2020年10月6日火曜日

2020年10月3日(土)明治安田生命J1リーグ第20節 北海道コンサドーレ札幌vsベガルタ仙台 ~迫る発車時刻~

 0.スターティングメンバー

スターティングメンバー&試合結果
  • 札幌は宮澤が出場停止、ルーカスフェルナンデスが前節の負傷の影響で欠場。このルーカスの枠にアンデルソンロペスが入った格好のメンバーです。ジェイとの併用が続きますが、アンデルソンロペスがスタメン起用されたのは名古屋、広島、鳥栖、仙台。いずれもビルドアップに難があるチームなので、その辺りは考慮していると予想します。
  • 仙台は再開直後はターンオーバーに積極的でしたが、1週間空いたことで前節と同じメンバー。長期離脱していたクエンカは初のベンチ入り。蜂須賀、吉野、松下、富田、ジャーメイン、赤﨑と主力級が離脱中で、長期離脱者もいる等、厳しいやりくりになっています。

1.ゲームプランの推察

  • 仙台は渡邉晋・前監督が昨シーズン最終節後に残した苦言が印象深いですが、過去のシーズンと共通しているのは、序盤は理想とするチャレンジングなスタイルで入って、シーズン途中により現実的なスタイルに転換している(戻している)状況にあります。
  • 2020シーズンも1-4-3-3で、ワイドにジャーメイン、西村、ゲデスといった選手を配し、中盤3枚にするヨーロッパで流行りの?スタイルを意識していたんだと思いますが、現在は中盤センター2枚の1-4-4-2に戻している。これは、試合を見ている限りでは、CBとGKが関与する、チームとしてのビルドアッププレーに難があるので、中盤の選手が下がっての局所的な質的優位でしかボールを保持できない、それでも保持・前進できないとしたら、前線に放り込むことが多くなるので、ボールが行き来する展開であと、中盤センターに2人、専門職を置いておくシステムが安定する、ということだと予想します。
  • こうなると、ターゲットの長沢の起用がキーになりそうですが、スタートから出てこないのは、恐らくボールが飛び交う展開に最初からはしたくなかった、札幌相手に撃ち合いを挑むと収拾がつかなくなるからか?スローペースで進めたかったのだと予想します。
  • 対する札幌は若手中心のスカッドに切り替えてからも不動のスタメンだった、ルーカスフェルナンデスが欠場。このルーカスの枠でロペスが久々にスタメン起用された格好になります。右に白井、トップに金子を入れるという選択もあり、ロペスは所謂アンストラクチャーな展開が好きな選手ですが、この試合はロペスだけでなく、チームとして全般にあまりペースを上げないようにプレーしているように見えました。
  • 結果的には互いの意図が噛み合って、前半はスローテンポで進んでいったと思います。

