2024年4月14日日曜日

2024年4月13日(土)明治安田J1リーグ第8節 アルビレックス新潟vs北海道コンサドーレ札幌 〜緻密な要求水準〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:


  • 7節を消化したJ1。新潟は2勝3分2敗で乗り切っていますが、2勝は鳥栖と名古屋相手、加えてヴェルディに引き分け、磐田にはアウェイで0-2で敗れるなど下位予想のチーム相手のゲームをすでに消化しての結果であることは留意する必要があるでしょう。
  • 開幕直後に左SBの新井直人が広島に電撃移籍。ユニフォームを買ったサポーターに補償は絶対した方がいいんじゃないの、と思いましたがその左SBには堀米が入って、その堀米も負傷?で欠場でこの日は早川。前線は離脱中の鈴木が復帰間近との報道がありましたがFWは谷口、トップ下も高木が不在で長谷川。
  • コンサは長期離脱の深井と高木以外は基本的に全員戻ってきたとの報道で、おそらく復帰直後と思われるゴニなどは別にするとほぼこれからのシーズンの基本となるメンバーになるのでしょうか。浅野が久々に前線で起用され、近藤が得意の右に回ったのと、DFに引き続き菅を起用していることが特筆事項でしょうか。

 

  • ⇩YouTubeで配信もやってました。


サッカーは上手いけどあまり強くない新潟、サッカーは下手だけど残留はできる(かも)なひらがなこんさ:

  • 少し前にこんなことを書いたのですが⇩


  • ここでいう上手いとか下手というのは、主に⇩の②と③と④を構成するプレーの質を指しています。新潟は②に関しては今のリーグで明らかに最高の質を持っているチームで、③はそうでもないけど、③はそもそも多くのチームで似たようなところがあると思っています。

 

  • 一方サッカーとしては最終的にゴールを決める、守るというスコアに反映される部分が重要なので、上記の①ゴール前の強度…つまり決め切る、点を取る能力はなんらか必要だしGKも重要。跳ね返したり危険察知といったDFの能力も重要で、新潟はここが物足りないのでサッカーのうまさが順位に反映されにくい。
  • 一方サッカーが上手くないひらがなコンサですが、GKとセンターバック(の中央)、FW(浅野、ちょっと前までは小柏、アンデルソンロペス、興梠、その他…)の質や強さはまずまずなのでそれでなんとか最低限の順位を保っています。
  • あとは①②③④と書いて書き忘れましたが⑤セットプレー、も順位に反映される重要な要素です。


  • チームの特徴というかキャラクターからいうと、突出した個人能力はないけどチームでゲームをコントロールしつつボールを前進させるのが上手いけど最後のクオリティに欠ける新潟は、コンサからボールを取り上げてコントロールしつつ確度の高いチャンスを作って誰かに決めて欲しい。
  • 対するコンサは、プロセスはどうでもいいからFWにボールを渡して武蔵や浅野の能力を活かしたい。あとは岡村と菅野を中心になんとか頑張る。というチーム。
  • ゲームがオーガナイズされて落ち着いた展開なら新潟ペース、逆にオープンで落ち着かない展開ならコンサのペースという構図でした。


2.試合展開

仕組みは嘘をつかない:

  • 序盤は新潟がうまくコントロールしつつ、コンサ陣内のペナルティエリア付近に侵入して何本かシュートは放っていました。
  • 自陣でボールを持っている時の新潟の特徴は、サイドバックの選手に必要以上に狭いところでボールを渡さないようにしていたことでした。CBのトーマスデンとマイケルにコンサのFWがついてこないならCBがconducciónで運ぶ。ただ序盤はまだコンサのマンツーマンでの対応に集中力も体力もあるので、その際はGK小島に戻して小島のフィードから始まります。
  • 小島は中央にいる秋山か宮本がうまく顔を出せればそこに渡す。そのタイミングを合わせてSBが中央のスペースに出てきて前を向くことでコンサのマンツーマンというか人依存のpressingを剥がして当初目的を達成できていました。
  • もしくはそれが難しい時はFW谷口へのフィード。谷口はセンターFWとしては巨大な体格でもないのですが最低限競り合うことはしていて、セカンドボールに必ずトップ下の長谷川ともう1人が関与することで新潟は採算を取れていたと思います。

  • そして敵陣でウイングも松田と小見に渡したあとは、彼らは対峙する馬場や菅に対して正面からゆっくりドリブルで距離を詰めて足止めをしながら、右サイドでは藤原や宮本、左サイドでは早川と秋山の攻撃参加(コンサの馬場や菅の背後を取る)を待ち、タイミングを合わせつつ馬場や菅をウイングが引きつけてからパスすることで1対1で勝てなくてもサイドからチャンスを作っていたと思います。

