2025年12月3日水曜日

北海道コンサドーレ札幌の2025シーズン(2) 〜時効なき残債処理〜

2.あんなこと、こんなこと、あったでしょう〜

  • 今回はこのシーズンの背景やピッチ外での重要なトピックについて振り返ります。
  • 記号の意味は各トピックを、シーズンへの影響として ⚪︎:よかった ×悪かった ?:どちらともいえない と分別したものです。
  • 余談ですが今まで黙ってましたがいわきでレンタカーぶつけました。まぁ保険入ってましたが…


×:前年夏のパニックバイムーブのおかげでオフに身動きが取れず

  • 24年にコンサの降格が決まるか、現実味を帯びるか、もしくはまだまだ可能性がある段階からこうした質問が何度か飛んできて回答したのですが、JリーグではJ2降格→主力選手の大量放出 という図式は簡単には成立しなくなっています。
  • 実際のところ24年オフのコンサも、スタメン級の選手では岡村と浅野のみが移籍金が支払われる移籍、鈴木武蔵がレンタルバック、駒井と菅がクラブ側から契約非更新による移籍であり、引き抜かれたのは実質的に岡村と浅野のみで、スタメン級の選手ではGKの菅野や高木、DFのパクミンギュ、髙尾、MFの大﨑、馬場、荒野、宮澤、青木、近藤、前線のスパチョークといった選手はJ2でのシーズンを戦うメンバーとして確保されました。
  • 20年前であればJリーグでは、30歳未満の選手は契約切れであってもフリートランスファーにはならず移籍金が発生するローカルルールがありましたが、現在は契約切れであれば移籍金0で獲得できるので、町田ゼルビアのようなチームを除けば大半のチームは契約切れの選手を移籍市場で漁るような動きをしていると推察されます。
  • 今回のコンサも、例に挙げた22年に降格した際の清水も、主力選手で他のチームが欲しがる選手に契約が切れる選手があまりいなかったため、ファンが予想するほどの選手の大規模な放出はなかったと思われます。

  • 一方でスカッドの入れ替えという点で考えると、一定は選手を放出して年俸分を浮かせたり、場合によっては移籍金収入を得たり、またポジションを空けて競争を促すことも時に必要になります。
  • この点において、今回のコンサは24年夏時点で予算を使い切り(25年に黒字必達となり)、かつ保有していた選手の多くが複数年契約中で24年オフに契約が切れる選手が少なく、新しい選手を連れてくるために選手を売ったりすることが能動的にできず、いわば補強に動きたくても”身動きが取れない”状況でした。
  • 24年に7シーズン守ってきたJ1の椅子をどうしても手放したくない!という気持ちはわからなくもないですし、大半のサポーターはそうしたクラブの姿勢を支持していたと思いますが、結果的には先のことなんか全然考えていない、サステナビリティを感じさせない判断やアクションのつけを、この25シーズンに1年遅れで支払うことになりました。結局は前年のパニックバイと、その責任者である三上前GMがこのシーズンの全ての元凶なのです…。

  • …というふうに、「全て〜〜が悪い」とか、「Aさんは100%善人または優秀で、その後任のBさんは悪人であり無能」みたいな、情報を削ぎ落として白か黒かをとりあえず断定して、考えることを放棄させることが昨今のトレンドというか、バズるにはこういう感じの煽りとかトップラインが必要なのでしょうけど、基本的に全ての物事には前後の文脈があってつながっています。
  • 確かに直前を見れば24年夏のパニックバイが不発だったのは大きい。しかしなぜそこに至ったかといえば成績不振があり、なぜコンサが弱いのかといえば色々ありますが、一つはこのクラブには30年間の歴史を見てもプレーモデルといえそうなものがほぼ存在しない。なんとなく誰かが「このサッカーは好き」(あとは決めるだけ)、「この監督じゃダメ」といった雰囲気で判断することを続けてきた末にこうした状況に陥っているのであって、単に、前の年にたくさんお金を使いすぎたとか、そこで加入した選手があまり戦力になっていないとか、それだけの問題にとどまらないことを理解しないと先に進めません。

  • なお24年のパニックバイは三上前GM曰く「石屋製菓さんはじめスポンサーサイドから『財政的に無理をしてでも大型補強してJ1残留を目指しましょう』とする働きかけがあった」そうですが(三上前GMは当初「黒字確保は絶対」と言っていました)、憶測ですがもしかすると既にこの時点でコミュニケーションミスがあったのかもしれません。
  • (のちに社長に就任する石水氏が「自分が就任した時点で赤字予算だった!」と不満を述べていましたが、石水氏が同意したのは24年後半戦に大量の招待を行ってホームゲームのスタンドを埋めつつクラブに資金提供を行うことであり、その資金を24年夏の移籍に注ぎ込むまでは同意していなかったのか?と推察する次第です)

  • 余談ですが、先述の「20代の選手は契約切れでも移籍金が発生する時期」にJ2に降格したチームで、例えば05年に降格した柏は、明神、玉田、永田、矢野、波戸、土屋、大野といった主力級の選手を、いずれも移籍金が発生する形で放出したとされます。
  • しかしこれによって柏は、スタメンのポジションが空いて選手を競争させることができましたし、移籍市場で動くだけの資金も得られたはずです。結果、新たな監督(石崎信弘氏)の下、1年でJ1復帰を果たした柏は、J1を戦う07シーズンは大谷、菅沼、李、小林亮といった若手がスタメンに名を連ねるようになり、新監督にマッチする編成への転換もしくは若手主体のチームへの転換に成功します。
  • もっとも柏の場合、親会社に稟議を通せば補強資金としてまとまった予算が得られますし、それでこの時期もDF古賀の獲得や、外国籍選手ではディエゴソウザ、フランサといった前線の軸になる選手を確保していたので、コンサとは単純比較はできないのですが。

?:菅、駒井をフリーで放出(他、青木を慰留など)

  • 24シーズンオフにフリーで放出された4選手(菅、駒井、阿波加、小林祐希)のうち、毎年何らかのポジションで試合に出ていて、かつ26歳と若い菅の処遇に関してはサポーターの中でも賛否が別れる、というか否、もしくは不可解だとされる反応が多かったと思います。
  • これについては放出から半年後、4月の決算報告時にほぼ答え合わせになりそうなリリースがありました。
  • 例の「居住・非居住問題」…想定していなかった分の大型支出が生じたため、普通に考えれば1年契約くらいは提示できたであろう菅や駒井を諦めざるをえなかった、ということかと思います。同じく契約が切れるタイミングだったとの報道があった青木は、そうした状況でも全力で慰留したかったということになります。
  • 3選手のうち、菅は3バックの左WBのほぼ専門ということで駒井、青木を含めた3人の中では最も起用法が制限されますし、得点やアシスト等で直接スコアに関係する働きが少ない。残る2人はいずれも複数ポジションで起用可能ですが、青木の方が若く得点に絡む能力があることなども考慮されたのかと思います。

  • 菅を放出したコンサはこのシーズン、序盤に3バックから4バックベースのシステムに切り替えますが、左利きのDFであるパクミンギュ、岡田、中村桐耶が3〜5月にかけて相次いで離脱する緊急事態となりました。
  • ただ菅はあくまでDFというよりは大外をアップダウンする選手なので、岩政監督が掲げるスタイルにおいては、もう少しボールを動かして味方を使える選手の方が求められる状況で、菅を無理してでも残すべき状況だったとは個人的には思いません。

  • 駒井に関しては、夏のマーケットでの馬場の移籍や故障、高嶺のDF起用(後述)もあり、シーズン中に中盤センターのスタメン級の選手が欲しい状況になったと言えるかもしれません。
  • ただし私の見方としては、駒井は中盤センターというよりはもう少し前のインサイドハーフやシャドーが得意であり、また変革を促そうとしていた岩政前監督体制で駒井のようなベテランで影響力が強い選手を残すことには様々な影響が考えられ、新監督体制で本当にチームが変わろうとするなら契約満了の判断はおかしくはないと感じます。
  • 一方で柴田監督のような、約束事を比較的少なめにして選手の判断に委ねる部分を多めにするやり方だと、若手よりもベテラン選手の方が力を発揮しやすい事例はしばしば見受けられますので、最初からそうした路線で行くとするなら、また別の話になってきます。

⚪︎:特別予算で高嶺を取り戻す

  • そうした激ヤバな状況のオフでしたが、「フルコミット」を掲げた石水新社長の判断によって、コルトレイクに移籍金を払って高嶺を買い戻します。
  • 個人的には高嶺の獲得については、「中盤センターは枚数は揃っているが、宮澤を筆頭にベテランが多く、フル稼働できて運動量がある高嶺を確保することは悪くない」。程度に思っていましたが…
  • 蓋を開けてみれば、まず左利きのDFが誰1人CBとして稼働できない問題が露呈され(そもそも編成的にCBっぽい選手は中村桐耶しかいませんでしたが)、高嶺がCBに回ります。
  • その後、4月から4バックの左CBとして西野の目処が立つと、今度はSBのパクミンギュ、岡田、中村桐耶が軒並み負傷や不調に陥り、高嶺をSBに回せざるをえない状況で、高嶺1人で2人分か3人分の働きをしてもらうことになります。
  • かつ単に試合に出ているだけではなく、CBだと流石に1試合の中で何度も体を張って、屈強なFW相手に跳ね返すようなプレーには限りがありますが、相手の1列目のプレッシングを回避してボールを前に届けるプレー、SBで相手のワイドの選手を封鎖するボール奪取能力だったりと別格の働きを見せつけます。
  • そして後半戦ではDF起用から解放され、前半戦以上に攻撃面で圧倒的なパフォーマンスでチームを牽引します。この補強については、高嶺がいなければもっと早々に終戦だったと思われますので大正解でした。

?:岩政監督の招聘

  • これは長くなるので次の記事で別立てとして整理します。
  • 簡単にサマリー的に見解を述べますと、結果(成績):×、試合内容やプレーの評価:△、アプローチ:⚪︎、といったところです。

×:選手のコンディション対策(京谷パフォーマンスコーディネーターの招聘等)

  • 前のシーズンに沖縄・金武町でのキャンプから故障者が多く、シーズン序盤にベストメンバーが組めないという話がありました。キャンプ地の芝については可能な限り対処してもらうとして、別途故障者問題へのソリューションとして新たなスタッフが招聘されます。
  • 記事の見出しの問題かもしれませんが、ずいぶんビッグマウスだな〜と思った印象があります。競技の性質上、不可抗力のようなリスクある局面は避けられませんし、言葉通り「僕のせいで大丈夫」と本気で思っているならこのシーズンを終えてのコメントを伺いたいところです。