2.ゲームの基本的な構造

2.1 役割の整理

  • 過去の対戦を見ても、仙台の1-4-4-2はマンマーク的な要素が幾分かあり、この試合も札幌のシャドーに対する対応の仕方を見ても、なるべく早くマッチアップを決めて対応しておきたいとの意図が見えました。
  • ミシャチームと言えば1-4-1-5。仙台の前線は、札幌の選手をこのように捕まえる想定でマークを考えていたと思いますが、
仙台が想定していた(であろう)マッチアップ
  • 道渕が対応するはずの、”異次元の左足”福森は、この日はいつものフリーダムな動きはかなり自重気味で、最後方でキムミンテと並んで自陣に”居残り”が多くなっていました。
  • 札幌は以下の配置をとり、ボールを運んでいたのは、キムミンテ、田中、それに高嶺。このビルドアップ部隊の重心が右寄りなこともあって、右サイドでボールを運ぶことが多くなります。多かったのは、田中→金子、そしてキムミンテ(ビルドアップできないと思われがちで、ドリブルで運ぶプレーは微妙だけど縦パスは非常に上手い)→駒井のラインから。所謂ファジーなポジショニングの駒井に対しては、仙台はマークが不透明で、度々ミンテのディストリビューションが成功します。
福森と菅の(いつもと違う)役割分担
  • 対する仙台はリトリート対応が中心で、1列目はハーフウェーライン付近~それよりも後方に引きます。恐らく、福森がもっと高い位置をとり、ボールに積極的に関与するなら、道渕はもっと前に出てきたのではないかと思いますが、福森が下がっていたので自分が捕まえに出るとスペースがガッツリ空いてしまう
  • なので、前半は様子見をしていたのではないかと思いますが、この道渕ー福森の関係性はこれで説明がつくとして、それ以外のマッチアップもあまり札幌に対してそこまで熱心にアプローチしてこなかった仙台でした。これはペース配分やゲームプランによるのではないかと思います。
  • フィードの威力がとんでもないので勘違いされがちですが、元々福森の役割は、狭義の「ビルドアップ(相手の第一DFを突破して敵陣にボールを届ける)をする人」とは言えません。
  • 福森はハーフウェーライン付近で待っていて、そこから必殺のサイドチェンジや、もうしばらく見ないですがチャナティップへの縦パスを配給する、更に高い位置を取ってクロスボールでラストパス…等と、ビルドアップの後のプレーが主であり、ボール保持からの攻撃の開始段階よりも次の段階での役割を担っていると私は認識しています。

  • 次にゴール前での狙いを考えます。仙台の最終ラインには、杜の都を照らすビースト・シマオマテが君臨します。上背はそこまででもないためスタンディングでの競り合いでは普通の人、なのですが、ジャンプ力が半端ないので、踏み切るスペースがある状態での競り合いだとかなりの苦戦を強いられます。
杜の都の番人
  • ですので、札幌は右サイドからのクロスではファー狙い、かつアンデルソンロペスがニアに走って仙台の右CBのシマオを引っ張り、シマオがいなくなったファーにスペースを創出して勝負することを意識していたと思います。
クロス勝負ならシマオを攻略したいのでニアに引っ張ってファー狙い
  • 根拠は起用されている選手の特性と、アンデルソンロペス、金子、菅といった選手の振る舞いです。ロペスはいつものセルフィッシュなアクションが殆ど見られませんでしたし、金子は左利きなので、右サイドで受けると左に持ち替えてからクロスボールを蹴る(右足で蹴るよりも時間がかかる)のは誰でもわかります。それでも右で、白井を差し置いて起用されている理由が(ヤング以外に)あると考えるべきでしょう。金子は仕掛ける際に常にファーサイドを確認してからプレーを選択しており、ファーに菅がいればクロス、菅がまだ上がってこれない状況では、切り返しから縦に仕掛けて右足クロス、等、プレーを変化させていました。
  • そして菅はいつ以来でしょうか?久々にウインガー、ワイドストライカーとして前線でプレーする機会が、試合を通じて非常に多くみられました。これには明確なロジックがあり、福森が攻撃参加を自重していたからです。
  • 「福森の斜め前」は代々、堀米悠斗選手、石井謙伍選手と舎弟(扱いできる)キャラクターの選手が起用されており、2016シーズン最終節後の優勝特番で、福森は堀米を「指示通りに動いてくれるからやりやすい」と語っていましたが、福森との補完性を非常に意識されて設計されています。
  • 菅は常に、福森が上がればその背後を守る役割を遂行しなくてはならなかったのですが、この試合は明確に、「菅が前、福森が後ろ」の役割になっていたので、サイドでボールを持った時に仕掛ける(失うリスクを周りがカバーしてくれる)こともできるし、金子のクロスに飛び込むこともできる。クロスに合わせるなら、菅を前に置いておく必要がある、との考え方があったのだと思います。

