2024年9月15日日曜日

2024年9月14日(土)明治安田J1リーグ第30節 北海道コンサドーレ札幌vs東京ヴェルディ 〜「なし」と「アカン」の狭間〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • ヴェルディは2週間ぶりの公式戦。不振の川崎がネガティブな方面でのサプライズだとしたら、このシーズンのポジティブなサプライズを提供しているのは町田とこのヴェルディでしょうか。予算的にはヴェルディの方がインパクトが大きいかもしれません。ここまで29試合で10勝11分け8敗で7位につけ、特筆すべきはリーグ戦で連敗なしという点でしょうか。
  • またヴェルディは主力に期限付き移籍の選手が多く、これはかつての価値観だとクラブの資産にならないということであまり推奨されないやり方かもしれませんが、近年J1の若手〜中堅選手の海外移籍が活発になっている中で、(仮に完全移籍で保有しても)どうせ短期でいなくなるなら期限付き移籍でも良い、とする考え方は他クラブも参考になるかもしれません。
  • 「監督や選手と長期契約することで連携や戦術が深化しチーム力の向上になる」という考え方は散見されますが、結局はその中身次第ですし、何年監督をやっても一向に向上しない事例も見受けられます。年数の問題というよりはチームづくり、フロントと監督コーチと選手とで戦術的な要求水準を合わせることのほうが余程重要なのでしょう。

  • さて、ヴェルディのシステムは序盤戦の1-4-4-2から1-3-4-2-1に切り替えて以降はこれを継続しており、ここ最近はシャドーの山見、中盤センターの齋藤功佑といった選手の重用が目につきます。特に山見は、シーズン後半になるにつれ、ボールを持たない戦い方主体にシフトしつつある中でそのスピード評価されているのでしょうか。

  • 中断期間にルヴァンカップ2試合を消化したコンサ。この2試合を回避した大﨑、近藤、カップ戦2戦目で負傷交代したスパチョークを含め、浅野以外は現状のほぼベストメンバーが名を連ねました。
  • カップ戦で2ゴールした菅ですが、右の近藤は3連勝した直近のキープレイヤーですし、スパチョークを使うなら青木も左、ということでベンチスターとは妥当でしょう。気になったのは、配信でも言及しましたが、田中克幸はベンチに入ってても良いかと思ったところでした。

2.試合展開

試合を通じた構図:

  • まず総括としては、DAZNのハイライトを見ればこの試合の主要なゴール前でのシーンは全て網羅できるというくらいに、この試合はゴール前での局面が少なく、人によっては塩試合と言うでしょうし、膠着した時間帯が続いたと見ることもできるかもしれません。個人的には非常に面白い展開で眠くなるようなことはなかったのですが。


  • その膠着した時間帯はどんな感じだったかというと、予想通りヴェルディが5バックで自陣に撤退し、コンサにボールを持たせる展開が大半でした。
  • ヴェルディは1トップの木村がコンサのCBどちらかにボールを持たせて、アンカーに出させたところで森田か齋藤功佑が前に出て、アンカーに前を向かせないようにします。

  • 通常この手の5バックで撤退するチームだと、10年前ほどは1トップだけを前に置いて撤退してひたすら殴られまくるけど耐えるか、シャドーの選手が上下動して相手のDFにプレッシャーをかけるか、というパターンが多かったですが、ヴェルディのやり方はよりマルチタスク的と言うか、柔軟というか、中央の森田や齋藤功佑がポジションを捨てて中央のスペースが空くことをあまり怖がらないように感じました。
  • ですのでコンサとしては、ヴェルディの中央が空きがちで多少強引でも縦パスを通して勝負できそうな感じはしましたが、前半のコンサは(後半も大﨑が下がるまでは)非常に慎重で、そうした選択はとらず後ろでパスを回していることが多かったです。
  • これはそういうゲームプランなのでしょうけど、結果論ですがよりダイレクトな展開を何度も見せてもよかったかもしれません(特にヴェルディの中央のDF千田がファイタータイプで、仕掛ければファウルトラブル等も誘発できたかもしれませんので)。

  • そしてコンサが中央で森田や齋藤功佑のpressingを気にして、サイドのパクミンギュと馬場(髙尾は早々に負傷交代)にボールを逃すというか押し付けた瞬間をヴェルディは狙っていて、シャドーがパクミンギュや馬場にpressingを連動させながらDFを押し上げてコンサの前線の選手をヴェルディゴールから遠ざけます。

