2021年6月6日日曜日

2021年6月6日(日)JリーグYBCルヴァンカップ プレーオフステージ第1戦 北海道コンサドーレ札幌vs横浜F・マリノス ~俺らは知ってるぜ~ 

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:

スターティングメンバー&試合結果
  • リーグ戦中断期間ということで、もしくはリーグ戦は川崎フロンターレの独壇場であることを踏まえて、現実的にタイトルが狙えるカップ戦のグループステージ以降は徐々に位置づけが変わってくるということなのか、お互いに主力級がスタメンに並びます。
  • ただ、札幌は予想されたメンバーからジェイがよくわからない理由で外れ、荒野が長期離脱から復帰後では初めて前線で起用されました。
  • マリノスは前田が代表招集中で、やや序列低下気味の仲川が右に入ります。

ゲームプランの推察:

  • スカパー中継の解説は吉原宏太さん。札幌ドームでのリーグ戦(4/16)は、マリノスは後半勝負だった、ということに勝手にされていましたが、前後半の45分という枠組みに意味があるというかは、マリノス陣営の対札幌の捉え方として、「オープンになるまで待ちましょう」「プレスが続いている間はボールロストからカウンターになりあyすいの警戒しましょう」ぐらいの話なんじゃないかと私は推察します。
  • オープンになるまで待つことでマリノスにどんなインセンティブがあるかというと、札幌は同数で守備をするので、エウベルなり仲川なりに札幌のDFが1on1で勝負している状況ができやすい。ここでマリノスが勝てばビッグチャンスになる。ピッチ中央付近にスペースができて、マリノスのボールホルダーに圧力がかからないオープンな状況になると、簡単に仲川やエウベルに配給できるから、リスクを冒さずにそれまで待て、ということでしょう
  • この印象はカップ戦でも続いていて、マリノスはこの試合も序盤からゲームのテンポを上げないというか、前線の選手に簡単にパスして勝負するような展開にはせず、後方でボールを保持して様子を伺います。例によって、厚別のアウェイ→ホーム方向に吹く風を利用するなら、前半から高丘のフィードなどを活かしてもよかったでしょうけど、そういう展開にはしたくなさそうな様子でした。
  • シュート数は最終的には13-9だったとのことですが、終盤マリノスが攻め込んでこの数字。それまでは通じて常に札幌の方が、相手ゴール付近でプレーできていました。

  • 札幌の視点で考えます。カップ戦とリーグ戦との違いは、90分ではなく180分で勝負するという点。常に札幌よりも上位の順位にいる、どうみても格上のチームに対して、180分間ガチでやり合うよりは、幾分かはゲームを”寝かせる”選択も一般論としては十分に考えられる。
  • が、結果的にはそういう印象はなく、割とマリノスに対してガチで勝負しているというか、最終的に180分終わった時に1点上回ってればいい(もしくは延長もPKもある)というシチュエーションなのに、とにかく点が欲しそうというか、ボールは常に前に運ばなければならないみたいな感覚でプレーしてんのか?と突っ込みたくなるようなのが札幌のふるまいだったと思います。
  • もっとも、ゲームを”寝かせる”と言いつつ、このメンバーだとそれは簡単ではないかもしれません。一般にはゲームを寝かせるには、相手を前進させない守備と、マイボールを簡単に喪失しない仕組みが恐らく必要で、前者は頑張って守るとして、後者は札幌においては、それこそリーグ戦前節の柏戦なんかが該当しますが、ジェイがボールを収めてくれないとどうしようもない荒野がジェイの代役である以上、マリノス陣内での展開は速い展開が主体になるので、このスタメンだけ見ると、札幌は純粋なFWを置かずに守備的に入った、というよりは、むしろハイテンポなゲームになるスタメンを選んできたな、とした方が適切でしょう。

2.試合展開

ショートカウンターへの道筋:

