2024年6月27日木曜日

2024年6月26日(水)明治安田J1リーグ第20節 FC東京vs北海道コンサドーレ札幌 〜シングルタスクの集合体〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:


  • FC東京は土曜日の湘南戦から中3日、コンサは日曜日から中2日。移動も含めてコンディション的には結構差がありそうな状況での後半戦初戦。
  • FC東京は両SB(中村帆高、長友)と中盤センターの一人(小泉)、右ウイング(仲川)をターンオーバー。CBはカップ戦で鼻骨骨折の木本がフェイズガードをつけて戻ってきました。
  • コンサは近藤が体調不良とのことで、右に田中宏武。小林が出場停止で田中克幸ですが、駒井とどちらかがシャドーに入るというよりは、珍しく完全にインサイドハーフのような役割になっていたと思います。

2.試合展開

マンツーマン対策:

  • 試合を通じてのボール保持率(スポナビ集計)は53:47で、珍しくコンサが終始相手を下回る、FC東京がボールを持つ展開になりました(だいたい持たされたり、オープンな展開になるとコンサがボールを持ったりで支配率だけは上回るのですが)。

  • コンサに対するFC東京のゲームプランは、札幌ドームでの対戦と割と似ていて、コンサのマンツーマンでの対応を長い距離のスプリントで剥がしてスペースを突こうとしていたと思います。
  • 相違点は、札幌ドームでの対戦の際はディエゴと仲川がスタメンで、荒木&松木と比べるとディエゴの方がパワーはあるのですが、アクションの量は荒木と松木の方がチームに好影響を与えられるように見えます。
  • 特にコンサはかなりシンプルなマンツーマンでの対処が多く、荒木が自陣に下がってきても岡村はそれについてくるような対応も見られたので、ディエゴの起用時以上にスペースをつくる、あるいは岡村をゴール前から動かすことはこの日は容易だったかなと思います。
  • その他、ボールと人の動かし方としては↑に図示するのですが、逆サイドのSBが中に入って、原川がアンカー、高とそのSBが長い距離を走って前線に飛び出す役割。
  • ウイングも対面の選手とボールを持って勝負するよりも、基本的には味方のパスに合わせて長い距離を走る役割でしたが、ウイングが中央に入ってくるのはかなり自重している印象で、おそらくギリギリまでコンサのDFを広げておきたかったのだと思います。

  • 一方、FC東京はここまで19試合で29ゴールを挙げていて数字的にはまずまずなのですけど、このメンバー("9番"不在)でこうしたゴール前から選手がいなくなる構成だと、どうしてもゴール前でいかにプレーするかという点は課題になるだろうなと思ってみていたところです。
  • ゴール前に走ってくる選手が松木や高、SBだと、(最前線でかつDFの視界から消えやすい)ウイングよりも、マークを引き剥がすために走る距離が長くなりがちですし、何回、何分の時間帯までアクションできるかもポイントになるのでしょうけど、後半にディエゴや仲川といった選手を投入して前輪駆動型に切り替えることで解決していたと思います。
  • そしてウイングが斜めに走ってきた時のコンサの対応は、髙尾が特に走るコースを消すのが上手くて(本来これが得意なはず)、左の俵積田には縦突破は許してはいたものの、一番危険なスペースは上手く守れていました。中村桐耶と安斎のところは、中村の頑張りもありましたけど、岡村や駒井、馬場のカバーリングにも頼りながら対処していたと思います。

田中克幸の起用と長谷川のポストプレー:

  • コンサはいつも通りマンマーク基調で守ってはいたものの、FC東京が全然ボールを持てない状況ではなく、これはいくつか複合的な話になってくると思います。
  • まずFC東京の配置は↑のような形でしたが、コンサはファーサイドのウイングバックをかなり早い段階で最終ラインに落として枚数確保に努めていた(図では菅のところ)ので、FC東京の絞ったSB(白井)が簡単にフリーになるし、そのSBがボールを中央で持ったり、スペースに走った時にマークするのは大体駒井が引き受けていたので、駒井が本来見ていた高や原川と含めてマーク関係が曖昧になりやすい

