2023年5月23日火曜日

2023年5月19日(金)明治安田生命J1リーグ第14節 北海道コンサドーレ札幌vs京都サンガF.C. 〜ボールの奪いどころ〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • 3連敗で札幌に乗り込む京都は、2節(vs名古屋)と12節(vsマリノス)で3バックの1-3-4-2-1を採用していますがいずれも敗れています。
  • 基本的に京都は相手ボール保持に対してミラーの布陣を作り、敵陣高めの位置からマンマーク基調強めで人を捕まえる、いわゆる広く守るプレッシングをしたいようなので(この考え方はコンサと同じですね)、それがやりやすい布陣ということでたまにCB3人の3バックにするようです。
  • それでいうとコンサもボール保持時は1-4-1-5になる(ならないときもあるけど、基本的にはこれになりたがる)ので、3バック採用でもいい気がしますが、この日は1-4-1-2-3のいつもの布陣を採用しています。
  • スタメンは、ここ数試合重用されていたFWの山﨑と左ウイングの木下に代わってパトリックと木村。なお、曹貴裁監督のいう選手の役割(リードアクセルとか)はいちいち表記が面倒なので今回はなしとします。
  • コンサはスタメンもサブも前節の湘南戦から変わっていません。


2.試合展開

試合の基本的な構造(京都には奪いどころはあるのか?):

  • 戦前の予想通りですが、お互いに敵陣から人を捕まえてボール保持者に圧力をかけていくことは、同じくらい関心があるようで、かつそれはある程度できていたように思えます。またGKに対してはそこまで追わないので、pressing合戦のアウトプットはお互いのGKにフィードを蹴らせることに一旦はなっていたと思います。
  • となるとGKのフィード能力と、またその選択が誰に渡すか、ボールを渡された選手は何をするか?が互いの命運を分ける要素になります。
  • 京都はこのシーズン、一貫して左ウイングにサイズのあるFWを起用している(木下、木村、一美)のと、またセンターFWにもパトリックor山﨑という長身の選手を併用しているのは、build-upにやや難があるためでしょうし、札幌みたいな相手に対する一つの解決策にはなります。しかし札幌には岡村がいるので、パトリックの空中戦でもそこまで簡単にボールを味方に届けることは難しそうでした。

  • それに比べるとコンサはFWにサイズがないので、菅野はFWではなくSBの田中駿汰と福森へのフィードを狙っており、コンサが比較的クリーンに前進するとしたらこのサイドの選手にボールが渡ってからでした。
  • 京都は、pressingの噛み合わせは完全な一対一関係が10個あるのではなくて、インサイドハーフの松田と福岡がSBに出て、アンカーの川崎が札幌のアンカーに出ることが多かったと思います。

  • 基本的には相手にプレーさせないなら、コンサがやってるみたいにボールサイドでは常に相手にへばりつくような対応の方が、勿論desmarqueで打開するという選択肢はあるとしても、パスの出し手も常にマンマークで監視されている選手にはボールを預けるのを考えざるを得ないですし、そういう意味では、純粋なマンマーク10個関係ではない京都の対応は、コンサとしては「空いてるっぽい選手いるしパスしてみよう」と思わせる対応だったとは言えるかもしれません。

  • 気になったのは、たとえば上記の図で菅野から福森には、菅野はフィードを蹴る(ボールをデリバリーする)能力があって、福森はそれをコントロールして収めたり、相手の寄せが早かったらワンタッチでフリック気味に味方にパスしたりする能力があります(これは必ずしも成功するとは限りません。あくまで余地があるということ)。
  • このとき、菅野→福森のパスが浮き玉に必ずなりますし、また福森もそんなに時間をかけてコントロールできないのもあって浮き玉の状態のまま処理することが多く、駒井や菅にボールを浮き玉で渡そうとすることが多いのですが、一般にはダイレクトで浮き玉→浮き玉という展開はあまり丁寧なパスではないと思いますが、丁寧ではなくともコンサが少ないボールタッチで速くボールを動かしていた、とは言えるかもしれません。
  • そして特にこのサイドでの攻防で、コンサが浮き玉を使って速くボールを動かすと、京都の右SBの白井だったり中盤の福岡だったりはコンサの選手に寄せてもボール回収に苦戦する状況だったと思います。
  • おそらくこれらの選手は、地上戦であれば寄せの速さだったり運動量を活かしてもっと効果的なpressingができていたと思うのですが、浮き玉を競るというシチュエーションになると身体的なサイズだったり強さも求められます。

