2024年12月15日日曜日

北海道コンサドーレ札幌の2018-2024シーズン(3) 〜10試合+αで足跡を振り返る〜

3.ピッチに残された足跡

  • プレーについて細かく振り返ろうとしましたが既に大半のことには言及しているので、この7シーズンの中で説明に適している10試合をピックアップして振り返ります。と思いましたが、10試合では留まらなかったので多めにピックアップしています。

3.1 2018シーズン

リーグ戦第2節(vsセレッソ大阪、△3-3)


  • 新監督就任2試合目でまだどうなるかドキドキワクワクという状況でしたが、結果的にはこの時に見せたプレースタイル…長いボールを多用してリスク回避をし、センターラインにパワーのある選手(宮澤、深井、ミンテ、ソンユン)が跳ね返してゲームを作る。相手ゴール前でもジェイ・都倉(サブの印象ですが19試合に先発出場している)のパワーを突破口とする…という前監督のスタイルを踏襲したものがその後、7年間にわたって繰り広げられることとなりました。
  • これは一応、伏線があり、このシーズンのキャンプではGKとCBで自陣ゴール前からボールを運ぶことにトライしていたようですが、キャンプ中のトレーニングマッチでそのGKやDFのミスから立て続けに失点してJ2のジェフに0-4で完敗、ということがあって、そこから路線変更というか「無理なら繋がずに蹴って良い」とする指針になったようです。リーグ戦が開幕して、広島相手に開幕戦を落としたのもあって、この考え方はより強固になったということも考えられます。
  • またこの頃は中盤センターに宮澤と深井が起用されていて、この2人のいずれかがDFの間に下がれば繋ぐ、繋ぐ気がないなら下がらない、という調節弁でもあり、特に序盤戦は「下がらない」選択が多かったと記憶しています。

  • 前監督のために用意されたスカッドを引き継いで、整理できていない状況ですのでので初年度としては別におかしいことではないのですが、問題は2年目以降にスカッドの整理が進んでもあまり変化が見られず、前線に蹴るチームのままだったということです。

リーグ戦25節(vsヴィッセル神戸、⚪︎3-1)


  • ミシャコンサは美しいチームだったとする思い出と共に心地よい眠りにつきたいならこの試合を何度も見返すことがおすすめです。
  • ポドルスキが左ウイングで先発(試合中盤に退場)した神戸の前線守備は非常にルーズで、そこを突破してしまえば横幅を4枚で対応する神戸のDFに対し面白いようにサイドチェンジが決まり簡単にDFが崩壊します。7シーズンを通じてこういう相手ならミシャコンサの得意な要素を発揮できましたし、毎年こういう対応をしてくるチームが未だに1つか2つあることはJリーグ7不思議の1つにノミネートされてもよいでしょう。

リーグ戦26節(vs川崎フロンターレ、⚫︎0-7)


  • 中断期間の9月6日未明に北海道胆振東部地震が発生します。私もたまたま帰省していたので覚えていますが、札幌でも地区によっては7日の夜頃まで停電が続き、リーグ戦の中断期間だったコンサは調整不足の状況で川崎に向かったというゲームでした。
  • 一方でこのスコアは、調整不足の中でこの年リーグを連覇することになる川崎とアウェイで対峙する…という最悪のシチュエーションだったからと言い訳に逃げてしまうと、この7年間のサイクルに対する解像度が下がります。
  • コンディション以前にコンサはボールを持っている際のポジショニングが整理されておらずうまく敵陣にボールを運べないため、そこからのミスで簡単にボールロストから失点を重ねてしまいます。

  • この試合後は、①キム ミンテが干される、②駒井がウイング以外の役割に移行、というサイクルの中でもかなり大きな戦術的なターニングポイントがありました。
  • ミンテはビルドアップにおけるミスの責任を取らされた形で(後に定位置を奪い返す→干され を2ど繰り返します)、確かにコンサでのミンテはポジショニングやボディアングルに改善の余地ありで、なかなかそこが改善されなかったのがミシャの信頼を完全に得られなかった要因ではあるのですが、22シーズンに岡村の台頭まではミンテの控えが宮澤しかいないという歪な編成(しかも岡村が登場するとミンテを放出する)で、コンサはしばらく「ミンテではボールを運べない」→「宮澤だとスピードや対人守備に課題」とする、特に重要なポジションでボトルネックの無限ループが繰り広げられます。
  • 駒井はこのシーズンの開幕からウインガーとしてプレーしていました。この大敗くらいから今、我々が知っている駒井らしさ…下がってボールに積極的に関与するが、本来いるべきポジションや役割を放棄する…が顔を出すようになり、それは右ワイドでの起用でも同じで、以後駒井はウインガーとして仕掛けるよりも、ビルドアップの出口になる振る舞いのプライオリティが高まります。
  • この18シーズンの残りのゲームにおいては「とりあえず駒井にボールが渡る」が、ボールを落ち着かせる観点で意味のあるものになっていたと記憶していますが、故障で駒井がほぼ全休した19シーズンを経て、20シーズンから中央で起用されるようになると、「下がって受ける駒井」の別の影響が軽視できなくなっていきます。

3.2 2019シーズン

  • 武蔵、アンデルソンロペス、ルーカスフェルナンデス、白井、岩崎、中野、といった選手が加入し人件費に大型投資を行ったシーズン。
  • 特に前線に、三好の代役としてアンデルソンロペス、都倉の代役として武蔵が選択されましたが、2人ともこの頃は味方を活かしたりスペースを作るというよりは、味方が作ってくれたスペースに突っ込むプレーが得意な選手であったため(今は2人ともセンターFWとしてプレースタイルを変え円熟味を感じさせます)、コンサは地上戦での高速カウンターという強力な武器を得ます。
  • そして宮澤のDF起用と駒井の故障もあり、前年15試合スタメンだった荒野が26試合でスタメンと台頭します。この頃(大怪我前)の荒野は走力に長けており、速い展開(ボールが前後に行ったり来たりする試合展開)では宮澤や深井とは別の部分で存在感を発揮し始めます。

リーグ戦第2節(vs浦和レッズ、⚪︎2-0)

  • アンカー(エヴェルトン)を置く浦和に対しコンサはチャナティップがトップ下の1-3-4-1-2。コンサのマンツーマン守備で浦和を嵌めてカウンターから2点を奪って完勝でしたが、そもそも3バックでコンサの2トップ相手に数的有利下でも何もできない浦和の側により大きな問題があったと振り返ることもできます。
  • (たいして上手くもないのに)ボールを持とうとしてくれるチーム相手、アウェイで、かつ先制点を奪えればカウンター狙いに専念できて当たり前ですが非常に楽な展開で、コンサが上位のクラブに勝つ時はだいたいこのパターン。
  • 1点目はアンデルソンロペスの見事なポストプレーとアシストから。しかしアンロペがこうした器用なプレーを見せるのはこの当時は大変稀で、序盤戦の大爆発と怪我から復帰した後は相手DFに向かってひたすら無謀なドリブルを繰り返してロストをするだけの選手に成り下がり、彼の覚醒にはあと1年ほどを要します。この試合はジェイが不在、前線の枚数も少なく、浦和相手にカウンターでスペースがありアンロペが自由に動きやすいということがかなりプラスに作用したのでしょう。
  • そしてアンロペが右シャドーとしてフィットしなかったため武蔵がその役割に収まりますが、武蔵もまた右シャドーとしてのプレー(三好がやっているような)は難しいので、コンサは左シャドー(チャナティップ)と2トップ(ジェイ・武蔵)のような変則的な左右非対称布陣が定着し、中盤でボールを受けて展開するという役割が唯一できるチャナティップへの依存度は大きくなったと思います。


リーグ戦第9節(vs横浜F・マリノス、⚪︎3-0)
  • コンサのホームでしたがF・マリノスはボールを保持しようとアグレッシブにプレーしますし、コンサはカウンター主体で良しとするので浦和戦と同じ展開になりますし、またもコンサは2トップということでアンデルソンロペスが輝きを放ちます。

ルヴァンカップ決勝(vs川崎フロンターレ、△3-3)
  • 深井のドラマティックなゴールなど美しい思い出として永遠に記憶されるゲームだと思いますが、戦術的には18-19シーズンの典型というか、チームの限界を示す非常に貴重なサンプルとなったゲームでもあります。
  • 開始早々にGKからのbuild-upから菅の見事なゴールで先制しますが、以後は80分ほど防戦一方でした。川崎のようなワイドに強力な選手がいるチームに対し、コンサは1-5-4-1で守るシャドーの武蔵とチャナティップも下がってサイド2人〜場合によっては3人で対応を試みますが、こうして引いて耐えているだけではジリ貧になります(武蔵やチャナティップ、前線で1人孤立するジェイくらいの能力があればカウンターからワンチャン作れますし、実際そういう場面もありましたが)。
  • この試合でチームのリミットがわかった以上、やり方を変えることは必須で、その点では2020シーズンからのスタイル変更には一定の理解を示しますし、遡ってもコンサの歴史上で前線高い位置からボールを奪いに行くチームは存在しなかったので、この点がミシャ体制の7年間での最大の成果というか最も評価する点ではあります。
  • しかしプレスの開始位置が高かろうと低かろうと、守り方としては極めてシンプルに人を捕まえるマンツーマンしかできないという問題もあり、そこはクラブとして甘く見ていたとする振り返りになるでしょうか。

