Q.
- 長い前書きに続く記事だね。前回はどんな話だっけ。
A.
- 極端なプレッシング主体のサッカーに突如転換したことは、違和感というか納得感があまりなかったけど、それまでの様々な文脈(ルヴァンカップ決勝でスーパーサイヤ人に負けて限界を感じた、元々志向しているスタイルの浸透が2年間やって難しかったetc…)を考慮すると妥当感が出てくるな、って話ですね。ざっくり言うと。
Q.
- ようやく2020シーズンのサッカーの話ができる。
A.
- 2020シーズンはどんなチームだったか、ということについて、2年ぶりにレナート・バルディスタイルで記録しておきたいと思います。ちょっとアレンジした上で。
3.2020シーズンのチーム分析(「後は決めるだけ」?)
3.1 敵陣でのボール保持~フィニッシュの設計
Q.
- あらゆるチームはゴールから逆算されるべき(だし、実際そうなっている)ということをブログで度々書いている。
A.
- 相手ゴールだけでなく自陣ゴールも含めて。
Q.
- 相手ゴール前の話から整理していこう。ゴールを奪うために、2020シーズンのコンサドーレはどういう設計になっていた?
A.
- 実態としては、主に①右のウイングバックが勝負して中央のFWへクロスボール、基本的には空中戦で勝負するのがメインのパターンですね。
- オプションとして、②相手DFが整っていない状態でボールを回収した時は速攻で勝負していたと思います。この時はサイドに展開せず、時間をかけず中央で勝負します。ミシャは「武蔵がいなくなって(自陣からの)ロングカウンターができなくなったので、(敵陣からスタートする)ショートカウンターを整備する必要がある」みたいなことを言ってましたけど、実態としては奪ってから結構長い距離を走る必要があったと思ってます。これは、ボールを奪うところの設計によるものです。ここまでいくと脱線気味で、「ボール保持」の項目に含めて論じるか微妙ですが。
- ともかく、相手DFのポジションや準備が整っている状態では、中央から突破を図ることはかなり少なかったと思っています。
Q.
- 終盤戦はサイズのあるFWが比較的よく起用されていた印象があるけど、序盤~中盤は荒野はともかく、駒井やチャナティップが前線で出場していた。そして、170センチに満たない選手にも頭で競る必要があるようなボールを放り込んでいたね。
A.
- 終盤戦になって、「クロスはファー狙い」が整理されてきて、狙いや意図が整理されてきましたが、それまでは単調に放り込むだけで、ジェイ選手がいない前線では効果的ではなかったですね。
A.
- 率直に感じたのは、「それしかできないから」というのが大きいと思います。
- 相手のDFが4枚とか5枚、かつMFもゴール前に揃うと中央のスペースがなくなるのでFWへのパスは通らない。簡単に抜け出すこともできない。プレッシャーの薄いサイドに放り込んで、DFの枚数を無視できるハイクロスで強引にFWに届けるしかなかったというのが実情だったと感じます。
Q.
- じゃあ、「それしかできない」理由は?
A.
- これは繰り返しになるんですけど、ビルドアップができないので、ゴール前にスペースを作れないんです。これはボールを持ちたいとする思想のチームには致命的です。
- ゴール前にスペースがあれば、クロスボールも高さで勝負するのではなくて、GKとDFの間に送る速いボールを使ったりもできるんですけど、スペースがなければそれも難しい。クロスを蹴る場所がファーしかないんですよ。
- だから、その点では等々力での川崎戦からウイングバックの利き足を入れ替えたのはある意味必然ではありましたね。金子選手が右サイドだと、時間をかけずに速いクロスボールを蹴ったりはできないけど、そもそもそのオプションはコンサドーレにはないので。逆に、左利きの方がファーに蹴りやすいのでメリットが活きる。
Q.
- 「ボールを保持していれば得点期待値が高まる」んじゃなくて「相手ゴール前にスペースがある状態で仕掛ける」ことが重要。
A.
- そうです。だからボール支配率が65%とかでも点が入りそうにない試合ってありますよね。全然DFが動いてくれない、誘いに乗ってくれないような。
- その意味では、相手ゴール前にスペースを作れるようにボールを動かしていると、結果的に相手のプレスを起動することになって、何回かはボールを失うことになるんですよ。結果ボール支配率は60%オーバーとかにはならない。オカルト的な話ですが、ボール支配率は高くても50%台後半が最も”健全”ってのはこういうことなんだと思います。
3.2 自陣でのボール保持~敵陣侵入(ビルドアップ)
Q.
