2023年8月7日月曜日

2023年8月6日(日)明治安田生命J1リーグ第22節 鹿島アントラーズvs北海道コンサドーレ札幌 〜何度目のリスタートか〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • 水曜日に天皇杯が開催された関係で日曜日開催となったリーグ戦の再開節。鹿島は天皇杯はすでに敗退していたようでコンディション的には優位かもしれません。札幌は、柏からそのまま移動したのでしょうか。天皇杯は負傷者を除いたほぼベストメンバーでしたので、いずれにせよあまり良い条件ではないのは事実だと思います。
  • また両チームとも中断期間に主力選手が海外移籍していて、鹿島はSBの常本、札幌は金子。鹿島は須貝をすぐに穴埋め的に獲得したこともあり、札幌の方がダメージは大きいでしょう。
  • 他、鹿島は安西が出場停止、札幌は菅野、宮澤がおそらく負傷で、岡村は天皇杯を欠場しましたがこの試合には間に合ったようです。



2.試合展開

いつもの鹿島、いつものコンサ:

  • キックオフ直後に通常このようなアクションを取るのは稀なので、鹿島の先制点はデザインプレーだと思います。
  • やってることは、2トップが両方とも同じサイドに流れて札幌のCB2人を中央から外す。SBの中村が絞って対応しますが、中央1人では守れるわけがないのと、抜け出した鈴木のカバーに動いて背後を見れなくなったところで樋口がうまくそこを突きました。

  • 以降も鹿島は、2トップが積極的にゴール前から離れて、札幌のCBを動かしつつ前線で起点になるプレーを繰り返します。
  • 鹿島の配置は、表記上はサイドハーフの樋口と仲間が割と中央に寄ってプレーしていて、大外はたまにSBが使うという程度。この中央寄りのポジショニングは、マンマークの札幌のSB、田中駿汰と中村を本来の位置から動かして、岡村と馬場の2バック気味にする上で有効だったと思います。
  • その2バックvs鹿島の2トップのマッチアップでは、正面からくるボールには岡村も馬場もそこそこ対抗できるのですが、垣田と鈴木がサイドのスペース(駿汰と中村が動かされて開いたところ)に流れるとCBの個別対応で対処することは難しく、コンサは鹿島のロングフィード1発で起点を作られる、そしてDFが鹿島のプレーを切ることが難しいので、ロングフィードだけで間延びした状況を作られることが多かったと思います。

再構築の必要性:

  • 金子をクロアチアに送り出したコンサは、久々に右ルーカス、左菅の順足WB(実質的にはウイングかサイドハーフ)に戻してきました。ルーカスは対面の溝口(高卒2年目、リーグ戦初スタメン)に対して、ボールさえあれば格の違いを見せつけます。
  • しかし右利きのルーカスは基本的にはコーナーフラッグに向かってドリブルするので、自陣からでも1人で仕掛けて直接ゴール方向に向かって相手DFを引きつけたりできていた金子とは異なり、コンサはルーカスの右クロスに合わせる選手を必要としていたように思えますし、それは小柏(1回だけ惜しいヘディングシュートあり)と浅野では軽すぎます。
  • そもそも最近のコンサは、速攻に振りすぎていて、WBにボールが入ったときにFWの選手がいいポジションを取れていることは稀で、今後また左右からアウトスイングのクロスボール主体の攻撃に移行する(戻る)なら、少なくとも鹿島のようなセンターラインが強力なチーム相手には準備不足を露呈していたと感じます。

  • そして金子は自陣からでも敵陣に向かってプレーできる傑出した運動能力がありますが、ルーカスを活かすにはまずルーカスが右サイドのタッチライン付近に張った時に、そこにボールを配球できることが必要になる。
  • かつては福森と、チャナティップがその仕事を担っていましたが、前者はポジションを確保することが難しく、その福森の代替で代替で台頭してきた中村の存在は好材料ではあるものの、この日は鹿島の前線の選手がコンサのDFに対して高い位置から監視するので、DFから長いボールをWBに届けることは難しい状況でした。WBに届けるのが無理なら直接FWに、というのも、浅野、小柏、駒井の軽量級が揃う前線だと難しく、コンサは総じて鹿島陣内に入る段階で苦戦していたと感じます。

  • 後半になると鹿島が先に交代カードを切ります。アウトサイドの選手から変えていくのは、戦術的なタスクは違えども札幌ドームでの対戦(5月)と同じで、消耗しやすい選手がわかっているので早めに手を打ったなと感じました。
  • コンサは、この試合に限らず、ペナルティエリア付近でポストプレーができるキムゴンヒ(ゴニ)がジョーカー。ただゴニはあまりプレスが得意ではないようで、相手の足が止まってくる時間帯で起用されることが多い。この日もミシャはゴニを入れるタイミングを見計らっていたと思いますが、なかなか鹿島の足が止まらず、そしてセットプレーから3点目を許してしまって難しい展開になりました。

  • 結局コンサが動いたのは74分。青木、小林、スパチョークを入れて、ゴニの投入は小柏が傷んだ79分まで待つことになります。
  • 高い位置から守備を開始する(≒広く守る)スタイルならゴニはひとまずジョーカーでいいとして、小林はまだコンサが使い方を見出せていない選手で、左利きで得意なエリアが被り気味の浅野とどう組ませるか、またゴニと並べると足が早くない選手同士でカウンターの際に不都合が生じる…という選手の組み合わせの問題もあるのですが、本質的にはビルドアップがうまくなくて後ろからボールが届けられないコンサにおいて、小林はゴール前にいるべきかやや下がった位置なのか、それとももっと下がった位置(所謂ボランチ)で仕事をするのか、チームとしても小林本人としてもまだ試行錯誤している感じはします。

雑感

  • まず1人で攻撃機会を、それも90分のうち何度も作っていた金子を失ったことでかなりダメージは大きそうだな、というのが天皇杯を含めての感想です。ただ、仮に金子がいたとしても、センターラインに強い選手が揃っている鹿島相手には、放り込むだけでは難しかったと思います。
  • 残りのマーケットで選手獲得があるかは不明(欲しいけど、アウトの選手はみんな期限付きなのでそこまでまとまった資金はない)なので、とりあえず原戦力でやることになると思いますが、小林のようにまだフィットしきてない選手もいるのでまずはそこに手をつけるべきでしょうか。もっともそれは実戦を繰り返して徐々に合うのを待つ、という感じなのかもしれませんけど。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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