2025年6月22日日曜日

2025年6月21日(土) 明治安田J2リーグ第20節 藤枝MYFCvs北海道コンサドーレ札幌 〜スタンダードを浸透させられるか〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • 藤枝は8節から16節までの9試合を1勝8敗と大失速で8位から16位まで順位を落とすも、以降は3試合を2勝1分で乗り切り12位につけます。夏のマーケットでの動きは、FWまたは1.5列目として14試合に先発していた千葉が育成型期限付き移籍を打ち切って清水に復帰。
  • 負けが混んだこともあってかメンバーは試行錯誤がみられ、DF中央で楠本、中盤センターの岡澤といった選手がここ数試合は出場機会が増えているようです。

  • コンサは出場停止の高嶺に加え、菅野が17日の練習で負傷し、左ふくらはぎ肉離れとリリース。近藤はリリースがありませんが報道によると前節の試合中に右ふくらはぎを痛めたとのことで欠場。
  • 前日のトレーニングでは西野は疲労考慮?で別メニューだったと思いますが、中盤でスタメンに名を連ねています。GKは高木が23年12月の最終節以来の出場。

2.試合展開

仕事の分散と補完を再定義:

  • 序盤は開始15分ほどでコンサが3度ほどショートカウンターの機会を獲得し、22分にはGK北村のパスをインターセプトした青木がダイレクトでループシュートを決めて先制と、コンサはホームの藤枝にボールを持たせてから奪って手数をかけずにシュート…という効率的な展開に持ち込むことに成功します。
  • 今期ここまでのコンサ(といっても、もう前半戦を消化してしまったが…)は、相手にボールを持たれた時に効果的に相手に制限をかけることができず、どのチームに対してもボールを持たれる展開になると厳しくなります。
  • そしてボールを持っていてもまた別の問題があり厳しい展開になるので、そんなチームが勝てるわけがありません。

  • 相手がボールを持っている時のコンサの問題は1列目の対応から始まっています。岩政監督は5月にバカヨコを、要求通りの働きをしないとして前半で交代させる采配を2度行いましたが、私は逆の視点でバカヨコの選手特性を監督はいつになったら理解するのか…と見ていました。
  • 3日前の天皇杯で途中出場から白井と同時投入して白井をバカヨコの前で走らせるなど、ようやくそこをわかってくれたかな?と感じましたが、長谷川と前線でユニットを組んだこの試合はその印象がより強くなりました。

  • 藤枝のいつものアシンメトリー配置(CB2人と右SBでスタート)に対し、コンサは相変わらず純粋マンツーマンというか人数を合わせるのではなく1-4-4-2でセットする形でスタート。
  • 以前はバカヨコが最初に動いて、相手のGKとCBに制限をかけて…というやり方でしたが、この日は長谷川がその仕事を担い、長谷川の誘導もあって藤枝は左(コンサの右)で展開することが多くなります。
  • こちらのサイドでは白井がシャドーの中川風希、バカヨコが中盤センターの岡澤を切っている状態で、藤枝のDF中川創からワイドのシマブクに渡して、シマブクがその馬力で一気にギアを上げて対面のDFとの勝負に持ち込む…という能力がある。
  • コンサの視点だと、このパターン:コンサのサイドハーフを何らか越えられると、近藤や青木はあまり自陣に戻ってこないで、コンサは自陣で4人のDFと2人のMFで対処することが多く、それだと脆弱すぎて対処できないので失点がリーグワースト4位なのですが、この日は白井と青木がまずこのシチュエーションでプレスバックして、藤枝のワイドの選手が簡単にカットインしたり内側に持ち替えたり横方向に横断したりをさせず、制限をかけるようにしていました。
  • 言い換えれば今までここは走らなくていい、頑張らなくていいよ(その代わり攻撃の時に前でしっかり仕事してね)くらいの運用だったのが、ここは自陣方向に走って味方を助けてほしいと仕事の定義を変えたことになります。
  • またボールサイドのワイドの選手(図では白井)だけでなく、反対サイド(図では青木)が戻って一時的に5バックのような形になって、反対サイドに展開された時のリスクケアを担い、中央は長谷川とバカヨコもプレスバックして縦方向に圧縮し、セカンドボールを拾ったり、バカヨコはコンサが奪った後にまず彼に当ててボールを逃す役割も持っていて、これらも同時に整理していたと思います。

SB背後のスペース:

  • 藤枝はbuild-upの出口を塞がれても、無理やりワイドの選手につけたりトランジションから早く展開するなどして敵陣に入れば、相手の大外の選手を引っ張り出した後にその背後(ポケット?)を取る形は一定の共通理解があるように見えます。
  • 4バックでミスマッチのコンサがこれをくらうとCBが釣り出されたり、誰もSB背後をカバーしなくてガラ空きからハーフスペース付近をえぐられて…となりがちですが、この日のコンサはSB背後を中盤センターやSHが戻ることで、CBが中央に残れるようにしていました。
  • 特に左のパクミンギュがここまで昨シーズンほどのインパクトがなく、簡単に飛び込むもストップできず…という場面が見受けられますが(多分直線的で速い選手が得意なのでしょうけど、変化をつけられると苦手)、青木が背後を守ってくれることで安心感というか、仕事は明確になっていたと思います。

木戸の危機察知:

