2024年6月6日木曜日

2024年6月5日(水)JリーグYBCルヴァンカップ プレーオフラウンド 第1戦 北海道コンサドーレ札幌vsカターレ富山 〜押しても動かぬときは〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • 富山は直近のJ3リーグ戦(沼津相手に敗北)に出場した選手は左SBの安光のみとターンオーバーで札幌に乗り込んできました。リーグ戦では15試合で5勝6分け4敗の8位につけています。
  • またFootball Labを参照すると、FWはこの日スタメンの碓井が9試合スタメンで最多なようですが、ここ3試合はこの日ベンチスタートのマテウスレイリアが起用されており、このような序列の変化が生じているらしきポジションがかなり多く見られてメンバーは固定されていないようです。
  • コンサは3回戦の長野戦のメンバーから木戸がベンチスタートで、原がスタメン。


2.試合展開

サイドで窒息するコンサ:

  • ほぼ90分を通じて、富山がボールを捨てる展開でした(その割にはスポーツナビでは保持率65:35でしたが…)。
  • ボールをコンサに持たせている時の富山は、1-4-4-2もしくは1-4-2-3-1の陣形で、基本的には人を強く意識しすぎない、ゾーナルな意識が強めの対応をします。
  • 前半コンサは枠内シュートゼロに終わります(シュート本数はスカパーの集計で6本くらいだったかな)。

  • いくつかポイントを挙げると、まず①アンカーの田中カツを富山の2トップが消します。コンサは家泉と中村桐耶、GK小次郎のところで、家泉からプレーが始まることが多かったのですが、家泉は寄せられると簡単にサイドの髙尾に預けることが多く、コンサはこの局面で中央をほとんど使うことができませんでした
  • 結果、田中カツはボールを貰いに途中から下がってくるのですが、その下がった状態からは前線に確率の低いロングフィードを蹴るくらいしかできず、たまにそれは富山の不十分なクリアなどを誘発してセカンドボールを拾ってコンサが富山陣内でプレーできたりもするものの、意図のある攻撃を作ることはほとんどできていなかったと思います。


  • もう一つは、②コンサのWBにボールが渡ると、富山は必ずSBとSHで縦横を封殺するように対応しており、田中宏武と原は前半ほとんどサイドで突破することはできず、ボールを失わないよう後方に戻すことが多かったと思います。
  • この辺は富山の対応は非常にゾーンディフェンスの考え方に忠実なのですが、コンサは家泉や髙尾(というかDFの選手全員)が簡単にサイドに展開して”袋小路”に迷わせすぎで、相手の構造を見てプレーできていた選手はほぼいなかったように思えます。

  • 富山は自陣ゴール前での局面になると撤退が迅速で、ペナルティエリア付近に8〜9人でブロックを作り、コンサの前線の大森、小林、長谷川が足元でボールを受けるスペースをほぼ消します。
  • そのためこれらの選手は、後方から適当に放り込まれたボールをなんとかマイボールにしようとするか、ブロックから離脱してゴールから離れた位置で何かを起こそうとするか、しかできませんでした(長谷川はこの形から後半に”何か”を起こします)。
  • コンサに雑な放り込みをさせてボールを一時的に獲得した富山は、前線の碓井や両サイドハーフがスペースに走って、そこに長いボールを蹴ることで陣地の回復及び、可能なら速攻の可能性を見出していました。このために富山はサイドハーフがなるべく下がりすぎないようにしており、ここもオーソドックスなゾーナルディフェンスの考え方を意識していたと思います。

やっぱあんまり足速くない…?:

  • ただ8分というかなり早い時間帯に富山が先制したため、カウンターをするよりは、時間をどう使うかという考えにシフトしていたように思えます。

  • このゴールは中継のリプレーを見るとわかりやすいのですけど、右SH松岡と岡田、中盤の末木と田中カツのマッチアップがスイッチするかのように末木が右サイドに飛び出したところから。
  • コンサのピッチ上の選手の中で特に走力がなさそうな田中カツのマッチアップを狙ったのかはわかりませんが、少なくともGKのフィードと選手の連動は事前に用意していないと発現できないものでしょう。
  • 家泉は先日のリーグ戦に続いてまたも走り負けてしまった感じがしますが…ただリプレー開始時点で明らかにスタートが遅くポジショニングも悪かったのは、こちらも薄いが何か駆け引きをしていたのかもしれません。いずれにせよ、リーグ戦に続いてマンマーク主体の対応を完全に逆手に取られての失点でした。

膠着状況を打破したのは:

  • 後半頭からコンサは岡田→馬場、田中宏武→菅に交代。

  • 後半、少しずつ富山がずれてスペースができるようになってきたのは、富山の疲れもあるのでしょうけど、交代で入った馬場の組み立て能力というか、ボールを持った時に家泉や中村桐耶、髙尾らよりも多彩な選択肢を持っている。
  • 前半、富山は家泉のところで簡単に制限をかけて袋小路に迷わせていましたが、馬場相手だと簡単に詰まりやすいところには展開しないので、富山は守備で走らされる時間と距離が増えます。

  • もう一人挙げるなら右に移った原。
  • 富山は56分に、左SHの伊藤を下げてCBの脇本を入れて5バックの1-5-4-1にシフトします。
  • 最終ラインが4枚から5枚になってスライドが遅れにくい、簡単にスペースが生じにくい状況になりましたが、原は右サイドから斜めにゴール方向にゆっくりと向かうドリブルを繰り返し、ボールを失わずに味方に預けるという一見地味なアクションを繰り返します。しかし原がボールを失わないようぎりぎりまで保持し、ゴールに向かうことで富山のDFはボールサイドに引きつけられ、5バックでの対応でありながら反対サイドにはスペースができる。このスペースにコンサがボールを長せば、富山のDFはまた横方向にスライドを強いられ次第に消耗していきます。

  • 81分のクロスボールからの長谷川のゴール(DF今瀬のオウンゴールですね)は、DFが消耗している状態でしたので、事故やミスというかはある程度仕方ないゴールだったかと思います。
  • もっともこれ以外だとコンサの枠内シュートらしきものは、セットプレーの流れから家泉のヘッド(GK齋藤和希が足でビッグセーブ)と、田中カツの右足ミドルくらいでしたので、1点は取れそうだなとは思って見ていたものの、(三浦俊也さん風に)妥当な結果、とドヤれるかは微妙なところでしょうか。

雑感

  • 小田切監督のもと訓練された富山のサブ主体v戦術練習、守備練習、セットプレー練習をしないコンサのサブ主体 だと上位カテゴリのチームが打破するほどの差はありませんでしたが、富山での2nd legで武蔵や駒井が出場するなら、流石にJ1とJ3のクオリティ差を見せつけることにはなるんじゃないかと思います。この予想が外れても何もおごりませんけど。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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