  • このシーズン、負傷による離脱をした選手が少なくなったかというと、そこまで劇的な効果はなかったように思えます。
  • 特にシーズン序盤、4バックのシステムを採用していた際に左SBの候補であるパクミンギュ、岡田、中村桐耶が同時に離脱し、これによって高嶺を左SBで起用せざるを得ない状況になりましたが、シーズン序盤に最適な選手の組み合わせを探している状況で非常に厳しいシチュエーションになりました。なおパクと中村は試合中の負傷であるため、「僕のせい」ではないように思えますが、誰のせいかは置いておくとして。
  • 高嶺はこのシーズン、DFとして13試合に先発出場することになり、当該試合では5勝3分5敗という結果でしたが、シーズン中盤以降にMF起用で固まってからの圧倒的なパフォーマンスを見る限りでは序盤から中盤で固定したいところでした(もっとも本人の話ではDF起用による好影響もなくはなかったとのこと)。
CBや左右のDFをやる中で、自分の感覚が戻ってきた部分はあった。ボランチと違い常に前向きにボールを持つDFというポジションを経験して、積極性が戻ってきたかなというのを、6月15日(第19節)の今治戦で久しぶりにボランチで出場して感じた。
  • 後半戦は夏のマーケットで加入した宮が負傷に苦しみ、26節以降は先発1試合にとどまります。一方で前のシーズンの前半にコンディションが整わなかった髙尾は、チームで唯一の右SBで負担が大きいと思われましたが、夏場に短期間離脱したのみで乗り切ることに成功しました。

×:未整理で歪すぎるスカッドにより「競争意識を煽る」は完全に失敗

  • 前提としてまず監督が変わればチームづくりの考え方も、基準も、優先事項も、アプローチも、好む選手も全て変わります。その点では今回監督交代するにあたり、高嶺と新卒の木戸と林田(他、特別指定の佐藤)以外は全く補強がなく、そもそも監督のリクエストも聞けない、という状態は新監督を充分にサポートしているとは全く言えません。

  • 一方、岩政前監督はコンサのそうした事情を把握した上でチャレンジの一環だとして契約したことも事実なのでしょうけど、この際、最低限のリクエストとして「競争のため1ポジションに複数の選手を確保してほしい」とは伝えていたようです。
  • といってもコンサがオフにスカッド整理に動ける状況ではなかったので、監督のリクエストに”応えた風”の態度を取るしかできなかったのではないでしょうか。

  • 当初、岩政前監督は3バックの1-3-4-1-2の配置を考えているとの報道があり、それだと仮で↓のような配分ができますが、この時点でも左のDFやアウトサイドで競争が生じるかというと怪しくなっていますし、
  • その後シーズン途中に4バックに切り替えると、CBと右SBで著しい人員不足の反面、前線は明らかに飽和状態であることが露見されます。
  • 特にCBに関しては、監督の要求に明らかに応えられない選手の起用を継続せざるを得ず、競争を生じさせパフォーマンスを向上させることには完全に失敗していました。

  • このシーズン主にスタメンで起用されていた選手を並べると(原など一部選手は並べるか迷いましたが)、
  • こうした状況で、途中加入の浦上、宮を含めてもDFは明らかに「2人以上」になっておらず、白井をワイドの選手と扱うことでようやく右サイドの近藤に競争相手を確保でき、前線のシャドータイプだけは豊富…といびつなバランスなのは明らかでした。

  • また4バックの際の左MFなど、適任者が見つからず無理やり他のポジションの選手も当てはめている状態の箇所も散見されました。
  • チーム戦術との適合性に関しては、岩政前監督はハイプレスや前線のスペースへのランによる攻撃を掲げていたのに対し、センターライン全般(前線のFWやシャドー、中盤センター、センターバック)にあまり走力やスピードのある選手が多くないことも編成上かなり問題があったと感じます(これらについて詳しくは別の記事で)。

?:コーチングスタッフの入れ替え

  • 大きなところでは、岩政前監督と旧知の関係である戸川コーチの加入、通訳が「フットボールカルチャーを理解している人」であることが重要だとして元プロ選手が起用されます(ただ最終的にはウリセス氏もマリオ加入後はベンチに入っていましたね)。
  • outでは沖田優氏が退団(ザスパ群馬の監督に就任)。
  • そして赤池コーチがGK(GP)コーチからヘッドコーチに配置転換され、後任には佐々木コーチ、アカデミーと兼任の曳地コーチの体制となります。
  • 役割としては砂川コーチが攻撃を担当、戸川コーチが守備を担当、そして「ミシャ体制を熟知する」赤池コーチをヘッドコーチに置くとの説明がされました。
  • ここからの話は、前提として、練習を毎日間近で見ていたり、話を聞いて詳細を把握しているわけではないので、評価は「?」としておきます。以下は岩政前監督期に8回程度見た程度での感想です。

  • まず全体練習はほぼ岩政前監督が主導していたと感じます。
  • 部分的には砂川コーチが主導して相手ゴール前の局面を意識した練習をしているところも見ましたが、岩政前監督が指揮する練習は実践を意識したものであり、試合の中で頻発するシチュエーションを念頭に置き、かつ攻撃側と守備側を用意するようなやり方が多かったですが、砂川コーチの指揮の下で行っていた内容は試合の中で狙いとしているようなプレーとリンクしているとはあまり感じられず、DFも置かれないものでした。

  • また西野の証言ですが、
  • グループとしてのプレーだけでなく岩政前監督が個別指導も行っていたという話です。私が見た時は「全体練習後に細かく指導している」状況には遭遇しなかったのですが、全体練習中に、たとえばDFの体の向きのような割とディティールと言えそうな部分のトレーニングを行っていた際も岩政前監督が主導していました。

  • これらの状況を鑑みると、このシーズン、スタッフにブレーンとなれそうな人材はほぼいなかったのでは?という疑念が浮かびます。そもそも戸川コーチ以外は監督と関係性が薄く、フットボール的・戦術的な考え方をシェアしているとは考えられませんし、指導歴を見てもこの考えを覆す要素は乏しいです。
  • またミシャ体制を知る赤池コーチをヘッドコーチに、という人事は、そもそも「知っているフットボールの範疇が極めて狭そうな」コンサのフロントが前々監督の何らかの要素や影響を与えようとしたのかもしれませんが、岩政前監督からすると余計なお節介だったでしょう。
  • そして、そうした古株系のコーチのよくある役割としては、選手と監督の橋渡し役、チームの感情コントロールで貢献するというものはありますが、ご存知の通り夏場にコンサは石水社長の現場介入もあり学級崩壊に至ります。監督と選手の関係性の問題でもありますが、コーチはこの数ヶ月間どのような役割を果たしたのかは気になるところです。

  • そもそも攻撃担当、守備担当、と明確に任命しているなら、このシーズンJ2でブービーの66失点していることや、柴田監督体制で相手ゴール前でほぼ攻撃の形を作れていないことなどに一定の責任があるように思えますが…。

×:三上GMの退任、GMは空席へ

  • 詳しくは後述ですが、11月に河合竜二氏のGM就任が発表され、石水社長は「経営に専念」するとの方針が発表されます。

  • 社長が認めている通り「やっぱりGMは必要」。個人的には、何でそう思ったのか、そもそもなぜGMが不要と判断したのかメディアの方に突っ込んで欲しかったのですが、「そもそも」に関しては、3月の三上前GM退任時に石水社長が話していた通り、経営面で三上氏の影響力が強すぎる(≒石水社長に権限や情報等を集中させる上で障壁になる)ということは理解します。
  • それに加えて憶測ですが、前提としてGMという役職が指す職務内容がクラブによって異なるとして、オフシーズンに就任した石水社長には、シーズン中にGMが何をしているか…具体的には選手のケアや現場のサポートのようなことをやっていることがイマイチわからず、「強化部長がいれば編成や移籍交渉はできるので足りる」と判断したのかと推察します。

  • その後ご存知の通り、コンサは岩政前監督と(一部の)選手との間に溝が生じ、石水社長は小野伸二O.N.O.に助言を受けたりもして監督交代を決断しましたが、本来まさにこうした状況に対処し責任を負うのがGMの仕事でしょう。
  • 業務に関する基礎知識がない人がAIやデータを使って正しい判断ができるか微妙なのと同じく、小野伸二O.N.O.に助言を受けるだけでサッカー素人の社長が正しい判断ができるか?というと難しいところでしょう。

?:フットボールフィロソフィーが爆誕

  • この方の記事↓に私の考えに近いことが書かれている気がしますが、手抜きせずに自分でもいくつか考えを述べます。
  • Jリーグが言う「フットボールフィロソフィー」とは、
https://aboutj.jleague.jp/corporate/assets/pdf/club_guide/jclub_guide-2025.pdf

  • クラブをどのように運営管理するかの「説明書」になる
  1. クラブのアイデンティティ「DNA」
  2. クラブのプレーイング/コーチングフィロソフィー
  3. クラブの選手やスタッフの育成/獲得方針
  • 詳しくは元資料をご確認いただきたいのですが、要は「目指すフットボールの方向性」に関する内容が盛り込まれていると理解して良いのかなと思います。
  • となるとコンサのフットボールフィロソフィーは、

https://www.consadole-sapporo.jp/club/philosophy/
  • 果たしてこれはフットボールの方向性と言えるのか?個人的には「走る」と「闘う」がほぼ同義(闘う の中に 走る が包含される)のイメージなのですが、言うまでもなく走らないフットボールとか闘わないフットボールというのはまずありえない、極めて当たり前に近いことを言っている。
  • まずこの時点で、これはフットボールの方向性とか指針に値する内容ではなさそうに思えます。石水社長が「選手にも好評で、試合前にピッチに向かう通路に貼っていてほしい」とする話があったと紹介していましたが、要はそういう感情を昂らせたりコントロールするためのスローガンの一種に近いのかなと思いましたし、そもそもこの「フィロソフィー」は、選手へのアンケートや幹部合宿を経て決めたとのことですが、元はと言えば前々監督であるミシャのミーティングでの決まり文句をそのまま使っているということを石水社長が明かしています。
  • 試合前に監督が選手を送り出す言葉は選手を鼓舞するための演説の一環であり、そこにテクニカルな意味合いは薄い。
  • 選手からも(ボトムアップ的に)アイディアを募ったけど、出てきたのは監督の演説で印象に残ったフレーズでありテクニカルなものはなかった。そこからコンサの幹部合宿ではフットボールに関するテクニカルな部分を詰められなくてそのままフィロソフィーになった、ということでしょう。
  • そもそもこれを作った時にGMが空席で、まさにテクニカルな部分でフットボールの責任者たる人物が不在(検討メンバーの中で、指導者ライセンス保持者も石川直樹氏くらい?)というのも、本当にこれでいいんですかね…と思わされるところです。

  • 一応この内容が実行力を伴うとしたら、走る・闘うを体現できる選手や監督をまずリクルートするというのが普通に考えればそうなりますが、そこについてはオフシーズンの動きを注視するとして、

  • もう一つ「規律を守る」。まず外国人であるミシャ元監督の言葉を通訳の方が日本語訳したのでしょうけど、「規律」は英語ではdisciplineが該当します。
  • この規律とかdisciplineは、フットボール的にはプレーモデルや戦術、ゲームプランを遂行すること、そのためのトレーニングとかコンディショニングとかフットボールに関わる諸々にコミットすること、…みたいな定義になるかと思います。
  • おそらく監督が説明しない限りは明確な定義はなくて、通訳の方が「discipline」と言って受け取る内容は選手によって捉え方が異なってくる。
  • この際重要なのは、コンサの選手に戦術やゲームプランを遂行するとか、まず監督が提示しているそれらにコミットしている(していた)か、というのもあるのですが、それ以前にプレーモデルや戦術、ゲームプランといったものがクラブとして存在しないと、単にルールを守りましょうだけの空虚な決意表明にしかならないのかなと思います。

