2023年9月25日月曜日

2023年9月23日(土)明治安田生命J1リーグ第28節 名古屋グランパスvs北海道コンサドーレ札幌 〜骨組みだけの夏〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • 比較的名古屋は同じメンバーでシーズンを戦っていましたが、夏にリーグ屈指のアタッカーだったマテウス(アル・タアーウンFCへ移籍)と米本(右膝内側半月板損傷)を失い、前者のところには広島から高額移籍で加入した森島。後者のところにはシーズン序盤にワイドでの起用が多かった内田が入っているようです。
  • 右WBのみ流動的でしたが、夏以降は和泉が右、森下が左のことが多く、この試合は左右を入れ替えてきました。相手というより名古屋がプレーしやすい配置を模索しているように思えます。また最終ラインは河面が左に入ることが多くなりました。配置は2トップでも縦並びでもいいのですが、役割的に縦並び表記としました。森島はインサイドハーフでいいと思います。
  • 札幌は荒野が出場停止、馬場が代表招集で不在、ルーカスとゴニが何らか負傷のようで、WBは練習では右に菅、左に青木という組み合わせも試していたようです。浅野を右に持ってきて、駒井は中央で使わないといけないため小林が前線に(と書くと怒られそうですが、ここまでの起用法だとそのように見えます)。

2.試合展開

40:60:

  • 各所のスタッツを見ると大体ボール保持率は名古屋4に札幌6。これはどちらがボールを持っているというかはどちらがボールを捨てているかをより示している指標で、名古屋は一応ハイプレスをしようと思えばできる(たまにする)けど、基本的には自陣ペナルティエリア付近に最終ラインを引きます。
  • そのペナルティエリア手前まで札幌が侵入してくる展開でも名古屋はあまり気にしないというか、寧ろその状況を意図的に作って、札幌が最終ライン2人でかつ後方にも側方にも広大なスペースがあり、宮澤と岡村で広大なスペースを守らなくてはならない状況で、ユンカーのスピードを活かして勝負するというわかりやすい狙いでした。

  • 静止画でどれくらい伝わるかわからないですが、名古屋は最終ラインがペナルティエリアのすぐ外、中盤3枚がその前に配置された1-5-3-2でブロックを作る。
  • この際、中盤3枚は5バックの前のスペースを消すことに集中していて、サイドのスペースはほぼ捨てているし、2トップと近い位置をとってコンサのDFや駒井を捕まえる、といったアクションはほとんどなく、名古屋は完全に待ちの姿勢でした。
  • 最終ラインも極力、オリジナルポジションから動かないようにしていて、マークずれを避けるのもありますが、まず札幌の前線の選手にとにかくスペースを与えないようにしていたと思います。
  • これはGKにランゲラックというミドルシュートに強い選手がいて、3人のDFもコンサの前線の選手相手なら制空権を握れるので、スペースを決してコンサに苦し紛れの放り込みをさせて跳ね返して回収、またはミドルシュートを撃たせて回収、といった対応で対処できるからでもあるし、ユンカーのスピードを最大限に活かすためでもあります。


不可欠なタレント:

  • 一方でマテウスという相棒を失ったユンカーは、後半に中村を置き去りにしてワンマン速攻で見事な先制点を挙げましたが、基本的には1人でカウンターというのはいくらコンサのDFの対応がザルでもそう簡単に何度も決まるものではありません。
  • ボールを運んで、ユンカーをフィニッシュに専念させられる(かつ自分でミドルシュートもある)マテウスの不在は、このロングカウンター戦術においてはかなりのダメージで、永井ではなく前田の起用は、よりボールを運べるタイプの選手ということもあるのだと思いましたけど、やはりマテウスの代役となるとスケールダウンは否めないところがあります。
  • 一応、森島がおり、かつ森島は広島で似たような戦術も経験していますが、森島の使い方は完全にインサイドハーフの一角で、ロングカウンターの際に中核となる役割ではないように見えますし、マテウスではなく前田や森島がプレーするなら、ボール回収位置が低すぎるように感じました。
  • ですので名古屋はユンカーが疲れてくると尻すぼみになるのが課題で、この試合でも後半に次々と前線の選手を送り込みますが、やはりプレーの開始位置が札幌ゴールから遠すぎて、札幌のDFでも十分に対処できていました。

縦パスは狙い目:

  • 名古屋がボールを持っている時は、3バックのDFの誰かがシンプルに縦にロングフィードを蹴って、ターゲットのユンカーがキープに成功すれば後方の選手が押し上げてサポートという形を狙います。
  • この時、前田&ユンカーと岡村&宮澤でほぼ2on2の関係になっているので、名古屋は特に宮澤のサイドで、サイドのスペースで勝負したそうな感じがしました。
  • ただ、この縦パスがマンマークの札幌に何度か引っかかっており、かつこの状況では名古屋の3バックが低い位置からプレーをスタートするので、札幌がボール回収した時に名古屋はかなり間延びした状態で札幌のカウンターに備える必要があります。札幌は特に小柏のスピードを活かした速攻を度々試みていて、惜しいシーンもありましたがランゲラックのビッグセーブもあり得点には至りませんでした。

  • 後半の札幌の得点は、小柏にボールが渡った時に小柏の進行方向は名古屋が消していて、小柏は(不得意な)左方向のプレーベクトルになってコントロールミスが生じたのですが、菅が追い越してサポートしたのが名古屋のDFには予想外で対応が難しかったと感じます。


雑感

  • 互いに金子とマテウスという非常に重要な選手を失いましたが、名古屋の方が、マテウスが戦術に非常にフィットしていたためダメージは大きそうだなと感じましたし、中島大嘉のようなタイプの選手をジョーカーで使いたいチーム事情もなんとなく感じました。マテウスがいないと、もう少しボール回収位置を高くしないと難しいように思えます。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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