3.3 2020シーズン

  • この7シーズンを通して見たときに大きな転換点となったシーズンでした。「トータルフットボール」「オールコートマンツーマン」「アタランタのようなスタイル」といったキャッチーでメディアウケが良いものの中身がよくわからない言葉が氾濫しますが、ピッチ上ではコンサはたくさん走って人を捕まえているだけ、というのは早期にバレ始めており景気の良い言葉とは裏腹に低パフォーマンスが続きます。
  • そして10試合勝ちなしでミシャが進退伺を表明し、これは本気ではなかったかもしれませんが弱気な発言が飛び出します。クラブはこの状況で監督を全面的にサポートすると表明し、野々村社長は「後は決めるだけ」という謎の擁護ワードを使ったり、2020シーズンは戦術浸透に当てているので結果は度外視、という異例のバックアップ体制を敷きます。

リーグ戦第26節(vs川崎フロンターレ、⚪︎2-0)

  • 当時リーグ戦で12連勝のJ1記録を更新していたこの試合も、やはりパターンはコンサのこれまでの勝ちパターン(上位喰いパターン)と全く同じで、ボールを持ってくれる割にはボールを運べない川崎相手に荒野・駒井・チャナティップの前線でのマンツーマンがハマったもの。
  • それだけだと特筆するゲームではないのですが、金子の右ワイドでの逆足起用が決定的になったゲームということでピックアップしています。金子は15節(vsセレッソ、9月9日)から右ワイドで起用されておりこの試合が初めてではないですが、セレッソ戦はルーカスが負傷欠場という事情があり、ルーカスを左に回してでも金子を右で使うとする方針が定まったのはここから。
  • ただこの頃の金子は右足クロスのオプションもなく、左足でも強引なドリブルに頼っていて左足インスイングでのラストパスも見られず、彼が手のつけられないレベルに到達したのは23シーズンになってから。21シーズンは7ゴールを挙げていますが、これはシャドー起用だったりオープン展開からのカウンターで突っ込んだりしたものから生まれていて、改めてですがこの川崎戦でコンサというチームや金子が何かを掴んだわけでもなく、以後再びチームは停滞を続けます。


3.4 2021シーズン

  • 野々村社長の言葉を信じるなら、2020シーズンを使って戦術が浸透し、このシーズンで勝負をかけるという位置付けでしたが、結果は特に触れる必要がないでしょう。
  • 戦術的には引き続きトータルフットボールという名の極端なマンツーマン対応を続けており、このやり方を採用するなら1v1で勝てるかが重要になります。
  • よって資金的に上位のクラブ(コンサが1v1で勝てない選手がいる)相手に分が悪くなり、下位のクラブを叩いて順位を維持する傾向がこの21-23シーズンは顕著でした。21シーズンは4クラブ降格というシーズンでしたが、獲得した勝ち点51のうち、降格した横浜FC、仙台、大分、徳島相手に8試合で6勝2分で勝ち点20を稼いでいます。

  • このシーズン前半にアンデルソンロペスが14試合で12ゴールと爆発し、中国の武漢足球倶楽部へと引き抜かれますが、アンロペが覚醒し前線でボールを収める、守備で1stDFとなる、ボックス内ファーサイドでボールを待てる…といったマルチなFWに変貌したことも非常に大きいトピックなので試合をピックアップしようかと思いましたが面倒なのでやめちゃいました。ごめんね。
  • ただアンロペが覚醒したというかプレースタイルが明らかに変わったのは前のシーズンの13節(8/29、vs名古屋)でありこのシーズンではないこと、またこの背景にはミシャの指導も影響していたという本人の証言があったことを記録用に残しておきます。

リーグ戦第1節(vs横浜FC、⚪︎5-1)

  • 開幕戦で横浜FC相手にゴールラッシュを披露し期待が高まりますが、相手がこの年のJ1で最下位に沈むチームだとは後に判明します。
  • 戦術的には「トータルフットボール革命後」のチームはこの時点でほぼ完成系というか、言い換えればこれ以上は伸びしろがない状態でした。マンツーマン、各ポジションで完全に同数で捕まえると、この頃は特にJリーグのチームはほぼ全チームが長いボールを蹴ってきて、それをDFが跳ね返すして回収というもの。
  • ですので「DFが跳ね返す」が特に重要で、18、20シーズンと干されていたキム ミンテがしれっと開幕スタメンに返り咲いているのもこのためでしょう。しかし「ボールを持つのか持たないのか問題、そもそもそれが上手くいかないのは本当にミンテのせいなのか?問題」が再発してミンテは干され、宮澤のDF起用でこのシーズンは乗り切ることとなります。
  • ↓の金子のゴールは開始4分という速い時間帯でコンサの速攻が決まっていますが、これも横浜FCの放り込みをDFが跳ね返して拾ったところから。跳ね返されるだけでこれだけ崩れているのは、かなり相手にも問題があるでしょう。


3.5 2022シーズン

  • 21シーズン途中にアンデルソンロペス、21シーズンオフにチャナティップとジェイを失い、その後任が緊急補強のガブリエルシャビエルに興梠と、スカッドのシュリンク傾向が明確になっていきます。ただ興梠やシャビエルといった手が加わっていた前線はまだマシで、宮澤CBで乗り切ろうとしていた最終ラインに岡村の台頭がなければ大惨事になっていたでしょう。もっとも岡村をザスパから見つけてきたのはフロントのファインプレーでもありますが。

リーグ戦第7節(vs鳥栖、⚫︎0-5)

  • 0-5で負けた試合をピックアップするのは別にイヤミでもなんでもないのですが、まず20シーズン以降のコンサで重要なトピックとしては、「3バック(3DF)前提で編成またはスタメンを組んでいるので、相手が2トップの時にも同数でマンマーク対応を続けるなら枚数調節が必要で、それを毎回宮澤か、高嶺が起用されるようになってからは高嶺がやっていた」という点が挙げられます。
  • そして相手が2トップならコンサは2バックになって、その2バックとは岡村と下がってきた高嶺、本来サイドのDFである田中駿汰と福森は前に上がって相手の中盤の選手をマークする…といった変則的な、奇妙な布陣でプレーすることに最適化されていました。
  • 前向きに考えると、おそらくミシャとしては純粋なDFをなるべく起用したくないというか、高嶺にせよ岡村にせよ常に後ろに2人余っている必要はないでしょ、ということで、高嶺のような本来MFの選手をCBとして運用して枚数調節をしやすくしているのかなと思いますが、高嶺の移籍理由として「中盤の選手として勝負して評価され、ヨーロッパに行きたい」みたいな話があったかと思いますし、結局は最終ラインでいかに対人で相手のFWに勝てるかが同数での対応においては重要なので、そこは本来DFの選手を起用するオプションを持っていてもよかったかなと思いますし、そのツケを24シーズンに少しは払うことになったかもしれません。
  • なおアタランタは3バックが基本形で、相手が2トップなら(コンサのように)中盤の選手が下がるのではなくて、3バックの左右どちらかが残って、どちらかが前に出ていくという運用であることが多いと思います。

  • この「相手の配置次第で高嶺が適正位置・役割で使われず無理やりCBをやらされる問題」と似ているのが小柏。前線が興梠、シャビエル、小柏で、相手が4バック(2CB)だとコンサも2トップで相手に対応することになりますが、興梠とシャビエルが2トップなら小柏は弾き出されててインサイドハーフになります。ただ高嶺は後ろでの対応が多いのに対し、小柏はチャンスの際には前線に進出できますし、彼にはそれだけの走力があること、また実は2列目の方が向いている?こともあり、あまり問題になっていなかったかもしれませんが。


リーグ戦第20節(vsFC東京、⚫︎0-3)

  • ↑の鳥栖戦とは対照的に、この試合はマンツーマンでの対応自体はやりやすい相手のシステム。しかしFC東京の問題児レアンドロが「偽の9番」(ゼロトップ)で起用され、コンサはその仕組みを使われてボコられます。
  • レアンドロが引いて岡村を釣り出せば、広大なスペースでコンサとFC東京で2v2。かつコンサはそのうちの1人が福森ということでスピード勝負では圧倒的に不利なシチュエーションからわざわざ勝負し、PK2本を献上します。
  • 21年の一時期、とあるフリーのサッカーライターが「札幌の強度は最強!」と謳ってサポーターを高揚させていましたが、その時期もコンサが勝っていたかは別にして、22シーズン前線がシャビエルや興梠に入れ替わったこともあってコンサの前線守備の強度はもう純粋なマンツーマンでは相当厳しいものになっていました。
  • ですのでDFの能力の問題だけではなくて、戦術的により高度なチューニングが必要だったと思いますが、これ以降、聖域というか絶対的な存在だった福森のプレータイムを減らし、便利屋と化していた高嶺や、菅をDF起用する(参照)対応がとられます。
  • 福森と競えるDFとして中村桐耶にクラブが期待していたのは自明ですが、その中村が伸び悩み代役が見つからない誤算は24シーズンにも大きく影響したことは言うまでもありません。

リーグ戦第24節(vs湘南、⚪︎5-1)

