2023年5月1日月曜日

2023年4月29日(土)明治安田生命J1リーグ第10節 横浜FCvs北海道コンサドーレ札幌 〜風の申し子〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:


  • 試合前の時点で、各リーグに未勝利のチームが3つありました(横浜FC、徳島、Y.S.C.C横浜)。横浜FCのパフォーマンスをここまでは具にチェックできてないのですが、センターラインを中心にベースとなる選手のクオリティがまず問われているな、という印象です。負傷離脱したCBガブリエウのところが悩ましいでしょうか。
  • システムは開幕から1-4-2-3-1。ボールを持っていない時は1-4-4-2。昨年ほとんど採用しなかった形ですが、おそらく本来こっち寄りのスタイルが好きというのもあれば、選手構成を意識しているのもあるでしょうか。他には人の配置論でいうと、プレッシングから速攻に移行しやすいとかも考慮しているかもしれません。ただサッカーの質としては地上戦よりも空中にボールを蹴って前進して…という点は変わってないように思えます。
  • メンバーは、飛び道具っぽい起用法のサウロミネイロと山下が揃ってスタメン。サウロはこの試合が今シーズン初、山下は前節のガンバ大阪戦に引き続き左サイドで、なんらか札幌を意識はしていると思います。
  • 札幌は青木とルーカス、GK大谷が特にリリースなし、キムゴンヒは試合前にリリースがあって、前節の負傷の影響で欠場。小林と小柏の復帰でなんとか頭数は確保というところでしょうか。



2.試合展開

思ったほど徹底しなかった横浜:

  • アウェイ→ホーム方向に強い風が吹き続ける中でキックオフ。前半は横浜が陣地を選択して、札幌が風上でスタートとなったようです。
  • 横浜は、ボールを持っている時は基本的には全部ロングボールを選択。サウロミネイロがトップで、小川がやや引いてトップ下っぽい配置で、ターゲットは全部小川。サウロがラインを押し下げるために前残りっぽく、またシンプルな役割としたのでしょう。

  • いきなり1分で横浜が先制します。ロングスローから、サウロが右サイドで粘ってクロス。金子のクリアミスを近藤が押し込みました。

  • キックオフ直後、横浜はサウロが右寄りに立っていて、福森とマッチアップ。サウロはOSは旧式っぽいですが、パワーとスピードは少なくとも福森を蹂躙するには十分なスペックでしょう。先制点もこのマッチアップから生じていて、スローインを受けたサウロを見ていたのは福森ではなくカバーリングの田中。スローインという特殊な、しかし試合の中で頻発するシチュエーションから一つを切り取った話ですが、やはり背後に滅法弱い福森ではかなり難しそうに見えました。
  • 失点直後に岡村と福森が話をしている時がありましたが、その後、横浜が同じ配置をとると福森と岡村でマークをスイッチして、そうすると岡村が左、福森が右寄りで小川をマークするイレギュラーな配置になります。これはボールを持った時を考えると非効率ですが、コンサのように選手によってマーキングの能力が違いすぎる場合はこうするしかないでしょう。

  • しかし、横浜はサウロを福森にぶつけるということをそこまで徹底しなくて、サウロが左に流れて福森の脅威にならないし、しかも山下とちょっと被り気味のシチュエーションもそこそこありました。過去に都倉を背の低いサイドバックに徹底してぶつけていた四方田監督にしては割とここは好きにやらせるんだな、という印象で、札幌としてはサウロの単騎突撃は岡村で処理できますので助かった感があります。

  • そして風の影響について改めて触れますと、横浜のターゲットは小川で、ただ小川を狙って蹴ったボールは、向かい風と、GKブローダーセンのフィード能力(正直うまくない)が相まって、小川が当てて前線の選手がなんらか飛び出すみたいな形に繋がったのは稀でした。
  • 小川に合わなくても、三田やユーリ ララのところで拾えればいいのですが、実際にはボールは更に横浜から見て後方に流れて、その都度、吉野とンドカは浅野と小柏を気にして神経を使う対応を強いられます。
  • これは札幌からのフィードも同じで、吉野とンドカの仕事の機会はかなり多かったと思います。
  • そして、特に浅野は落下点に入るのが早くて、サイズ以上に横浜のCBが意識しなくてはならない存在でした。後半、浅野と小柏が下がって、中島(落下点に入るのはあまり早くないしまだ消えている時間も多く、かつCBの視界内でのプレーが大半)が出てきた時の方が、風向きが逆なのもありましたがンドカは落ち着きを取り戻していた感があります。
  • だから横浜はまずボール回収に苦戦していたのと、ボール回収からすぐに前線の速い選手を走らせるためのボールを配給できなかったのが、前半あまりうまくいっていなかったとするなら要因だったでしょうか。