2.2 ナーバスなビースト

  • 仙台はスタートは1-4-2-3-1(前半途中から1-4-1-2-3に変わります)。札幌のマッチアップは説明不要と思うのであまり追求しませんが、駒井がボール保持時は右シャドー、非保持時は下がって荒野と中盤で並ぶ重要な役割を担っています。
  • ここで、仙台の選手特性から言えるのは、西村はウインガーというよりもゴール前で仕事をする選手なので、あまりサイドに張ることを好まず、道渕と比べると中央寄りのポジションからスタートすることが多かったと思います。
札幌のマンマークディフェンスが設定するマッチアップ
  • ボール保持がGK、次にCBから始まるとして、仙台のGKとCB2人は、札幌からマンマークでの監視状態にあるといえども、ボールを持つとナーバスになってしまう印象は否めません。この日、札幌のアプローチはそこまで強烈ではなく、小柏とアンデルソンロペスはCB2人の前に立ちますが、距離はそこまで詰めてこない。
  • なので、組み立てができる選手なら、まず正対してボールコントロール、相手のFWをぎりぎりまで引き付けてからリリースすることが望ましいですが、シマオも平岡もすぐにボールをリリース(前方向の味方選手に蹴る)することが多い。これはGKの小畑も同じ傾向です。
  • また、SBの柳とパラを経由することもあるのですが、いずれにせよ最終的な収まりどころがないのも課題で、この日の仙台のビルドアップは、遅かれ早かれトップのゲデスに当てる、と評しても問題はないと思います。そしてそのゲデスへのフィードは、空中戦ならほぼキムミンテがシャットアウト。

  • 冒頭に書いたように、このシマオと平岡を助けるために、濱崎と椎橋が起用されている面があると思います。ただ、この2人がボールを受けに下がってきても、札幌は決められたマーカー…荒野と駒井がついていくので、「フリーになる」という視点では状況は好転しない。寧ろ、局面に選手が増えてスペースを食い合うので、ここからボールを前進させるのは更に難しくなります。
  • 後述しますが前半、仙台のチャンスは主に右サイド、最終的には福森と道渕のマッチアップから生まれます。ただ、これは仙台がこのマッチアップを狙い撃ちしていたというよりも、センターラインの選手がいずれも右利きなので、正対されて縦を切られると、右足1本でのコントロールに切り替えて右方向にしかパスできない状態になっていた、と私は見ます。最終的に道渕が福森に対し、違いを見せつけていたのはその個人能力によるもので、道渕にボールが出た瞬間のシチュエーションは、「普通のDF」であれば問題なく対処できるものだったと感じます。
意図して右に展開というより仕方なく右に向かう
  • 道渕と福森のスピード勝負をもっと意図的に仕掛けたいなら、道渕にはより大きなスペースが与えられるように、たとえば左サイドに札幌の選手を集めてからサイドチェンジをするとか、ボールの質も足元ではなく裏に走らせるボールを使うなどが考えられますが、道渕が前半、右サイドでクリエイトしたチャンスはどちらかというと、イーブンな状態(それこそポジショナルプレーで~優位と言いますが)で、道渕に渡った瞬間はそこまで攻撃側優位なシチュエーションではありませんでした。それが2度のビッグチャンス(3度目は右サイドではなく中央でした)につながったのは、福森の対応のまずさによるものだったと思います。