  • 持たせる展開で前半を乗り切って、後半頭からコンサは長谷川→木戸。
  • これもこの試合の典型的な形というか、藤枝に持たせて縦パスが入りますが、プレスバック(直前で荒野がペナルティエリア付近まで出て捕まえていますが、そこから必死に戻ってマイボールにしました)でマイボールにしてからのバカヨコに当てて2人目、3人目が飛び出す形。
  • しかしその前線のキーマンのバカヨコが傷んで51分にマリオセルジオと交代。
  • 藤枝は55分にCB中央の楠本→久富。久富は右に入って森が中央にスライド。

  • バカヨコと長谷川の関係は、バカヨコが下り目で9.5番、1.5列目っぽく後方からの縦パスを引き取り、長谷川はバカヨコが下がったりゴールに背中を向けた時に前に出ていくというもの。
  • マリオと木戸は逆で、マリオはまだどのようなプレースタイルか断言できないですが、この試合の印象ではバカヨコほど潰れ役を引き受けはしない9番タイプ。ですのでマリオが常に最前線にいて木戸が少し下り目になります。
  • 長谷川は前でアクションすることで味方を助けていましたが、木戸はFWと2列目の繋ぎ役で、この試合の後半だと、ボールが収まるバカヨコを失って、トランジションなどで展開がオープンになりかけた時に木戸が即座に中央の空いているスペースに戻って、簡単に藤枝が前進できないように対応していました。

  • しかし前線の皆でプレスバックやスライドを頑張るといった感じのコンセプトであるこの日のコンサは、徐々に対応が追いつかなくなってきて、藤枝はコンサのブロックにできるスペースを徐々に見つけることができていたと思います。
  • ↓は例えば2トップの間を通すパスをCB中川が狙った際に、コンサは2トップが中央を閉じるということと、SHの青木が絞って対応する、もしくは状況によっては中盤中央の選手が押し上げる、という要素があるのですがこれらのアクションを続けるのが厳しくなってきます。また藤枝は前線の0トップ的な動きもうまく活用していました。


  • 66分に藤枝は松木→梶川で中川風希がトップに。70分にコンサは荒野・白井→宮澤・原。74分に藤枝は浅倉・杉田→芹生・河本。

  • コンサはボール保持の際に高木が落ち着かせようとしますが、前5人+WBのスライドで高い位置から追いかけてくる藤枝に対し最終的には縦に長めのパスを入れる選択が多くなり、マリオになかなか収まらないこともあって、後半は藤枝がコンサに”持たせて蹴らせて回収”、前半と逆の展開ができるようになっていました。
  • それでも藤枝も前に出てくる展開なので、一旦前で収まったりどこかで外せればカウンターのチャンスに。75分頃に髙尾の背後のロングパスでマリオが抜け出して切り返しから1v1、79分にも宮澤のパスから原が抜け出してボックス内に侵入しますがいずれもシュートは正面。

  • 86分に藤枝はスローインから河本が髙尾と浦上の間に侵入し中央に折り返し。芹生のシュートが宮の手に当たってPK、これを芹生が決めてスコア2-1。
  • コンサは最後のカード:青木→家泉を切って家泉を真ん中に置いた5バックにシフトしますが、3バックの左右の宮と浦上が持ち場を離れてポケットに出ていいのか否かが整理されず交代直後も怪しくなります。それでも最後はゴールデンボーイ原がミスを突いて仕上げ。

雑感

  • 3日前の天皇杯を見て改めて「(これ以上大胆な選手の入れ替えも難しそうなので)”圧倒するサッカー”というが少なくともボール保持をなんとかするのはかなり難しそうだな」と書きましたが、金曜日のトレーニングではGKに高木という一番プレス耐性がありそうな選手を起用し、ビルドアップと敵陣守備の練習を繰り返していました。
  • その際、前線で長谷川、右サイドで白井を試しており、長谷川のハードワークは昨年も実績があるので期待感があるとして、白井の2列目はどうか?と思いましたが、トレーニングでも案外MFっぽい動きというか、ボールを持った時に縦に突っ込む以外の選択肢を見せたりもしてそこそこ好印象ではだったものの、攻守両面でここまでフィットするのは予想外でした。
  • この長谷川、白井に加え木戸や青木、西野の貢献も含め、全体的に中盤から前の選手が非常によく頑張っていた印象ですが、これまでも走らないといけないこと自体はどの選手も理解していたはずです。それがチームのアウトプットとして形にならなかったのは、「いつ走るか」、「どのシチュエーションでどれくらいの強度で走るか」のコンセンサスがなかったためなのでしょうけど、この試合はそこが整理されていました。

  • 一方でホームの藤枝が比較的、ボールを持って前に出てくるスタイルできてくれたことで、前半に相手のミスを誘ってカウンターから先制することができましたが、どちらかというともう少し前に出てこないチームを相手にした時の振る舞いがこのシーズンずっと課題であることは頭に入れておきたいところです。
  • また、ショートカウンターで素早く攻撃するとして、前線でポストプレーを担うバカヨコの存在は不可欠で、そのバカヨコの相方に運動量のある選手(主に守備面をカバーする)、ポストプレーから背後に飛び出す選手、などが揃ってようやく機能しそうというか、これまで見てきた中では選手の組み合わせとして割としっくりくるのですが、そのバカヨコの代わりが見当たらないこと、長谷川のハードワークがどこまで持つか(去年の今頃も彼のハードワークで一瞬持ち直したが故障ですぐに離脱)など、このようなプレーを続けるためにまだ不安な点はいくつかあります。
  • 白井はこの日のような展開では近藤の良い競争相手になるかもしれませんが、もっとスペースを消してくる相手だと1v1で突破できる近藤との違いが如実になるかもしれません。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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