2024年4月4日木曜日

2024年4月3日(水)明治安田J1リーグ第6節 北海道コンサドーレ札幌vs名古屋グランパス 〜わかっていなかった、という結論〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:




  • 中3日でミッドウィークに行われるゲーム。名古屋は前節負傷交代したFWの山岸とCBのハチャンレという、新加入ながらセンターラインでチームの軸となっている両選手を欠くことになります。
  • 最終ラインは20歳の吉田がそのまま中央に。前線はパトリックがスタメン起用で、永井をベンチスタートとしましたが、試合後のインタビューでは長谷川監督は「連戦なので悪かったらすぐに変えようとは思っていた」とのことです。
  • コンサは宮澤が負傷から復帰で、一部メディアでは岡村に代わってCBという予想もされていましたが、宮澤と荒野で中盤センター、馬場を右に回して髙尾をベンチスタートとしました。またサブには近藤が戻ってきました。


2.試合展開

荷が重い:

  • システムはお互いに1-3-4-2-1。名古屋は2トップもあるかと思いましたが、コンサが合わせるのではなくて名古屋が合わせる形でミラー布陣の構図となりました。
  • そしてJリーグのミラー布陣同士の試合であるあるなのですが、互いにパスを繋いだりボールを大事にしながらゆっくりと組み立ててプレーする…ということは放棄して、GKが前線に放り込む展開が主になります。

  • この構図のもとで試合の主導権を握るというか、優勢に進めることができたのはコンサの側。それは武蔵が名古屋のCB吉田を主にフィジカルの質的にかなり上回っていたから。コンサが後方からふわっとしたボールを放り込む間に武蔵と吉田が落下点付近でポジション争いを始めるのですが、武蔵が重心を落として吉田を押し込めばDFは簡単にぐらついてポジションを失ってしまっていました。
  • この競り合いの結果、コンサがクリーンにボールを回収するとまではいかなくても、放り込まれたボールをクリーンにクリアできない名古屋は5バックが下がってブロックを作り直す、ラインを引き直す対応に迫られますし、その間にコンサは押し上げて名古屋陣内に簡単に侵入できます。

  • なので名古屋としては、最終的に自陣ゴール付近で全部跳ね返せるくらいの自信があるなら、この武蔵と吉田のマッチアップを放置でもよいのですが、おそらくそこまでのクオリティは名古屋にはなくGKランゲラック頼みなので、普通に考えればこのマッチアップをどうにかしなくてはなりません。
  • 個人的には右CB三國(駒井とマッチアップはサイズ的にミスマッチ)を中央にして武蔵にあてて、吉田を右に回したほうが良いかと思いましたが、ここは名古屋は特に手を打たずにいました。結果、前半は一貫してコンサが武蔵への放り込みから押し込んでいたと思います。

FWの脇を埋める人:

  • 前線に放り込んで武蔵が体を張った後のセカンドボールはそれなりに拾えるとして、その後は相変わらず誰がシュートを打つか、どうやってシュートを打たせるかが整理されていなかったコンサ。そんな中で馬場のゴールで30分に先制します。

  • コンサはシャドーが駒井と小林で、小林はやはりボールを足元で受けるためにボールホルダーに寄ってきてボックス内にはあまり顔を出さない。駒井はパフォーマンスがその時その時でばらつきがあるのですが、この日は駒井も割と下がってくることが多かったかもしれません。その小林が空けたスペースに誰かが入ってこないと中央は武蔵1人になるのは見慣れた光景ですけど、先制点の場面は馬場がうまく走りこみ補完関係を作ることができました。
  • 結局コンサのやり方だとかつての進藤のようにDFがポジションを捨ててFWに近い位置まで入ってこないと、ターゲットが足りなくなるということの象徴的なゴールかもしれません。

多少はオプションがあったのは名古屋:

  • 対する名古屋は、コンサよりは「前に蹴る」以外のオプションを持っていました。 起点となっていたのは右サイド。三國が持ち出す余地を探りつつ、森島が引いたりサイド(WB和泉の前方)のスペースに流れて中村のマークを外して前を向けないか画策します。
  • これは森島が下がってボールを引き取る必要もあるし、最後崩しの段階では森島のハーフスペース付近へのランが必須だとしたら、この1人にかかる負荷が大きいように見え、狙いはわかるのですが崩しきるには至らないところでした。


  • そして前半の31分で名古屋はパトリックをあきらめて永井を投入。コンサは前にターゲットがいなくても適当に放り込むことが多いですが、名古屋はパトリックが下がると放り込む頻度はかなり減り、なんとかシャドーに縦パスをつけて打開を図っていたと思います。

わかっていなかったコンサ:

  • 後半コンサが前半ほど押し込めなかったのは、武蔵と吉田のマッチアップのところにシンプルに放り込むのを前半ほどしなかったから、というのが大きいでしょう。じゃあ何をしていたかというと、菅野は近くのDF(馬場や岡村)により丁寧にボールを渡していたようでした。
  • これは決して悪いプレーではないのですけど、事実として今のコンサは相手ゴールから80~90m離れたところからbuild-upを開始してロジカルにゴールに迫ることができる能力はありません。よって名古屋を助ける選択になったことは確かだと思います。

  • 54分に名古屋は和泉が右サイドで抜け出し並走する菅が倒してPK。森島が決めて名古屋が追いつきます。
  • この時は森島が引いて、永井が右ワイドに開いて、と名古屋は流れの中でかなりポジションを変えていて、コンサはボールサイドに人はたくさんいるのですけどその余っている人はボールウォッチャーでただ立っているだけ、というあるあるなパターン。
  • 最後、永井から和泉にスルーパスが出た時は、中央に名古屋は誰もいなかったしコンサは馬場がカバーできたと思いますので、菅のファウルは判断ミスというか、もっと上手く対処できたかなと思います。

  • スコアが動いた直後にコンサは菅と中村桐耶という左サイドの2人を下げて、高尾が右DF、馬場を左DFに回して、近藤が左WBに入るように変更。この交代は戦術的にはなかなか謎で、名古屋が前半から右サイドを突いてくるのがよほど気になった、としか思えません(毎度のことなのですがコンサ関係のメディアはこの辺を聞いてくれません)。

  • その後は名古屋は64分に倍井、山中→酒井、久保、81分に和泉、椎橋→内田、米本。名古屋のカードの切り方はリスク回避的というかバランスを維持して勝ち点1で御の字、という感じでしょうか。
  • コンサは70分に小林→長谷川、74分に宮澤→田中克幸。長谷川はワイドじゃなくて右シャドーで浅野を右ワイドに残したのは驚きでした。
  • 決勝点は90分に、田中克幸が狙った長いスルーパスを河面がカットしてワンタッチで永井へ。期待の田中カツでしたが、決まればハイリターンなプレーは裏目に出ました。ベンチワークにも同じことが言えますが、現状田中カツは中盤センターでスタートから使えるディフェンスやフィジカルがないけどなんとしても点が欲しいので彼のタレントに賭けたし、賭けるしかなかったというところでしょうか。

雑感

  • 本来、理想としてどういう風にプレーしたいか、という問題はあるとして、前半は武蔵が潰れ役として奮闘したことがコンサが今シーズン初めて優勢にゲームを進められた理由でした。結果的にはそれを簡単に手放したことで、飛車角落ちの名古屋と殴り合ってもゲームを決められないしそもそもシュートにまで到達すらしないというのが現状で、そしてそうした力関係もピッチ上で怒っていることも全体的にコンサはよくわかってない、ということがわかったゲームだったと思います。
  • まずはこうした現状を受け入れるしかないでしょう。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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