2024年5月23日木曜日

2024年5月22日(水)JリーグYBCルヴァンカップ 1stラウンド 第3回戦 AC長野パルセイロvs北海道コンサドーレ札幌 〜重みの違い〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:


  • 2位琉球〜11位今治まで勝ち点差3と混戦模様のJ3で長野は8位につけます。このルヴァンカップでは3月に徳島に5-1、4月に京都に3-2と、上位カテゴリでありますがなんというか”お察し”のチームと対戦が組まれる僥倖もあり勝ち進んできたようで、それらのチームと同類の我らがコンサをホームで迎え撃つということで意気上がる状況でしょうか。
  • J3はこの週の週末にリーグ戦がない(天皇杯1回戦)ということもあり、メンバーはターンオーバーのコンサに対し、ほぼリーグ戦を戦っているメンバーを送り込んできたようです。FW浮田は2020年に山口でプロデビューし、すでに4クラブを渡り歩いていて、今シーズンはJ3で14試合8ゴールと好調。個人的に気になる選手は左DFの杉井で、2000年5月生まれの24歳、柏ユースから高卒トップ昇格した左利きDF。サイドもセンターもできる左利きという点でどのクラブも探しているタイプではないでしょうか。

  • 週末に鹿島との断頭台マッチ?を控えるミシャコンサは完全ターンオーバー。3日前のリーグ戦でメンバー外だった小林、長谷川といった選手は怪我ではないことが判明しました。GK児玉はY.S.C.C横浜でカップ戦に出場しているので、この試合を勝ち進んだ場合に次のプレーオフラウンドから出場可能ということです。

2.試合展開

ボトルネックを浮き彫りにする長野のpressing:

  • スタッツ的には前半コンサは前半シュート5、となっていますが、スカパー式のよりシビアなカウントではシュート1本だったと思います。いずれにせよ数値的にはボールはある程度は保持しているが、長野ゴールを脅かすことはできていないコンサの前半でした。
  • 長野はボールを持っている時、持っていない時いずれも1-3-4-2-1ベースの布陣。特徴的だったのは、コンサがGKや後方の選手からプレーを始める時は↓のようにマークを整理してコンサ陣内からマンツーマンでのpressingを仕掛けてきました。
  • 特徴はトップとシャドーの位置関係を逆にして、シャドーが前に出てCBの家泉と中村桐耶を見る。そしてコンサのサイドに大きく開いたSBの髙尾と岡田に対しては、中盤センターの西村と古賀が中央を大きく逸脱する形で人を捕まえます。
  • 岡田の視点からするとGK小次郎のフィードが空中を飛んでいる間に古賀が全力で寄せてくるので、トラップしてコントロールするならより正確さが要求されますし、ワンタッチで味方に預ける場合にせよ瞬時の判断が求められます。
  • その岡田や髙尾がワンタッチで預けられそうな選手は、下がってくる長谷川くらいしかおらず、たとえばシャドーの木戸や小林はそこまでこのシチュエーションのサポートに熱心ではないというか、少なくとも岡田や髙尾が困っている状況を助けられるアクションには乏しかったので、長野は長谷川を捕まえていればこのシチュエーションで頻繁にコンサのボール保持を引っ掛けることができていました。

  • そしてアグレッシブなpressingによってボールを奪った後の長野は、一息つく間もなくプレー強度を維持しており、コンサのマンマークをシンプルなパスとランで剥がしてGK小次郎が守るゴールを脅かします。
  • よく見られるパターンは⇩のような形で、マンツーマンのコンサはサイドで1v1となっている状況で簡単に前に人が出てくるのでその背後に2人目の選手が走れば、長野は簡単にコンサの背後を取ることができていました。
  • また長野は右利きの選手が多いこともあってか、右サイドでの展開が多かったと思いますが、コンサの左DFの岡田が対面の選手に頻繁に前に出ていく(かつ、完全に捕まえることができない)ので、結果的には簡単にスペースを空けた状態で長谷川と岡田の対応が並ぶと長野の攻略をより容易にしていたと思います。
  • そして、その前に出て守ろうとする岡田や、コンサの中盤の田中克幸といった選手のスピード(主に背後を取られた時の帰陣のスピード)に対し、長野の選手のオーバーラップや追い越してゴール前に出現するスピード、何度も動きを繰り返す運動量はそれを上回っていて、コンサゴール付近で簡単にマークが外れる状況が頻発し、そうした形から長野が18分に先制します。

