2023年4月16日日曜日

2023年4月15日(土)明治安田生命J1リーグ第8節 浦和レッズvs北海道コンサドーレ札幌 〜たりないふたり〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:


  • 浦和は開幕2連敗から5試合を4勝1分けと軌道に乗りつつあります。3節から先発している興梠効果、というとわかりやすいかもしれませんが、おそらくそれだけではないでしょう。
  • この日は酒井が負傷で右SBに明本か馬渡。スタメンに前者を持ってきたのは「ビルドアップにおいて左利きの選手が必要だったから」とのことです。ただこれは見ただけではよくわからなくて、ボールを持った時に中央を見れるように、ということでしょうか。
  • 札幌は駒井と宮澤が復帰でベンチ入り。マッチアップでいうと、福森と、運動量の多い小泉のところがミスマッチ気味で気になるところではあります。



2.試合展開

西川&興梠:

  • 浦和はGK西川のロングフィード主体で組み立てます。枚数を合わせてくる札幌に対して、地上戦での前進をほとんど探っていなかったので、ある意味では、まだボール保持よりもボール非保持からチームを作っていると言えるかもしれません。
  • ただそのやり方自体は、西川と興梠、それぞれリーグ屈指のGKとポストプレイヤーの力にもよりますが非常に対・札幌の戦略としては整理されていました。

  • ボールを持っている時の浦和は、基本的にはセーフティに後方の選手がボールに触りつつ、最後はGK西川にバックパスしてコンサの前線〜DFを間延びさせてから西川がフィード。ゴニと浅野がショルツとホイブローテンを追いかけ、青木と荒野も岩尾と伊藤について前に出ていく状況になっているので、札幌のピッチ中央付近では枚数が少なくなりつつかつ間延びして手薄な状態で、セカンドボールを浦和が拾えるように仕向けていたと思います。
  • この時、配置は▼のような形で、特徴的なのはウイングが外に開いて、SBも高めの位置を取って割と近い位置にいました。ウイングの最初の役割は、マンマークで見ているコンサの3DFを分断させてカバーリングを難しくし、各個撃破を狙うこと。そしてSBもウイングも、興梠と岡村の周囲のスペースに状況を見て飛び出すようになっていて、ここはSBが出ていくこともあって流動性があったと思います。


札幌の原則を逆手に取る浦和:

  • 先にオチをいうと、この試合、ショルツのオーバーラップから先制点が生まれていますが、DF(前半はSB)が高い位置を取ったり、前線に飛び出すメリットは、札幌はマークの受け渡しをあまりしないのでたとえば荻原の攻撃参加は金子を押し込む効果が高い。
  • マークの受け渡しを積極的にするチームなら、それは田中駿汰などに任せて金子は前残りでカウンターに備えたりができるのですが、札幌相手だと攻撃の中心である両WBを押し込むリターンが大きいと見ていたのでしょう。

  • 最初のフィードのターゲットは興梠か、右サイドの明本と大久保。
  • 興梠は相変わらず体の使い方と動き出しが秀逸で、ボールが収まらなくても50:50のシチュエーションを残せるので、中盤でセカンドボールを奪い合う局面を最低限、作ることができます(岡村がクリーンにクリアできないシチュエーション)。アルゼンチンからよく輩出される「サイズはそこまでないけど競り合いに強いFW」みたいなプレーをします。
  • この、ロングフィードが蹴られて中央で競り合いが生じた時に、浦和は後方の選手が長い距離を走ってボールを回収したりスペースに飛び出しますが、これはマンマークの札幌の前線の選手、特に岩尾と伊藤をマークしている荒野や青木が、後ろ方向に走らされることになるので結構札幌としては嫌で、ファウルで序盤からプレーを切ることが全体的に札幌は多くなりますし、フィードからクイックに切り替えてプレーする浦和に、札幌はプレースピード(フィジカル的な足の速さとかよりも切り替えの意識が大きい)で遅れがちになります。そして1人が遅れると後方は枚数不足で、ギャンブル的な対応でなんとか切り抜ける様子も見られます。
  • 西川は左利きですが、この試合は右サイドへのフィードが多く、明本と大久保はいずれも左利き。冒頭に、明本を右に持ってきた理由がよくわからん、としましたが、札幌のDFに対して身体でボールを隠しつつ左足でボールをコントロールするポストプレーがやりやすいメリットはあったかもしれません。