  • 松本山雅に関するニュースで、「選手がルールを守らない」みたいな内部事情が噴出しているようですが、

  • これも確かに選手のプロ意識みたいな話にもなってくるのもわかりますが、まず何のためにルールがあるのか?そのルールを守ると何か良い影響があるのか?というのが明確ではなくルールだけ定められた状態になると、それは実効性を失うのかなと思います。
  • disciplineに関しても同じで、規律を守ると言い続けていれば、スタジアムの通路に掲示していればそれだけで戦術的なチームになれるかというとそうではない。

  • そもそもフットボール的にどういう方向を目指すのか?という部分が決定的に欠けていて、コンサというクラブはコアメンバーが移り変わっても、どうしてもこの部分の解像度を上げられないままだな、との印象を抱きました。

△〜×:中断期間で積極的な補強に動くも…

  • 浦和レッズがCWCに出場する関係で、例年とは異なる移籍期間(6月1日より)が設定されます。コンサはこの期間を利用してDFの宮、浦上、FWのマリオ セルジオを獲得します。浦上と宮が登録され出場可能となった状態で、18節消化の残り20節という状況でした。
  • 結果は、浦上は16試合に出場(全て先発)、宮は故障の影響もあり9試合(うち先発8)、そしてマリオは15試合(うち先発4)、4ゴールという結果でした。

  • まず宮について。コンサが左利きのCBができる選手を必要としていることは明らかで、竹林強化部長がかつて名古屋のスタッフだったこと、名古屋の選手起用の状況などから宮のような選手に声をかけることは予想通りでしたが、移籍マーケットに出ていると思われる国内の左利きDFの選手ではほぼベストの選手だったでしょう。名古屋が下位に沈んでおり、J1のクラブには出したくなかったと思われることもラッキーでした。
  • パフォーマンスに関しても宮は明らかにJ2では上位のCBでしたし(詳しくは別の記事で)、既存のコンサのDFと比較しても明確なアップグレードとなりました。ただし故障がにより柴田監督体制ではほぼ起用できない結果となりました。
  • そして期限付き移籍であり、名古屋のようなJ1クラブを渡り歩いているため、完全移籍には一定のハードルがあることを承知での緊急補強でしたが、結果としてはコンサは目標を達成することができませんでした。

  • 浦上は監督交代を経ても中心選手であり続けました。その意味ではこの3人のうち最も成功した補強でしたが、獲得経緯としては馬場の放出が決まった際に岩政前監督から具体的に浦上の名前を挙げてリクエストしたとのこと。要は強化担当が主体的に動いた案件ではなさそうです。
  • 大宮で4〜5番目のDFだった浦上ですが、コンサのCBの中では特にボールを持っている時に舵取りができる、高嶺とコミュニケーションをとって守り方を決められるといった点が特に大きかったと感じます(これも詳しくは別の記事で)。一方でシーズンの最終盤になると、柴田監督体制で戦術的な変化が生じ、DFにより対人能力が要求されるようになり家泉がラスト3試合は起用されることとなりました。

  • そしてマリオですが、まず獲得の理由として「今の状況を踏まえて勝つためには得点力向上が必要だから」とする旨の説明があったと思います(ソース失念)。5月末(18節消化)時点でコンサは20得点、29失点で、勝ち点21の12位。確かに得点が多いとは言えない状況だったと言えそうです。


  • そうした状況で鈴木智樹強化部員がキャリアを懸けて移籍交渉に挑み、シャペコエンセからまさに”獲得”したマリオですが、結果としてはハーフシーズンで4ゴールという数字以上に、先発4試合にとどまったことを強化担当者にはシリアスに捉えていただきたいところです。

  • まずこの時期のコンサはシステム1-4-4-2で、FWで最も出場機会が多かったのはバカヨコ。5月末時点で先発11試合、途中出場5試合で5得点という成績でした。
  • その相方探しが課題の一つであり、岩政前監督が期待をかける田中克幸や、スパチョーク、キムゴンヒ、白井といった選手が試されていましたがどれも決定打に欠ける状況でした。
  • 一方でこのバカヨコのパフォーマンスに関し、岩政前監督は満足していないところがあり、ホームで大敗した14節のvs磐田では37分で交代させてもいます。
  • ただし私の見た印象では、ビルドアップがうまくいかないコンサにおいてはバカヨコのポストプレーや前線で潰れ役となるプレーは必要なもので、岩政前監督もそこは否定していなかった(ポストプレーをしつつもっとゴール前に飛び出して欲しいとの要求)と感じます。
  • なお「先発11試合、途中出場5試合で5得点」というのは、このシーズンJ2で15ゴール以上した選手が長崎のマテウスジェズスと、今治のマルクスヴィニシウスの2人しかおらず、それぞれPKが3、1点あることを考慮してもそう悪くはないスコアかと思います。

  • こうした状況を踏まえて最初に問いたいのは、マリオはバカヨコを代替する選手なのか、それとも(2トップなどで)バカヨコと併用する選手なのか、彼がどういうタイプの選手でチームにどう組み入れて成績が向上すると考えて獲得したのか?という点です。
  • バカヨコについて、①前線守備の際にもう少しアクションの量やスピードが欲しい、②シュートチャンスの際にゴール前に走り込んで欲しい、といった要求があるとして、バカヨコほど下がってこない(その分ポストプレーもしない)マリオは②については問題ないとして、①は結局のところバカヨコとそう大きくは変わらないということで、岩政前監督、柴田監督とも完全にバカヨコを代替する存在には位置付けられず、マリオはベンチスタートがしばらく続くこととなります。
  • そしてその前線守備の問題に加え、両者とも左利きでプレーエリアが重複しやすいということ、2トップとしてそこまでシナジーがない(たとえば1人が引いてもう1人が飛び出す、クロスボールに対して1人がニアで潰れもう1人がファーで待つ)ということで、両監督ともこの2人を併用する発想には至らず、マリオの出場機会は限られたものとなります。

  • 結局のところ「古典的な9番タイプの選手にお金を使えば得点も勝ち点も増える」というかなり安易な発想でのリクルートだったな、との印象が否めませんでした。
  • 得点力を増やしたいなら、たとえばこのシーズンのコンサには①左のウイングやサイドハーフが本職の選手がおらず、左からカットインしてシュートやクロスボールができる選手だったり、もしくは②前線に得点力と力強さや運動量を両立する右利きの選手シャドー/セカンドトップタイプの選手(例えるなら長谷川にもっと得点力があるような?スパチョークにもっと力強さがあるような?)であれば、既存のチームに組み入れがしやすくウィークポイントを補う形になったかもしれません。

⚪︎:馬場、キムゴンヒ(中島)を放出

  • 6月に馬場が柏へ完全移籍、キムゴンヒが契約非更新により退団、中島が群馬へ期限付き移籍となります。これらについては「⚪︎」としましたが、移籍がチームにプラスというわけではないですが大きなマイナスではなく、判断としては悪くはないという意味合いです。

  • まず馬場についてはコンサがこれまで、契約が残る選手への移籍オファーに対してオープンであるとするスタンスをとってきた以上、そもそもこのオファーに対しコンサには選択の余地がない、は言い過ぎにしても、馬場が移籍を希望した時点で、柏という一定のクラブステイタスのある移籍先だったこともあり積極的に引き止めることが難しい状況だったと理解します。
  • その上でこのシーズンの馬場については、開幕から中盤センターのスタメンクラスとして5月までに9試合に出場(うち先発8)していましたが、退場処分を受けた第9節)4/12 vs水戸)を最後に故障により出場機会がない状況でした。
  • 岩政前監督下でボール保持から「ポケットを取る攻撃」を掲げていた中で、馬場による中盤からポケットへのランはシーズン序盤で目立っていて、監督の要求に積極的に応えようとしていた点は好印象です。一方で選手特性としてあまり走力がなく、マンツーマンで広く守るようなスタイルだと中盤センターの選手としては走力やスピードの物足りなさがあり、個人的にはガッツは買いますが戦術的にはすごくフィットするタイプだった、とまでは感じていませんでした。
  • また中盤センターには高嶺の他、木戸、田中克幸といった若手、荒野、宮澤、大﨑といったベテランがおり頭数は足りていた状況でした。岩政前監督が馬場の移籍を契機にフロントに要望した選手が、同じ中盤センターの選手ではなくDFの浦上だったことを踏まえても、馬場を放出したことがこのシーズンの命運を決定的に左右したとは言えないでしょう。

  • 開幕時点でコンサには4人のセンターFW(バカヨコ、ゴニ、ジョルディ、中島)と、センターFWとセカンドトップ/シャドー兼任の白井がいて、センターFWに関しては飽和気味の中で5月には鈴木智樹強化担当がブラジルに渡り、新たなFW探しを始めた状況でした。
  • ゴニについては稼働状況(このシーズン11試合出場、うち先発2試合、1ゴール)と前線が飽和状態であること、韓国代表歴ありでおそらく給与水準も低くはないことなどを考慮して非更新という判断は理解できます。
  • 特筆すべきは、ゴニはFW陣の中で所謂9番のセンターFWの役割と、バカヨコと2トップを組むような下がり目のFWの役割もでき、これについてはジョルディや中島にはない特徴ではありましたが、あくまで前線のオプションの一つにすぎないものでしたので、契約非更新の判断は妥当だったと思います。

×:岩政監督の解任と柴田監督の登用(8/12)

  • まず結果を出せない監督への風当たりが厳しくなるのは仕方がないことであり、監督交代に関しては致し方なしかなと思います。
  • その上で、後任がトップチーム監督としては経験が浅い(その分、様々なコストカットにつながる、フロントとのコミュニケーションというか操縦がしやすい)、人材に白羽の矢が立つのも、Jリーグのスモールクラブの意思決定という視点では理解できます。

  • しかし、これに関する石水社長の説明は、
  1. 我々が目指す方向は「攻撃的」である
  2. 「攻撃的」とはミシャを指す
  3. 選手も納得がいっていなかった
  4. 選手も「ミシャのサッカー」のイメージがある
  5. 小野伸二O.N.Oにも相談した
  • といった内容であり、

  • これに対する感想としては、
  1. 社長の介入度合いが高い:大枠を本来の専門家であり担当者、強化担当に任せて最終決裁するのではなく、(素人である)社長自身の意思や考え方が強く反映されている
  2. ミシャという偶像崇拝:緊急インタビューという場ではあるが、「今後何を目指すのか?」という問いに(日本サッカーのテンプレコメントですが)「攻撃的」と答え、それは「ミシャのサッカー」だとしている
  3. 意思決定にノイズが混在:一部の選手や外部アドバイザーの主観が反映されている
  4. その他、人としての好みや相性の問題、コミュニケーション:ネットミーム化されがちな岩政前監督の語録はあくまで外向けのパフォーマンスだと私は思っていましたが、社長も監督のそうした言動は割とストレートに受け取っており、そこでの発言と実態のアンマッチ感は社長にとって不信感を募らせるものだったのか?
  • というもので、監督を変えること自体は理解するが、フットボール的には石水社長がこうした重要事項を判断するという体制はほぼ限界に近づいていることを感じさせました。
  • あとフットボールフィロソフィーはどこに行ったんでしょうか?「走る・戦う・規律を守る」がコアであり、攻撃的とか別に言ってないんじゃないかと思いますが…

