2022年2月27日日曜日

2022年2月26日(土)明治安田生命J1リーグ第2節 北海道コンサドーレ札幌vsサンフレッチェ広島 〜ジレンマの予感〜

1.スターティングメンバー

スターティングメンバー&試合結果
  • 広島は前節、ホームでの開幕戦にFWの鮎川、シャドーに仙波とフレッシュな選手を起用しましたが、それぞれ永井と浅野に入れ替えてきました。また青山がベンチスタートで、カップ戦で好調だったという野津田が中盤センターでスタメンに名を連ねています。
  • 札幌はサブの西→柳以外は変更なし。

2.試合展開

広島の狙い:

  • 一言でいうと、特に立ち上がりは、お互いに速い攻撃を志向していたと思います。ただ、広島の方がより組織だったというか奪いどころが明確なショートカウンターになっていて、札幌は展開自体は速いのですがそれがコレクティブな感じはせず、ドタバタとした見え方になっていたと感じます。
  • 札幌のボール保持は、それをやるシチュエーションもパターン(選手の配置や動き、ボールの動かし方など)も決まった形なので広島としては狙いを絞りやすかったでしょう。
  • チャナティップがいなくなったことで、イレギュラーな動きをして仲間を助けようとする選手も不在なので、▼のシチュエーション(左寄りで高嶺が持つ)だと、高嶺は福森に出すか、アンカーの位置にいる駒井に出すのが大半。前線や右サイドに放り込むこともありますが、それは広島のDFなら跳ね返せるのでカウントしません。
  • 広島はこのシチュエーションでは、浅野が横(福森)を切る、永井は図で「縦切り」としたのですが、実際は永井は駒井に出されてもいい。それは駒井は野津田か塩谷が前に出て対応すればいいから。永井は駒井へのパスコースを開けて誘いながら、GK菅野へ横パスないしバックパスが出ると菅野に行けるような体勢をとっていました
受け手2人を切って横パスを狙う
  • 序盤、高嶺はこの広島の”罠”に無警戒気味で、右足の緩いパスで菅野に渡そうとして、永井が引っかけそうな場面もありました。最終的にはこれが致命傷になったりはしなかったのですが、広島は蹴らせて回収(ラインは押し上げておく)だったり、駒井のところで引っ掛けたりと、比較的高い位置でボール回収から速い攻撃ができていたと思います。

補給線が延びる札幌のカウンター:

  • パブリックイメージ?だと札幌はボールを持つチームということになっているみたいですが、清水との開幕戦もこの試合も、ボールを持ったらまず縦に蹴って、速い攻撃を繰り出すイメージを持っていたように見えます。元ヴィッセル神戸監督のファンマ・リージョは「早くボールを手放せば早くボールが返ってくる展開になる(お互いに整えてない状態で縦に急いでもオープンなカウンター合戦になるだけ)」と言ってましたが、まさにそんな展開になります。
  • 早く攻撃すること自体は、ミシャが昨年夏のサッカー批評で「相手がみんな引いて守るなら、ボールを失った後にすぐにプレスを仕掛けて奪い返してから、相手守備が再び整う前に攻撃することが必要」と言っていたように、広島のようなチームへの対策の一つとして理解できます。興梠の見事な先制点も、広島の守備が整う前に攻撃したものと言えるでしょう。

  • ただ、この日の札幌は、ボールの回収位置を広島ほど高い位置に設定できないので、低い位置でボールを奪った後に急いで前に蹴る、それを前残り気味のシャビエルや興梠が拾って、広島の守備が整う前に前線の2〜3人でシュートまで持っていこうとすると、前3人と後ろの7人が次第に間伸びした状態になっていきます。
  • 興梠の先制点の場面では、ルーカスや福森の攻撃参加があり、それがシュートの前のプレーで直接関与してもいましたが、ウイングバックや中盤の選手が毎回長い距離を走って攻撃参加することは、恒常的なものとすることは難しいものです。次第にシャビエルや興梠によるカウンターは散発的で、賢い彼らはカウンターを諦めてスローダウンする選択をすることが増えていきます。

