2019年4月27日土曜日

プレビュー:2019年4月28日(日)明治安田生命J1リーグ第9節 ジュビロ磐田vs北海道コンサドーレ札幌

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー

・札幌:
 ×(欠場濃厚)…DF石川、MF駒井、MF中原
 ▲(出場微妙)…MF小野、MF荒野、FWジェイ
・磐田:
 ×(出場停止)…FWロドリゲス
 ×(欠場濃厚)…DF大井
 ▲(出場微妙)…FW川又

 札幌は同じメンバーだろう。ルーカス、ロペス、深井、チャナティップ、ク ソンユンはミッドウィークのルヴァンカップを回避したが、残りの6選手は中3日でのアウェイゲームとなる。前節負傷交代のルーカス フェルナンデスは問題なさそうだとみられる。
 磐田は恐らくミラーの1-3-4-2-1を選択するだろう。GKと3バック、中盤の田口、FWのアダイウトンは不動。前節の名古屋戦では、より守備の意識を強めた1-3-1-4-2を採用したが、この試合でベンチスタートだった大久保、森谷はルヴァンカップにも起用されず温存しており、スタメンに復帰するだろう。アウトサイドはどちらかが小川大貴で、右におそらく松本が入る。マルチロールでもある松本がシャドー等、他の位置で起用されるなら、エレンが前節に続き左に入ることもありうるが、恐らくシャドーに山田となりそう。川又は4月1週目に全治2~3週間程度の負傷と発表されているので、この試合でメンバーに入る可能性はある。

2.戦術面の一言メモ

(以下、札幌の黒字は前節のプレビューと同じ。青字が変更点)。

2.1 札幌


 ボール保持:ビルドアップはミシャ式5-0-5ベースだが、福森が偽SBのような形をとることもある(実態はフリーマンだが)。中央3枚(宮澤・深井・荒野)がローテーションしながらオープンな選手から前進を図る。ハイプレスを受けるなどして後ろで詰まったら、シンプルに武蔵かロペスへ。躊躇なく放り込む。

 ボール非保持:ハイプレス時、リトリート時ともにマンマーク基調の守備を展開する。よって、5バックを前提としながらも、まず各ポジションで枚数を合わせる傾向が強く、特に相手のCBと中盤センターに同数で守備できるよう、前線の枚数を調整することが多い。

 攻撃→守備の切り替え(ネガティブトランジション):中盤2枚は即時奪回を目指すが、その位置取りは「中盤」ではなく最終ラインにいることが多い。要はCBの前進守備と同じなので、狩り切れるならいいが裏を取られるリスクも大いに抱えている。

 守備→攻撃の切り替え(ポジティブトランジション):2トップ気味で前残りしやすい武蔵とアンデルソン ロペスをまず使う。ロペスは背負ってのキープと仕掛け、武蔵はターゲット兼裏抜け担当。

 セットプレー守備:マンマーク基調。

2.2 磐田


 ボール保持:イメージはともかく、実態はあまりボール保持にこだわらない。DFは相手に寄せられると簡単に蹴る(ボールを手放す)傾向が強い。ターゲットはアダイウトン。ボール保持者を助けるために、ボールに寄る傾向が強い。ボールサイドのシャドーは頻繁に列を降りる。逆サイドのシャドーや中盤センターはボールサイドに寄ってくる。結果、ゴール前が枚数不足になっていることが多い。最終ラインは全員右利きだが、左に配される高橋が一番信用されているように思える。

 ボール非保持:5-2-3ないし5-4-1でセットし、5バックはマンマーク。中盤から前も基本的に人基準で守備をするが、あまり高い位置から追いかけることには消極的。最終ラインは結構高めに設定されているが、ボールホルダーへの圧力は甘めで、5-4-1のブロックになっていることが多い。

 攻撃→守備の切り替え(ネガティブトランジション):基本はリトリート。

 守備→攻撃の切り替え(ポジティブトランジション):まずアダイウトンに蹴る。アダイウトンは左サイドが得意なこともあってか、左からの展開が多め。また、ロドリゲスがジョーカー兼ファストブレイクのオプションだったがこの試合は出場停止。