- ビルドアップの話が出たので、次は自陣でのボール保持について。
A.
- ビルドアップという言葉の定義を改めてしておくと、「敵陣で相手DFを崩してフィニッシュに持ち込む状態の手前までボールを届け、選手を配置すること」とします。わかりやすい例えだと、ペップバルサでいうところの「メッシが敵陣のラスト1/3で前を向いて、受け手が動き出す準備をしている状態」でしょうか。
Q.
- ペップバルサでなくてコンサドーレの、ビルドアップのゴールは?
A.
- 「5人のFWのうち誰かがフリーに近い状態で前を向く」だと思います。本来は。実態はウイングバック…特に右の選手が仕掛けてシュートに持ち込むことが多いですけど、右ウイングバックに固執しなくていい。よりゴールに近いところでプレーしているのは中央のFWでありシャドーですから。
Q.
- その状態になかなかうまく到達できない理由は?
A.
- まず、相手ゴール前にスペースがない状態からスペースを作りたいなら、相手をゴール前からどかすために、ボールを動かして誘う必要がある。一例としてはバックパスでGKやDFまで戻して相手の押し上げやプレスの起動を誘います。例の清水戦のプレビューからの引用なんですけど。
①バックパスをする |
②相手は陣形を押し上げるのでゴール前にスペースができる |
③押し上げなかったら中盤にスペースができる |
スペースを探して使えばいい(byポステコグルー) |
A.
- この点を踏まえると、気になるところはいくつかあります。まず①ゴールキーパーにバックパスをして、再びCBに渡して「やり直し」をする時にスムーズに移行できない。これはGKに問題があるというよりも、CBの選手のポジショニングや動き直しがまだ改善の余地ありだと感じます。
マジキチ日程で有名なプレミアリーグが正月も開催されているので、オフシーズンに是非見てほしいのですが、ヨーロッパのトップリーグのDFはGKにバックパスすると、必ず全速力でGKの左右に、ほぼ同じ高さで開いたポジションを取りなおします(どちらかがボールを奪う気がないような試合は別ですが)。この動きは札幌のDFとはかなり差があるので確認して欲しいです。
A.
- シンプルにこうだ!とは言えないんですけど、確実に言えるのは、基本的に前後で1(GK)-5-5の人数関係になって、「1-5」がビルドアップをする役割、前の「5」はボールを届けてもらうのを待っているって設計ですね。
- ここからは仮説ですけど、この「1-5」の中でボールを運べる選手、あまり得意でない選手が割とはっきりしていて、相手からしたら決め打ちして守りやすいのはあると思います。
- 田中駿汰選手は”プレス耐性”があり、相手に詰められてもパスコースを維持できる。あと福森選手は左足は言わずもがなですが、左を見せて右で出したりとかもあってチームメイトから信用されているのを感じます。あと高嶺選手はターンに自信を持ってますよね。
- こう考えると、これらの選手はアンカーとサイドなので、CB中央とGKは多少捨て気味でサイドに誘導して、アンカーを消しながら追い込むと出しどころがなくなるんですよ。たまにウイングバックが下がってきて受けようとするけど、下がると本来の持ち場から逸脱するのでビルドアップの目的達成にならない。
Q.
- ビルドアップができないと力技で解決することになる。
A.
- その通りです。だからジェイ選手への依存関係から簡単に脱却できないんですよね。ある程度適当に放り込んでも敵陣で基点を作ってマイボールにしてしまうし、ビルドアップできてなくても(相手ゴール前にスペースがなくても)クロスを放り込めばチャンスになるので、”プロセス”が雑でも許されてしまうという意味で。この点はウーゴヴィエイラ選手やアンデルソンロペス選手と比べても全く違う性質だと思います。
- もう一つは、チャナティップ選手も”力技”ですね。福森→チャナティップラインでまず自陣からピッチ中央付近にボールを逃がす。チャナティップ選手にはだいたいマークがついているけど、1人程度なら剥がして反転して前を向ける。フリーの状態を作れるのでこれだけでビルドアップが成立してしまう。このコンビが左サイドの低い位置からアクションを開始するので、コンサドーレの攻撃は最終的に右サイドが多くなります。左でチャナティップ選手が持つと、DFもそっちに誘導されて右サイドが空くので。
- ただ、2020シーズンはチャナティップ選手がシャドーでなくてトップで起用されることが多くて、そうすると中盤まで降りてくることができない。距離が遠すぎるから。だから、事実上このラインは解体されたも同然で、勿体ない印象はありました。ゴール前でクロスボールを待っていても何かいいことがあるわけではないので、チャナティップ選手はFWではないですね。
Q.