3.ゆったりな攻防

3.1 「いつものサッカー」をさせてくれる仙台

※何度も書いた話をまた書きます。わかる方はスルー推奨
  • 札幌は7/26のマリノス戦以降、極端なマンマーク&高い位置からのプレッシングスタイルに変更していますが、これを実現するためには毎回相手のシステムにマッチアップを合わせる必要があります。開幕戦の際に指摘しましたが、従前の札幌は常に[1-3-4-2-1]で、ゲームの中で相手の形を見てから都度、捕まえる選手を判断するというやり方。
  • システムを[1-3-4-2-1]に固定しなくなったことで、相手がパスを繋いでボールを動かしている間に、都度選手間で「行け!」「任せた!」「俺が行く!」みたいなやり取りが生じる余地が極力省かれたのはプレスの強度向上において重要な変化でした。
  • 一方でその弊害として、例えばこの日のような[1-3-1-4-2]システムだと、ウイングバックが上がった時に、ミシャが好む5トップではなく4トップ気味のシステムになる。このギャップを解消すべく、この試合は駒井が守備時はインサイドハーフで仙台の椎橋をマーク、攻撃時はシャドーに上がる変則的な役割を担っていますが、このような「変形」の余地がでかすぎる、かつその変形に関与する選手にあまり機動力がないと、攻守で形を変えるシステムはうまく機能しません。典型的なのはジェイ・ボスロイド様で、相手が4バックのチームでCB2枚だと、ジェイは右のFWで守備をスタートしますが、ボール回収後は中央の1トップにポジションが変わります。ただ、ジェイはこの切り替えをあまり迅速に行えないので、その間、札幌はボールを保持しているにも関わらず、トップが「消えている」状態になります。
  • なので、ボール回収後は素早く右ウイングバックの前方のスペースに展開して速攻を仕掛けるといった、「消えている」ポジションの選手が関与しない形での攻撃に限られてしまいます。根本的にマンマーク戦法は可変システムとあまり相性が良くないのは事実です。

  • が、この日は仙台が非常にスローペースでプレーをします。
  • 「仙台が、例えば2.2で指摘したように、ビルドアップを割り切ってトップのゲデスに放り込む。ミンテが競り勝ってトランジション。札幌がボール回収」とする展開になったとします。この時に、札幌は守備時の基本である1-3-1-4-2でプレーしている。駒井は中盤からシャドーに、小柏はトップからシャドーに移動する必要があるなど、この移動している最中は基本的にプレーに関与できないので「消えている」状態です。
  • なので、トランジションの最中は、札幌は限定的な選手しかプレーに関与できない。5人とか、6人とかでプレーしないといけないのですが、この時に仙台は札幌に即時奪回のプレスを仕掛けるとかはなくて、選択はほぼ常にリトリートでした。
  • 札幌としては非常に助かる展開で、ボールを失うリスクは殆ど感じない。駒井も小柏も、ウイングバックも安全にポジションを変えることができます。シュートを撃つとか、ゴール前に持ち込むまでに、まずボールをキープして味方が適切なポジションをとる必要があるのですが、こうした仙台の振る舞いによって、この部分は問題にならなかったことは特記事項としておきます。

3.2 やることは一つしかない

  • 序盤は、仙台のおかげで快適にプレーできる札幌の方がシュート機会は多かったと思います。2.1に書いたように、道渕に生じていた問題から、福森は敵陣でも余裕でボールを持てる。そしてディフェンスで最も重要な、ボールホルダーに対するプレッシャーがイマイチな仙台に対し、福森の左足が何度かキーパスをディストリビュートします。
  • 仙台は最終ラインがまずまず高めで、これはおそらくサッカーの志向性、特に、前線にマイケル・オルンガのようなカウンターアタックマンがいないので、ある程度高い位置でボール回収から攻撃したいのだと思いますが、ボールにプレッシャーがない、ラインは高いとなると、札幌としてはやることはわかりきっています。
福森が後ろから出てきたときの対応もルーズだった仙台
  • 札幌は小柏、菅、金子、駒井がたびたび裏に飛び出します。アンデルソンロペスは含まれていないのですが、ロペスは中央で「待つ」役割に徹します。ロペスが動いてしまうと仙台はラインを下げるので、FWはDFのピン止め役に使って他の選手が飛び出す方が効果的だったためです。
  • 蹴れるに加えて「遠くを見れる」福森のブリリアントなパスから先制点が生まれます。25分、金子がパラの背後から飛び出すタイミングで絶妙な浮き球パス。金子が頭で折り返して、アンデルソンロペスが中央で押し込んで札幌が先制。ジーコが代表監督時代によく、クロスボールのことを常に「パス」と表現していて、通訳の問題かもしれませんが非常に印象深かったのですが、それはどうでもいいとして、これだけシチュエーションが整ったときの福森は、一か八かのギャンブルではなく確実性の高いパスで貢献してくれます。