  • このあたりは、サッカーは相手がいて、かつその相手は都度打ち手を変えてくるものだとはいえ、新潟は相手がどこだろうと関係ない段階としてのプレーモデルだったり、加えてマンツーマンで対応するコンサ相手にどう振る舞うかというゲームプランの面でも非常に整理されていて、この丁寧さは裏切らない、嘘をつかないものだと言えるでしょう。

  • 新潟の中盤とDFの選手がこの形になると、頻繁に追い越して前線に走ってくるので、マンツーマンのコンサにとっては後ろ方向に20mほど戻って対応するタフな対応を強いられます。ここでは青木と長谷川の両翼、特に青木が頑張って対応していた印象で、長谷川も得意の右に入ったことで簡単に背後を取られないようにはできていたと思います。


エースの個人技爆発:

  • コンサは開始15分、特に特筆するプレーもなかったのですが、武蔵が筋肉系?のトラブルで大森と交代。そして20分に浅野のスーパーゴールで先制する、いかにもこの試合らしい(形は作る新潟、個人技はあるコンサ)展開となります。

  • 新潟のそれと違って特にコンサにこういう狙いも繰り返しもなかったとは思いますが、サイドチェンジからこの試合、青木がおそらく初めてラスト30mでボールタッチ(菅野攻撃参加も初めてだったでしょう)。
  • 荒野がワンタッチでアバウトなパスを出して、大森が潰れたセカンドボールをダイレクトで浅野が叩き込む、というところでしたが、大森は武蔵よりはこのメンバーでの役割(潰れ役が必要、武蔵は潰れるだけでなくて裏抜けもしたい)をより整理していて、彼の粘りから生まれた得点でもあったと思います。

  • このゴールから10〜15分ほど?試合時間の20~35分くらいはややコンサペースになっていったと思います。
  • それは明確にこうだから、という理由をつけて説明するのは難しいのですけど、新潟はたとえば自陣ゴール前でコンサの選手が前を向いてボールを持つと距離を詰めて対応すべきか迷っていたような感じもしますし、また新潟のbuild-upが成功してコンサ陣内に入った後も、それまでの時間帯のように新潟から先に動いて仕掛けることに消極的になって結局仕掛けられない…という場面もあったりで、なんというか浅野の個人技爆発を見てコンサに対してやや警戒心を高めたような印象でもありました(あくまで印象というか極めて情緒的な味方でしたが35分くらいまではコンサペースだったのは事実だと思います)。

持ち直した理由:

  • 前半は最後にまた新潟が持ち直して0-1で折り返します。
  • コンサペースのオープンな展開のまま進まず新潟がコントロールを取り戻した理由を一つ挙げるとすると、コンサがボールを持っている時の対応が新潟は明確だったという点でしょうか。
  • コンサがいつもの形でボールを持つと、CBの宮澤のところで新潟はパスの受け手を消すような寄せ方をします。こうなるとコンサはよく(空洞化している中盤をすっ飛ばして)前線の選手に長いパスを狙うのですが、大森に出されるパスを新潟は読んでいて、トーマスデンとマイケルがインターセプトに成功していました。

  • コンサはこういう時によく福森からの対角へのロングパスで対処していて、この時も図示したように青木が左で浮いているのですが、距離があるのでここを1発で通すには相当な能力が必要になります。福森は選手としてはユニークすぎるのであまり名前を出したくないのですが、コンサは8年ほど福森にどっぷり浸かっていたので、なんというかまだ福森がいる前提のチームみたいな状態なのかもしれません。
  • あとは、GKの際に荒野が菅野の隣まで移動して開始することも2度ほどありましたが、こうなると荒野が中央からいなくなって完全に空洞化します。これだけでいいとか悪いとかは言いづらいのですが、一応そういう練習はなんらかしているのかもしれません。

緻密な要求水準:

  • 後半も特に構図は変わりませんが、コンサは55分に馬場も筋肉系か何かのトラブルで髙尾と交代。
  • 新潟は61分に松田→ダニーロゴメス。このダニーロは新潟のウイングの中で貴重な左利きで、スピードもパワーもまずまずありそうで自ら仕掛けることもできそうなのですが、チーム内ではせいぜいジョーカーという位置付けなのはおそらく戦術的な部分なのだと思います。

