップの能力はピッチ上に散在しているのではないので、マリノスはここをケアすればかなりの脅威を削ぐことができます。
  • マリノスはチャナティップとルーカスが持つと、対面の選手が縦を切ってストップしてから松田や前田、時に中央のマルコス ジュニオールもプレスバック。複数人で囲まれると、速く攻めたいはずの札幌の攻撃はスローダウンして、「純粋なFWがいない中での消極的なクロス攻撃」で終わってしまいます。
  • 40分に松原のスローインが福森の頭上を越え、走り込んだ和田がクロス。虚を突かれた格好で菅野は完全に処理できず、最後はジュニオール サントスが押し込んで0-2。

4.2トップの圧力と散発的なアタック

  • HTに札幌は宮澤、深井、福森を下げてアンデルソン ロペス、ドウグラス オリベイラ、中野を投入します。先日の清水戦と同じく、純粋なFWの選手を2人用意して明確に2トップにし、チャナティップはより中盤の仕事をしてもらう、といった狙いだったでしょうか。単にアンロペやドウグラスの個人能力をチームに加えたい、という見方もまったくもって間違っていないと思います。
46分~
  • 札幌は前残り気味になる2トップの仕掛けからゴールに迫ります。50分にはロペスからドウグラスのシュートは枠外。
  • 2トップの仕掛けられる能力に期待して、速いタイミングでの放り込みが増えます。この2人は背負ってプレーすることもそれなりにできるので、前半に比べてゴールに向かう回数が増えます。札幌はマリノスにシステムを合わせてトップに2人、中盤を逆三角形で3人としていますが、これは札幌の攻撃時も同じなので、ロペスやドウグラス オリベイラにマリノスは1on1で対応する機会も少なくない。なので、トップに個で仕掛けられる選手を置いておくと、攻撃に転じた時に同数関係を活かしやすくなります。
  • ただ、この2人の仕掛けが成功すればいいですが、ボールをキープするというより好きなタイミングでどんどん仕掛けていくタイプの2人は、後方のMFやウイングバックを加えての攻撃参加とはあまり相性がよくない。中盤の選手が後方から攻撃参加するには、ポジションを上げるだけの時間が必要なのですが、ロペスもドウグラス オリベイラもあまり時間を作らないので、ルーカスと中野はひたすらアップダウンを繰り返すことになる。サイドの選手は、上がっても使ってくれない、そして攻撃の時間がすぐ終わってしまうのでまた戻らなくてはならない、と非常に厳しい状況でプレーさせられていたと思います。
  • 札幌は2トップで圧力をかけますが、相変わらずのオープンな展開で菅野が忙しい状況は変わりません。52分、マリノスのCKから、オフサイドラインを抜け出した畠中がワンフェイクで進藤を外して3-0。これで試合の大勢は決まりました。後は85分に仲川、ATにドウグラスの突破からロペスが決めて、両チーム1点ずつを返します。

