2026年6月1日月曜日

2026年5月31日(日) 明治安田J2・J3百年構想リーグ プレーオフラウンド 第1戦 ブラウブリッツ秋田vs北海道コンサドーレ札幌 〜disciplineを逆手に〜

1.スターティングメンバー



  • 100年構想リーグEAST-Aは仙台が勝ち点43、18試合で16勝(PK勝ち5)2敗の勝ち点43と独走し、2位以下は秋田、湘南、横浜FCとなりました。秋田が昨年J1だった2クラブを抑え、山形は7位に沈むという結果でした。守備は整備されているもののパンチに欠ける印象の秋田ですがしっかりと90分で勝ち切っているようです。
  • 25-26シーズンのオフの動きは、スタメン級では右SBの高橋(→山口)、前線の梅田(→水戸)、CB野々村(→松本)、左右のMF中野(嘉大、→横浜FC)といった選手を加えており、アウトはFW梶谷、DF村松(かなり意外でしたが鹿児島へ)といった選手にとどめている印象です。

  • コンサは堀米悠斗が出場停止、西野が前節の負傷の影響で欠場。他、髙尾と川原、浦上、梅津(学業?)、バカヨコといった選手が不在ですが「フィールドプレイヤーはこのメンバーが使える選手全員」とのことです。

2.試合展開

ディシプリンと積極性を逆手に:

  • 秋田は自らがボールを持った状態から前進することにはそうクオリティを感じるわけではないですが、相手にボールを持たせた状況ではディシプリンと積極性が備わっており、前でボールを奪うこともできるし奪えない時に撤退して我慢することもできる。J2昇格後の5シーズンで下位1/3の順位になったことがなく、昇格争いに絡むことはおそらく容易ではないのでしょうけど上位チームの勝ち点を削るだけの堅さを備えています。
  • 一方でゴールを奪って勝ち点3を得るためには、ボール保持からの前進や自陣からのロングカウンター、フィニッシュに課題があるとするなら、秋田としては試合の中でハイプレスを仕掛けて相手ゴールに近い位置でボールを奪う局面を作ることは不可欠なのでしょうし、またセットプレーも重要になってきます。

  • コンサがボールを持っている時の3バックベースでの配置に対し、秋田は↓のような噛み合わせでハイプレスを仕掛けてきます。
  • 2トップがコンサの3バックを2人で見て、左右のDFに対し枚数や、2人でカバーできる可動域が足りなくなるとサイドハーフの佐藤と吉岡が出てくるというもの。

  • 一方コンサは、荒野が中央ではなく左のタッチライン付近に立つという非アシンメトリーな陣形になっていました。
  • そのため吉岡が前に出れば、パクから荒野のところを秋田が捕まえるのは難しくなってしまいますし、

  • 吉岡が荒野を気にすれば、2トップがパクにスライドして、木戸は中盤の土井が見るなどの対応に切り替えますが、その場合はコンサのシャドーの青木が浮く形になったり、パクへのスライドが甘いときはパクがそのままドリブル(conducción)は混んできたりと、秋田はどうしてもコンサの選手を捕まえることができなかったと思います。

  • こうして浮いた中央の選手から、コンサはワイドの原と白井にサイドチェンジを狙いますが、横幅を圧縮して守る秋田にはサイドチェンジが有効というのはインプットされていたと思います。ボールを待つ原と白井、出し手となる青木やティラパット、荒野の間での共通理解は非常にスムーズでした。

  • コンサは右サイドには荒野のように浮く選手を用意していないのですが、秋田に対して序盤から何度か左からボールを動かしてサイドチェンジまで見せた後だと、コンサが右で内田がボールを持った時に、秋田の佐藤や、このサイドを守る選手はこちらのサイドでも同じような仕掛けがあると警戒したのか?簡単に前に出られなくなっていたと思います。
  • 秋田からすると、このコンサの右サイドに展開された時の方が構造的にはハイプレスでハメやすかったはずですが、おそらくピッチ上で判断することが難しかったのでしょう。

ワイドのクオリティが問われる:

  • 秋田にとって厳しかったのは、コンサが秋田の1列目〜2列目を剥がして前進に成功した時に、コンサはゴール前への展開を急いでいたのではなく、ゆっくりとむしろスローダウンしてからワイドの選手が仕掛けるようになっていたので、その間に毎回、秋田の前線の選手(2トップと両サイドハーフ)は自陣に戻らないといけない点でした。
  • 秋田の前線に、自陣からコンサゴール付近まで何らかボールを運んだり、味方の攻撃参加を促せる選手がいればこの状況をうまく使うこともできますが、見たところそうした選手はおらず、前半の秋田はおそらく最も馬力のある左の佐藤の周辺のスペースに放り込み、佐藤を走らせるしかなかったと思います。

  • あとはコンサとしては、ワイドの選手が仕事をできるかが焦点になります。右の白井が決定的な仕事をできたかというとイマイチでしたが、白井だけの課題とは言いきれず、(ずっと指摘していますが)FW以外にあと1人か2人ゴール前に飛び出す選手の不足は相変わらず感じられました。
  • 原は対面の高橋のスライドが遅れ気味になるところに果敢に挑んでいき、前半から仕掛けて何度かセットプレーのチャンスを獲得したほか、後半早々の48分に見事なアシストを見せます。この時は中央にティラパットと荒野が走っていてターゲットの厚みも確保できていました。

FWのポストプレーの是非:

