1.ゲームの戦略的論点とポイント
スターティングメンバー:
- 20年後に誰かがこの記事を発掘した時のことを考えるとスタメンの図はあったほうがいいですね。まぁスポナビがそれまで残っていたら問題ないんですけど。
- 川崎はダミアンと車屋がコンディションの調整途上でベンチスタート。マルシーニョはカップ戦での負傷でメンバー外、宮代を左に持ってきて家長がトップでスタート。チャナティップはインターナショナルウィーク明けでもありますが、シンプルにそこまで序列が高くもないようです。
- 札幌は宮澤不在で、中盤センターでいけそうな選手が本格的にいなくなってきて福森を中央、菅を最終ライン左としたのでしょうか。試合途中の選手交代(小林の負傷後)を考えると、福森を最終ラインから動かすことは当初は考えていなかったように思えます。
Jリーグ - J1 第6節 北海道コンサドーレ札幌 vs. 川崎フロンターレ - 試合経過 - スポーツナビ https://t.co/iNfu7nUOcZ
— アジアンベコム (@british_yakan) April 2, 2023
2.試合展開
家長FWの意図と2つの偶然:
- まだ探り合いの前半7分に、コーナーキックからの流れで金子の右クロス。札幌は前線には空中戦が得意な選手はいないんですけど、この時は残っていた岡村がファーで合わせて先制します。金子は右クロスがここのところ冴えてますね。
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— DAZN Japan (@DAZN_JPN) April 1, 2023
岡村大八のジャンピングヘッド✨⚽
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前半7分、右サイドを深くえぐった金子のクロスに岡村大八がヘッドで合わせる👏
ホームの札幌が早くも先制!
🏆J1リーグ第6節
🆚札幌×川崎F
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- さて川崎は家長がトップで、これは遠野と2トップでもなくて明確な縦関係でした。
- 鬼木監督のコメントからも読み取れるのですが、札幌のCB岡村が家長をマークしている状態を作ってから局面をスタートさせる。そこから、家長がFWっぽいプレーをするのではなくて得意のプレー:自由に動いて下がってボールに触る、をすると、岡村がそれについてくるので札幌のDF中央の選手がいなくなってスペースができる。
- そこに本来FWの山田と宮代が斜めに走ってDFの視界外から背後を狙う、とのイメージだったのでしょう。
- 「2つの偶然」とはなんぞや?ですが、1つは宮澤の欠場で、札幌の福森が最終ラインにいなくて菅が左を守っていたことです。これは札幌にとってプラスの偶然です。
- 福森は割と、自分の前方にいるターゲットにはそこまで弱くない(Jリーグ基準で)と思うのですが、背後の動きに強くないんですよね。シンプルに足が遅いから、もあれば色々要因はありそうなのですが。その福森が左で出てくることは、宮澤欠場の情報もなかった川崎は想定していたはずで、山田のマッチアップがもっとイージーだと思っていたでしょう。
- 1つ目の偶然による札幌のアドバンテージを帳消しにしたのが2つ目の偶然で、小林が何らかのアクシデントにより20分過ぎで負傷交代。
- 普通は同じような役割の選手を入れるのですが(例えば青木か浅野がベンチスタートだったら入っていたでしょう)、このメンバーだと長い時間を任せられそうなのが馬場(か、ゴニもいるがここでFWを増やすのはバランスを崩す)しかいないので馬場が入り、選手配置を最適化する過程で結局福森が最終ライン左に移動し、山田とのマッチアップが成立します。
福森vs山田 |
- 小林の交代が23分で、宮代の得点が25分なので、おそらくこのマッチアップになって最初のプレーだったと思います。
- チョンソンリョンのフィードは長すぎず(ソンユンが出られない)いいフィードでした。が、福森が山田に先に入られて、腕1本でブロックされて完全に負けてしまったのが全てですね。リプレイだと、川崎の先述の狙いがポジショニングから非常にわかりやすくなっています。
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— DAZN Japan (@DAZN_JPN) April 1, 2023
したたかに同点弾🙌
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前半25分、相手GKのパンチングのこぼれ球を宮代大聖がしたたかにヘディングでゴール!
川崎が同点に追いつく!
