2020年12月13日日曜日

2020年12月12日(土)明治安田生命J1リーグ第32節 大分トリニータvs北海道コンサドーレ札幌 ~異なる美学~

0.スターティングメンバー

スターティングメンバー&試合結果

A(アジアン).

  • 大分は鈴木が前節の接触プレーの影響で欠場、代役は羽田。
  • チーム最多得点が田中達也の8点なんだね。総得点が31点。

B(ベコム).

  • 15点取れるFWを連れてくる、毎年キープするのは財政的に無理な中で、そこまで質的に優位性をとれるFWがいなくてもある程度戦えるチームを設計している、という印象は今年も変わらずです。そのあたりから逆算すると、GKがムンキョンゴンになったり色々試行錯誤していたんだと思います。

A.

  • 札幌はジェイがトップで、深井が中盤、菅を左サイドに戻してきた。

B.

  • 相手が3バックという認識でジェイを使ったのか。菅は、意図があるとするなら、大分は毎回福森のサイドを突いているので、そこのバランスを意識したのかもしれません。


1.ゲームプランの推察

A.

  • スタッツ上の大分の特徴は、①パス数が多い、②シュート本数が少ない、③得点も失点も少ない。

B.

  • わかりやすいですよね。ボールを回して相手が食いつくのを待って、スペースを突く。1試合でシュートチャンスはそんなにない。けど、本当に質の高いチャンスを1回か2回作る。1-0なり2-1なりロースコアゲームに勝機を見出す。

A.

  • ゴール前は5バックで早めにスペースを消すけど、ビルドアップの質が高いからそのデメリットが小さい。

B.

  • 後ろが重すぎて攻撃できない、みたいにはならないですね。だから、藤本やオナイウが抜けてもFWは知念でいい。ジェイみたいに屈強なDF3人と競り合ってシュートを枠に飛ばして欲しい、みたいな要求をしないので。知念しか獲得できないとも言いますが。


2.試合開始時点の構造

2.1 Good Design.

A.

  • その流れで大分のボール保持から見ていこうか。

B.

  • 大分の基本的なやり方はこれまでと変わってないので割愛します。気になる方はリンクから過去記事を読んでもらうとして。
  • この日、基本的には大分は札幌がマンマークで守ってくることを利用しようとしていました。具体的にはトップの知念が降りずに我慢して張る。反対に、シャドーの町田と野村は、知念と”段”になるようなポジションと言うか、引いてスタートします。それによって、田中駿汰と福森を誘い出す。

シャドーがギャップを作ってスペースに飛び出す

A.

  • 札幌がマンマークでついてくるなら、DFラインにギャップが生まれる。

B.

  • そのギャップ、スペースに誰かが飛び出して、知念がフリックしたりでシンプルに前進していく狙いがあったと思います。
  • 特に、札幌戦だと毎回右サイドに松本が起用されていますよね。札幌もそれをわかっていて菅を左に持ってきたのかもしれませんが、菅が90分常に松本を見続けるのは無理ですね。その隙に飛び出せば広大なスペースを使える。

A.

  • 大分は毎回右肩上がりの配置でプレーするよね。三竿は低い位置で、岩田が高い位置。だから右サイドが高めのポジションでスタート。松本と菅のマッチアップは、菅は福森をサポートしなくてはならないけど、松本は岩田にサポートしてもらう関係性
  • 札幌はそれに前線からのマンマーク基調のプレスで対抗。いつも通り。

B.

  • 札幌はマークははっきりしていました。ただ、大分みたいにGKにバックパスをして何度も攻撃をやり直すチーム相手だと、誰かがGKまで二度追いしてプレスをしなくてはならなくて、それがジェイになることが多かったですね。CBの羽田がバックパスするとジェイが行く、深井の対面の小林や長谷川だと、深井がGKに行くことが多かった。
  • ジェイが何回もこのようなアクションをするのは難しいのと、特に大分の場合は、ピッチの縦幅を目いっぱい使って行うので、走る距離と回数が増える。なので、あんまりプレスはハマってなかったと思います。トップに武蔵みたいな選手がいたら別だったと思いますが。
  • あと、深井や宮澤が長谷川と小林に行くにしても、距離が離れてて強度があまり出せないんですよね。

A.