  • 60分過ぎにコンサが2枚の交代カードを切るまでの構図はずっとこんな感じで、コンサはこれだけでボールを前線に送ることがほぼできず、しかしヴェルディもあまりリスクを冒して前に出てこないのでスコアは0-0、という展開でした。

タッチ数8の衝撃:

  • 試合後にSPOTERIAのポストが流れてきたのですが、
  • これによるとヴェルディのFW木村は88分出場でタッチ数が8。
  • このタッチ数にはVARで取り消しとなったゴールの際のドリブルや切り返しはノーカウントなのでしょうけど、集計はちょっと怪しいところはありますが、それでも集計上わずか8回のボールタッチ数にも関わらず、木村はこの試合、コンサのDF岡村と大﨑を圧倒します。実質的な監督でもある後者には、カードトラブルを誘発し64分で交代に追い込みます。

  • 大半の時間を1-5-4-1の陣形でプレーするヴェルディに対し、コンサはいつも通り最小限の1枚か2枚のみを残して木村番とし、この状況で1トップ、事実上1人しか前線におらず味方が常時サポートしてくれる状況ではないので、1人で木村ができることは限られます。
  • しかし木村は大﨑を背中で簡単にブロックするパワーと、そこからターンして裏に抜けるまでを1人で遂行する柔軟性やボディバランス、スピードを兼ね備えており、その上でヴェルディは木村がジャンプして頭で競り合うようなボールはほぼ使わず(ジャンプするとそれだけでほぼ他のアクションができなくなる)、木村が大﨑をブロックしてそのままターンから突破を狙えるようなボールの配球を心がけていました
  • コンサがDF2人を残している時、木村は大﨑と岡村どちらに寄っていき、どちらとマッチアップするか対応を決められる状況でしたが、よりスピードや対人性能に難がある大﨑を狙うことで、これまでコンサの無秩序な試合運びをカバーリングで救ってきた大﨑のところがこの試合は一転してボトルネックというかウィークポイントになります。

  • 両チームを通じて前半のほぼ唯一と言って良い枠内シュート、決定機は30分頃に、木村が競り合ったボールを拾ったところから山田が左足ミドルシュート。ややDFブラインド気味でしたが菅野がさすがの横っ飛びセーブでゴールを許さず、0-0で折り返します。

大﨑周辺のトランジションから:

  • 後半コンサはスパチョーク→菅。SPORTERIAの集計ではボールタッチ16と、一応木村の倍をカウントしているスパチョークですが、殆どゴール前でのプレーがないまま戦術的交代となりました(怪我ではないとのこと)。

  • 後半立ち上がり、46分にコンサは武蔵の中央でのキープと突破、スルーパスから駒井がGKと1v1を迎えますがマテウスがセーブ。
  • 50分にヴェルディは大﨑と岡村のところでの不用意なパス交換を引っ掛けてショートカウンターからシュートもゴールを脅かすことはできず。
  • 直後のCKを菅野がキャッチから、駒井の高速ドリブルで敵陣に侵入し(このセットプレーをGKキャッチからの即効は以前トレーニングしていました)、青木にボックス内でパスが渡りますがシュートには至らず。といった展開が続き、後半立ち上がりこのままオープンになるのかな、と思った54分にヴェルディが先制します。


  • 大﨑の齋藤功佑へのマークが外れているのはなぜだろうと思って見返しました。
  • ↑の動画では見切れているのですが、直前のプレーはコンサの放り込みから落ち着かない展開を森田がボールを拾ってスローダウンさせたところから。まずシンプルに大﨑は帰陣が遅れた(ジョグしていましたが)というのと、駒井は先にポジションに戻っていて、その駒井が左DFの谷口に食いついたところで完全に齋藤功佑はフリー、というのが説明になるでしょうか。
  • 正直なところ大﨑、駒井、馬場、その他…の選手でどう対応するのかイメージを全然共有できていないのでそりゃ無理だろ、って見えますけど、そもそも「1v1で頑張って対応する」以外に約束事がないのでこの状況で何が正解なのかを論じるのは難しいです(この話は何度もしていますが)。ただ最後の馬場のスライディングでの対応は、個人戦術というか”習慣”が表れた感じはします。

  • ヴェルディはこの得点直後に木村→染野、山見→松村で両シャドーを入れ替え。得点するために前線の選手がポイントになるでしょうし、そもそもベンチに明らかに後ろだなという選手がDFの林しかいないので、前の選手のカードは早めに切ってくることは想定されましたが、木村はまだ引っ張ってシャドーを早めに交代させました。