たりないふたり:

  • 浦和の非保持の形は1-4-4-2。基本的にはミドルゾーン〜やや前からゾーナルなディフェンスを敷いて、札幌に対しては中央を切ってサイド迂回させてからインターセプトを狙います。両ワイドにはウインガータイプを置いていて、奪ってからオープンなサイドでの速攻は狙いの一つだったと思います。
  • そして浦和はボール保持も非保持も、ラインの押し上げの意識が非常に高い。対・札幌として見ると、多くのシチュエーションでゴニが最前線に残りますが、ゴニのようなあまり背後のスペースに圧力を与えられない(あまり足が速くない)FW相手ならどんどん押し上げて守っても、簡単に背後を取られるリスクはあまり感じないので、札幌に狭いスペースでのプレーを強いてミスを誘うことにつながりますし、札幌がボールを回収した時に、浅野もゴニも金子拓郎も、浦和のゴールから60-80mくらい離れた状態に置かれていました。

  • 6年間札幌のビルドアップは、相手選手5人ほどをすっ飛ばしてターゲットにデリバリーできる福森のロングフィードと、ジェイ・チャナティップのポストプレーに依存してきています。
  • 今、これらが取っ払われて(福森をフリーマン的にしておくのはディフェンスがもたないので起用法はかなり変わりました)右ウイングバックの仕掛けくらいしか得意な形が残っていない札幌ですが、浦和は1-4-4-2でセットしつつ福森のところに大久保が前に出て、ロングフィードをケアして万全の体制を敷いていました。

  • 札幌は放り込みに対して即座にピンチになるわけではなくて、そこそこボール回収もできるのですが、浦和は札幌がボール回収した状況から更に圧縮して追い込んでくるので、札幌はボールを運ぶのに苦戦していたと思います。

  • 札幌の選手がボールを拾った時に、既に浦和の選手が寄せていて誰にボールを渡せば解決してくれるのかすぐに判断ができない状況になっていて、まず先述のように金子と菅は押し下げられている。青木や福森は中央でスペースを得られない状態にいる。

  • だからコンサはゴニか浅野に預けようとしますが、この2人も最前線では浦和のCBが見ているので、簡単にボールが入って状況を変えられることにはなりませんでした。
  • それでもゴニは、アバウトなボールを入れてなんとかキープしてくれることが期待されていると思うので、ゴニもそれに応えようとしていたと思いますし、この役割は多少うまくいかなくても、こちらも放り込んで相手を下げさせるという意味合いもあって必要でしょう。
  • 浅野の場合は、雑に放り込んだらなんとかしてくれるわけでもないので(それでも意外と頑張りますけど)、基本的には足元かスペースにボールを出す必要があります。そのスペースは、浅野の初期配置(右のFW)にはあまりないのもあって、浅野はボールを受けに下がってきます。金子が高い位置を取れない、小林のような選手もいない、青木や福森はスペースが得られないということで、コンサは低めに下がった浅野から散発的な攻撃が始まるようになっていました。これは右が金子と田中駿汰、左が中村や菅で、低い位置で相手のプレッシャーに晒された時に右の選手の方がボールを保持できるのもあって、押し込まれながらも、浅野が低い位置ならなんとかボールに触れる状況ができてはいました。

  • ただ、浅野が下がるとゴニとポジションがかなり離れるようになって、ボールを持った時の相互作用はほとんどなくなります。ゴニは1人でなんでもできるわけではないので、ボールが入ったらサポートする選手が必要ですし、浅野はたまに仕掛けが成功したりもありますが1人では限度がある。2人揃わないと相手を攻略するに必要な要素が足りない状態でした。
  • そして、ハーフウェーラインから先はGKしか置いていない浦和DFに対して、浅野のスピードで勝負したいところですが、浅野が自陣まで下がるとそれが困難になります。人材の能力を発揮させるにはまず最適配置にいてもらわないといけないのですが、コンサは攻撃する前に最適配置からどんどん乖離する崩れた状況でプレーします。


中村の退場の影響:

  • 34分に中村が退場。浦和陣内で札幌のスローインから、クリアボールを岡村がチャレンジしたところで失敗、興梠が拾って、飛び込んだ中村の背中を突くように興梠が切り返した後で倒してしまいました。今の興梠(の足の速さ)ならここでファウルしなくてもよかった気がしますが、中村の、8年前の大宮でのパウロンカニバサミのようなチープな判断でレッドカード。まず興梠に対してコースの誘導もしない、ドリブルへの対応として背中を向けてしまった時点でシーズンワーストクラスのプレーだったと思います。

  • 札幌は応急処置的に、菅を最終ラインに下げて、左WBを削ったような形で対処します。そして中盤の構成を左福森、中央荒野と変えますが、福森は左サイドでもあるし中盤3枚にも見えるようなバランス感。
  • 浦和が左右にボールを振ると、基本的には中盤3枚で横スライドを繰り返します。ただこの3人だとどうやっても守れる感じがしないし、サイドに2回も振れば遅れてフリーの選手が出てくる。やられるのは時間の問題な感じもしました。


  • 41分にゴニ→駒井。配置はこんな感じでしょうか。福森を結局最終ラインに置いて、菅を前に出したのは、得点するには菅の攻撃参加が必要だからでしょう。FWどちらかを諦めるとして、スピードのある浅野を残したのも理解できます。
  • 駒井は、浦和のCBがボールを持っている時は前に出て2トップのようなポジショニングをして、アンカーの岩尾やCBから簡単に前に運ばれないようにケアします。そこを突破されたら中盤3枚に加わって中央〜右サイドをみるというもの。あとは、浅野を前での仕事に集中させるために、後ろと前線を繋ぐ期待もあったと思います。こうした複雑なタスクを任せられる選手の有無が戦術に幅をもたらします。


  • 札幌が5バック気味にしたとはいえ、1人少ないのでスペースができるはずなので、浦和は空いていそうな状況で飛び出しを続けます。駒井が入った直後に、左サイドのパスから大久保が福森の背後をとってトラップからシュート。ソンユンがブロックして、伊藤が詰めますが枠外。決まってればこれだけで終わりだったでしょうか。

勝負どころは今か先か:

  • 後半になるとまた札幌が配置をいじって、結局菅を後ろに戻して福森はアンカー。先の、大久保の飛び出しを見てビビったのか、散々検証されましたけど、福森は前にはまぁまぁ対処できるけど裏には恐ろしく弱いので(これは岡村以外の札幌のDFは大体そうなのかもしれませんが)、この相手だとやはり無理、ということでしょうか。


  • 浦和は、小泉が前に張っていたのは、おそらく札幌のアンカー(基本的には福森)が相変わらずマンマークでついてくるので、そのアンカーのマークを中央からどかすためだったでしょうか。そうすると札幌は6人がゴール前に張り付いて、浅野がトップ、中央には荒野と駒井で、2人いるかいないかくらいのスカスカな状態になる。
  • あとは、浦和は中央でもいいし、荒野や駒井が出てきたらサイドに逃してもいい。そんな感じでセーフティにボールを動かしながら、札幌を撤退させて、浅野を含め全員が札幌ゴールから30mくらいのところに釘付けにして危険を取り払ってからプレーしていました。

  • 札幌のサポーターはそういう状況でも頑張れ、攻めろというのですが、この位置でボールを奪っても何かをするには、長い距離をドリブルで走るとかが必要で、それができそうなのは荒野だったり金子だったりですが、相変わらず守備負担が大きいしピッチのかなり後方にいます。それでもチャンスだと見て札幌の選手が何度か出て行って、そのあたりは普通に能力があるな〜と思いました。それは45~60分くらいで3回くらいあったでしょうか。
  • ただそうしたかなりの頑張りも含めて、時間的に最後まで持たないので、浦和としてはまだ60分くらいまでは慌てないでいく方針だったでしょうか。だいたい45~60分は、浦和はボールを持つけど意図的にシュートで終わらせない、札幌は逆に、ボールを持ったら全部シュートになんとか持ち込みたい、ということで、シュートかそれに近い攻撃機会は両者とも3:3くらいで実は同等でした。

ボロボロだけどまだついている…が:

  • 64分に浦和は小泉→ホセカンテに交代。スコルジャ監督曰く「2トップにした」ということで、この交代は5バックを崩せる選手を入れたので、ゲームのテンポを変えて、ゴール前の局面を増やしていこうとのメッセージでしょう。札幌を走らせ、疲れさせる局面は終わったということです。
  • 札幌は67分に浅野→中島。先に得点経過からですが、この交代直後、68分にショルツのインターセプトから浦和が先制します。

