2023年3月21日火曜日

2023年3月18日(土)明治安田生命J1リーグ第5節 ガンバ大阪vs北海道コンサドーレ札幌 〜恒例のリプレース期間〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント



  • ポヤトス新監督のガンバは、GKを含めたほぼ全ての位置で選手を見極めているように見えます。(後述しますが今日のパフォーマンスを見る限りは)右CBの三浦は開幕から唯一、全試合スタメン出場となりましたが、その三浦もリプレースを考えているかもしれません。
  • 逆にアンカーのネタ ラヴィ、右SBの半田はこの体制下ではキーマンになりそうに思えます。宇佐美(今日は欠場)の適性ポジションを見つけられるでしょうか。もっともそれは武蔵もそうですし、飯野もウイングか?というと微妙なのでこの試合ベンチスタートになったのでしょう。浦和のリカルド監督も、東京のアルベル監督もそうでしたが、まずは選手の入れ替えに着手しないと始まりません。
  • 札幌は2試合連続で同じスタメン。マリノス相手にまずまず機能し、結果を残した、小柏・小林・浅野のユニットを継続してきましたが、小林がこの日はトップ下でネタ ラヴィとマッチアップ。荒野とアラーノがそれぞれの左右の中盤でマッチアップ。小柏が前節インサイドハーフでしたが、トップに上がっています。

2.試合展開

持たされて沈黙:

  • 6分にセットプレーからのほぼ最初のチャンスで札幌が先制します。
  • 岡村が三浦に競り勝っていいところに落としました。ガンバはほぼ純粋なマンマークだったので中央がガラ空きで、小林がうまくマークを外してシュート。
  • …と書くと、デザインされたプレーのように見えるのですが今のコンサはCKの練習なんかするんでしょうかね?一応、ガンバのセットプレーがほぼ純粋なマンマーク(あまり、遊撃役ないしはゾーンを守る人 を置かない)と事前にスカウティングでわかっているなら、このパターンは隠しておけば有効なのですけども。

  • さてスコアが早々に動いて、コンサはボールを持たせる戦い方がやりやすくなります。
  • ガンバは前節のマリノスと同じで、GKがボールを持たされて受け手が全員捕まっている状態が多くなる。序盤はあまりリスクを冒さずに、前線の選手に蹴ってボールが収まるかどうか様子を見ていました。
  • 結果は武蔵が岡村相手にあまり勝てなくて、ここでガンバはポイントを作れず。ウイングが杉山と福田で、いずれもターゲットにはならないので、ガンバは蹴るだけでは難しそうな展開になります。
  • となると中盤の3人のうち誰かがボールを引き出したりしたいところですが、ネタラヴィには小林がついている。このネタラヴィがあまり動きすぎると、真ん中から誰もいなくなってバランスが悪いのもあってあまり彼はそもそも動きません。

  • じゃあアラーノと山本理仁はどうかというと、前者はそういうタイプではないですよね。もっと前にスペースがある時に生きる。リーグ戦ではここまでウイングでしか使われていない。
  • なぜIHなのか?という疑問は▼で語られており、
--石毛 秀樹選手とダワン選手を投入したところから流れを引き寄せたと思いますが、交代の意図と選手に伝えた狙いを教えてください。 
エネルギッシュな選手を投入したかった意図がありました。(山本)理仁とファン アラーノのところで、けっこう1列目のプレッシャーで苦しんでいた。ファンに関しては(ルヴァンカップEグループ第1節・)京都戦のようにスペースに抜けるというところを今回も求めたんですが、なかなかそこが生かし切れませんでした。
  • 要するにビルドアップが成功して敵陣に入ったタイミングで、アラーノがフリーランしてコンサのマーカーを振り切るみたいなイメージだったんですね。となるとボールを運ぶのは山本の役割だったのでしょうか。その山本は、宮澤にマークされている時間帯は前を向くのが難しかったと思います。

  • そんな感じで、ガンバのボール保持は自陣から運ぶというよりはコンサのボール保持でミスを誘って高めの位置でボール回収、からが主でした。
  • コンサに対してガンバは1-4-1-4-1気味にセットして、インサイドハーフの位置からアラーのが武蔵の隣に出てきて1-4-4-2みたいな配置になって守ります。コンサは福森のところでアラーノなり杉山なりが出てきて、福森がイージーに蹴る(パスなんだけど一かバチかみたいなボールを)、それが小林に渡る時もあるけど、割とギャンブル的で、こういうボールをコンサはよく蹴るのでガンバはボール回収自体は楽だった印象です。

期待の新鋭とリプレースの必要性:

  • コンサは相手のGKで始まるプレーのような、”セットされたシチュエーション”だと都度マークを確認できるのですが、流れの中でボール保持→非保持 と切り替わったタイミングだと、ポジションを入れ替えて形が定まっていないのもあって、まず守備を開始する際のセットが曖昧な傾向があります。
  • 簡単にいうと相手選手のうち誰かが捕まっていない状態でプレーしていて、マンマークなのでその状態が頻発すると簡単に崩されます。