  • 23-24シーズンの直近3試合は湘南に勝てていませんが、それ以前は湘南を得意というか相性が良いチームで、このシーズンも夏に大量得点で湘南をボコって以後やや持ち直すことに成功しています。
  • これは明確な理由があって、湘南は23年夏にミンテが加入するまではDFが大岩、舘、大野、杉岡…などあまりCBとしてはパワーがない選手が揃っており、コンサはそこに放り込んで、駒井のようなパワーのある選手が体を当てるだけで簡単に湘南陣内でプレーできていたためです。
  • すでにジェイが引退していてもコンサが前線へのロングボールを多用することは顕著で、これは21シーズンだと徳島なども同様にDFにパワーがないチームで有効だったのですが、ミンテが来てから湘南に勝てなくなったのは非常にわかりやすい結果かと思います。


3.6 2023シーズン

  • またも前線のスタメン級だったシャビエル、興梠が退団し選手の入れ替えが生じます。
  • フロントが期待していたのは、前のシーズン後半に加入し救世主となったキムゴンヒ(頑なに登録名をゴニ にしない)とヴィッセル神戸から加入のコバ兄こと小林。
  • キャンプでもこの2人と小柏を前線で組ませていたようですが、開幕戦でゴニ+小林のコンビだと速攻を仕掛けるにはスピード不足を露呈し、既に当時の時期コンサは1トップ+2シャドーによる前線のコンビプレーみたいなものも形骸化していたのでこの鈍足ユニットを使う理由がなくなります。
  • そして見た目の割に意外とゴニはパワー不足というか、コンサはこれまで都倉を筆頭にジェイ、駒井(あの駒井です)…といった前線で身体を張ってルーズな放り込みをマイボールにしてくれるパワフルな選手に頼ってきましたが、ゴニはそこまで無理がきく選手ではないことも判明し、前線で走り回る守備が得意でもないということで前線のキーマンを探さなくてはならない状況でシーズン序盤を戦います。

リーグ戦第10節(vs横浜FC、⚪︎4-1)
  • またも横浜FC(もしくは湘南)というか、センターラインに強度がないチームを放り込み主体のシンプルなスタイルでボコってコンサは立ち直ります。
  • 先述の通りゴニ・コバ兄のユニットが「なんか違うな…」となってコンサは前線の柱、特に体を張って放り込みをマイボールにしてくれる選手が不在の状態で、この試合で初めて小柏と、新加入の浅野の2トップが採用されます。
  • 前線がこの2人だとパワー不足がより顕著になるかと思いきや、まずこのシーズンのJ1でコンサのFWが誰だろうと放り込んでるだけで勝手に崩壊するチームがいくつかあり、また浅野はハンジフリックキラーとして有名な兄のようなタイプかと思いきや、ボールを持った時により力を発揮する選手だと判明し前線の救世主となります。足元で受けるだけではなく、DFを背負っても一定以上のクオリティを発揮しボールをキープしたりファウルを誘って陣地回復をしてくれる貴重な存在でした。
  • 小柏が前線の軸、もしくは最も重要な選手と考えていた方もいるかと思いますが、私の印象では小柏はほとんどボールを持たないところでの仕事が多く、まずボールを持って相手DFと対峙して何らかDF剥がしたりして決定機を作っているのは浅野。小柏は浅野の存在にかなり助けられている印象でした。

 


リーグ戦第16節(vs柏、⚪︎5-4)
  • 5ゴールでご満悦のミシャの姿を今も記憶している方も少なくないでしょうか(das ist sapporo ご満悦のミシャが忘れられません。それにクラブが乗っかるのもどうかと思いますが、基本そういうノリで運営しているのがコンサというクラブなのでしょう)。
  • この試合も浅野・小柏の2トップが、オープンな撃ち合いを挑んでくれた柏に対してぶっ刺さっていましたが、ここでは金子について書いておきます。
  • 前のシーズンまではシャドーかウイングバックかで定まっていなかった金子が、浅野の前線起用と共にウイングバックで定着し、ここから金子の快進撃と共にコンサは浅野、小柏、金子の3人でオープンな展開からの速攻が売りのチームになっていきます。
  • 金子のこのシーズンの開眼は、右サイドで右足を使ってプレーできるようになった点。すなわち縦突破から右足のクロスでシュートチャンスを創出できる選手になったことで、左足のカットインだけを警戒していればよい選手だったのが、金子を止めるために多くのチームが2人のDFを投じることになります。

 

 

 

  • 個人的には素晴らしい監督のもと、組織的で特定の選手に頼らないチームができると期待していたので、「コンサは低予算だから〜」、「選手が移籍したから〜」、との弁明に終始する姿勢に大変失望し続けてきた7年間ですが、23年夏にコンサを去った金子は1人で勝ち点5〜10くらいは持っていたのではないかと思います。
  • なおクロアチア方面に強いライターの方が、ディナモ移籍当初の金子について「戦術理解に乏しく戦えない」と書いていましたが、なんもわかってないなこいつと思っていました。戦術理解はともかく金子ほどフィジカルに優れた選手はJリーグでは稀で、こうした相手ゴール前がクオリティも優れているだけでなく、自陣DFラインまで下がって対面の選手をマーキングするというウイングバックの非常にタフな仕事も金子は頑張れる選手で、特に後任の近藤がこの役割で当初苦しんだことを考えると金子の穴は非常に大きかったのは事実でしょう。

  • そして金子が去った後半戦は17試合で3勝、浅野も4ゴール、小柏も1ゴールとペースを落とし、build-upに問題を抱えるコンサにとってドリブルで勝手に相手ゴールに突っ込んでくれる金子の重要性がより際立った結果かと思います。


3.7 2024シーズン

リーグ戦第16節(vs神戸、⚫︎1-6)

  • 先に書きましたがマンツーマンでの対応においては相手との1v1の局面でどれだけ負けないかが重要になりますし、また「マンツーマン」の程度にもよるのですが、コンサの場合は特にその純度が高いマンツーマンのやり方なので対人に強い選手をなるべく揃えたいところ。
  • ですので本来は「お金がない…クオリティのある選手を集められない…」とするチームにはアンマッチなやり方なのですが、なぜか知りませんが監督がミシャという縛りでコンサは戦わなくてはならないので手の施しようがない状況でもありました(その後、パク ミンギュのような選手が加入して一応手の施しようはあるんだなと判明します)。
  • 2020シーズンにこうしたやり方になってから、コンサは鹿島のような対人に強い選手が揃うチームとの部が悪くなったのはこうした話で容易に説明がつくのですが、神戸も2020-24年の5年間でコンサが全く勝ててないチーム。
  • 特に大迫が21年に加入し、神戸のスタイルも変容してからは、大迫が岡村を背負った状態でのマッチアップがこのカードの度に繰り広げられますが、Jリーグでは別格のFWに対して岡村1人では対処が難しくこの優位性を神戸が使う形で毎試合有利に試合を進めており、逆の視点では岡村1人にMVPクラスの選手の対応を投げてしまうコンサの無策さが露呈されています。

  • この試合の6失点はいずれも示唆に富んだものでありそれぞれ振り返る価値がありますが、トピックとしてはこの試合の出来を見て、最終ライン右の髙尾を信じられなくなったことも大きいものでした。
  • 後半戦に髙尾、岡村、パクミンギュ、大﨑と揃ったことで快進撃を披露しますが、コンディション不良もあったとはいえ髙尾がスケープゴートのような形になってシーズン前半戦で以降ほとんど起用されず、結果的にここで落とした多くの勝ち点が響き泣きをみることになりました。

リーグ戦第34節(vs名古屋、⚪︎2-0)
  • 「攻撃的で魅力的なサッカーに転換しないと未来はない」(野々村前社長・談)としてミシャを招聘し異例の7年間を任せたサイクルは、最終的にはこの名古屋や湘南といったチームに対してもボールを捨てて守りを固めるということに帰結しました。
  • ただそのボールを捨てて名古屋に持たせる選択をしたこのゲームがシーズンでベスト、かはわかりませんし個人の主観ですが、相手にほぼ決定機を作らせず完勝に近いゲームだったといえます。このスタイルならば別の監督、別の体制、別のお金の使い方で良い気がしますが、まぁ勝てばよかろうということで。

リーグ戦第37節(vs広島、⚫︎1-5)
  • このシーズン僅差で優勝を逃した広島ですが、コンサとはほぼ全てにおいて質が違うチームでした。優秀監督にスキッベ監督が選ばれるのも納得でした。かつて「コンサの強度は最強」と言っていた方がこの広島を見てどう評されるかは興味深いところです(いや興味ないけど)。
  • お互い1-3-4-2-1のシステムを採用したこともあり特に差異が明確に観測できたゲームでした。広島もヨーロッパの感覚でいうとボールを捨てているところはあるのですが、その場合も次のフェーズ(相手ボールになる)に素早く切り替えてシームレスにプレーします。よく「連動性」と言いますが日本ではパスが繋がっていると連動性があると評されますが、広島を見ていると各局面の繋がりだったり、各選手がプレーの意図を共有していることが本来「連動性があるチーム」と賞賛されるべきなのではないかと思います。
  • 一方のコンサはとにかく武蔵のような前線で無理が効く選手にボールを押し付けて、武蔵の頑張りが結実すれば他の選手も個々で頑張って何かを生み出そうとする感じで、都度都度考えてプレーしていると言い換えられるでしょうか。広島のようなpressingをサボらないチーム相手にピッチ上で考える時間は多くありません。ミスから失点もしましたがそのことについて選手を責めるものではないと思います。