  • まず中島の投入について。これはホセカンテが入ったのとは関係がなくて、浦和の高い位置をとるCB背後のスペースを強襲できるロングスプリント能力のある選手が欲しいからでしょう。一方、大嘉は日々やれることが増えてますが、この試合のような難しいシチュエーションだとまだ駒井の指示を受けてのプレーになります。
  • 具体的には、普段だったら相手のCBだけをほぼ見てればいいのですが、このシチュエーションだと1人足りないのでそれだけでは守備をはめられないから、CBを捨ててアンカーを見たり、CBが運んできそうならそちらに切り替えたり、それともDFライン付近まで下がるかの判断が難しく、これは駒井が大嘉に細かく声をかけて対応していました。

  • ショルツのゴールは、大嘉が自陣深くまで下がってから札幌がボール回収したところから。この時、ボール回収した福森は前の選手にまず当てたいのですが、大嘉が引くのか、裏に走るのか、空中戦で競るのか上手く連携が取れないところで中途半端なパスをして引っ掛けられた形でした。浅野はこういう時に注意深く(受け手の意図を理解して)プレーしていて、また浅野の場合は高さがないので、味方も足元に当てる共通理解があったのですが、大嘉にどこで当てるのかお互いに出し手も受け手もメッセージが出せないところを狙ったショルツのintelligenceが光りました。
  • もっとも札幌の体力を考えると、やられるのは時間の問題だったかもしれませんが。

  • この直後に伊藤の浮き玉パスから興梠が抜け出して、荒野が交錯して溢れたボールを関根が拾ってシュート。しかしオフサイドの判定で命拾いします。
  • そしてリスタートを札幌がGKクソンユンにバックパスしたところにホセカンテが突っ込んで、VARの結果レッドカード。この2つの判定でスコア0−1、選手の数は10vs10で、まだいけるか?といったシチュエーションで残り20分に突入します。

  • お互いの陣形を整理すると浦和は1-4-2-3ないしは1-4-4-1。札幌は変わらず1-3-4-2みたいなもの。マッチアップはほぼ噛み合った、札幌としては一番やりやすい状態でしょうか。


  • しかしリスタート直後に福森のサイドチェンジが荻原に引っかかって浦和のカウンターから、その荻原のオーバーラップからのクロス、興梠胸トラップからのシュートをスライディングで防ごうとした青木のハンドでPK。これを興梠が決めて0−2。

  • まず札幌としては人数が同数、浦和のゴール取り消しもあって「よし、いこうぜ」というところで福森のサイドチェンジのミスが痛かったです。サイドチェンジはこういう怖さがあるのでザッケローニはあまり好いていませんでしたが。
  • ただコンサのサッカーはこういうリスクを全く考えないので、普段通りともいえますね。あとサイドチェンジはコンサの唯一のビルドアップ方法なので、これもやるなとは言えないですよね。
  • あと青木のPKは仕方ないと思います。(↓前半終了時の)予想通りではありましたけど。

  • スコア2-0となったのもありますが、浦和も一人減ったことであまり前から圧力がかからず後方4-4ブロックで構えるような状態になります。札幌は田中がボールを運んだところから菅の個人技で1点を返しますが、

  • 最後はモーベルグの突破とセットプレーから2点を失って終了。

雑感

  • まず中村。全体的に、カップ戦でもそうなのですが「なんかうまくいってるけど実はめちゃくちゃ危ない判断のドリブルとかインターセプト」が非常に多くて、その辺がいまだに最終ラインのDFとしてはまだ信用を得られてないのは前から感じてましたが、このままだと厳しいというか、正直コンサのスカッドだから許されているようなところは感じます。5年目ということで、そろそろ勢いだけで試合に出れる、から脱却しないといけません。
  • 戦術的には、退場が関係なく中島(サイズもありロングスプリントができる)の投入が70分以降くらいでキーになりそうだなと思って見てました。逆にいうと、大嘉のポテンシャルに完全ベットしないといけないくらい、スタート時点から浦和がゲームとスペースをコントロールしていて、正直なところ退場がなくても難しかったですし、コンサのシンプルなマンマークプレスに何もできない横浜某ノスとかがあった中で、ここまでは浦和が一番ゲームプランもパフォーマンスも優秀だったと感じます。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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