  • いつもは駒井が前で頑張って走って、守備強度を担保するようなことが多いけど、駒井は岩田をマークしているので、前線にいないことが多かった。

B.

  • 一言で言うと、札幌のプレスを空転させてDF周辺のスペースを突いて攻撃しよう。大分の狙い通りだったと思います。


2.2 リスクヘッジに屈す

A.

  • 大分は前半うまく守っていた印象だったね。

B.

  • 札幌の誰かフリーになる、スペースを得る選手がいたかというとそうではなく、札幌はあまりボールが落ち着かなかったと思います。
  • 最終ラインは5枚を残して、基本的にこの5枚が簡単に動かないでスペースを埋めながら守っていて、簡単に裏1発みたいなのは無理そう。
  • じゃあ、その分、他のポジションではどうか?ってところですが、大分は1トップ2シャドーの3人で頑張って横スライドするだけなんですけど、札幌はなんかそれだけでボールを運べなくなっちゃう。

大分の対応

A.

  • 結果アバウトに蹴ってジェイが競る。

B.

  • でもジェイが競るとそれだけでチャンス、まで行かなくても、敵陣でボールキープして、Football lab風に言うと攻撃機会1回にカウントされちゃうような展開ができるんですけど。
  • ただ、大分陣内に侵入しても、9枚でゴール前を固めてくるので、大分の選手が帰陣する前に素早くラストパスを送らないとゴール前にスペースがなくなって札幌は終わり。得点の匂いが全然しなかったです。

時間がかかると5バックで引かれてスペースなし

A.

  • だからジェイ対策、というか撤退してクロスボールに備えることを考えると、高さのある選手が欲しくて羽田

B.

  • まぁ他の選手をよく知らないですけど、羽田は強そうな感じでしたね。札幌は引けばクロス連射してくるけどピンポイントでやられない限りは大丈夫、って感じで、GK高木も積極的に前進守備で対抗していましたね。
  • 相変わらず札幌はスペース消されると攻め手がないのは事実で。クロスが順足逆足は、実はあまり関係ないですね。

A.

  • 反町山雅スタイルだね。9人で守って1人だけ残す。

B.

  • これやると全然攻撃できなくて疲弊してダメなのでいつしか廃れたし、札幌もそれが嫌でハイプレスをやっている。けど、大分は敵陣にボールを運ぶのが巧いので、撤退することがあまりデメリットにならないんですよね。

3.速さが足りない

A.

  • 8分にDFラインのフィードから、知念を越えたボールが、左サイドから爆走してきた田中達也が菅野の前で拾って抜きかけるけど菅のカバーで間一髪。
  • 19分にも同じような形で野村が抜け出しかける。

B.

  • 13分に右シャドーの金子が出口になって、札幌は大分のプレスを突破しかけます。しかし金子に野村がプレスバック、残りの選手も前線から一気に戻ってきて、札幌がサイドチェンジしてさぁ攻めるぞ、ってタイミングではもう大分は枚数が揃ってました。とにかくコレクティブ。
A.

  • 18分に札幌が左サイドで、駒井と深井のところでハメてボール回収に成功。この瞬間は、松本と田中が高い位置を取っているので戻ってくるのに時間がかかる。
  • ここでボールを戻さないですぐにシュートまで持ち込めると、ショートカウンター成功、と言えるんだけど、深井のクロスはブロックされてやり直し、その間に大分の枚数が揃ってしまった。

B.

  • ここはラストパスの精度が足りなかったですね。

A.

  • で、23分に大分が先制。

B.

  • ちょっと菅が軽率でしたね。


A.

  • 札幌はどうよ。

B.

  • 駒井が25分くらいからちょっと移動し始めたかな?ただ、一番効果的だったのは40分の菅が飛び出した形で、深井が町田の手前までドリブルで運んで町田を引き付ける。そうすると町田は福森にスライドするのが遅れて、フリーの福森が見事なワンタッチパスで裏の菅へ…という形でした。やっぱり深井は別格に戦術眼というか、相手がどうしたら困るか知ってるなという印象でした。

40分(深井のconducciónから)

A.