🏆J1リーグ第6節
🆚札幌×川崎F
📺 #DAZN LIVE配信中 pic.twitter.com/ukdwG09Vgf
- ただ、まだ川崎が”寝ている”状態が続いて、キックオフでのリスタート直後に浅野。青木がDFの間にピンポイントの見事なパスでした。
🎦 ゴール動画
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) April 1, 2023
🏆 明治安田生命J1リーグ 第6節
🆚 札幌vs川崎F
🔢 2-1
⌚️ 27分
⚽️ 浅野 雄也(札幌)#Jリーグ#札幌川崎F pic.twitter.com/L2NdyCR7Ol
- ここから落ち着かせたい札幌でしたが39分、山田の裏抜けから山根が詰めてスコアは2−2。
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— DAZN Japan (@DAZN_JPN) April 1, 2023
山根の同点弾!⚽
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前半39分、エリア内で競り勝った山田新がフリーの山根へパス!
山根が落ち着いて決め再び同点に!
🏆J1リーグ第6節
🆚札幌×川崎F
📺 #DAZN LIVE配信中 pic.twitter.com/0KDUiN6Qd9
- 福森は裏抜け警戒で2mくらいラインを崩してスタートしているのですが、それでも山田の速さについていけなくて、またここでも最終的には接触で山田が勝っていて力強さを感じます。
- この辺の最後の対応は選手に「頑張ってください」としか言いようがないのですが、それ以外だと、コンサはやはり「マークは決めてるけどたいして相手にプレッシャーはかかっていない」状態でずっと守っている。開幕当初はゴニの先発が影響しているのかと思いましたが、今のチーム状態では誰が出てもこの強度のなさは変わらないようです。
- 川崎は川崎で、コンサのマンマークでの対応を嫌がってはいて、ビルドアップを放棄してシンプルに前に蹴る選択は多かったのですが、コンサがこれだけ緩いと次第に慣れてきてボールを持てるようになります。
- ですので、序盤(小林の交代前)コンサが何度かピッチ中央付近で、川崎の縦パスを引っ掛けていたのですが、それはコンサの前線の守備が良かったからというよりは、家長と遠野をマークしていた岡村と福森が頑張って相手に食らいついていたからでしかないんですよね。前線の選手が相手を制限しているわけではないので、後ろの選手が結果的にボールを奪えてはいても、負担はデカくてどこまでこの守備が続くかなぁと思ってはいたところですが。
ヘイ駿汰:
- 前半のうちにまだ動きます。右で駿汰→馬場と狭いところで動かしていたのを家長が引っ掛けてループシュート。
🎦 ゴール動画
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) April 1, 2023
🏆 明治安田生命J1リーグ 第6節
🆚 札幌vs川崎F
🔢 2-3
⌚️ 45+1分
⚽️ 家長 昭博(川崎F)#Jリーグ#札幌川崎F pic.twitter.com/Ltd0F320ot
- 馬場について。基本的にコンサはあまりボールを持っている時のポジションバランスが決まっていなくて、駒井が典型ですが自由に下がったり前に行ったりして自由にボールに触ります。馬場はそれに比べると、割とセオリーに忠実というか、不要な時にはボールに触りに行かない振る舞いをここまではしていました。
- が、この場面では馬場が駿汰に寄っていくことで、駿汰→馬場でリターンのパスを受けた時に3人(馬場の背後に家長、前方に遠野、左に宮代)が狭い空間で囲んでいる状態を自ら作ってしまっているんですよね。例えば馬場が真ん中で一度ボールに触った後で、そのままステイしていれば馬場のマークだった家長は駿汰のところに寄ってこなかったと思います。
- 駿汰はこれくらいの間合いならボールを持てますし、馬場にワンタッチで出す必要もなかったのですが、人間「ヘイヘイ」ってやられるとパスを出したくなるのでしょうか。そこはわからないですけど、すごくコンサ的なボールの動かし方だなと思いました。今まではこれが直接失点になる機会が少なかったのはたまたまなんですが、過去にはなくはなかったです。▼これが近いかな。冒頭見切れてますが、ミンテが深井(相手との距離が近い)に渡したところから始まったプレーでした。
2018J1リーグ第26節
— 川崎フロンターレまとめ (@mizuirofrontale) September 15, 2018