風の申し子 浅野:

  • 横浜は強風下で前に長いボールを蹴るだけで、それは札幌に対して地上戦でボールを運ぶことは、風を味方につけること以上に難しいからということでしょう。
  • 対する札幌は、横浜よりは地上戦の準備や意識がありますが、得意のサイドチェンジが風で制限されるとなるといつもよりもウイングバックにボールを渡すことが難しくなりますし、そしてここまで右足から2アシストを記録するなどしている金子のクロスボールも、利き足で強いボールを蹴らないと流されてしまう。
  • 福森だけはサイドチェンジを2度ほど成功させていましたが、彼以外は長いパスを通すことは難しい状況でした。

  • 一方で、横浜としては札幌がボールを持つなら、ミドルゾーン付近でボールを回収して、山下とサウロのスピードで勝負したかったと思います(何度かこの2人の名前を挙げていますが、この2人を揃って前半から出すということはそれなりの狙いがあったのでしょう)。
  • その横浜の非保持での対応は、横幅をコンパクトにした1-4-4-2のブロックを敷いてミドルゾーン付近から札幌の選手を捕まえます。特に札幌がサイドに展開した際に見ればわかるのですが、ファーサイドの札幌のWBを捨てたような絞り方をSBがしており、基本的には札幌が何度かパスを繋いでサイドを変える前に圧力をかけて奪いたかったのだと思います。
  • しかし横浜の守備は基本的には人を捕まえる対応がベースで、1on1でそれなりに札幌がやれてしまう状況では、そこでボールを奪ってカウンターという場面が少なかったです。
  • そして人を捕まえに行くマンマーク基調の守備ということで、まず枚数が合っていない状況ではなかなかプレッシングのスイッチが入らない、札幌の人の移動(特に中央で福森が顕著でしょうか)のためにユーリ ララや中央の選手が動くと、中央がやや開いた状態になることも多くて、ミシャが岡村に「前に行け」と指示していた(岡村は困惑していた)時がありましたが、それはおそらく中央のスペースを使うようにポジションを上げられる時は狙いなさい的な意図だったのでしょう。

  • それでも札幌がまだチームとしては風をうまくコントロールできない中で、ンドカのミスもあって絶好調の浅野がクオリティを見せつけてチームを救います。


追い風で反攻もオープン合戦は分が悪い:

  • 風向きが変わって後半。やはり空中戦、ロングボール主体のチーム同士だと風の強さというのは試合展開に大きく影響するようで、横浜は前半よりも札幌ゴールに迫っていたと思います。
  • 典型的なのは、50分にブローダーセンのフィードをサウロが競り、近藤が持ち込んでシュートも枠外。前半だったらそもそもサウロまで届いていなかったし、イーブンくらいのボールや競り合いが相手ゴール方向になかなか流れませんでした。
  • 57分には近藤のスルーパスにサウロが抜け出してシュートも、菅野が指先で触ってクロスバー。これが最大の決定機で、触っていなければ違った展開だったでしょうか。

  • しかし風で押せ押せになったこともあれば、おそらく人を捕まえる守備でコントロールできてないとするとどうしてもそうなるのでしょうけど、横浜は次第に前がかりになってややオープンな局面が散見されるようになります。
  • サウロのビッグチャンスから3分後、札幌は裏へのボールに小柏が拾って中央に展開。横浜のプレスバックが遅れる間にスペースを使って難なく展開し浅野へ。

  • 風向きがどっちだろうと、本来横浜がこういう攻撃(背後のスペースに蹴って足の速い選手を使って素早く攻める)をしたかったのかもしれません。そのためには、横浜に足りなかったのは高い位置でのボール回収だったでしょうか。バラバラとした展開で、個人で対処するのはやはり札幌の方が得意だったと思います。

雑感

  • お互いに長いボールを蹴って中央で競り合うゲームに。となると、試合前に感じた印象とあまり変わらず、細かい戦術以前にシンプルに選手の能力差、特に相手選手と競り合っていたりする対人プレーで何ができるか?の部分で両者の差を感じました。あとは、浅野のクオリティがとにかく大きいでしょう。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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