  • そして石水社長の言うところの「攻撃的」というのは、この後、9月に出てきたこちらのインタビューを参照すると、おそらくは(ルヴァンカップ決勝のような)「オープンな展開で撃ち合いになりスコアがたくさん動く試合」というイメージなのだと思います。
  • 「外から加入した選手と話すと『札幌とやるときは楽しかった』って言われる。」とのことですが、一般にサッカーというのはミシャコンサのように失点を減らすための仕組みや考え方が極端に少ないというのは競技の特性上、本来はありえない話であり、ルヴァンカップ決勝と絡めてこの選手からの”評判”を拠りどころのように持ち出されても、所詮はある種のグッドルーザー的なところに執着していて、1年でのJ1復帰にこれだけこだわる社長の姿とはかなりズレている印象を受けます。

  • もう一つは、ルヴァンカップ決勝はスコア上は撃ち合いというかシーソーゲームっぽく見えますが、実際は10分にコンサが先制してから後半ATの川崎・小林悠のゴールで川崎が勝ち越すまで、コンサは川崎によって自陣に80分以上押し込まれ、シャドーの武蔵やチャナティップが自陣低い位置まで戻って川崎のSBの攻撃参加についていって、わずかなチャンスでカウンター1発を狙う…という試合展開だったはずです(後半早めにジェイ→アンデルソンロペスの交代)。
  • そこは主観が入る話ではありますが、これを「撃ち合い」と表現して心の拠りどころにする程度のサッカーに対する理解度や認識の方が、トップチームの監督の人事に対して極めてクリティカルな位置付けにあることは、改めてかなりマズイ話だと感じました。

  • また結局は今コンサにいる選手との会話でこうした考えが確信に近づいているということで、(一応は…専門家であるGMを空席にした人事なども含め)サッカー素人である社長周辺の一種のエコーチェンバー現象みたいなものはかなり気になったところでした。

×:柴田監督で「シンプルにプレー」に回帰

  • 地元紙の記事で岩政前監督との対比、というか前任者批判の観点で、「岩政監督よりもシンプルにプレーすることになったが、この方が良い」とする選手のコメントが報じられていました。
  • 「シンプル」はあくまで一選手の主観にすぎないところもありますが、柴田監督に代わってからはボール保持の際にいきなり前線に放り込むような選択も見られたり、キックオフの際に敵陣に蹴り出して相手のスローインから開始するようにしたりと、岩政前監督ほどボール保持からの展開にこだわっていないのだろうとの印象は筆者も一致します。
  • 「シンプルにプレー」…日本サッカーではよく用いられる表現ですが、要はほぼ最低限に近い水準での約束事のみ用意してあとは選手の判断に任せる、というアプローチを指します。このシーズンのJ2でいうと、下平監督→高木監督への監督交代を行ったV・ファーレン長崎がこうしたアプローチをとっているようで、高木監督は「本来戦術的に非常に細かい」ながら今回は約束事を少なくしたという話がありました。
  • 前線にマテウスジェズスを擁する長崎はこのアプローチで結果を出しましたが、コンサは後半戦にかけ高嶺の爆発があったものの柴田監督就任後の結果は、就任後の10試合を4勝6敗で昇格争いからは早々に脱落します(昇格の可能性が潰えたのち、最後の3試合を大分、今治、愛媛相手に2勝1分で乗り切り、全体では13試合で6勝1分6敗)。
  • 高嶺以外のスカッドの問題なのか、コーチングスタッフの手腕なのか、色々な見方があるのでしょうけど、「シンプルにやるべき」論は迷走するチームで頻出だけに、この結果はしばらくは頭の片隅に留めておいてもらいたいところです。

?:河合C.R.CがGMに内定

  • 石水社長曰く「やっぱりGMというのが必要だなと」。率直な印象としては1年(実質半年)で認識を正して手を打ったことは悪くないと感じます。
  • 当初、三上前GMを「日本一のGM」と2万人のサポーターの前で持ち上げた石水社長。そこから3ヶ月で石水・三上体制は周知の通り瓦解するのですが、組織によってGMや強化部長といった役職が意味するところは異なります。
  • おそらく石水社長はオフシーズンの動きだけを見て、GM職について経営面は自分で、強化面は強化部長で代替可能と判断したのだと思われます。

  • そこから河合氏という、クラブの内部事情には精通しているが強化については経験がない人物の登用に繋がるのですが、一つは石水社長のコメントの通り、強化を担う人物として強化部長以外にも人が必要だということ。ただ当面は強化部長がGMに対しOJTをするような、ある種いびつな関係性になるでしょう。
  • もう一つは筆者の予想ですが、トップチームの監督とは別に、現場監督というか現場を締めれるアニキ役が必要だとの考えがあるのかもしれません。
  • アニキというと別に身体と声が大きくて鉄拳制裁を振るうようなキャラクターである必要はありません。筆者の理解だと外国籍選手を含めよく選手とコミュニケーションをとっていたとされる三上前GMはそうしたアニキ役であり、他のクラブだと賛否両論ありますが曹貴裁監督も日本サッカーで一定数いるアニキ系の要素を持つ監督に見えます。コンサの歴代監督だと石崎監督でしょうか。あとは監督とフロント両方の経験がある大熊清氏なんかもアニキ的な要素がある人材だと考えます。

  • 要は、選手と距離が近くコミュニケーションをとりやすく、時に選手の不満の捌け口や理解者になって感情をコントロールすることをサポートし、一方で締めるときは締める、というのが筆者の考えるアニキの役割なのですが、こうした役割を担える人が現状のコンサには監督、コーチ、選手、その他スタッフなどを見ても見当たらず、一部の未成熟な選手に対して甘さが出てしまっていた、とクラブ関係者が感じるような事態が少なからずあったのかなと推察します。その意味では河合氏の登用というか配置転換によって何らかのプラスの効果があるかもしれません。

  • 一方で一般にGMというとフットボール面でのブレーンでもある必要があります。
  • 河合氏は早速「練習でパスが浮く」だったり、あとはフットボールフィロソフィーを意識しつつ、「球際で勝つ」とか「FWも下がって守備をする」とか、「タッチラインを破りそうなボールをマイボールにする」みたいなフットボール的な部分にも積極的に発信を開始していますが、これらは全て戦術的な話が関わってきます。
  • 例えばFWが下がって守備に参加できるようにするには、前からプレスに行かないとか陣形をコンパクトに作るとか約束事を整備した上で、かつそうした資質がある(走力や運動量がある、献身的なメンタリティ、低い位置からカウンターが得意…)選手を揃える必要がある。

  • 要は河合氏がコンサに対して望むことを発信したり打ち出すのは良いのですが、そこを実現しつつ勝てるチームにしていくのがGMの仕事であり、単にアニキとして適任であるだけではなく頭を使うというか一定のロジックが必要になると思われます。
  • 現状のコンサの体制だとそうしたブレーン役の不在だったりロジックの欠如が感じられるところですが、誰がブレーンなのかはまだ見えないと感じます。

  • また、GMとして望むことを発信したり打ち出すとして、一方で社長もこれまで「コンサとはこうあるべき」論みたいなのを積極的に発言してきましたが、それらを整理せず「やりたいこと、ありたい姿」を散発的に乱射して並べた状態になると、組織の戦略としては結局何が重要なのか散漫なものになります
  • コンサ内部に未だに漂う「ミシャ時代」への情景と、河合GMの想いを両立しようとするとすでにそうした散漫さがある状態なのかもしれません。「いいとこどり」をしながらうまく着地させるには頭を使う必要がありますし、頭を使っている人を周囲が邪魔しないことも重要になります。


?:深井の引退と謎の「若手選手責任論」リバイバル

  • あれは秋頃だったでしょうか。早々にこのシーズンが終戦となり昇格争いをするチームを尻目に、引退表明をした深井の見送りに注力することとなったコンサ。
  • この時期になって、その深井絡みでもそうですしそれ以外の局面でも非常に目につくようになったのが「若手選手がもっと努力しないといけない、物足りない」といった論説。↓の柴田監督のコメント以外にもキャプテン高嶺、宮澤、荒野といった重鎮たちが一斉に似た論調を繰り広げます。

  • まず若手、というのが誰を指すのかわかりませんが、所属選手で25歳以下で括ると高卒3年目の西野、大卒1年目の木戸と田中克幸、高卒2年目の林田と原。期限付き移籍の選手は一旦除外するとして、まずこれくらいが若手と言われるのでしょうか。
  • 私だったら原はこのシーズンもう少し伸びて欲しいとかそうした個人的な想いは確かにありますが、一方で西野はこのシーズン高嶺に次ぐ重要な選手となりましたし、木戸もまずまず出場機会を得てはいる。
  • 数ヶ月前まで大学生だった林田(おそらくポテンシャル採用でしょう)にチームを変えるような期待をするのは過大なので、となると名前が挙がらない選手のことを念頭に置いているのか?と勘ぐりたくなりますが、構図的には古株の既得権者がマイノリティに諸々の責を押し付けているように感じました。
  • もしかすると26歳以上の選手なども意識しての言動なのかもしれませんけど、そうなると若手というよりも、チーム全体にとにかく元気がなさすぎるという問題の捉え方になるでしょうか。

  • 思い返すのは、コンサで「若手がだらしがない」みたいな論調は景気が悪い時にたびたび繰り広げられる話で、かつては2005年頃の柳下監督体制でもありましたし、2015年オフにブルーノコーチを招聘した際も、当時の社長曰く「若手を怒鳴りつけられる鬼軍曹タイプが必要」と理由を話していました。もっともブルーノはその後若手の指導役というより外国籍選手のマネジメント役になるのですが…。
  • という具合で、このシーズンの総括や反省として安直な「若手選手責任論」に逃げるようだとこの先の見通しは明るくないなと感じました。真摯に現実と向き合っていただきたいところですが…
===

  • 次回はようやく、より戦術的な話、このシーズンにピッチ上で何を目指し、何が怒っていたのか?にフォーカスしていきます。

2025年12月1日月曜日

北海道コンサドーレ札幌の2025シーズン(1) 〜問われる「Full Commit」の中身〜


1.試合を見返そう

  • 何回かに分けてこのシーズンを振り返ります。まず初めにシーズンの試合結果から振り返り、その後で背景や経過となるトピックを見ていきます。サムネが欲しいのでカメラロールから適当な画像を貼っておきます。

1.1 序盤戦は個人戦術博覧会(2-3月):

2/16 1節 vs大分トリニータ(A)△0-2

  • 皆で期待を煽り気味にシーズンインしましたが、開幕戦から「このチームにできないこと」が1試合ごとに顕になるような厳しい滑り出しとなりました。
  • 試合後、岩政監督の「J2らしいサッカーにやられた」とする発言が飛び出します。確かに大分はJ2らしいチームではありましたが、まずはコンサが同数関係を創られるとDFから前にボールを運ぶ部分に難があることがバラされます。前線では積極的にポジションチェンジを行い「オリジナルなサッカー」の片鱗を見せつけましたが、そこまでボールを届けるに至りませんでした。


2/23 2節 vsロアッソ熊本(A)⚫︎0-3

  • 熊本も大分同様に同数で対応してきました。前線に中島、長谷川、田中克幸を起用したコンサも高めの位置からマンツーマン気味のpressingを仕掛けたものの見事に空転し、pressingも未完成なことが新たに暴露されてしまいました。

3/2 3節 vsレノファ山口(A)⚫︎0-2

  • 山口は1-4-4-2の陣形からミドルゾーンでのプレッシングが得意なチーム。相手が2トップということでコンサは3バックが組み立てに貢献したいところでしたが、コンサのDFはイージーにWBにボールを渡すだけで殆ど仕事をせず、近藤の縦突破やポケットを取る攻撃は不発に終わります。

