2022年3月20日日曜日

2022年3月19日(土)明治安田生命J 1リーグ第5節 セレッソ大阪vs北海道コンサドーレ札幌 〜ゴールは雄弁なり〜

1.スターティングメンバーとスタッツ

スターティングメンバー&試合結果
  • セレッソは左SBを丸橋と山中で競争していて、前節アシストの後者が2試合連続出場。ただ、その試合で清武が負傷により離脱。前線は清武トップ下+1トップと、サイドに回してFW2枚を起用する形があるようですが必然と後者しか選択肢がなくなります。ヨニッチが来日を果たした最終ラインでは、進藤はまず鳥海との競争になっているようです。
  • 札幌はミッドウィークに「9人のトップチーム関係者が新型コロナウイルス感染」のニュースが駆け巡りました。水曜日にカップ戦がなかったのはラッキーと言えるでしょう。そんなにおおっぴらに会食とかはしてないとは思うのですが、いつものメンバーからはベテラン勢を中心に外れています。地元メディアでは左DFに柳、高嶺がセンターに回るとの予想もありましたが、カップ戦でも中央で起用されていた岡村がスタメンに名を連ねました。

スタッツ:



2.試合展開(前半)

基本スタンス:

  • 正直あまり試合について書くことがないんですけども…まずセレッソの守り方というか、試合に対する基本的なスタンスの話をします。
  • セレッソは、札幌のWBにボールが渡るまではOK、というスタンスで、ミドルゾーンまでのエリアでは、札幌でボールを運ぶ役割の後ろ5人に対し、そこまで圧力をかけてプレーを限定する意図はなかったと思います。
  • セレッソが”処理”を開始するエリアは自陣のラスト1/3で、基本的には人よりもスペースを守っている。1-4-4-2で対抗するとシャドーが曖昧になりがちですが、奥埜と原川がシャドーを見る、というかはCBとSBのスペースに立つようになっている。奥埜の走行距離は90分で12kmとかになっていました。
  • やっていることは、「とりあえずそれだけ」なのですが、札幌のシャドー…金子も荒野もこの360°視野が要求されるシチュエーションでターンすることがあまり得意ではなくて、前節もそうでしたが荒野はシャドーの位置でよくフリックをします(フリックに逃げます)。
札幌のクロスボールに対する対応

  • フリックでかわそうとするプレーは、人に極端につかないセレッソに対し、部分的にはまずます刺さってはいたかもしれませんが、本来はブロックの中央に風穴を開けるようなプレーをしたいところ。
  • それは中央狭いスペースでワンタッチ連発のフリックでも、やり方次第でできなくはない(ミシャチームはそのパイオニアでした)ですが、その選択をとるにしても、あまり荒野も金子もシャドーとしてはゴール方向に向かってプレーすることができていなくて、必然とサイドから放り込むフィニッシュが多くなります。

  • セレッソはかつてロティーナのもと、ヨニッチー瀬古ーキムジンヒョンのユニットでクロスボールを跳ね返しまくるサッカーをやっていましたが、進藤と西尾でもスペック的にはそこまで問題はないと見ているようで、札幌がクロスボールを放り込みまくる展開はOK。そして札幌はそのうちバランスが崩れてくるし、運動量も落ちてくるので、そうなるとカウンターから得点のチャンスが期待できるし、それまではスローペースでいいと思っていたのではないでしょうか。

  • ただこの試合の後半、札幌の同点ゴールは右に回っていた金子の(初めて見たんですけど)インスイングでGKとDFの間に高速で落ちるクロスボールが配球されて、そこにターゲット2枚(ドウグラスオリヴェイラと中島)が突っ込む形から生まれました。
  • これは札幌の、ファーを狙った非常にいい形の攻撃だったのですが、確かにこの辺りはDFにもう少し対空能力というか、例えば中島を自由に飛ばせないように身体を当てるような対応ができれば良かったのかなと思います。

誤算か、想定内か:

  • 反対の展開、セレッソのボール保持に言及しておくと、こちらはあまり形を変えてプレーしない。札幌が1-4-4-2の形でマンマークしてくるのはセレッソもわかりきっているのですが、セレッソは配置を変えて札幌の選手を動かすこともしないし、フリーのGKキムジンヒョンから地上戦を仕掛けることもない。
  • ほとんどいきなり、前線の2トップに当ててセカンドボールを拾って、そのまま4人で速攻、という狙いがメインで、山中がオーバーラップからその左足が唸りを上げるような展開は、非常に稀だったと思います。
GKからトップに当てるだけ
  • フィードがうまい部類に入る方の(と思っている)GK、キムジンヒョンのフィードがセレッソの2トップに収まったかというと、そこまで収まっていた印象はなくて、札幌はリーグ戦でほとんどスタメンで出ていない岡村と深井のユニットで中央を守っていましたが、このシチュエーションが即座に問題になっている印象はありませんでした。
  • ブルーノメンデスはロティーナ監督時代にはよく、相手のSBの背後に走ってスペースでボールを収める仕事をしていたのですが、ブルメンは常に中央にいて、サイドに流れることはほとんどなかったと記憶しています。

  • そして全般にセレッソは簡単に自陣撤退するというか、セレッソ陣内でプレーすることを厭わないというか、札幌を積極的に自陣に引き込むというか、そんな感じのチームで、大体こういうチームには自陣から破壊力のあるカウンターを仕掛けられるタレントがいるのですが、セレッソにはどうやらいない
  • 札幌のDFは万能戦士ではないので、岡村や深井が広大なスペースで1on1を仕掛けられると結構きつかったのですが、そういう展開も稀でした。
  • と、見ていくと、セレッソの狙いはゲームを寝かせながら札幌のミスを誘う、そんなプランだったのかなと思います。あまり積極的に仕掛けるチームではないでしょう。ただそれでも、割と簡単にFWに当ててボールを失う展開は想定内だったのか、もう少し違う展開を考えていたのかは、ちょっとよくわかりませんでした。

  • また、クロスボールをセレッソが処理した後の、セカンドボールの争奪戦もゲームのポイントの一つで、定量的に示すことは難しく、またカメラワークの関係上、画面でも確認が難しいところもあるのですが、札幌はセカンドボールを拾えていたと思います。
  • おそらくボールを運んでセレッソ陣内への侵入、そしてカウンターへの対処など、札幌の後方の選手は全般にあまり負荷がかかっていないので、クロスボールが上がるシチュエーションの際はセレッソの選手をマンマークで捕まえるという”予備的対応”に切り替えることが容易だったのではないか、と思います(この辺は画面で確認できません)。駒井を筆頭に、岡村や深井も前に出てFWの選手を自由にさせない対応ができていましたが、負荷がかかっているとこの仕事の遂行は難しかったかもしれません。

ビッグ○○ オオタニサン:

  • 先述の「ミスを誘う」については、札幌が自陣ゴール付近でボールを保持している時には何らかアクションをしていたのでここを指します。
  • 札幌がいつものように、深井が下がって4枚+GKでボールを動かすのですが、セレッソは札幌のSBにはそんなにキツく当たらない(乾は中央を切っていたので、田中駿汰はサイドでボールを動かすことは可能でした)ので、札幌としてはボールの逃しどころはありました。
  • それから、セレッソの前線守備は4人で行われていて、アンカーの駒井が自由に動き回るのに対しては原川や奥埜がそこまでケアしない。これはセレッソ陣内に入ってもそうで、駒井は割とフリーでいることが全般に多かったように思えます。

  • ただ先制点の場面は例外で、2トップのアクションに連動して原川と奥埜も押し上げる。大谷(右利きのはずなんですが、妙に左足に自信がありそうで左足で何度もボールを持っていた)のパスが駒井にズレて原川がインターセプトから、セレッソが25分、狙っていたであろう展開で先制します。

  • 札幌は30分にルーカスの左CKをファーで岡村。個人的にはCKは絶対インスイング派なんですよね。こういう速いボールをゴールに近い位置に落とすのはアウトスイングでは難しいため。