- 田中駿汰が加入して、2021シーズンはGKに小次郎が入る。
A.
- ビルドアップはGK1人で行うものではないですし、プロで数試合出場しただけの小次郎選手に過度の期待は禁物ですが、小次郎選手はGK→(CBを飛ばして)サイドのDFへのパスが巧いですね。この精度はソンユン選手や菅野選手よりも明らかに上だと感じました。タッチライン付近に立つ味方に臆せず蹴れると、相手のプレッシングを剥がして最終的にゴール前にスペースを作りやすくなります。
- 湘南戦の▼これは非常に良かったですね。1つ飛ばしのパスではないですけど、小次郎選手がギリギリまで相手のプレスを引き付けたことで湘南が前に出てきて、スペースが生まれて、金子選手の縦へのスピードが活きた。
3.3 敵陣でのプレッシング
Q.
- 終わってみれば、2020シーズンの”目玉”でもあったボール非保持について。
- 時期だったり対戦相手によってチューニングを行っていたけど、一貫して言えそうなのは、相手のシステムに合わせてこちらの枚数を調節して、ほぼ純粋なマンマークによるプレッシングを仕掛ける。
A.
- 武蔵が抜けた以降ならそうですね。それまでは相手に合わせてマッチアップを合わせるということはしていなかった。柏との開幕戦は、相手にマイケル オルンガ選手がいたからってのもあったかと思いますが、後方は数的優位を作ろうとしていましたね。
(第1節)純粋なマンマークではなく最終ラインは数的優位に |
- ただ、プレッシングの意識自体は強かったですね。ジェイ選手がアンカーとGKを見る難しい(というかジェイには無理な)役割を遂行するために凄く走っていました。もっとも完成度は滅茶苦茶低くて、これだと難しいなって思ったのを覚えています。
Q.
- 数的優位を作ることをやめたのは第7節からだった。
A.
- 武蔵選手がベルギー行きの便に搭乗し、相手はビルドアップの枚数調節が巧みなマリノス。”実験”の相手としてはあまり相性はよくない。ただ、チアゴ マルチンス選手と、スペースを突ける仲川選手が故障で欠場したのもあって3-1で勝利。勝ったこと、トップで起用された荒野選手が活躍したことは何よりも大きかったと思います。わかりやすい結果を得て、これで方向性が決まった。
- 過去2シーズンと比べるとこれだけでも革命的な成果ではありますね。一つは①カバーリング役(ミシャはリベロとか言いますが)を置かずにほぼ純粋なマンマークにした、もう一つは②トップにジェイ選手を外して、よりディフェンスで融通が利く選手を置いた。この2点はやろうと思ってもこれまでできなかったこと。
Q.
- この試合は勝ったけど、そこから長いトンネルが始まる。
A.
- チャレンジをした結果ではあったんですが、そのチャレンジの内容があまりよくなかったというか、結果を出すにはやり方を変えることになるだろうなと思ってました。
Q.
- プレッシングのやり方は3パターンくらいあったと思う。
A.
- 最初にトータルフットボール革命が勃発した、ホームでのマリノスや、6失点で敗れた川崎との対戦では、①センターサークル付近にプレス開始位置を敷いて、相手CBにそこまでボールを持って出てきてもらってから、DF背後の長い距離をカウンター、または右のルーカスフェルナンデス選手にすぐに渡して単独突破、という狙いだったと思います。
(第10節)センターサークル付近まで相手DFを誘導 |
Q.