  • 特に最終ラインの白井や佐藤のところでボールが奪えないとするなら、京都はもうあとはセンターバックのところまでボールの奪いどころがなく相手にゴール前まで侵入されやすい構造だと言えます。
  • 前線とセンターバックはサイズがあるのですが、中盤の3人とSBにはサイズがない選手が多いので、去年は井上がアンカーをやっていたこともありましたが、この点は京都の気になるところです。
  • 失点パターンの一つに、サイドからのクロス対応でDFがスライドしてボールサイドに絞るけど、毎回サイズのない(かつそんなにボックス内での対応がうまくない)SBがファーサイド〜中央付近を守っているところを狙われているのも、対京都では以前からよく見られる場面で、やはり各チームともこの点はまず注目するのでしょう。

金子拓郎への対応:

  • 総括するとたくさん走ったり動いてはいるけど、ボールを狩ること自体はそこまで得意ではなさそうな京都。動くほどオープンな展開になることもあって、札幌はキーマンの金子にボールが入ることは序盤から多かったと思います。
  • 金子にボールが入りそうな状況だったり、コンサが京都のゴール前で枚数をかけた崩しに移行できそうなシチュエーションでは、京都はゴール前の枚数を増やして1-4-5-1のような陣形でセットして守ります。
  • そして、特に金子に対しては左SBの佐藤響が1人で対応するのではなくて、ウイングの木村がプレスバックして2人で挟むような対応を考えていたようです。
  • この試合、木村はレスター岡崎を彷彿とさせる驚異的な運動量で攻守に渡って奮闘しますが、金子の突破から浅野のゴールが決まった70分過ぎにはかなり運動量が落ちていました。それでも最後まで起用したのは、おそらく木村のタスクを任せられる選手が他におらず、またそれは札幌対策で不可欠と判断したのでしょう。

  • 京都としては、佐藤は木村のプレスバックが間に合ってから2人で対応したかったはずです。しかしコンサは相手がセットできていない状態で速く攻撃に移行して何らか仕掛けることが今シーズンは多く、この試合も、金子は佐藤しか準備できていない、もしくは佐藤も準備できていない状態で仕掛けを開始します。佐藤は木村のサポートを得られず金子との1on1がしばしば繰り広げられ、7分にはその金子の右足クロスから、ボックス内で小柏がファウルを誘ってPKで、札幌に先制点が入ります。
  • 木村のサポートが得られない時の佐藤は、金子に対して正面に正対もしくは左足カットインを警戒する守り方をしていました。しかし金子は今は右足でのフィニッシュで結果を残せるようになっていて、先制点も京都のDFとMFの間への右足クロスから。右足を切っていないと守れない選手へと進化を遂げているのは、札幌の攻撃陣の好調さの大きな要因と言えるでしょう。
  • ただなんらか試合中に指示があったのかはわからないですが、試合途中からは佐藤が金子の右足を切る対応に変えてきた印象で、そうすると縦突破が封じられた金子の勢いはやや陰りを見せます。

互いに走ることと蹴ることにフォーカス:

  • 終始ボールを捨てていた京都は、41分に見事な攻撃から同点に追いつきます。
  • 見切れてますが、自陣でCB2人+アンカーで、札幌の前線3人と3on3の状態からスタート。パトリックに縦パスを入れて、パトリック→福岡→白井と速いワンタッチパス2本でクリーンなbuild-upが、おそらくこの試合両チームを通じて唯一成功した場面でした。
  • 多分京都はこういうプレーをもっと増やしたいんでしょうけど、それならボールを捨てすぎている感じはします。

  • 後半になると札幌は立て続けに宮澤、田中駿汰が負傷で交代カードを使います。
  • 展開としてはオープンですね、としか特に言いようがない中で72分、金子の右突破に浅野がヘッドで合わせて勝ち越し。
  • 動画の見切れてる部分で実況のアナウンサーの方が「オープンな展開から…」と言ってますがまさにその通り。互いに攻防が早く切り替わる中で京都は木村が頑張って戻ってきますが、先に書いた通りハードワークの代償でガス欠気味で簡単に振り切られてしまいました。

雑感

  • あまり京都の試合は観てなかったのですが、思った以上に、走ることと蹴ることにフォーカスしている印象で、ゴールは見事でしたがそれ以外はあまり怖くないというか、ボールを捨てすぎていて確実性に欠ける印象でした。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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