3.3 五分五分では足りない

  • 冒頭に書きましたが、仙台のチャンスは道渕ー福森のマッチアップから前半だけで3度、生まれます。
  • 2度は道渕が右サイドを突破からのクロス。2度とも道渕がすごく優位なシチュエーションでどうしようもない、というよりも、純粋に1on1の判断の誤りで裏を取られたという印象を受けます。あれで45分のうち2度も破られるなら、カバー役のいない純粋なマンマークディフェンスなんて絶対無理で、それこそビエルサ式のようにスイーパーが1人必要だと思います。それくらい雑な対応でした。
  • もう1度は41分、中央で、椎橋のパスに道渕が抜け出して福森が倒してしまってFK。パラのシュートは小次郎が素晴らしい反応で掻き出します。仙台はこの中央での形を狙っていたわけではないと思いますが、札幌としては、マンマークを利用されてDFがみんなポジションをずらされている、またこの時はアンデルソンロペスがGK小畑を深追いしたところからマークがずれている。これらは再現性の高い失点・リスクシーンなので要注意だと思います。

  • アンデルソンロペスの得点の後くらいで、仙台は1-4-1-2-3に変更します(得点シーンは4-4で守っていたと思いますので)。これで、椎橋がアンカー、濱崎が右、関口が左インサイドハーフで、この配置が明確になります。札幌の対応は、そのままマークを維持。駒井がトップ下、左に荒野が濱崎、左利きの高嶺がそのまま、関口をマークするマッチアップ。
  • 本来は荒野を右、そしてキムミンテと福森の、ビルドアップ時の補佐役(補佐というか主役かもしれません)である高嶺が左の方が良いのですが、先述の通り、仙台の非常にゆったりとした対応によって、この左右の微妙なアンバランスはほとんど問題になりませんでした。ノープレッシャーであれば、選手は好きな時に都合のいいポジションに移動が可能です。
前半途中からのマッチアップ

4.無意識のペースアップ

4.1 2トップへの変更で狂った基準

  • 後半頭から再び仙台が動きます。西村をトップに上げ、ゲデスとの2トップに変更。そして、後半初めのプレーで追いつきます。
HT明け~
  • 仙台のキックオフでスタート。ボールが行き来する展開から、札幌は中央でこの日、ポストプレーが冴えていたアンデルソンロペスが収めて右の金子へ。いきなりオープンな展開になっており、金子の前にはスペースがあったので大きく持ち出して加速、ドリブルを図りますが、パラが一気に間合いを詰めてボール奪取。この後仙台がゴール前まで運び、最後は浜崎のシュートが札幌DFに当たったリバウンドをゲデスが詰めて同点。
  • 結果的には上記の、金子がボールに触ったところが明確に、札幌がゲームをコントロールできる瞬間でしたが、前半は「いつ、どこに向かって仕掛けるか」非常に明確に狙いを持ってプレーしていただけに、ここで、イージーに突っ込んでボールを失った判断はフットボール的には非常にチープだったと感じます。全般に、ドームの手拍子はこのような安直なペースアップを選択する判断を助長しているように思えるのは気のせいですよね。
  • 3分後に仙台が逆転に成功します。まだボールが落ち着かない中、仙台はパラが一度GK小畑に戻して時間を作ります。この判断は先ほどの金子と非常に対照的だったと思います。
  • 小畑から、左に走る西村へのフィード。これは2トップの利点で、2人が役割を固定せず振る舞うことができます。西村がキープし、最後はパラから関口へ。後半頭から左に回っていた、関口が対面の金子を縦突破で揺さぶって左足で抜き切らない状態からクロス。ゴール前には札幌3バックと仙台2トップ、このマッチアップの典型的なシチュエーションでしたが、関口の素晴らしいボールがミンテを越えて、福森の前に入っていたゲデスがヘッドで合わせて1-2。
  • 札幌はまず仙台の2トップへの変更に対処できていなかったと思います。それまで1トップだと、ゲデスのみが前で張っており、西村や道渕は遅れて入ってきます。時間差があることもあって、札幌は先にミンテがゲデスを見ていればいい。田中と福森は、あくまで対面の選手をケアしていればよかったのですが、3バックに対し2トップで並ばれると、一般にはそのポジションによって誰が誰をマークするかが変わってきます。
  • ある意味「気付かないふり」をして、ミンテがゲデス、田中が西村でもいいし、実際そのイメージもあったと思いますが、結局ゴール前に2人入ってくると対応に3人は必要になります。この時、基本は「味方の背後を守る」。ミンテは最後、西村が田中の背後に入ってきたのでゲデスを離して意識は西村へ。ミンテの背後は福森が守ることになりますが、ここは悪くないポジションを取っていました。ですので、最後は関口のアシストを褒めるべきだと思います。
  • 57分の3点目は浜崎のCKから平岡。これは割愛します。