- あんまりハイプレスって感じでもないし、2トップはスペースを守る役割もあったり、陣形がコンパクトなので最終ラインもカバーリングがしやすくて、2020シーズンの中ではマンマーク色がそこまで強くないやり方だった。
A.
- 問題は、相手ゴールまでの長い距離をどう攻略するか。マリノスは極端にラインを上げてくるのと、チアゴ マルチンス選手の不在、何よりも初見だったこともあり、荒野やルーカスのスピードで背後を攻略できましたが、ジェジエウ選手と谷口選手が揃っていた川崎相手には、小柏選手のスピードでも厳しかったので、前半で交代してしまいました。
Q.
- 武蔵がいないのでショートカウンターに切り替えたいって言ってたけど、結局このやり方だと相手ゴールまで50mあるので、走力があるFWがいないときついってことか。遅攻でシュートまで持ち込めない限りは。
A.
- あと、1列目がハーフウェーライン付近で待ってるだけで制限をかけられないと、相手が札幌陣内に入ってきた時からマークや守備の基準がズレた状態で対応が始まることになります。結局そのズレが解消されないままズルズル撤退して、あれ?また5バックでゴール前守ってるじゃん、って状態に陥りやすいのも言えると思います。
- 2つ目のやり方は、②とにかく1on1を作って敵陣に特攻して、高い位置からボールを奪いにいくものでした。「極端なハイプレス」だったとこのシーズンを記憶している方は、このやり方の印象が強かったと思います。
Q.
- 全然勝てなかった時期のやり方だな。
A.
- サンプルとしてはアウェイのマリノス戦あたりがわかりやすいですかね。これは厳しいなと思っていたのは、2トップ+トップ下(荒野選手)だけでボールを奪いきるような強度を求められているなと感じていて、マリノスみたいに自陣を使ってボールを動かせる、しかもGKがいるので必ず数的不利になるチーム相手に「奪いきる」のはすごく難しいんですよ。
- なのに、このチームはゾーン3(相手ゴールからの約30m)でボールを奪いきることに固執しているように見えました。
A.
- 疲れますし、あと例えばマーク対象のCBが開いてプレーしている時に、そこについていくので、そこでボールを奪えたとしても相手ゴールから離れている状態からスタートすることになる。結局そこでも一定のFWの能力が必要になるなって印象でした。
Q.
- 終盤戦に戦績が持ち直したのは、これらの試行錯誤を踏まえてのマイナーチェンジの成果だったと言えるのか。
A.
- その意味では意義があったと思います。終盤戦のやり方は、③2トップやトップ下は高い位置からマーク対象の選手を捕まえるけど、そこで奪いにいくのではなくて、ボールを自由に持たせないでGKやサイドバックへのパスを誘う。そこから次の受け手を潰してボールを奪う、というものでした。
A.
- そうですね。ミシャはこのやり方好きですね。結局この前からやっていたやり方が一番バランスが良かったと思います。無理して奪いに行ったり1人で2人に対応するような場面が生まれにくい。あと駒井選手がトップに入って、CBとバックパスを受けたGKを二度追いする役割を担ってもらっていたのが安定につながったと思います。
Q.
- で、最終的にこれも、ボール回収位置はそんなに高くならない。もしくは、GKにフィードを蹴るところまでは許すことになるので、自陣でそのフィードに競って勝つことが必要になる。
A.
- はい。結局「ボールを奪った時に相手DFがぐちゃぐちゃになっていて、容易にカウンターで一直線にゴールに進める」みたいな状況にはなかなかならないので、ボールを奪った後にそのボールをどうやって処理するか?という問題がつきまとうことになります。「無意味・無目的なボール保持」が一番危険ですから。
Q.
- その意味で、逆足ウイングはボールの行先を定義することに成功したと言える。
A.
- ミシャが「フロンターレ絶対許さないぞ」モードになった川崎戦以降は、ちょっと尻すぼみになってた感がありますが、奪った後簡単にゴール前に放り込むんじゃなくて、逆サイドに動かせばいいよってのを示せたのは、仰る通り「ボールの行先」を決めておくことで、無意味なボール保持からの脱却に一役買ったと思います。
3.4 ポジティブトランジション
Q.
- 「武蔵が抜けたからロングカウンターは捨てて他の攻撃パターンに活路を見出す」ってロジックだったと思うけど、多少「攻撃する距離の長さ」は変わっても、結局カウンターアタックができる走力のある攻撃的な選手の存在が重要なことには変わりないように思える。
A.