※あとは選手短評を書いてこの企画を終わります。

2024年12月11日水曜日

北海道コンサドーレ札幌の2018-2024シーズン(2) 〜新卒ボーナスは存分に享受〜

  • 前回はピッチを取り巻く環境について振り返りました。ちょっとずつピッチ上の現象に論点を近づけていきます。

※今回も基本的に敬称略


2.ある種の低予算ボーナス

年間順位、勝ち点、強化費…:

  • まずリーグ戦の年間順位でいうと、2017年の11位から、4位、10位、12位、10位、10位、12位、そして今年の19位と推移しています。
  • ただ順位というのはよそのチームの都合にもより変動します。1試合平均勝ち点でみると、1.26→1.62→1.35→1.14→1.34→1.32→1.17→今年の0.97、と推移しています。

  年間順位 勝ち点/試合数 トップチーム人件費(百万円) 人件費順位(J1)
2017 11 1.26 1,206 16
2018 4 1.62 1,502 15
2019 10 1.35 1,698 14
2020 12 1.14 1,614 13
2021 10 1.34 1,666 14
2022 10 1.32 1,814 13
2023 12 1.17 1,723 14
2024 19 0.97  未集計 未集計


  • 2024シーズンを除くと数字的に底になっているのが2020シーズンの1.14(勝ち点39)で、これに関しては、この2020シーズン途中から「降格がないシーズンなので結果を追求するよりも戦術浸透に充てる」と宣言した上での結果でした。

  • 人件費については扱いが難しい(順位というより金額と勝ち点の相関でしょう)ですが、このサイトの見解↓に幾分か同意します。
https://syuukatsuclub.jugem.jp/?eid=127

  • 要はJリーグは、人件費と成績の散布図を作ると著しく費用対効果が悪いクラブが毎年いて、それらの「あからさまに失敗しているチーム」を外れ値とすると、18-23年の6シーズンにおいて、コンサは2018シーズンを除くと概ね人件費からすると妥当な成績に着地しており、2017,18シーズンに関しては、人件費を基準とすると想定よりもかなり上振れした結果だと捉えられるでしょう。

  • 24シーズンに関しては、人件費がいくらかまだわからないので「費用対効果が著しく悪い」などとは言い切れません。ただシーズン途中に補強した選手の原資として、パートナー企業から推定3億円以上?のサポートを受けており、結果的には(近年のコンサ比で)それなりのお金を使っていると推察されます。


人件費はあくまで目安でしかない:

  • 一方で人件費やお金まわりのところで難しいのは、前回の記事でも見ましたが、
  • このように19年(18年オフ)が投資期間だとして、実際にこの間に多くの選手が加入しましたが、人件費でいうと22年の方が上回っている。
  • これについては、何らか複数年契約の選手の減価償却的な処理なのか、移籍金の分割払いのような手続きをしているのか、詳しくは謎ですがそうしたからくりがありそうで、単年の人件費と順位を紐付けしづらいところではあります。
  • 22年というのは、20年に加入した大卒の選手が3年目で主力として活躍しているシーズン。Jリーグは新卒1年目の選手に関しては年俸上限が決まっており抑制策がとられています。しかし若く、他所のクラブからも需要がある選手は2年目以降に引き止めのため年俸抑制が難しくなる。コンサの場合も2021年から特に、現有戦力を維持するだけでもお金が出ていく、というフェーズになっていたのだと推察されます(三上GMのそうしたコメントがありましたがソースを保存し忘れてしまいました)。

  • ですので人件費はあくまで多少の目安でしかない。10億とか差があれば変わってきますが、コンサにおける1〜3億円程度の変動とチームの戦力とを一致させて論じることは無理があるということを頭に入れておく必要があります。

ぬるっと消えた「飛躍の年」 2021年:

  • 「19年に投資をして21年に飛躍」を思い描いていたということで、ミシャ体制での7年間のうち、まずこの期間が一つ目の(前半の)サイクル。
  • しかし20年に新型コロナウイルスが流行し、降格なしのシーズンとなる。また20年夏にエース武蔵とGKソンユンの移籍、21年夏に中国からのメガオファーでアンデルソンロペスが移籍、と、ソンユン以外は想定外と思われる事態が続けて生じます。

役割 名前 加入年 21年1月時点の年齢 備考
GK ソンユン 2015 26 27歳までに兵役消化のため退団の必要あり
  菅野 2018 36  
  小次郎 2020 22  
DF 進藤 2015 24 2020限りで退団
  福森 2015 28  
  ミンテ 2017 26 兵役あり?
  田中駿汰 2020 23 2023限りで退団
MF 宮澤 2007 31  
  荒野 2010 27  
  深井 2013 26  
  2017 23 2024限りで退団
  チャナティップ 2017 27 2021限りで退団 
  駒井 2018 28 2024限りで退団
  ルーカス 2019 26 2023限りで退団 
  中野 2019 27 2021年3月に退団
  白井 2019 26 2020限りで退団
  高嶺 2020 23 2022限りで退団 
  金子 2020 23 2023夏に退団
FW 都倉 2014 34 2018限りで退団
  ジェイ 2017 38 2021限りで退団 
  アンデルソンロペス 2019 27 2021夏に退団
  武蔵 2019 27 2020夏に退団
  岩崎 2019 24 2019限りで退団
  小柏 2020 22 2023限りで退団

  • もっとも日本人選手のヨーロッパへの移籍、外国籍選手の中国や中東への移籍は以前からリーグ全体の流れとしてはあったので、全く想定していないというわけではなかったかもしれません。
  • 注目すべきはその後の対応で、武蔵の後釜は大卒新人の小柏、ソンユンは元々在籍していた菅野と中野小次郎、そしてアンデルソンロペスは役割的には興梠、外国籍選手という観点ではトゥチッチ。
  • 武蔵が去ってからアンデルソンロペスが去る間の話になりますが、野々村社長(当時)は毎年リーグ戦の最終節でフカしたことを挨拶に盛り込むことが恒例となっていましたが、2020年は
  • とする程度にとどまっている。「来年はミシャ4年目で勝負の年です。期待していてください」みたいなことを言ってもおかしくはないのですが、そうしたフカしは自重しています。
  • 当然と言えば当然なのでしょうけど、21年夏のアンデルソンロペス売却の後に彼に比肩する選手を後釜として確保せず(都倉が去った時に武蔵を買っているように)、中国からゲットしたと思われる一定の資金や浮いた人件費分は経営危機のクラブの運転資金等に充てられたと推測されます。

  • このあたりの経緯が野々村体制(2021年いっぱいまで)において非常に不明瞭だった点で、2021年を飛躍の年と位置付けていて、コロナや武蔵の退団があっても、2020年シーズン途中から「降格がないので戦術の浸透に充てる」と宣言して負けまくっていたので、ここを見ると2021年が飛躍の年という位置付けは変わっていないように見える
  • しかし2021シーズンに蓋を開けてみると、開幕10試合2勝でスタート(その後、この年下位に沈む仙台や徳島を1点差で下して浮上する)し、その後も4チーム降格ということで上よりも下の方を気にしながら(しかし降格4チーム+湘南が低調で安全圏にはいた)過ごすシーズンを送り、元々このシーズンを「飛躍の年」と位置付けていた割には、特に騒ぎもせずぬるっと2021シーズンは忘れ去られます。

2大キーマンの退団と続く縮小路線、「飛躍の年」は完全に行方不明に:

  • その2021シーズンの終了時に野々村社長の退任報道が報じられ、2022シーズンから三上GMをトップとする新体制に移行しますが、このタイミングでピッチ上では絶対的なキーマンであるチャナティップが川崎へと移籍。そしてジェイが引退します。
  • チャナはコンサでのラスト2シーズン、先発出場が17試合、23試合(38試合制)にとどまっていて、おそらく戦術的な部分もあるのでしょうけどコンディションに問題を抱えることが多くなります。
  • 同じくジェイもラスト3シーズンで15試合、15試合、7試合と、(おそらく意図的に)戦術的に脱・ジェイを図っていたかのようなアプローチだったこともあり絶対的なスタメンではありませんした。

  • しかしミシャ体制発足時に「ボールを試合をコントロールできるようになり上のステップに」と言っていたコンサですが、この7シーズンで少なくとも「ボールをコントロール」(相手のプレッシャーを受けた状態でマイボールを維持して何らかゴール方向にプレーする)状態を実現していたのは、ほぼチャナティップとジェイの個人技によるものでした。
  • ゴール前で相手DF2人を引きつけられるジェイ、より低い位置でボールを受けて簡単にうしわない能力を持つチャナティップ、この両者がそれぞれの事情でピッチに立たないことが増えると必然的にプレー内容は変容します。

  • チャナの移籍が決まったのが2022年の年明けということで、クラブは18番をガブリエルシャビエルに託しましたが、タイミング的にこのディールは選択肢が少ない状況だったことは推察されます。
  • 一方で、同じく21シーズン限りでチームを去ったジェイ(引退)と、21シーズンに覚醒したものの夏に中国に引き抜かれたアンデルソンロペスの後釜として、期限付き移籍で興梠を獲得しましたが、こうして前線にシャビエル、興梠といったあまり総力やフィジカル的に優れていない選手が並ぶことになるスカッドは、この時に掲げていた「トータルフットボール」(前線の高い位置からpressingを開始することをコンサ語だとそう言っていた)とは親和性が悪く、かつシャビエルはチャナほど力強いプレースタイルではなく、また(右シャドーしかできない)小柏と被り、かつインサイドハーフで起用できないといった問題に直面し、センターFWで決定力を活かすという起用法が確立されたのはシーズン後半でした。