  • この試合だと、例えば小柏と浅野がガンバのCBを見ているけど、菅が半田を捕まえきれていない時がある。その場合は、浅野が半田まで二度追いしてカバーするのですが、半田がここで浅野を引きつけてプレーするのが巧でした。ギリギリまでボールを持って、半田が中央の三浦へリターン。三浦を見ている浅野は半田のところに行っているので、三浦はフリーになります。
  • が、三浦の前方が空いているのにあまりドリブルで運ぼうとの姿勢が見られず、フィードを選択してしまう。そこは半田は露骨に「前に行けよ」と手で示していました。ただ江川に対して三浦が同じような仕草をしたりもあったりで、三浦はわかっているけど少し勇気がない、みたいな状況だったでしょうか。

  • ともかくガンバは三浦のところでコンサのマークを剥がせない・ずらせないので、コンサの後方DFとガンバの前線のマッチアップでは、ガンバはスペースがなく窮屈な状態になります。これだとアラーノのフリーランも活かせません。
  • そしてガンバのミスから32分に小柏。今年は2試合続けて稼働しても怪我なく終えられるでしょうか。

  • この場面の冒頭に一瞬映ってるんですけど、ガンバは基本的にウイングが最初は必ずサイドに開いて、その内側のスペース(▲の動画だと駿汰ー岡村 の間)にSBかIHが走り込むイメージ。この時は金子が必死に戻ったのと、ガンバは敵陣であまり急がずに、札幌の選手を動かしてプレーしたいので、ウイングの福田がボールを持った時にはあまりオープンではない、スペースがない状態でした。
  • だからミスはミスなんですけど、あまり福田が好きなタイミングで仕掛けるようなオーダーはなかったはずで、バックパスしてやり直すのは悪いことではなかったと思います。

  • 前半終了間際に浅野が足を押さえながらベンチに退き、馬場と交代。浅野は意外とシャドーで小回りが効くし、ゴール方向にターンもできるので小林・小柏と組むと、この2人とうまく連携しながらプレーできていました。その浅野の代替になれるタイプがおらず、馬場しか使えない(荒野を前に移動)のはコンサの厳しいところです。

個人の問題ということになっているはず:

  • 56分にガンバは石毛とダワンがin、福田と山本理仁を下げてアラーノを左ウイングに回します。そこから5分で2点を奪ってスコアは振り出しに。


  • 2点とも左右で同じ形でした。というのは、前半ずっと低い位置で後方支援に回っていたガンバのSBが高めの位置をとって、コンサのDF背後へのフリーランで金子と菅を振り切ってクロス。前半、SBの攻撃参加はなくはなかったけど、基本的に低い位置からスタートしていたので、オーバーラップした時にはあまりスペースがない状態が多く、黒川も半田もあまり使われていなかったと思います。
  • この2点が立て続けに入って元に戻したのかわからないですが、またスコアが動いた後は前半と同じような役割に戻ったので、これがピッチ上での判断だったのか、そうではないのかはちょっとわからないです。ただ、ガンバが形を変えて、コンサが対応できなかったという意味では見事な攻撃でした。

  • コンサに関していうと、2点ともマークは揃っているし1対1で捕まえているんですよね。まずWBの金子と菅がガンバのSBに走り負けていますが、彼らの対応にすごく問題があったようには見えないし、彼らは足も遅くはない。だからシンプルに「個人で負けちゃったね」しか言いようがないし、コンサは守備練習もしないらしいので、個人でなんとかするしかないね、としか振り返りようがないでしょう
  • 一応、1点目の時は菅が背後を取られて、岡村がカバーに行くか迷って石毛のマークを外してしまったのですが、いずれにせよ石毛は岡村の背後をとる動きをしていて、そうすると岡村の背後は駿汰が絞って見ることになっている。これも駿汰はセオリー通り対応していて、「ちょっと間に合わなかったね」としか言いようがないと思います。言い換えれば、やれることはやってます。

  • 70分にガンバはアラーノ→飯野。多分「自由にゴールに突っ込ませる」なら飯野がスタートからなのでしょうけど、そうではなくて福田スタートでまず相手を走らせて、飯野はスペースができたらジョーカー、というゲームプランだったのでしょう。
  • コンサは宮澤と福森アウトで中島と中村を投入。全体的に運動量が落ちてスペースができてくると、足の遅い選手が広く守るのは難しいのでこの交替は納得というか仕方ないでしょうか。
  • コンサのマンマークが機能しなくなるとガンバの前線のタレントにボールが渡るようになって怪しくなりますが、ソンユンが兵役前の記憶を取り戻したかのようなセーブ連発でなんとか勝ち点1を拾いました。

雑感

  • 前半はガンバもマリノスと同じような感じで、2−0で「これは楽勝だな」と見ていました。まだガンバも未完成なのでいつでも点が取れるか?というと微妙なのですけど、少なくともマリノスよりは90分通じてうまくプレーしたというか、ゲーム全体での試合運びはうまくやっていたのではないでしょうか。コンサはまたスタミナ問題に直面すると、開始からプレス開始位置を下げるしかないでしょう。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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