4.2 ゴールはボーナス

  • スコアが1-3となってから4分間、体感的には殆ど間がないシチュエーションで札幌が続けて2ゴールを挙げて追いつきます。
  • 前半、裏取りから1発でやられてしまった反省もあってか、リードを奪った後の仙台は引いて守っていました。ゴール前のスペースを消されても、この日の札幌の攻撃が勢いを失わなかったのは、一つは①右サイド、仙台の左SH関口の前方のスペース。仙台はここに2トップがスライドしたり、SHが前に出て対応はせず、リトリートでパラと2人でサイド封鎖の選択を取っていましたが、これによって駒井と田中というボールを散らせる2人がかなりフリーな状態でプレーできます。なので、ミンテが出しどころを失って困ってしまうこともありませんでした。
  • もう一つは②アンデルソンロペスのポストプレー。小柏が左、ロペスが右のこのコンビは非常に仙台相手に刺さっていました。理由を一つ挙げると、この並びだとどうしてもシマオが小柏、ロペスが平岡を見る対応になりがちで、恐らくシマオ相手だとパワーでの優位性が消失してしまうロペスは、平岡相手にはそのパワーとサイズ、特にリーチの長さを存分に活かしてボールを何度も収めます。そして普段ならボールが入ったら後は誰にもパスをしないでゴールに突っ込んでいってしまうところですが、今日のアンロペはふた味くらいは違う。ボールをキープして、責任を持って味方に預けるところまで完璧にチームの一員としてプレーしていました。
  • 仙台の2トップも札幌は嫌でしたが、札幌の2トップも互いに得意なプレーが被らず、かつそれでいてこの日はロペスもいいタイミングで動いてくれるので、非常に機能していたと思います。
ロペスに収まると左サイドが空く
  • 右サイドでボールが動くと、仙台DFの意識はそちらへ。反対サイドで、この日は福森先輩の秘書業務から解放されている菅はスペースを享受した状態で待ち構えます。2点目、3点目とも菅の突破から生まれていますが、単に「この日の菅ちゃんは積極的でよかった(^-^)」で終わるのではなくて、こうした構造には普段と対比しつつ注目して欲しいです。

5.オープン合戦の鎮火

  • 慌ただしい20分が経過して仙台は長沢と石原を投入。長澤は切り札的な位置づけで、タイミングを見ていたと思います。
  • 札幌も深井を69分、白井を75分に投入します。深井は道渕をケアしながらバランスを取る。白井を右、金子をシャドーに配置し、得意とするオープンな展開から勝負を決めに行った交代だったと思います。
75分~
  • 札幌にとって想定外だったのは、直後に福森が足を攣って交代を余儀なくされたこと。何故なら右で機能していた田中を左DFに移さざるを得なくなったためです。進藤はどちらかというとフリーロール的、ゴール前以外でボールにあまり関与しない不思議なDF化しており、ここは田中に右にいて欲しかったと思います。
  • ラスト10分は札幌の右、白井からの仕掛けが主体になります。やはり金子はシャドーだといまいちスペースを得られず沈黙してしまう。最後は札幌の選手が続けて足を攣る不運もあって、3-3のまま終了します。

