1.ゲームの戦略的論点とポイント
J2 10年目の山口:
- 前回の山口との顔合わせはコンサがJ2で優勝した2016年にまで遡ります。当時J3から昇格直後で、上野展裕監督の下、庄司、島屋、話題の三幸、小池龍太、福満といったまだ無名の選手たちが、ハマると相手をカラーコーン化してしまうような綺麗な崩しを時に見せるサッカーで旋風を巻き起こしましたが、その後は年間20位が2回、22位が1回(2020シーズンのため降格は逃れる)。2016シーズンの対戦時はいずれもジュリーニョ(スペースがあるオープンな展開が得意)の活躍でコンサが2勝しましたが、その時の印象もあってジュリーニョは後に山口でプレーすることになったのでしょうか。
- 2018シーズンには久々に現場復帰した霜田監督の下オナイウ、小野瀬、前貴之といった選手を操り山口史上最高の8位でシーズンを終えましたが、志垣良監督1年目の24シーズンの11位はこれに次ぐ成績。こうした数字を追うと、印象としては小規模クラブでも3〜4年に1回くらいチャンスとなるシーズンが来るので、何とかその時に勝負できるよう経営的には踏ん張っているという点では後発クラブの中では優秀なのかもしれません。
レノファ山口 雑感:
- 開幕戦はアウェイで甲府と対戦。1-3-4-2-1(1-5-2-3)のよくあるスタイルの甲府に対し、1-4-4-2であまりポジションチェンジを行わない山口はあまり中央を経由せずサイドのSBとSHにボールを当てて動かしながらも、最終的には前線へのロングボールが多かったのですがそのセカンドボールを何度も拾うことに成功し、甲府が自陣に下がって対応する局面も多かったと感じます。
- これは、山口は人というよりスペースを意識していて、特定のターゲットに蹴って収めるというよりは甲府の人の間に蹴って大きくクリアすることを難しくさせる狙いというか前提があるので、その間に最終ラインを押し上げてコンパクトにすることができているのでしょう。
- 雪の維新みらいふスタジアムでの対戦となった第2節は、長崎は左ウイングに松澤というスピードと突破力のある選手がいるので、山口は対面の右サイドで松澤を2人で守ることから設計されていたと思います。
- また相手のシステムが1-4-1-2-3ということで、1-4-4-2をベースにしつつも2トップが前に出て長崎のCBにpressingを仕掛ける時は、山口は中盤2人のうち1人が前に出て1-4-◇-2に近い形を作って、優先順位としてはあくまで中央から簡単に展開させないという姿勢を見せていました。
- しかしこうしてサイドも中央も丁寧に守るとなると守備に割くエネルギーが多くなりがちで、また前線にすごく強烈なカウンターアタックができる選手を有しているとも言えない。そのため山口が仕掛けるタイミングはセットプレーやそこから続く展開以外だと、相手がかなりバランスを崩している局面などになってきますが、我慢強くそのチャンスを待ち続けて優勝候補の長崎を後一歩のところまで追い詰めた印象です。
- ここまでJ2全チーム見たわけではないですが、私が見た長崎、熊本、ジェフ、山形、仙台、徳島、大分、甲府、磐田、の中では1-4-4-2でボール非保持の陣形を組むチームはジェフ、仙台、山口で徳島は1-5-2-3と1-4-4-2の中間のような感じ、磐田は2トップのタスクとかキャラクターを見ると1-4-4-1-1のような感じでした。
- よく「pressing」と言いますが、文字通り相手に対して組織的に圧をかけてボールを持つとか、ボールを動かすことを阻害することを言います。単にたくさん走ればいいわけでもなく、また高い位置から走らなくても良いのですが、その意味では「pressing」はこれらのチームの中でも山口が一番上手い印象で、ジェフや仙台はどちらかというとブロックを作って相手のミスを待つ、一種の我慢強さが生命線なのですが、山口はより能動的にプレーして相手のミスを誘う構造を作れている印象です。
スターティングメンバー:
- 山口はスタメンは前節と同じ。サブは峰田→キムボムヨン、田邉→小澤で2人入れ替わっています。
- コンサはスタメンが西野→髙尾、パクミンギュ→中村桐耶、田中克幸→木戸。サブに岡田、青木、ジョルディ→原、バカヨコ。
- なお試合前に田中克幸が左膝外側側副靭帯損傷、フランシス カンが左ハムストリング肉離れで離脱が発表されています。