雑感:甘い響きとバルバリッチ化するミシャ

  • トータルフットボールというよくわからない言葉は、それが何を指すのか明確に説明できる人は日本に数十人程度しかいないんじゃないかと思いますが、その甘い響きは「なんとなく」成功をもたらしてくれるもの、少なくとも害のないものだと錯覚させてくれます。
  • しかし実際にはミシャが新たに打ち出しているスタイルは、2020年のヨーロッパのトップリーグでも一部見られたようなものではありますが、ヨーロッパのトップクラブは札幌と異なり、ピッチ内外で全てにおいて突き詰め、競争を生き抜いているという事実は指摘しておきたいです。
  • 例えば、技術やメンタルに加えてフィットネス的な要素もハイクオリティで備わっている若手のトップレベルの選手しか(基本的には)獲得しないし、選手もピッチ内外で様々な制約や約束事による縛りを厳しく受ける。ピッチ上に「自由」は殆どないですし、それこそオフに餃子やラーメンを食べるのもご法度なくらいコンディション管理もされています。
  • そこまで突き詰めることで、時にオールコートで守備をしても90分走り切れる、試合が全世界に中継され相手が常に新たな対策を打ってきても対抗できるだけのクオリティを身につけている。これが現状で、単に監督が「こうやるぞ!」と旗を振っただけで一日にして成るようなサッカーではない。実現するために必要な条件を全て揃えないと結果には現れません。
  • 札幌は本当にその域に突入する覚悟はあるでしょうか。フロントは当然「ない」とは答えないはずですが、事実として、そうならばまず札幌の選手は福森だけでなく、ジェイ以外にも決別が近い選手が何人かいるよな、と感じます札幌の財政状況や全体戦略、これまでの強化コンセプトを考えると、それは到底無理な話で、今の札幌のピッチ上での戦いはこれまでのチームの成長サイクルとも矛盾するところに来ています。
  • 言い換えれば、シーズン途中で急遽方針転換を行ったことで、フロントも含めたチームとして100%の覚悟がない、総力戦になっていないままピッチ上で半端に改革の風が吹き荒れている。その不安定な状況を、トータルフットボールという言葉の甘い響き(そして、それに乗っかりネタを一時的に消費するだけの、普段札幌と関わっていない全国メディア等)が覆い隠しているように思えます。
  • 日本人はどうもキャッチフレーズが好きなようで、なんかキャッチーな(かつ、複雑で説明が難しい現象をわかったような気にさせてくれる)ワードが求められるのは日々感じているところではありますが。

  • ↑の話の付帯的な内容に過ぎないですが、グアルディオラも「ラスト20mは選手のファンタージーアを最大限に引き出す」と語っていたように、基本的に監督やコーチはピッチ上のすべてをコントロールできるものではありません(最近はそこも突き詰めて作り込んでいこう、とする考えもあるようですが)。
  • だから当たり前のことを当たり前に遂行するのとは別に、監督は選手の個性を引き出すことが求められますし、選手の個人能力に依存しない監督はこの世にいません。
  • 2018シーズンの札幌も、それまで全く逆ベクトルのチームの引き継ぎからスタートした故にシャドーやウインガー、CB中央を任せられる選手の欠如というスカッド上の問題がありながら、若手の成長や既存スカッドの強み(空中戦の強さや強力なクロッサーの存在)を活かしながら結果を残した。これがミシャの名監督たる最大の理由だったと思いますが、ここにきて、既存のスカッドとアンマッチな方向に進みかけていることが気がかりです。ここ数試合めっきり出番が減ったジェイのメンタルの問題は、本当に家族と離れていることやピッチ外の要素だけが原因ならいいのですが。
  • それは2015シーズンに野々村社長が「俺らが連れてきた選手使いこなせないならダメ」として監督交代に踏み切ったことと似たような流れに思えるのですが、5年後の未来はどこに向かうのでしょうか。

8 件のコメント:

  1. 横浜Fマリノス、ヴィッセル神戸、清水エスパルス、川崎フロンターレ、大分トリニータ、横浜Fマリノスとキーパーを含めてビルドアップが上手いチームとの対戦が続いたこと、怪我などでロペス、ジェイ、武蔵の起用が難しかったことが、0トップ採用の背景にあったと思います。
    そろそろジェイ、ロペスのコンディションも上がってきてドウグラスのポテンシャルも感じたので変化が出てくるでしょう

    ボックス内の得点力とハイプレスを両立できそうな選手として壇崎は面白い気がします。

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    1. 単に、採用理由はわかります。
      怪我はどうしようもないとして、メリットデメリットの兼ね合いなんですよね。本当にデメリットを打ち消すだけのメリットが期待できるか?という話です。檀崎選手はたくさん飯を食べてでかくなってほしいです。