 セットプレー守備:マンマーク基調。

 全体を通じて言えるのは、「相手に合わせたサッカー」(端的に言うとリアクションサッカー)をする傾向にある。湘南相手なら自軍もプレースピードを上げることで局面で後手に回らないようにする。逆に相手がスローな展開を好むなら、磐田の方から速い展開に持ち込むことはしない。

 データ関係で最近面白いと感じたもの。

 磐田の攻撃の選手は中央に寄っているように見える。実際は常に中央にいるというより、ボールサイドに寄るので、左なら左、右なら右に寄る動きが平準化されてこのように表現される。


 要約すると、
・磐田のロングボール本数はリーグトップ。ソリボールこと松本をも上回る。ボール保持は平均以下。
・前で奪う守備よりも後方での守備(クリア)が多い。

 そんな傾向が現れている。

3.予想される試合のポイント

3.1 ボールは持てる。その先は見えているか。


 2.で整理した両チームの振る舞いの傾向から、恐らく札幌がボールを握る時間帯が多くなるだろう。札幌がいつも通り、4-1-5ないし5-0-5で後方の枚数を確保すると、磐田はボールを取り上げる有効な対策を恐らく打ち出せない。よって、焦点は札幌が磐田陣内に侵入を始めた後に何が起こるか、である。

 先述のように磐田は最終ラインではマンマークが基本。第7節の静岡ダービー、第8節の名古屋戦はいずれも2トップのチーム相手だったが、相手2トップの位置取りによってCB3枚が左右に動かされるので、度々CB-SBのチャネルが空いていた。
 ボール保持時5トップになる札幌相手だと、札幌はレーンを意識したポジション取りをする傾向にあるので、恐らくチャネル間が大きく空くことはない。逆に言えば、札幌は普段通りの位置取りをしていては打開が難しいかもしれない。
札幌ボール保持時の予想マッチアップ

 磐田の5バックを動かす手段としてまず考えられるのが、左サイド、チャナティップと菅、福森で配置を入れ替えること(厳密にはこれも普段通り、だが)。チャナティップが降りてDFを引き連れた背後を閉じられる前に素早く突きたい。
左サイドの旋回はパターンの一つ

 左サイドはこの形があるとして、右サイドはロペスの突撃以外に打ち手があるか。活動するためにスペースが必要なロペスの”無駄撃ち”が多くなると、リズムは悪くなるだろう。

3.2 磐田のキーマン


 先述の通り、磐田はボール保持時に人がボールに寄ってくる。また最終ラインでは森谷が下がって高橋が上がったり、アウトサイドが中に入ったり、シャドーが降りたりとオリジナルポジションから逸脱する傾向が強い。これは札幌も「人のことは言えない」状況だが、札幌は福森の攻撃参加には敵陣ゾーン3での高精度クロスの供給や、チャナティップが降りてボールに触ることで攻撃の組み立て(サイドチェンジが多い)を担うなどの合理性がある。磐田は大久保が降りると前線の得点源が減ったり、高橋がポジションを上げてもそうした合理性は乏しく、マイナスの影響が小さくない。
磐田ボール保持時の予想マッチアップ

 この点を踏まえると、磐田のキーマンはエレンだと思っている。エレンが投入されるとこの問題点が解消され、磐田の個々の選手の役割が整理される傾向にある。
 下は名古屋戦の磐田のチャンスシーンで、中央で新里がボールを回収したところ(1枚目)。この試合の磐田は守備時5-3-2、アダイウトンとロドリゲスの2トップで戦っているが、それを考慮してもボールサイドに人が多い。
磐田のチャンスの例(1)

 この時エレンは大外にいる。松本→田口と繋がって田口が前を向くと、エレンがサイドでオーバーラップすることで攻撃の”横幅”が確保でき、宮原を引っ張ることに成功する。それにより生じたチャネルに最終的に松本が侵入することでゴールに迫るが、磐田は左はエレン以外に横幅を作れる選手がいない。こうした展開は、エレンが起用されていない時間帯はほとんど見られなかった。
横幅を作ってチャネルに侵入