  • 札幌はいつもの変形から、荒野と小柏が2トップ、駒井が下がる形で迎え撃ちます。
  • この試合で特筆するとしたら、荒野は以前は中盤の選手をマークする役割だったのが、チアゴマルチンスを見るのが仕事、つまりジェイはアンデルソンロペスをトップで起用しているときと全く同じ。
  • そして中盤では深井が前で、高嶺が後ろの位置関係になっている。これは、ボールを保持したときに左利きの高嶺を最終ラインの宮澤の左隣において、そのボールを持ち出す能力を発揮してほしいからでしょう(もっともそれはミシャ的には「どっちでもいい」で、決めているのは選手主導…宮澤や深井の影響のように見える)。高嶺はマルコスジュニオールとよくやり合っていて、それはこの試合もそうでしたが、今日はそのマッチアップを意識したというよりは、ボールを持った時にとりたいポジショニングから深井との役割が決まったと言えます。

  • 形はそれでいいとして、札幌はマリノスの左CB、畠中にボールを持たせるような立ち方をします。荒野はチアゴマルチンスがボールを持つと正対しますが、畠中の前方を小柏が塞ぐのではなく、むしろ縦のコースを空けているように見えました。
  • 縦パスを出せるCB、という触れ込みでポステコグルー体制で加入した畠中ですが、見ているとパスコースが厳しい時にconducciónしてコースを作れるとか、左CBでありながら左足で持てる、出せるかというとそうでもない。つまり、そこまで器用なDFではない。左CBが左足を使えないとこんな風になります▼。

  • そんな畠中に持たせておいて、ティーラトンには金子。そして渡辺には深井。深井はわざと渡辺を空けておいてパスを誘導し、渡辺が前を向くところで一気に詰める。これでマリノスは前進できなくなります。
畠中に持たせる
  • なおこの時、渡辺が深井に背を向けたままCaracoles(イニエスタやシャビがよくやるターン)できると、DF(深井)はマリノスゴール方向のベクトルで動かしつつ、自分は反転して置き去りにできるので、この能力は非常に重要なんですが、それがなさそうな渡辺と深井は、後者にかなり部があるマッチアップでした。
  • 札幌にとって痛かったのは、深井が32分に負傷で菅と交代したこと。これで、菅が左、青木が駒井の位置、駒井が深井の位置に入りますが、本来前線の選手である駒井・青木のユニットだと、渡辺と岩田に与える圧力は明白に低下します。なので、ちょっとずつマリノスのユニットは”息ができる状態”になっていったと思います。

(去年さんざん見たから)俺らは知ってる~ぜ~:

  • 荒野の前線起用については、昨年さんざん検証しましたし、明日は仕事があるので今回は詳しく見ることはしません。
  • 昨年の結論だけサクッと書いておくと、「空中戦で脅威になれない選手を前線中央に並べて、フィニッシュは逆足ウイングバックの仕掛け主体だと、どうしても時間がかかってスペースがなくなった状態から空中戦で勝負する展開になりがちなので、普通に考えれば得点チャンスは生まれない」。荒野を前線起用で結果を出したマリノス、川崎といったチームとの対戦は、それらのチームは極端にラインを下げてプレーしない(特にボール保持時は押し上げの意識が強い)ので、ボールを奪ってから前線に素早く展開すればスペースを使える状態で背後を突いたりできるから。
  • マリノスは後方に最少人数しか置かないのは相変わらずなので、札幌はこの試合も何らか速攻できそうな雰囲気があったのは事実です。この状況下で久々の荒野の前線起用は、追加点のチャンスとなりそうなPK獲得という一定の成果は挙げます。ただそれ以外は、やはり上記に書いた通りの現象が頻発していて、私の評価は微妙です。