  • おそらくシャビエルや興梠といった完成品の、即戦力級の選手を選択したのは、21年を「飛躍のシーズン」とする考えが、編成時点はコロナ禍を経てもまだ残っていたのでしょう。
  • 一方で「選手特性的にあまりフィットしそうにない選手を選択する」傾向はこのあたりの時期から目立ち始めたともいえます。これはコンサのフロントがプレーモデルをあまり考えていないのか、プレーモデルは頭の中にあり的確だけどリクルートの部分が弱いのかよくわかりませんが、例えば4バック(2CB)の相手に興梠とシャビエルの2トップでは前線から制限をかけることが難しくなりますし、小柏は2トップから弾き出されてインサイドハーフとしてプレーすることになります(ただ小柏は後ろの方が向いているようにも見える時がしばしばありました)。
  • これはフロントの問題だけではなくて極端なマンツーマンベースのスタイルしか採用しない(できない)スタッフ側にも要因はあるのですが、ともかく編成とピッチ上のチグハグ感はこの22シーズンから顕著で、三上GMの言うところの「傘を広げる」(風呂敷を広げると言いたいのでしょう)フェーズは21シーズンで終了、22-24の3シーズンはサイクルの再構築もできずとりあえずシュリンクしていたと感じるところです。

トータルフットボールというサイクル最大のターニングポイント:

  • 若干前後しますが2020シーズンの6月(6月ですがCOVID-19の影響でリーグ戦が中断したため”序盤”)、武蔵がベルギーのベールスホットに移籍するためチームを離脱します。
  • 直後の試合(リーグ戦7節)では荒野をセンターFWで起用し、相手に対しほぼ全ての局所でマンツーマンでボールを奪いにいき、奪ったら時間をかけずに前線に展開するスタイルが採用されます。
  • この理由として監督は「武蔵のようなストライカーを失ったのでカウンターが重要」、と言ったり、「引いた相手を崩すにはわざとトランジションを起こすことが必要」と言ったり複数の説明の仕方をしていますが、それぞれ特におかしいところはそこまでないように思えます(もっとも武蔵が一番カウンターに向いているFWのような気はしましたが)。
  • そして時系列としては、このスタイルがお披露目されてから「アタランタみたいなサッカーを目指すのもありなんじゃないかという話を以前からしていて…」と明かされています。

  • その7節ではF・マリノスに3-1で勝利したものの、8節から16節までの10試合(途中日程変更の1試合を含む)は2分8敗で勝ちなしとチームは低空飛行を続けます。
  • それまでのコンサはボール保持と非保持のフェーズを完全に分けていて、低い位置でブロックを作って守ってから、ゴール前に人数をかけて攻撃するスタイル。森保監督のサンフレッチェ広島や片野坂監督の大分トリニータなども似たスタイルですが、このスタイルの問題点は前でpressingを仕掛けて高い位置でボールを回収することが難しく、19年のルヴァンカップ決勝が典型ですが、シャドーが下がると押し込まれて攻撃に転じられず防戦一方になります。
  • また相手ボールの際に都度、毎回自陣に撤退するので、そこからまた攻撃のために選手とボールを移動させるリソース…ボールをキープする選手や技術だったり、チームとしての仕組みだったりが必要になる。コンサよりも片野坂大分や、24年のアルビレックス新潟の方が顕著かもしれませんが、パスは何本も繋がっても、自陣から相手ゴールに近づくまでに必要なパスの本数が多すぎて、かつそれらをノーミスで自陣から相手ゴールまでプレーしないとならないというコスパの悪い戦い方に陥ることもある。

  • ですので個人的には2020年の”トータルフットボール革命”は、それまで25年間自陣に引いて跳ね返す以外の戦い方ができなかった(18-19年も含む)コンサの歴史において文字通り革命的なことだと捉えていますし、この転換こそが1億円監督ことミシャを招聘した最大のリターンだったと思います。
  • もしルヴァンカップ決勝の映像を持っている人がいれば是非見直してください。深井の劇的なゴールなどで思い出は塗り替えられていりうかもしれませんが、菅の先制ゴールから後半終了間際まで、大半の時間帯でコンサは自陣で防戦一方の展開になっています。

上積みというよりも上書き:

  • しかし革命前のコンサはそこまでボール保持やビルドアップ、相手のpressing回避といったプレーができていたわけではなく、革命によって高い位置からpressingがオプションの一つとして加わったというよりは、それまでの戦い方が完全に上書きされたかのような状態になっていました。
  • Jリーグの中でも極端なハイライン+プレッシング志向のマリノスに対しては、初見⚫︎し的な勝ち方をしましたが、やり方がバレれば各チームとも何らか対策をとってきます。例えばマンツーマンでのpressingにはまりにくいポジショニングをとるとか、ロングボールを使ってpressingを頭上で回避するなどがあります。

  • もしくはコンサの攻撃がカウンターや速攻一辺倒になることで、コンサにボールを最初から渡してpressingやカウンターを発動させないという対応もありました。
  • ボールを渡してくれるなら、それまでミシャ体制で培ったボール保持からプレーで相手を粉砕…とプレースタイルを使い分けることができればよいのですけど、そもそもコンサは18-19シーズンにおいてもたまにパスが繋がったりして相手を崩すことは確かにありましたけども、それらは相手がコンサに対して自ら食いついてくれたところで、福森やチャナティップのサイドチェンジからウイングバックへの仕掛けに代表されるように得意なプレーが発動してうまくいく…というものが多く、相手が食いついてくれないと崩すことは難しいし、特に前線守備の問題でジェイやアンデルソンロペスのようなパワーのあるFWを削っていると、荒野や駒井の頭にサイドから放り込むだけのフィニッシュを繰り返すことになります。

  • フロントが「アタランタのような〜」と語った時に違和感があったのは、アタランタはコンサとはまず経営方針が違うというか、少なくとも前線には当時もイリチッチ、パプ・ゴメス、サパタ、ムリエル、マリノフスキー…といった各国の代表級で、フィジカル(走力)と技術を兼ね備えた選手をスタメン3人+ターンオーバー要員も確保していますし、荒野や駒井をFWで使っていたコンサとはちょっとクオリティが違いすぎるなという印象でした。見たことない方はわからないとと思うのでわかりやすくいうと、武蔵をすごくした感じの選手やチャナティップみたいな攻撃的MFが複数いてそれでカウンターアタックで点を取りまくっています。
  • またDFもロメロは22年にアルゼンチン代表としてワールドカップの優勝メンバーだったり、トロイもイタリア代表でEUROの優勝メンバーに入っていたり、要は戦術に合う選手を確保した上であのようなスタイルをとっている。戦い方を問わず宮澤をDF起用したり、福森が長らくスタメンを張っていたコンサにはこうした視点はおそらく欠落しているというか、ミシャの下でプレーすればコンサのDFをアタランタのようなファイターになると思っていたのかもしれません。

  • また選手やそのリクルートが違うだけでなく、戦術的にもそもそもコンサはアタランタのようなスタイルをトレースできていたかというと疑わしいところがあります。
  • 例えばアタランタはロングカウンターというか、FWや攻撃的MFの選手が相手ゴールから30-40mくらいの距離からスタートしてスプリントを開始し、相手DFが揃っていない状態から攻撃するのが得意でした(この辺は選手が入れ替わったりしてアップデートされています)。
  • 対するコンサは、相手ゴールから何メートルとか関係なく、とにかく相手がボールを持ったらどこでもpressingという感じで頑張って走りますが、例えばサイドで相手のSBがボールを持った時に追い込んで奪っても、ボールはサイドにあるのでまず中央に横パスなどして方向転換する必要があったり、その際にコンサのFWの選手も中央から離れてサイドに動いていたり、場合によっては相手DFの攻撃参加にマンマークでついていって自陣に撤退していたりする。これではコンサのFWはカウンターでエネルギーを爆発させられるような状態になっておらず、頑張って走っているけどボールは奪えないし、カウンターに繋がるような奪い方ができていない、という状況でした。

  • おそらくガブリエルオケチュク(2021年に加入)にはそうしたロングカウンター要員としての期待があったのかもしれません。ただ、ガブリエルの後のコンサは前線にGXことガブリエルシャビエル、興梠、小林、キムゴンヒ…と、「マンツーマンでpressingしてショートまたはロングカウンター」にかなり合致しなさそうな選手を立て続けに連れてくることになります。
  • 小林はミシャに起用を直訴?したところ「足が遅いから」と言われて困っていたようですが、これに関しては監督の言い分は理解できますし、コンサの編成のチグハグさはこの辺りの時期から顕著になっていきます。

「あとは決めるだけ」が誕生:

  • 私はそのように見ていたのですが、野々村社長以下のコンサのフロントはこのチームを「あとは決めるだけ」と擁護し、2020シーズンは戦術浸透期間だと宣言していました。
  • またとあるフリーのサッカーライターの方は21年になって「札幌の強度は最強」「札幌は前半45分なら最強」といった論評をして一部のサポーターや関係者を喜ばせることになります。この辺は個人の主観ですので自由ですが、たくさん走って相手に食らいついていれば最強、というほど簡単な話ではないと個人的には考えています。