3/9 4節 vsジェフユナイテッド千葉(H)⚫︎1-3

  • ホーム開幕戦でコンサは前線にスパチョークと出間を起用。(かつての四方田監督のような)圧縮がされていない1-5-2-3の布陣で守りますが、ジェフはコンサの陣形にできるスペースをうまく突いて2ゴールで先行します。
  • 一方で人についてくる傾向があり、かつバカヨコの高さに対抗できていないジェフ相手だと1〜3節よりも相手ゴール前でプレーすることができ、監督のいうところの「ポケットを取る攻撃」のイメージがようやく見え始めた試合だったと思います。

3/15 5節 vsブラウブリッツ秋田(A)⚪︎3-1

  • 山口に近い、1-4-4-2でミドルゾーンから圧縮して守る秋田に対しコンサも4バックの1-4-4-2を選択。左SH青木のカットインから見事なミドルシュートとアシストで2点を先行し逃げ切ります。
  • ただしシステム変更によって相手を崩したというよりは、圧縮してくる秋田相手に早めのサイドチェンジを決め打ちしたことがポイントでした。システム変更の影響は、前後左右があまり間伸びしない陣形を作っている時に、セカンドボール争奪戦で後手に回らなかったのはあったかと思いますが。

3/23 6節 vs愛媛FC(A)⚪︎2-1

  • 愛媛は1-5-2-3の5バックでサイドを封鎖する発想でした。序盤にクリアミスから失点するも、バカヨコの初ゴールは近藤、馬場、髙尾が関与して右サイドで「ポケットを取る攻撃」が炸裂して5バックのチームを崩したという点では好材料。
  • その後は低調な試合運びでしたがゴニの見事なボレーで貴重な勝ち点3を拾います。

3/26 ルヴァンカップ vs福島ユナイテッド(A)⚫︎3-6

  • 風間八宏監督の川崎を彷彿とさせる福島のフットボール(ただしターンオーバーしていた)に対し、佐藤陽成、中島、出間の若き3トップを前線に置いたコンサのハイプレスが決まって2点を先行します。
  • しかしトランジションの隙を突かれた福島のカウンターと、前線のプレッシャーが機能しなくなってからは福島の見事な中央突破が炸裂して失点を重ね、3-6という地獄のスコアで「タイトルを意識〜」と無邪気に語っていたカップ戦から退場します。

3/29 7節 vsヴァンフォーレ甲府(H)⚫︎0-1

  • 悪夢の福島から中2日でのリーグ戦。3節のvs山口とは逆に、コンサが1-4-4-2で相手が1-3-4-2-1というシステム。序盤にセットプレーから先制され、以後は特に見せ場もなくホームであっけなく敗れます。
  • 山口相手に全くそのミスマッチを活かせなかったコンサとは対照的に、甲府はコンサのミスマッチを教科書通りに使うようなプレーをしていただけに思えますがコンサのpressingはまたも空転し続けます。
  • 後半はボールを運べないDF(特に家泉)に変わって、本来左SHまたはWBのはずの青木がポイントガードみたいな感じで最終ライン中央付近に陣取っていたのが印象的でした。

【2〜3月のまとめ】

  • このように2〜3月の試合は戦術的、対極的にはそれぞれ相手チームの特徴や対策が異なりコンサはそれぞれ別の問題点をバラされることとなります。
  • その中で一定の傾向や再現性みたいなものがあったとするなら、
  1. クロスボールからのパターンでリーグ戦開幕から6試合連続で失点している(厳密には違いますが開幕戦のロングスローも含む):序盤は大﨑、負傷離脱後は家泉や中村桐耶が中央を任されますが、全般にターゲットを捕まえきれておらずボールウォッチャーになってフリーで合わせられている。またDF以外にも、中盤センターの選手がDFの前のスペースを埋めたりそこに走ってくる選手を捕まえきれていないことも挙げられます。
  2. ハイプレスはことごとく空転:「圧倒して勝つ」と掲げ、相手にボールを握らせないとする指向性はわかりますが、コンサの前線守備はかなりマンツーマンというか1v1の関係性を作る傾向が強く、例えば相手がGKを使って+1の人数関係になったり、システムの噛み合わせが悪い場合や相手がポジションチェンジを行って1v1の関係性を作りづらくなると、それだけで浮いた状態になる相手選手が登場して、そこから簡単に剥がされてしまう現象が多発しました。
  3. 「ポケットを取る」は形になっていたがリスキーな攻撃参加と裏表:監督が掲げる「ポケットを取る攻撃」は、青木起用の場合にポジショニングが不定形で、かつ左利きの選手がワイドに張らない左サイドよりも、なんだかんだ近藤がワイドに張った方が良いとの共通理解が徐々に生まれてきたように見える右サイド(ただし近藤のポジショニングはずっとワイドというわけではなかった)で、馬場と髙尾が飛び出してくる形は試合を追うごとにコンサの数少ない武器となっていたと思います。しかしサイドのDFと中盤センターの選手が前を狙いすぎると、その背後でボールを失った際にトランジションに備える選手を確保できず簡単にCBが相手の速攻で晒されることになる。特に福島とのカップ戦で顕著な現象でした。
  4. ビルドアップ:3バックにして3-2で行う、3バックを左右にずらして2-1(アンカー)で行う、4バックのまま行う、などいろいろな形を試していましたが、どれもほぼ同じ結果だったということで個人のパフォーマンスの問題もかなり大きいように思えます。といっても、編成上CBは西野の台頭がなければ、家泉を重用せざるをえず、家泉がうまくボールを運べるようになるまで常に同じ問題に悩まされることになります。

1.2 相次ぐDFの離脱もあり…(4〜5月):

4/5 8節 vs徳島ヴォルティス(H)⚪︎1-0

  • 互いに警戒心が強くボールを捨てる展開。後半、岩政監督が参加する乱闘騒ぎもあった中で、終盤に相手に退場者が出たこともあり、家泉の劇的な決勝点で勝点3を得ます。

4/12 9節 vs水戸ホーリーホック(A)⚫︎1-3

  • 強風のケーズスタでの対戦ということでコンサは前半、風上を取りますが、序盤に水戸のドリブラー・山本の突破からあっけなく先制されます。
  • セットプレーから相手GKのミスで追いついたものの、馬場がラフプレーで退場。数的不利の中で風上の前半のうちに一か八かで勝ち越しを狙って前に出ますが、DFのミスもあって逆に失点し敗戦。

4/20 10節 vs藤枝MYFC(H)⚪︎2-1

  • パクミンギュと馬場が離脱し、CBに高嶺、中盤センターに青木と西野を配する布陣を採用。中央を上手く守る藤枝に対し遠藤ヤットロールとなった青木が流れの中で仕事をしたとは言い難いですが、セットプレーからの2得点で逆転し勝ち点3を獲得します。

4/25 11節 vsRB大宮アルディージャ(A)⚫︎0-1

  • 青木、パクミンギュ、馬場、岡田を欠く厳しい状況。3バックの1-3-4-2-1と見せかけ実際は1-4-4-2気味の大宮に対し、用意していたpressingの形がはまらず、逆に家泉のところで爆弾ゲームを強いられ苦戦するも何とか前半をスコアレスで折り返します。
  • 後半マンツーマン気味の対応に変えて15分ほどは攻勢に出ますが、DFの連携ミスから失点し結果的にはマンツーマンが裏目になった形となりました。

4/29 12節 vsV・ファーレン長崎(H)△2-2

  • 互いにこのカテゴリでは「クオリティがある」と評されているチーム同士の対戦。しかし実態は前線の選手にボールが入ってスペースがある状態だと怖いけど、そこまで到達するのに双方難ありという状況のためボールを押し付けられて苦戦しています。
  • よってこの対戦も互いに慎重に前線の選手を警戒し合う様相でしたが、前半に増山のゴールで長崎が先制し、後半から定番となったコンサの選手交代(中盤センターを変える)で強度が下がって最警戒のマテウスのヘッドが炸裂。しかし長崎を崩すには至らずも原のATのゴールでなんとか勝点1を拾う粘りと意地は見せました。

5/3 13節 vsモンテディオ山形(A)⚪︎1-0

  • 10節以降、後半に選手を入れ替えてゲームのテンポを変えるのは「死んだふり作戦」なのだと理解しました。
  • この試合では連休の連戦ということもあってか山形がスローペースで試合に入り作戦の遂行は容易。山形のパフォーマンスの問題はありましたが、前線守備には改善が見られ、後半、近藤が外を切ってDFに寄せたところからショートカウンターでバカヨコのゴールで先制。山形がその後もコンサの対応に解を示せなかったこともあり逃げ切りました。


5/6 14節 vsジュビロ磐田(H)⚫︎2-4

  • ここのところ続けていた死んだふり作戦をせず、予想外にも立ち上がりから前に出てボールを奪おうとするコンサを、磐田はロングフィードに角と倍井の高速アタッカーを走らせることで回避。
  • 髙尾の致命的なミスで開始35秒で失点し、なおも磐田の果敢な前線守備でボールを持てないバックラインが浮き足立つと、25分までに家泉のオウンゴールとミスでたちまち0-3。3バックに変更しての特攻と長時間のパワープレーという懐かしの展開を、5月上旬にして見せつけられます。


5/11 15節 vsいわきFC(A)△1-1

  • いわきもコンサもかなりボールを捨てる展開でしたが、互いの前線では、放り込まれたボールへの解決策を用意していないようで、お互いに蹴って跳ね返して拾って、そのうちバランスが崩れたところで速攻、みたいないかにも下部リーグらしい展開でした。
  • コンサは前半に(敵陣ゴール前では)好調の家泉がセットプレーから先制点を挙げますが、後半バランスが崩れたところでPKを献上しドロー。ジョルディの独走からのシュートミスも響きました。


5/17 16節 vsカターレ富山(H)⚪︎2-1

  • 55分までは富山が①敵陣での1-4-◇-2気味の布陣で広く守るやり方、②自陣でコンパクトに1-4-4-2でスペースを消すやり方、を使い分けながら守り、高嶺のミスから得点して先行します。
  • 後半、スペースが空いてきたところでコンサは中央を使えるようになり中央からワイドへの展開が目立つようになる。富山は5バックでDFのスライドを楽にしつつ、前後分断気味に運用するスタイルに早めに変更しますが、田中克幸の縦パスで中央を割ってバカヨコの目の覚めるようなシュートで追いつくと、ATに青木の素晴らしいフリーキックで勝ち点3を拾います。

5/25 17節 vsサガン鳥栖(A)△1-2

  • 前線守備がうまくいかない理由を岩政監督はバカヨコに求めましたが、その是非はともかく、鳥栖が簡単に右DFに展開するだけでコンサは簡単に外されて自陣侵入を許し、前半で2点を失い、ジョルディのやんちゃすぎる振る舞いで数的不利にも陥ります。
  • しかし後半は鳥栖が数的優位を活かせず、鳥栖のDOGSOを誘って数的同数に持ち込み、1点が遠かったもののやれるだけのことはやった、という形ではありました。