  • 秋田はハーフタイムに「選手が自主的に戦術的な対応を話し合った」というのが吉田監督のコメント。
  • 後半の秋田はコンサのボール保持に対し↓のようになっており、右で余っていた荒野に対しては吉岡をつける。前線右に梅田を置いて、木戸には土井、ティラパットと青木には師岡と、CBが出るようになってハイプレスはほぼ同数のマンツーマンベースに変えてきました。
  • 1v1なので1人剥がされた時にはマークがずれたり、コンサの選手にスペースを与えるリスクを抱えることになります。
  • しかし秋田は、コンサの選手に対しマークがはっきりするというマンツーマンベースの守備の本来のメリットもありますが、加えて最小人数で後方の守備をすることで、前線の佐藤や梅田が毎回戻ってブロックに加わる必要がなく、試合を通じて高い位置に残ってカウンターの際に起点になりやすいという効果の方がより大きかたかもしれません。

  • 秋田がマンツーマンベースの対応をすることでコンサはフリーの田川から、前線の大森へのロングボールが多くなります。
  • この試合、大森のポストプレーは前半からたびたび成功しておりそれは確かにチームを助けてはいたのですが、このラインナップではコンサの前線で、ゴール前に飛び込む選手がほぼFWしかおらず、その唯一のFWが低い位置(センターサークル付近)でキープしたり潰れる仕事が多くなるとゴール前の迫力の低下につながります。

  • それに対し秋田は、後半から前線に3人(佐藤、梅田、半田)が前残り気味になり、特にワイドで左の佐藤とコンサの右の内田、反対サイドで梅田とパクミンギュが、スペースのある状態で1v1の構図になることが多くます。
  • このコンサの本来SBで、あまりパワーがない選手と対峙するところを秋田はスペースにボールを出して走らせることで狙っていき、特に後半は右サイドでコンサのパクを押し込むことに成功していました。

吉岡を残す判断:

  • 59分に秋田は梅田・半田・土井→中野・水谷・佐川。佐藤が2トップの一角にスライドします。
  • 前線は右の吉岡を除いて何らか人もしくは配置が変わります。

  • 前半コンサ相手にプレッシングがはまらず撤退するしかない展開で、ほぼ全く目立っていなかった吉岡ですが、後半に秋田がマンツーマンベースの対応に切り替えたことで必要以上に下がらなくてもよい状況となり、後半に入って秋田はこの右の吉岡が前を向いてボールを持つところからポケット侵入など前半に見られなかった場面がありました。
  • 一方この60分前後は、秋田の後半開始からの圧力がやや落ちてきて、誰を入れ替えて圧力を維持するか考えどころだったと思いますが、結果的には65分に秋田は右サイドからの展開(ロングボールに吉岡が走ってスローイン、リスタートを左足クロスで中央へ)で追いつくことに成功します。
  • コンサは不慣れな内田と白井で守る大外はウィークポイントだったのでしょうけど、そこを突ける左利きの選手を残した采配が当たったと言えると思います。

  • コンサは68分に白井・原→田中宏武・長谷川で両ワイドを交代。74分にはティラパット→キングとして前線への放り込みからダイレクトに攻撃できる選手を加えます。キングは投入早々に裏抜けから決定機を迎えますが秋田DFが体を張ってシュートをブロック。
  • 秋田は81分に吉岡→大石。コンサは84分に大森→大﨑で、家泉をFWにするのかと思いきやキングがトップ、荒野がシャドーに入る形でした。大森交代でコンサはゴール前でクロスボールを待つ選手もいなくなりキングなどの単独突破に傾倒していきます。
  • 延長に入っても特に大きな動きはなし(そのままPKでもいいのでは?と思って見ていました)。

雑感

  • 直近の好成績に関して「J3相手はあまり参考にならない」としていた理由が伝わったでしょうか。
  • 改めて↑を貼りますが、秋田はJ3のクラブとは明らかに別物の強度があり、最初のゲームプランがうまくいかなくとも我慢して試合を壊さずに進めることができますし、1v1の局面で勝つまでいかなくとも簡単に負ける場面も少なかったと思います。
  • J3相手だとピッチ上の11人ずつの選手のマッチアップのうち、どこか1つで勝てればそれだけで簡単にゴール前まで運べたり決定的なチャンスになったりもしましたが、秋田は我慢してハーフタイムで手を打って流れを引き戻し、90分トータルで勝負することができるチームで、ただ秋田が抜群に優れているというよりは、本来はこれがフットボールだなという感じもします。

  • 一方でコンサの方も、私は2021年くらいからコンサについてはビルドアップもプレッシングもできない(できていない)と言い続けてきましたが、前半に見せたボール保持からの前進に関しては、少なくともこの百年構想リーグのシーズンで一番良かったと感じます。
  • また前進するだけじゃなくて、その後スローダウンして試合をコントロールすることも意図が感じられ、戦術として何をしたいかが整理されていました。後半秋田がマンツーマンベースの対応をとったことで一気に苦しくなりましたが、前半に見せられたものは特に秋田のようなソリッドに守るチーム相手のオプションとしては評価できると思います。
  • ただ後半にマンツーマンベースのオープンな展開となり個人のクオリティが(より)問われる展開となってからはほぼチャンスを作ることができませんでしたが、やはり手っ取り早く勝ち点を積むには、トップ下(シャドー)やウイングに、よりゴールに向かってプレーできる選手が現状は必要なのではないかと感じます。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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