「なし」:

  • この交代から約10分後、64分にコンサは青木→ジョルディ、大﨑→バカヨコ。この段階では武蔵が右シャドー、ジョルディが左シャドーでした。
  • そして70分に足をつった武蔵→宮澤で岡村をFWにするというまさかの采配を見せます。この結果はどうだったかというと…「見る価値なし」としておきます。


  • ひたすら前に放り込んだり、放りこんでくれない時は下がって岡村が頑張ってポストプレーしたり…という感じで、おそらく何らか前線に届けた後はサイドからのクロスボールで長身選手3人の空中戦でなんとかシュートを打ちたかったのでしょうけど、クロスボールの質以前にそもそもクロスボールまで到達した回数が何度あったでしょうか
  • パワープレーというのは適当に背が高い人を並べて蹴るだけでは成立しないということ、町田ゼルビアのすごさを逆説的に証明するためにコンサというチームが存在するかのような惨めな25分間を見せつけられることとなりました。

  • 宮澤はアンカーとして大﨑と併用できるのが今のチームの強みというか、大﨑加入で向上した点だと思っていましたが、岡村をFWにしたことでCBでの出場となります。
  • 80分頃に木村が1人でハーフウェーライン付近から突破して宮澤をかわして2点目。と思いきやこれは直前のファウルで取り消されます。しかしその後もヴェルディは何度かカウンターを繰り出し、ATにチアゴアウベスのゴールで2-0。

雑感

  • 試合内容については論じることが難しいというか意味がない気がするので、こっちに雑感として色々書くようにします。

  • まず、コンサが直近リーグ戦で3連勝を飾った相手はいずれも4バックで、特に鳥栖と磐田はコンサの右WB近藤に対してかなりルーズで、近藤は簡単にスピードに乗って右サイドで仕掛けることができましたし、鳥栖に至っては左SBが19歳のFW登録の選手でした。
  • ヴェルディはこうしたチームとは対応というか準備の水準が根本的に異なっていました。簡単にいうと直近で対戦したチームのようにザルではありませんでした。5バックで枚数を確保してスペースを埋めた上で、左WB翁長は比較的前に出て行きますが、近藤がオープンになりかけた時は左CBの谷口が出てケアし翁長は急いで戻ってくる。
  • そして消極的とも言えるかもしれませんが、コンサの武蔵や近藤がスペースに突っ込めるようなシチュエーションを作らないように不用意なボールロストを避ける。そうして我慢した上で大﨑のカードトラブルなども含め有効打を打っておき、コンサのルーズなディフェンスを突いて速攻から先制、というヴェルディには理想的な展開だったと思います。

  • コンサのひどさというか、おそらくスカウティング担当というか相手チームの映像を見ている人はいるのでしょうけど、それが対策としてほとんどチームに活かされていない感じがするのは相変わらずなのですが、少なくともヴェルディが5バックでスペースを消してくることは試合を見ればわかりきっていたはず
  • そこに対して何ら策を用意していないのは(一応、岡村のパワープレーという策はあったのか…)、「格付けチェック」でいうところの「絶対アカン」(牛肉、豚肉、カエル肉でカエルを選ぶ)か、その手前の「映す価値なし」のようなもので、まずこのレベルのチームが日本のトップリーグに居続ける資格はあるのか、私だったらスカウティングをまともにしていない時点で「絶対アカン」レベルかな…と考えてしまいます。

  • ヴェルディがこうしたチームなのはわかりきっていたので、個人的にはミドルシュート…浅野はいませんが、スタメンならスパチョークや青木、武蔵、後から出てくる選手なら菅(カップ戦での右サイド起用はもう一度試す価値はある)、田中克幸といった選手がキーになるのでは?と考えていましたが、克幸は(怪我なのかもしれませんが)メンバー外で青木も早々に下げてしまいました。


  • あとはコンサ得意のオープン展開で撃ち合いに持ち込むなら、ジョルディはそういう使い方をするのかと思っていましたが、適当に前に並べて放り込んでヴェルディの選手とお互いにイライラするだけで、ジョルティが得意そうな展開に持ち込むこともしませんでした。
  • この点に関しては選手を信じられない何かがあるのでしょうか。これ以上はチームについてよくわからないのでこの辺にしておきます。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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