 それは起用されている選手の特性もあるが、先述のようにポジション移動が多すぎて本来いるべき位置に人がいないため。この試合でもエレンは高橋のオーバーラップに対し「お前は後ろにいてくれ」とするようなジェスチャーをしていたが、エレンはアウトサイドでのプレーに自信があるのだろう。サイドに張って仕事ができる選手がいれば、無意味なポジションチェンジを最小限に留めることができる。

 第7節のダービーで磐田唯一の得点をアシストしたのもエレン。この試合は途中出場で、体力に余裕があったのもあると思うが、長い距離のドリブル突破からクロスをロドリゲスに合わせて完璧なお膳立てをした。左サイドは小川大貴の信頼が厚いようだが、磐田の現状を考慮すると、ナチュラルに順足でクロスを供給できる選手を配した方が、決定機は増えそうである。
磐田のチャンスの例(2)

用語集・この記事上での用語定義

・1列目:

守備側のチームのうち一番前で守っている選手の列。4-4-2なら2トップの2人の選手。一般にどのフォーメーションも3列(ライン)で守備陣形を作る。MFは2列目、DFは3列目と言う。その中間に人を配する場合は1.5列目、とも言われることがある。ただ配置によっては、MFのうち前目の選手が2列目で、後ろの選手が3列目、DFが4列目と言う場合もある(「1列目」が示す選手は基本的に揺らぎがない)。
攻撃時も「2列目からの攻撃参加」等とよく言われるが、攻撃はラインを作るポジショングよりも、ラインを作って守る守備側に対しスペースを作るためのポジショニングや動きが推奨されるので、実際に列を作った上での「2列目」と言っているわけではなく慣用的な表現である。

・攻撃の横幅:

「横幅を使った攻撃」等の用法が多い。ピッチを広く使って攻撃すること。横幅を使うことで相手の選手感覚を広くし、結果、守備強度を下げることにつながる。(「守備は狭く、攻撃は広く」が基本と思えばよい)。

・ゾーン3:

ピッチを縦に3分割したとき、主語となるチームから見た、敵陣側の1/3のエリア。アタッキングサードも同じ意味。自陣側の1/3のエリアが「ゾーン1」、中間が「ゾーン2」。

・トランジション:

ボールを持っている状況⇔ボールを持っていない状況に切り替わることや切り替わっている最中の展開を指す。ポジティブトランジション…ボールを奪った時の(当該チームにとってポジティブな)トランジション。ネガティブトランジション…ボールを失った時の(当該チームにとってネガティブな)トランジション。

・ハーフスペース:

ピッチを5分割した時に中央のレーンと大外のレーンの中間。平たく言うと、「中央のレーンよりも(相手からの監視が甘く)支配しやすく、かつ大外のレーンよりもゴールに近く、シュート、パス、ドリブル、クロスなど様々な展開に活用できるとされている空間」。

・ビルドアップ:

オランダ等では「GK+DFを起点とし、ハーフウェーラインを超えて敵陣にボールが運ばれるまでの組み立て」を指す。よってGKからFWにロングフィードを蹴る(ソダン大作戦のような)ことも「ダイレクトなビルドアップ」として一種のビルドアップに含まれる。

・ファストブレイク:

元は恐らくバスケットボール用語。速攻のこと。

・マッチアップ:

敵味方の選手同士の、対峙している組み合わせ。

・マルチロール:

複数ポジションをこなす選手のこと。

・マンマーク:

ボールを持っていないチームの、ボールを持っているチームに対する守備のやり方で、相手選手の位置取りに合わせて動いて守る(相手の前に立ったり、すぐ近くに立ってボールが渡ると奪いに行く、等)やり方。対義語はゾーンディフェンス(相手選手ではなく、相手が保持するボールの位置に合わせて動いて守るやり方)だが、実際には大半のチームは「部分的にゾーンディフェンス、部分的にマンマーク」で守っている。

・リトリート:

撤退すること。平たく言えば後ろで守ること。

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