- そうです。遅攻でそんなに点を取れるわけではないから、速攻は依然として重要だったわけです。武蔵選手のポジションが、駒井選手とか荒野選手に変わりましたけど、彼らがそういう仕事をできるわけではないので。
- 寧ろプレッシングを導入してチャナティップ選手や他の前線の選手の負担が増して、ラスト30mでエネルギーを使えなくなって攻撃力はダウン。勝てなくてもいいならそれでOKかもしれないですが、やはり攻守は一体なのでそうはいかない。
Q.
- それもあって、ブラジルコンビ…アンデルソンロペスは本来キーになるべき選手だけど、ドウグラスオリヴェイラもかなりチャンスを貰っていたね。
A.
- ドドちゃんはめちゃくちゃ速いって感じでもないですけど、前を向いて走ると簡単に当たり負けしないので、スペースがあれば速攻の形にはなりますね。このあたりは、どうしても個人能力を頼りにしないといけないですね。
Q.
- 「ショートカウンター」って、いつぞやのロシア代表みたいな、もっとコレクティブというか、1人でなんとかしちゃうFWに頼るんじゃなくて、組織的にやるものだと思っていたけど。
A.
- 一つ言えるのは、札幌の場合、マンマークの純度が高くなると、選手が本来とりたいポジションから逸脱してしまうのでカウンターの際に走れなくなるんですよ。だから、中央から逸脱しにくいFWの選手が頼みになる。
- これまたマリノス戦の思い出に浸るわけではないですが、あの時は対面のティーラトン選手が無警戒だったので、ルーカスフェルナンデス選手は常に高い位置取りでいられた。だから彼へのサイドチェンジからカウンターアタックが始まっていました。
3.5 まとめ
Q.
- ミシャはボールを持ちたいのか?持ちたくないのか?って言うと、たぶん「持ちたい」って言うよね。けど、ボールを持つというか、奪いに行った後、そのボールの行先はあまり整理されてない。ちょっと雑。
A.
- だから、本当はボールをあまり持たないサッカーの方が都合がいいんです。支配率40%ちょいくらいの。
- で、奪った後はカウンターで完結して、攻撃が終了したらまた相手に持たせて制限をかけていく。あくまで制限はかけるけど、無理に奪いに行かない。下手にボールを奪っちゃうと、そのボールをなんらか処理しないといけないから。「等々力大勝利」はこんな感じのゲームだったと思います。
- 2020シーズンはボールを持っていない時のプレーがクローズアップされましたけど、こう考えると、ボール保持と非保持で一体的な整備が求められると思います。
- これが現状なので、ジェイ選手や福森選手みたいに、強引に「ボールの行先」(フィニッシュの仕方)を示せる選手はコンサドーレでは非常に重宝されます。
Q.
- もっともそれはどこのチームでもそうかもしれないけど。
A.
- ただ札幌の場合は依存度が高いですよね。
- ジェイ選手を外したらもっとボールを奪えるようになるかもしれないけど、奪った後のボールを何らか有効に展開できるわけでもないので、結局ジェイ選手をどうにかしてピッチに立たせて、強引に放り込んで処理してもらえる方がトータルで見た時にうまくいくなと感じました。
4.「後は決めるだけ」だったのか?
Q.
- 色々課題が見えて面白いシーズンだったけど、野々村社長が言うには「後は決めるだけ」。
A.
- それを言っちゃあおしまいですよね。野々村社長には、ルヴァンカップの決勝も、「武蔵選手がGKかわしてシュート決めてれば勝ってた」みたいに見えているのかもしれないです。
Q.
- 強がりかと思ってたけど、ウーゴ ヴィエイラはマジで「後は決めるだけ」な選手だったから、11月に加入したのは驚いたな。結局リリースされてしまったけど。
A.
- シーズン中、ずっと疑問に思っていたのでデータで検証したいと思います。
- ▼はFootball Labからデータを引っ張ってきて私がスプレッドシートに打ち込みました。goal/gameは多分ちゃんと計算したら小数第二位以降もあると思うんですけどご愛嬌ってことで。重要なのは、xGと1試合平均シュート数です。
※データはFootball Lab より引用
Q.
