2023年3月13日月曜日

2023年3月12日(日)明治安田生命J1リーグ第4節 北海道コンサドーレ札幌vs横浜F・マリノス 〜ダウングレードした王者〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント


  • マリノスは前節の広島戦が金曜日開催だったので9日ぶりのリーグ戦。ここまでの様子では、右ウイングを井上と水沼で競っていて、他は右SBに離脱者がいそうですが、割とメンバーが固まっているでしょうか。永戸が前節の退場処分で出場停止で、小池裕太がスタートから起用されています。
  • 札幌はキムゴンヒ、青木が不在で、小林が初スタメン。トゥチッチは怪我なのか?と思っていましたが、カップ戦には出ていたので単に中島と序列が逆転しただけなのですね。
  • 前線は、マリノスのCB2人を左浅野、右小林でマークして、小柏がインサイドハーフ。ボールを持っているときは小柏が前に出ていく形でした。

2.試合展開

意外と強いvsあっさり負ける:

  • 前半8分に、GKクソンユンの長いフィード(これが、札幌がボールを持ってセットされたシチュエーションとしては最初のものでした)を金子が競って、折り返したボールを小柏がボレーで合わせて札幌が先制します。
  • 例によってDAZN中継だと詳細は確認できず断言し難い部分はありますが、対空時間があったボールでしたが落下点で金子はジャンプもしてないし、体勢も崩していない。だからセカンドボールにすぐ反応できた。普通はDFがジャンプしたり体を当てたりスピードを落とすように妨害したりします。あまりにもここは小池が何もしていないように感じました。
  • 金子はプレースタイルと柔和な顔立ちで、あまり力強い印象はないかもしれないですが、今では90分ウイングバックでアップダウンする走力と、ペナルティエリア付近まで戻ってディフェンスをするなど全体的に力強さを感じます。対する小池の対応はあまりにもDFとしては強度のなさを感じます。
  • 札幌だとよく福森の対応が槍玉に挙げられますが、福森は少なくとも自分の周囲2mくらいに飛んできたボールには反応できますし、あとは特にセンターライン(CBと中盤)の選手の空中戦の強さは大事だと思うのですが、結局シンプルに放り込まれたボールをシンプルに空中戦で跳ね返すというのはサッカーでは大変重要な能力です。これができないと放り込まれるだけでずるずる下がってしまうためです。
  • 小池はCBではなくてSBですが、それこそ福森なんかと比べると、福森の方がまだ「DFらしい」プレーをするな、というか、小池は少なくともこの対応についてはDFとしてはもっと強度が欲しいなと思いました。

受け手探しに苦しむマリノス:

  • このゴール以外の話をします。基本的にはマリノスがボールを持っていて、札幌が1on1で全部捕まえるいつもの構図。
  • マリノスは”受け手探し”にこの試合を通じて苦しみます。バックラインは、CBが捕まっていますし、SBがいずれもボールを保持して相手を動かしたりできるタイプではない。CBに対しては、札幌は後半に突っ掛けて2点目のゴールをゲットした小林が頑張っていました(ゴニよりも良かった気がします)。
  • SBだとどっちかというと、上島よりも小池に出してから考えるのですが、小池が自陣低い位置、大外で持った段階で金子が寄せてきて、既に小池のところでかなり”詰まった”感がありました。
  • ですのでSBに出す前に中央で札幌を引きつけたり剥がしたりを試みるべきだったのでしょうけど、にしてはCBの仕事量やチャレンジが少ない印象で、例えば小林はたまにマークが外れるのですが、角田はそういう時に自分で運んだり、井上へのフィード(成功すれば福森との勝負)を狙ったり…は稀でした。

  • 後ろで対処できないマリノスは、トップのアンデルソンロペスに当てて活路を見出しますが、アンロペには岡村が慎重に対応していて、今シーズンここまでの岡村はちょっと微妙かなと思っていましたがこの試合は危なげなかったです。アンロペが入れ替わったりすることはできないし、反転もできない。
  • 常に岡村を背負った状態で、かつアンロペはそんなにこの形でプレーするのが好きじゃないか、得意じゃないか、ボールをワンタッチで味方に落として自分は前に出て行こうとします。
  • そうすると、マリノスはアンロペに当てたボールをすぐに回収する人が必要で、それは近くに立つことが多かったエウベルが大体やっていましたが、どういう状況か言い換えると、アンロペのポストプレーは味方が適正なポジションを取り直す時間を与えることにはなっていなかったと思います。ですのでアンロペに当てた後、マリノスは選手が望ましい位置に立ってない(エウベルはウイングの位置にいない)し、井上は右で待ってたけど井上にボールを届ける中距離のキックもない。札幌はアンロペに入った後でまた帰陣して整えて守ることができていました。

適性は「後ろから出ていく人」?:

  • マリノスは1-4-4-2ないしは1-4-2-1-3の布陣で、基本的にはあまり下がらずにハイラインで前から人を捕まえていく対応をします。札幌とはミスマッチがあるはずなのですが、札幌がバックパスをしたときにマリノスが二度追いを頑張るのと、あとはGK(ソンユン)の選手特性もあって、札幌はほとんどボールを保持することはなくて前に蹴るだけだったと思います。
  • 札幌は前線に特にボールをキープできる選手や、競り合いの際に相手のDFに直接圧力を与えられる選手はいないのですが、マリノスが対応に苦慮していたとするなら、小柏がインサイドハーフの位置から右シャドーに出ていく時でしょうか。このときはマリノスはDF4人で札幌の5人を守る構図に(これも札幌が縦に速い展開が多くてDAZNのカメラに映ってないことが多かったですけど)なっているはずで、右WBの金子に小池、小柏には角田が対応することが多かったですが、角田は最初小林とマッチアップしているからか小柏に遅れることが多かったと思います。
  • 小柏は怪我が多いのが難点ですが、どっちかというとトップというより、後ろからスタートして前線右寄りの位置に飛び出すプレーを狙っている方が(相変わらず)チームにフィットします。キャリアの終着点はインサイドハーフでもおかしくなさそうだな、と予想しておきます。

無風のまま終了:

  • 大体支配率は4:6でしたが前半のマリノスはシュートゼロ。後半もしばらく様子見で、交代カードが切られたのは63分に西村→マルコスジュニオール、エウベル→水沼。水沼はJリーグ最強の右クロスを持っているジョーカーですが、DFを剥がす能力はさほどなので、札幌の足が止まったところで投入するプランだったでしょうか。
  • 最大の決定機はその水沼の右クロスから88分のヤンマテウスのヘッド。それ以外では、マリノスはトップに当てたセカンドボールを札幌の運動量低下と共に拾えるようにはなったものの、札幌を動かしてギャップを作ったりするのは全般に物足りない印象でした。

雑感

  • 札幌の足が止まるか心配でしたが、おそらくマリノスにそこまで動かされていなかったのか最後までほぼ持ちました。ここ数試合のマリノスとの対戦の中では、最もオープンにならなかったゲームで、それはマリノスが札幌を動かせない、ボールを運べない、前にシンプルに蹴るしかないので札幌の選手のマークがずれたり、巨大なスペースがあいたりとならなかったからでしょう。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

0 件のコメント:

コメントを投稿