2024年4月21日日曜日

2024年4月20日(土)明治安田J1リーグ第9節 北海道コンサドーレ札幌vsサンフレッチェ広島 〜熊に空調〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • 故障者が戻ってきたコンサとは対照的に、広島は山﨑がシーズンアウトとなる重傷を負っているほか、ピエロス、マルコスジュニオール、荒木、エゼキエウ、茶島、イヨハといったスタメンクラスの選手が離脱中。
  • 開幕からスタメンだったピエロスと荒木の離脱には、前者は満田を前線に上げて中央に松本泰志、後者は右WBの中野を本来得意なDF中央にスライドさせて、右WBには山﨑の離脱後に新潟から獲得した新井を起用するなどしているようです。浦和やマリノスの出遅れでタイトルのチャンスがあるだけに、夏のマーケットで後方の選手の補強などがあるかもしれませんが、クラブライセンス的には今年は黒字必達の年でもあるとのことです。

  • コンサは武蔵が負傷、大森が出場停止で恒例のFW駒井。ミッドウィークのルヴァンカップに45分出場したスパチョークが5節以来のスタメン復帰。




2.試合展開

10分間のチャンス:

  • 基本的にはお互いミラー布陣で、この両チームだけでなく今のJリーグではこの場合ボールを保持することに苦労してロングボールを蹴ってセカンドボールを拾うことに注力する試合展開になります。
  • が、実は開始10分弱くらいはコンサが配置の関係を利用して広島陣内に2度ほど侵入できていました。

  • 広島は立ち上がり、加藤と大橋の2トップ、その下に満田をトップ下とする形でコンサの中央の選手にpressingを開始します。
  • コンサは右に馬場と宮澤、左に菅と岡村なので、コンサのボール保持は宮澤から始まって、菅はあまり信用されていないというか宮澤と馬場でなんとかしようとする傾向が試合を通じて強かったです。
  • この時、馬場にボールが渡ると広島はWBの東が前に出て馬場を捕まえようとしますが、それによって最終ラインの5v5の関係性は崩れます。

  • 東が前に出た時に、それまで東が見ていた近藤のところには佐々木がスライドせずステイしていたので、コンサは東が前に出た背後にボールを送り込むことで近藤のところから前進することが序盤はできていました。
  • ただその後、広島が戻り切らないうちに近藤が仕掛けてクロス、みたいな展開はなく、近藤だけでなくコンサは全般にスローに試合を進めていたようにも思えました。
  • この試合に限らず今年のコンサはシュート本数が少なく、試合終盤に足が止まるまではなるべくオープンな展開にしないとする意図か何かを感じます。

  • 10分のスパチョークの得点は↑で説明した現象は殆ど関係なく、左サイドでの自陣からのカウンター。ルヴァンカップでは沼津相手に格の違いを見せていたスパチョークですが、広島相手には厳しいかな?とみていましたが、この時はうまくボールを運び、浅野のリターンをペナルティエリア外ですが得意の位置からシュートで、殆ど自分の力でフィニッシュまで完結する頼もしい姿を見せてくれました。

大橋の充実:

  • 10分以降の広島はコンサに対するマッチアップを変えます。大橋の1トップにして、大橋が岡村と宮澤を1人で見る形に変更。ウイングバックはコンサのウイングバックを見るようにしてマークずれを防ぐのと、他の受け手となる選手にもマーク関係を明確にすることで、コンサはだんだんと(いつも通りですが)前線に放り込む展開に終始します。


  • 放り込む先は特に決まってないコンサですが、駒井、スパチョーク、浅野の前線では誰もそうしたボールを処理する適役がおらず、また広島の3バックは少なくともこの3人相手なら余裕で跳ね返す能力があるので、コンサは暫くの間ボールを捨てる展開になります。
  • そして広島は跳ね返した後のセカンドボールへの反応、全般における攻守の切り替えの速さで明白にコンサよりも上回っていました。
  • 広島もボールを持ったらFW大橋への放り込みが多いのですが、大橋は岡村相手でも体を張り簡単に潰れない能力があり、またセカンドボールに対して(まるでコンディションがいい時の駒井のように)自ら拾いに行くなど抜群のアクションを見せます。pressingも含めて大橋はかなり負荷が大きそうな役割でしたが、終盤まで体を張り続け広島のハイ・インテンシティなサッカーを成立させるのに最も重要だと思われる役割を遂行していました。

  • また広島は大橋を中央で使うだけでなく、大橋が左サイドに流れたところでポストプレーからチャンスを何度も作ってコンサ陣内に侵入します。
  • シンプルなマンツーマンのコンサは岡村がついてきますが、やはりCB中央の選手が中央の持ち場を完全に逸脱することは躊躇うのか、大橋は左サイドのタッチライン付近まで流れてくれば岡村をほぼ外すことができていたと思います。
  • そこから東や満田がペナルティエリア角付近に走って、中央には加藤や川村が東のクロスに合わせて走り込む形で、岡村のいないコンサDFを何度も脅かしていました。
  • コンサは広島のシュートミスと菅野のビッグセーブに助けられて前半をリードで折り返します。25分には、岡村が自陣でボールを失ったところから加藤がドリブルで持ち運び右足で狙いますが、菅野が伸ばした左手に辛うじて当たって、セカンドボールも菅野がストップして難を逃れました。

広島の足が止まるまで耐えるしかなかったコンサ:

  • 広島は30分過ぎに川村がアクシデントで小原と交代。
  • 後半開始時にはコンサが近藤→小林で、小林が右シャドー、浅野が右WBにスライド。ミシャのコメントでは「対面の選手との関係性を考えた」ということですが…。
  • 広島は後半頭から新井→越道に交代。この越道は新井よりも自ら仕掛けるタイプの選手のようで、前半は左一辺倒だった広島は後半、右サイドによりボールを集めるようになります。
  • その越道の右クロスから獲得したCKで、広島は中野のゴールで追いつきます。

  • 60〜65分くらいから徐々に広島に疲れが見え始め、前半のようなプレッシング、攻守の切り替えを維持することが難しくなり、コンサがボールを持った時に守備のスイッチが入らず自陣に撤退して、コンサに広島陣内への侵入を許すようになります(逆に言えば、それまでの時間帯はコンサはとにかく広島陣内でプレーできませんでした)。
  • しかし足が止まった広島相手に、コンサは長谷川と中村桐耶を投入しても殆ど打開策がなく、後半もGK大迫を脅かすことはほぼ全くありませんでした。

雑感

  • 両チームともマンツーマン主体で守って、ボールを持ったらシンプルに放り込んでセカンドボールを拾う、と、やっていることは似ていてお互い戦術的にはかなりシンプルなものだと、同じようなカテゴライズになると思います。
  • 一方で質的には、相手の前進を食い止めるプレー、ボールを前進させて相手ゴール付近に到達するプレー、またそれらを繋ぐトランジション、とあらゆる部分を切り取っても広島の方が1枚どころか2枚は上で、今節を終えて最下位のコンサと負けなしで上位のチームとの力の差が明白だったと言えるでしょう。ただ広島がこのサッカーでタイトルを狙うには、夏場の非常識な暑さになった時にどれだけ運動量が落ちないかは気掛かりではあります。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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