3.試合展開(後半)

ゴールは雄弁なり:

  • 後半もそんなに構図が変わらないまま進みます。事件が起きたというか、静寂が破られたというか、62分に(駒井のドリブル特攻からセレッソが回収して)岡村のミスをブルーノメンデスが決めてセレッソが勝ち越し。
  • これだけで論じるのも難しいですが、大谷はDFをサポートしたいみたいですし、右CBの位置にいた田中も当然ボールを呼んでいますが、もっとポジショニングとかでわかりやすくメッセージを送れると良かったかもしれません。

  • 67分にセレッソはブルーノメンデスと乾を下げ、北野と上門。札幌は69〜70分にかけて中島、ドウグラスオリヴェイラ、柳を入れて岡村、トゥチッチ、青木を下げます。
  • 試合後いくつか質問があったのですが、田中駿汰を右から動かすことをミシャはあまり好んでいなくて、この柳を入れる形はオプションとしてはあったと思うのですが、70分まで岡村で引っ張った形になりました。

  • そして76分に先述の中島の得点が決まり2−2。
  • 札幌の「逆足ウイング」は普段はドリブルの進路が塞がれるだけで全く機能していないように見えるのですが、この時は金子が完全に抜き切らない、ボール2個分ほど動かしてからの、福岡のクルークスみたいな持ち方からの速いクロスでセレッソDFの背後を強襲したことが効果的でした(多分ルーカスが左からアシストしたことはゼロですよね?ゴールはこの前開幕戦で初めて見たと思います)。

雑感

  • 今回はおたよりを踏まえて振り返ります。
  • まず守備は割と良かった、という意見がいくつか寄せられました。セレッソは枠内シュート3で得点2、あと1つは原川のフリーキックだと思いますので、実はほとんど札幌ゴールを脅かしていない。
  • その意味では確かに守備陣の頑張りはあったかもしれません。ただそもそも、全然ボールを持つ気がないしリスクを冒して突っ込んでくる気もないチームだな、という印象で、そうなると普段よりもバックラインにかかる負荷は小さかったかな、と思います。
  • どっちかというと、「守備が良かった」は中盤で、セカンドボールを拾えていたとか、そういったことは言えると思います。
  • セレッソがちょっと元気がないな、と感じたのは札幌のボール保持への対応もそうで、大谷や岡村の起用で不安だったのはどちらかというとこっちでした。ハイプレス志向のチームだとこれだけ余裕を持ってボールを持てないし、セレッソは横幅を使った攻撃にうまく対処していたかというとそうでもない。シンプルに言ってイージーでした。もっとも、それでも2点分ミスから生まれてはいるのですが…。


  • これについては、前提として、監督は1試合だけでなくて日々のトレーニングも見て決めているので、よほどのインパクトがないと変化はすぐにはないと思います。
  • 中島については、高卒入団の選手はまずフィジカルの壁にぶち当たるのですが、ある程度はやれるレベルに近づいている。
  • 加えて本人はヘディングが得意と言っているようですが、単に運動能力に頼ったプレーではなくて、ボールの待ち方も昨年のカップ戦と比較すると良くなっている感じはして、実は今のチームには空中戦が得意な選手がそんなにいないこともあり、今後出場機会が増えそうな雰囲気は感じます。


  • 「田中駿汰が真ん中の方がいいのでは?」とのおたよりも複数ありました。右DFの方がフリーになりやすいから特徴を出しやすく、それによってチームに還元できるものが大きいということでしょうか。
  • じゃあサイドに攻撃が得意な選手を置く分、中央に守備が強い選手をおくのが良いか?岡村は出場機会が伸びるか?というと、それはミシャがミンテを諦めた現象で説明がつくと思っていて、基本的にボールを動かせる能力はできることなら全てのポジションで必要、とする考え方なので、失点につながるミスは別にしても、ボールを簡単にリリースしないでプレーすることは重要なのかなと思います

  • いつも以上にまとまりがない(何書いたらいいか難しい試合でした)が、それではみなさん、また逢う日までごきげんよう。

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