2025年6月29日日曜日

2025年6月28日(土) 明治安田J2リーグ第21節 北海道コンサドーレ札幌vsロアッソ熊本 〜やれんの?〜

1.スターティングメンバー



  • 熊本は試合前の時点で4勝6分10敗で勝ち点18の17位。12節から6分3敗で9試合勝ちなしと厳しい状況が続きます。
  • この日も試合エントリーがベンチ8人で故障者が多いようです。リストを見ながらですがFWのベジョンミンと大崎、2節でコンサ相手に得点した渡邉、大本、宮埼といった選手が該当者なのでしょうけど、そうした状況下でもメンバーを入れ替えてきました。
  • FWは我慢強く使ってきた大卒1年目の半代→高校3年生の神代。右DFに阿部。古長谷は5節以来となるスタメン。こうして見ると、前回コンサと開幕早々に対戦した際も確か故障者は多いと聞いていましたが、動ける選手に関しては割とコンディションが良いとかはあったのかもしれません。

  • コンサはアウェイで藤枝を下した前節のメンバーをベースに、髙尾が不在で出場停止明けの高嶺をそのまま右SBに。いつから構想があったかは謎ですが、私が確認したのはその藤枝戦前日の練習で高嶺が控え組の右SBをやっていて、左利きの特徴が活きることもありこれはアリだなと見ていました(後述)。
  • 前日金曜日は選手の希望により、このクラブには珍しく非公開練習となりましたが、近藤は練習には参加していたようですがメンバー外。ベンチには出間と、この日誕生日の宮澤が外れて、大﨑とスパチョークがエントリーされています。

2.試合展開

世界基準をわからせられる?:

  • ここ数試合pressingの開始位置を下げる形で妥協しつつあるコンサ。
  • この日も熊本に対して前から食いつくのではなく、コンサの2トップは熊本のアンカー上村を基準にし、熊本のDFにはボールを持たせる形からミドルブロックでセットして、ショートカウンターを狙っていたのではないかと思いますが、開始早々に神代の見事なゴールでそのプラン遂行に暗雲が立ち込めます。
  • ちょうど地球の反対側でwe are Redsがワールドクラスのシュートレンジを思い知らされるような試合をしていましたが、浦上も神代にボールが入った時に完全にリトリートに切り替えていました。
  • ただ、ここでシュートの選択がないにしても、ここで下がってしまうとボールに対して全くアタックできなくなってしまいます。プレスバックする西野に任せる意図があったのかもしれませんが、相手のFWがドリブルを選択していればズルズル下がるだけの対応からよりゴールに近い位置でシュートやスルーパス…といった展開になってしまっていたでしょうし、浦上の対人対応についてはJ2上位〜J1を見据えると不安が残ります(そもそもこのチームがそんなクラスではないと言われそうですが)。

人が変わってもボールを味方に押し付ける構造を変えられないコンサ:

  • 序盤、熊本はボール非保持の対応を以前のマンツーマンベースでのハイプレスから、5バックの1-5-1-3-1のような陣形でセットして、特定の人をマークせずスペースを消しながら守るスタイルで前線守備を行い、それが剥がされると自陣でなるべく迅速に5バックの陣形を作って撤退。
  • この大まかなスタンス(ある程度高い位置で当たって、剥がされたら撤退して5バック)は以前から変わっていないと思いますが、印象としては5バックでの撤退の基準を少し変えているというか、最初から5人を後ろに残しておいて、例えばコンサがロングボールを使って一気に前に出てきたりした時に5バックを作ることを素早く行えるようにしていたかもしれません(あまり熊本の試合を見ていないので気のせいかもしれません)。

  • この熊本に対して、コンサのCB浦上と宮、GK高木の3人は、FWの神代を引きつけて藤井と引き剥がしたり、神代に長い距離を走らせてから外してpressingを空転させたり…といったアクションに乏しく、この3人から始まるコンサのボール保持は、彼ら3人が試合に出る以前の試合と同様に、「CBが困ってSBにキツめのパスを渡して、SBが更に追い込まれた状況でリリース…」といった事態に陥っていました。
  • 特に宮は各所のインタビューで「繋ぐ場合とロングボールを蹴る場合を使い分ける」みたいな考え方を示していましたが、見た感じは、繋げる場合でもロングボールを使う優先度が高い選手に見えます。
  • またCBの選択肢として「繋ぐ」、「蹴る」、だけでなく「運ぶ」があります(あとは「やり直す」とかもあるか?)。宮は「運ぶ」の優先度も高くなく、正直なところボール保持に関しては既存のDFをリプレースしても思ったほどの成果がないと言ってよいでしょう。