新卒ボーナスは存分に享受:

  • サイクルの中でこうした戦い方の変遷やスカッドの入れ替わりがある中で、一つ触れておきたいのは、2020年に田中駿汰、高嶺、金子が入団し、それぞれ1年目からスタメンを確保する活躍を見せ、また21年には小柏も同じくスタメンに定着しましたが、大卒1年目でスタメンを張る選手が複数いること自体がJ1では稀というか、移籍金がかからないでスタメン級を補強できるのはかなりのラッキー、チーム編成的にはボーナスと言って良い現象だったでしょう。

  • コンサ以外でそうした、大卒1年目でスタメン、主力選手が複数いるチームは近年他にあったでしょうか?2020-21年頃のサガン鳥栖で林、樋口、森下といった選手が主力だったくらいでしょうし、鳥栖は非常に選手の流動性が高く、多産多死というか入ってくる新卒選手の数がコンサとは違います。
  • またその鳥栖の森下は1年で名古屋へ、林は1年半、樋口は2年でチームを去っています。コンサは高嶺と小柏が3年、金子が3年半、2020年の段階で「オリンピックに出場して半年で移籍するつもりだった」と語っていた駿汰は22-26歳の4年間をコンサに捧げることになります。

  • これらの選手は移籍金がかからないことに加え、冒頭でも触れましたが新卒直後は低年俸で雇用できるため(おそらく2年目、3年目でも、30歳を超えた重鎮選手よりもハイパフォーマーであっても貰ってないでしょう)、これらの選手が主力を張ると、ある種の見かけ上の強化費とスカッドの不一致が引き起こされます。
  • 2024シーズンには彼らが退団し、開幕からの低空飛行もありコンサのフロントには批判が集中しますが(なぜか監督については異様に擁護されていましたが)、これはフロントが24年の編成に失敗したとか大学新卒選手のリクルートがうまくいかなかったというよりは、それまでの20-23年に、移籍金ゼロの新卒選手が当たりすぎていた、とする見方の方がフラットな気がします。
  • 金子、高嶺、駿汰が揃うのを基準にしてしまうと世の中の大半の物事は失敗扱いになってしまいます。彼らのような選手が一番いい年齢の22歳まで大学に育ててもらって、かつ移籍金ゼロで獲得というのは大学の育成にただ乗りしているだけで(それがまかり通っているのがJリーグですが)、少なくとも一つのクラブとして見た時にサステナブルな現象ではないはずです。

セットプレーの重要性:

  • といった具合で、コンサのフロントや選手スタッフの自己評価ほどコンサというチームは強くもないし優れたプレーをしているわけではないとするなら、勝敗を分けるのはスコアに直結するプレー…GKのビッグセーブやセットプレーでの攻防になります。
  • 特に24シーズンに関していうと、福森を期限付き移籍で横浜FCに放出したことはセットプレーの攻撃面で一定の影響があったかもしれません。
  • 数字の上では2023シーズン、福森は0ゴール1アシストにとどまっていますが、直接得点に関与しなくともキッカーは影響がありますし、マンツーマン主体で守ってカウンター、というスタイルならば先制点が重要になるため、ゲーム展開と関係なく得点機会を作れる福森のセットプレーは、その守備を差し引いてもプラマイでプラスになったかもしれませんし、何よりもコンサが長年「福森がいるサッカー」(脈略のないところからでも放り込んで得点チャンスのある)に慣れていたので、そういう”ワンチャン”すらなくなったことは一種のやりづらさに繋がったのかもしれません。

  • なおミシャは浦和時代のある時から「トレーニングは(エクササイズを除くと)基本的にミニゲームしかしない監督」と扱われていましたが、実際にはセットプレーの確認もやる時はあるようです(8月に見学した時は10分ほどやっていました)。
  • それでも18年は当初四方田コーチがセットプレーを確認していましたが、それも次第にトレーニングの中での優先度合いは薄れていったのでしょうか。
  • その四方田コーチと福森のタッグが24年には横浜FCで復活し、福森はセットプレーからアシストを量産しJ1復帰に導きましたが、福森がいれば…というよりも、コンサのセットプレーやディティールを軽視している感じは、順位やチーム状況を考えるともっと必死さや緻密さがあっても良かったのでは、と思えます。

まとめ

  • 北海道をホームとしており主要スポンサーが観光関連業や運輸業ということもあり、コンサはCOVID-19の影響を特に大きく受けた側だと思われる。この影響が大きく、7年間のサイクルにおいては、実は強化費はさほど増えておらず横ばい〜やや増額にとどまっている。「新しい景色を見る」と言うには心許ない状況が続いており、24年まで残留できたのはむしろラッキーだったかもしれない。
  • 前半のサイクル(18-20年)は割安な強化費で選手を集めることに成功しており、GMや編成担当の手腕が光る(当時の主力選手は退団後も各地で活躍中)。ただし新卒の即戦力の選手を複数抱えていたことは一種のボーナスのようなものであり持続性がないもので、またJ1に続けて在籍することで選手を売らない限りは人件費が膨れ上がっていく。またそもそも19年からの先行投資の結果、20年以降は移籍金の分割払いのような費用が生じていた可能性もある。
  • こうした様々な要因によりサイクル前半は予算に対しうまく”やりくり”ができ選手を集められていたと思われるが、サイクル後半はやりくりが効かなくなり、かつ人件費の使い方のまずさが顕在化してくる(下記)。

  • 短期スパンで見ると三上代表取締役兼GM体制になって崩壊したとみるかもしれないが、より長いスパンだと投資回収に失敗している。最初は「降格してもいい」と言っていたが、野々村体制で経営的には勝負することを選択し、ルヴァンカップ準優勝という思い出と共に負債が残った。
  • 現在(24年12月)、駒井や菅といった選手をフリーで手放す状況になっており、結果的にはこの勝負は時期尚早だったと思われる。ただし身の丈を越えようとする投資がないとサッカークラブは成長しないので、難しいところだが、確実に言えるのは野々村社長期に勝負に出て、結果的には負けたということになる。

  • 24シーズンの編成や補強の失敗がクローズアップされるが、7年間のサイクルで見るとサイクル前半は編成が非常にうまくいっているというか、予算以上のスカッドを運用している。
  • よって24シーズンがダメというよりは、7シーズンで平準化すると、どこかのシーズンで身の丈を超えていた分の帳尻を合わせなくてはならず、それが24シーズンだったとも考えられる。

  • 経営的にリスクを負うことには一定は理解するとして、問題はその金の使い方。
  • 例えば監督招聘時に「ボールとゲームをコントロールする」と言っていたが(これが何なのか具体性がなく謎だが)、一般にボールを持つプレースタイルを志向するならFWや攻撃的MFよりもDFとGKが重要になる。コンサはそこにあまり投資している感じはせず(例えばミンテの補充の岡村が期待以上の活躍をするとかはあったが投資額としては前線ほどではないはず)、また20年6月以降はほぼ180°プレースタイルを転換する。
  • その場合も、「マンツーマンで守ってpressingから速い攻撃をしたい」なら、対人に強いDFや速いFWが必要。特に前線のアンマッチ感は21年のアンデルソンロペス退団後に顕著。こうしたチームのプレーモデルと選手のプレースタイルについてあまり考えていなかったのか、考えていたけど資金不足でうまく動けなかったのか、いずれにせよ抽象的かつ主観的な「あとは決めるだけ」「攻撃的なサッカー」といった言葉が、サイクルを通じて一人歩きしていた印象はある。
  • コンサで「ボールをコントロール」していたのはDFではなくチャナティップとジェイ。それぞれ2021シーズンでの退団でクオリティは明確に低下。ただ、そもそも退団以前に両者はコンディション低下がみられ、そうした選手を長く引っ張っていても「新しい景色」に辿り着けたかは疑わしい。

  • 現場(監督の)仕事としては、DFや後方の役割ではアカデミー出身の選手や新卒など若手選手の起用が目立った。しかしこれらのDFは揃って、ボールを運ぶよりも味方にボールを預けてオーバーラップすることを好むタイプで、それらの選手に「ボールとゲームをコントロールする」ことを教えるのは最初から諦めていたし、クラブが期待したような建設的なアプローチはしていなかったように思える。コンサはやたら前線の選手を抱えたがるが、2024シーズンでいえば前線にあまりお金をかけていなさそうな新潟やヴェルディが順位もプレー内容もコンサを上回っていたのは示唆的である。

2024年12月9日月曜日

北海道コンサドーレ札幌の2018-2024シーズン(1) 〜話の賞味期限は1年?〜


1.サイクルの始まりと終焉

世界はそれをサイクルとみなす:

  • 一般にサッカーの世界ではトップチームの監督交代という出来事をサイクルの区切りと見るケースが一定あり(例外もありますが)、コンサはトップチームの監督人事がクラブ全体の方針と密接に関わっているクラブですので、今回の監督退任によりコンサのサイクルは事実上終わったと見ていいでしょう。ということで、2018-2024シーズンを一つのサイクルとしてみた時の振り返りを行います。
※全5回程度で振り返ります。全体的に敬称略で書いていきます。

何のために、何を、どうやって、(誰が):