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    2. 走れないけど特殊能力を持ったベテランに依存しきったバルセロナが無残な状態になったのを見るとジェイ、福森の武器を最大化したチーム作りはどこかでサイクルが終わるでしょう。
      ミンテもあと何年日本にいるのかわからないですし、今シーズンは通常のリーグ戦ではないので目先の結果より長期プランを意識した育成、実験の比重が高くなっている気がします。
      現時点では絵に描いた餅状態ですが。

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    3. バルサは札幌と違って世界トップクラスのカンテラがあり、加えていざとなればそれなりの資金調達ができるので新たなサイクルを回すことへの障壁が比較的低い。12年前がまさにそうでしたね。札幌の場合は新たなサイクルまではいかないにせよ、戦力の底上げをしたいみたいな話ならわかります。
      ルヴァンカップは結構多くのチームでターンオーバー要員が出るような位置づけですが、いくら賞金が減るとはいえ、リーグ戦をどこまで割り切っているのかは不透明ですね。

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  2. ミシャの取材へのコメントはpoliticalな面を割引く必要があると思います。もともとそういうものと自身が話されていましたし。
    率直なところは武蔵が抜け、ロペスはコンディションが上がらず、ジェイは厳しいとすると軸にするトップを決めかねる状況と思います。ジェイがふて腐れ気味な可能性はあると思いますが、ジェイを使っても厳しかったですし酷使もできないでしょう。
    普通に補強すれば良いのかとも思いますが、今年は財政的にも難しいのかと。また補強という点ではずっとジェイの後釜は獲得できていないわけで。ではどういう選手なら獲得できそうなのかとコーチングスタッフもフロントも含めて考えているのかと。
    ロペスのコンディションが上がって安定してきたら少し修正するのではないでしょうか。
    ここでばか正直に会見でジェイもロペスもコンディションがと言うのがベターとも思いません。
    浦和時代に原口元気をトップで使ったときもメディアにはいろいろ原口の才能とか屁理屈言っててオフに興梠を採りました。ミシャはフロントとも議論をした上でクラブ事情とかも汲んでいまの対外発言になっていると思います。
    そもそも佐藤寿人や興梠のようなトップを使ってきたミシャが荒野に満足しているはずもなく。チャナはともかく駒井に高い得点能力も期待してはいないかと。

    個人的には高嶺が完全復帰したときにどこでどう使うかでミシャの意図はかなりわかる気がします。
    小柏や田中の使い方からして、高嶺はも積極起用されるのではと(^^)

    あとトドやロペス投入後にどういう選択だったか記憶していませんが、荒野駒井チャナの前線に蹴ってもマイボールにはどうせできないことと田中の使い方から、菅野の第一選択が田中や宮澤になるのは普通と思います。
    トドとロペスの2トップでもビファインドだと狙われ過ぎてマイボールにならないのでは。
    トップに蹴れば良いと感じるのはコンサドーレがJ1で戦うときにハイボールに強いFW選手を抱えてきたからかと思います。恐らく補強時にもそういう重点だったと思いますし。
    田中だとゴールに遠いところから始まるわけですが、2018年を思い出していただくと分かるようにウチには本当に相手がガンガンプレスをかけてきても積極的にボールを受けられる選手は少ないですし。ルーカスにフィードだと狙われ過ぎるでしょう。

    大敗が続きお気持ちは分かりますが冷静にお願いいたします。
    いまの状況はミシャが積極的に選択しているというよりなかなか他の方策がないなかで2ndベストなり3rdベストを当てはめていると思います。




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    1. とりあえず。いえ、いつも通り冷静ですよ。どの辺が冷静じゃないと思いました?
      一つ伺いますが、浦和でもこうだった(原口がトップ)、というなら、その時もピッチ上でこのような変化がありましたっけ?