川崎フロンターレvsコンサドーレ札幌
7-0
30分中村憲剛⑥(小林悠❷) pic.twitter.com/EJEm65nQd4
:
- 後半頭から札幌は福森→キム ゴンヒ。
- 2−1になったところで、福森は早めに下げるかな、とは予想していましたが、それはリードしたシチュエーションで60分過ぎくらいに中村を入れるという、昨シーズン何度か見たパターンと思っていまして、FWのゴニを入れるのはバランス的には本来コンサはやりたくなかったと思います。2ー2だったらゴニはまだ我慢していたかもしれません。
- そして後半頭から、駿汰と馬場を入れ替えています。スポナビの表記だと4バックになってますが、それは展開次第でそう見えるだけなんであまり気にしなくていいです。コンサが4枚にしたのではなくて、遠野が前に出るようになったからマークする駿汰が下がることが多くなっただけです。
- ポジションの入れ替えについては、一般に中央の方がボールを持つ上では難しい役割なので、馬場のミスを見て入れ替えたということだと思います。
後半開始〜 |
- 56分に札幌は小柏→西。多分これは西の投入に戦術的な意味合いは薄く、小柏に何らかのアクシデントがあったと予想します。FWを増やして(ゴニ)、それを10分で減らすのは(このチームこの監督だと)不自然だからです。
- ゴニが入ってそこまで前線で脅威になっていた感じはしないのですが、結果的には59分のゴールで当たったといえば当たったのでしょうか。浅野が後半からセットプレーを任されていましたが、見るたびに「意外と器用だな」という印象が増していきます。
🎦 ゴール動画
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) April 1, 2023
🏆 明治安田生命J1リーグ 第6節
🆚 札幌vs川崎F
🔢 3-3
⌚️ 59分
⚽️ キム ゴンヒ(札幌)#Jリーグ#札幌川崎F pic.twitter.com/Q3ujFr7Qp7
- 川崎は67分に遠野、宮代→瀬川、小林に交代。これでこの試合初めて、ストライカー的な選手を最前線に置くことになりますが、小林をオープンな展開で終盤に投入するのは昨シーズンの厚別でのゲームと同じようなゲームプランですね。もっともこの試合も、ずっと最初からオープンでしたけども。
- それはともかく、川崎からすると小林投入は、「いつでも前線にチャンスボールが入る状態」だとも言えます。だから、あとはそこでオープンにし続けるというよりは、同時に自陣ゴール前の怪しいところをケアしてオープン合戦を避けてメリットを自軍のみが享受したい。それが72分のシミッチ(と、車屋)投入で5バックへのシフトだったでしょう。
- もっとも川崎の5バックはそこまでバランスが良くなかったです。5枚を最終ラインに残すことを優先していて、それは札幌の攻め手は最終的にはワイドの菅と金子のアタックしかないからなのですが、あまり5バックが出てこないと、ディフェンスの際に前線2トップが空転気味になります。なので札幌が、川崎の2トップを剥がしてから何度か川崎ゴール付近に侵入して惜しい場面もありました。
- 乱戦を決めたのは瀬川。スポナビだと最終的に川崎は1-3-4-2-1になってますけど、私には2トップ+中盤センター3枚+5バックの1-5-3-2に見えて、かつボールを持っている時は瀬川が左のSHの4バック1-4-4-2っぽい形に見えました。
- いずれにせよ、瀬川のマークは馬場。得点シーンはゴール前の競り合いからマークがずれて難しいところでもありましたが、一応マンマークが唯一にして最大の約束事のチームであるので、そこは疎かにしないでほしいなという気持ちもあります。
🎦 ゴール動画
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) April 1, 2023
🏆 明治安田生命J1リーグ 第6節
🆚 札幌vs川崎F
🔢 3-4
⌚️ 86分
⚽️ 瀬川 祐輔(川崎F)#Jリーグ#札幌川崎F pic.twitter.com/lfXjdDzB9j
雑感
- 特に真新しい感想はないので色々コメントに困ります。一言でいうと、相手に合わせる傾向が強いというか、守備から相手に制限をかけてゲームをコントロールすることができなかったな、という試合でした(またも)。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。
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