  • まずこのサイクルがどのように始まったのかを改めて関係者の言葉で振り返ります。現在はJリーグに栄転した野々村前社長の説明によると、

  • ということになっています。
  • この2018年の記事ではライター(江藤氏)が「見ている視線の先が世界なのだ」と評していますが、どっちかというとこの「攻撃型」というワードのチョイスなのか、考え方なのかは、「世界」を感じさせるものかというと、何ともいえないところでしょう。
  • むしろ「攻撃型」のような曖昧な概念やワードに妙にこだわる(この記事だけでなく以後頻繁に登場します)のは、個人的にはきわめて日本的な気がします。

  • 順番が前後しますが2017年末の、別の記事では、



  • 更には
  • としています。

指揮官次第でぬるっとpivotする:

  • そして2020年2月の、フロントではなく監督に対するインタビューですが

  • おそらくアタランタというワードがここで初めて関係者の口から出てくる。ただしこれは監督のインタビューであってフロントが発したものではない。
  • その後、フロントが「アタランタ」と最初に言い出したのはコロナでの中断、再開後、F・マリノス相手に極端なマンツーマンを発動して勝利した後の、2020年7月くらいだったかなと思います(明確なソースが見つかりませんでした。記録しておくのは大事ですね。できれば今後誰か手伝って欲しいです)。

  • アタランタというのは名詞なので方向性が「アタランタ」だ!と言われると、もう少し説明(動詞や形容詞など)が欲しいものです。
  • 就職活動の面接の際に「私は体育会のキャプテンです」と話す人がいますが、「キャプテン」も名詞なので、キャプテンだから根性があるのか性格がいいのか指導力があるのか頭がいいのか知りませんが、知りたいのはそういう人間の中身でありキャプテンというラベルに本質的に惹かれているわけではないはずです。

  • 一応「以前から名前(アタランタという名詞)を挙げていた」みたいな話はのちに三上GM?野々村前社長?から聞くことになりますが、2019年までのプレースタイルからするとアタランタというチームを想起することは難しいので、発端は監督の側なのでしょう。

「具体的に何かをやるという予定はないけれど〜」:

  • なかなか、こうしたインタビューの切り取りではその人が考えていること全体を推察するのは難しいことは承知の上ですが、これらを振り返って思うのは、このサイクルにおいてコンサというクラブは"why"…なぜ(その監督人事を行うのか)については一応、当初から答えがある。「攻撃型のチームにしたいから」ということです。
  • 次に"what"…何をするのかについては、当初「自分たちでボールとゲームをコントロールするところも身に着けていかなければいけない」と言っていたのが、どこかで「アタランタ」と言っていて、アタランタが何なのかについては解釈は人によって色々あるのでしょうけど、ちょっとブレているというかピボット(方針転換、方向転換)をしていると言えるではないでしょうか。上の文章で"why"が一応、答えがある、としましたけど、あくまで一応でしかなく曖昧だから"what"がブレているのかもしれません。

  • そしてwhatとも関わりますが"how"…どうやってそれをするのか、については伝統的にこのクラブや体制の弱いところでしょうか。「具体的に何かをやるという予定はないけれど、放っておいてもアカデミーの監督やコーチ、もしかしたら選手たちもミシャのトレーニングを熱心に見にくるでしょう。どんなトレーニングをするのか、俺も気になるからね」としていますが、18-24年の7年間で具体的に何かがあったのか、答えを出すのに十分な時間だと思いますがおそらく何もないのでしょう。

  • そして"who"…誰が行うのか?についてはいうまでもなく監督ミシャに対する信頼は揺るぎない、と7年間で再三の名言がありました。whoにはフロントも含まれると思いますが、野々村社長のJリーグ栄転というサプライズがあったものの、フロント人材が頻繁に移動しないというのはコンサの強みというか選手から信頼されるポイントの一つかと思います。

  • クラブとして"what"がピボットしているのと感じるのは、
>われわれは攻撃的なチームに生まれ変わらなくてならない。そのためだったらJ2に落ちても構わない。その代わり継続的に攻撃的なサッカーができるチームを作ってほしい
  • こちらからも伝わるでしょうか。2024シーズンは「日本一諦めの悪いクラブ」を自称するなど、論点がほぼ100%「J1に残留できるかどうか」になっていました。これはどういう解釈になるでしょうか。「継続的に攻撃的なサッカーができるチーム」に、2023年までで既に到達したということなので、この話の賞味期限は2024年には切れているということなのかもしれませんし、もしくはアイドルグループのように「話の賞味期限はだいたい1年」ということなのでしょうか…

  • なお社長が変わったから、と反論があるかもしれませんが、だいたいの組織ではトップが変わると方針がよりドラスティックに変わるでしょう。我々が見てきたものはそれらと比較すると「継続路線」でしょうから、社長が変わったせいだ、という考えで片付けることはできないのではないでしょうか。


  • こうしてみると、コンサというクラブは「どうなりたい」というイメージは何となくあるのだけど、それはどういう方向性の延長線上にあるのかと問われると自分たちあまり答えを持っていないし議論が不十分のように見えます。
  • そうなると、自分たちで十分に考えられない人たちを導く魔法使いへの信仰心が強くなり、トップチームの監督という存在が、単なるサッカーの現場指導やチームマネジメントをする人だけではなくて、もっと大きなミッションを背負っているのも必然なのでしょう。

何気ない発言で煽られた期待:

  • 一応成績的なものに関していうと、19年4月の記事で、
  • これもラジオ等で採算語っていたようですが、「21年に今の投資が生きる」というのは、別に「タイトルを取る」とまでは言っておらず成績に関しては非常に慎重な物言いをしています(FC町田ゼルビアが「勝たないとお客さんはついてこない」と指摘していたのと対照的)。

  • 一方、後に野々村前社長は「新しい景色を見に行こう」とする、非常に曖昧で色々な捉え方ができるキャッチフレーズを多用することになります。これはタイミング的にルヴァンカップの準優勝(2019年10月)の後くらいが初出のように記憶していますが、もしかするとこのあたりからクラブ内部でも捉え方が変わってきたのかもしれません。

  • 前項で出てきたキーワードを改めて拾うと、2018-24年のサイクルにおいて掲げていた話は
  1. 攻撃的なサッカーで人々を魅了し、それをクラブの"色"にしたい。そのためにはJ2に落ちても構わない。
  2. より上を目指すならば、自分たちでボールとゲームをコントロールするところも身に着けていかなければいけない。

  • といったもので、タイトルを取るとかACLに出るとか何位以内を目指すとか、成績に関することは殆ど話しておらず、これらはどこかのタイミングで、誰かの手によって後から出てきた話です。

  • 思い起こされるのは、初年度に春先好調で、ミシャが「ACLを狙おう」と現場の選手やスタッフのモチベーションコントロールのために発した言葉にクラブやサポーターが呼応し(こうしたことを言う監督は過去にコンサにはいなかったこともあって、サポーターにはたいへんポジティブに捉えられたと感じます)、やがてクラブのオフィシャルな見解となって(都倉の「行くぞACL」など)、タイトルやACLなど成績に関する期待が高まっていく。反面ミシャは事あるごとに「札幌はお金がないチームだ」と言い続けますが、これは確かに事実なのでしょうけどサポーターの期待を煽った発端は他ならぬミシャだとみることもできます。
  • もっともファンサポーターというのは常にポジティブかつ目に見えるアウトプットを期待するので、ここはファンの感情のコントロールが難しいとは思いますが。

サイクルの評価軸:

  • ただ、となると、このサイクルに対する評価軸は
  1. 攻撃的なサッカーで人々を魅了し、それをクラブの"色"にすることはできたのか?できないとしてもそのプロセスは進んだのか?
  2. 自分たちでボールとゲームをコントロールするところは身についたのか?
  • といったものになるのでしょう。

  • 1つ目、「人々を魅了」というのを細かく論じるのは定性的な話で、数字で論じることは難しいものです(やろうと思えば観客にアンケートを取ればいいと思いますが、それも正確な回答が出せるかというと色々な調査バイアスが生じるでしょう)。
  • 人によってはDF進藤がゴール前にいるだけですごい、面白い、となるでしょうし。ただそういう人がDF馬場の攻撃参加や、そもそもDFの背後を取られて失点したり負けることについてどう思っているのかわかりませんけども。
  • 個人的には毎試合このブログに感想を書いているので、「人々を魅了」についてここで論じることはやめておきます。コンサのサッカーがすごく楽しいという人もいるでしょうしその感性や感覚は一切否定しません。

  • ただ、改めて評価軸?KPI?がこうした曖昧なものだと方針やコンセプトはブレていくもので、結局は順位や成績が評価軸になっている感じはしますし、そもそも顧客やスポンサーの満足度というのは順位や成績、タイトルなのでしょう(適当なサウンディングツールでも使ってSNSのリアクション等を解析すればそんな結果が出るのでは)。

  • また別の角度ですが、「攻撃的なサッカーをクラブの色にする」というのは、これは一定達成できたかもしれません。何が攻撃的なのかは何とも言えませんが、7年間で良くも悪くも「ある色のスタイル」はクラブ内に浸透していると感じます。ただ「一定はできた」で検証終わり、として先に進むのは安直に思えます。