  • 札幌が「補給線」が伸びきったサッカーになる理由は、先述の通り、ボール回収位置が低いから。
  • その理由を一つ挙げると、シャビエルと興梠は2021シーズンまでの札幌が示してきたプレッシングの基準に達していないので、彼らが1列目だとプレスのスイッチが入らない、結果ズルズル下がって対応することが、チーム全体で増える、そんな感じだったと思います。
  • 興梠はとにかくボールが収まる(ジェイの引退のショックを和らげてくれるのは好材料ですが)のもあって、奪ったらとにかく前の興梠に蹴る展開が前半途中くらいから目立ちますが、収まらなければ広島のトランジションでボールが行ったり来たり(→菅野や守備陣は忙しくなる)、収まってもスローな展開に本格的に切り替えないと、”補給線”の問題は解消されないまま、伸びきった状態というリスクを抱えたままでプレーすることになります。

ジレンマの予感:

  • 54分、広島は、人を守るんだかスペースを守るんだか曖昧かつ間伸びした陣形を塩谷が前進して、右に流れていた森島。
  • ミシャが金子拓郎の右での起用にこだわるのも、この森島のゴールのような感じでカットインさせたいんでしょうけど、他のチームは札幌ほど広大なスペースを与えてくれないので、自分たちでスペースを作ることができないと、金子は永遠に密集地帯に突っ込んでロストを繰り返すことになります。

  • 反撃したい札幌の最初のカードは、シャビエル→菅。コンディションの問題があるのか、シャビエルは開幕戦に続いて60分前後でピッチを去ります。
  • そして70分にトゥチッチと青木が入って、興梠とルーカスがアウト。「サッカーは、最後は結局選手次第」という人もいますけど、だとすると反撃したいタイミングでルーカス、シャビエル、興梠がアウトになるのは厳しいな、と感じます。
  • おそらく、既にシャビエルと興梠の”クオリティ”は私が外から見ていて感じる以上に、チームに大きなものをもたらしつつあるのでしょう。ただこの2人を同時起用すると、先述の通り守備強度が下がった状態でスタートせざるを得なくなる。そして下げると、2022シーズンの選手層だと巻き返しがかなりキツくなる。上手いし不可欠なんだけど、シーズン序盤からこの2人への依存度合いが高くなると、つまづいた時に危険そうだなとの予感があります。

  • 広島はスペースのある展開で活きるジュニオール サントスを80分まで温存。前半勝負な傾向が強い札幌に対し、永井のスタメン起用も含め、札幌相手に堅い(というか、無理に前に出なくても点取れるでしょ、的な)ゲームプランだったのだと思います。ただ、ラスト20分はどちらもパワー不足な感じが否めず、見ていてちょっと眠くなってしまうゲームでした。

3.雑感

  • 分かりきっていた話かもしれませんが、ベテランのアタッカー2人をいきなりチームに組み込む”足し算的な思考”でカスタマイズすると、それまでのコンセプトと乖離して、結局どういうサッカーをしたいのか曖昧でコントロール不能なチームに、開幕2戦で早くもなりつつあると感じます。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

2 件のコメント:

  1. 昨シーズンの青木も最初は寄せが甘かったので、ガブリエルシャビエルも時間の問題で守備の強度は上がってくると思いますが、小柏が中盤に降りてくるチャナティップの役割を果たしていて、ゲームメーカーっぽいガブリエルシャビエルを前に置いているのはなんでですかね?

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    1. まだ2人というか前線3人の関係性が整理できていなくて、あと出し手と合っていないので、小柏が下がったタイミングでパスが出てくる(欲しくて下がってるわけではない)とかチグハグな状態でやっているのだと思います。監督の指示ではないはずです。かといって、あまり積極的に介入してもいなさそうですけどね。。。

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