  • 一方で長野のpressingは撤退の見極めも明瞭で、コンサの中盤から前の選手(前線に張る5枚とアンカーの田中克幸)が前を向いてボールを受けられる状況になると、極めて迅速に帰陣し5-4のブロックを自陣ペナルティエリア付近に作ります。
  • コンサは右に田中宏武と髙尾、左に長谷川と岡田、CBに中村桐耶だと、プレーベクトルがサイドに寄るというか、これらの選手はサイドでボールを受けて縦に仕掛けたりが得意な選手ということで、まず中央でプレーするという発想や選択になかなかなりづらい状況だったと思います。
  • となると小林や木戸が降りてくるとか、長野のブロック内でパスを待つだけではなくて中央でボールに関与しても良かった気もしますが、そうしたアクションには乏しかったです。2回戦で沼津相手に2ゴールとクオリティを見せつけた小林は、速い展開では試合のスピードに合わず、こうした遅い展開では長野のブロックにスペースを消されて全く存在感を発揮できないまま45分でピッチを後にしています。

王の自覚:

  • 後半頭からコンサは小林→出間、岡田→原に交代。

  • しかし試合の様相は大きくは変わらず、長野は少なくとも70分くらいまではpressingを継続しており、依然としてコンサは危険なエリアでボールを持つことができません。
  • いつも通りコンサが「自らバランスを崩すことで相手が崩れることを狙う」なら、その役目は単独で突破できる中村桐耶のような選手になるかと思いますが、中村が左DFに変わったことで(また全体の不安定さもあって)なかなかそうしたバランスを崩すような大胆なアクションは取りづらくなったと思います。

  • 長野は70分以降はpressingの勢いは流石に低下し、トップとシャドーの選手が高い位置からコンサのCBとアンカーを捕まえはするが、サイドのDF(髙尾と中村桐耶)に中盤の選手が捕まえにいくことは難しくなります。
  • 73分に古賀、78分にトップの浮田とシャドーの忽那と、pressingにおいて重要な選手の疲労を考慮してか交代カードを切りますが、サイドを迂回してコンサが徐々に敵陣に侵入、または中央の選手にボールが航ようになっていきます。
  • コンサがそもそも長野ゴールに迫るプレーが殆どないということもありますが、70分以降も長野は5バックは依然として一定の強度を維持していました。
  • 一方で中央はやや疲れ気味で、コンサは田中克幸のところ、ピッチ中央に徐々にスペースが生じてきます。中央は別に他の選手が使ってもいいのですけど、この日のメンバーでは田中克幸と他の選手では、中央でプレーする意識やそのプレーのクオリティが歴然で、何か起こるなら(普段のコンサはサイド突破からが多いですが)彼の左足からかな、と思って見ていました。

  • ATの同点ゴールはその田中克幸のミドルシュートから。長野は中盤の選手を剥がすとDFがかなり下がっていて(これが標準的なライン設定でした)、ただ枚数は揃っているので簡単にシュートが入ることはないと思うのですが、家泉に当たったラッキーなゴールでした。
  • もっとシュートを打て、という意見も見られましたが、この位置でミドルシュートがある選手にボールを立たすことにコンサは苦戦していたので、紙一重の攻防だったと思います。

雑感

  • まずとにかく長野が戦術的にもコンディションの面でもよく準備していました。普通はこうした展開だと急激に運動量が落ちてオープンになったりするのですが、厳しい時間帯になっても長野は再三デザインされた速攻や裏への飛び出しでコンサゴールに迫っており、GK小次郎の(らしからぬ)安定したセービングがなければ早々に敗退が決まっていたことでしょう。
  • コンサに関しては選手個人のプレーというより、そもそも長野の情報も持っていなかったように見受けられましたし、また長野の出方(バランスを崩しながらもマンマークでガッツリはめてくる)が前半わかったところでどうする、という打ち手を自ら考えられるメンバーでもなかったかなというのが感想です。コンサが手を抜いているとかカップ戦を舐めているとは思いませんが、J3カテゴリから見るのとJ1カテゴリから見るのとでは、どうしても試合の重みみたいなのは違うな、とは感じるところはありました。
  • 後半ややスペースが生じてからは、流石にJ1とJ3というクオリティを個々の局面では何度か見せてもいましたが、そうした個人技の1つ2つでは簡単に崩れず、繰り返しですが長野がよくぷれーしていたと思います。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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