熊本の変化とコンサのSBの振る舞い:

  • ただ20分前後から熊本が徐々にマンツーマン色が濃い対応に変わってきます。おそらくやり方を変えているという話ではないのですけど、どこまで前線守備として対応して、どこで撤退するかの基準が曖昧になっていたのかと思います。

  • 熊本は5バック+アンカー上村+トップ下藤井+3トップ、の布陣だとして、5バックがあまりラインを崩して前に出てこないため、中央を上村1人が担当する構図になりがちで、上村の周囲にかなりスペースができやすく、また前線がマンツーマンベースでラインを作って2人でパスコースを消すみたいな対応をあまりしてこないので、この試合のコンサは中央にパスを出して中央のスペースを使えるか?が重要なポイントでした。

  • もっとも中央を使うのはvs熊本でなくとも必要なのですが、コンサの場合、これまではCBからの前進に難があり、多くの展開はSBを経由します。
  • この際、CBが相手のpressingを引きつけてSBにボールを渡すこともあまりできていない(≒CBがSBに爆弾ゲームのようにボールを押し付ける)ことから、SBがボールを持った時点で結構厳しいシチュエーションになっていることも確かに多かったですが、髙尾やパクミンギュからあまり中央方向にパスが出てこないと感じる試合が多くありました。

  • パクミンギュに関してはこの試合もそこまで普段とパフォーマンスが異なるとは思いませんでしたが、何回か中央方向へのパスは成功していました。
  • ただ、パクに対してCB(宮)からパスが出る時に、パクが準備できていなかったりポジショニングが整っていない時に宮からパスが出ると、パクが熊本の対面の選手背中方向から背負った状態で、かつ逆足の右足でボールタッチしなくてはならないシチュエーションがあります。

  • この点が、逆足のSBとして高嶺が「アリだな」と思った点で、コンサの場合(CBから”そういうパス”がSBに出てくる・押し付けられることが多いため)SBがDFを背負って逆足でボールを扱うことが多いので、それなら最初から逆足の選手を置いておけば順足(右サイドに右利き)よりも利き足で扱えてスムーズになるのと、そうしたシチュエーションでなくとも、サイドでボールを持った時に自然と中央方向を向くので、DFから中央へのパスが少ないコンサにおいてそうした展開を生じさせるオプションにもなる。
  • また反対サイドにボールがある時にそれこそ偽SBのように絞るとして、中央右寄りからミドルシュートやサイドチェンジに移行できる。
  • これは田中克幸の得意な位置とも一部重複しそうですが、高嶺と克幸だと「動きながら前を向いてボールを扱う能力」が段違いなので、キックの精度がどうというよりは、高嶺をそこに置いておくと、相手の危険な位置に入って仕事ができそうということです。
  • 前線右サイドは近藤や白井といった右利きの選手が務めるので、克幸がいないとここに左利きのオプションがなくなりますがこの点の補完にもなります。
  • 「ポケットを取る」のイメージがローポスト付近まで侵入するなら順足の方が良さそうですが、順足でそれができる選手は他にもいるでしょう。

  • という具合で20分過ぎ頃から徐々にコンサは熊本の中央、上村が守るエリアの周囲を経由して熊本陣内に入っていく場面が何度か見られます。
  • しかしゴール前では熊本が5バックを作ってペナルティエリア幅に人を並べ、コンサのアバウトなラストパス程度ならクリアすることができていました。
  • コンサは熊本のペナルティエリア付近までは、上村の周囲を突破したらそのままのスピードで速くゴールに迫っていましたが、ラストのところでは速いだけでなくより工夫というか、精度やアイディアを意識するプレーができなかったことは課題かと思います。

  • 惜しかった場面は20分に左→右のサイドチェンジから中央のバカヨコのポストプレー、青木のヒールパスにオーバーラップしたパクミンギュがボックス内で倒されたように見えましたがノーファウル。23分にトランジションから西野のスルーパスに青木が抜け出して左足シュートもわずかに枠外。34分にハイプレスが成功してバカヨコのパスを荒野がボックス内で受けますがコントロールできず。

何かが起きるとするなら…:

  • 後半開始からコンサは長谷川→スパチョーク。長谷川が前半で出し切って交代するリレー方式は定番になりつつありますが、前半の終わり際に接触で傷んだことも考慮したと思われます。

  • 相手ボールの際にスパチョークは長谷川ほどの連続したアクションはないですが、それでもこの日の熊本相手には十分でした。
  • 2月の対戦時と異なりコンサの守備は、2トップがアンカーの上村を消すところから始まりますが、上村が消されて出し手となるDF(大西や阿部)がサイドを常に見ているだけでコンサはかなり対処しやすくなりました。
  • 熊本は左右のMFの黒木と岩下が、大外に立つか中央寄りに立つかのパターンがあり、後者ではウイングの古長谷と塩浜がDFから直接パスを受けることになります。開始早々の神代のスーパーゴールの際はこのポジショニングとワンタッチパスがうまくいってコンサのDFを外した状態で神代へのパスに成功しましたが、その後はコンサがサイドを圧縮して、黒木と岩下のところで熊本は潰されることが多かったと思います。

  • 56分にコンサはパクミンギュの攻撃参加から得たFK。高嶺のミドルシュートが決まってスコアは1-1。

  • 59分に熊本は神代→半代。直後、コンサは自陣からの高嶺のフィードを青木が見事なコントロールで熊本陣内に侵入。右で攻撃参加してきた白井に渡しますが、白井がスリップしてしまいボールロスト。
  • そこからのトランジションで、高嶺と浦上がアタックしますが熊本は藤井と半代が繋いでコンサ陣内に入ります。最後は荒野がファウル覚悟で止めに行ったように見えましたが疲れもあってか?中央を破られて藤井が半代のヒールキックから流し込んで再び熊本がリードを奪います。
  • これについては最初の高嶺と浦上のところで止めておきたかったな、という印象です。

熊本のスタイルに助けられる:

  • コンサは64分にバカヨコ→マリオセルジオ、白井→原。70分に荒野→田中克幸。
  • コンサはマリオとスパチョークの2トップ。なるべくゴールに近いところでボールを待ちたいであろうマリオが下がってポストプレーのファーストチョイスになり、やはりこの2人が並ぶとタイプ的に中央での受け手がそれまでよりも減ることになります。
  • 熊本は77分に黒木→豊田。このあたりの時間から熊本はボール非保持は5バックの1-5-4-1に早めに移行して逃げ切りモード。
  • …と言いつつもマイボールの時は完全に割り切らず後方から繋いで前進を試みる熊本。この辺りが勝ち点を詰めていない要因なのかもしれません。79分には藤井を宮が潰してショートカウンターからマリオがGK佐藤と1v1になりますがチップキックは大西が戻ってクリア。

  • 最後の交代はコンサが79分に浦上→家泉。87分にコンサがマリオの見事なボレーシュートで追いついて、熊本が直後に藤井→竹本、古長谷→松岡。
  • これはシンプルにすごいですね。ニアへのクロスを体勢を崩しながらファーに飛ばす難度の高いシュートでした。

  • そしてATにセットプレーから高嶺のミドルシュートでスコア2-3。
  • 流れの中で「高嶺が右にいると良い」と書きましたが、流れの中ではないですが左利きの選手の良さが活きた形でもありますし、あとは高嶺のカットインというかコントロールが上手かったです(ゴールに平行角度に置いたのはウイングの選手のカットインからのシュートみたい)。

雑感

  • 熊本は①そこまでロングボールを使わない、②ポジション移動が多くバランスはそこまでよくない、というチームだとするなら持たせてカウンターはしやすそうな相手に見えますが、序盤に先制点を献上したこともあり相手に持たせる展開に持ち込むことには失敗しました。それでもスーパーゴールの応酬を制して勝ち点3を得ました。
  • 内容的にはこれまでと同じく、持たされると厳しいな…という印象です。大型連勝!と誰かが言っていましたが本当にやれんのか?依然として懐疑的です。
  • 浦上は家泉よりもボールを動かせて挙動が安定している印象ですが対人がどこまでやれるか。宮はボールをリリースする判断が早めなので、この2人に球出しを全部任せるよりは、確かに高嶺をDFのどこかに置きたくなります(たとえ髙尾とパクミンギュが揃っていても)。
  • しかし馬場が去った中盤も西野以外に安心できる選手が見当たらないのが難しいところです。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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