2020年1月24日金曜日

北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(6) ~選手個別雑感その4~

北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(1) ~偽りの2人と偽れぬ要~

北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(2) ~失速の背景~

北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(3) ~選手個別雑感その1~

北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(4) ~選手個別雑感その2~

北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(5) ~選手個別雑感その3~

GK&DFの選手編。感じたことのメモ。


・GK1 菅野孝憲


 札幌が天皇杯に参加していないことを考慮すれば、唯一のカップ戦では準決勝までの10試合を守り抜いて決勝進出。この大会では多くのゲームでチャナティップも、深井も宮澤もスタメン起用されておらず、右のDFに至っては遂に頭数がDF扱いとなった早坂の起用も相次いだ。そんな状況でシュートの雨あられを浴びつつも、札幌をクラブ史上初のタイトル目前まで引っ張っていたのは間違いなく菅野だった。
 そして小野が去った後のチームリーダー、もしくはバランサーとしての存在感も高まっている。チームのムードメーカーとして度々名前が上がるほか、ルヴァンカップ準決勝のアンロペ遅刻事件の仲裁を買って出るなど、明らかにこのグループの中心にいることをうかがわせる様子が垣間見れる。
 トータルで見て、第2GKとしては文句のつけようがない活躍だった。2020シーズンは奇跡が起こらなければソンユンのラストシーズンになる。その次は、中野小次郎くんの加入もあるが、クラブとしての菅野にかかる期待は短期的にも中期的にも小さくないはずだ。

・GK25 ク ソンユン


 プレーに関して言うと、ソンユンの変化はチームがアグレッシブなスタイルを敷くことに伴い、びっくりするほど前で守るようになったことが挙げられる。この簡単に見えるが非常に難しい役割を押し付けられたにもかかわらず、いい意味でいつものソンユンらしさを失うことはなかった。横浜F・マリノスの飯倉のように、前で守っている頭上を抜かれることは稀だった。
 大柄で俊敏なソンユンから得点するには、かなりの崩しのクオリティが求められる。相手チームからすると、幸いミシャチームは後方に枚数を割く指向性はないので、まずは即効でDFが揃っていない局面を狙う。それができない状況では、ボックス内で横に揺さぶらないとソンユンの攻略は難しい。流石に高速で左右に振られるとソンユンでも守り切れないが、これはGK個人の問題ではない。195センチの長身故に、ハイボールを苦にしないことはチームにとっても非常に大きなアドバンテージだ。
 そんなソンユンだが、東京オリンピックのオーバーエイジで韓国代表に選ばれ、メダルを獲得しない限りは2020シーズン限りでKリーグに移籍しなくてはならない。現実的には難しい状況になってきており、ラストシーズンと心の準備をしておく方が良さそうだ。

・DF2 石川直樹


 「宮澤リベロプロジェクト」が成就していれば「5人目のDF」。だったはずが、プロジェクトが頓挫して4人目のDFに繰り上がった。2019シーズンはまず春先の故障に苦しみ、復帰後も最終ラインの選手に求められる水準のインフレもあってリーグ戦では出場機会が少なかった。「ルヴァンカップで勝っていれば引退していたと思う」とのことだったが、確かにピッチ上だけを考えるとそうした時期なのかもしれない。それでも福森の不在時には、唯一代役として考えることのできる貴重な左利きDFとして、そしてベテラン4人衆(ジェイ、菅野、早坂、石川)の一員として、まだまだ頼りにされる状況はあるはずだ。

・DF3 進藤亮佑


 フルタイム出場を果たした2018シーズンに続き、1試合欠場したのみの極めて高い稼働状況。相変わらず扱いは悪いが、層が薄い最終ラインで確実に計算できるDFとして不可欠な存在だ。各種スタッツで流石に誰も無視できない領域に入ってきたことで、出場機会こそなかったもののA代表にも選出された。ただ、そうした高稼働状況が祟って終盤戦は足に故障を抱えながらの出場で、ルヴァンカップ決勝のようなビッグゲームで万全だったらば…と思うところもある。進藤だけではないが、負担を減らせる選手の台頭が待たれる。
 右サイドで組む選手が早坂、駒井からルーカス、白井に代わり、特にルーカスにいかに攻撃的に振る舞わせるかを試行錯誤していたシーズンでもあった。また、左の菅からの崩しが少なく右偏重だったことで、サイドチェンジ役としての要求も減少し、流れの中では基本的には後ろで個の力を発揮して相手のアタッカーをシャットアウトする役割がメインだった。
 2020シーズンの期待を書くならば、左サイドから崩されることはわかり切っているので、DFとして”無理げー”な状況でも踏ん張るべく、ミンテや周囲の選手をまとめるリーダーシップや、個人としての危機管理を磨いてDFとしての評価を高められるか。

・DF5 福森晃斗


 福森はDFというより「福森」というポジション、役割だと考えた方がよい。左足は文句なしに凄い。問題はピッチ上で、「3バックの左DF」にしか置くことができない。4バックだと置けるポジションがないし、中盤起用は難しいことが判明している。野球でWARという指標があるが、福森の貢献度を攻守の差し引きで考えるとどうなるのだろうか。
 もう少し定性的な話をすると、相変わらず攻撃のスイッチ役として冴えていた。チャナティップとのコンビは札幌の強力な武器だが、2019シーズンの傾向を見ると、チャナティップを消すことを優先していたチームが多い。よってチャナティップを経由しない展開…福森のロングフィードが頼りにされることは依然として多かった。
 他方、守勢に転じた時は明確に狙われまくっていた。福森の対面に高速アタッカーを置いて背後を強襲するのはもはやお約束そこまで速くない選手が対面でも攻略されていた)で、ここをチームとしてどうカバーするかは年間勝ち点のうち10ポイント程度を左右すると言っても過言ではない。ミシャも福森周辺ではかなりのカスタマイズをしており、一時期はボール保持時に常に前に置く(後ろは深井に任せる)等も試していたが、本質的には「福森」という役割で起用している限りは、「失点以上に得点する」以外に解決策がなさそうな状況だ。

・DF20 キム ミンテ


 最終ラインでは唯一、身体的な強さと速さを兼ね備える人材として、開幕当初は控え扱いながら必然とその重要性は証明されていく。リーグ戦だけでなくカップ戦でもフル稼働した、深井と並ぶ2019シーズンのチームMVPだ。
 相手を見て穴を突くのは当然だとして、ミンテがいると高さと速さ、スペースがある状態でのボールへのアタックなど、チームが抱えている穴の幾つかを覆うことができる。これは宮澤を中央で起用した時の、「ボールを保持しやすい」を遥かに上回るメリットで、その存在が周囲の選手をいかに助けているか、プレーしやすくしているかは計り知れない。
 普通に考えてベンチに置くことは考えられないが、普通ではない監督のミシャの信頼はまだ70%といったところで、チームの硬直化を避けるためのバッファとしても位置付けられている。「試す」ならミンテではないというのが筆者の意見で、ミンテがいないチームは実験体でしかない。タイトルを、と言うなら、もう実験は終わりで、誰が起用されるべきかは目に見えている。

(この企画おわり)

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