2023年4月26日水曜日

2023年4月23日(日)明治安田生命J1リーグ第9節 北海道コンサドーレ札幌vsアビスパ福岡 〜筋書きに沿うように〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:

  • 水曜日にカップ戦があり、共にホームで勝利しています。
  • コンサはルーカス、駒井、菅が中3日でのスタメン。中島は代表招集で欠場、ソンユンと西は直近の試合での負傷等での欠場だと思われます。
  • 福岡は3バックの1-3-4-2-1で開幕して、リーグ戦ここ2試合は4バックの1-4-4-2を採用していましたが、コンサ相手にはやはり横幅5枚で守る布陣に戻してきました。GK村上以外のスタメンはカップ戦で温存できています。メンバーは左CBの宮がおそらく負傷で三國、金森と紺野が3~4人目のアタッカーの枠を争っていて、この試合は紺野がスタートから起用されています。



2.試合展開

コンサ、飛ばす:

  • 5分に金子の右クロスから荒野のゴールでコンサが先制します(外れてたら奈良のハンドでしたね)。


  • このプレーは金子が縦突破からゴールエリア付近まで侵入して、駒井が中央にターゲットとしてポジショニングしていましたが、これ以外のコンサの攻撃は早いタイミングでサイドからクロスを放り込む(逆足WB2人なのでインスイングのクロスボール)ことが目立ちました。
  • それらのプレーは、クロスの選択がかなり早いので、コンサは中央にターゲットが準備できていないのですが、福岡のDFがブロックを作るのも不十分な状態で仕掛けられます。いかにもカオスな展開になりそうなシチュエーションです。
  • こういう状態でボールを放り込むとボールがピッチを行ったり来たりする展開になりがちですが、序盤は福岡のDFラインの不安定さの方が大きかったようで、CB3人は揃っていてもクリアが小さかったりでコンサがセカンドボールを拾って二次攻撃を仕掛けることが多かったと思います(それらも大抵はクロスで終わります)。


  • 福岡はミドルゾーンで1-5-2-3でブロックを作っていましたが、あまり前線からのpressingは強烈ではありませんでした。過去の試合では、前3人で制限をかけて中央2枚で回収して札幌陣内でカウンター…みたいな試合の入り方もしていましたが、この試合ではよりスローテンポでいきたかったのでしょうか。
  • おそらく福岡の前線の選手のキャラクターを考えると、ロングカウンターが得意なタイプの選手はいないので、ボール回収位置はあまり低くなりすぎないようにしたかったと思います。
  • じゃあ何でズルズルと下がっての対応になってしまったのかは、先述のようにコンサが早いタイミングでゴール前に放り込んできて、それだけでラインを押し下げられる展開になったことと、特にWBのマッチアップのところでコンサに分があったからかと感じています。
  • コンサは前線が枚数不足でも、金子の突破や浅野のスピードもあって2人くらいいれば強引にシュートに持ち込んだり前方向に進んだりもできるのですが、福岡はまずルキアンに当てて攻撃参加を待っていました。シャドーの山岸と金森だったり、5バックで守っている湯澤が長い距離を走って枚数確保しようとするのですが、ルキアンが岡村の圧力を受けながらキープして、また前線にターゲットとして顔を出す役割は負担が大きそうで、前半の30分頃までは少ない人数でシュートに持ち込めるコンサの方が優勢でした。

  • 13分のコンサの2点目はそうした構図が見え隠れするかもしれません。冒頭見切れ気味ですがルキアンのキープから攻撃を作りたい福岡。ルキアンを潰してカウンター発動。駒井の得意のフリックから浅野が30mほど運んで、中央で”横断”して福岡のDFの視線を90度ずらしたのが効きました(私の中での浅野の評価・期待がさらに上がります)。
  • 青木にフリーズしてしまった中村の対応はちょっと気になりますが、グローリは自分が青木に行って、中村は後ろからオーバーラップするルーカスにスイッチするイメージだったんですね。この辺は瞬時の判断が求められるので難しいところですが、浅野が早く運んだことで最後まで福岡は整った状態を作れませんでした。


コンサ、バテる:

  • 30分くらいから徐々に福岡が札幌ゴールに迫るようになります。
  • 主にそれは前線守備からで、コンサは相変わらず後ろ4枚(田中-岡村-福森or荒野-菅)が横並びになってボールを保持しようとするのですが、やはり誰かが蹴っ飛ばす以外にそれっぽいビルドアップがないので、特にサイドの選手のところで中央を切られると詰まりやすいんですよね。
  • 2回ほど、右シャドーの紺野が菅のパスコースを切ってからボール奪取に成功して、得点にはなりませんでしたが高い位置でシュートまで持ち込むことができていました。特にコンサがなんかしたわけでもないんですけど、単にpressingに対して有効打がない(ゴニがいたらロングボールで回避かもしれませんが駒井ですし)ってだけですね。
  • あとはやはり前半から少しハイペースすぎで、押し上げたりセカンドボールを拾ったりがちょっとペースダウンしたのかもしれません。


  • 福岡は39分に中村が負傷で田邉に交代。後半頭から三國→金森に交代で1-4-4-2にシフトします。札幌はルーカス→ゴニで青木が左WB、駒井がシャドー。ルーカスの温存と菅のDF起用の影響で前節に続いて青木が左に回りますが、この交代が結果的には展開に大きく影響しました。



コンサ、忍ぶ:

  • 福岡が1-4-4-2なので、コンサはそれをマークする時はこの並びになることが多くなります。
  • まず福岡もボールを持っている時は前線の選手に個人でなんとかしてもらう、という部分が大きいので、福森を最終ラインに”移動させて”、ルキアンまたは山岸とマッチアップを作ったのは(そういうのを露骨に言わない監督ですけど)1-4-4-2ならその形にできるのは当然考慮していたでしょう。
  • とにかくトップにボールが入れば、紺野と金森が中央に絞ってサイドにスペースを作って、大外から攻撃参加で青木や金子を後ろ方向にプレーさせることもできるし、そういったところで少しずつパワーバランスが変わっていったと思います。


  • 51分に紺野の左足インスイングのクロス。ファーに流れた山岸が田中駿汰の背後をとって角度のないところからヘッド。体勢維持したまま強く正確なシュートを飛ばすのがかなり高難度なプレーでしたがうまく合わせて菅野の頭上を抜いて1-2(なぜか動画がないのが残念です)。逆足ウイングの利点がああいうボールをファーに蹴れるということですが狙っていたのか偶然か。

  • コンサがボールを持っている時はミスマッチができることもあって、オープンな展開が前半以上に増えます。このミスマッチには、福岡はアンカー荒野のところに中盤センターから1枚出てきて潰そうとする。その背後はコンサのシャドーの狙いどころなのですが、チャナティップはもういなくて浅野と駒井がうまくこのスペースを使えないのもあって、ミスマッチをコンサはうまく活かせず福岡は弱みに対処できている構図でした。

  • 山岸のゴールの直後、また福岡がクロスボールからゴール前に迫ります。クロスは大したことないんですけど、後ろ向きで処理した青木の腕に当たってハンド(ルキアンと長谷部監督はしっかり見ていてハンドアピールしてましたね)。プレーが流されている間に浅野のハーフウェーラインからのスーパーゴールがありましたが取り消され、ハンドで得たPKをルキアンが決めて2-2。

  • あとは特にコンサは何もできなくなります。福岡は湯澤を金子対策で左に移して、完全に札幌の足が止まった80分にウェリントン投入。もっとも、あまりいいボールが供給されずに助かった形でした。
  • コンサは福森も下げたので、金子のロングドリブルしか打開策がない(それでも脅威になるのはすごい。さすがに疲れてるが)いつもの展開だったと思います。


雑感

  • まぁ、いつものコンサだなという感じでした。一方で、毎回同じ展開に持ち込んできっちり勝ち点を持ち帰る福岡・長谷部監督の凄さを感じます。後半福岡もDFを削って、理屈の上では前半よりも不安定になりかけたはずが、そうはならなかったのはコンサに後半仕掛けるリソースが残ってなかったから、ということでしょう。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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