5/31 18節 vsベガルタ仙台(A)⚫︎1-1

  • 豪雨と落雷の宮城スタジアム(Qスタ)での中断前最後の試合。敵陣からの守備はマンツーマン気味に変更し、あまりリスクを冒してこない仙台に戦術というより気持ちで食いつきますが、左SHで先発した原とSB真瀬のデュエルから先制点を献上します。
  • 前線は中島と木戸の2トップとしましたが、後者は守備で奮闘したものの、前者は孤立状態でボールを押し付けられて精彩を欠く出来に終始します。中盤センターに青木と大﨑の併用で後ろが重く、また前線に潰れ役も繋ぎ役も不在または機能停止で、軽量級の前線の選手のクオリティを全く発揮できない前半でした。
  • 後半、(トレーニングで岩政監督の「心を変えさせた」らしい)バカヨコの登場から、彼が別格の起点創出能力を発揮し、ようやく敵陣ラスト30mくらいまでは侵入できると、セットプレーから追いついてなんとか勝ち点1を持ち帰ります。

【4〜5月のまとめ】

◇前線守備は整理したが…
  • 4月以降はシステムが1-4-4-2ベース、メンバーも徐々に固まってきました。開幕当初に毎試合組み合わせを試していた前線はバカヨコが軸で、シャドーのスパチョークか、より下がってプレーする田中克幸、大型FWのゴニ。
  • 戦術的には高い位置からのマンツーマン気味のプレッシングから、1列目はアンカーを消しながらサイドの選手と一緒に相手DFに制限をかけるやり方が定着します。しかし山形には大成功でしたが磐田にはロングボールで崩されて完敗、その後も鳥栖には簡単に回避されるなどこのやり方が山形戦以降、成果があったかというと微妙なところ。

◇編成の問題と負傷者続出と監督の好み
  • 岩政監督は10節の藤枝戦の後に「コンサは主力に4バックの方が合っている選手が多い」と語り、これが誰を指すかはわからないですが、一般にはサイドの選手で、3バック(5バック)だと1人でサイドを担当しますが4バックだと前にウイングまたはSH、後ろにSBと配置して分業できるので、一つは近藤のような選手を前での仕事に専念できるという意味合いが含まれていると推察します。もう一つは中村桐耶についても言及があり、「3バックのCB、4バックのCBは難しいが4バックのSBならアリ」とのこと。これは事実上CBとしては失格だと新監督就任から4ヶ月で言われてしまった格好であり、非常に厳しい事実ではありますが。

◇ボールを運べない家泉の固定と西野の台頭
  • 左利きのDFである岡田とパクミンギュが負傷離脱し、高嶺をDFに回さなくてはならない状況で、中村桐耶の低調なパフォーマンスも相まってDFはかなり選択肢がない状況。本来は家泉も他のDF(西野ら)と競争させたいのでしょうけど、頭数とその質の不足のためほぼスタメン固定となります。
  • 11節の試合後の記事で、西野曰く、岩政監督はbuild-upについて個人指導をしてくれるという話が紹介されました。西野はコンサの選手の中では試合に出るたびに向上しているように思えましたし、家泉とのユニットでは経験が浅いにも関わらず左で起用されていることも、その技術や起用さの証明になるかと思います。

◇その他
  • build-upの際は開幕当初ほどポジションを崩すことはなくなり、監督の理想とする「流動性」から、現実的な落とし所を見つける試行錯誤が行われていました。
  • 10節(vs藤枝、H)の青木の中盤センターでの起用は日本サッカーでよくある、中盤の下り目にボールを引き取って味方に展開する役割の選手を配置するやり方かと感じました。ただ青木も不慣れな役割で、藤枝がうまく対処していたこともあり、これがコンサの大きな問題を解決するに至ったとの認識は抱けません。
  • build-upというのは本来特定の1人や2人に頼るというよりは全員でボールを動かし、ボールと共にチーム全体が前進していくものです。西野の向上や青木の配置転換といったポジティブな材料があっても、ボトルネックの解消にはまだまだ時間がかかるといったところでした。
  • その間、むしろ相手チームの方が練度が向上し、かつコンサに対し明確に対策を講じてくると、開幕から2ヶ月以上経っても相対的にあまり良くなっているように見えないところはあったかと思います。

  • あとはセットプレーや、単純な放り込みからの失点が毎試合のように繰り返されるのは変わらず。GK小次郎は試合のたびに慣れている印象でしたが、セットプレーは10節からCKをゾーン基調の対応に変えるなどするも効果は大きくはありませんでした。

◇サポーターミーティングでの補強宣言
  • 4月末の長崎とのホームゲームの試合後にはサポーターミーティングが行われ、竹林強化部長から「FWとCBを移籍ウインドウが開く前にでも補強したい」とする宣言がありました。
  • 個人的にはFWは頭数は揃っているのと、前線にボールがそもそも届かないことの方が問題だと思っているので、2人分の予算があるなら両方ともDFにするか、もしくはそのDFの選手のグレードをもっと上げてもいいのでは?と思ったところでしたが…(→DFは名古屋から竹林コネクション?で宮を獲得)。

1.3 「足りない部分の7割くらいは埋まった」 からの…(6-7月):

6/15 19節 vsFC今治(H)△2-2

  • CWC絡みの特殊な移籍ウインドウによって待望の左利きCB(宮)を手に入れましたが、相方にこちらも新戦力の浦上を起用という監督の覚悟が見えたスタメンでした。しかしチームとしての振る舞いや可能なプレーの範囲は、この2人によって大きく変容したというほどではなかったと思います。
  • また今治のシステム1-3-1-4-2に対しコンサは1-4-2-4のような前に人が多めの陣形で終始戦っていましたが、案の定というか中盤センターの脇またはDFのチャネルの防備は手薄であり、トレードオフとしての前残りのアタッカーがそこまで仕事をしたとも言い難く。高嶺の魂の2ゴールで逆転したものの、田中克幸のボールロストから痛恨の同点弾を被弾し勝ち点2を失ってしまいました。

6/18 天皇杯 vs大分トリニータ(H)△2-2

  • ボールを捨て気味の大分(リーグ戦で見ないメンバー)に対し、30分までに木戸と児玉のスーパープレーが飛び出し2点を先行するも、全体としてはミドルブロックの大分に対しボールを持たされてもどうしたら良いかわからない…のはメンバーが変わっても、後半メンバーをアップグレードしても不変で、大﨑が細かくポジショニングを指示しますがそもそもその時点で(最初から同じ絵が描かれておらず)限界を感じました。
※天皇杯はホーム/アウェイがないが開催地により実質ホームとした


6/21 20節 vs藤枝MYFC(A)⚪︎3-1

  • 高嶺、近藤、菅野を欠く中でGKに高木、FWに長谷川、右MFに白井を起用。
  • 素直にボールを保持してサッカーをしてくれる藤枝に対し、トップは長谷川と木戸が45分ずつリレーしつつ相手DFの監視とプレスバック。白井と青木も1列目を守るだけでなく剥がされると自陣までプレスバック…と前線の守備タスクを大幅に増やし、相手のミスを誘って青木のスーパーゴールで先制。
  • 後半もバカヨコのポストプレーからショートカウンターで白井が追加点を挙げ、ボールは捨て気味でしたがハードワークしつつ選手特性がこのシーズン一番と言って良いほど噛み合った攻撃を見せました。


6/28 21節 vsロアッソ熊本(H)⚪︎3-2

  • 髙尾が欠場で右SBに高嶺。
  • 開始早々に熊本の高校生FW神代のスーパーゴールで先行を許し終始追いかける展開になります。熊本が仕掛ける高い位置からのマンツーマンベースのプレッシングには20分くらいで順応していたと思いますが、その後のゴール前でのクオリティ不足が課題として浮き彫りになります。
  • それでもこのシーズンあまり決まらないセットプレーから高嶺の2ゴールと、マリオセルジオのスーパーなボレーシュートで3ゴールを奪い、2万人超えの大観衆の前で下位に沈む相手をなんとか叩いて連勝を飾りました。


7/5 22節 vsレノファ山口(H)⚪︎1-0

  • 非保持1-3-4-1-2気味の布陣でマンツーマンではめていくことを狙っていたっぽい中山元気監督の山口に対し、コンサは原が左WGで幅を取り、右SB高嶺や田中克幸が山口のブロック内でプレーしプレッシングの突破に成功。ゴール前は枚数不足でしたが、高嶺の強引なシュートで1点をもぎ取ります。
  • 山口もなかなか整理されており、ひたすらコンサのポケットを取り続けますが、西野や木戸の頑張りもあり逃げ切り。


7/12 23節 vsジュビロ磐田(A)⚫︎1-5

  • 直近3試合でプレッシングの開始位置を下げ、前線に長谷川/木戸、白井といったハードワーカーを起用して3連勝を飾ったコンサでしたが、近藤が回復しスタメンに戻したことで開幕当初からのスカスカなディフェンスに逆戻り。
  • 序盤から噛み合わせも味方との連動もあまり意識しないまま磐田のDFにアタックし剥がされDFが剥き出しになったところに、磐田のサイドアタックで早々に2点を失い、決定的なミスや大﨑へのレッドカードもあり失点を重ね、思い描いた大型連勝は遠州の風に乗って消えてゆきました。

【6〜7月のまとめ】

◇CBとFWを補強、馬場、ゴニ、中島を放出
  • 6月からCBの宮と浦上、FWのマリオセルジオが合流します。
  • コンサの強化担当の場合はもう自分で考えるよりも、どんな選手が欲しいか監督に聞いた方がいいのでは?と思っていたところ、浦上は監督が名前を出したと言いますが、大宮で前年J3ベストイレブンだったとはいえ予想以上に加入早々から重用されます。
  • 少なくとも家泉がスタメン固定で、トレーニングの際はスタメン/サブと2セット組んでゲーム形式を行うことすら困難だったDF陣に、もしくはDFだけでなくチーム全体に新しい風を吹かせてくれたことは事実でしょう。
  • OUTに関しては中島は戦術的にフィットしていない感じがすることもあり余剰戦力、ゴニはピッチに立てば仕事をしますがそもそもピッチに健康な状態で立てることが少なく、維持コスト面も考慮して、ということでしょう。
  • 馬場は開幕当初は不動のスタメンでしたが、負傷もあり10節以降は不出場。リカルドロドリゲス新監督の下で首位争いを繰り広げる柏でスタメンで出れるかは懐疑的でしたが、2年半在籍した元U22日本代表選手と考えると売り時でもあったかなと思います。
  • 一方で中盤センターが元々、高嶺と馬場以外はベテランの宮澤、大﨑、深井、荒野と、本来は1列前の木戸や田中克幸しかおらず、人数の割に脆弱なラインナップで、そこから馬場が抜けて補充がないのであれば、後半戦で「大型連勝」には荒野や木戸など既存の選手の奮起が不可欠だなと思っていましたが…

◇ハードワーカー3人衆の起用でようやく前線守備のずれが解消も、振り出しに戻る
  • 厳密には5月末のvs仙台からですが、相手陣内ペナルティエリア付近からプレッシングを開始することは徐々に取り下げ、敵陣センターサークルの頂上付近、つまりミドルブロックから1stディフェンスを行うスタイルにシフトさせます。
  • 同時に近藤の負傷もあって右SHに白井。2トップの一角には長谷川もしくは木戸を起用し、これらの選手が慎重にボールホルダーに対して寄せた上で、1列目を突破された後はプレスバックして2列目以降の選手と2人または3人で相手のパスの受け手に対応するとしたことで、それまで簡単にDFが晒されてボコボコにされていた問題はかなり解消されることとなりました。
  • しかし中断前最後の23節(vs磐田)、負傷から近藤が復帰したこのゲームでは、ハードワーカー3人衆起用前の緩い、というか基準がはっきりしない戦線守備に戻ってしまい、上昇機運を完全に打ち砕かれる大敗を喫します。