  • 札幌は、ボールを奪うと前線に残っている(下りたりサイドに流れたり自由に動く)荒野にまず当てます。その次の荒野のプレーの1st choiceはだいたいがlay-off…解雇じゃなくて、当てたボールをそのまま戻す。その間に小柏や駒井がチアゴマルチンス、畠中の背後、というか、チアゴの背後は簡単に取れないのでチアゴというか小池の背後?サイドのスペースによく走っていたかもしれません。
  • やってることは滅茶苦茶シンプルなんですが、速くボールを動かす、共通理解があるというのが重要なのか、少なくとも背後に走るまでは成功していたと思います。結局その後、駒井や小柏がサイドに流れて誰がどうやってフィニッシュすんの?マリノスみたいな枚数少ないチーム相手にうまくいくの?という点は知りませんが、この形からPKを獲得したのは事実でした。
  • lay-offからの攻撃は、荒野以外は殆どボールを後ろに下げずに、選手が動きながらの速い攻撃になります。見ていると、札幌はゴール前では殆ど即興でマリノスのDFを攻略しようとしている。サッカーのオフェンスにおいて即興性はなんらか必要なのですが、即興の比率がでかくなるとオーストラリアのパワープレーに屈したジーコジャパンみたいなチームになります。札幌の即興の比率はかなり高めでしたが、恐らくジェイもアンデルソンロペスもいない、日本人で力強いストライカーもいない、となると、この即興にかなり振ったやり方を採用する理由は、あるにはあるのでしょう。

サッカー星人のゴラッソ:

  • 速くボールを動かしてはいるけど、決定的に崩せる要素はない。というか、ゼロトップは中央に、最後に使うスペースを空けておいて、そこにストライカー役の選手が後方やワイドから出てくるのがセオリーだと思うのですが、札幌はシャドーがサイドに流れがちなので、その辺の設計にまだ改良の余地ありなんでしょう。
  • なので、結局昨年10試合?勝ちなしのころと同じで、普通ならセットプレーや事故以外で点が取れるサッカーには見えなかったのですが、26分に敵陣でのボール奪取から、荒野の落としを中央で受けた宇宙人(サッカー星人?)・青木が約30mから右足の素晴らしいミドルシュートで先制。さすがに青木が宇宙人でも、これは年に1回決まるか決まらんか、のプレーでしょう。

便利な言葉に逃げるな:

  • 30分過ぎに絶好の追加点のチャンスで荒野がPK失敗。ATに仲川が菅との1on1を制して同点。「流れが変わった」とは便利な言葉です。ただ、その要因としては深井の交代による強度の低下、そして2点目のチャンスを逃してから、札幌が更にダイレクトな展開でゴールを狙うようになった(何度も言いますが180分の勝負なので、この時間帯でリスクを冒すことのリターンは少ない)のが大きいでしょう。マリノスとしては、もう少し待つ必要があるか?という予測を大きく外れて、絶好機が前半ATにして到来したことになります。
  • 後半は札幌が小柏、福森を相次いで負傷交代させなくてはならない厳しい展開に。福森に変えてドドちゃん。これも、残りあと120分あるのに何でFW?というか、柳あたりが適任だと思ったのですが、よくよく考えると、運動量が落ちることを見越して長身のFWを入れて、前線でチアゴマルチンスに嫌がらせするぐらいは頑張ってほしい、との意図だったのでしょう。実際、ラスト25分くらいは運動量が落ちた札幌は押し込まれ、いつもの撤退守備でアウェイゴールだけは死守する展開になりました。

3.雑感

  • 相手は日本代表FWが後半勝負どころで投入されるチーム。ピアスをつけたまま登場したドドちゃんと対比すると、我々の現在地を改めて思い知らされますが、青木のスーパーゴールによってスコア自体は悪くなかったでしょう。2nd legは小柏までいないとなると絶望的ですが、何らか爪痕を残してくれることを期待します。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

1 件のコメント:

  1. ご相談:相互リンクのご相談。

    北海道コンサドーレ札幌について考えるブログ 様

    はじめまして。

    私は世界の様々なスポーツ試合速報を、リアルタイムで発信しているサイト“Flashscore”の小川大輔ブランコ と申します。

    この度

    弊社日本語版サイト「Flashscore.co.jp」

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    Flashscore.co.jp
    小川大輔ブランコ (daisuke.ogawa@flashscore.co.jp)

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