2020年1月12日日曜日

北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(4) ~選手個別雑感その2~

北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(1) ~偽りの2人と偽れぬ要~

北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(2) ~失速の背景~

北海道コンサドーレ札幌の2019シーズン(3) ~選手個別雑感その1~

アウトサイドの選手編。感じたことのメモ。



・FW4 菅大輝


 Q:菅ちゃんはなぜバックパスが多いのか?
 Q:菅ちゃんはなぜドリブルで仕掛けないのか?
 Q:菅ちゃんはなぜ頻繁にダイレクトでクロスを上げていたのか?
菅がバックパスをする理由は…

 A:斜め後ろにJリーグ最強の左足キッカーがいるから。
 A:斜め後ろに「全てが遅い」DFがいるから。
菅が相手DFを引き付けて福森をフリーにさせる効用が大きいから


 中野という強力なライバル(ベガルタ仙台の崩しの切り札で、年齢的にもキャリアのピークを迎える時期だ)の加入がありながらも、代表招集されていた期間を除けば左ウイングバックのポジションをシーズンを通じて守った。その要因は福森との補完関係にあり、縦の可動範囲が広い菅の存在は、フリーマン然として動く福森には不可欠なパートナー。2016年、J2優勝直後の特番で、堀米悠斗について「指示通り動いてくれるのでやりやすい」と語っていた福森だが、菅も同じような役回りになっている。
 この意味では、表面上のゴールやアシストといった数値を菅ファンはそこまで気にしなくていい。代表チームの監督がどこを見ているか、という観点では気にしなくてはいけないかもしれないが。

 札幌でのプレーに関して言うと、右シャドーにアンロペや武蔵の起用もあり、左シャドーのチャナティップがシャドーというより、より下がった位置で攻撃を組み立てる仕事が増えている。そうなると、菅はアウトサイドだけでなく、より中央でのワイドストライカーとしての貢献は引き続き求められることになる。2019シーズンは、右WBに仕掛け役として計算できるルーカス、白井の2人を確保できたので、「右で崩し、左の菅がファーに突っ込む」形は2020シーズン以降はより顕著になりそうだ。

・MF7 ルーカス フェルナンデス


 (1)の記事で、「札幌は資産になる若い選手を完全移籍で獲得する方針を打ち出している」と書いたが、その方針を曲げてまで期限付き移籍で獲得したことから、開幕当初のルーカスへの期待の大きさは想像がつく。
 23歳にして初めての国外移籍は地球の裏側、環境が全く異なる北海道で、あまり一般的ではないシステムのチームで右ウイングバックを任されることになった。アンロペ、ウリセス通訳、ブルーノコーチ、セウソ氏、そして札幌市西区には全く似つかわしくない美人な奥さんのサポートもあってか、大きな故障やトラブルがなくシーズンを乗り切ることができたことは、次のシーズンを見据えるとまずまずの加入1年目だったと言える。

 左の菅の役割が「バランスを取る」、「秩序を守る」ことだとしたら、ルーカスは相手の守備組織を破壊するミッションを担うことが期待されていた。タッチライン際の狭いスペースでもパスをコントロールできるボールタッチ、得意の右足側を切られてもドリブルでやり切ることができるスキルを見れば、期待した通りのクオリティは持ち合わせていたことがわかる。
 それが、夏場に白井にポジションを奪われてしまったのは、白井本人の好調がまず一つだとして、「ウイングポジションでプレーしていない時」のプレーは白井の方が安定していたためだ。ウイングバックを排し1-4-4-2でスタートした、第8節の横浜F・マリノス戦でマリノスの左サイド相手に無双したことからも、やはり(わかりきっていた話だが)ルーカスはウイングバックではなくサイドハーフの選手であり、ルーカスが輝くには、本人がどうにかするよりも、チームとしてルーカスをどれだけ前での仕事に専念させる構造を作れるか、にかかっている。もしも日本にあと3年くらいいれば、ミハエル・ミキッチのようなウイングバックに変態する未来もあるかもしれないが、ルーカスは現状でもミシャのオーダーに十分に応えていると筆者は考えている。

・MF19 白井康介


 カップ戦要員から6月以降に開眼し、ルーカスからポジションを奪い、夏場は完全に崩しの切り札となっていた。
 開眼した要因は、J1のクオリティに慣れた、戦術にフィットした、というのもあると思うが、筆者が考える一番の理由は右で固定されたから。ミシャチームのウイングバックは、相手のDFが整ってから仕掛けることが多い。左サイドで起用された時に、スペースがない状態で縦に仕掛けようとしても、基本的に右足しか使えない白井はフィニッシュで問題が生じてしまう。右サイドで常に縦を意識し、読まれながらも常にフィニッシュ(右足クロス)の選択肢を残したまま、白井本人が迷いなく仕掛けられる状況が作れたことで、チームにとって欠かせない戦力になった。
 ルーカスの完全移籍が決まり、ポジション争いは依然として厳しいが、負担の大きいウイングバックのポジションで計算のできる選手が2人いることは、チームにとっては大きい。「この状態の白井」がシーズン開幕からスタンバイしていると考えると、2019シーズンからの上積みの一つとも言えそうだ。

・MF23 中野嘉大


 他の選手にはない武器を少なくとも2つ持っている。一つは、相手DFの視界を横切るドリブルからのラストパス。
中野の特徴1(相手の視界を横切り、引き付けるドリブルからのラストパス)

 もう一つは、味方の対角パスに合わせて、DFの死角から走り込み、背後を取るプレー。
中野の特徴2(視覚からの飛び出し)

 使う側にも使われる側にもなれるので、ベンチに置いておくと起用できるシチュエーションが多い。特徴が理解されたシーズン後半以降は、20分の出場機会が与えられれば、必ずチャンスを1回は作っていたし、ルヴァンカップ決勝では10分に満たない出場時間ながらも仕事をしていた。
 スタメンでも十分に出られるクオリティがあるが、そうはならなかった理由は、やはり福森との補完関係にあるのだろう。福森が最終ラインにおり、中野がその外側を守るシチュエーションならばよい。問題は、福森は頻繁に「最終ラインにいない」状態になる。そこをカバーしているのは、超人キム ミンテと菅だ。中野は「無理がきかない」ので、福森と並べる使い方には限度があると考えられているように見える。
 もう一つは、(それこそチャナティップ、福森のような)パサーが札幌の右サイドにはいないこと。右サイドにボールが動かされると、そのまま右でフィニッシュに持ち込むパターンが多く、あまり中野の駆け引きは見てもらえなかった印象がある。ミシャは一時期アンロペにその役割を担わされないか矯正していたが、消化不良に終わってしまった。
 ただ、攻撃面の特性を考えると、右足で中央方向に切り込んでいく中野と、左足でプレーする福森は一般論としては相性は悪くない。チーム(というかミシャ)が志向する方向を考えると、間違っていない補強だったしもっと出場機会が与えられても良いはずだ。

 一方、左ウイングバック以外でのプレーについては、J1上位のクオリティがあるかというと何とも言えないところ。元々攻撃的MFだけあって、本人も「シャドーでも使ってほしい」としていたが、チャナティップのところにそのまま当てはめたとしても、どちらかというとセンターサークル付近でプレーすることが多くなっているその仕事をシフトさせられるようには見えなかった。しゃどーとして、よりスペースがないエリアで得点に絡むプレーができるなら心強いが、現状はアウトサイドの切り札だろう。中野が投入された時は、彼がいつDFの背後に飛び出すか駆け引きしているところを是非観察して欲しい。

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