1.4 8年ぶりの内政型監督(8-9月):

8/2 24節 vsサガン鳥栖(H)⚪︎1-0

    • 中断期間に函館〜洞爺湖〜白老を廻ったという岩政監督は開幕当初の3バックシステムに戻しましたが、髙尾を右WBとする新システムは岩政監督のチームにしてはかなり慎重なもので、西野がフリーマン化するものの、主に5バックでWBが鳥栖のWBに蓋をすることを念頭に置いたような振る舞いをします。
    • 決定打がないコンサに対し、次第に鳥栖が慣れていき、スリヴカを起点にチャンスを作る。後半は鳥栖が先にシステム変更し、右サイドからポケットを取る攻撃を立て続けに繰り出しますが、コンサが高木のセーブもあって耐え、わずかなチャンスから鳥栖GK泉森のミスを誘って勝ち点3を得ます。

    8/9 25節 vsV・ファーレン長崎(A)⚫︎1-2

      • 特別な日に開催されたアウェイゲーム。現在のJ2の中で最もキャスティング主義な長崎に対し、マテウスジェズスに攻守両面で西野をぶつける采配を見せます。ポストプレーは許すもののゴール前は死守し、高嶺の見事なミドルシュートで先制。
      • しかし後半、長崎の笠柳投入と、コンサの高嶺負傷交代からは、コンサが完全にボールを捨てて防戦一方となる展開。酷暑の中で長崎の前線のモンスター達を守りきれず、岩政監督体制が終焉します。

      8/16 26節 vsブラウブリッツ秋田(H)⚫︎0-2

      • 8/11月に柴田慎吾監督の就任が発表されてから準備期間4日。「サッカーはスペースの奪い合いである」など極めて真っ当かつ普通のコメントをしていた新監督は、ほぼ前任と変わらないメンバーとシステムで初陣に臨みます。
      • 新たな船出は…前途多難を感じさせるものでした。スペースの奪い合いというか、より走りより戦い続けていた秋田が後半に疲れが見えたところでコンサが秋田陣内になだれ込み猛攻を仕掛けますが、前半秋田が元気なうちは殆ど敵陣ペナルティエリア付近に前進できないままでした。

      8/23 27節 vsヴァンフォーレ甲府(A)⚪︎2-0

      • マリオ セルジオが初スタメン、シャドーに長谷川、WBに白井とパク ミンギュを起用とスタメンを4人入れ替えて(多分めちゃくちゃ暑い)真夏の小瀬での18:30着っっ区オフのゲームに臨みます。
      • 甲府は極端に自陣に引いてコンサにボールを渡しますがWB背後の管理が甘く、コンサはロングフィードで簡単に甲府陣内に侵入。相手DFのミスと緩めの守備もあって早々に2点を先行します。その後は1点を失ったものの、最後までギアが上がりきらない甲府相手に選手交代も使ってクローズし逃げ切り。

      8/30 28節 vsRB大宮アルディージャ(H)⚪︎1-0

        • レッドブルスタイルにプレーモデルを変えていくよう上から通達があったか?大宮は春先とは異なり試合開始から走力を全面に押し出したスタイルでコンサゴールに迫ります。
        • 20分ほど大宮の猛攻を耐えると一気に相手はペースダウンしコンサがボールを持てるようになり、ラッキーなFK獲得を起点に高嶺のスーパーゴールで得点。後半はペースが戻らない大宮を難なく抑えて逃げ切りました。

        9/13 29節 vsいわきFC(H)⚫︎1-5

        • プレーを頻繁に切りながらセットプレーを利用して敵陣に入ってくるいわきに対し、20分を耐えてから徐々にカウンターを浴びせつつ白井の見事なゴールで先制。
        • しかし30分過ぎに愚かなタックルで荒野が退場、CKから同点に追いつかれると、後半にはマリオも退場処分を受け為す術なく失点を重ねます。

         

        9/20 30節 vs徳島ヴォルティス(A)⚪︎2-1

        • 荒野、マリオ、宮澤、バカヨコを欠く中でトップに白井、右WBに久々の近藤、中盤に木戸を起用。
        • ミドルブロックで構える徳島の1列目を西野の列移動などで攻略し、CB山田と青木を欠く徳島のビルドアップにはマンツーマン気味に対処します。後半に白井の見事なゴールと自陣からの崩しで2点を奪い、ゴール前の迫力があまりない徳島を抑えて逃げ切り。



        9/27 31節 vsベガルタ仙台(H)⚫︎0-3
        • これまでのコンサの戦いぶりを見てハイプレスを選択したと仙台・森山監督。
        • 西野の不在(代役に家泉)もありコンサはGK高木のフィードを軸に組み立てようとしますが、仙台のプレッシングにはまりほぼ敵陣に入れず。
        • 前線守備はミスマッチを覚悟でマンツーマン気味に対応しますが、コンサでこの形(相手1-4-2-2-2、コンサ1-3-4-2-1)でうまくプレッシングがハマったことは直近10年でほぼ記憶にありません。この試合もはまらず空転したまま時間が経過し、セットプレーで仙台が2点を先行。
        • 後半に選手交代で反撃を狙いますが特に変化を起こせず枠内シュートゼロで敗戦。前線に白井起用を継続しポストプレイヤーを排した選択が裏目に出ました。


        【8〜9月のまとめ】

        ◇学級崩壊状態を経て内政型監督に交代
        • 8月の上位対決2試合を消化したのちに岩政監督→柴田監督へと交代。柴田監督での6試合は3勝3敗という結果になりました。監督交代の際の石水社長のコメントは一部で物議を醸しましたが、どうやら岩政監督は末期はチーム内での求心力を失いつつあったと見てよいでしょう。
        • クラブ内部では「サッカーオタク」「戦術家」だとする評判の新監督。一方でこの2ヶ月弱を見たところでは、戦術やプレーのスタイル、アイディアとしてなんらか新しいものをまず打ち出していくというよりは、学級崩壊気味だったチームにまずフットボール以前のソーシャル的な規律を取り戻すことをまず目指したように見えます。
        • 前監督体制である種、特権的な使われ方をしていて右サイドの背後に大きな穴が空いていた問題の一因である近藤の処遇は典型的で、時にストレートに「そのプレーの水準では不満足」だと伝え、白井との併用で競争させ奮起を促したやり方は、良い意味で新人監督らしからぬ胆力のようなものを感じさせました。

        • 一方で戦術面では、プレッシング、ビルドアップ、自陣でのブロック守備、敵陣ゴール前での崩し、トランジション、セットプレー…において明確に何が改善されたかというとなんとも言い難いところ。
        • プレッシングはシンプルなマンツーマン。ボール保持に関してはクリアやロングフィードでイーブンなボールにすることをあまり否定しないのが新監督のスタイルのようで、甲府、大宮、徳島相手に3勝を挙げましたが戦術的にすごく狙いがハマったとかうまくプレーできたというよりは、相手の対応のまずさもあってコンサに優位に運んだということと、ゴールはほぼ全てが相手のミスか、コンサ側のスーパープレー(主に高嶺が関与)によるものでした。

        • 戦術家といってもいろいろな人がいます。まさに四方田元監督も戦術家とか戦術に明るい、理論派、指導力に定評…などと言われていましたが(単にこの界隈の語彙力が乏しすぎるだけかもしれませんが)、
        • 少なくともこの9月末までの印象では、新たに何かを生み出すというよりは、既存のリソースを整理することが得意そうな監督に見えました。


        1.5 ひっそりとフェードアウト(10-11月):

        10/3 32節 vsモンテディオ山形(H)⚫︎1-2

        • 山形は前線のトップ下と3トップが前残り気味でDFがあまり押し上げてこないので序盤からオープン気味な構図に。
        • コンサは前節の反省を活かしミラー気味の1-4-4-2の布陣でマンツーマンベースのpressingにトライしますが、中央で山形のポジションチェンジに対しどこまでマンツーマンで捕まえればよいかがはっきりしない。マンツーマンで相手選手への対応を明確にさせたはずが、自陣に撤退するとマーキングかスペース管理か迷ってしまい、フリーの選手から山形のエース・ディサロへのラストパスを阻害できませんでした。

        10/19 33節 vsカターレ富山(A)⚪︎2-0

        • 互いにシステム1-3-4-2-1でボール保持はアシンメトリー配置同士でしたが、富山の方が相手の1列目を超えて前線にボールを届ける部分は優れていました。
        • しかしコンサには高嶺がいる。ロングボールで押し下げたDFのMFの間のスペースに突進し高難度なミドルシュートを叩き込むと、後半もショートカウンターから左足一閃。高さのない富山の前線に対し浦上中心にスペースを消して守るいつもの対応で逃げ切ります。


        10/26 34節 vs水戸ホーリーホック(H)⚫︎0-1
        • システム1-4-4-2で3つの高さのブロックを使い分ける水戸。コンサはDF中央に浦上ではなく宮。
        • 前線のキープレイヤーを欠くこともあり撤退後はなかなか陣地回復できない様子の水戸でしたが、コンサにとって最も警戒すべき選手である斎藤が強烈なミドルシュートを叩き込んで先制。
        • ボールを捨ててくる水戸に対し、コンサは水戸のブロックがどのような状態の時にどのような構図でアタックするのかが見えず逃げ切りを許します。

        11/2 35節 vsジェフユナイテッド千葉(A)⚫︎2-5
        • コンサはトップに荒野を配置し、システム1-4-4-2で真っ向勝負というか前線の速さが持ち味のジェフに対しこちらもショートカウンターを意識だったでしょうか。
        • しかしシステム(人数)を合わせ、荒野を起用しながらもジェフのSBや中盤真ん中の選手ををはめることがうまくいかず。前半は必死に走って1-1で折り返しますが後半早々に足が止まり、クロスボールに対する課題も噴出し失点を重ね大敗で終戦します。

        11/9 36節 vs大分トリニータ(H)⚪︎3-1
        • 序盤から前に出てこない大分が自陣ゴール前で緩い対応を見せたところに荒野が飛び出して難なく先制。久々先発の家泉がFWグレイソンをシャットアウトし、高嶺の個の力が炸裂して2ゴールを加え消化試合をイージーに制します。

        11/23 37節 vsFC今治(A)△1-1
        • コンサは高嶺が出場停止。システム1-3-1-4-2の今治のビルドアップにマンツーマンベースで対抗しますが、今治はコンサが食いついて生じたスペースを使う術を何通りか用意しており次第にコンサのプレッシングは空転。一方で両チームともあまりブロックを作って守る様子がないことから徐々にオープン気味な展開になります。
        • 後半に今治のドリブラー・横山の突破からスコアが動き、今治には追加点のチャンスがありましたが菅野のビッグセーブもありコンサが耐えると、ボックス内でラッキーなPK獲得からマリオが決めてドローに持ち込みました。

         

        11/30 38節 vs愛媛FC(H)⚪︎3-1
        • 人を捕まえようとしてくるけどそこまで圧はなく、スペースが空きやすい愛媛の前線守備を難なく剥がし、空中戦の弱さを突いて2ゴール。最下位が確定していた相手ながらも快勝で深井を送り出すことに成功します。