  • そしてその駒井と並んでいたのがプロ初先発の田中克幸で、カップ戦ではプレータイムをそこそこ確保していますが、まだJ1ではまとまったプレータイムを得られていない。
  • 彼はマンツーマンで駒井のようにずっとついていく、何度もアクションするのはフィジカル的に厳しそうで、特にFC東京が後方でボールを持っている時に前に出てプレス⇆前線に放り込まれたら自陣に戻ってスペースを埋めたりマークを受け渡す、といったアップダウンを強いられる状況になると、試合の展開から脱落気味っぽくなって、37分にアフター気味に足が当たってイエローカードになるのですが、ちょっと30分くらいからプレースピードについていくのが厳しそうだな…という感じでした。
  • おそらくこの田中克幸を中盤センターで使うのが難しいので、駒井がシャドーというより完全にインサイドハーフとして下がり目でプレーしていたのだと思いますが、中央が田中克幸、駒井、馬場だとコンサはみんな下り目のバランスになって、前線と分断気味になっていたと思います。

  • そんなコンサで奮闘が光ったのが2トップの左に入った長谷川。コンサの2トップの並びは基本的に逆足配置で、かつシャドーとの兼ね合いで決まりますけど、この日はシャドーがいないので2トップの並びはどちらでもアリだったと思いますが、コンサボールになった時に長谷川が左サイドに流れて何度もボールキープを成功させます。
  • このポストプレーというかマイボールにしてくれる長谷川の頑張りがこの日のコンサの生命線で、コンサの攻撃機会の大半はこのプレーから生じていました。

  • ただそこからデザインというか連動みたいなのが乏しく、基本的に個人の頑張りをつなぎ合わせてそれっぽくなっている(なっているのか?)のが最下位のコンサの実態で、例えば長谷川はクロスボールが得意というポストプレー以外にも武器があるのですけど、前線でキープという仕事を彼に全面的に押し付けてしまうと大きな負荷になりますし、1つ仕事をこなしてから次の仕事(フィニッシュやクロスボール)に移れるようなサポートを誰かがしてくれるわけでもない。
  • そして前線でもう一人、待っている武蔵との連動や連携もかなり乏しくて、長谷川が左サイドで頑張ってキープしている間に武蔵は逆サイドで待っているだけで、武蔵がボールを引き取るのか、誰かがそこまでボールを引き取って届けるのかもコンサには特に何もなさそうな状況でした。

  • だから、コンサは本来マルチな仕事ができるはずの長谷川が、単に前線でボールをキープするだけの人に成り下がっていたとも言えるし、コンサの攻撃は、長谷川の左サイドでのキープから、菅や中村桐耶といった近い位置にいて長い距離を走れる選手のスプリントからボールを引き取ってそのままゴールに特攻、という非常に直線的なプレーだけがシュートチャンスとなっていました。

同情とはそんなに安いものではない:

  • 0-0で試合が推移して、FC東京はいつ前線の交代カードを切って前輪駆動型に切り替えるか、コンサはいつまで田中克幸を引っ張るか、という戦況だったでしょうか。
  • 東京は63分に荒木→ディエゴ、俵積田→仲川。疲れている岡村とディエゴのマッチアップだと不安でしたが、岡村はディエゴに前を向かせないように上手く対処していたと思います。
  • そしてやはりディエゴが入ると、荒木の起用時よりも前線に陣取る(場合によっては蓋をする)傾向が強くなって、後方の選手の疲れもあって、FC東京は中央に何度も選手が飛び出すというよりは定位置攻撃でなんとかしようとする意識が強くなったと思います。また試合を決めたのは後方からのシンプルな放り込みをコントロールした、ディエゴのポストプレーからでした。
  • ディエゴと仲川の投入の72分、ディエゴのポストプレーから松木がスルーパス、左サイドに回っていた安斎がゴールやや左からシュート、がこの試合最大の決定機でしたが菅野がビッグセーブ。
  • しかし84分、これもディエゴのポストプレーを松木が繋いで右サイドへの展開から、最後は原川のクロスに安斎がボレーで決めて先制。
  • クロスもボレーシュートも見事でしたが、コンサのクロス対応というか、中央にディエゴ、ファーに安斎がいる状況で、DFの中村や髙尾は、最初に松木がクロスのチャンスになった状態でも相手FWをマーキングできていないし、その後戻ってきた駒井がディエゴを見ているような感じなのですがそのマッチアップでいいのか…というのもありますし、結局コンサのDFは人をマークしているのか空間を守っているのかよくわからない状態になっていて、ここは選手がいないから監督に同情するとかじゃなくて、ケーススタディとして守備練習をしていれば、状況は変えられた場面だと思います。

雑感

  • だいたい記事に書いた通りですが、コンサはbuild-upをして皆で相互作用を生みながらプレーするというより個人でなんとかするという状態なので、外国人FW獲得の噂がありますが、仮に誰かが加入してもこの日の長谷川のように孤立した状態でシングルタスクをこなすだけ(チームには還元されない)になりそうな気がしています。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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