  • 先述のように新潟はウイングが相手のSBに対してゆっくりドリブルしながら、相手のSBに対して縦にもカットインにも行けるという間合いを維持しつつ飛び込めない状態を作って2人目の攻撃参加を促します。
  • コンサのDFが飛び込めない、じりじりと後退すると今度は交代した分中央にスペースができてそこへの横パスがシュートチャンスになる。プレミアリーグなどでたまにこのパターンからのミドルシュートでの得点を見たことがあるかもしれません。

  • こうした攻撃をデザインしていると、ウイングのポジショニングから、SBに向かってドリブルをするアングル(あまり高い位置をとりすぎると縦にいけないのでゴールに向かって斜めに入る必要がある、三笘がよくやるように)、ドリブルのスピードやコース取り、ボールの持ち方(松田は右利きだけど左足で時折持つことがあるのは右サイドでは左足に置いた方が縦、カットインどちらにも行けると見せやすいため)、自分で仕掛けるか味方を使うかの判断や使い分け、と細かいプレーの基準が決まってくるのですが、ダニーロはあまりそういうのを考えないでカットインからのシュートを狙っていたりで、新潟としては現状使いづらい選手なのでしょう。

  • ただ相手が前がかりになっている時に、前線の少人数でカウンターをするというのはサッカーにおいて極めて重要な要素なので、現状それができそうなのが新潟ではダニーロだとしたら、なんとかそういう選手を機能させたいところですし、コンサには浅野がいるから最低限の脅威を与えられているともいえます。

大森には不運、チームには幸運:

  • 75分にコンサは大森が2枚目の警告で退場します。ライブ配信中はちゃんと見れていなかったのですが、見返してもかなり微妙な判定で、チーム事情もあってチャンスを得たはずの大森にはかなり不運な判定だったと思います。
  • 1枚減って先に動いたのは新潟。長谷川→奥村、谷口→長倉で、構成は変えず前線ゴール前にフレッシュな選手を入れる選択としました。
  • コンサは1人減ってマンツーマンが成立しなくなるので最初から両ワイドが下がった5バックに切り替えます。実際はMFもFWも全員下がって9バックくらいで守っていたのですが、79分にその9バックの前から秋山が強引なシュートを選択し決まって同点。

  • この直前に、小見が左からのクロスボールを放り込んで早川がヘッド、菅野が40歳とは思えない反社…じゃなくて反射神経で掻き出すスーパーセーブがありましたが、新潟は数的優位となった段階でそれまでのように崩し切るのではなくて、崩していない状態から飛び道具で強引にシュートに持ち込む選択をとるようになっていました。
  • これは9枚で応戦するコンサ相手には選択肢としては正しいというか、コンサがマンツーマンでの守備をしなくなると新潟としては1人引きつけてももう1人カバーがいる、という状態になりやすいためです。

  • ですので1-1となってからのミシャの交代カードやそのタイミングは別におかしくなくて(3枚投入で時間がかかったし3枚先に入れていても構図は変わらなかったでしょう)。強引な手段に切り替えた新潟の判断が良かったと思います。
  • 最終的にはこんな布陣でコンサは時間を使い切って勝ち点1を持ち帰りました。⇩浅野を右WB(SB)に置いたのは、一応「中盤」という役割が存在するとしたらそこは3人でピッチ横幅に対処しないといけないタフな役割なので、寧ろ5バックの大外の方が5枚でスライドが楽だから、という考え方もあったかもしれません。


  • 繰り返しになりますが、コンサが最初から5バックをペナルティエリア付近に配して、そのすぐ前に3人のMFと、トップの小林もほとんどペナルティエリアでプレーしていた9バックになってスペースを消したことで、放り込み等の飛び道具がそこまで強くない新潟は有効打を失います。
  • ですので大森の退場がなくて同数関係が続いていたら、(まぁたらればに意味はないんですけど)守りきれていたかというと微妙で、むしろ退場者が出たことで新潟には困った展開でもあったかもしれません。

 

雑感

  • 主に老害系のコンサドーレサポーターの一部の方には、かの反町氏やダニーロじゃない方のゴメス氏の影響で新潟に対して敵対心や反感みたいのが根強いようですが、今の新潟はリーグで最も洗練されたプレーをするチームの一つで、反面コンサは反町氏の例の件から20年経っても(形態は違えど)まさしくギャンブルみたいなことをやっている状況を脱却できていないということはいつか認めて向き合わないと前に進めないでしょう。

  • 試合に関しては、言及した部分以外では、やはり浅野の能力を活かせるかがゴールを奪う上では重要で、おそらく右ウイングとしても浅野が一番能力があるのでしょうけど、現状浅野をそのような役割で使う余裕はないので早急に組み合わせを見つけるか、選手を発掘するか、我慢するか、という対応になるでしょうか。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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