        【10〜11月のまとめ】

        ◇徐々にボールを捨てるモードに収束し評価軸が変わる
        • 柴田監督の就任から3ヶ月ほどが経ち、徐々に監督の考え方や、現状下での手腕が見えてくることとなりました。
        • まず、9月ラストの試合で仙台に完敗して以降は、それまで以上に1列目から、高い位置からのプレッシングの意識を強くします。この際、相手が4バックならこちらも2トップ気味にする、相手が2トップならこちらも4バックにするなど枚数を合わせる方針とします。
        • また前線よりもむしろ中盤センターの方が手薄な状況でありながら、荒野はFWやシャドーで起用されるようになりましたが、これも前線守備の問題意識によるものでしょう。岩政前監督、柴田監督、ひいてはミシャ前々監督もそうですがFWのスタメンクラスに前線守備において中央のパスコースを切るだけでなく、ボールを持っている相手DFに対して何度もアプローチできるような活動量がある選手の需要が一貫しています。このニーズに対し全く編成面で応えられていないことが改めて如実になりました。

        • 加えて36節からは浦上に変え家泉が先発復帰。ボールと味方を動かす(コントロールする)能力に長ける前者と、とにかく跳ね返すのが得意な後者。この選手起用はかなり象徴的なものでした。
        • コンサがボールを持った時に早めに前に放り込み、前に枚数をかけ後ろに最少人数しか残さないような戦い方をしつつ、加えて高い位置からプレッシングを仕掛けるようなやり方を取ると、まずボールが落ち着かず高速で前後に往来する展開になります。

        • 浦上加入後、コンサは自陣では浦上がディレイして時間を稼ぎ、高嶺がプレスバックして相手FWを挟む形でボールを奪おうとする方針に落ち着きました。
        • しかし35節のvsジェフが典型かもしれませんが、ボールが高速で往来する高速化展開だとディレイ+プレスバックという対応が難しくなり、DFは高嶺のサポートを待つのではなく1人で対処することを求められます。それならば家泉を真ん中に置いた方が跳ね返してくれるので安定する。ただしボールを保持し試合をコントロールするという方向でのトライはかなり割り切ったこととなります(大分のような露骨に引いてくる相手ならともかく、今治くらいのクオリティがあるチーム相手にはボールを捨てざるを得ない)。

        ◇別格のキャプテンと、前線の躍動感は最後まで潜めたまま
        • コンサが2ヶ月、8試合で挙げた12得点のうち4得点が高嶺。最終戦の愛媛相手に3ゴールで得点者が賑やかになりましたが、それまでは高嶺のクオリティに頼るところが終盤戦になってより顕著になりました。
        • また4得点いずれも高嶺の圧倒的な個人能力がベースになる得点で、後半戦におけるキャプテンの異次元の活躍がなければさらに惨めなシーズンになっていたでしょう。
        • 他の得点者はvs水戸での宮澤のミドルシュート、vs大分での荒野、vsジェフでのスパチョークと青木、vs今治でのマリオのPK、最終節の近藤、家泉、マリオの得点。マリオは27節のvs甲府以来沈黙が続き、スパチョークは4節のvsジェフ以来でこのシーズン2点目、つまりジェフ以外から得点していないこととなります。

        • 岩政前監督に選手がノーを突きつけての柴田監督就任でしたが、柴田監督下でも前線の選手が躍動する姿を見ることは極めて稀でした。
        • FWはバカヨコ、マリオ、共にタイプは幾分か違いますが、ボックス内でラストパスを受けられないとそもそもシュートチャンスになりません。
        • そのFW陣にラストパスを出すのがワイドなのか中央なのかになりますが、コンサが攻撃しているらしい振る舞いができるのは「なんらか近藤にボールが渡って近藤の仕掛けが成功する」くらいのシチュエーションしかなく、かつ近藤はラストパス(主にクロスボール)の精度に課題があるのでFWが沈黙するのは必然でしょう。
        • そしてFWの1列または0.5列下でプレーするシャドーもFW同様、後方からボールが届けられない状況が続き、長谷川もスパチョークも主な仕事はボールを持っていない時に頑張って相手を追いかけ回したりプレスバックでした。

        • 白井やハードワーカーに転身した長谷川はともかく、スパチョークも青木も足元でボールを受けた時に特徴を発揮する選手であり、↑に書いたようなボールが高速で往来し、家泉のドカーンと跳ね返す能力をアテにするスタイルではこれらの選手の特徴が活きるとは言いがたく、得点に絡めず沈黙するのは必然でした。
        • だからこその荒野の前線起用となったのでしょうけど、スカッドと戦術のミスマッチは深刻でした。結局は岩政監督がノーで柴田監督はとりあえずステイ、であることにフットボール的な理由はかなり乏しく、「チームの空気感」にだけは敏感なフロントであるとの印象を抱きました。
        • と書いていたところ、柴田監督の退任報道があったわけですが…(12/1時点)。

        ◇余談
        • 最後にJ2のシーズンを通じた簡単な感想ですが、J1に比べるとJ2の方が良くも悪くも「パターン」でプレーするチームが多いと感じます。
        • 肯定的に捉えれば、チームとしてのプランやアクションが明確になっているので、それを徹底すれば試合の入りをコントロールしたり組み立ては容易になる。そしてシーズンを通してみた時にチーム作りや仕上がりが早くなると思います。
        • 一方でパターンで勝負しているチームは、それが読めてくる後半になると対策を講じられて失速する。ですのでリーグの後半は長崎に代表されるように、もともと地力のあるチームというか、パターン以外でプレーできるチームが盛り返してくる印象でした。

        • その「パターン以外」というのが、岩政前監督の描いていたのは複数の選手が連動して仕組みを作るということですが、コンサではそれは絵に描いた餅に終わります。
        • 後半戦、どのチームも長崎を止められなかったのは、マテウスジェズスに代表される個人能力ベースのスタイルにしたことで、特定のパターンを読みづらい、対策しづらいチームになっていたのもあるかもしれません。もっともこの点ではマテウスに匹敵するかそれ以上のクオリティを有する選手がコンサにもいたのですが。
        • J1のチームはJ2のチームよりも、もっと長崎っぽいというか、最初から型にはめないでとにかく個人能力を活かそうと考えているチームがより多いと思います(今年の岡山のようなチームはまた別ですが)。
        ===
        • 次回はシーズンの背景となったトピック等を振り返ります。

        2025年11月30日日曜日

        2025年11月29日(土) 明治安田J2リーグ第38節 北海道コンサドーレ札幌vs愛媛FC 〜共感も疑念も一旦はタンスの奥に〜

        1.スターティングメンバー


        • 愛媛は後半戦ほぼこのシステムのようです。メンバーは各ポジションで試行錯誤が見られますが、特にトップ下とCB吉田の相方は多くの選手を試し、GKも3選手が出場機会を得ることとなり軸が定まらなかったのかもしれません。
        • コンサは引退の深井がキャプテンマークを巻きます。負傷中の宮澤はなんとか間に合わせたかったとのことですが叶わず。その際は高嶺が左DF、西野が右DFに回る想定だったようです。バカヨコは家庭の事情でチームを離脱しメンバー外。

        2025年11月24日月曜日

        2025年11月23日(日) 明治安田J2リーグ第37節 FC今治vs北海道コンサドーレ札幌 〜連続性が示すチームの練度〜

        1.スターティングメンバー



        • コンサを勝ち点3上回る今治は左WBの弓場が出場停止。
        • 対するコンサもキャプテン高嶺が出場停止で西野がキャプテンマークを巻きます。左WBにはパクミンギュが使える状態のようですが白井がスタメン。

        2025年11月9日日曜日

        2025年11月8日(土) 明治安田J2リーグ第36節 北海道コンサドーレ札幌vs大分トリニータ 〜過保護下で本領発揮〜

        1.スターティングメンバー



        • 大分は残り3試合時点で勝ち点38。3チーム自動降格のレギュレーションにおいて、18位の山口が勝ち点32でありまだJ2残留が確定していない状況にあります。
        • 8/18付で片野坂前監督と契約解除し、27節から竹中穂新監督がコーチから昇格しましたが、以降の9試合で2勝4分3敗。1試合勝ち点1ペースをなんとかキープしてきました。
        • チームトップの5ゴールを挙げていた有馬が8月末に右膝半月板損傷で離脱。夏のマーケットで岡山からFWのグレイソンと、いずれもパースグローリーからDFの岡本と三竿を獲得。終盤戦でそれぞれCB中央と左WBのスタメンで起用されています。

        • コンサは前節5失点の影響からか?CB中央に浦上→家泉。トップはバカヨコで荒野を中盤センター、出場停止の木戸の位置に戻してきました。

        2025年11月3日月曜日

        2025年11月2日(日) 明治安田J2リーグ第35節 ジェフユナイテッド千葉vs北海道コンサドーレ札幌 〜君が望んだ航路ならば〜

        1.スターティングメンバー



        • ジェフは2-3月が6勝1敗(1試合平均2.57pt)、4-5月が5勝4分2敗(1.73)、6-7月が1勝1分3敗(0.8)、8-9月が4勝1分2敗(1.86)、9月が1勝1分1敗(1.33)。夏場に失速しつつも中断明けに立て直し、依然として自動昇格を狙える位置につけます。
        • 左MFの椿と右SBの高橋以外は、割とどのポジションも複数の選手を使い分けており、開幕当初の対戦時とはメンバーが入れ替わっています。またスタメン級のGKスアレスと右MF田中の負傷離脱もありましたが、シーズン中にもカルリーニョス、森、イサカゼインといったメンバーを加えるなどバックアップもされている印象を受けます(フクアリの飯屋は常に並んでいる印象なのでそちらも2-3程度補強して欲しいところですが)。
        • この試合はイサカと田口が出場停止で、それぞれ杉山と品田を起用。

        • コンサは荒野をトップに置いて、中盤に宮澤→木戸。DF中央に宮(負傷?)→浦上。GKは夏場の復帰後に一貫して起用されていた高木から19節(6/15vs今治)以来となる菅野。引退表明の深井がベンチ入り。システムは非保持の振る舞いから1-4-4-2とします。

        2025年10月27日月曜日

        2025年10月26日(日) 明治安田J2リーグ第34節 北海道コンサドーレ札幌vs水戸ホーリーホック 〜ふらつく足場で語る夢〜

        1.スターティングメンバー


        • この試合を含め残り5節となったJ2。水戸は14節でPO圏内の5位に浮上し、20節から首位に立ち33節を終えた時点でも長崎に次ぐ2位につけますが、8-9月は2勝4分2敗、8試合で8ポイントしか積めず正念場を迎えています。
        • 上記は夏のマーケットでFW寺沼を放出(→ヴェルディ)した時期と重なっていますが、彼のような前線で体を張れゴール前にも入っていけるFWを欠くことになった影響は小さくないでしょうし、一方で他にも色々要因はあるでしょう。ただそもそも、負けなしが続いていた4-7月までが出来すぎだった感はあります。
        • スタメンは前節からFWの粟飯原→多田。13ゴール7アシストの渡邉が負傷離脱する中で、U20日本代表の齋藤俊輔が前線を牽引している印象です。

         

        • 柴田監督就任後ホームで1勝3敗のコンサは前節から青木→スパチョーク、浦上→宮。浦上は加入後初のベンチスタート。スパチョークは新監督就任後は右シャドーが多かったですが得意の左シャドーに入りました。