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    2. 「戦術、試合の分析、考察、検証、マッチレビュー」で、前から奪いに行ってショートカウンターのときの攻撃距離を短くする議論と、GKがどこに出すかにおける相手ゴールまでの距離を同列に議論するなど、冷静さを欠いているか、思い込みがあるか、ド素人なのかくらいしか解釈できません。
      そもそもGKがDFやMFに出すことは至るところで行われていますが話の始めは味方CFと相手DFのバランスでマイボールにならないことですし。
      「自陣からパスを繋いでもそれがチャンスに変換できるようなリソースに乏しいにもかかわらず、これを続けてGK菅野やバックラインに負荷(ミスが即失点になる恐怖)をかけ続けている」と強調されていますが苦笑するしかありません。
      サッカー経験者か分かりませんが、相当のリスクがあっても田中に出すもう1つの理由はマイボールにならないのに蹴ってしまうとみんなが休めないからですよ。相手に回されて揺さぶられて突破口が見えない状況は選手も肉体的に具体的に苦しいんですよ。
      「自陣でボールを奪われて即失点の恐怖感!」を言うなら、それを感じるのは具体的には菅野と田中でしょう。
      でも苦しいときに、マイボールにならないのに縦に急いで蹴ること(=急いでわざわざ相手ボールにし、わざわざ味方が休めなくすること)はフィールドプレイヤー10人を具体的に追い詰める訳です。
      言い方を変えるとボール保持側は、保持者とサポート以外は休もうと思えばペースダウンできますが、ボール非保持側は意図的には休めない訳で、常識的に考えて負荷をかけ続けているような議論ではないでしょう。
      冷静に考えておられるなら、疲弊しているときに、マイボールにならない確率が高いのに急いで蹴って相手ボールにするメリットって何でしょうか。札幌とはそういうチームだと思考停止されるならそれも良いでしょう。

      これで冷静に書いておられるなら、せめて「ご自分のサッカー観と違うからおかしい」的なことは雑感に書かれてはいかがですか?

      「このような変化」って具体的にどういうことでしょう?
      当時の原口と荒野だと五十歩百歩とも言えますし一長一短とも言えますが。
      どんなチームでもブレイクのないシーズン途中で戦術的変更幅を大きくすると混乱するのは普通と思いますよ。

      あとノノが一連のゼロトップをどう見ているかはノノラジでも継続的に聞いてください。
      サッカーのトレンドを先取りすることで、普通にやると勝てない川崎とかに勝てるように的な説明を何回かしてきています。あとロペスのコンディション問題も。
      もちろんこちらにもpoliticalな面はあるでしょうが、冷ややかに見ている感じではないと思います。いまのところ。

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    3. コメントが長すぎるうえにロジックがよく見えないので、
      読解可能な部分をかいつまんで、要点を絞ってお返ししますと、

      >話の始めは味方CFと相手DFのバランスでマイボールにならないことですし。
      →じゃあ、例えば前線によりロングフィードで競れる選手を起用するという考えはないのしょうか。そのあたりのバランスであり、セレクトであり、取捨選択ですよね。競れる選手を起用するとメリットもデメリットもある。荒野も同じ。本当にその差し引きは、現状がベストのバランスなのか、という意味です。
      それからロングフィードを競るのは福森や菅もターゲットになっていましたよね。
      後は、別に全部前線に放り込め、とは言ってませんよ。そういう選択も織り交ぜればいい、という意味合いです。この試合では、田中にまず出してから開始して目的を達成できそうな構造になっていたでしょうか?

      全体的に理解されていないようなので再度説明すると、「ミシャはポリティカルな発言をする」みたいなメタ的な思考で全てを整理しようとするのは違和感があります。
      あくまで答えはピッチ上にあります。ピッチ上の現象として何が起きているのか、その背景は何か。そのいいところや悪いところは何か等を「考える」とか「考察する」ためにやっているなので、いきなり「ポリティカルな~」とか、「浦和ではこうだから~」は、中身に乏しい話だなと思って触れませんでした。
      丁寧に申し上げますと、浦和と札幌は出発点もアプローチも違いますよね。同じなのは監督とスタッフの名前だけですよ。

      全体的に議論の前に決めつけや、思い込みが強すぎませんかね。

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