- xGは1度この記事でさらっと触れてるね。殆ど人の記事に乗っかってるけど…
A.
- 簡単に復習すると、1回シュートを打つたびに、そのシュートシーンがどれだけ「いい形だったか」を指標化して、シュートごとに積み上げます。シュートをその試合で10本撃っていれば、その10回xGを計算するし、どんだけボールを持っていてもシュートを撃たなければその試合のxGはゼロです。
- 1試合当たりのxGは、「シュートを撃ったのが平均的なシューター、相手が平均的なGKだったとしたら何点取れるか」と置き換えられます。▲の表だと、柏レイソルは実際のゴール数がxGを大きく上回っていて、これは「シュートを撃った選手が優秀」と言えます。
- 注意点として、xGには幾つかの算出方法があり、Football LabのデータはOptaのデータを使っているので、「相手DFのポジション」は考慮していないと考えられます。
Q.
- これだけ見ると、札幌のxGは1.57で4位だから、得点期待値は高かったと言える。
A.
- ただ、xGはシュートの度に積み上げられるので、これをシュート本数で割ると「シュート1本あたりのチャンスの質」が可視化できます。
- この数値は、0.12を超えているのが①川崎、②浦和、0.1を超えているのが③マリノス、④FC東京、次いで湘南、札幌、神戸、ガンバ、仙台、名古屋が続いています。
Q.
- どう解釈する?
A.
- 平均よりは上なのかもしれないですね。ただ、トップの川崎とワーストのセレッソ、清水くらいの差(0.2pt)だと明確に差がある、って言えそうですけど、0.1pt未満の差はデータの性質上、参考扱いとした方がよさそうです。例えばxGはPKなんかもカウントされるので、PKが多いチームは高く出ます。
- 後は、先の相手DFを考慮していない点など、データ収集方法自体もまだまだ改善の余地がありそうです。特に私の見方は、「札幌は相手DFが揃っている状態でクロスボールを放り込むことが多い」としているので。なので、このデータの解釈、ひいては『「後は決めるだけ」だったのか?』の定量的な解釈は読者の皆様にお任せとさせてください。定性的には、この記事で書いた通り、私は「決めるだけ」ではないと思っています。
Q.
- なんだか歯切れが悪いけど、ちょっとこのデータだけだと論じるのが難しいね。
A.
- はい。誰かが書いてましたけど、サッカーの定量化って難しそうですね。というわけで残りは次回!とします。選手個々に対する雑感で終わりです。
いつも拝読しています。
返信削除FOOTBALLLABのデータではパススピードが下から2番目でした。1,2位は川崎、マリノスなのでポゼッション型のチームを目指すなら致命的かと。
JFATVでは、森保監督がハーフコートゲームでボールがアウトしたらキーパーがボール持ってセンターバックが左右に開くところから再開。「もっと早く広がるよ!」とか言ってました。
ミシャはワンタッチプレーとかマンツーマンとか奇抜なことは大好きですが、ツータッチで正確に速く動かすとか普通のことのディテールを詰める作業は苦手なんでしょうか?
見ていただいてありがとうございます。
削除パススピードは、「必要な時に上げる」ものだと思うので、常に速いパスをする必要はない、なので定量データで良し悪しを見るのはちょっと難しいと思います。ただ、マリノスは緩急の使い方が巧いチームで、必要な時に速いパスを出せている印象はあります。川崎はどちらかというと、近い距離でパスを交換しているのが寄与していると予想します。
札幌の場合は、攻撃を加速させるフェーズでロングフィード(サイドチェンジ)をよく使うので、そこが入ってないのも影響しているかもしれません。全て仮説ですが。
その点では、今のサッカーは速いインサイドキックのパスをそこまで必要としていないとも言えます。
>普通のことのディテールを詰める作業は苦手なんでしょうか?
→これも一種の個人戦術になりますが、技術的(フィジカル的なものも含む)な意味合いでの細かい個人戦術を全体練習で仕込むのは限られているというか、監督の仕事ではないように思えます。そうではなく、戦術的な意味合いでの仕込みだとするなら、今のメンバーに最適なサッカーを追求した結果、現状それはそこまで必要ないからこうなっている、といった状況だと思います。