1.ゲームの戦略的論点とポイント
スターティングメンバー:
- 横浜FC、柏と残留争いの中心でのシーズンが続く湘南は、夏のマーケットでエース町野を放出したものの、FWディサロと福田翔生、MFに期限付き移籍から復帰の田中聡、そして最終ラインにキムミンテとセンターラインの補強に成功。前線にA級のインパクトのある選手は確保できなかったものの、待望の?大型DFのミンテとチームをよく知るであろう田中の加入は大きいでしょう。
- ミンテ加入からの5試合は1勝2分2敗。ただ、2分はいずれも終了間際の失点で、見た感じはセンターラインのパワー不足は依然として不安材料であり、かつGKのソンボムグンが負傷でシーズンアウトとなったことは影響が大きいでしょう。
- 札幌は前の週にマリノスとのルヴァンカップを戦い、トータル3-5で敗退。札幌での1戦目がマリノスのエウベルやアンデルソンロペスがスタメンを外れたこともあり3-2で勝利しましたが、やはり2試合トータルだと実力差が如実に表れる印象でした。この2戦目で駒井が退場処分によりこの試合は出場停止。菅野は復帰しましたが、GKは高木が引き続き起用されています。
Jリーグ - J1 第27節 北海道コンサドーレ札幌 vs. 湘南ベルマーレ - 試合経過 - スポーツナビ https://t.co/tjXNDcrRvO
— アジアンベコム (@british_yakan) September 17, 2023
2.試合展開
structureは簡単には変わらない:
- 両チームがJ1に定着した2018年以降の対戦で、湘南は1勝、札幌はカップ戦を合わせて7勝と相性はかなり良好。
- 基本的にロングボールで敵陣にさっさと放り込む札幌に対し、湘南は坂、石原広教、舘…とサイズがない選手がよく出ている(いた)印象で、直接ゴール前の空中戦でゴールを割られることはそう多くはなくとも、まずロングボールの処理能力の問題で押し込まれる展開が多いカードだと感じます。
- 今年5月の平塚での対戦でもその傾向は変わっておらず、コンサはもう前線にサイズのある選手がキムゴンヒ(登録名ゴニに呼び名と統一してくれ)くらいしかおらず、数字上はそこまでサイズやパワーの優位性がないように見えますが、湘南のDFは全般にヘディングでのクリアがウィークポイントで、同じパターンで札幌が押し切った印象でした。
- ですので「ミンテ加入で湘南のセンターラインの強度は増したのか?」が(私がミンテニスタだからとか関係なく)この試合の最大のポイントでした。結論としては、正直なところあまりチームとしてはそこまでアップグレードされていない印象でした。
- マッチアップ的にはミンテのところは小柏で、当然そこはミンテが優位なのですが、コンサの前線には浅野とスパチョークが左右で並ぶ。この2人もサイズがなく、特にスパチョークはここまでフィニッシュ以外での貢献が乏しいのですが、そのスパチョークがロングフィードを落として起点になったりもできるくらいに湘南の対応は緩かったです。
- またセットプレーでは、最終ラインだけでなくチーム全体でのパワー不足がよりクローズアップされます。湘南は全般にヘディングでのクリアの飛距離が足りなくて、コンサはとにかく放り込んでおけば際どい場面になりかけていたと思います。
湘南の勇気が結実:
- 一方で湘南のボールを持った時のプレーは幾分か改善されている印象でした。
- build-upは主に、右の舘が持ち出して縦パスを小野瀬か流れてくるFW(大橋)へ。
- コンサは全体的にこの試合スカスカな感じだったのですが、それは最終ラインのマークの作り方にまず要因があって、マッチアップ的には中村桐耶が小野瀬、田中が平岡。なのですが、中村と駿汰は最初から最終ラインに入るポジショニングが多く、小野瀬と平岡が頻繁に浮いている、もしくは中央に荒野1人だけいるような状態が多かったと思います。
- おそらく湘南の2トップに合わせると、宮澤と馬場が2トップと2on2の関係になって、特にサイドのスペースで勝負されると札幌はきついので、何らかスペースを埋めるようにしたのかと思いますが、結果的には中途半端な対応で、特にpressingと呼べそうな連動性は皆無でした。
- 湘南の決勝点はこの、サイドのスペースにFWが流れる形から札幌のペナルティエリア付近を取ってラインを下げさせてからスペースに2列目の選手が走り込む形。狙い通りの展開だったと思います。
- 他、湘南はトランジションでボールを回収すると、2列目のインサイドハーフやWBが一気に追い越します。
- ただそんなに湘南の前線にボールをキープできる選手がいないので、スペースにどんどん飛び出してスピードを落とさずにプレーできるならいいですが、詰まってしまうことも多く、そうなるとWB(特に杉岡)の背後は結構不用心な感じで、ルーカスに再三侵入を許していました。
- 札幌としては、スタメン復帰の中村のパワフルな突破は脅威になっていて、またマッチアップ的に湘南は中村の攻撃参加に対応するのがこちらも小野瀬になるので、中村の攻撃参加はその能力的にも、配置的にも効いていたと思います。
- ただ後半になると、湘南は自陣ゴールに迫ってくるコンサの選手に慣れてきて、中村にせよ、前線の小柏や浅野にせよ前方向の動きが得意な選手ということで、スペースを消して守れば対処できるという状況でした。
- コンサはゴニがメンバー外で、大森や小林がジョーカーの役割でしたが、大森はあまり起点になれず、浅野を交代させてピッチに残した小柏やスパチョークとは噛み合っていなかったと思います。
【北海道コンサドーレ札幌×湘南ベルマーレ|ハイライト】2023明治安田生命J1リーグ 第27節 | 2023シーズン|Jリーグ https://t.co/AwgsiXQdP7 @YouTubeより
— アジアンベコム (@british_yakan) September 17, 2023
雑感
- これまで湘南相手にはあまり考えずに、放り込んでるだけで優勢でしたが、今回は「同じことをやったけど普通に負けた」という印象でした。まぁ、今までがイージーすぎたといえばそれまでなのですが…。
- その他、細かい話では、好調のスパチョークを最後までピッチに残しましたが、基本的にルーズFWでフィニッシュ以外の貢献があまりない彼と、小柏が同時にピッチに立つと攻撃の起点創出の面では厳しい印象でした(浅野を先に替えたのは意外でした)。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。
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