  • そして2つ目、自分たちでボールとゲームをコントロール、これも定性的な話で難しいところです。人によってはボール支配率がなんぼだからいい悪い、となるのかもしれませんが、そんな簡単な話ではないというのはこのブログの読者の方はわかっていると信じていますが。
  • ここは私の見解を端的に述べると、「ゲームをコントロール」できていたのなら、毎試合「安い失点が…」と嘆くことはないように思えます。

まとめ(ピッチを取り巻く環境について思うこと):

  1. 「攻撃的なサッカー」、「人々を魅了」といった曖昧でKPIを設定しにくいことを掲げ、案の定何がどこまでうまくいっていて、どこが足りないのか検証が困難な状態に陥った(現在地がわからないと、苦境の際に途中補強でどんな選手が必要なのかも定義しにくい)。24シーズン最終節の挨拶では三上GMが「しっかりと検証をする」と話していたが、そもそもこのプロセスや価値観で7年間やってきた以上は今さら検証が難しいのではないか。その意味では、客観的な指標等がないだけに、客観性を何らか担保する人なのか体制なのか何らか必要に思える。同じ価値観の人で長年運営してきたが、25年からの新体制でもこの点は変わらないように思える。
  2. 自分たちでボールとゲームをコントロールできていたか:これも検証が難しいが、ゲームをコントロールできていたという割には一貫して失点が多く、コントロールできていたとする論拠に乏しい。
  3.  降格してでも〜〜をしたい、と語っていたが、最終的には予算超過でも何としてでもJ1に残りたい、となったのは、このクラブにとっては身の丈を超えていた印象を受ける。まずこの時点でクラブに”哲学”というほどのものはなく、結局はタイトルや成績、J1所属といったステータスが何よりも重要だと考えにどこかでピボットしている。目標を成し遂げた上でピボットするのは構わないが果たして成し遂げたといえるプレーをしていたか。

2024年12月8日日曜日

2024年12月8日(日)明治安田J1リーグ第38節 北海道コンサドーレ札幌vs柏レイソル 〜ここでしか見れない無邪気さ〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:




  • 最終節時点で柏と新潟が勝ち点41、磐田が38で僅かに逆転の芽を残す状況。柏は34、25(延期)、35、36、37節と5試合続けて後半ATに失点しており、犬飼不在の影響にどうしても言及せざるを得ません。
  • ただ前節、首位の神戸相手に立田は(主に空中戦で)善戦しており、直接的にはジエゴのラフプレーによるPK献上がスコアを左右していますので、犬飼がいないとダメという目で見るのも本質的ではないでしょう。
  • そのジエゴが出場停止の左SBに三丸。他はほぼ同じメンバーが並びます。高嶺移籍後の中盤センターには手塚の起用が増えているようです。

  • コンサは菅野が出場停止でGKに児玉。大﨑がスタメンに定着した7月以降では初めてベンチスタートとなり、宮澤が先発したのはおそらくCBの役割をするには宮澤がよいとの判断でしょうか(この役割を結局固定できないというか、中盤の選手にやらせるのに無理があるのはここ3シーズンほど共通しての課題でしょうか)。

2024年12月2日月曜日

2024年12月1日(日)明治安田J1リーグ第37節 サンフレッチェ広島vs北海道コンサドーレ札幌 〜正しい方向に矢印を向けてから〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • 12月にリーグ戦2試合を消化するという日程に幾分か違和感なのか不慣れ感があるのですが、20チーム制になった以上は仕方ないのでしょう。それ以上に前節から3週間空くことについて、以前村井チェアマン?が「ACLが秋春制になったらそういう日程(終盤の盛り上がりに水を差す)になる」と言っていましたが、確かに3週間はちょっと長いなという気はします。
  • 新スタジアム初年にリーグ優勝の可能性を残す広島。前日に柏相手に引き分けた、首位の神戸とは勝ち点差4で、得失点差では上回る状況ですがリーグ戦では10/19の34節(vs湘南)から3連敗と失速し、タイトルには神戸の不運が必要な状況になりました。「例年この時期は調子が上がらない」とのことですが、9/19からACL2のグループステージが始まっており、35節、36節はミッドウィークのACL2から中2〜3日での日曜日開催ということは影響しているかもしれません。
  • ACL2が始まってからはほぼチームを2つに分けており、ACL2を戦うメンバーでは松本大弥や志知がDFとして起用されたりといった状況。この週は木曜日にフィリピンのイロイロという街でのゲームでしたが連戦となる選手には気温差など影響はあるでしょう。
  • ここ数試合は加藤がトップ、シャドーに松本とトルガイアルスランという布陣でしたが、試合前の私の予想は加藤が左シャドーに入って、トップにパシエンシアかピエロスソティリウを使うのもあると見ていました。トップを変えてくるのは予想が当たりましたが、加藤は右シャドーでスタートしています。

  • 前日の柏-神戸の結果が広島と同じく非常に気になっていたコンサでしたが、1-1のスコアで終わったことで2節を残してJ2降格が決まってのゲームとなりました。メンバーはスパチョークも怪我から復帰したようですがここ数戦と同様で、髙尾は間に合わなかったのか、大﨑を右DFとしています。

2024年11月10日日曜日

2024年11月9日(土)明治安田J1リーグ第36節 湘南ベルマーレvs北海道コンサドーレ札幌 〜変貌するには十分な時間〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:


  • 11月の平塚というと13年前、古田と宮澤のゴールで逆転昇格へ望みを繋いだ2011シーズンを思わせるシチュエーション。あの時は勇退が決まった反町監督と、アジエルのホームラストゲームで、それについて湘南サポーターのご夫婦となんとなくお喋りした記憶がありますが、記録を見ると18歳の遠藤航もCBとして出場していたようです。

  • 湘南はそんな時代を経ていつしか、終盤戦に強いチームとして認知されるようになっていましたが、このシーズンも21節までは3勝6分12敗で19位、要するにコンサよりちょっとだけ上の位置にいながら、22節から35節までで9勝1分4敗。計44ポイントの勝ち点を積んで残留争いからは抜け出しています。
  • 選手起用では後半戦からいくつか変わったところはありますが、最も注目するのが、あ変わらずパワー不足が否めなかった最終ライン、左に鈴木淳之介が起用されたのが17節以降、ここ数試合欠場していますが右DFに高橋が入ったのが22節以降。この日は鈴木淳之介ではなく松村が起用されていますが、懸念の最終ラインにこうした若手の起用で突き上げがされた上での安定化が図れたのは非常に好循環でしょう。
  • 夏には杉岡が首位・町田に移籍するという栄転がありましたが、左サイドの畑も好調を維持しており、23節以降の8試合に出場して3ゴール5アシスト。
  • 前線は見るからにポテンシャルがありそうな鈴木章斗が直近11試合で6ゴール。開幕直後に鮮烈な印象を残してから尻すぼみになってしまうかと思っていましたが、ルキアンの不在を埋めて余りあるパフォーマンスで前線を牽引します。

  • コンサは17位の柏と勝ち点差6。今節敗れ、かつ柏が1ポイントでも積んで差が7以上になるとJ2降格が決まるシチュエーション。今週半ばから札幌市内でも積雪がありトレーニングが満足に行えないという情報もありました。メンバーは髙尾が欠場で、右DF、というか「湘南のインサイドハーフとマッチアップする役割」に馬場が入ります。

2024年11月4日月曜日

2024年11月3日(日)明治安田J1リーグ第35節 北海道コンサドーレ札幌vsセレッソ大阪 〜重戦車カピシャーバ〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



(この項目のみ試合前に書いています)
  • 5月の連休にヨドコウスタジアムで行われた前回の対戦は、首位を走るセレッソと最下位に沈むコンサという状況でしたが、7月からセレッソは2ヶ月半もの期間リーグ戦で勝ちなしと失速。ただしここ5試合は湘南、ガンバ、浦和に3勝、柏に引き分け、前節は不調の磐田に敗れたものの最悪の時期は脱したと言えるかもしれません。
  • システムは、国立でマリノスに0-4と敗れた次の30節(vs神戸)を機に3バックの1-3-4-2-1の採用が増えており、その神戸戦では右から鳥海、西尾、舩木の並び。続く湘南戦(1-2で勝利)は4バックでスタートしたものの、後半途中から進藤を投入して、右から西尾、進藤、鳥海の並び。この際は北野を下げて進藤なので、シンプルにに4バックにDFを1人追加したという形でした。
  • その次のガンバとの大阪ダービーから、右から進藤、田中駿汰、西尾の並びが3試合続けて採用されており、鳥海は起用できる状態のようですが、舩木はおそらく何らか故障等があるようです。駿汰がスライドした中盤には喜田。30周年ということで期待を集めたシーズンですが、前線に比べるとセンターラインの後ろ側の選手の確保が物足りなかったという印象を受けます。
  • また今夏には毎熊のAZアルクマールへの移籍があり、空いた右サイドには4バックの際は大卒1年目の奥田、3バックになってからは右WBにどちらかというと前目の選手と思われる阪田が起用されており、ルーカスでいいじゃんという印象しかないのですがルーカスは左シャドーをやっていて、ここもおそらく適任者が少ない、そんな編成にもかかわらず1-3-4-2-1を採用しているのはシンプルに5バックで守った方が横スライドが楽だから、と見ています。

  • コンサは浅野が26節(8/10 vs福岡)以来のメンバー入り。前節からの変更点は、馬場がスタメンに復帰して白井がベンチスタートとなった点のみ。