  • 全体的にルーカス、金子、駒井あたりが、札幌はボールを預けて打開を図るんだけど、彼らにボールが渡ると既に大分の枚数が揃っていて、囲まれて突破できない、ってのが多かったね。

B.

  • 後は、ATにジェイが前線で粘って、菅のクロスに駒井のヘッド。脈略がない形ですけどこれも惜しかったですね。こういうのがあるので、シャドーの片方にサイズのある選手を置きたいのはあると思います。


4.DODO革命

A.

  • 一応決定機は前半2,3回はあったんだね。けど、後半頭からスパっとシャドー2人を入れ替える。

後半開始~

B.

  • 試合の構図をガラッと変える交代カードではありましたね。

A.

  • カオスさというか無秩序さが増したね。最初は札幌、徐々に大分も。

B.

  • 札幌は、両シャドーにボールが入ると、味方の上がりを待たずにドリブルで突っ込める。んでそれがボールロストになると、バランスを崩しているところを大分はカウンターで仕掛けたくなります。普段はもっと我慢していると思うんですけど、それだけ札幌の状態が”おいしい”というか。
  • あとは前線に大きい選手が入ると、放りこみも増えて、これが大きいDFが競っていると跳ね返して、そのままボールが行き来する展開になったりも。DAZN見返す気がある人は、61:05くらいの展開(田中駿汰のフィードが跳ね返されて大分ボール)を見るとわかりやすいですね。

A.

  • 札幌は仕掛けられる選手が増えた一方で、どこで仕掛けるのか不明瞭になった感もあるね。

B.

  • 言うならば、バックラインでは駒井、前線ではアンデルソンロペスがやはり、このメンバーだと頼りになるというかチャレンジするのが好きですね。駒井が下がってきて受けて、そのままアンロペのいる右サイドで打開みたいな。

A.

  • 上記の61分過ぎの展開は、大分が跳ね返したところから知念が宮澤を突破して、左クロスに松本のボレー。菅野がライン上でボールをストップするビッグセーブだったね。

B.

  • ミシャは終盤FWを増やしてオープンにする展開が好きだし、この試合は終盤ですらなく後半45分ずっとそうなんですけど、ソンユンとか菅野とか、信頼できるGKがいるところが大きいですよね。その意味ではミンテなんで下げたって感じですが。理由は大体わかりますが。

A.

  • 大分は自分からはそうしたくないはずが、札幌のペースに引き込まれていたね。
  • その菅野のビッグセーブの直後に大分は3枚替え。

B.

  • 大分は63分に3枚替え。カードの切り方を見ると、この展開すごく嫌だったんだろうなって感じがします。落ち着かせたい交代ですよね。

63分~

A.

  • あと前3人で横幅守り切るのは無理だね。65分くらいでかなり野村はきつそうで、そうなると田中駿汰のところでボールが持てるようになる。もっとも札幌はボールを持てなくてもOK、とするカードを切っている(ドド、アンロペ)けど。

B.

  • 三平は、やっぱり福森はケアしときたかったんでしょうかね。

A.

  • アンロペのゴールが75分。

B.

  • スローインからちょっと軽率だったかもしれないですね。同数なこともあって、このあたりは慎重にいかないと一発で決まってしまう。

A.

  • ラストは札幌が更に放り込みを増やして、といったところだった。ドウグラスオリヴェイラが惜しかった。


雑感

B.

  • 大分はリーグでベストのチームとも思わないし、札幌は大分を見習え、とも思ってないんですけど、グッドデザイン賞みたいな感じですね。編成から監督のチーム設計、実際のプレーが非常にリンクしていて相変わらず完成度が高いです。
  • 全員で守備して全員何らかオフェンスの役割をシェアする。トータルフットボールとか耳障りのいい言葉を監督が発しなくても、(ヨーロッパ的な基準で)当たり前のことをやろうとしているのは非常に好感ですね。
  • 札幌はなんとか個々の力もあってドローに持ち込んだ、と言う感じでしょうか。大分戦は毎回同じパターンなんですけど、勝ちきれないですね。

A.

  • 長かったシーズンも次でラストだね。それでは皆さん、また会う日までごきげんよう!

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