雑感

  • お互いに「お金がないです」とよく言っているチーム同士の対戦は、戦術的には物足りなさを感じました。札幌も仙台も、ゲームの中で結構な部分を「割り切って捨てている」かのようなチーム作りになっており、その捨てている部分を互いに放置しても、致命傷にならないクオリティがお互いの現状かと思います。
  • あまり安直なまとめをするのはどうかと思いますが、Jリーグのトップクラブはそうした「捨て」がかなり少なく、トータルで戦えるチームになりつつあり、このままでは両チームとも発車時刻に遅れ、中期的なレースに置いていかれてしまう懸念を感じました。
  • 札幌は、アンデルソンロペスが遂にFWっぽいプレーに目覚めて、チームの中で機能していた点は好材料だったと思います。

3 件のコメント:

  1. いつも拝読しています。
    同数マンツー守備はミシャ式可変ビルドアップと矛盾しているので、結果を出すには妥協案を探る必要があるのかなと思います。

    文中では足を攣った選手が多かったことを不運と書いていましたが、運動量の効率が悪いからという理由もあるでしょう。
    ミシャやフロントはこの問題に気付いていて放置していて、今シーズンはハイライン、ハイプレス対人守備強化期間と位置付けているのか、来季もこのサッカーで行こうとしているのか?
    どっちなのか謎です。(個人的にはこのサッカーで降格枠4だと落ちるぞと心配です。)
    野々村社長は今季降格なしを村井チェアマンに提案した本人ですから、若手育成や戦術トレンドの先取りとかいいながらチーム人件費削減のため中心選手の出場機会は減る状況を設定した気がします。中野の起用も来季カウィンの契約をどうするか見定めるためだったでしょう。
    現在の極端なハイラインマンツー守備のどこに問題があるのかは、このブログで整理できましたが、なぜ負け続けてもこの戦術を採用しているのかについて、想像でも良いので考えを教えてください。

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    1. 見ていただいてありがとうございます。

      >なぜ負け続けてもこの戦術を採用しているのかについて、想像でも良いので考えを教えてください。
      う~~~~ん、、、こういうところを「考える」ブログだったはずなんですけど、この話を一発ですぱっと説明することは難しいですね。
      確実に言えるのは、武蔵選手くらい完成度が高いFWをチームに加えることはもう現実的に無理、(Twitterブロックされそうだけど)ジェイ選手は下り坂、アンロペ選手はまだ計算できないので、前線はけっこう問題がある。
      あと、2019シーズンまではリトリートしか基本的にできなかったので、プレッシングで勝負したいチームにはうまくいかないときがある(川崎との等々力7-0が典型)。
      これらがイコール極端なハイプレスにはならないと思いますけど、これまでにないオプションはあってもいいと思います。現実的には、プレス強度は今後徐々に下がっていくと予想します(ここ2~3試合もそんな予兆ありますよね)。

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    2. なるほど。オプションと割り切っているなら安心です。
      長期駅には前線に守備貢献度が高い選手を並べてディフェンスラインを高く保ちながら最終ラインで+1人で守りたいなら3バックも4バックもできた方が良いですね。ミシャ式変形後は4-3-3みたいになってますし。
      一見相性が悪い変形システムとマンツー守備ですが、3421も433もやれちゃうよという完成度になるとむしろ強みになります。
      ユースは4バックで浜、中村洞爺は4バック要員で持て余していますから、うまく融合しないかなと。

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