2023年6月25日日曜日

2023年6月24日(土)明治安田生命J1リーグ第18節 北海道コンサドーレ札幌vsセレッソ大阪 〜まずは土台から〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • 開幕前に「注目するチームはあるか?」と聞かれて、普通に考えたらクルークスとレオセアラが入ったセレッソは強くなる、と答えました。そのクルークスがフィットし始めているようでここのところスタメン起用が続いています。それに伴って毎熊が右SB、進藤がヨニッチの離脱があってチャンスを掴んでいるなど最終ラインに少し変化があり、中盤は香川がセンターで軸になっているのが現状のようです。
  • 札幌は小林、西、馬場と欠場が多かった選手が戻ってきて、前線のオプションを増やしたベンチの構成で後半戦初戦に臨んできました。1週間前にカップ戦があったので、深井などはその状態も考慮してメンバーを決めているのかもしれません。



2.試合展開

セオリー通り:

  • 通常、リーグ戦の開催期間には土曜日試合→日曜日オフ→月曜日リカバリー→火、水、木、金にトレーニング(但しアウェイへの移動などあり)→土曜日試合…とするスケジュールで動くとして、だいたい3〜4日あるトレーニング期間をどのように過ごすかで監督以下コーチングスタッフの考え方や手腕が垣間見れます。
  • よくあるのは1〜2日を、対戦相手を意識した練習やケーススタディに充てること。モウリーニョはこれをかなり細かくやるので、管理されることを嫌う?Z世代のトップ選手にはウケが悪かったと聞きます。そして我らがミシャは「ほぼ0日」なのは有名な話です。おそらく日本人選手も、こうしたケーススタディ的なトレーニングはあまり面白くないと感じるのか、単に日本でのトレーニングにはまだまだ改善の余地があるということなのでしょうか。

  • この点で、札幌の視点から見ると、セレッソは毎回ケーススタディがしっかりしていると感じます。札幌は誰が相手でもやることはほぼ決まっているので、対策はしやすいはずですが、それにしても無抵抗みたいなチームが(最近だとこないだの柏のように)定期的に見られますがセレッソは毎回準備された状態で臨んできます。

  • 昨年の札幌ドームでの対戦でも同じでしたが、セレッソは2トップと、それをマークする札幌のDF2選手のマッチアップの関係性をうまく使って攻撃しようとしてきました。

  • 重要なのは、札幌がほぼ純粋なマンマークで守るので、マークの受け渡しをあまりせずにセレッソの選手の移動に(少し遅れて)ついてきます。
  • この習性を利用して、まずセレッソは岡村とレオセアラのマーク関係を使って、レオが引くことで岡村を札幌のゴール前から遠ざける。加藤はDF背後に飛び出して、長いパスを引き出して札幌陣内で起点になるという役割分担が基本だったと思います。

  • 札幌のDFは縦からのボールにはまぁまぁ強いのと、GK菅野の守備範囲があるので、加藤は単に裏に走るというかは左右どちらかのサイドに流れることになります。この時に、札幌がスペースを管理する守り方ならSBの選手に受け渡して、CB(中村)は中央でステイでもいいのですけど札幌はそうしたスペース管理をしないで、中村が遅れてついてくる。だから札幌相手にマーク関係を固定した状態で、先手を取る形でスペースに走る攻撃は有効だったと思います。

  • セレッソの1点目はレオセアラを経由しないbuild-upで、彼が最初から割と中央に残っている配置から生まれたゴールなので↑の構図とは必ずしも一致しないのですが、全体としてはセレッソは最初からゴール前にターゲットを張らせないで、中央のスペースをわざと開けておいて札幌のDFもゴール前に誰もいないような状態を作って、そこに(わざと)遅れたタイミングでゴール前に走り込んでピンポイントで合わせる、みたいな、ゼロトップ的なフィニッシュを用意していた印象でした。その場合は、レオセアラも加藤もゴール前にいないとなると、アウトサイドのクルークスとカピシャーバがフィニッシャーです。

 

  • 後半のほぼ試合が決まったシチュエーションで、かつセレッソが1-5-4-1、札幌がそれに合わせた3バックor1バックで守っている構図ですが、↓の香川の4点目も岡村を中央から動かして生じたスペースにMFの選手がトップスピードで走って点で合わせるのは狙い通りだったと思います。

まずは土台から:

  • 札幌がボールを持っている時の問題点を挙げます。
  • ↓が特に序盤によく見られた構図でした。札幌は、左のCBのところに中村と荒野どちらが役割を担うかはっきりしない。というか、中村が最初から高い位置を取りすぎていて、左のCBのところに誰もいない状態でプレーが始まることが多かったと思います。

  • 当然、菅野は展開先が岡村しかいない。ここを相手は左右どちらかに誘導してから普通はプレーが始まりますがその誘導の必要性すらない。「時間帯別パスネットワーク図」を参照すれば雰囲気わかるでしょうか。
  • セレッソのプレッシングはFWが縦関係で、1人が札幌のGKとCBを見てどちらかに誘導させる役割。ここを、菅野、岡村とCBもう1人で3人の関係性を作ってpressingをを無力化させて、誘導を難しくさせればセレッソの2列目の選手はどこでインターセプトを狙うかが判断が難しくなったはずです。
  • 実際は↓の2点目のように、完全に札幌の選手がどこにパスを出すかが誘導されたシチュエーションを作られていて、それは最初の対応が間違っていたから。
  • build-upが機能不全なコンサは縦に蹴るしかないとして、そのターゲットもスパチョークと浅野なので、センターラインに強度があるセレッソ相手だと無理なマッチアップでした。

雑感

  • やはりこのコンサのサッカーだとセンターラインの強度で決まります。ロングボールを対処できないチーム、蹴るだけでミスをするようなチーム相手だと敵陣でプレーできますが、センターラインに一定の強度があるチーム相手だと、そもそも敵陣にボールを届けることに難があるので簡単にいきません。
  • 中村は、練習通りにプレーしているだけだと思いますので、このチームの中で特に彼のパフォーマンスが悪いとは思いません(少なくともチーム内の競争に勝ってピッチに立っているので)。ただ戦術的には他に書くことがないのと構造上彼の振る舞いは重要だったのでいくつか書いています。
  • セレッソはセンターラインと、特にボールを持っていない時の香川が良かったと思います。クロップがドルトムントでの香川を守備で評価していましたが、中間ポジションをとって誘導したりインターセプトするプレッシャーをかけたりといった働きが効いていたと感じます。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

0 件のコメント:

コメントを投稿