2023年10月3日火曜日

2023年9月30日(土)明治安田生命J1リーグ第29節 北海道コンサドーレ札幌vs柏レイソル 〜失われるパッション〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • 乱打戦となった前回の柏での対戦、以降この試合までの柏はリーグ戦で3勝5分4敗。8月以降は、前節福岡に敗れるまで3勝3分の無敗で乗り切っていて、降格枠1というレギュレーションも味方し、なんとか最悪の事態の回避には近づいています。
  • メンバーを見ると、懸念の最終ラインCBに夏加入の犬飼が入ったことがやはり大きいのでしょう。左SBのジエゴも7月に怪我から復帰以降スタメンに定着していて、プレーは相変わらずという感じですが高さのオプションなどはポジティブな影響だと思います。
  • そして2トップの細谷のサポート役として、ここまでノーゴール、アシストも1ながら山田康太がコンサで言う駒井のような頑張りを見せていて、右SHには山田雄士が9月以降定着しており、全般に頑張るチームにすることでまずは緊急事態に対処したな、という印象です。Jリーグではよくある光景でしょうか。

  • 岡村、宮澤、荒野が出場停止で馬場が代表招集中の札幌は、GKが2人ベンチ入り。福森が細谷or山田をマークする役割で、ボールを持った時は右CBの位置にいる形でした(中村がナチュラルに左に来るので)。

2.試合展開

柏の狙いと札幌の個々の対応力:

  • 1枚の図で試合の構図を表すと、


  • まず柏は札幌に持たせてカウンターに徹します。
  • 柏は札幌のボール保持をサイドからSHのところで中央に誘導して、ボール回収して速攻を仕掛けたい。先制点は、左に配置されているマテウス サヴィオのスルーパスからでしたが、特にこのサヴィオが大外よりも内寄りで、かつ中央を向いてボールに触れる状況になると、ドリブル突破とパス、シュートと多彩な選択肢が生じるため柏としては期待が高まります。

  • 逆に、札幌としては中央で失って被カウンター、は避けたい。
  • 対処法は、一つは前に放り込むというもの。ただ前にジェイのようなターゲットはいないし、他にボールをマイボールにできるわけでもない。前回対戦時から、犬飼やジエゴが加わって跳ね返す能力が向上した柏相手だとそれは一般に「ボールを捨てている」と評されるでしょう。
  • もう一つは、中央で柏が狙い所としている場所を避けてボールを動かすこと。すなわち、図でいうと田中駿汰を対面のマテウスサヴィオの背後に配置しましたが、ここでボールを受けるとサヴィオの守備(札幌のCBからのパスを中央に誘導)を無効化することができ、柏の包囲網を突破して柏陣内に侵入し、前線に張っている選手で勝負することができる。
  • しかし、ここの田中駿汰にパス(例えばGK高木やコンサの中央の選手から浮き玉のボール)が配給されることは稀で、高木はおそらくその能力があると思うのですが、選択はほとんどしない。駒井や中村桐耶がそうしたプレーを試みるのは私は記憶にありません。
  • そして菅は、田中駿汰と異なり対面の山田雄士の背後で受けようとしないので、札幌としては菅には配球しづらい(すぐに捕まるため)。こうなると、札幌のDFとしてはボールの預けどころがどんどん少なくなっていきます。

  • 駒井は割と早い時間から最終ラインに下がってきたので、この様子からは、状況を見て、DFの選手が困っているから助けたというかは、個人の決めうち的な判断になるのでしょう。
  • ただいずれにせよ、駒井がこの位置でボールを持って何かが起こるわけでもなく、誘発したのは小林が駒井のところに下がってきて、その分小林が前線でトップの選手と近いところでプレーする機会が減る事象だったと思います。

パワーバランス:

  • コンサの前線では、WBは、柏はSBとSHの2枚体制でサイドを封鎖しようとしますが、それでもボールを届けられれば何かを起こせる能力はあったと思います。
  • 特にジエゴと浅野のマッチアップは、なんというかジエゴが簡単に飛び込んでくるので、浅野が何度かファウルを貰うなどしてこの試合では一番チャンスをつくっていたと思います。
  • ただ前半にサイドの選手がボールを持った時に、縦を切られて利き足でのクロスボールに切り替えるとして、コンサはクロスボールのターゲットがいないので、どんなボールを供給したらよいのか困っている印象は受けました。

  • 一方で中央では、小柏もスパチョークも味方からラストパスが出てこないと仕事ができないタイプなので、なおさら小林のような選手が近い位置でプレーすることが重要で、後半の早い時間のスパチョークのゴールはそうしたコンサの前線の選手の特徴(フィニッシュだけ登場する選手、動き出しが多い選手、フィニッシュの1手、2手前の局面で関与できる選手…)がよく現れているプレーだったでしょう。

  • 後半、時間が経つにつれ柏の足が止まってきて、また柏は1列目の対応がステイであること、コンサが相変わらずピッチ中央を使おうとしないことなどが重なって、後半の途中からはコンサが前線に人を集めて、柏が8枚ブロックで守るような構図になっていきます。
  • それでも、単に放り込むだけだとコンサの前線だと厳しいので、相手を剥がせる浅野やルーカスの使い方が重要だったと思いますが、柏の中盤の選手が頑張ってプレスバックして中央のカットインするスペースを消したこともあり、コンサとしてはゴールに近づいたところで加速できなかったように思えます。


雑感

  • まず柏の得点シーンもそうですし、それ以外の札幌相手にとった対策も全般に、これまでのゲームでよく見られたものの詰め合わせみたいな既視感のあるもので、その意味では特別ではなかったですし、また柏のスカッドが別段優れているとも思わないので、正直なところ、柏は無策ではなかったけど普通に勝ち点を得られる相手だったと思います。
  • それでもなんとかならなかったのは、全体的にコンサの元気のなさというか、例えば最終ラインに(本来前の選手である)駒井が入ってCBになっている、そしてそこをカウンターで突かれるのは過去にもありましたけど、選手の頑張りで踏みとどまってきた部分も危うくなっているのが現在のチーム状況なのかなと思いました。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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